(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレン系樹脂を押出して形成された軟化状態のパリソンを成形型内でブロー成形して中空ブロー成形体を形成する工程、中空ブロー成形体の壁部を通して中空ブロー成形体内にスチームピンを打ち込む工程、中空ブロー成形体内にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する工程、及びスチームピンからスチームを供給して、発泡粒子どうしを融着させると共に、中空ブロー成形体の内面と発泡粒子とを融着させる工程を含む、中空ブロー成形体からなる表皮材内に発泡粒子成形体が位置し、表皮材の内面と発泡粒子成形体の表面が融着している表皮材被覆発泡成形体を製造する方法において、
中空ブロー成形体が、最内面側に位置する内層と、該内層の外側に位置する外層とを有する多層構造のパリソンをブロー成形してなる成形体であり、
外層が、強化繊維とポリプロピレン系樹脂とを混練してなる繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されており、
内層が、強化繊維とポリプロピレン系樹脂とを混練してなる繊維強化ポリプロピレン系樹脂又は強化繊維を含まないポリプロピレン系樹脂から構成されていると共に、内層への強化繊維の配合割合が、外層への強化繊維の配合割合よりも少なく、
外層への強化繊維の配合割合が5〜30重量%であり、内層への強化繊維の配合割合が5重量%未満(0を含む)であることを特徴とする表皮材被覆発泡成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の製造方法は、表皮材被覆発泡成形体の製造方法である。
図1Aの例に示すように製造される表皮材被覆発泡成形体1は、外層2aと内層2bを有する中空ブロー成形体2からなる表皮材20内に発泡粒子成形体8が位置し、表皮材20の内面と発泡粒子成形体8の表面が融着しているものである。なお、
図1Aでは、説明の便宜上、発泡粒子成形体8を構成する発泡粒子3を表皮材20内に充填させている構造が一部のみ図示されている。
【0016】
(表皮材被覆発泡成形体の製造方法)
表皮材被覆発泡成形体の製造方法は、溶融状態のポリプロピレン系樹脂を押出して形成された軟化状態のパリソンを成形型内でブロー成形して中空ブロー成形体を形成する工程(ブロー成形工程)、中空ブロー成形体の壁部を通して中空ブロー成形体の中空部内にスチームピンを打ち込む工程(スチームピン打ち込み工程)、中空ブロー成形体内にポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する工程(発泡粒子充填工程)、及びスチームピンからスチームを供給して、発泡粒子どうしを融着させると共に、中空ブロー成形体の内面と発泡粒子とを融着させる工程(スチーム供給工程)を含んでいる。
【0017】
なお、本明細書において表皮材被覆発泡成形体を単に「発泡成形体」ということがある。また、中空ブロー成形体を「表皮材」ということがある。
【0018】
(中空ブロー成形体)
表皮材被覆発泡成形体の製造方法においては、ブロー成形工程で得られる中空ブロー成形体が、最内面側に位置する内層と、該内層の外側に位置する外層とを有する多層構造のパリソンをブロー成形してなる成形体となっている。
【0019】
(外層)
外層は、強化繊維とポリプロピレン系樹脂とを混練してなる繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成されている。
【0020】
(内層)
内層は、強化繊維とポリプロピレン系樹脂とを混練してなる繊維強化ポリプロピレン系樹脂又は強化繊維を含まないポリプロピレン系樹脂から構成されている。また、中空ブロー成形体において内層への強化繊維の配合割合は、外層への強化繊維の配合割合よりも少ない状態となっている。
【0021】
(その他の層)
本発明の製造方法で得られる表皮材被覆発泡成形体において、表皮材をなす中空ブロー成形体は、外層と内層を備えた多層構成となっているが、外層と内層の2層で形成されている場合に限定されず、外層と内層の間に更に中間層が形成されたものや、外層のさらに外側に樹脂層が形成されたものなどの3層以上の多層構造を備えるものであってもよい。この場合、中間層などの他の層は、外層及び内層と同様にポリプロピレン系樹脂で構成されることが好ましい。また、中間層や、外層のさらに外側の樹脂層には、外層と同様に、後述する強化繊維が含まれてよい。
【0022】
(強化繊維)
外層に含まれる強化繊維の種類としては、ガラス繊維、グラスウール、炭素繊維、セルロースナノファイバー等の繊維材料が例示される。例示された繊維材料においては、比強度に優れる点から、強化繊維として炭素繊維が好適に選択される。炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、異方性ピッチ系炭素繊維等を挙げることができる。PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)から調製される長繊維に所定の熱処理を施して得られたものである。異方性ピッチ系炭素繊維は、石油精製あるいは石炭乾留副産物から製造される。表皮材被覆発泡成形体の表皮材に残存している繊維長が長いことが剛性発現の観点から望ましく、長繊維強化熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
(強化繊維の長さ)
表皮材被覆発泡成形体の曲げ剛性を効果的に向上させるためには、強化繊維として、平均長さ1mm以上の炭素繊維を押出機に供給することが好適であり、より好ましくは平均長さ3mm以上、さらに好ましくは6mm以上の炭素繊維を用いることがより好ましい。
【0024】
(長さ1mm以上の強化繊維の割合)
また、中空ブロー成形体の外層に含まれている強化繊維が炭素繊維である場合、外層に含まれる炭素繊維のうち長さ1mm以上の炭素繊維の個数割合が20%以上であることが好適であり、30%以上であることがより好ましい。外層に含まれる炭素繊維のうち長さ1mm以上の炭素繊維の個数割合が20%以上であることで、炭素繊維を過度に多量に配合しなくても、曲げ剛性により優れた表皮材被覆発泡成形体を得ることができる。
【0025】
