特許第6795329号(P6795329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795329
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   A47J27/00 103P
   A47J27/00 109Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-96084(P2016-96084)
(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公開番号】特開2017-202148(P2017-202148A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2018年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100138874
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】坂口 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野間 雄太
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−075476(JP,A)
【文献】 特開平07−313371(JP,A)
【文献】 特開2011−104247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00−36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体と、
前記調理器本体に取り付けられており、前記調理器本体の開口部を覆った閉位置と、前記開口部を開放した開位置との間を回転可能な蓋体と、
複数の異なる速度で前記蓋体を回転駆動可能な駆動部と、
前記複数の異なる速度のうちの1つを選択するための設定部と、
前記設定部によって設定されている速度で前記駆動部を駆動させる制御部と、
前記駆動部によって前記蓋体を回転させるための操作部と、
前記蓋体の回転角度位置を検知する検知手段と
を備え、
前記操作部からの出力が、前記蓋体を開位置に向けて回転させることを示す場合、前記制御部は、前記駆動部によって前記蓋体を開位置へ向けて駆動させる定常処理を実行し、
前記駆動部の非駆動状態で、前記検知手段からの出力が、前記蓋体が開位置に向けて回転されていることを示している場合、前記制御部は、前記駆動部によって前記蓋体を開位置へ向けて駆動させるアシスト処理を実行する、調理器。
【請求項2】
前記検知手段からの出力が、前記蓋体が閉位置に向けて回転しながら閉位置側の第1所定角度範囲に入ったことを示している場合に、前記制御部は、前記駆動部の駆動速度を遅くする、請求項に記載の調理器。
【請求項3】
前記検知手段からの出力が、前記蓋体が開位置に向けて回転しながら開位置側の第2所定角度範囲に入ったことを示している場合に、前記制御部は、前記駆動部の駆動速度を遅くする、請求項1又は2に記載の調理器。
【請求項4】
調理器本体と、
前記調理器本体に取り付けられており、前記調理器本体の開口部を覆った閉位置と、前記開口部を開放した開位置との間を回転可能な蓋体と、
前記蓋体を開位置に向けて付勢するスプリングと、
前記蓋体を閉位置に向けて回転駆動可能な駆動部と、
前記蓋体の回転角度位置を検知する検知手段と、
前記駆動部を駆動させる制御部と
を備え、
前記検知手段からの出力が、前記蓋体が開位置に向けて回転しながら開位置側の所定角度範囲に入ったことを示している場合に、前記制御部は、前記駆動部を駆動させることで前記スプリングによる前記蓋体の回転速度を遅くする、調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、調理器本体に蓋体を回転可能に取り付けた調理器の一例として、炊飯器が知られている。特許文献1の炊飯器では、サーボモータによって調理器本体に対して蓋体を自動的で閉じることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓋体の回転速度が速い場合、ユーザは焦りや驚きを感じる一方、蓋体の回転速度が遅い場合、ユーザは苛立ちを感じる。特許文献1の炊飯器では、このようなユーザの好みについて何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、調理器本体に対する蓋体の回転駆動を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の調理器は、調理器本体と、調理器本体に取り付けられており、調理器本体の開口部を覆った閉位置と、調理器本体の開口部を開放した開位置との間を回転可能な蓋体と、複数の異なる速度で蓋体を回転駆動可能な駆動部と、前記複数の異なる速度のうちの1つを選択するための設定部と、設定部によって設定されている速度で駆動部を駆動させる制御部とを備えている。
