特許第6795342号(P6795342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795342
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】変調回路および変調制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/524 20130101AFI20201119BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H04B10/524
   G02F1/03 502
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-138156(P2016-138156)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-11164(P2018-11164A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 良彦
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−191130(JP,A)
【文献】 特開2016−46567(JP,A)
【文献】 特開2007−166268(JP,A)
【文献】 特開平10−148801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/524
G02F 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の第1の光信号と、前記第1の波長とは異なる第2の波長の第1の光と、前記第1の波長および前記第2の波長とは異なる第3の波長の第2の光とを合波して合波信号として出力する合波手段と、
前記合波信号に変調を施し、変調信号として出力する変調手段と、
前記変調信号を分波して、前記第1の波長の第1の変調信号、前記第2の波長の第2の変調信号および前記第3の波長の第3の変調信号としてそれぞれ出力する分波手段と、
前記第2の変調信号と、前記第3の変調信号の振幅レベルをそれぞれ計測する計測手段と、
前記第2の変調信号および前記第3の変調信号の振幅レベルを基に、前記変調手段において前記合波信号の変調を行う際に印加するバイアス電圧を制御するバイアス制御手段と、
を備え
前記バイアス制御手段は、前記第2の変調信号および前記第3の変調信号の振幅レベルから推測される前記第1の変調信号の振幅レベルがあらかじめ設定された値となるように、前記バイアス電圧を制御することを特徴とする変調回路。
【請求項2】
変調のタイミングを示す信号である変調タイミング信号と、デューティ比が0.5のタイミング信号とを加算した信号を基に、前記第1の波長の前記第1の光信号を生成して出力する光信号出力手段をさらに備え、
前記変調手段は、前記変調タイミング信号と、前記タイミング信号を反転した信号を加算した信号を基に、前記合波信号の変調を行うことを特徴とする請求項に記載の変調回路。
【請求項3】
前記第1の変調信号の振幅レベルが、前記第2の変調信号と前記第3の変調信号の振幅レベルの間となるように前記第1の光および前記第2の光を出力する光出力手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の変調回路。
【請求項4】
前記第1の波長は、前記第2の波長と、前記第3の波長の間の波長として設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の変調回路。
【請求項5】
第1の波長の第1の光信号と、前記第1の波長とは異なる第2の波長の第1の光と、前記第1の波長および前記第2の波長とは異なる第3の波長の第2の光とを合波して合波信号として出力し、
前記合波信号に変調を施し、変調信号として出力し、
前記変調信号を分波して、前記第1の波長の第1の変調信号、前記第2の波長の第2の変調信号および前記第3の波長の第3の変調信号としてそれぞれ出力し、
前記第2の変調信号と、前記第3の変調信号の振幅レベルをそれぞれ計測し、
前記第2の変調信号および前記第3の変調信号の振幅レベルを基に、前記合波信号の変調を行う際に印加するバイアス電圧を制御し、
前記第2の変調信号および前記第3の変調信号の振幅レベルから推測される前記第1の変調信号の振幅レベルがあらかじめ設定された値となるように、前記バイアス電圧を制御することを特徴とする変調制御方法。