内層にも強化繊維が含まれる場合について、強化繊維の種類としては、外層に含まれる強化繊維として採用可能な繊維材料を適宜選択可能である。内層に含まれる強化繊維の長さについても、外層に含まれる強化繊維として採用可能な繊維材料の長さが好適である。
【0026】
(外層に含まれる強化繊維の配合割合)
外層への強化繊維の配合割合は、適宜選択可能であるが、外層の総重量に対する重量比率で5重量%〜30重量%であることが好ましく、8重量%〜20重量%であることがより好ましい。外層への強化繊維の配合割合が5重量%以上であることで、表皮材被覆発泡成形体は曲げ剛性のより一層優れたものとなる。外層への強化繊維の配合割合が30重量%以下であることで、ブロー成形時にパリソンをより確実に成形型の形状に合わせて拡幅させることができるようになり、意図しないパリソンの破裂や裂孔の形成を抑制することができるようになる。
【0027】
(内層に含まれる強化繊維の配合割合)
内層は、強化繊維を配合されていない層構造で構成されていてもよく、その場合には強化繊維の配合割合は0重量%となる。内層にも強化繊維が含まれる場合については、強化繊維の配合割合が内層の総重量に対する重量比率で5重量%未満であることが好適である。内層に含まれる強化繊維の含有量が5重量%未満であると、パリソンを拡幅して中空ブロー成形体を形成しようとする際に、パリソンの拡幅を行うことがより容易となる。
【0028】
また、内層に含まれる強化繊維の含有量が内層の総重量に対する重量比率で5重量%未満であると、中空ブロー成形体内にスチームピンを打ち込む際、中空ブロー成形体内を構成する樹脂がスチームピンの動きに対して適度に追従して、伸ばされた樹脂によりスチームピンの外周面がシールされた状態となる。このようにスチームピンの外周面と中空ブロー成形体内との間に隙間が生じなくなることで、中空ブロー成形体内に導入された加熱状態のスチームが中空ブロー成形体の外部に漏れることを防止できるため、発泡粒子どうしをより強固に融着させること、中空ブロー成形体と発泡粒子成形体とをより強固に接着させることができる。
【0029】
(ポリプロピレン系樹脂)
外層及び内層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、それぞれ独立に、ホモポリプロピレン(h−PP)、プロピレン−エチレンランダム共重合体やプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体などのランダムポリプロピレン(r−PP)、ブロックポリプロピレン(b−PP)或いはそれらの混合物などを例示することができる。
【0030】
(溶融伸び)
内層の190℃における溶融伸びは、80m/分を超えることが好ましく、100m/分以上であることがより好ましい。内層の190℃における溶融伸びが80m/分を超えることで、ブロー成形工程においてパリソンが破裂して孔が開いてしまう虞を抑制することができることから、中空ブロー成形体をより複雑な形状に成形することも容易となり、中空ブロー成形体の薄肉化を図ることも容易となる。かかる観点から前記溶融伸びは100m/分以上であることがより好ましい。なお、内層の溶融伸びとは、内層が繊維強化ポリプロピレン系樹脂から形成される場合には、繊維強化ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びを意味し、内層が強化繊維を含まないポリプロピレン系樹脂から構成されている場合には、そのポリプロピレン系樹脂の溶融伸びを意味する。
【0031】
(ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの特定方法)
溶融伸びは、例えば株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dなどの測定装置を使用して測定することができる。具体的には、ノズル径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを内径9.55mmのシリンダーにセットし、シリンダーの設定温度を190℃とし、ポリプロピレン系樹脂の測定用試料を該シリンダー内に入れ、ポリプロピレン系樹脂を溶融した後、ピストン降下速度を10mm/分として溶融状態のポリプロピレン系樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物をプーリーに掛け、4分で引取速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速率で引取速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の引取速度を特定し、このときに特定された引取速度が溶融伸びとなる。なお、紐状物が破断しなかった場合には、溶融伸びを200m/分以上と評価する。
【0032】
(内層と外層の融解温度)
中空ブロー成形体において、内層の融解温度が外層の融解温度よりも低いことが好ましく、5℃以上低いことがより好ましく、10℃以上低いことがさらに好ましく、15℃以上低いことが特に好ましい。内層の融解温度が外層の融解温度よりも低いことで、パリソンがブロー成形性に優れたものとなり、かつスチーム供給工程の際に、表皮材をなす中空ブロー成形体と発泡粒子成形体との接着性をより一層高めることができる。なお、外層の融解温度とは、外層を形成している繊維強化ポリプロピレン系樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂の融解温度を意味する。また、内層の融解温度とは、内層が繊維強化ポリプロピレン系樹脂から形成される場合には、その繊維強化ポリプロピレン系樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂の融解温度を意味し、内層が強化繊維を含まないポリプロピレン系樹脂から形成されている場合には、そのポリプロピレン系樹脂の融解温度を意味する。
【0033】
(内層と外層の融解温度の特定方法)
内層と外層それぞれの融解温度は、いずれもJIS K7121−1987に基づき測定される融解ピーク温度を意味するものとする。なお、試験片の状態調節としては、JIS K7121−1987の(2)に示される「一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」が採用される。