【0007】
この調理器によれば、駆動部によって蓋体を複数の異なる速度で回転駆動でき、そのうち1つの回転速度を設定部によって選択できる。よって、ユーザの好みに応じた蓋体の回転駆動を実現できる。
【0008】
この調理器では、蓋体の回転角度位置を検知する検知手段を更に備えるようにしてもよい。この場合、以下に記載する少なくとも1つの態様とすることが好ましい。
【0009】
第1の態様では、検知手段からの出力が、蓋体が閉位置に向けて回転されていることを示している場合に、制御部は、駆動部によって蓋体を閉位置へ向けて駆動させるアシスト機能を実行する。この態様によれば、駆動部がない従来の調理器と同様に蓋体をユーザが操作することで、引き続いて駆動部によって蓋体が自動で閉じる。よって、蓋体を閉じるための操作に関して、ユーザが違和感を覚えることはない。
【0010】
第2の態様では、検知手段からの出力が、蓋体が開位置に向けて回転されていることを示している場合に、制御部は、駆動部によって蓋体を開位置へ向けて駆動させるアシスト機能を実行する。この態様によれば、開位置に向けて蓋体をユーザが回転させることで、引き続いて駆動によって蓋体が自動で開く。よって、調理器の使用性を向上できる。
【0011】
第1及び第2の態様の場合、アシスト機能をオン状態又はオフ状態に切り換えるための切換部を備えるようにしてもよい。この態様によれば、アシスト機能を好むユーザと嫌うユーザの両者が、希望に応じて蓋体の開閉方法を選択できるため、理想的な蓋体の開閉駆動を実現できる。
【0012】
第3の態様では、検知手段からの出力が、蓋体が閉位置に向けて回転しながら閉位置側の第1所定角度範囲に入ったことを示している場合に、制御部は、駆動部の駆動速度を遅くする。この態様によれば、蓋体を閉じる際に、閉位置まで回転した蓋体が調理器本体に衝突することによる衝撃を低減できる。そのため、蓋体及び調理器本体の破損を防止できる。
【0013】
第4の態様では、検知手段からの出力が、蓋体が開位置に向けて回転しながら開位置側の第2所定角度範囲に入ったことを示している場合に、制御部は、駆動部の駆動速度を遅くする。この態様によれば、蓋体を開く際に、開位置まで回転した蓋体が調理器本体に衝突することによる衝撃を低減できる。そのため、蓋体及び調理器本体の破損を防止できる。
【0014】
ここで、駆動部がない従来の調理器では、スプリングによって開位置に向けて蓋体を回転させていた。この場合、蓋体にはスプリングによる付勢力と慣性力とが作用するため、蓋体を開位置で停止させるためのストッパには大きな衝撃が加わっていた。この衝撃を緩和するために、蓋体及び調理器本体には複雑なダンパー構造を設ける必要があるため、調理器の製造コストが高くなっていた。そのため、スプリングによって蓋体を開き、駆動部によって蓋体を閉じる調理器においては、以下の第5の態様とする。
【0015】
第5の態様の調理器は、調理器本体と、調理器本体に取り付けられており、調理器本体の開口部を覆った閉位置と、調理器本体の開口部を開放した開位置との間を回転可能な蓋体と、蓋体を開位置に向けて付勢するスプリングと、蓋体を閉位置に向けて回転駆動可能な駆動部と、蓋体の回転角度位置を検知する検知手段と、駆動部を駆動させる制御部とを備えている。そして、検知手段からの出力が、蓋体が開位置に向けて回転しながら開位置側の所定角度範囲に入ったことを示している場合に、制御部は、駆動部を駆動させることでスプリングによる蓋体の回転速度を遅くする。
【0016】
第5の態様によれば、スプリングの付勢力で蓋体を開く際に、開位置側の所定角度範囲に蓋体が入ると、駆動部によって蓋体の回転速度を遅くするため、蓋体が開位置に停止する際の衝撃を緩和できる。よって、蓋体及び調理器本体のダンパー構造は不要であるため、調理器の製造コストが高くなることを抑制できる。また、蓋体を閉じる際には、駆動部によって自動で閉じることができるため、調理器の使用性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の炊飯器を示す部分断面図。
