特許第6795324号(P6795324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795324ポリエステルを含む3Dプリント用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795324
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ポリエステルを含む3Dプリント用の組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20201119BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20201119BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20201119BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20201119BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20201119BHJP
【FI】
   B29C64/153ZBP
   B29C64/268
   C08L67/02
   C08G63/82
   B33Y70/00
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-77832(P2016-77832)
(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-203625(P2016-203625A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】14/695,598
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ケ・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ゲリノ・ジー・サクリパンテ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エス・ホーキンス
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジー・ザルツ
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−513319(JP,A)
【文献】 特開平10−316749(JP,A)
【文献】 特開平09−157407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0290410(US,A1)
【文献】 特表2008−544007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/153
B29C 64/268
C08G 63/82
C08L 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位および解重合された再生ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル樹脂であるとともに、100ミクロンから500ミクロンの範囲の粒径の粉体形状で提供される前記ポリエステル樹脂を含む、3Dプリント用の組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記ポリエステル樹脂からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が複合体であって、さらにマトリクス材料を含み、前記ポリエステル樹脂がその中に配置される、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マトリクス材料が、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、コポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、コポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)、ポリ(1,2−プロピレンテレフタレート)、およびコポリ(1,2−プロピレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)からなる群から選ばれる、請求項3に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
前記BDOモノマー単位が、前記ポリエステルの10から55モル%の範囲の量で存在する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
触媒の存在下、1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位および解重合された再生ポリエチレンテレフタレートを含む混合物を共重合するとともに、共重合が150℃から220℃の範囲の温度で行われ、さらに、減圧下、過剰のBDOモノマー単位を除去することを含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記触媒が、錫を主成分とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