【0034】
(中空ブロー成形体の平均厚み)
発泡成形体の軽量性の観点から、表皮材である中空ブロー成形体の平均厚みは、1mm〜5mmであることが好適である。本発明の表皮材被覆発泡成形体は、表皮材の平均厚みが1mm〜5mmと薄肉であっても、曲げ剛性に優れたものとなる。かかる観点から、中空ブロー成形体の平均厚みの上限は4mmであることがより好ましく、さらに好ましくは3mmである。
【0035】
(中空ブロー成形体の平均厚みの特定方法)
表皮材である中空ブロー成形体の平均厚みは次のように測定される。表皮材被覆発泡成形体の長手方向中央部および長手方向両端部付近から選択された計3つの位置の長手方向に対する垂直断面に対して厚さが測定される。そして、それぞれの位置の垂直断面について、各垂直断面の表皮周方向に沿って等間隔に6箇所の垂直断面の厚み方向の厚さ(壁部の肉厚)の測定が行われる。得られた18箇所の厚みの値が算術平均され、その平均値が中空ブロー成形体の平均厚みとなる。
【0036】
(内層と外層の重量比)
表皮材である中空ブロー成形体の内層と外層との重量比は、1:0.2〜1:3であることが好適であり、1:0.5〜1:2であることがより好ましい。内層の重量を1としたときに外層の重量が0.2よりも小さいと繊維強化の効果が顕在化しにくくなる虞がある。表皮材の状態において内層の重量を1としたときに外層の重量が3よりも大きいと外層と内層とを均一に積層できなくなる虞がある。内層と外層との重量比は、それぞれの吐出量から求めることができる。なお、ここにいう吐出量は、ブロー成形工程の実施にあたり樹脂を押出してパリソンを調製する際のダイからの樹脂の吐出量である。
【0037】
(添加剤)
外層及び内層を構成するポリプロピレン系樹脂には、強化繊維以外に、各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、導電性付与剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線防止剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、電磁波遮蔽剤、ガスバリヤー剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤等が挙げられる。これらの添加剤は、その目的、効果が発揮し得る範囲で添加される。添加剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下、更に好ましくは3重量部以下である。
【0038】
(発泡粒子)
中空ブロー成形体内に充填される発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子である。発泡粒子を構成する樹脂としては、既述の中空ブロー成形体を構成可能なポリプロピレン系樹脂から好適に選択される。発泡粒子成形体を構成する樹脂の種類が、表皮材を構成する樹脂の種類と同じくポリプロピレン系樹脂となっていることで、表皮材と発泡粒子成形体との接着性を高めることができ、曲げ剛性に優れた表皮材被覆発泡成形体が得られるようになる。
【0039】
発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合、プロピレン−ブテンランダム共重合、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合が好ましい。
【0040】
また、発泡粒子としては、発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定により、発泡粒子3〜5mgを常温から200℃まで10℃/分の加熱速度で昇温した際に得られる第1回目のDSC曲線において、該ポリプロピレン系樹脂に固有の融解ピーク(固有ピーク)と、固有ピークよりも高温側に1以上の融解ピーク(高温ピーク)とが現れる結晶構造を有し、且つ、その高温ピークの熱量が10〜25J/gであるような発泡粒子が好ましく使用される。
【0041】
さらに、発泡粒子としては、発泡層である芯層の表面をポリプロピレン系樹脂からなる発泡状態の芯層の表面を、該芯層を形成するポリプロピレン系樹脂の融解温度よりも低い融解温度又は融解温度を示す樹脂により被覆された多層構造の発泡粒子、或いはメタロセン系重合触媒により重合されてなるポリプロピレン系樹脂を含む基材樹脂からなる発泡粒子を使用することができる。これらの発泡粒子を使用することにより比較的低いスチーム加熱圧力で発泡粒子同士を融着させることができる。
【0042】
(発泡粒子の見掛け密度)
中空ブロー成形体内に充填される発泡粒子の見かけ密度には特に制限はないが、一般に使用されている見かけ密度が18g/L〜300g/Lの発泡粒子を用いることが好ましい。さらには、スチームによる二次発泡能の制御が容易となる観点からは、発泡粒子の見かけ密度が22g/L〜150g/Lであることがより好ましい。
【0043】
(見掛け密度の特定方法)
発泡粒子の見掛け密度とは、発泡粒子の重量を発泡粒子の体積で割算した値を意味する。発泡粒子の体積は、発泡粒子をメスシリンダー中に沈めて水位の上昇を測定する方法(水没法)などにより求めることができる。
【0044】
(発泡粒子の調製)
中空ブロー成形体内に充填される発泡粒子は、例えば、次に示すような一般的に各種の発泡粒子を製造する公知の方法により製造することができる。オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器内の分散媒体(通常は水)に、未発泡の樹脂粒子を分散させ、発泡剤を圧入して加熱下に撹拌しながら発泡剤を樹脂粒子に含浸させ、高温高圧条件下の容器内から分散媒体とともに発泡剤を含む樹脂粒子を低圧域(通常大気圧下)に放出して樹脂粒子を発泡させることで、発泡粒子を得ることができる。
【0045】
(各工程の具体的説明)
表皮材被覆発泡成形体の製造方法を構成する各工程について、具体的に説明する。
【0046】
(ブロー成形工程)
