【実施例1】
【0015】
実施例1に係る搬送台車の搬送設備につき、
図1から
図7を参照して説明する。
図1及び
図2に示されるように、搬送設備Sは、複数の収容ライン2a,2a,…を上下に備え床に固定されて立設された収容棚2と、収容棚2において物品の移動を行う搬送台車1と、搬送台車1を所定の段の収容ライン2aに対して移載させる際に搬送台車1を上下に移動させる昇降装置20(移送装置)を備えている。収容棚2の各収容ライン2a,2a,…には、正面視L字状、逆L字状で一対に対向する収容側走行レール4,4,…が敷設されており、収容側走行レール4,4,…の上端である載置部4a,4a,…には、物品3が載置された複数のパレット9,9,…が支持されている。
【0016】
図3及び
図4に示されるように、搬送台車1は、収容側走行レール4の下端に設けられた走行面4bを走行可能な車体6と、物品3を載置支持し車体6に対し昇降可能に設けられた載置台7と、該載置台7を昇降させる昇降駆動部(図示せず)と、搬送台車1を収容側走行レール4上で走行可能とする走行装置12と、制御部18とを備えており、載置台7がパレット9の下面から離間する最下降状態で収容側走行レール4の走行面4bを走行してパレット9の下方に進入した後、載置台7を上昇させることでパレット9ごと物品3を持ち上げ、パレット9及び物品3を収容側走行レール4の載置部4aから所定高さ浮かせて運搬するようになっている。
【0017】
制御部18は、走行用の駆動モータを駆動制御する駆動モータ制御部、昇降用の昇降モータを駆動制御する昇降モータ制御部、記憶部、通信制御部、を備えるとともに、操作端末40から送信された信号により操作される操作手段アプリがインストールされている。記憶部は、制御装置の駆動信号の履歴、搬送台車1の運転履歴等を記憶する機能を有する。通信部19は、後述する操作端末40と昇降装置20との信号の送受信を可能としている。
【0018】
また、車体6の前後の側板部には、それぞれの左右端部から外側に張り出す水平ローラ15,15,…が設けられている。さらに、左右の側板部には、その前後方向の中央部近傍に水平ローラ16,16がそれぞれ設けられている。これら水平ローラ15,15,…及び水平ローラ16,16が収容側走行レール4の側壁部4d,4d(
図4参照)に当接することにより、車体6が収容側走行レール4に沿って走行するようになっている。
【0019】
また、搬送台車1の前側にはセンサ装置5(検知手段)が設けられている。センサ装置5は、発信部51と、受信部52と、判定部53とから主に構成されており、図示しないケーブルにより制御部18と接続されている。
【0020】
図3に示されるように、搬送台車1の車体6における側面には、センサ64が設けられている。センサ64は、投光部と受光部とを有したフォトセンサであり、後述する収容側走行レール4に形成されたスリット30(
図5参照)と同一の高さ位置に配置されている。このセンサ64は搬送台車1の走行時において投光部から投光された光を受光部で受光した反射量と、予め設定された閾値との関係により、スリット30を検出できるようになっている。
【0021】
搬送台車1は、センサ64でスリット30を検出したことにより、収容ライン2aにおけるホームポジションに位置していることを判断できるようになっている。搬送台車1はホームポジションにおいて、収容側走行レール4上の端部側に安全に位置した状態となっており、ホームポジションは収容側走行レール4上を走行する搬送台車1の待機位置として機能している。
【0022】
また搬送台車1は、収容棚2内での異なる高さの収容ライン2aへの移載または最下段の収容部2aと略同じ高さに位置する図示しない搬送コンベアへの移載は、昇降装置20により行われるようになっている。
図1に示されるように、昇降装置20は、床面状に配置される基台部21と、この基台部21から上下方向に2本起立するマスト22,22と、これらマスト22,22の上端を結ぶ横杆部23と、マスト22,22に上下方向に移動可能に支持される昇降台24(移送台)と、昇降台24を上下方向に移動させる詳述しない昇降駆動部26と、から主に構成されている。
【0023】
昇降台24は、収容側走行レール4と略同一構造の昇降側走行レール25,25を備えており、昇降台24の上下移動時において搬送台車1は昇降側走行レール25,25上に支持され、搬送台車1が収容ライン2aから昇降装置20に移載される際、もしくは昇降装置20から収容ライン2aに移載される際には、搬送台車1は昇降側走行レール25,25の走行面4b上を走行するようになっている。
【0024】