【請求項6】
変調のタイミングを示す信号である変調タイミング信号と、デューティ比が0.5のタイミング信号とを加算した信号を基に、前記第1の波長の前記第1の光信号を生成し、
前記変調タイミング信号と、前記タイミング信号を反転した信号を加算した信号を基に、前記合波信号の変調を行うことを特徴とする請求項に記載の変調制御方法。
【請求項7】
前記第1の変調信号の振幅レベルが、前記第2の変調信号と前記第3の変調信号の振幅レベルの間となるように、前記第1の光および前記第2の光を出力することを特徴とする請求項5または6に記載の変調制御方法。
【請求項8】
前記第1の波長は、前記第2の波長と、前記第3の波長の間の波長として設定されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の変調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の変調回路に関するものであり、特に、光信号に変調を施す際のバイアス制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークにおける通信の高速化等にともない、光信号の伝送の際に、光信号に精度の高い変調を施すことが重要になっている。光信号の変調に用いられるLN(Lithium Niobate)変調器などの光変調器では、DC(Direct Current)ドリフトや温度ドリフトなどの現象によって動作点がずれる現象が知られている。そのため、LN変調器では、動作点を最適化するため、バイアスを印加して動作点を補正するバイアス制御が行われている。
【0003】
バイアス制御では、光変調器からの出力を計測し、計測結果に基づいてバイアスの印加が制御されることが多い。しかし、光信号の変調方式の1つであるパルス位置変調(Pulse Position Modulation;PPM)方式では、変調によってパルスが離散的になるため、変調後信号のマーク率が非常に小さい値となる。そのため、変調後の信号の計測結果にばらつきが生じやすく、バイアス制御の精度が低下しやすい。バイアス制御の精度が低下すると、変調後の光信号のパワーや消光比などの光特性の劣化が生じる。そのため、光信号の特性を維持するために、光信号のマーク率が低くても、バイアス制御を高い精度で行うことができる技術があることが望ましく関連する技術の開発が行われている。そのような、光信号のマーク率に依存せずに、バイアス制御を高い精度で行うための技術としては、例えば、特許文献1のような技術が開示されている。
【0004】
特許文献1は、パルス状の光信号に、CW(Continuous Wave)光を多重化した状態で光信号に変調を施す変調回路に関するものである。特許文献1の変調回路は、パルス状の光信号と、光信号とは異なる波長のCW光が多重化された多重信号を変調器で変調する。変調が行われた多重信号は、分波され、CW光に由来する信号の計測が行われる。特許文献1の変調回路では、CW光に由来する信号の計測結果を基にバイアス電圧が設定され、変調器のバイアス制御が行われている。特許文献1は、そのようなバイアス制御を行うことで、変調器に入力される波形のマーク率によらず精度のよいバイアス制御を行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−46567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は次のような点で十分ではない。特許文献1の変調回路は、伝送に用いる光信号と、光信号とは波長が異なるCW光を合波した状態で変調を施した後に分波した信号の計測結果に基づいてバイアス制御を行っている。しかし、異なる波長の光信号は、変調器やその他の光学素子の通過時に波長に依存して特性が変動する。すなわち、同一の変調器や素子を通過した2つの光信号の出力時のパワーの変化量は、波長に依存して異なる。そのため、変調を施す対象となる光信号の最適な動作点と、波長が異なるCW光に由来する信号の計測結果から推測する動作点とにずれが生じる恐れがある。変調を施す対象となる光信号の最適な動作点と、計測結果から推測する動作点にずれが生じると、変調器におけるバイアス制御の精度が低下する。