外層については外層を形成するポリプロピレン系樹脂及び強化繊維を押出機に供給して溶融状態となして外層形成用溶融樹脂を得る。内層については内層を形成するポリプロピレン系樹脂を押出機に供給して溶融状態となして内層形成用溶融樹脂を得る。なお、内層については必要に応じてポリプロピレン系樹脂だけでなく強化繊維を押出機に供給して溶融状態とされる。そして、内層、外層それぞれの層を形成する溶融状態のポリプロピレン系樹脂(溶融樹脂)をダイ内で合流積層させ、この積層物を押出機に備えられたダイから押し出しする方法(共押出法)を実施することでパリソンを形成する。それぞれの層を形成する溶融樹脂の押出量をコントロールすることにより、所望する層比を有する多層構造のパリソンが得られる。次にダイから押し出された軟化状態のパリソンを分割成形型で挟みこむ。それからパリソンにブローピンを打ち込み、ブローピンから該パリソン内に圧縮空気などの加圧気体(以下、ブローエアともいう。)を吹き込むことで、パリソンが成形型の内壁に押し当てられることで賦形され、中空成形体が形成される。パリソンの形状は、筒状であっても、シート状であってもよい。
【0047】
ブロー成形工程において、ブローエアを吹き込んでいる間、成形型側から真空引きして、パリソンを成形型の内壁に密着させることが好ましい。この場合、より容易に、中空ブロー成形体が成形型の形状をより忠実に反映した形状を有するものとなる。
【0048】
本発明の方法において、ブローエアの圧力は、目的の成形体の形状やパリソンの張力等にもよるが、0.4MPa(G:ゲージ圧)以上が好ましく、特に、0.5MPa以上であることが好ましい。また、成形型の温度は、40〜100℃とすることが好ましい。
【0049】
(スチームピン打ち込み工程)
成形型内において、中空ブロー成形体には、スチームピンが打ち込まれる。例えば
図1、
図2の例に示すように、ブロー成形用の成形型4には、スチームピン5が設けられており、中空ブロー成形体2の内部に向かってスチームピン5が進出するとともに中空ブロー成形体2の壁部をスチームピンにより打ち抜き、中空ブロー成形体の内部にスチームピン5が挿通される。そしてスチームピンは、中空ブロー成形体内に所定の長さ挿入された状態となり、スチームの供給排出のために利用される。
図1、
図2の例では、ブロー成形用の成形型4は、一対の成形型片4a、4bを有する分割成形型となっている。
【0050】
なお、スチームピンは、先端部が凹状に陥没した形状または平坦状であることが好ましい(図示せず)。この場合には、中空ブロー成形体が打ち抜かれ易くなる。
【0051】
スチームピンは内部が空洞の管状体である。
図1に示すようにスチームピン5の周壁部には、複数のスリット状または細孔状のスチーム供給孔50が設けられている。スチームピン5の先端部には供給孔を設けないことが好ましい。以下、この供給孔50を、単にスリットという。加熱状態のスチームは、
図1の例ではスチームピン5の内部の空洞を伝って、スリットから中空ブロー成形体2内へと供給され、スチームにより発泡粒子3が加熱されて発泡粒子3相互が融着される。なお、スリットの外径、またはスリット幅は発泡粒子の粒径よりも小さい直径または幅で設けられている。
【0052】
(発泡粒子充填工程)
中空ブロー成形体内(中空部)には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が充填される。この工程は、
図1,
図2の例に基づくと次のように実施することができる。ブロー成形後、中空ブロー成形体が冷却固化する前に、空気供給管6を接続された発泡粒子充填管7を、中空ブロー成形体2の外部から中空ブロー成形体2の内部に打ち込み、発泡粒子充填管7により空気供給管6からの圧送空気とともに発光粒子3を充填することができる。
【0053】
発泡粒子の充填のタイミングについて、中空ブロー成形体が軟化状態となっている段階において発泡粒子を中空ブロー成形体内に充填することが好ましい。このように中空ブロー成形体に発泡粒子が充填されることにより、中空ブロー成形体の内部空間に充填された発泡粒子が融着してなる発泡粒子成形体と、表皮材となる中空ブロー成形体の内面とをより確実に融着させることができる。
【0054】
本発明において、発泡粒子の充填方法として、圧縮充填法を採用することが好ましい。圧縮充填法を採用することにより、充填後の発泡粒子間の間隙を適度に調整することが可能となる。これにより、スチームを発泡粒子間全体に流通させつつ、発泡粒子の加熱による二次発泡により発泡粒子間の間隙を埋めることができるようになるため、発泡粒子相互を十分に融着させつつ、その収縮を抑制することができる。圧縮充填圧力の好ましい範囲としては、発泡粒子の見掛け密度にもよるが、好ましくは0.05〜0.25MPa(G)である。
【0055】
(スチーム供給工程)
中空ブロー成形体内にポリプロピレン系樹脂発泡粒子が充填された後、スチーム供給工程が実施される。スチーム供給工程では、加熱状態のスチームがスチームピンを経由して中空ブロー成形体内に供給される。そして、この工程において、中空ブロー成形体内に供給されたスチームで加熱された発泡粒子どうしが融着し、発泡粒子成形体が形成される。さらに、発泡粒子成形体の形成が進行するとともに、中空ブロー成形体の内面とその内面に接触する発泡粒子成形体の部分とが融着される。なお、加熱空気などのスチーム以外の加熱媒体をスチームと併用することもできる。
【0056】
(スチーム蒸気圧)
スチーム供給工程で適用されるスチームの蒸気圧は、0.15MPa(G)〜0.6MPa(G)であることが好ましく、さらには0.18MPa(G)〜0.5MPa(G)であることがより好ましい。
【0057】
(スチームピン打ち込み工程を実施するタイミング)
本発明の製造方法の例においては、スチームピン打ち込み工程は、ブロー成形工程に続いて実施されているが、本発明においてスチームピン打ち込み工程を実施するタイミングはこれに限定されない。本発明の製造方法では、スチームピンを打ち込むタイミングは中空ブロー成形体が調製された後、スチーム供給工程の実施前ならばどのタイミングでも可能であるが、発泡粒子充填工程前にスチームピン打ち込み工程を実施することが好ましく、この場合、発泡粒子充填時の圧送空気を、スチームピンを通して排出することができ、また、その排出度合いにより中空ブロー成形体内の圧力を調整することができる。
【0058】
(表皮材被覆発泡成形体用製造装置)
なお、表皮材被覆発泡成形体用製造装置は、押出機、ダイ(これらは図示しない)及び成形用の成形型4を備える。
