(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、企業が自主的に開示した環境関連データについては、算出根拠が不明であり検証することが困難であるなどの課題が指摘されている。その原因として挙げられるのが、バウンダリ、換算レート、購買量と使用量の違い等について、企業が明確に意識して集計していないことなどが考えられる。
【0006】
このような背景の元、企業が自主的に開示した環境関連データを第三者機関が保証する保証制度も存在する。この保証制度に基づいて第三者機関で保証を受けるためには、企業が開示するデータがGHG(Green House Gas:温室効果ガス)プロトコルなどの国際的なガイドラインに従っていることを第三者に対して容易に説明できるようにデータを整理しておくことが望ましい。
【0007】
また、環境関連データの開示を要求する団体及び行政機関が複数あり、各団体及び行政機関が定める報告書で要求される環境関連データの項目もさまざまである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、全社の環境関連データを、容易に検証できるように保持することである。
【0009】
本発明の別の目的は、報告書ごとにそれぞれ必要とされるデータ項目を容易にピックアップして、容易に各報告書の編集を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの実施態様に従うデータ管理システムは、複数の拠点について、拠点ごとに環境関連の複数のデータ項目を有する拠点データを取得する手段と、前記複数の拠点の拠点データを、前記複数のデータ項目別、かつ、所定のバウンダリ単位に集計して、全社の環境データテーブルを生成する手段と、複数の環境関連データの報告書について、各報告書で必要とされるデータ項目を有する報告書データを記憶する手段と、前記報告書データに基づいて、第1の報告書に必要なバウンダリの、必要なデータ項目のデータを前記環境データテーブルから抽出する手段と、を備える。
【0011】
好適な実施態様では、前記報告書分析データにおいて前記複数の環境関連データの報告書で必要とされるデータ項目を含むように、前記環境データテーブルのデータ項目を決定する手段をさらに備えてもよい。
【0012】
好適な実施態様では、前記抽出する手段で抽出されたデータを用いて、第1の報告書を生成する手段をさらに備えてもよい。
【0013】
本発明の別の一つの実施態様に従う、複数のデータ項目からなる企業が開示する環境関連データを有するマスタデータテーブルは、データ収集単位である拠点ごとの前記データ項目別のデータを、前記拠点ごとに並べた行または列と、前記拠点ごとの前記データ項目別のデータに基づいて、所定のバウンダリ単位に集計した前記データ項目別の集計データを、前記拠点ごとに並べた前記データ項目別のデータと平行に、前記バウンダリごとに並べた行または列と、を有する。そして、前記拠点ごとのデータの第1のデータ項目と、前記バウンダリごとのデータの第1のデータ項目とが同一の列または行に配置されている。
【0014】
好適な実施態様では、前記複数のデータ項目には、入力エネルギー資源として電気量に係る項目と、出力として前記電気量に基づく温暖効果ガス排出量に係る項目と、を含んでもよい。さらに、前記環境マスタデータテーブルは、所定の変換係数を用いて前記電気量に係る項目のデータを前記温暖効果ガス排出量に係る項目のデータに変換する手段を、有してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る環境データ管理システムについて、図面を参照して説明する。本システムは、企業が開示する環境関連データを管理する。本実施形態では、複数の拠点を有する企業が、拠点単位に把握したエネルギー及び物質等の入出力に係るデータを、全社で統合的に管理するシステムについて説明する。
【0017】
図1は、環境データ管理システム1の機能構成図を示す。
【0018】
環境データ管理システム1は、例えば、プロセッサ及びメモリ等を備える汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する環境データ管理システム1の構成要素または機能は、例えば、所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0019】
環境データ管理システム1は、複数の拠点テーブル20と、環境データマスタ30と、報告書作成部40と、報告書分析テーブル50とを有する。
【0020】
拠点テーブル20は、拠点単位のテーブルであって、各拠点の環境関連データを有する。本実施形態では、環境データ管理システム1が、複数の拠点でそれぞれ生成された拠点テーブル20を、各拠点システム5から収集するようにしてもよい。
【0021】
図2は、拠点テーブル20の一例を示す。
【0022】
拠点テーブル20は、複数のデータ項目210について、月別のデータ列220を有する。拠点テーブル20は、月別のデータを年単位で集計した合計列230をさらに有してもよい。
【0023】
データ項目210では、複数の項目が階層化されている。例えば、データ項目210は、入力に関する項目として、エネルギー資源及び熱量換算等を有する。エネルギー資源は、さらに、電気量、燃料、蒸気・温水・冷水等の複数のエネルギータイプに分かれている。ここでは、エネルギータイプを分類211としている。出力に関するデータ項目は、産業廃棄物、事業用排水、GHG(Green House Gas)排出量(スコープ1及びスコープ2)などに分類されている。
【0024】