図2】炊飯鍋を外した状態を示す斜視図。
図3】炊飯器のヒンジ接続部分を示す斜視図。
図4】操作パネルを示す正面図。
図5】第2実施形態の炊飯器を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本実施形態に係る調理器の一例である炊飯器10を示す。この炊飯器10は、炊飯器本体14と、炊飯器本体14に回転可能に取り付けられている蓋体25とを備えている。炊飯器本体14には、複数の異なる速度で蓋体25を回転駆動させるための駆動部として、駆動装置45が搭載されている。本実施形態では、速度変更スイッチ36によって、駆動装置45による蓋体25の回転速度を変更可能とし、また蓋体25の開閉操作方法も改善することで、最適な蓋体25の開閉駆動を実現する。
【0020】
(炊飯器の全体構成)
図1及び図2に示すように、炊飯器本体14には、有底筒状の炊飯鍋12を取外し可能に収容する収容部15が形成されている。この収容部15の底側外面には、炊飯鍋12を加熱する加熱部としてコイル22が配置されている。図3を併せて参照すると、炊飯器本体14の背面側には、蓋体25を取り付けるためのヒンジ接続部17が形成されている。
【0021】
蓋体25は、ヒンジ接続部17の支軸18を中心として、図1に実線で示す閉位置と、図1に一点鎖線で示す開位置との間を回転可能である。蓋体25は、閉位置では収容部15の上端の開口部16を覆い、開位置では収容部15の開口部16を開放する。
【0022】
蓋体25の上面には、炊飯器10を操作するための操作パネル30が設けられている。図4を参照すると、操作パネル30は、液晶パネル31と、液晶パネル31の周囲に配置されている複数のスイッチ32とを備えている。液晶パネル31は、マイコン42と電気的に接続されており、炊飯器10の動作状態、及びユーザによる炊飯モードの選択状態(設定状態)等を表示する。複数のスイッチ32はそれぞれ、マイコン42に対して信号を送信可能に接続されている。複数のスイッチ32には、炊飯処理を実行させるための炊飯スイッチ32aが含まれている。
【0023】
この炊飯器10を使用する際にユーザは、希望量の飯米と、飯米量に応じて予め設定された量の水を、炊飯鍋12内に収容させる。この炊飯鍋12を収容部15内に配置して炊飯スイッチ32aを操作すると、制御部であるマイコン42は、予め定めたプログラムに従って炊飯処理を実行する。この炊飯処理では、マイコン42は、温度センサ23の検出値に基づいてコイル22を制御する。これにより、コイル22によって炊飯鍋12が誘導加熱され、炊飯鍋12内で米飯が炊き上げられる。
【0024】
(蓋体の駆動機構の詳細)
本実施形態では、炊飯器10の使用性を向上するために、炊飯器本体14に対して蓋体25を自動開閉できるようにしている。具体的には、炊飯器本体14のヒンジ接続部17の下部には、蓋体25を回転駆動させるための駆動装置45が配置されている。また、蓋体25には、駆動装置45を駆動させるための操作部として、閉スイッチ48と開スイッチ49とが配置されている。さらに、炊飯器本体14には、炊飯器本体14に対する蓋体25の回転角度位置を検知するための検知手段として角度センサ46が配置されている。
【0025】
駆動装置45は、制御部としての機能を兼ねるマイコン42に電気的に接続されている。この駆動装置45は、正転及び逆転が可能な直流電動モータと、複数の歯車によって構成されている。駆動装置45は、支軸18を直接回転駆動することで、この支軸18を介して蓋体25を回転させる。マイコン42が駆動装置45の電動モータを正転させると、蓋体25は、炊飯器本体14に対して閉位置に向けて回転される。マイコン42が駆動装置45の電動モータを逆転させると、蓋体25は、炊飯器本体14に対して開位置に向けて回転される。以下では、駆動装置45が閉位置に向けて蓋体25を回転させる作動を閉駆動といい、駆動装置45が開位置に向けて蓋体25を回転させる作動を開駆動という。
【0026】
閉スイッチ48は、蓋体25を閉駆動させるための閉操作部であり、蓋体25の前側端部に配置されている。開スイッチ49は、蓋体25を開駆動させるための開操作部であり、蓋体25の開放操作部材27の下部に配置されている。図1において開放操作部材27を下向きに操作すると、開スイッチ49が操作されるとともに、図2に示すロック部材28が連動して回転される。また、ロック部材28の回転によって、ロック部材28と炊飯器本体14のロック穴20との係合が解除され、蓋体25が開位置に向けて回転可能になる。
【0027】