そのため、特許文献1の技術は、光信号のマーク率に依存せずに、バイアス制御を高い精度で行うための技術としては十分ではない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、光信号のマーク率に依存せずに、バイアス制御を高い精度で行うことができる変調回路を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の変調回路は、合波手段と、変調手段と、分波手段と、計測手段と、バイアス制御手段を備えている。合波手段は、第1の波長の第1の光信号と、第1の波長とは異なる第2の波長の第1の光と、第1の波長および第2の波長とは異なる第3の波長の第2の光とを合波して合波信号として出力する。変調手段は、合波信号に変調を施し、変調信号として出力する。分波手段は、変調信号を分波して、第1の波長の第1の変調信号、第2の波長の第2の変調信号および第3の波長の第3の変調信号としてそれぞれ出力する。計測手段は、第2の変調信号と、第3の変調信号の振幅レベルをそれぞれ計測する。バイアス制御手段は、第2の変調信号および第3の変調信号の振幅レベルを基に、変調手段において合波信号の変調を行う際に印加するバイアス電圧を制御する。
【0009】
本発明の変調制御方法は、第1の波長の第1の光信号と、第1の波長とは異なる第2の波長の第1の光と、第1の波長および第2の波長とは異なる第3の波長の第2の光とを合波して合波信号として出力する。本発明の変調制御方法は、合波信号に変調を施し、変調信号として出力する。本発明の変調制御方法は、変調信号を分波して、第1の波長の第1の変調信号、第2の波長の第2の変調信号および第3の波長の第3の変調信号としてそれぞれ出力する。本発明の変調制御方法は、第2の変調信号と、第3の変調信号の振幅レベルをそれぞれ計測する。本発明の変調制御方法は、第2の変調信号および第3の変調信号の振幅レベルを基に、合波信号の変調を行う際に印加するバイアス電圧を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、光信号のマーク率に依存せずに、バイアス制御を高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の構成の概要を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態の構成の概要を示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態の回路の構成の一部を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態における信号の振幅レベルの例を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態における信号の波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の変調回路の構成の概要を示したものである。本実施形態の変調回路は、合波手段1と、変調手段2と、分波手段3と、計測手段4と、バイアス制御手段5を備えている。合波手段1は、第1の波長の第1の光信号と、第1の波長とは異なる第2の波長の第1の光と、第1の波長および第2の波長とは異なる第3の波長の第2の光とを合波して合波信号として出力する。変調手段2は、合波信号に変調を施し、変調信号として出力する。分波手段3は、変調信号を分波して、第1の波長の第1の変調信号、第2の波長の第2の変調信号および第3の波長の第3の変調信号としてそれぞれ出力する。計測手段4は、第2の変調信号と、第3の変調信号の振幅レベルをそれぞれ計測する。バイアス制御手段5は、第2の変調信号および第3の変調信号の振幅レベルを基に、変調手段2において合波信号の変調を行う際に印加するバイアス電圧を制御する。
【0013】
本実施形態の変調回路は、第1の波長の光信号に第2の波長および第3の波長の光を合波手段1において多重化し、変調手段2において変調を行っている。また、変調手段2において変調が施された信号は、分波手段3で分波され、第1の変調信号、第2の変調信号および第3の変調信号としてそれぞれ出力される。本実施形態の変調回路では、計測手段4において、第1の光および第2の光に由来する第2の変調信号および第3の変調信号の振幅レベルの計測が行われ、バイアス制御手段5によって、計測結果を基にバイアス電圧が制御される。本実施形態の変調回路では、第1の光および第2の光に由来した信号の振幅レベルの計測結果を基にバイアス電圧を制御しているので、計測結果のばらつき等が生じにくい。また、本実施形態の変調回路では、波長の異なる2つの光に由来した信号の振幅レベルの計測結果を行っているので、計測結果の波長依存性がバイアス制御に与える影響を抑制することができる。そのため、本実施形態の変調回路では、バイアス電圧の制御を正確に行うことが可能になる。その結果、本実施形態の変調回路では、光信号のマーク率に依存せずに、バイアス制御を高い精度で行うことができる。