データ項目210の分類211は、さらに、小分類212に分かれていても良い。例えば、電気量は、総量、昼間電力及び夜間電力等の小分類に分かれていても良い。
【0025】
拠点テーブル20は、データ項目210の属性を示す属性領域215をさらに有していても良い。属性領域215には、例えば、専有部または共有部の区別、データの測定種類及び単位を有していても良い。
【0026】
なお、拠点テーブル20のデータ項目210は、後述するように、環境データマスタ30のデータ項目に対応するように定められてもよい。
【0027】
図1に戻ると、環境データマスタ30は、各拠点から収集した環境関連データに基づいて生成されるマスタデータである。本実施形態では、データマスタ生成手段が、複数の拠点テーブル20のデータを環境データマスタ30の所定のフォーマットに挿入して、環境データマスタ30を生成するようにしても良い。
【0028】
図3は、環境データマスタ30の構造の一例を示す。
【0029】
本実施形態では、環境データマスタ30は複数のシートを有する表計算ソフトで実現されていてもよい。例えば、環境データマスタ30は、メインシート310と、複数の個別シート320と、換算レートシート330と、拠点テーブルシート340とを有する。
【0030】
メインシート310は、全社の環境関連データを統合したシートである。本実施形態では、複数の個別シート320に登録された年間の合計値がメインシート310にコピーされる。
【0031】
複数の個別シート320は、所定のデータ項目ごとに生成される。例えば、個別シート320は、電気量、灯油、都市ガス等の分類ごとに一つのシートになっていてもよい。個別シート320は、分類単位で全拠点の拠点テーブル20のデータを集約したシートでよい。
【0032】
図4にメインシート310、
図5に個別シート320の一例をそれぞれ示す。
【0033】
図5は、電気量の個別シート320を示す。
【0034】
個別シート320は、行及び列のマトリックスである。横方向の行は、拠点別のデータ行3210及び所定の単位で集計された集計行3220を有する。縦方向の列は、拠点属性列3230と、分類属性列3240と、月別データ列3250と、年間合計列3260とを有する。
【0035】
拠点別のデータ行3210には、拠点別の電気量のデータ(月別値及び年間合計値)が一列に並んでいる。集計行3220には、所定の集計単位に、電気量のデータ(月別値及び年間合計値)が一列に並んでいる。集計する単位は、例えば、会社全体、国内拠点、海外拠点、工場、オフィスビル等のバウンダリ単位でよい。
【0036】
拠点属性列3230には、各拠点の属性情報が入力される。各拠点の属性情報は、拠点テーブルシート340から取得してもよい。拠点属性列3230に含まれる種別3231は、集計単位を示す。集計単位は、例えば、海外拠点(OS)、オフィス(OF)、工場(F)などでよい。
【0037】
分類属性列3240は、月別データ列3250及び年間合計列3260に設定されるデータの属性を示す。
【0038】
月別データ列3250と拠点別のデータ行3210との交点には、各拠点の月別データが設定される。月別データ列3250と集計行3220との交点には、所定の単位で集計されたデータが設定される。
【0039】
年間合計列3260には、同一行の月別データの合計値が設定される。
【0040】
図4を参照すると、メインシート310は、行及び列のマトリックスである。横方向の行は、拠点別のデータ行3110及び所定の単位で集計された集計行3120を有する。縦方向の列は、拠点属性列3130と、複数の項目別データ列3140とを有する。
【0041】
拠点別のデータ行3110には、拠点別の各項目のデータ(年間合計値)が一列に並んでいる。
【0042】
集計行3120には、所定のバウンダリなどの集計単位に、各項目のデータ(年間合計値)が一列に並んでいる。集計単位の定め方は、例えば、個別シート320と同じで良い。集計行3120は、バウンダリごとに拠点別のデータ行3110と平行に並んでいる。従って、集計行3120と拠点別のデータ行3110との対応関係が明確であるので、集計行3120のデータを検証する場合も容易に行うことができる。
【0043】
拠点属性列3130には、拠点テーブルシート340から各拠点の属性情報が挿入されても良い。拠点属性列3130に含まれる種別3131は、集計単位を示してもよい。同図の例では、海外拠点には「OS」、オフィスに含まれる拠点には「OF」、工場に含まれる拠点には「F」が設定されている。これにより、集計単位がカバーする範囲が明確である。
【0044】
項目別データ列3140のデータ項目は、拠点テーブル20のデータ項目210と同一でよい。項目別データ列3140のデータ項目は、入力(INPUT)に関する項目と出力(OUTPUT)に関する項目とを有する。
【0045】
入力に関する項目の項目別データ列3140と拠点別のデータ行3110との交点には、例えば、それぞれ対応する個別シート320の年間合計列3260の値をコピーして良い。つまり、拠点テーブル20とメインシート310との項目間の対応関係が明確であるので、拠点テーブル20のデータが間違いなくメインシート310に反映されているか否かの確認が容易である。
【0046】
出力に関する項目の項目別データ列3140と拠点別のデータ行3110との交点には、換算レートシート330の換算レートを用いて換算した数値を取り込んでも良い。例えば、入力に関する項目である電気量に係るデータと、換算レートシート330の換算レートとから温室効果ガス排出量が算出され、出力に関する項目であるスコープ1及びスコープ2などに、その温暖効果ガス排出量が算出されるようにしても良い。つまり、出力に関する項目のうち、スコープ1、スコープ2のように何らかの換算が必要なデータ項目については、すべての拠点から収集したデータと換算レートシート330が有する共通の換算レートとを用いて算出される。つまり、換算レートシート330に定義されている換算レートが用いられるので、換算レートがすべてオープンになっていて、かつ、換算の検証も容易である。