閉スイッチ48、及び開スイッチ49は、マイコン42に対して信号を送信可能に接続されている。これらのスイッチ48,49は、操作された状態ではオン信号を出力し、操作されない状態ではオン信号を出力しないものである。このようなスイッチ48,49としては、磁気スイッチやプッシュスイッチを用いることができる。閉スイッチ48がオン信号を出力すると、このオン信号が蓋体25の閉駆動信号としてマイコン42に入力される。開スイッチ49がオン信号を出力すると、このオン信号が蓋体25の開駆動信号としてマイコン42に入力される。なお、スイッチ48,49がオン信号を出力しない状態では、マイコン42にはオフ信号が入力される。
【0028】
角度センサ46は、マイコン42に対して信号を送信可能に接続されている。この角度センサ46としては、駆動装置45の電動モータとしてサーボモータを用いる場合には、サーボモータの回転軸の回転角度(回転数)を検知するエンコーダを用いることができる。また、他の電動モータを用いる場合には、ポテンショメータ等を用いることができる。マイコン42が内蔵している記憶部(メモリ)43には、駆動装置45の歯車のギア比に基づいた係数が予め記憶されている。マイコン42は、角度センサ46から入力された回転角度と係数によって、蓋体25の回転角度、及び回転角度位置を特定できる。
【0029】
この炊飯器10では、蓋体25が開位置に位置する状態で、閉スイッチ48が操作されると、閉スイッチ48が閉駆動信号を出力する。すると、マイコン42は、蓋体25が閉駆動するように、駆動装置45に駆動電流を通電させる。これにより蓋体25は閉位置に向けて回転する。蓋体25の閉駆動中には、角度センサ46は、蓋体25の回転角度を示す信号を出力する。そして、マイコン42は、入力された回転角度信号によって蓋体25が閉位置に至ったと判断すると、駆動装置45の閉駆動を停止させることで、蓋体25の回転を停止する。
【0030】
また、蓋体25が閉位置に位置する状態で、開スイッチ49が操作されると、開スイッチ49が開駆動信号を出力する。すると、マイコン42は、蓋体25が開位置に向けて回転駆動するように、駆動装置45に駆動電流を通電させる。これにより蓋体25は開位置に向けて回転する。閉駆動時と同様に、蓋体25の開駆動中には、角度センサ46は、蓋体25の回転角度位置を示す信号を出力する。そして、マイコン42は、入力された回転角度信号によって、蓋体25が開位置に至ったと判断すると、駆動装置45の駆動を停止させることで、蓋体25の回転を停止する。
【0031】
(蓋体の回転駆動制御の詳細)
このようにした炊飯器10では、スイッチ48,49の操作により蓋体25を自動開閉することが可能なため、ユーザの利便性を向上できる。しかし、蓋体25の回転速度の好みは、ユーザによって異なる。そこで、本実施形態では、蓋体25の回転速度をユーザが選択できるようにしている。また、ユーザによる使用性を更に向上するために、ユーザが蓋体25を直接開閉操作したことを角度センサ46で検知した場合に、駆動装置45が蓋体25を回転駆動するアシスト機能を設けている。
【0032】
詳しくは、図4に示すように、操作パネル30には、液晶パネル31の下部に蓋体駆動設定部35が設けられている。この蓋体駆動設定部35には、速度変更スイッチ36、及びアシストスイッチ37が設けられている。速度変更スイッチ36は、複数の異なる速度(本実施形態では「遅め」と「速め」の2種)のうちの1つを選択するための設定部である。アシストスイッチ37は、アシスト機能をオン状態又はオフ状態に切り換えるための切換部である。
【0033】
速度変更スイッチ36とアシストスイッチ37との間には、ユーザによる選択状態を表示するための表示部38が設けられている。この表示部38には、「遅め」の選択状態を示すLED39aと、「速め」の選択状態を示すLED39bとが設けられている。これらLED39a,39bの表示(選択)状態は、速度変更スイッチ36の操作の度に切り換わる。また、LED39a,39bの横には、「アシストON」の選択状態を示すLED40aと、「アシストOFF」の選択状態を示すLED40bとが設けられている。これらLED40a,40bの表示(選択)状態は、アシストスイッチ37の操作の度に切り換わる。
【0034】