図1,2に示すように、軟化状態のパリソンをブロー成形して中空成形体を形成させる成形型4は、中空成形体内にスチームを供給するためのスチームピン5を備えるとともに、前記スチームピン5を成形型4内部に対して挿入退出可能に構成されるとともに、スチームピン5からスチームを供給排出可能に構成されている。また、表皮材被覆発泡成形体用製造装置には、空気供給管6を接続された発泡粒子充填管7が成形型4に配置されている。なお、
図1、
図2の例では、空気供給管6を接続された発泡粒子充填管7が、一方の成形型片4bに配置され、スチームピン5が、他方の成形型片4aに配置されているが、発泡粒子充填管7とスチームピン5の配置はこれに限定されず、発泡粒子充填管7とスチームピン5の両方が成形型片4a、4bのいずれか一方に配置されてもよいし、両方に配置されてもよい。
【0059】
スチームピンは、スチームの供給を行うためのスチーム供給管としてだけでなくスチームの排出を行うためのスチーム排出管として機能するように構成されてよい。また、
図2の例に示すように、中空ブロー成形体内に複数のスチームピン5を挿入するように構成されてよい。このような場合、中空ブロー成形体内に挿入された複数のスチームピンのうちの特定された一部のピンからなるスチームピン群5a、5b、5c、5d(スチームピン群A)をスチーム供給管として機能させ、それら以外のピンからなるスチームピン群5e、5f、5g、5h(スチームピン群B)をスチーム排出管として機能させることができる。この場合、スチームによる加熱方法は、スチームの供給位置と排出位置を固定して一方向からのみ加熱を行う一方加熱法となる。また、ある時間内においてスチームピン群Aをスチーム供給管として機能させるとともにスチームピン群Bをスチーム排出管として機能させ、別の時間内においてスチームピン群Aをスチーム排出管として機能させるとともにスチームピン群Bをスチーム供給管として機能させることができる。この場合、スチームによる加熱方法は、スチームの供給位置と排出位置を時間で交替して加熱を行う交互加熱法となる。表皮材被覆発泡成形体において、発泡粒子同士をより強固に融着させるためには、交互加熱法が好ましい。
【0060】
(表皮材と発泡粒子成形体との間の剥離強度)
本発明の製造方法で得られる表皮材被覆発泡成形体における表皮材と発泡粒子成形体との間の剥離強度は、0.18MPa以上であることが好ましいく、0.20MPa以上であることがより好ましい。表皮材と発泡粒子成形体との間の剥離強度が前記範囲であると、表皮材被覆発泡成形体の曲げ剛性が効率よく発現される。曲げ剛性の観点からその上限は特に限定されるものではないが、上限は概ね0.8MPa程度である。
【0061】
本発明の製造方法によれば、中空ブロー成形体が外層と内層を有する多層構造を備えるともに強化繊維を含有しており、外層よりも内層に含まれる強化繊維の配合量を少なくすることで、ブロー成形工程におけるパリソンのブロー成形性を良好にするとともに、スチームピン打ち込み工程におけるスチームピン打ち込み時の中空ブロー成形体の穴あき性及びスチームピンのシール性を良好にすることができる。そして、スチームピン打ち込み時の中空ブロー成形体の穴あき性が良好であることで、スチーム供給工程における発泡粒子相互の融着性を良好にするとともに中空ブロー成形体と発泡粒子成形体との接着性を良好にすることができることとなる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0063】
実施例1.
(外層形成用溶融樹脂の調製)
外層形成用押出機として、内径65mmの押出機(L/D=28)を準備した。外層形成用押出機に、カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂とポリプロピレン系樹脂とを供給した。カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂としては、ダイセルポリマー株式会社製、商品名:プラストロンCF、グレード:PP−CF40−11(L8)、ベース:ブロックポリプロピレン(融解温度164℃)、PAN系炭素繊維含有量40wt%、平均繊維長8.3mmが用いられた。ポリプロピレン系樹脂としては、日本ポリプロ株式会社製ブロックポリプロピレン(b−PP)、商品名:ノバテックPP、グレード:EC9、融解温度160℃、溶融伸び80m/分が用いられた。カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂とポリプロピレン系樹脂は、外層中のPAN系炭素繊維量が10wt%となる様な配合量にてドライブレンドされた。なお、上記のカーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂(b−PP)に強化繊維としての炭素繊維を含有させた樹脂ペレットである。そして、外層形成用押出機に、カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂とポリプロピレン樹系脂とのドライブレンド物を投入し、外層形成用押出機にて230℃で加熱、混練して、外層形成用溶融樹脂が調製された。なお、実施例1においては、カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂とポリプロピレン系樹脂のブレント物が外層を形成するための繊維強化ポリプロピレン系樹脂となる。
【0064】
(内層形成用溶融樹脂の調製)
内層形成用押出機として、内径65mmの押出機(L/D=28)を準備した。内層形成用押出機に、ポリプロピレン系樹脂を投入し、210℃で加熱、混練して、内層形成用溶融樹脂が調製された。ポリプロピレン系樹脂としては、日本ポリプロ株式会社製ブロックポリプロピレン(b−PP)、商品名:ノバテックPP、グレード:EC9が用いられた。
【0065】
外層形成用溶融樹脂と内層形成用溶融樹脂それぞれの溶融樹脂は、それぞれ外層形成用押出機、内層形成用押出機に付設されたアキュムレータに外層と内層の重量比が1:1となる様に充填した。なお、アキュムレータは、それぞれ225℃に調整された。
【0066】
(ブロー成形工程)