3Dプリント用のポリエステル樹脂を基材上に供給するとともに、前記ポリエステル樹脂が、1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位を10モル%から40モル%および解重合された再生ポリエチレンテレフタレートを60モル%から90モル%含み、前記ポリエステル樹脂が、場合により複合体としてマトリクス材料に配置され、さらに、前記ポリエステル樹脂または前記その複合体を選択的レーザ焼結にかけて前記基材上に3D物体を形成することを含む、3Dプリント方法。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂が、100ミクロンから300ミクロンの範囲の粒径の粉体形状である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3Dプリントに関する。具体的には、本開示は、環境保全型ポリエステル化合物に基づく3Dプリント用の新材料に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造(3Dプリント)用の選択的レーザ焼結(SLS)技術は、ラスタライズされたレーザを用いてポリマー粉体の床の上をスキャンし、これを焼結して層状にするような方式で立体形状を形成する。SLSに用いられる材料は、通常、単独または複合体の形の粉体ポリマーである。ダウンストリームアプリケーションの各種のニーズを満たすための仕様と能力の選択は、SLS工程を通して3Dプリント用の新材料の発展に弾みをつける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの態様において、本明細書の実施形態は、(a)1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位および(b)テレフタレートモノマー単位を含むポリエステル樹脂を含む3Dプリント用の組成物であって、前記ポリエステル樹脂が、粒径が約100ミクロンから約500ミクロンの範囲の粉体形状で提供される組成物に関する。
【0004】
いくつかの態様において、本明細書の実施形態は、触媒の存在下、(a)1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位および(b)解重合されたポリエチレンテレフタレートを含む混合物を共重合することを含むポリエステル樹脂の製造方法であって、共重合が約150℃から約220℃の範囲の温度で行われ、減圧下、余分なBDOモノマー単位を除去することを含む前記方法に関する。
【0005】
いくつかの態様において、本明細書の実施形態は、3Dプリント用のポリエステル樹脂を基材上に供給することを含む3Dプリント方法であって、前記ポリエステル樹脂が、(a)1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位を約10モル%から約40モル%および(b)テレフタレートモノマー単位を約60モル%から約90モル%含み、前記ポリエステル樹脂は、場合により複合体としてマトリクス材料に配置されるとともに、前記ポリエステル樹脂またはその複合体を選択的レーザ焼結にかけて前記基材上に3D物体を形成することを含む前記方法に関する。
【0006】
本開示の様々な実施形態を、図面を参照することによって以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本明細書の実施形態に従うポリエステル樹脂の、市販の3D材料とのレオロジーの比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書の実施形態は、選択的レーザ焼結(SLS)3Dプリント技術に用いられるバイオ由来のポリエステル樹脂を提供する。このポリエステル樹脂は、低コストのポリマーであり、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の再生プラスチックを活用するオリゴマーから合成されうる。機械的性質を保つためのその他の成分は、1,4−ブタンジオール(BDO)等のバイオ系ジオールを含む、プラスのライフサイクル分析の環境保全型モノマー由来でよい。本開示のポリエステル樹脂は、環境にやさしい材料を提供しつつ、3Dプリントの機械的耐久性の要求を満たす。
【0009】
本明細書の実施形態は、SLS3Dプリント技術用の環境保全型ポリエステル樹脂を提供する。例えば、この環境保全型ポリエステル樹脂は、低コストのPEBTポリマーであって、再生プラスチックおよびバイオ系モノマーから、下記式1に従って得られるオリゴマーから合成されうる。
【0010】
【化1】
【0011】
式1の例示的実施形態に従えば、環境保全型コポリマーは、ポリエチレンテレフタレートのプラスチックボトルの解重合および、例えばグルコースまたはコーンスターチの発酵からのバイオ系1,4−ブタンジオールから得てもよい。市販の再生PETプラスチックボトルの解重合産物源(Polylite、Reichhold Corporation)は、M約800のオリゴマーである。例示ジオールの1,4−ブタンジオール(BDO)は、生物琥珀から得られ、最終生成物の機械的性質を保つために異なる比率で添加されうる。