図1に示すように、マイコン42は、閉駆動信号又は開駆動信号が入力されると、速度変更スイッチ36によって設定されている速度で駆動装置45を駆動させる。例えば、第1設定速度の「遅め」に設定されている場合、マイコン42は、駆動装置45の電動モータに第1の設定電圧V1を印加させる。また、第1設定速度よりも速い第2設定速度の「速め」に設定されている場合、マイコン42は、駆動装置45の電動モータに、第1の設定電圧V1よりも高圧の第2の設定電圧V2を印加させる。すると駆動装置45では、「遅め」の設定の場合には「速め」の設定よりも遅い駆動速度で電動モータが回転され、「速め」の設定の場合には「遅め」の設定よりも速い駆動速度で電動モータが回転される。その結果、「遅め」の設定の場合と「速め」の設定の場合とで、炊飯器本体14に対して蓋体25が異なる回転速度で回転する。
【0035】
このように、本実施形態の炊飯器10では、速度変更スイッチ36の操作により設定を変更することで、蓋体25の回転速度を変更できる。よって、速い回転速度を好むユーザは、「速め」を選択することにより苛立ちを感じることはない。一方、遅い回転速度を好むユーザは、「遅め」を選択することにより焦りや驚きを感じることはない。よって、ユーザの好みに応じた蓋体25の開閉駆動を実現できる。
【0036】
(アシスト機能)
角度センサ46は、マイコン42が蓋体25の閉駆動及び開駆動のいずれも実行していない状態でも、蓋体25の回転角度を示す信号を所定時間(例えば0.5秒)毎に出力する。このときのマイコン42は、蓋体25が停止している状態、蓋体25が閉位置に向けて回転されている状態、及び蓋体25が開位置に向けて回転されている状態のいずれであるか判断する判断部として機能する。
【0037】
判断部としてのマイコン42は、角度センサ46から入力された蓋体25の複数の回転角度信号に基づいて、蓋体25が回転されたか否かを判断する。例えば、マイコン42は、第1入力信号に基づいた蓋体25の回転角度位置D1と、次に入力された第2入力信号に基づいた蓋体25の回転角度位置D2とを比較する。これらの回転角度位置D1,D2の差が、予め定めた許容誤差範囲AE内である場合、マイコン42は蓋体25が停止していると判断する。一方、回転角度位置D1,D2の差が許容誤差範囲AEを超えて異なる場合、マイコン42は蓋体25が回転したと判断する。この回転判断が例えば3回(1.5秒)以上継続すると、マイコン42は蓋体25がユーザによって操作されていると判断する。なお、マイコン42は、第1の回転角度位置D1から第2の回転角度位置D2を減算した差が、正数であるか負数であるかによって、蓋体25が閉位置及び開位置のいずれに向けて回転しているのかを判断できる。
【0038】
入力された蓋体25の回転角度信号Dが、蓋体25が閉位置に向けて回転していることを示す場合、マイコン42は、駆動装置45を閉駆動させることで、蓋体25を閉位置に向けて回転させる。一方、入力された蓋体25の回転角度信号Dが、蓋体25が開位置に向けて回転していることを示す場合、マイコン42は、駆動装置45を開駆動させることで、蓋体25を開位置に向けて回転させる。なお、蓋体25の回転速度は、「遅め」及び「速め」のうちの設定されている速さである。
【0039】
このように、本実施形態では、スイッチ48,49の操作だけでなく、ユーザが蓋体25を直接回転させることで、引き続いてマイコン42が蓋体25を設定速度で回転させる。よって、炊飯器10の使用性を向上できる。また、駆動装置がない従来の炊飯器と同じように蓋体25を閉操作すれば、アシスト機能により蓋体25を閉駆動できるため、ユーザは違和感なく使用できる。しかも、アシストスイッチ37の操作により、アシスト機能をオン状態とオフ状態に切り換えることができる。よって、アシスト機能を好むユーザと嫌うユーザの両者が、希望に応じてアシスト機能の有無を選択することで、理想的な蓋体25の開閉駆動を実現できる。
【0040】
(蓋体の回転速度の低減)
駆動装置45によって蓋体25を回転駆動させると、蓋体25には慣性力が作用する。よって、第1設定速度(遅め)で蓋体25を閉位置まで回転させると、慣性力によって蓋体25が炊飯器本体14の上面に激しく衝突する。また、蓋体25を開位置まで回転させると、慣性力によって蓋体25が炊飯器本体14のストッパ19(図3参照)に激しく衝突する。このときの衝撃は、第2設定速度(速め)で蓋体25を回転させると更に大きくなる。すると、炊飯器本体14及び蓋体25のうち、一方又は両方が破損することがある。そこで、本実施形態では、蓋体25の回転速度を、閉位置近傍で遅くするとともに、開位置近傍で遅くするようにしている。
【0041】
詳しくは、図1に示すように、マイコン42の記憶部43には、蓋体25の回転速度を遅くする閉側減速範囲R1と開側減速範囲R2とが記憶されている。閉側減速範囲R1は、蓋体25の回転範囲Rにおける閉位置側の第1所定角度範囲であり、閉側減速角度位置P1から閉位置までの領域に定められている。開側減速範囲R2は、蓋体25の回転範囲Rにおける開位置側の第2所定角度範囲であり、開側減速角度位置P2から開位置までの領域に定められている。