また、昇降装置20は、通信部29と制御部28、とを有している。通信部29は、搬送台車1との信号の送受信を可能としている。制御部28には、昇降台24を所定の収容ライン2a,2a,…まで移動させる駆動プログラムがインストールされている。また、制御部28は、昇降駆動部26の駆動動作を監視することで、昇降台24の現在位置を把握可能となっている。
【0025】
図5に示されるように、収容側走行レール4,4は、走行面4b,4bの各外方側部から立設する側壁部4dの昇降台24の昇降側走行レール25,25との突き合わせ端部近傍に前述のスリット30が設けられている。
【0026】
尚、昇降側走行レール25,25にも、収容側走行レール4と同様にスリット(図示せず)が設けられており、搬送台車1は、センサ64で昇降側走行レール25,25側のスリットを検出したことにより、昇降台24におけるホームポジションに位置していることを判断できるようになっている。
【0027】
また、スリット30の近傍には、当該収容側走行レール4,4を有する収容ライン2aの位置情報を示す固有のIDを送信可能なRFタグ66が設けられている。RFタグ66は、側壁部4dの外側に固定される固定具(図示せず)に取り付けられており、スリット30の下方に設けられた孔67を介して収容側走行レール4,4の内側に向けて前記固有のIDを送信可能となっている。搬送台車1は、センサ64の近傍に設けられたRFIDリーダ65によりRFタグ66からの固有のIDを受信することにより、自身がどの収容ライン2aに位置しているかを判断することができる。
【0028】
尚、昇降側走行レール25,25にも、収容側走行レール4と同様にRFタグとRFタグ用の孔(図示せず)が設けられており、搬送台車1は、前記固有のIDを受信することにより、自身が昇降台24上に位置しているかを判断することができる。
【0029】
図6に示すように、搬送設備Sは、複数の搬送台車1,1…を遠隔操作するための操作端末40と、昇降装置20と、アクセスポイント60とを備え、これら操作端末40と昇降装置20と複数の搬送台車1,1…とは、アクセスポイント60を介して無線LANで接続されている。
【0030】
操作端末40は、タッチパネル式の所謂タブレット端末となっており、複数の搬送台車のうち1台とアクセスポイント60を介して接続され、指定の搬送台車1の動作をコントロールすることができる。
【0031】
尚、搬送台車1は自身の制御部18にインストールされた操作手段アプリにより駆動操作可能となっており、操作端末40には、接続した搬送台車1から受信した操作手段アプリの操作画面がミラーリングされて表示されることになる。そのため、操作端末40に高い処理能力を必要としないばかりか、既成品の端末を操作端末に転用し易くなっている。
【0032】
操作端末40による搬送台車1の駆動操作としては、例えば、操作手段アプリに予めプログラムされている指示の内、搬送台車1が現在位置する収容ラインから物品3を出庫する指示が与えられると、搬送台車1は物品3の位置まで走行し、物品3およびパレット9(説明の簡略化のため、単に物品3のみを記載しパレット9の説明を省略する。)を持ち上げた状態で収容側走行レール4のホームポジションまで走行する。
【0033】
ホームポジションにおいて後述するように昇降台24の位置を確認した搬送台車1は、収容側走行レール4と昇降側走行レール25との突き合わせ端部を乗り越えて連続的に走行し、昇降台24の昇降側走行レール25,25上に移動する。続いて、昇降装置20により下方に運ばれて、最下段の収容ライン2aと略同じ高さに位置する図示しない搬送コンベアに物品3を受け渡たす。
【0034】
搬送台車1は、操作端末40から出庫指示を受信し、実際に当該出庫指示を実行する段階となった後、所定のタイミングで昇降装置20に対して自身が位置する収容ライン2aの情報を昇降装置20に送信する。昇降装置20側は、搬送台車1から収容ライン2aの情報を受信した場合、これを搬送台車1からの呼び出し信号と判断するようになっている。尚、搬送台車1は、所定の搬送コンベアへ自身を運搬させる指示を、呼び出しの信号と合わせて情報昇降装置20へ送信する。
【0035】
また、搬送台車1は、自身が位置する収容ライン2aの情報に加えて自身の台車IDを同時に昇降装置20に送信するようになっている。呼び出し信号を受信した昇降装置20は、呼び出し信号を動作テーブルT1に記憶する(
図7参照)。尚、受信した呼び出し信号は、呼び出し信号を受信した時刻の情報と、この時刻の情報に基づき順番に指令Noと対応付けられて記憶される。
【0036】
昇降装置20は、動作テーブルT1から1番小さい番号の指令Noに対応付けられた収容ライン2aへ昇降台24を移動させる迎え動作処理を開始する。迎え動作処理の開始後、昇降装置20は、昇降台24が指定の収容ライン2aの前に到着すると、指令信号を受信した搬送台車1に対し、到着信号を送信する。
【0037】