【0014】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図2は、本実施形態の変調回路の構成の概要を示したものである。本実施形態の変調回路は、LN(Lithium Niobate)変調器において、パルス位置変調を施した光信号を出力する回路である。LN変調器では、稼動時に生じる最適な動作点からのずれを補正するバイアス電圧が印加される。本実施形態の変調回路は、信号の伝送用に用いるパルス状の光信号に、波長の異なる2つの連続波の光を合波して変調を施し、連続波の波長に相当する信号を分波して振幅レベルを計測した結果を基にバイアス電圧の制御を行うことを特徴とする。
【0015】
本実施形態の変調回路の構成について説明する。本実施形態の変調回路は、光信号出力部11と、タイミング信号生成部12と、変調用信号生成部13と、第1の光出力部14と、第2の光出力部15と、合波部16と、変調部17と、分離部18を備えている。また、本実施形態の変調回路は、バイアス制御部19と、第1の受光部20と、第2の受光部21と、第1の信号加算部22と、第2の信号加算部23と、信号反転部24をさらに備えている。
【0016】
光信号出力部11は、制御信号に基づいてパルス信号を出力する機能を有する。光信号出力部11は、半導体レーザを備え、波長λsの光信号を信号源出力信号S14として出力する。波長λsは、あらかじめ設定されている。光信号出力部11は、第1の信号加算部22から出力タイミング信号S13として入力される制御信号に基づいてレーザ光の出力のオンオフを制御し、パルス状の光信号を出力する。光信号出力部11から信号源出力信号S14として出力された光信号は、合波部16に送られる。
【0017】
タイミング信号生成部12は、デューティ比0.5の所定の周波数の信号を出力する。タイミング信号生成部12は、0と1の交番信号、すなわち、High状態とLow状態が、所定の周波数に基づいて交互に繰り返される信号を生成し、タイミング信号S12として出力する。タイミング信号生成部12は、タイミング信号S12を第1の信号加算部22および信号反転部24にそれぞれ送る。
【0018】
変調用信号生成部13は、光信号に変調を施すための変調部17の制御信号を生成する機能を有する。変調用信号生成部13は、外部から入力された符号データ等に基づいて、変調部17で光信号に変調を施すタイミングを示す制御信号を生成する。変調用信号生成部13は、生成した制御信号を第1の信号加算部22および第2の信号加算部23に変調タイミング信号S11として送る。
【0019】
第1の光出力部14は、波長λ1のCW(Continuous Wave)光、すなわち、連続発振光である連続波の光を出力する機能を有する。第1の光出力部14は、半導体レーザを備え、波長λ1の連続光を出力する。波長λ1は、あらかじめ設定されている。第1の光出力部14は、波長λ1の光を合波部16に第1の光S15として送る。
【0020】
第2の光出力部15は、波長λ2のCW光、すなわち、連続発振光である連続波の光を出力する機能を有する。第2の光出力部15は、半導体レーザを備え、波長λ2の連続光を出力する。波長λ2は、あらかじめ設定されている。第2の光出力部15は、波長λ2の光を合波部16に第2の光S16として送る。
【0021】
本実施形態の変調回路では、波長λsは、波長λ1とλ2の間になるように設定される。また、本実施形態の変調回路では、波長λ2は、波長λ1よりも長波長になるように設定される。すなわち、本実施形態の変調回路では、各波長の値は、λ1<λs<λ2を満たすように設定される。また、波長λ1の第1の光S15と、波長λ2の第2の光S16の出力レベルは、それぞれ一定となるように設定されている。
【0022】
合波部16は、入力される光信号等を合波して出力する機能を有する。合波部16は、光信号出力部11から信号源出力信号S14として入力される波長λsの光信号と、第1の光出力部14から第1の光S15として入力される波長λ1の光と、第2の光出力部15から第2の光S16として入力される波長λ2の光を合波する。合波部16は、信号源出力信号S14、第1の光S15および第2の光S16を合波して波長多重化した光信号を、合波信号S17として変調部17に送る。合波部16には、例えば、光カプラを用いることができる。また、本実施形態の合波部16は、第1の実施形態の合波手段1に相当する。
