【実施例】
【0028】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
重合するモノマーとして、塩化ビニリデンと塩化ビニルとを82:18の質量比で含む混合物を用いた。この混合物100質量部に、添加剤として、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)2.5質量部、ジアセチルモノラウリルグリセリド(DALG)3.0質量部、及びエポキシ化大豆油(ESBO)2.8質量部の合計8.3質量部を加えて混合した。重合初期温度45℃で重合を開始し、次いで、時間(t:時間)と
、重合温度と重合初期温度との差(T:℃)の関係が、下式(1a):
T=0.0274t
2+0.2234t (1a)
で表される昇温条件で昇温しながら重合を行い、次いで、重合後期温度62℃で6時間一定温度とし懸濁重合を行って、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を得た。全重合時間は27時間とした。次いで、φ40の単軸押出機に前記共重合体を供給し、樹脂温度約170℃で環状に溶融押出し、温度10℃の冷却槽で急冷した後、温度25℃の温浴槽で温め、28℃にてMD4.0倍、TD4.8倍のインフレーション二軸延伸を行い、その後MD方向に緩和を7%取り、厚み15μmのラップフィルムを作製した。
【0030】
[実施例2]
重合するモノマーとして、塩化ビニリデンと塩化ビニルとを82:18の質量比で含む混合物を用いた。この混合物100質量部に、添加剤として、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)2.5質量部、ジアセチルモノラウリルグリセリド(DALG)3.0質量部、及びエポキシ化大豆油(ESBO)2.8質量部の合計8.3質量部を加えて混合した。重合初期温度45℃で重合を開始し、次いで、時間(t:時間)と
、重合温度と重合初期温度との差(T:℃)の関係が、下式(1b):
T=0.0216t
2+0.1764t (1b)
で表される昇温条件で昇温しながら重合を行い、次いで、重合後期温度62℃で3時間一定温度とし懸濁重合を行って、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を得た。全重合時間は27時間とした。次いで、φ40の単軸押出機に前記共重合体を供給し、樹脂温度約170℃で環状に溶融押出し、温度10℃の冷却槽で急冷した後、温度25℃の温浴槽で温め、28℃にてMD4.0倍、TD4.7倍のインフレーション二軸延伸を行い、その後MD方向に緩和を7%取り、厚み15μmのラップフィルムを作製した。
【0031】
[実施例3]
重合するモノマーとして、塩化ビニリデンと塩化ビニルとを82:18の質量比で含む混合物を用いた。この混合物100質量部に、添加剤として、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)2.5質量部、ジアセチルモノラウリルグリセリド(DALG)3.0質量部、及びエポキシ化大豆油(ESBO)2.8質量部の合計8.3質量部を加えて混合した。重合初期温度43℃で重合を開始し、次いで、時間(t:時間)と
、重合温度と重合初期温度との差(T:℃)の関係が、下式(1c):
T=0.0274t2+0.2234t (1c)
で表される昇温条件で昇温しながら重合を行い、次いで、重合後期温度62℃で3時間一定温度とし懸濁重合を行って、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を得た。全重合時間は27時間とした。次いで、φ40の単軸押出機に前記共重合体を供給し、樹脂温度約170℃で環状に溶融押出し、温度10℃の冷却槽で急冷した後、温度25℃の温浴槽で温め、28℃にてMD4.0倍、TD4.8倍のインフレーション二軸延伸を行い、その後MD方向に緩和を7%取り、厚み15μmのラップフィルムを作製した。
【0032】
[比較例1]
重合するモノマーとして、塩化ビニリデンと塩化ビニルとを82:18の質量比で含む混合物を用いた。この混合物100質量部に、添加剤として、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)2.5質量部、ジアセチルモノラウリルグリセリド(DALG)3.0質量部、及びエポキシ化大豆油(ESBO)2.8質量部の合計8.3質量部を加えて混合した。重合初期温度47℃で重合を開始し、次いで、時間(t:時間)と
、重合温度と重合初期温度との差(T:℃)の関係が、下式(2):
T=0.0144t
2+0.1176t (2)
で表される昇温条件で昇温しながら重合を行い、次いで、重合後期温度56.5℃で2時間一定温度とし懸濁重合を行って、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を得た。全重合時間は27時間とした。次いで、φ40の単軸押出機に前記共重合体を供給し、樹脂温度約170℃で環状に溶融押出し、温度10℃の冷却槽で急冷した後、温度25℃の温浴槽で温め、28℃にてMD4.0倍、TD4.5倍のインフレーション二軸延伸を行い、その後MD方向に緩和を7%取り、厚み15μmのラップフィルムを作製した。