尚、昇降装置20は前述した通り、制御部28により昇降駆動部26の駆動動作を監視し、指定された収容ライン2aへ昇降台24が到着したことを自ら判断することができるようになっている。この到着判断がなされると、指令信号を受信した搬送台車1に対して、通信部29から到着信号を送信するようになっている。
【0038】
搬送台車1は収容ライン2aのホームポジションへ到着した状態で、昇降装置20からの到着信号を受信すると、昇降台24の昇降側走行レール25,25に乗り移る動作を開始する。そして、昇降台24におけるホームポジションに移動したことを前述のセンサ64により検知した時点で、乗り移りを完了したことを示す情報を昇降装置20に送信する。
【0039】
搬送台車1は昇降台24の昇降側走行レール25,25に乗り移る動作を開始するにあたって、前述のセンサ装置5による判定を利用する。センサ装置5は、発信部51より光信号を発信してから、受信部52が反射信号を受信するまでの時間から、センサ装置5から昇降装置20の昇降台24に設けられた図示しない反射板までの距離を検知するように構成されている。
【0040】
センサ装置5には、昇降台24が適正高さに停止しており、かつ、搬送台車1がホームポジションに停止している時における、昇降台24の反射板と搬送台車1のセンサ装置5との基準距離が予め設定されており、この基準距離を検知した場合、収容側走行レール4,4の走行面4b,4bと昇降側走行レール25,25の走行面25b,25b(
図5参照)との突き合わせ端部の上下位置が一致したことを判断し、昇降側走行レール25,25に乗り移る動作を開始する。
【0041】
また、搬送台車1は、操作端末40からの指令にて指定された数の物品3の出庫に必要な回数だけ昇降台24を上下させる指令と、当該指定された数の物品3を所定の出庫ラインに受け渡たした後に自身を元居た収容ライン2aへ運搬させる指令と、を昇降装置20へ指示するようになっている。そして、元居た収容ライン2aのホームポジションに移動したことを前述のセンサ64により検知した時点で迎え動作処理が完了したことを示す情報を昇降装置20に送信する。
【0042】
また、昇降装置20は、搬送台車1の乗り移りを完了したことを示す情報を受信するまでは、昇降台24をロックし、昇降不可状態とするとともに、当該情報を受信した時点で、昇降台24のロックを解除し、昇降可能状態となる。
【0043】
昇降装置20は、迎え動作処理の完了したことを示す情報を受信したことにより、当該指令Noを動作テーブルT1から削除するとともに、次に続く指令Noが存在する場合、その指令Noを実行する。
【0044】
また、昇降装置20は、呼び出し信号に対応する情報が動作テーブルT1に記憶された時点で、この信号を受信した時刻の情報に基づき、受け取った複数の信号のうち何番目に指定の収容ライン2aに向かう予定となっているかの情報を、当該信号を送信した各搬送台車1に対してそれぞれ送信するようになっている。そのため、搬送台車1側は、昇降台24の到着までの時間に合わせて現在の収容ライン2a内における物品3の搬送等の作業を行うことができ、物品3の入出庫作業の効率が高い。
【0045】
このように、収容ライン2aと昇降装置20との間で搬送台車1を乗り移りさせる場合、昇降装置20の呼び出しは搬送台車1が行うため、操作者は操作端末40により搬送台車1に駆動指令を送信するための操作をするだけで、操作者が直接的に昇降台24を指定の収容ライン2aへ移動させるための昇降装置20の操作を別途必要としないため、搬送設備Sにおける入出庫動作時の操作を簡素化することができる。また、操作者が昇降装置20と搬送台車1とにそれぞれ駆動指令を送信していないため、操作誤りによる、作業効率の低下を抑制できる。
【0046】
尚、上記した実施例においては、駆動操作される搬送台車1の位置する収容ライン2aに出庫する物品が存在する場合を例に、搬送台車1及び昇降装置20の動作を説明したが、出庫する物品の位置等の条件で、様々な動作が考えられる。例えば、駆動操作される搬送台車1の位置する収容ライン2aに出庫する物品が存在せず、他の段の収容ライン2aから物品を出庫させる指示を操作端末40から受信した場合には、搬送台車1は、物品を運ばない状態で昇降台24を呼び寄せ、出庫する物品の存在する収容ライン2aへ自身を運搬させる指示を、呼び出しの信号と合わせて情報を昇降装置20へ送信することになる。
【0047】
また、複数の物品(例えば3個)を出庫する駆動指令を受けた搬送台車1は、収容ライン2aから出庫ラインへ3回運搬される必要があるが、前述した通り昇降装置20は、前述の迎え動作処理の完了したことを示す情報を受信するまで、次に続く指令Noの実行を行わない態様である。そのため、昇降装置20は、昇降台24を3回上下させる運搬動作の間に別の搬送台車を迎えに行く動作を行わないため、昇降装置20の制御部28に高い処理能力を必要としない。