【0023】
変調部17は、入力された光信号に変調を施す機能を有する。本実施形態の変調部17には、LN変調器が用いられる。本実施形態の変調部17は、合波信号S17として入力された光信号に、変調制御信号S19として入力される制御信号に基づいてパルス位置変調を施し、変調信号S21として出力する。図3は、本実施形態の変調部17の構成の概要を示したものである。本実施形態の変調部17は、信号変調部31と、変調制御部32と、バイアス入力部33を備えている。
【0024】
信号変調部31は、合波部16から合波信号S17として入力される信号に、変調制御部32の制御に基づいて変調を施し、変調信号S21として出力する。信号変調部31は、変調制御部32の制御に基づいてLiNbO結晶に印加する電圧を制御することで、光信号に変調を施す。また、信号変調部31は、バイアス入力部33の制御に基づいて、LiNbO結晶にバイアス電圧を印加することで動作点の補正を行う。
【0025】
変調制御部32は、第2の信号加算部23から変調制御信号S19として入力される制御信号に基づいて、信号変調部31においてLiNbO結晶に印加する電圧を制御して光信号の変調を行う。変調制御部32は、信号変調部31におけるLiNbO結晶に印加される電圧と、光信号の変調量の関係をあらかじめ保存している。
【0026】
バイアス入力部33は、バイアス制御部19から送られてくるバイアス制御信号S20に基づいて、信号変調部31のLiNbO結晶にバイアス電圧を印加する。バイアス入力部33は、バイアス制御部19からバイアス制御信号S20として入力されるバイアス電圧の値に基づいてLiNbO結晶に印加するバイアス電圧を制御する。また、本実施形態の変調部17は、第1の実施形態の変調手段2に相当する。
【0027】
分離部18は、入力された光信号を分波して出力する機能を有する。分離部18は、変調部17から変調信号S21として入力される波長多重化された光信号を、波長λs、λ1およびλ2の3つの波長の光信号に分離する。変調部17は、分離した光信号のうち波長λsの光信号を変調回路からの出力信号である出力信号S22として出力する。
【0028】
分離部18は、分離した光信号のうち波長λ1の光信号を第1の監視信号S23として第1の受光部20に送る。また、分離部18は、分離した光信号のうち波長λ2の光信号を第2の受光部21に第2の監視信号S24として送る。分離部18には、例えば、回折格子を用いることができる。また、本実施形態の分離部18は、第1の実施形態の分波手段3に相当する。
【0029】
バイアス制御部19は、変調部17において光信号に変調を施す際のバイアス電圧を設定する機能を有する。バイアス制御部19は、第1の受光部20から入力される波長λ1の第1の計測信号S25の振幅レベルと、第2の受光部21から入力される波長λ2の第2の計測信号S26の振幅レベルを基に、変調部17の出力時の波長λsの光信号の振幅レベルを推定する。振幅レベルとは、光信号が1を示す状態、すなわち、Highの状態の際の光信号の振幅のことをいう。バイアス制御部19は、推定した波長λsの光信号の振幅レベルと、波長λsの振幅レベルの設定値を基にバイアス電圧の値を設定する。バイアス制御部19は、信号変調部31におけるLiNbO結晶に印加される電圧と、光信号の変調量の関係をあらかじめ保存している。バイアス制御部19は、あらかじめ保存しているLiNbO結晶に印加される電圧と、光信号の変調量の関係と、第1の計測信号S25および第2の計測信号S26として入力される計測結果に基づいてLiNbO結晶に印加するバイアス電圧を制御する。バイアス制御部19は、算出したバイアス電圧の値の情報を、変調部17のバイアス入力部33にバイアス制御信号S20として送る。また、本実施形態のバイアス制御部19は、第1の実施形態のバイアス制御手段5に相当する。
【0030】
本実施形態の変調回路におけるバイアス電圧の値の設定方法の例について図4を参照して説明する。図4は、各波長の光信号と振幅レベルの関係を模式的にグラフとして示した図である。図4の例では、波長λ1の光信号は、波長λsの光信号よりも振幅のレベルがn1(dB)小さくなるように設定されている。また、波長λ2の光信号は、波長λsの光信号よりも振幅のレベルがn2(dB)大きくなるように設定されている。波長λ1およびλ2の光信号の振幅レベルと、波長λsの光信号の振幅レベルの差は、実測されたデータを基に検量線等が作成されてあらかじめ保存されている。図4のような状態のとき、あらかじめ波長λ1と波長λ2の光信号の振幅レベルから波長λsの光信号の振幅レベルを推測することで、バイアス制御部19は、波長λsの光信号の振幅レベルの設定値からのずれを算出することができる。バイアス制御部19は、波長λsの光信号の振幅レベルの設定値からのずれを基に、バイアス電圧の値を設定する。
