特許第6795366号(P6795366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795366
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】プラグ
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/14 20060101AFI20201119BHJP
   B62D 25/24 20060101ALN20201119BHJP
   B60J 5/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   F16J13/14
   !B62D25/24 A
   !B60J5/00 501Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-189775(P2016-189775)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-54000(P2018-54000A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】井上 正俊
(72)【発明者】
【氏名】横地 真
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智成
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−72043(JP,A)
【文献】 特開2011−79482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 13/14,15/06
B62D 25/24
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した形状をなす被取付部材に設けられた取付孔に取付け可能なプラグであって、
前記取付孔の表側に配置される基部と、
該基部の裏面側から延出されて、前記取付孔の裏側に係止する少なくとも一対の係止脚と、
前記基部の外周から延出されて、前記一対の係止脚が前記取付孔の裏側に係止した状態で、前記取付孔の表側を囲うように配置され、前記取付孔の表側外周の少なくとも一部に当接可能とされたフランジ部とを有しており、
前記基部は、薄肉部と、該薄肉部よりも肉厚が厚くなるように、前記薄肉部の表面よりも隆起して、所定方向に延びる突状をなした厚肉部とを有しており、前記厚肉部は、その突条の延びる方向に交差する方向に所定間隔で並んで複数配置されていると共に、前記厚肉部どうしの間に、前記薄肉部が配置されており、
前記基部の断面を見たときに、各厚肉部の、前記薄肉部の表面よりも突出した部分の、最も低い位置から、同薄肉部の表面における接線S1に対して直交する線分をS2とし、前記フランジ部が延出した前記厚肉部と前記フランジ部との境界線をS3としたとき、前記線分S2及び前記境界線S3で区画される領域、又は、前記線分S2,S2どうしで区画される領域が、前記厚肉部の裏面の範囲をなしており、
前記一対の係止脚は、
その基端側が、複数の厚肉部のうち、前記突条の延びる方向に交差する方向において、同一位置にある厚肉部に連結されて、突条の延びる方向に分かれて、該厚肉部の裏面側から前記裏面の範囲に重なるように延出されているか、又は、
基端側の一部が前記薄肉部の裏面側に連結され、且つ、基端側の残りの部分が、複数の厚肉部のうち、前記突条の延びる方向に交差する方向において、同一位置にある厚肉部に連結されて、突条の延びる方向に分かれて、該厚肉部の裏面側から前記裏面の範囲に重なるように延出されており、前記基端側の残りの部分の、前記厚肉部の裏面に対する連結面積が、前記基端側の一部の、前記薄肉部の裏面に対する連結面積よりも大きくなるように設定されていることを特徴とするプラグ。
【請求項2】
複数の前記厚肉部のうち、突条の延びる方向に交差する方向の、一端及び/又は他端に位置する、前記厚肉部の裏面側であって前記裏面の範囲に重なる位置には、前記一対の係止脚が前記取付孔の裏側に係止した状態で、前記取付孔の内周縁部に配置されて、前記取付孔に対するプラグの位置ずれを防止する位置ずれ防止部が設けられている請求項1記載のプラグ。
【請求項3】