成形型は、アキュムレータの下流側に位置する多層環状ダイの下方位置に配置される。成形型として、縦350mm、横260mm、厚さ25mmの平板形成用の分割金型が用いられた。また、成形型となる金型として、発泡粒子充填管である充填フィーダ(外径20mm)およびスチームピン(外径8mm)を設けたものが用いられた。なお、金型には、一方の金型側に充填フィーダ(発泡粒子充填管)及びスチームピンが8本(2列4段)設けられており、各列において隣り合う上下に並ぶスチームピンの間隔は70mm、左右に並ぶスチームピンの列の離間間隔はいずれも180mmとされた。一方の列を構成するスチームピンの群をスチームピン群Aとし、他方の列を構成するスチームピンの群をスチームピン群Bとよぶ。なお、スチームピンの周壁部には、スリットが設けられており、スチームピンは、そのスチームピンの内部の空洞を流れたスチームがスリットを通ってスチームピンの外に出るように構成された。スチームピンは、スチーム供給管としての機能とスチーム排気管としての機能を備えている。
【0067】
それぞれのアキュムレータから内層形成用溶融樹脂と外層形成用溶融樹脂とを多層環状ダイ内に押出して両者を合流積層させ、多層環状ダイのダイリップ(直径190mm)を通して共押出して得られる軟化状態のパリソンは、多層環状ダイの直下に配置された分割金型間に配置された。リップクリアランス及びダイス温度の条件を表2に示す。なお、表2に示すように金型を60℃に温度調整した。金型を型締めしてパリソンを金型で挟み込んだ後、ブローピンをパリソンに打ち込み、ブローピンから0.50MPa(G)の加圧空気をパリソン内に吹き込み、前記金型の形状を反映した中空ブロー成形体を形成した。中空ブロー成形体の平均肉厚みは2.5mmであった。この値は、表皮厚みに対応することから、表1,表4に示すように設定値、実測値ともに表皮厚みは2.5mmであった。
【0068】
(スチームピン打ち込み工程)
軟化状態の中空ブロー成形体内に、スチームピンを8本打ち込み挿入した。また、中空ブロー成形体には発泡粒子充填フィーダが打ち込み挿入された。そして、スチームピンから中空ブロー成形体内の気体を排気しつつ中空ブロー成形体の内部の圧力(圧縮充填圧)を0.15MPa(G)に調整しながら、発泡粒子充填フィーダから発泡粒子を充填した。なお、発泡粒子としては、表2に示すプロピレン−エチレンランダム共重合体発泡粒子(融解温度145℃、エチレン含有量2.5重量%、見かけ密度56kg/m
3、平均粒子径:2.8mm)が用いられた。
【0069】
(スチーム供給工程)
発泡粒子充填後、中空ブロー成形体内に挿入された8本のスチームピンうち4本のスチームピン群Aからスチームを吸引しながら、表2に示すように他方の4本のスチームピン群Bから0.32MPa(G)のスチームを8秒間供給した。次に、前記スチームピン群Bから吸引しながら、スチームピン群Aから0.32MPa(G)のスチームを6秒時間供給した。そして、全てのスチームピンから0.32MPa(G)のスチームを5秒間供給した。これにより、発泡粒子を二次発泡させると共に発泡粒子相互を融着させ、さらに中空ブロー成形体の内面と発泡粒子とを融着させた。
【0070】
そして、金型が冷却され、全てのスチームピンが中空ブロー成形体の外側に退出されたのち、金型が開かれてバリ付の成形体が取り出された。取り出された成形体のバリを取り除き、外層と内層の積層構造を有する中空ブロー成形体を表皮材とし、板状の表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材の外層における炭素繊維1mm以上の割合(強化繊維全体に占める1mm以上のものの割合)は37%であった。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値はそれぞれ表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。また、表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示す。
【0071】
実施例2.
表皮材の外層に含まれる強化繊維となる炭素繊維の含有量を20wt%となるように調整した以外は、実施例1と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0072】
実施例3.
カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂の代わりにガラス繊維ポリプロピレン系樹脂〔株式会社プライムポリマー製、商品名:プライムポリプロ(商標)、グレード:R−300G、ベース:ポリプロピレン(融解温度166℃)、ガラス繊維含有量30重量%、平均繊維長1.3mm〕を用い、外層に含まれる強化繊維(ガラス繊維)の含有量を20wt%とした以外は実施例1と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0073】
実施例4.
表皮材の内層に含まれるポリプロピレン系樹脂としてランダムポリプロピレン(r−PP:プロピレン−エチレンランダム共重合体)〔日本ポリプロ製、商品名:ノバテック(商標)PP、グレード:EG8B、融解温度:145℃、溶融伸び:130m/分〕を用いた以外は実施例1と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0074】
実施例5.
表皮材の内層に含まれるポリプロピレン系樹脂としてr−PP〔日本ポリプロ製、商品名:ノバテックPP、グレード:EG8B〕を用いた以外は実施例2と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0075】
比較例1.
表皮材を構成する中空ブロー成形体が、外層と内層の多層構造を形成せずに、カーボンファイバー量の含有量を10wt%とする単層で構成された成形体とした以外は実施例1と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0076】
比較例2.
表皮材を構成する中空ブロー成形体が、外層と内層の多層構造を形成せずにカーボンファイバー量を含有させない単層で構成された成形体であり、且つ、中空ブロー成形体を形成するためのポリプロピレン系樹脂としてブロックポリプロピレン(b−PP)〔日本ポリプロ株式会社製、商品名:ノバテックPP、グレード:EC9を用いた以外は、実施例1と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成するポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0077】
比較例3.