【0031】
第1の受光部20は、波長λ1の光信号の振幅レベルを計測する機能を有する。第1の受光部20は、分離部18から第1の監視信号S23として入力される波長λ1の光信号を電気信号に変換する。第1の受光部20は、電気信号に変換した信号の振幅レベルを示すデータをバイアス制御部19に第1の計測信号S25として送る。本実施形態の第1の受光部20は、フォトダイオードを用いて形成することができる。
【0032】
第2の受光部21は、波長λ2の光信号の振幅レベルを計測する機能を有する。第2の受光部21は、分離部18から第2の監視信号S24として入力される波長λ2の光信号を電気信号に変換する。第2の受光部21は、電気信号に変換した信号の振幅レベルを示すデータをバイアス制御部19に第2の計測信号S26として送る。本実施形態の第2の受光部21は、フォトダイオードを用いて形成することができる。また、本実施形態の第1の受光部20および第2の受光部21は、第1の実施形態の計測手段4に相当する。
【0033】
第1の信号加算部22は、タイミング信号生成部12からタイミング信号S12として入力される信号と、変調用信号生成部13から変調タイミング信号S11として入力される信号を加算する。第1の信号加算部22は、加算した信号を出力タイミング信号S13として光信号出力部11に送る。
【0034】
第2の信号加算部23は、信号反転部24から反転信号S18として入力される信号と、変調用信号生成部13から変調タイミング信号S11として入力される信号を加算する。信号反転部24から入力される信号は、タイミング信号生成部12から出力された信号を信号反転部24において反転した信号である。第2の信号加算部23は、加算した信号を変調部17の変調制御部32に変調制御信号S19として送る。
【0035】
信号反転部24は、入力された信号を反転して出力する。信号反転部24は、タイミング信号生成部12からタイミング信号S12として入力される信号のHigh状態とLoe状態を反転する。信号反転部24は、タイミング信号S12として入力される信号を反転した信号を、第2の信号加算部23に反転信号S18として送る。
【0036】
本実施形態の変調回路の動作について説明する。変調回路が動作を開始すると、変調用信号生成部13は、外部から入力される符号データ等を基に変調のタイミングを示す信号を変調タイミング信号S11として出力する。変調用信号生成部13から出力された変調タイミング信号S11は、第1の信号加算部22および第2の信号加算部23にそれぞれ送られる。
【0037】
また、タイミング信号生成部12は、所定の周波数のデューティ比0.5の信号を生成し、タイミング信号S12として出力する。タイミング信号生成部12から出力されたタイミング信号S12は、第1の信号加算部22および信号反転部24にそれぞれ送られる。
【0038】
変調タイミング信号S11およびタイミング信号S12が入力されると、第1の信号加算部22は、2つの信号を加算して出力タイミング信号S13として出力する。第1の信号加算部22から出力された出力タイミング信号S13は、光信号出力部11に送られる。
【0039】
出力タイミング信号S13が入力されると、光信号出力部11は、出力タイミング信号S13に基づいた送信タイミングで、波長λsの光信号を信号源出力信号S14として出力する。光信号出力部11は、出力タイミング信号S13がhighの状態を示すとき、光を出力し、出力タイミング信号S13がLowの状態を示すとき、光の出力を停止する。光信号出力部11から出力され信号源出力信号S14は、合波部16に送られる。
【0040】
また、第1の光出力部14は、波長λ1のCW光、すなわち、連続波の光を生成し、第1の光S15として出力する。同様に、第2の光出力部15は、波長λ2のCW光、すなわち、連続波の光を生成し、第2の光S16として出力する。第1の光出力部14および第2の光出力部15から出力された第1の光S15および第2の光S16は、合波部16にそれぞれ送られる。
【0041】