前記一対の係止脚が延出された前記厚肉部と、前記位置ずれ防止部が設けられた前記厚肉部との間に位置する、前記薄肉部の裏面側には、前記薄肉部の肉厚を部分的に厚くする補助リブが設けられている請求項2記載のプラグ。
【請求項4】
前記フランジ部は、複数の前記厚肉部のうち、突条の延びる方向に交差する方向の両端に配置されたものの外周から延設された部分を有している、請求項1〜3のいずれか1つに記載のプラグ。
【請求項5】
前記厚肉部は、その突条の延びる方向に交差する方向の幅が、前記薄肉部の同方向における幅よりも幅広に形成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載のプラグ。
【請求項6】
前記基部は、前記被取付部材の凸状部に対応する凸曲面と、前記被取付部材の凹状部に対応する凹曲面とを有し、前記凸曲面及び前記凹曲面に前記厚肉部が配置されており、前記凹曲面に配置された前記厚肉部の、前記突条の延びる方向に交差する方向の幅は、前記凸曲面に配置された前記厚肉部の同方向の幅よりも、幅狭に形成されている請求項1〜5のいずれか1つに記載のプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した形状をなす被取付部材に設けられた取付孔に取付け可能とされたプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の荷室のバックドア等は、荷室の形状等に対応して、湾曲した形状となっていることがある。また、このようなバックドア等には、水抜き用の孔が形成されていることがあり、このような水抜き用の孔には、排気ガスの侵入を防ぐと共に、ドア内に溜まった水を排水するための、プラグが取付けられていることがある。
【0003】
上記のように湾曲した被取付部材の取付孔に取付けられるものとして、下記特許文献1には、フランジ状の頭部と、該頭部に突設された係止脚とを有し、被取付板の曲面部に設けられた取付孔に係止脚を挿入した状態で取り付けられるものであって、頭部の裏面に設けられて被取付板の表面側に当接する突部と、取付孔に挿入されて被取付板の裏面側に当接するよう係止脚に設けられた突起とにより被取付板を挟持するようにしたクリップが記載されている。なお、前記頭部は、被取付板の曲面部と同じ向きに湾曲しているが、取付孔にクリップを取付けた状態では、同頭部は、取付孔の下側を覆わない形状となっている(特許文献1の図1(a)及び図2(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−72043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のクリップにおいては、頭部に設けた突部と係止脚に設けた突起とにより被取付板を挟持することで、被取付板の曲面部に取付けることができるが、頭部は取付孔の下側を覆わない形状となっているため、該頭部で取付孔を覆おうとした場合に、曲面部の曲率の変化に柔軟に対応することができない。また、取付孔の下側が覆われていないので、例えば、自動車の荷室のバックドア等にクリップを取付けた場合には、排気ガスの侵入を防ぐことは難しい。
【0006】
したがって、本発明の目的は、被取付部材の湾曲形状の変化に柔軟に対応して、被取付部材に設けられた取付孔を、覆った状態でしっかりと取付けることができる、プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、湾曲した形状をなす被取付部材に設けられた取付孔に取付け可能なプラグであって、前記取付孔の表側に配置される基部と、該基部の裏面側から延出されて、前記取付孔の裏側に係止する少なくとも一対の係止脚と、前記基部の外周から延出されて、前記一対の係止脚が前記取付孔の裏側に係止した状態で、前記取付孔の表側を囲うように配置され、前記取付孔の表側外周の少なくとも一部に当接可能とされたフランジ部とを有しており、前記基部は、薄肉部と、該薄肉部よりも肉厚が厚くなるように、前記薄肉部の表面よりも隆起して、所定方向に延びる突状をなした厚肉部とを有しており、前記厚肉部は、その突条の延びる方向に交差する方向に所定間隔で並んで複数配置されていると共に、前記厚肉部どうしの間に、前記薄肉部が配置されており、前記一対の係止脚は、同じ厚肉部の、突条の延びる方向に分かれて、該厚肉部の裏面側から延出されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基部は、突条をなした厚肉部が所定間隔で並んで配置され、それらの間には薄肉部が配置されており、一対の係止脚は、同じ厚肉部の裏面側から延出しているので、係止脚を取付孔に挿入して係止する際に、基部が被取付部材の湾曲形状に適合するように曲がりやすくなり、基部の外周のフランジ部を、取付孔の外周にしっかりと当接させて、取付孔を覆った状態で取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るプラグの一実施形態を示す斜視図である。