【0033】
[二連子部位の比測定]
作製したフィルムについて、塩化ビニリデン由来の構成単位1個と塩化ビニル由来の構成単位1個とが連続する二連子部位の割合、及び、塩化ビニル由来の構成単位2個が連続する二連子部位の割合を、NMRによる測定結果に基づき、モル分率として算出した。
【0034】
フィルム1gを採取し、THFを50ml加え、50℃で溶解させた。その後、メタノール300mLを徐々に加え、再沈殿させた。再沈殿物を濾過・乾燥し、再沈殿物を精製した。精製した再沈殿物を35mg採取し、試験管に入れ、測定溶媒である重水素化THFを0.75ml加え均一に溶解させた。溶液を0.35ml採取し、高分解能プロトン核磁気共鳴装置(株式会社JEOL RESONANCE製「FT−NMR JNM−EX270」)にてNMR測定を行った。間隔時間5秒、積算回数128回という条件で測定を行い、テトラメチルシランのシグナルを基準とした化学シフトを横軸としたスペクトルを得た。
【0035】
以下、塩化ビニリデン由来の構成単位(−CH
2−CCl
2−)をA、塩化ビニル由来の構成単位(−CH
2−CHCl−)をBと表記し、スペクトル上に得られたシグナル1、2、及び3を以下の通り帰属した。
・シグナル1(約5.2〜4.5ppm)をBのCHシグナル(塩化ビニル由来の構成単位のメチン(CH)基)に帰属した。
・シグナル2(約4.2〜3.8ppm)をAAの片方のAのCH
2シグナル(塩化ビニリデン由来の構成単位のメチレン(CH
2)基)に帰属した。
・シグナル3(約3.5〜2.8ppm)をAB及びBA両方のAのCH
2シグナル(塩化ビニリデン由来の構成単位のメチレン(CH
2)基)に帰属した。
【0036】
これらのシグナルのスペクトル面積値(NMRスペクトルにおけるシグナルの面積)から、構成単位又は二連子部位のモル分率を求めた。なお、各モル分率を以下の通り表記する。
・Aのモル分率(モル%):P(A)
・Bのモル分率(モル%):P(B)
・AA(塩化ビニリデン由来の構成単位2個が連続する二連子部位)のモル分率(モル%):P(AA)
・AB(塩化ビニリデン由来の構成単位1個と塩化ビニル由来の構成単位1個とが連続する二連子部位)のモル分率(モル%):P(AB)
・BB(塩化ビニル由来の構成単位2個が連続する二連子部位)のモル分率(モル%):P(BB)
【0037】
上記の通り帰属したシグナル1、2、及び3の面積値(NMRスペクトルにおけるピークの面積)から、上記スペクトル上のシグナルの積分値を以下の通りに割り当てた。
・シグナル1(約5.2〜4.5ppm)の積分値をBの
1H1個分
・シグナル2(約4.2〜3.8ppm)の積分値をAの
1H2個分
・シグナル3(約3.5〜2.8ppm)の積分値をAの
1H4個分
【0038】
下記の式が成り立つのを用いて、各モル分率を計算した。
・P(A) + P(B) = 100
・P(AA) + P(BB) + P(AB) + P(BA) = 100
・P(AB) = P(BA)
・P(A) = P(AA) + P(AB)
・P(B) = P(BB) + P(BA)
【0039】
P(A)及びP(B)を次式(数3)により求める。
(数3)
P(B):P(A) =シグナル1の積分値:(シグナル2の積分値+シグナル3の積分値/2)/2
P(A)=100−P(B)
【0040】
P(AA)及びP(BB)を(数4)及び(数5)により求める。
(数4)
P(AA):P(AB)=シグナル2の積分値:シグナル3の積分値/2
P(AB)=P(A)−P(AA)
(数5)
P(BB)=100−P(AA)−P(AB)−P(BA)
【0041】
[分子量の測定]
フィルム5gをテトラヒドロフラン300mlに加え、50℃で溶解し、メタノールによりポリマーを析出させ、濾過、乾燥した。この乾燥ポリマー7.5mgをテトラヒドロフラン10mlに加え、50℃で溶解し、室温に冷却後、0.20μmのフィルターで濾過した。濾過液を液体クロマトグラムに注入して、分子量を測定した。測定装置としては、昭和電工株式会社製Shodex GPC−104を使用し、カラムとしては、昭和電工株式会社製LF−404を使用した。上記共重合体の分子量は、分子量既知の単分散ポリスチレンを標準物質として用いて算出した。得られた分子量分布より、2万以下の分子量を持つ分子鎖の割合を計算した。
【0042】
[面剥離強度の測定]
この方法は、食器等の容器や食品にラップフィルムを被せたときのラップフィルム同士の密着力を評価したものである。以下の通りに面剥離強度を測定した。底面積が25cm
2で質量が300gの円柱を2本用意した。この2つの円柱の底面に、ラップフィルムを皺が入らないように緊張させて固定した。そして、これらのラップフィルム面の相互がぴったり重なり合うように片方の円柱の上にもう1本の円柱を合わせた後、1分間圧着した。所定時間経過後に重なり合わせた円柱に固定されたままのラップフィルム相互を株式会社オリエンテック製引張・圧縮試験機テンシロンRTC−1210Aにて100mm/minの速度で面に垂直な方向に引き離し、このとき生じた最大点応力(N)を面剥離強度とした。測定は、23℃、50%RHの雰囲気中で行った。試験は5回行い、その平均値を測定結果として採用した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】