信号源出力信号S14、第1の光S15および第2の光S16が合波部16に入力されると、合波部16は、信号源出力信号S14、第1の光S15および第2の光S16を波長多重化した光信号を合波信号S17として出力する。すなわち、合波部16は、波長λsの光信号と、波長λ1の光と、波長λ2の光を波長多重化した光信号を、合波信号S17として出力する。合波部16から出力された合波信号S17は、変調部17に送られる。
【0042】
図5は、本実施形態の変調回路の各部位における信号の波形を模式的に示したものである。図5の例において、変調部17には、「(4)光信号出力部出力」、「(5)第1の光出力部出力」および「(6)第2の光出力部出力」として示した信号が波長多重化されて入力される。
【0043】
また、タイミング信号生成部12から出力されたタイミング信号S12が信号反転部24に入力されると、信号反転部24は、信号を反転させて反転信号S18として出力する。信号反転部24は、入力されたタイミング信号S12がLow状態のときは、High状態の信号を出力する。信号反転部24は、入力されたタイミング信号S12がHigh状態のときは、Low状態の信号を出力する。また、信号反転部24から出力された反転信号S18は、第2の信号加算部23に送られる。
【0044】
変調タイミング信号S11と、反転信号S18が第2の信号加算部23に入力されると、第2の信号加算部23は、変調タイミング信号S11と、反転信号S18を加算して変調制御信号S19として出力する。第2の信号加算部23から出力された変調制御信号S19は、変調部17に送られる。
【0045】
合波信号S17が変調部17に入力されると、変調部17は、変調制御信号S19およびバイアス制御信号S20に基づいて合波信号S17に変調を施し、変調信号S21として出力する。変調部17から出力された変調信号S21は、分離部18に送られる。
【0046】
変調信号S21が分離部18に入力されると、分離部18は、波長多重化されて入力された光信号を分波する。変調信号S21は、波長λs、波長λ1および波長λ2の光信号が波長多重化されているので、分離部18は、波長λs、波長λ1および波長λ2の光信号に分波する。
【0047】
図5の例において、変調部17では、「(7)変調部 制御信号入力」として示した信号に基づいて変調が施され、「(8)変調部 出力」として示した信号が変調信号S21として出力される。変調部17では、タイミング信号生成部12が生成した信号のタイミングに基づいて光信号出力部11から出力された信号の成分は、信号反転部24で反転された信号で変調が行われることでキャンセルされる。その結果、変調部17からの出力信号は、変調用信号生成部13が生成した信号のタイミングに基づく波長λsのパルス波と、信号反転部24で反転された信号で変調された、波長λ1の第1の光S15と波長λ2の第2の光S16が多重化された光信号となる。
【0048】
分離部18において、各波長の光信号に分波すると、各波長の光信号は、図5に「(9)分離部出力(波長λs)」、「(10)分離部出力(波長λ1)」および「(11)分離部出力(波長λ2)」として示す光信号としてそれぞれ出力される。すなわち、連続波であった波長λ1および波長λ2の光は、変調部17を通過後にデューティ比0.5程度の光信号として出力される。本実施形態の変調回路では、デューティ比0.5程度の光信号を、振幅レベルの計測に用いることで光信号の振幅レベルをモニターする際の制度を向上することができる。また、図5において、「(9)分離部出力(波長λs)」として示した波形の光信号は、変調回路から出力信号S22として出力される。
【0049】
波長多重化された変調信号S21を分波すると、分離部18は、波長λsの光信号を出力信号S22として出力する。出力信号S22として分離部18から出力される波長λsの光信号は、変調回路の出力信号として伝送路等に出力される。また、波長多重化された変調信号S21を分波すると、分離部18は、波長λ1の光信号を第1の監視信号S23として出力する。分離部18から出力された第1の監視信号S23は、第1の受光部20に送られる。また、波長多重化された変調信号S21を分波すると、分離部18は、波長λ2の光信号を第2の監視信号S24として出力する。分離部18から出力された第2の監視信号S24は、第2の受光部21に送られる。
【0050】
第1の監視信号S23が第1の受光部20に入力されると、第1の受光部20は、入力された波長λ1の光信号を電気信号に変換する。第1の受光部20は、波長λ1の光信号を電気信号に変換すると、変換した電気信号をバイアス制御部19に第1の計測信号S25として送る。
【0051】