図2】同プラグの、図1とは反対側から見たときの斜視図である。
図3】同プラグを取付孔に取付けた状態を示す断面図である。
図4】同プラグの正面図である。
図5】同プラグを取付孔に取付けた状態を示す斜視図である。
図6】(a)は、プラグを取付孔に取付けた状態の断面図、(b)は、外側パネルに対して内側パネルが傾斜して、湾曲形状が変化した被取付部材の取付孔に、プラグを取付けた状態の断面図、(c)は、(b)よりも更に内側パネルが傾斜して、湾曲形状が変化した被取付部材の取付孔に、プラグを取付けた状態の断面図である。
図7】被取付部材を開閉するリッドとし、同プラグを該被取付部材に適用した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係るプラグの一実施形態について説明する。
【0011】
図3及び図7に示すように、このプラグ10は、例えば、自動車の荷室のリッドや、トランクリッド、ドア、フェンダー等の、湾曲した形状をなす被取付部材1に設けられた取付孔5に取付け可能とされたものである。この実施形態における被取付部材1は、車両後部の荷室6の開口部に開閉可能に取付けられるリッドであって、内側パネル3の下端部と外側パネル2の下端部どうしを当接させて、該当接部分をヘムや溶接等で互いに接合されてなるものである(図3参照)。なお、被取付部材としては、上記のリッド等以外にも、例えば、車体パネルや車体フレーム等を挙げることができ、特に限定はされない。
【0012】
図3及び図6(a)に示すように、この実施形態における被取付部材1を構成する内側パネル3は、外側パネル2に対して平行に配置される直線状部3aと、外側パネル2に当接する下端部3bとを有しており、その間が湾曲した形状をなしている。すなわち、内側パネル3の湾曲した形状は、内側パネル3の直線状部3aの下方に形成された、荷室6の内方に向くように凸状に出っ張る凸状部3cと、該凸状部3cの端部から連続して形成されて、荷室6の内方から離れる方向に凹む凹状部3dとからなる。このような内側パネル3の湾曲部分に、略円形状をなした取付孔5が設けられている。そして、取付孔5にプラグ10が取付けられて、同取付孔5を閉塞すると共に、外側パネル2と内側パネル3との間に溜まった水を排水可能となっている。
【0013】
なお、この実施形態においては、被取付部材1を構成する内側パネル3の湾曲部分に取付孔5が形成されているが、取付孔は、必ずしも被取付部材1の湾曲部分に形成されていなくてもよく、例えば、被取付部材1に設けられた湾曲部分近傍の直線状部分等に、取付孔を形成してもよい。すなわち、被取付部材としては、その一部に湾曲した形状を有していればよく、取付孔にプラグを取付ける際に、被取付部材の湾曲形状に適合して、プラグの基部が曲がるような構造となればよい。
【0014】
また、図7に示すように、前記荷室6は、所定の屈曲形状をなした車体側パネル7を有しており、該車体側パネル7の所定位置に、所定形状のウェザーストリップ9が配置されており、被取付部材1(リッド)を閉じると、前記ウェザーストリップ9に当接して、荷室6の開口部が閉塞されるようになっている。
【0015】
なお、このプラグとしては、上記のような排水プラグとして用いることに限定されず、取付孔の閉塞用等(いわゆるホールプラグ)として用いてもよい。
【0016】
そして、図1〜3に示すように、この実施形態のプラグ10は、例えば、ゴムや弾性エラストマー等の軟質樹脂で形成されたものであって、被取付部材1に設けられた取付孔5の表側に配置される基部20と、該基部20の裏面側から延出されて、取付孔5の裏側に係止する少なくとも一対の係止脚30,30と、基部20の外周から延出されて、前記一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、取付孔5の表側を囲うように配置され、取付孔5の表側外周の少なくとも一部に当接可能とされたフランジ部50とを有している。