表皮材を構成する中空ブロー成形体が、外層と内層の多層構造を形成せずに、ガラス繊維の含有量を20wt%とする単層で構成された成形体とした以外は実施例1と同様にし、表皮材被覆発泡成形体を得た。表皮材を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びの測定値は表1に示すとおりであった。その他、表皮材被覆発泡成形体の成形性評価の結果を表3に示す。得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示した。
【0078】
なお、表皮材被覆発泡成形体の調製に使用した樹脂の性質の特定方法や、表1から表5に記載された各測定値と各評価の方法、及びそれらを用いた判断の基準は次に示すとおりである。
【0079】
(融解温度(融点))
JIS K7121−1987に基づき、表皮材の各層の融解温度(融点)を測定した。なお、試験片の状態調節としては、(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合を採用し、加熱速度、冷却速度を共に10℃/分とした。なお、ポリプロピレン系樹脂に強化繊維をマスターバッチの形態で配合する場合は、予めポリプロピレン系樹脂と強化繊維マスターバッチとを押出機にて混練し、その混練物を試験片として融解温度の測定を行なった。
【0080】
(溶融伸び(表皮材伸び))
溶融伸びは、測定装置として株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを使用して測定された。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーにノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスをセットし、シリンダーの設定温度を190℃とし、ポリプロピレン系樹脂の測定試料約15gを該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン降下速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmのプーリーに掛け、4分で引取速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速率で引取速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の引取速度を特定した。このような引取速度の測定を、無作為にサンプリングした10点の測定試料について行い、それら引取速度の算術平均値を本溶融伸びとした。なお、ポリプロピレン系樹脂と繊維強化ポリプロピレン系樹脂とを配合する場合は、予めポリプロピレン系樹脂と繊維強化ポリプロピレン系樹脂とを押出機にて混練し、その混練物を試験片として溶融伸びの測定を行なった。
【0081】
(強化繊維の平均長さ及び長さが1mm以上であるものの占める割合の測定方法)
測定用試験片として、表皮材被覆発泡成形体の板面の中心部、および四隅部(R部分)を除く計5箇所から、表皮材を10mm×10mm×(表皮厚み)の寸法に切り出して試験片となした。試験片をデカヒドロナフタレンの中に入れ、160℃、4時間加熱後、ろ過して溶媒を除去した後、繊維のみを取り出し、繊維をマイクロスコープで観察した。観察に使用したマイクロスコープとしては、株式会社キーエンスのDIGITAL MICROSCOPE VHX−900が使用された。マイクロスコープによる観察にて無作為に30本の繊維を選択し、そのうち繊維長さが1mm以上であるものの数を計測し、繊維長さが1mm以上であるものの割合(%)をそれぞれ確認した。5箇所から得られた5つの試験片について繊維長さが1mm以上であるものの割合を算出するとともに算術平均値を算出した。
【0082】
(表皮厚み)
表4に示す表皮厚みとは、表皮材被覆発泡成形体の表皮材である中空ブロー成形体の平均厚みを示す。中空ブロー成形体の平均厚みは次のように測定された。表皮材被覆発泡成形体の長手方向中央部および長手方向両端部付近から選択された計3つの位置の長手方向に対する垂直断面に対して中空ブロー成形体の厚さ(壁部の肉厚)が測定された。それぞれの位置の垂直断面について、各垂直断面の表皮周方向に沿って等間隔に6箇所の垂直断面の厚み方向の厚さの測定を行い、得られた18箇所の厚みの算術平均値を表皮厚みとした。
【0083】
(発泡粒子の見かけ密度)
発泡粒子の見かけ密度(g/L)は、水の入ったメスシリンダー内に重量:W(g)の発泡粒子群を、金網などを使用して沈めることにより、水位上昇分から読み取れる該発泡粒子郡の体積:V(L)を測定し、該発泡粒子群の重量を該発泡粒子群の体積にて除する(W/V)ことにより求められた。
【0084】
(発泡粒子成形体の密度(発泡体密度))
発泡粒子成形体の密度(g/L)は、測定用試験片として、表皮材被覆発泡成形体の板状面の中心部、および四隅部(R部分)を除く計5箇所から、該表皮材被覆発泡成形体の表皮を除いて試料を切り出し、該発泡粒子成形体の重量:W(g)を水没法により求めた該発泡粒子成形体の体積:V(L)により除した値(W/V)から求められた。
【0085】
(表皮材被覆発泡成形体の全体密度)
表皮材被覆発泡成形体の全体密度(g/L)は、表皮材被覆発泡体の重量:W(g)を水没法により求めた表皮材被覆発泡成形体の体積:V(L)により除した(W/V)値から求められた。なお、水没法により表皮材被覆発泡成形体の体積を求める際には、スチームピンの跡(孔)をテープによって封止した。
【0086】
(表皮材剥離強度)
得られた表皮材被覆発泡成形体の中心部及び四隅部(R部を除く)の計5箇所から、縦50mm、横50mmの両面に表皮材を含む直方体形状に表皮材被覆発泡成形体をきり抜いて試験片となした。この直方体形状の試験片の上下面(表皮材面)を接着剤にて剥離強度測定用冶具に接着させ、テンシロンにて2mm/分の引張速度にて上下方向に引っ張ることで引張試験を行った。この引張試験における最大点応力を剥離強度(MPa)とした。結果を表2に示す。表皮材の層と発泡粒子成形体の層との接着が非常に良いものは、発泡粒子間で材料破壊した。
【0087】