また、第2の監視信号S24が第2の受光部21に入力されると、第2の受光部21は、入力された波長λ2の光信号を電気信号に変換する。第2の受光部21は、波長λ2の光信号を電気信号に変換すると、変換した電気信号をバイアス制御部19に第2の計測信号S26として送る。
【0052】
第1の計測信号S25および第2の計測信号S26がバイアス制御部19に入力されると、バイアス制御部19は、第1の計測信号S25および第2の計測信号S26を基に変調部17で印加するバイアス電圧の値を算出する。バイアス電圧の値を算出する際に、バイアス制御部19は、第1の計測信号S25および第2の計測信号S26が示す振幅レベルを基に、波長λsの光信号の振幅レベルの推定値を算出する。バイアス制御部19は、計測結果を基に算出した波長λsの光信号の振幅レベルの推定値と、あらかじめ保存されている波長λsの光信号の振幅レベルの設定値の差を補正するようにバイアス電圧の値を設定する。バイアス制御部19は、バイアス電圧の値を算出すると、バイアス電圧の値を示す情報をバイアス制御信号S20として変調部17に送る。
【0053】
バイアス制御信号S20が変調部17に入力されると、変調部17は、合波信号S17に変調を施す際に、バイアス制御信号S20に基づいてバイアス電圧を印加する。変調回路の各部位は、上記の動作を繰り返すことで、光信号の変調およびバイアスの制御を繰り返し行う。上記の動作を繰り返すことで、本実施形態の変調回路は、バイアス制御によって最適な動作点で光信号に変調を施すことができる。
【0054】
本実施形態の変調回路では、光信号出力部11から出力された光信号に、光信号よりも長波長側と短波長側の2つの連続光を合波し、波長多重化された信号に変調部17で変調を施している。また、変調を施した後の波長多重化された光信号を分波し、2つの連続光に相当する波長の光信号の計測をそれぞれ行っている。本実施形態の変調回路では、2つの連続光に相当する波長の光信号の振幅レベルを基に、変調部17で印加するバイアス電圧を決定している。
【0055】
このように、2つの波長の連続光の計測結果を基に、バイアス電圧を決定することで、変調時や各素子の通過時の振幅レベルの変化に波長依存性があった場合でも、変調を施す対象である伝送に用いる光信号の振幅レベルを正確に推測することができる。また、本実施形態の変調回路では、変調後においてもマーク率が低い値にはならない連続光に由来した信号を計測しているので、変調部17の出力側での振幅レベルを高い精度で測定することができる。そのため、本実施形態の変調回路では、変調部17のバイアスの制御を高い精度で行うことができる。その結果、本実施形態の変調回路は、光信号のマーク率に依存せずに、バイアス制御を高い精度で行うことができる。
【0056】
第2の実施形態の変調回路では、パルス位置変調方式によって光信号の変調を行っているが、変調方式は、強度変調方式、周波数変調方式、位相変調方式、または、それらの変調方式の組み合わせなど他の変調方式であってもよい。
【0057】
第2の実施形態の変調回路では、連続波として波長の異なる2つの光を多重化した状態で、光信号の変調を行っているが、多重化する光は3波長以上であってもよい。また、第2の実施形態の変調回路では、出力する光信号の波長λsを間に含む2つの波長の連続光を多重化しているが、波長λsよりも長波長または短波長側の2つ以上の波長の連続波の光を多重化してもよい。また、波長λsの光信号に合波される連続波の光は、複数の波長の光が多重化された状態で、合波部に入力されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 合波手段
2 変調手段
3 分波手段
4 計測手段
5 バイアス制御手段
11 光信号出力部
12 タイミング信号生成部
13 変調用信号生成部
14 第1の光出力部
15 第2の光出力部
16 合波部
17 変調部
18 分離部
19 バイアス制御部
20 第1の受光部
21 第2の受光部
22 第1の信号加算部
23 第2の信号加算部
24 信号反転部
31 信号変調部
32 変調制御部
33 バイアス入力部
S11 変調タイミング信号
S12 タイミング信号
S13 出力タイミング信号
S14 信号源出力信号
S15 第1の光
S16 第2の光
S17 合波信号
S18 反転信号
S19 変調制御信号
S20 バイアス制御信号
S21 変調信号
S22 出力信号
S23 第1の監視信号
S24 第2の監視信号
S25 第1の計測信号
S26 第2の計測信号
図1
図2
図3
図4
図5