【0012】
実施形態では、1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位およびテレフタレートモノマー単位を含むポリエステル樹脂を含む3Dプリント用の組成物であって、前記ポリエステル樹脂が、粒径が約100ミクロンから約1000ミクロン、または約100ミクロンから約500ミクロンの範囲の粉体形状で提供される組成物が提供される。
【0013】
実施形態では、前記組成物は、本質的に前記ポリエステル樹脂からなる。実施形態では、前記組成物は複合体であり、さらにマトリクス材料を含み、ここでのポリエステル樹脂は、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、コポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、コポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)、ポリ(1,2−プロピレンテレフタレート)、コポリ(1,2−プロピレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)である。
【0014】
実施形態では、前記マトリクス材料は、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、コポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)−コポリ(1,2−エチレンテレフタレート)からなる群から選ばれる。
【0015】
実施形態では、前記BDOモノマー単位は、前記ポリエステルの約10から約40モル%の範囲の量で存在する。
【0016】
実施形態では、前記ジオールモノマー単位は、炭素数2から6の脂肪族ジオールである。実施形態では、前記BDOモノマー単位は、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、または1,6−ヘキサンジオール等の他のジオールモノマー単位と交換してもよい。実施形態では、BDOのかかる代替ジオールモノマー単位もまた、1,4−ブタンジオール(BDO)のようにバイオ由来であるように選択されうる。実施形態では、BDOを含む任意のジオール単位の炭素鎖は、場合により任意の炭素原子の位置で置換されていてよい。かかる任意の置換は、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、およびこれらの組合せを含みうる。
【0017】
実施形態では、前記テレフタレートモノマー単位は、ビスエステルとしてポリエステル樹脂に提供される。本明細書に開示のポリエステル樹脂での3Dプリントの際には、支持材料が提供されうる。この材料は、通常除去可能で、複雑な3次元物体を作製する際に一時的な支持体の役割をする。適切な支持材料は、当分野では周知である。例えば米国特許第8460451号明細書を参照されたい。
【0018】
この支持材料は、前記ポリエステル樹脂材料と同じまたは異なるプリントヘッドから供給されうる。この支持材料は、通常液体として供給され、典型的には常温で固体、高温の適用温度では液体の疎水性化学物質を含む。しかしながら、ポリエステル樹脂材料と異なり、完成した3次元部品を得るためにこの支持材料はのちに除去される。
【0019】
支持材料の除去は、支持材料をその融点を超える温度に加熱すると同時に、ポリエステル樹脂材料から支持材料を十分に取り除くために適切な有機担体を用いることを含む、いくつかの工程によってなされうる。
【0020】
実施形態では、3次元製品のプリント方法は、ポリエステル樹脂の層を本明細書に開示のように構築材料として選択的に配置して、基材上に3次元製品を形成することを含み、前記構築材料は場合により希釈剤を含んでいてもよい。実施形態では、3次元製品のプリント方法はさらに、構築材料の層の1以上を支持材料で支持することを含む。さらに、この構築材料および/または支持材料は、本明細書に記載の方法の実施形態では、3次元製品の像に従って選択的に配置されるとともに、この像はコンピュータ可読形式である。
【0021】
製造。例えば、前記テレフタレート基は、ビスメチルエステル、すなわち、テレフタル酸ジメチルでよい。他のビスエステルは、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジオクチル等が含まれうる。すなわち、テレフタル酸の任意のC−Cアルキルジエステルが、本明細書に開示のポリエステル樹脂を入手するための出発材料として採用されうる。実施形態では、前記テレフタレート基は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の再生プラスチックから供給される。再生PETを採用する場合、このプラスチックは、部分的または完全に解重合してもよい。特定の実施形態では、PETは有効平均分子量が約800まで、または約600から約1,000の範囲に解重合されうる。実施形態では、テレフタレート基の芳香環は、場合により任意の炭素原子において置換されていてもよい。かかる任意の置換は、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、およびこれらの組合せを含みうる。