【0017】
図3に示すように、前記基部20は、被取付部材1の凸状部3cに対応する凸曲面21と、被取付部材1の凹状部3dに対応する凹曲面22とを有する、湾曲した形状をなしている。
【0018】
更に図3に示すように、前記基部20は、薄肉部27と、該薄肉部27よりも肉厚が厚くなるように、薄肉部27の表面27a(被取付部材1の表側から離れた面)よりも隆起して、所定方向に延びる突条をなした厚肉部(ここでは厚肉部23,24,25)を有している。
【0019】
図2及び図4に示すように、この実施形態における基部20は、所定方向F1に沿って延びる突条をなした、3つの厚肉部23、厚肉部24、厚肉部25を有しており、これらの厚肉部23,24,25が、その突条の延びる方向F1に交差する方向F2に所定間隔で並んで配置されている。この実施形態では、複数の厚肉部23,24,25は、その突条の延びる方向F1に交差する方向F2の、一端側から他端側に向けて、厚肉部23,24,25が、順番に並んで配置されている(図4参照)。
【0020】
上記のように、このプラグ10では、薄肉部27の表面27aよりも、厚肉部23,24,25が隆起して、各厚肉部23,24,25が突条をなすように形成されており、基部20の裏面側は凹みのない形状となっている(図3参照)。
【0021】
また、これらの複数の厚肉部23,24,25は、基部20の凸曲面21及び凹曲面22に整合する位置に配置されている。この実施形態では、厚肉部23及び厚肉部24が基部20の凸曲面21に配置され、厚肉部25が基部20の凹曲面22に配置されている(図3参照)。
【0022】
そして、複数の厚肉部23,24,25どうしの間に、これらの厚肉部23,24,25よりも肉厚の薄い前記薄肉部27,27が配置されている。すなわち、隣接する厚肉部23,24どうしの間に、これらを互いに連結するように薄肉部27が配置されていると共に、隣接する厚肉部24,25どうしの間にも、これらを互いに連結するように薄肉部27が配置されている。
【0023】
上記のように、基部20は、複数の厚肉部23,24,25の間に、それよりも薄く柔軟性の高い複数の薄肉部27,27が形成されているので、例えば、図3図6(a)に示すように、被取付部材1の湾曲部分に設けた取付孔5にプラグ10を取付ける場合や、或いは、図6(b),(c)に示すように、被取付部材1の、外側パネル2に対する内側パネル3の傾斜角度が変わって、その湾曲形状が変化した際に、取付孔5にプラグ10を取付ける場合に、基部20が、複数の薄肉部27を介して、被取付部材1の湾曲形状に適合するように曲がることが可能となっている。
【0024】
なお、この実施形態においては、厚肉部が3つ、薄肉部が2つ設けられているが、例えば、厚肉部を2つ設けて、その間に薄肉部を1つだけ設けたり、或いは、厚肉部を4つ以上設けて、薄肉部を3つ以上設けたりしてもよく、厚肉部や薄肉部の個数は特に限定されない。
【0025】
また、本発明において「薄肉部」とは、フランジ部を除くものであって、基部において、隆起形状のない部分を有する領域を意味している。更に本発明において「厚肉部」とは、基部において、薄肉部の表面から隆起した部分を含む領域を意味しており、例えば、厚肉部の側面に形成されたテーパ面(図3参照)や段状面、厚肉部の側面底部に設けられたR状部(図3参照)も、「厚肉部」に含まれるものであり、また、厚肉部の表面から凹部(図3参照)や、ノッチ、切欠き等が形成されていても、それらが「薄肉部」の表面よりも深く抉るように形成されている場合を除いて、凹部等が形成された箇所も「厚肉部」に含まれる。
【0026】
また、図4に示すように、厚肉部23,24,25は、その突条の延びる方向F1に交差する方向F2の幅W1が、薄肉部27の同方向F2(厚肉部の突条の延びる方向F1に交差する方向F2)における幅W2よりも、幅広に形成されている。
【0027】
更に、図4に示すように、基部20の凹曲面22に配置された厚肉部25の、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の幅W1は、基部20の凸曲面21に配置された厚肉部23,24の、前記方向F2の幅W1よりも幅狭に形成されている。また、この実施形態では、厚肉部23の幅W1が厚肉部24の幅W1よりも幅広に形成されている。
【0028】