【0048】
尚、上記した実施例においては、物品の入出庫作業において、物品を載せた搬送台車1が昇降台24により出庫ラインまで運搬される態様で説明したが、例えば、昇降台24に、昇降台24と出庫ラインとの間で物品を相互に移動させる、例えばコンベヤやプッシャー等の装置を搭載することで、搬送台車1は昇降台24上に物品を移載した時点で元居た収容ライン2aへ戻る動作を行い、物品3のみが昇降台24により運搬される構成としてもよい。この場合、搬送台車1は、昇降台24から収容ライン2aへ戻る際に、ホームポジションへ移動が完了したか否かをセンサ64の検知により判断し、ホームポジションへの移動が完了したことを判断した時点で、昇降装置20に対して物品3の移載を完了したことを示す情報を送信し、昇降装置20を昇降可能状態とする。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2に係る搬送設備につき、
図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0050】
指令信号を受信した昇降装置20は、指令信号を指令Noと対応付けられて動作テーブルT2に記憶する。受信した指令信号には、指令信号を受信した時刻の情報と、指定の収容ライン2aの情報とが記憶される。昇降装置20は、受信した複数の指令信号に対して、自身の昇降台24の現在位置から各指定の収容ライン2aまで移動に必要な予測時間を計算する。そして、この予測時間の情報に基づき迎え動作処理の順番を決定する。これによれば、昇降台24の現在位置からの予測時間が短い収容ライン2aへ順に移動し、搬送台車1の移乗を行うことができ、物品3の入出庫作業の効率を高めることができる。
【0051】
尚、迎え動作処理の順番を決定する際に比較される指令Noは、迎え動作処理が開始されていない1番小さい番号の指令Noの指令信号を受信した時刻から、予め設定された所定の時間内に受信した指令までを対象とし、グループを作成する。
【0052】
尚、グループは、迎え動作処理が開始されていない1番小さい番号の指令Noの指令信号を受信した時刻から、他の搬送台車1の迎え動作処理が進行している間に、作成されるようになっている。そして、他の搬送台車1の迎え動作処理が終了した時点で、迎え動作処理が開始されていない1番小さい番号の指令Noの指令信号を受信した時刻から、予め設定された所定の時間が経過していない場合には、他の搬送台車1の迎え動作処理が終了した時点までの間に受信した指令までを対象にグループを作成する。
【0053】
そして、動作テーブルT2から1番小さい番号の迎え動作処理の順番に対応付けられた収容ライン2aへ移動する迎え動作処理を開始する。その後、昇降装置20は終了指令を受信すると、当該終了した指令Noを含むグループのうち、現時点の昇降台24の位置から各指定の収容ライン2aまでの予測時間を計算し、迎え動作処理の順番を更新する。
【0054】
グループ内の全ての指令Noの迎え動作処理が完了すると、次に続く指令Noが存在するか否かを判断し、複数の指令Noが存在する場合、上記と同様に迎え動作処理の順番を決定する。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0056】
例えば、上記した実施例における移送装置は、上下に搬送台車1を運搬する昇降装置20を例に取り説明したが、これに限らず、例えば収納ラインを上下左右に複数段有する収納棚を備えた搬送設備Sである場合、移送装置は収納棚の上下左右に移送台を移動可能な構成であってもよい。
【0057】
また、昇降装置20は、搬送台車1から呼び出しの信号を受け取った段階で自動的に迎え動作処理を開始する態様に限らず、例えば、迎え動作処理の開始は、操作端末40と昇降装置20とを接続し、操作者の操作端末40による操作に基づき行われてもよい。尚この場合でも、昇降装置20は搬送台車1から受け取った収容ライン2aの情報に基づき動作する。
【0058】
また、上記した実施例においては、操作端末40は1台の搬送台車1にそれぞれ対して接続し、物品の入出庫の指示を行っているが、これに限らず、例えば複数の物品の入出庫を複数の搬送台車で分担して行うように指示を行ってもよい。
【0059】
また、操作端末は実施例にあるようなタブレット端末に限らず、昇降装置20と一体に形成されていてもよい。
【0060】
また、上記した実施例においては、操作端末40と昇降装置20と複数の搬送台車1,1…とは、アクセスポイント60を介して無線LANで接続されている構成であるが、これに限らず、例えば、操作端末と搬送台車同士と、搬送台車と昇降装置同士、とをそれぞれ直接接続することでアクセスポイントを省略してもよい。