【0022】
実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約10メガパスカルから約100メガパスカルの範囲の降伏応力を有する。
【0023】
実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約1%から約10%の範囲の降伏ひずみを有する。
【0024】
実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約0.5から約5ギガパスカルの範囲のヤング率を有する。
【0025】
実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約10%から約100%の範囲の破壊ひずみを有する。
【0026】
実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約10メガパスカルから約100メガパスカルの範囲の破壊応力を有する。
【0027】
実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約50℃から約80℃のガラス転移温度を有する。
【0028】
実施形態では、触媒の存在下、1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位および解重合されたポリエチレンテレフタレートを含む混合物を共重合することを含むポリエステル樹脂の製造方法であって、共重合が約150℃から約220℃の範囲の温度で行われ、さらに、約1mm−Hgから約30mm−Hg等の減圧下、余分なBDOモノマーを除去することを含む前記方法が提供される。
【0029】
実施形態では、前記触媒は、錫を主成分とする。かかる触媒は、錫(II)または錫(IV)の酸化状態を主成分としうる。実施形態では、前記錫を主成分とする触媒は、モノまたはジアルキル錫を主成分とする。モノアルキル錫類は、さらにオキシドおよび/またはヒドロキシド基を錫原子の位置で含んでよい。実施形態では、前記錫を主成分とする触媒は、FASCAT(登録商標)4100として市販の、モノブチル錫オキシド、モノブチル錫ヒドロキシドオキシド、およびブチルスタンノン酸の混合物を含む。エステル交換化学に用いられる他の錫を主成分とする触媒は、当分野で周知であり、その上、本明細書でポリエステル樹脂を製造するために使用できる、オクタブチルテトラチオシアナトスタノキサン等である。
【0030】
実施形態では、前記BDOモノマー単位は、前記混合物の約10モル%から約40モル%の範囲で存在する。
【0031】
実施形態では、前記解重合されたポリエチレンテレフタレートは、前記混合物の約60モル%から約90モル%の範囲で存在する。
【0032】
実施形態では、前記解重合されたポリエチレンテレフタレートは、再生ポリエチレンテレフタレート由来である。
【0033】
実施形態では、方法はさらにポリエステル樹脂をミルがけ(粉砕)して粉体にすることを含む。実施形態では、この粉体は、約100ミクロンから約300ミクロンの範囲の粒径を有する。
【0034】
実施形態では、1,4−ブタンジオール(BDO)モノマー単位を約10モル%から約40モル%およびテレフタレートモノマー単位を約60モル%から約90モル%含む、3Dプリント用のポリエステル樹脂を基材上に供給することを含む3Dプリント方法であって、前記ポリエステル樹脂は、場合により複合体としてマトリクス材料に配置されるとともに、前記ポリエステル樹脂またはその複合体を選択的レーザ焼結にかけて前記基材上に3D物体を形成することをさらに含む前記方法が提供される。実施形態では、前記マトリクス材料は、前記ポリエステル樹脂とともに3D物体の一部になる。実施形態では、前記ポリエステル樹脂は、約100ミクロンから約300ミクロンの範囲の粒径を有する粉体形状である。
【0035】
本明細書に開示のポリエステル樹脂での3Dプリントの際には、支持材料が提供されうる。この材料は、通常除去可能で、複雑な3次元物体を作製する際に一時的な支持体の役割をする。適切な支持材料は、当分野では周知である。例えば米国特許第8,460,451号明細書を参照されたい。
【0036】
この支持材料は、前記ポリエステル材料と同じまたは異なるプリントヘッドから供給されうる。この支持材料は、通常液体として供給され、典型的には常温で固体、高温の適用温度では液体の疎水性化学物質を含む。しかしながら、ポリエステル樹脂と異なり、完成した3次元製品を得るためこの支持材料はのちに除去される。
【0037】
前記支持材料の除去は、支持材料をその融点を超える温度に加熱すると同時に、ポリエステル樹脂材料から支持材料を十分に取り除くために適切な有機担体を用いることを含むいくつかの工程によってなされうる。
【0038】
実施形態では、3次元製品のプリント方法は、ポリエステル樹脂の層を本明細書に開示のように構築材料として選択的に配置して、基材上に3次元製品を形成することを含み、前記構築材料は場合により希釈剤を含んでいてもよいが、これはSLSプリント以外のプリントシステムに組み入れる目的でありうる。実施形態では、3次元製品のプリント方法はさらに、構築材料の層の1以上を支持材料で支持することを含む。さらに、この構築材料および/または支持材料は、本明細書に記載の方法の実施形態では、3次元製品の像に従って選択的に配置されるとともに、この像はコンピュータ可読形式である。