(発泡粒子成形体融着率(融着性評価)
融着率測定用試験片として、表皮材被覆発泡成形体の板状面の中心部、および四隅部(R部分)を除く計5箇所から、表皮材の部分を含まないように縦100mm×横100mm×厚み15mmのサンプルを切り出して、これを試験片とした。試験片を破断し、破断面を目視観察し、破壊された発泡粒子の数と、界面で剥離した発泡粒子の数とを計測し、破壊された発泡粒子の数×100/(破壊された発泡粒子の数+界面で剥離した発泡粒子の数)により、それぞれの試験片の融着率(%)を求めた。各試験片の融着率の算術平均値を発泡粒子成形体の融着率とする。
【0088】
(パリソン拡幅性評価)
ダイリング径に対して、どの程度までパリソンが破裂することなく拡幅可能であったか目視にて確認し、パリソンが破裂した際の拡幅比を測定した。パリソンが破裂した際の拡幅比は次のように特定された。各実施例及び比較例と同条件にてパリソンを押出し、押出完了後パリソン下部をピンチし、パリソン内に0.2MPa(G)のプリブローエアを吹き込んでパリソンを拡幅させ、この様子をビデオで撮影した。ビデオ映像をもとに、パリソンが破裂した際のパリソンの径を計測し、この値をダイリップの径で割算して、パリソンが破裂した際の拡幅比を求めた。拡幅比に基づき、具体的に次のような基準に基づき評価を行なった。なお、評価基準において、◎、○、△、×は、それぞれ、きわめて良好、良好、普通、不良を示す。これは他の評価においても同様である。
◎:拡幅比が1.3で破裂が認められない。
○:破裂した際の拡幅比が1.2以上1.3未満である。
△:破裂した際の拡幅比が1.1以上1.2未満である。
×:破裂した際の拡幅比が1.1未満である。
【0089】
(パーティングライン(PL)裂け評価))
PL裂け評価は、金型から取り出した表皮材被覆発泡成形体のPL部分の裂け発生状態に関する評価を示している。PL裂け評価は、成形体を目視にて確認し、PL部分の裂け発生状態に基づき、下記のように評価を行った。
○:PL部の裂けがなく、良好である。
×:PL部の裂けが確認され、発泡粒子成形体が確認される。
【0090】
(スチームピンによる孔開き性、表皮追従性)
表皮材被覆発泡成形体にスチームピンの貫通による孔の開き状態を目視で確認するとともに、スチームピンの移動に追従して表皮材が表皮材内部側にどの程度追従したかを示す追従距離(表皮追従量)(mm)を測定した。目視確認の結果と表皮追従量に基づき次のような基準で穴開き性及び表皮追従性を評価した。
【0091】
(穴開き性の評価)
○:全てのスチームピンが表皮材を貫通して中空ブロー成形体内に打ち込まれている。
×:一部表皮材を貫通していないスチームピンがある。
【0092】
(表皮追従性の評価)
○:表皮追従量が1mm以上5mm以下である。
×:表皮追従量が1mm未満である。
【0093】
(収縮率(押出し方向(MD))
得られた表皮材被覆発泡粒子成形体の収縮率(%)は、次のように特定された。まず、押出機からの溶融樹脂の押出し方向(MD(Machine Direction)について、冷却後の表皮材被覆発泡粒子成形体の寸法を測定した。そして、金型寸法(350mm)から冷却後の表皮材被覆発泡粒子成形体の寸法を引き算し、その値を金型寸法(350mm)で除した値を%の単位に換算して収縮率(%)とした。
【0094】
(曲げ物性評価)
JIS K7171−1994に準拠し、得られた表皮材被覆発泡粒子成形体をそのまま試験サンプルとして用い、圧子の半径R1=25mm、支持台のコーナー半径R2=3mm、試験速度20mm/分、スパン300mmの条件にて3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率、曲げ強さ、最大点荷重をそれぞれ測定した。
【0095】
(比弾性率と比強度)
曲げ弾性率及び最大点荷重を、それぞれ表皮材被覆発泡粒子成形体の重量で割算することにより、それぞれ比弾性率及び比強度が求められた。
【0096】
(表面平滑性評価)
表面平滑性の評価は、表面粗さ測定の結果に基づいて実施された。表面粗さ測定については、次のように実施された。調製された表皮材被覆発泡成形体の板状面の中心部、および四隅部(R部分を除く)の計5箇所から表皮材をきり出して試験片となし、これらの試験片について表皮材の表面粗さが測定された。測定装置としては株式会社小坂研究所製サーフコーダのSE1700αを使用した。測定装置における水平な台の上に試験片を静置し、先端曲率半径が2μmの触針の先端を試験片の表面に当接させて、試験片を0.5mm/sにて押出方向に移動させ、触針の上下変位を順次測定することで粗さ曲線要素の最大高さ粗さRz(μm)を測定し、これを表面粗さの値とした。試験片を移動させる距離として定義される測定長さとして、カットオフ値の3倍以上の所定の長さが選択された。なお、カットオフ値は8mmとし、そのほかのパラメータは、JIS B0601( 2001)の定義に準拠して、粗さ曲線要素の最大高さ粗さRz(μm)を得た。
【0097】
最大高さ粗さRzの結果に基づき、次のように表面平滑性を評価した。
○:Rzが50μm以下である。
×:Rzが50μmよりも大きい。
【0098】
表1から表5に示されるように、実施例1から5は、外層を形成するための繊維強化ポリプロピレン系樹脂について溶融伸びの測定ができないくらい樹脂の伸びが悪い状態であるのにも関わらず、「成形性が良い」もので機械強度に優れた表皮材被覆発泡粒子成形体を得ることができることが確認された。なお、表1の実施例1から5における外層の溶融伸びは、外層形成用溶融樹脂を構成する繊維強化ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びを示す。比較例に示すように表皮材が繊維強化ポリプロピレン系樹脂にて単層で形成されている場合には、繊維強化繊維ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びを示し、表皮材が強化繊維を含まないポリプロピレン系樹脂にて単層で形成されている場合には、ポリプロピレン系樹脂の溶融伸びを示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】