【0042】
減速角度位置P1,P2は、第2設定速度(速め)から第3設定速度まで、慣性力に抗して蓋体25を減速できる距離に基づいて定められている。なお、第3設定速度は、第1設定速度(遅め)よりも低速に設定されている。ここで、減速範囲R1,R2を広くすれば、蓋体25の回転速度を第3設定速度まで確実に低減できるが、蓋体25の開閉に必要な総駆動時間が長くなるため、ユーザに苛立ちを感じさせる可能性がある。よって、本実施形態では、減速中の蓋体25が閉位置又は開位置に概ね到達した状態で、蓋体25の回転速度が第3設定速度になるように、減速範囲R1,R2が設定されている。
【0043】
蓋体25の回転駆動中にマイコン42は、角度センサ46から入力された蓋体25の回転角度信号Dに基づいて、蓋体25が閉側減速範囲R1又は開側減速範囲R2に入ったか否かを判断する判断部として機能する。
【0044】
詳しくは、閉スイッチ48が操作又は蓋体25が閉操作されると、マイコン42は、駆動装置45によって、設定されている一定の回転速度で蓋体25を閉駆動させる。ついで、マイコン42は、入力された回転角度信号Dによって、蓋体25が閉側減速範囲R1に入ったか否かを判断する。そして、入力された回転角度信号Dが閉側減速範囲R1に入たことを示すと、マイコン42は、駆動装置45によって蓋体25の回転速度を第3設定速度まで遅くする。また、入力された回転角度信号Dが閉位置に至ったことを示すと、マイコン42は、駆動装置45を停止させることで、蓋体25の回転を停止する。
【0045】
また、開スイッチ49が操作又は蓋体25が開操作されると、マイコン42は、駆動装置45によって、設定されている一定の回転速度で蓋体25を開駆動させる。ついで、マイコン42は、角度センサ46からの入力によって、蓋体25が開側減速範囲R2に入ったか否かを判断する。そして、入力された回転角度信号Dが開側減速範囲R2に入たことを示すと、マイコン42は、駆動装置45によって蓋体25の回転速度を第3設定速度まで遅くする。また、入力された回転角度信号Dが開位置に至ったことを示すと、マイコン42は、駆動装置45を停止させることで、蓋体25の回転を停止する。
【0046】
このように、本実施形態の炊飯器10では、蓋体25が閉側減速範囲R1まで回転すると、蓋体25の閉駆動速度が遅くなる。また、蓋体25が開側減速範囲R2まで回転すると、蓋体25の開駆動速度が遅くなる。よって、蓋体25が閉位置及び開位置に回転した時点の慣性力を低減できる。そのため、蓋体25の閉駆動時には、蓋体25が炊飯器本体14の上面に衝突することによる衝撃を低減でき、蓋体25の開駆動時には、蓋体25が炊飯器本体14のストッパ19に衝突することによる衝撃を低減できる。そのため、蓋体25及び炊飯器本体14の破損を防止できる。
【0047】
また、蓋体25の閉駆動時において、ロック部材28をロック穴20に係止する直前は、通常の蓋体25の回転時よりも駆動トルクを必要とする。そこで、マイコン42が駆動装置45に印加する電圧を上げることで、駆動装置45の駆動トルクを上げる。これにより、理想的な蓋体25の開閉駆動を実現できる。
【0048】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態の炊飯器10を示す。この第2実施形態の炊飯器10は、蓋体25を開位置に向けて回転させるためのスプリング50を備えている。スプリング50は、駆動装置45の両側に位置するように一対配置されている。また、第2実施形態の駆動装置45は、スプリング50の付勢力に抗して、蓋体25を閉位置に向けて回転させるものである。なお、駆動装置45は蓋体25を開位置に向けて回転させないため、第2実施形態の炊飯器10には、第1実施形態に示す開スイッチは配置されていない。
【0049】
ここで、スプリング50によって蓋体25を開駆動すると、蓋体25にはスプリング50の付勢力と慣性力とが作用するため、蓋体25が開位置まで回転したときに、図3に示すストッパ19には大きな衝撃が加わる。従来の炊飯器では、この衝撃を緩和するために、蓋体及び炊飯器本体に複雑なダンパー構造を設けていたため、炊飯器の製造コストが高くなっていた。そこで、スプリング50による蓋体25の開作動時には、マイコン42によって駆動装置45を駆動させ、蓋体25が閉方向に回転する力を加えることで、ストッパ19に加わる衝撃を緩和できるようにしている。
【0050】