【0039】
以下、実施例を示して本開示の実施形態を説明する。これらの実施例は、例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。また、別段の指示がない限り、部および百分率は重量による。ここで、“室温”とは約20℃から約25℃の温度のことである。
【実施例1】
【0040】
本実施例は、本明細書に開示の実施形態に従う環境保全型ポリエステル樹脂の製造および特性評価を記載する。
【0041】
合成
試料1、90/10 PEBT:メカニカルスターラー、蒸留装置、および底部排水弁を備えた1Lのパーリアクター(Parr reactor)に、Reichhold製解重合再生PET604.73g、1,4−ブタンジオール28.42g、およびSn触媒Fascat 4100の2gを加えた。この混合物を窒素パージ(1scfh)下、160℃に熱し、その後3時間にわたりゆっくりと195℃まで上昇させ、さらにもう18時間維持して、1,4−ブタンジオールと解重合PETの間でエステル交換をさせた。この混合物を次に190℃から210℃に1時間かけて熱し、その後減圧して過剰のブタンジオールを除去し、重縮合させた。この混合物をその後、軟化点が175℃に達するまで減圧下215℃で熱した。
【0042】
試料2、80/20 PEBT:メカニカルスターラー、蒸留装置、および底部排水弁を備えた1Lのパーリアクター(Parr reactor)に、Reichhold製解重合再生PET604.18g、1,4−ブタンジオール56.80g、およびSn触媒Fascat 4100の2.01gを加えた。この混合物を窒素パージ(1scfh)下、160℃に熱し、その後3時間にわたりゆっくりと195℃まで上昇させ、さらにもう18時間維持して、1,4−ブタンジオールと解重合PETの間でエステル交換をさせた。この混合物を次に190℃から210℃に1時間かけて熱し、その後減圧して過剰のブタンジオールを除去し、重縮合させた。この混合物をその後、軟化点が173.4℃に達するまで減圧下250℃で熱した。
【0043】
試料3、70/30 PEBT:メカニカルスターラー、蒸留装置、および底部排水弁を備えた1Lのパーリアクター(Parr reactor)に、Reichhold製解重合再生PET580.01g、1,4−ブタンジオール81.96g、およびSn触媒Fascat 4100の2.01gを加えた。この混合物を窒素パージ(1scfh)下、160℃に熱し、その後3時間にわたりゆっくりと195℃まで上昇させ、さらにもう18時間維持して、1,4−ブタンジオールと解重合PETの間でエステル交換をさせた。この混合物を次に190℃から210℃に75分かけて熱し、その後減圧して過剰のブタンジオールを除去し、重縮合させた。この混合物をその後、軟化点が181.3℃に達するまで減圧下250℃で熱した。
【0044】
試料4、60/40 PEBT:メカニカルスターラー、蒸留装置、および底部排水弁を備えた1Lのパーリアクター(Parr reactor)に、Reichhold製解重合再生PET560.68g、1,4−ブタンジオール(BDO)105.97g、およびSn触媒Fascat 4100の2.01gを加えた。この混合物を窒素パージ(1scfh)下、160℃に熱し、その後3時間にわたりゆっくりと190℃まで上昇させ、さらにもう18時間維持して、1,4−ブタンジオールと解重合PETの間でエステル交換をさせた。この混合物を次に190℃から215℃に1.5時間かけて熱し、その後減圧して過剰のブタンジオールを除去し、重縮合させた。この混合物をその後、軟化点が193.7℃に達するまで減圧下、最終温度250℃に(で)熱した。
【0045】
図1。PEBT樹脂と市販の3D材料のレオロジーの比較。
【0046】
上図は、この材料が、反応温度約210℃から約220℃では、加圧下でフィラメント状に吐出するには十分な高さの、約100から300Pa・Sまたはそれ以上の粘度を有することを示す。
【0047】
以下の映像は、3D材料が合成された後、どのようにしてフィラメントが加圧下で押し出され、直接巻回されるかを示した。
【0048】
機械的性質
樹脂フィラメントは、メルトフローインデックス(MFI)機器を用いて、樹脂の試料を加熱したバレルで溶融し、一定の荷重下、特定の径のオリフィスを通して押し出すことによって製造した。この樹脂フィラメントの機械的性質は、インストロン引張試験システムを用いて測定し、市販のABSおよびPLAの3D材料と比較した。これらの結果は、市販の3D材料と同様のインストロンの結果を与える、比が60/40のPEBTが最も期待できる樹脂であることを示している。
【0049】
【表1】
【0050】
この表のデータは、比が60/40のPEBTが、降伏応力および破断ひずみの両方をABSおよびPLAのちょうど間に与えることを示す。
【0051】
PEBT樹脂の粉体製造
PET/BDO比が70/30のPEBT樹脂を粗粉砕機を用いて250ミクロン未満まで、その後ジェットミルで平均粒径約5ミクロンまで粉砕した。5ミクロンのものの粒径分布を以下に示す。

図1