【0047】
項目別データ列3140の各列には、各拠点及び各バウンダリにおける、ある一つのデータ項目のデータが並んでいる。従って、同一列内の拠点別のデータ行3110のデータから集計行3120のデータの検証が容易である。
【0048】
なお、メインシート310は、
図4に例示されたシートと行及び列が入れ替わった構成であっても良い。すなわち、拠点別データ及び集計データを縦に並べた列で構成し、拠点属性、項目別データを横に並べた行で構成しても良い。
【0049】
換算レートシート330は、複数のデータ項目に係る換算レートを有する。例えば、換算レートシート330は、電力(電力会社別)、灯油、都市ガスなどをCO2排出量、発熱量へ変換するための換算レート等を含む。換算レートは、エネルギーのタイプ及び地域によって異なっていてもよい。
【0050】
例えば、スコープ1は、灯油及び都市ガスなどの燃料のデータ(消費量または購買量)を所定の換算レートを用いて算出しても良いし、スコープ2は、電気及び熱などのデータ(消費量または購買量)を所定の換算レートを用いて算出しても良い。換算を行うための計算式は、メインシート310または換算レートシート330に組み込まれていても良い。
【0051】
なお、データ項目210は、後述するように、報告書分析テーブル50に基づいて定められてもよい。
【0052】
報告書作成部40は、報告書分析テーブル50を参照して所望の報告書を作成するために必要なデータ項目を特定し、環境データマスタ30から特定されたデータ項目のデータを抽出する。報告書作成部40は、さらに、所定の報告書のフォーマットを有していて、環境データマスタ30から抽出したデータをそのフォーマットに当てはめて、報告書データを自動生成しても良い。報告書作成部40が自動生成した報告書データに基づいて、報告書が図示しない出力装置で出力されるようにしても良い。
【0053】
図6は報告書分析テーブル50の一例を示す。同図に示すように、報告書分析テーブル50は、報告書ごとに、各報告書で要求される環境数値項目及びバウンダリを示す。すなわち、報告書分析テーブル50は、報告書ごとのバウンダリの行と環境数値項目の列とのマトリックスになっている。
【0054】
図中では、バウンダリの行と環境数値項目の列との交点に、各報告書で生データとして要求される環境数値項目には「〇」、生データから算出される環境数値項目には「△」が記入されている。報告書分析テーブル50に存在しない環境数値項目を有する報告書があれば、その項目を報告書分析テーブル50に追加しても良い。
【0055】
以下に説明するように、報告書分析テーブル50は、環境データマスタ(メインシート310及び個別シート320)の及び拠点テーブル20のデータ項目を定めるために利用される。すなわち、環境データマスタ30のデータ項目は、複数の報告書で要求されているデータ項目をすべて網羅する必要がある。拠点テーブル20は、環境データマスタ30で必要とされるデータをすべて含む必要がある。そのため、報告書分析テーブル50には、複数の報告書のすべてのデータ項目が、各報告書との対応関係が明確になるように登録されている。また、報告書分析テーブル50は、各報告書とデータ項目との対応関係が登録されているので、所定の報告書を作成するために必要なデータ項目を特定するためにも利用される。
【0056】
報告書分析テーブル50は、環境データ管理システム1の図示しない入出力装置を用いて入力された情報に基づいて生成されても良い。例えば、所定のインタフェース画面が、報告書及びその報告書に含まれるデータ項目の入力を受け付ける。データ項目の入力は、例えば、予め登録されているデータ項目群から選択されても良い。データ項目間に所定の関係(例えば、生データとそれから算出されるデータ等)があるときは、その関係も登録されていて良い。入力に基づいて、
図6に示すように、マトリックス中に「〇」「△」等が設定されて良い。報告書ごとに必要とされるデータ項目が漏れなく登録される。
【0057】
図7は、拠点テーブル20、メインシート310及び個別シート320のデータ項目の決定方法の一例を示すフローチャートである。同図を参照して、データ項目の決定方法について説明する。
【0058】
環境データ開示に係る複数の報告書において要求されている開示情報に基づいて、報告書分析テーブル50が作成される(S11)。報告書テーブル50の具体的な作成方法は、例えば、上述した通りである。
【0059】
次に、メインシート310及び拠点テーブル20のデータ項目を決定する(S13)。すなわち、メインシート310及び拠点テーブル20は、データ項目として報告書分析テーブル50において一つ以上の「〇」が付されている項目をすべて含むようにする。メインシート310及び拠点テーブル20のデータ項目は共通でも良い。
【0060】
次に、ステップS13で定められたメインシート310のデータ項目に基づいて、個別シート320を生成する単位を決定する(S15)。例えば、上述の例では、データ項目の分類単位(電気量、灯油、GHG排出量等)に個別シート320が生成されている。
【0061】
これにより、メインシート310及び拠点テーブル20は、本システムが対象としているすべての報告書に含まれるデータ項目が網羅される。
【0062】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。