詳しくは、第2実施形態のマイコン42の記憶部43には、第1実施形態と同様に、蓋体25の回転速度を遅くする閉側減速範囲R1と開側減速範囲R2とが記憶されている。閉側減速範囲R1は、第1実施形態よりも狭い領域に定められている。これは、閉駆動された蓋体25には、スプリング50によって閉駆動方向とは逆向きの付勢力が作用するため、蓋体25の回転速度を第3設定速度まで低減し易いためである。開側減速範囲R2は、駆動装置45を駆動させることで生じる負荷によって、スプリング50による蓋体25の回転速度を第3設定速度まで低減できる距離に基づいて定められている。なお、開側減速範囲R2は、蓋体25にスプリング50の付勢力と蓋体25自身の慣性力が作用するため、第1実施形態よりも広い領域に定められている。
【0051】
また、マイコン42は、アシスト機能の場合と同様に、蓋体25が開操作されたか否かを判断する判断部として機能する。また、スプリング50による蓋体25の開駆動時にマイコン42は、蓋体25が開側減速範囲R2に入ったか否かを判断する判断部として機能する。詳しくは、マイコン42は、角度センサ46から入力された複数の回転角度信号Dによって、蓋体25が開駆動されたことを判断する。その後、マイコン42は、角度センサ46からの入力によって、蓋体25が開側減速範囲R2に入ったか否かを判断する。そして、入力された回転角度信号Dが開側減速範囲R2に入たことを示すと、マイコン42は、蓋体25を閉駆動する際の電圧V3よりも低い電圧V4で駆動装置45を駆動させる。これにより蓋体25は、閉位置に向けて回転することはなく、開位置に向けた回転速度が第3設定速度まで遅くなる。また、入力された回転角度信号Dが開位置に至ったことを示すと、マイコン42は、駆動装置45を停止させる。なお、蓋体25の閉駆動は、第1実施形態と同様である。
【0052】
このように、第2実施形態の炊飯器10では、搭載した駆動装置45によって、蓋体25を自動で閉じることができるため、ユーザの利便性を向上できる。また、スプリング50の付勢力で蓋体25を開く際には、駆動装置45を駆動することで蓋体25の回転速度を遅くするため、蓋体25が開位置に停止する際の衝撃を緩和できる。よって、蓋体25及び炊飯器本体14には、従来の炊飯器のようなダンパー構造を形成する必要はない。その結果、炊飯器10の製造コストが高くなることを抑制できる。
【0053】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、蓋体25は、駆動装置45によって3以上の異なる速度で回転させてもよい。また、蓋体25の回転速度の設定と、アシスト機能のオン状態とオフ状態の切り換えとは、1つのスイッチで行えるようにしてもよい。また、閉側減速範囲R1及び開側減速範囲R2以外の部分では、蓋体25の各速度は、蓋体25の回転角度位置によって異なるようにしてもよい。
【0055】
また、蓋体25の回転角度位置を検知する検知手段としては、所定の回転角度を検出可能なフォトインタラプタを用いてもよい。この場合、2以上のフォトインタラプタを用いることで、これらの検知順番によってマイコン42は、蓋体25が開位置及び閉位置のいずれに向けて回転されているのかを判断できる。また、マイコン42は、駆動装置45の駆動速度と駆動時間によって蓋体25の回転角度を判断できるため、このマイコン42を蓋体25の回転角度位置を検知する検知手段として用いてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、本発明の調理器として炊飯器を例に挙げて説明したが、駆動部によって複数の異なる速度で蓋体を回転駆動可能とし、複数の異なる速度のうちの1つを設定部で選択するという構成は、所定の食材を調理する加熱調理器にも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…炊飯器(調理器)
12…炊飯鍋(鍋)
14…炊飯器本体(調理器本体)
15…収容部
16…開口部
17…ヒンジ接続部
18…支軸
19…ストッパ
20…ロック穴
22…コイル
23…温度センサ
25…蓋体
27…開放操作部材
28…ロック部材
30…操作パネル
31…液晶パネル
32…スイッチ
32a…炊飯スイッチ
35…蓋体駆動設定部
36…速度変更スイッチ(設定部)
37…アシストスイッチ(切換部)
38…表示部
39a,39b…LED
40a,40b…LED
42…マイコン(制御部)
43…記憶部
45…駆動装置(駆動部)
46…角度センサ(検知手段)
48…閉スイッチ(操作部)
49…開スイッチ(操作部)
50…スプリング
図1
図2
図3
図4
図5