なお、図3に示すように、クリップ10の基部20の断面を見たときに、各厚肉部23,24,25の、薄肉部27の表面よりも突出した部分の、最も低い位置から(テーパ面の底部又はR状部の底部)、同薄肉部27の表面における接線S1に対して直交する線分をS2とし、厚肉部23,25とフランジ部50との境界線をS3としたとき、線分S2及び境界線S3で区画される領域(厚肉部23,25)、又は、線分S2,S2どうしで区画される領域(厚肉部24)が、厚肉部23,24,25の裏面の範囲であり、また、隣り合う厚肉部(厚肉部23,24又は厚肉部24,25)の線分S2,S2どうしで区画される領域が、薄肉部27の裏面の範囲である。
【0029】
そして、取付孔5の裏側に係止する一対の係止脚30,30は、基部20に設けられた複数の厚肉部23,24,25のうち、同じ厚肉部の、突条の延びる方向に分かれて、該厚肉部の裏面側から延出されており、ここでは該厚肉部の裏面側にのみ連結されて配置されている。なお、「同じ厚肉部」とは、複数の厚肉部のうち、突状の延びる方向に交差する方向において、同一位置にある厚肉部であることを意味する(同一位置において、スリット等を介して分離された複数の厚肉部も、「同じ厚肉部」に含まれる)。
【0030】
また、一対の係止脚は、薄肉部の裏面側から、その一部が延出されていてもよい。ただし、係止脚の基端側の、厚肉部の裏面に対する連結面積が、係止脚の基端側の、薄肉部の裏面に対する連結面積よりも、大きくなるように設定されていることが必要である。
【0031】
図1に示すように、この実施形態においては、一対の係止脚30,30は、3つの厚肉部23,24,25のうち、中間に配置された厚肉部24の、突条の延びる方向の両端部に分かれて配置されていると共に、該厚肉部24の裏面側に連結された構造をなしている。
【0032】
また、一対の係止脚30,30の、互いに離れた端部にあって、基部20の裏面側から離れた位置に、係止部31,31がそれぞれ設けられており、該係止部31,31が、取付孔5の裏側周縁に係止する部分となっている(図5参照)。なお、各係止部31の外面には、取付孔5に係止脚30を挿入しやすくさせるための、テーパ面32が複数形成されている。
【0033】
更に図1に示すように、基部20の裏面側であって、各係止部31の対向する位置からは、凸状をなした押え凸部33が設けられている。この押え凸部33は、一対の係止脚30,30の係止部31,31が、取付孔5の裏側周縁に係止した状態で、取付孔5の表側周縁に当接して、取付孔5に対するプラグ10のガタツキを抑制すると共に、厚肉部24を撓み変形させにくくするものである。
【0034】
また、この実施形態においては、基部20の複数の厚肉部23,24,25のうち、厚肉部24のみに一対の係止脚30,30を設けたが、厚肉部23や厚肉部25に一対の係止脚30,30を設けてもよく、更に、複数の厚肉部に、一対の係止脚をそれぞれ設けてもよく、所定の厚肉部に少なくとも一対の係止脚が設けられていればよい。
【0035】
更に、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の、一端及び他端に位置する、厚肉部23,25の裏面側には、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、取付孔5の内周縁部に配置されて、取付孔5に対するプラグ10の位置ずれを防止する位置ずれ防止部が設けられている。
【0036】
この実施形態においては、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の、他端に位置する厚肉部25の裏面側に、略三角突起状をなした一対の突部40,40が、所定間隔をあけて突設されている。
【0037】
図5に示すように、この一対の突部40,40は、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、取付孔5の内周縁部に配置されるようになっており、取付孔5に対してプラグ10が位置ずれしたときに、取付孔5の内周縁部に当接して、プラグ10の位置ずれを防止する。すなわち、この実施形態においては、突部40が本発明における「位置ずれ防止部」をなしている。
【0038】
なお、突部としては、例えば、円形突起状等をなしていてもよく、また、一対のみならず、1個でも3個以上であってもよく、特に限定はされない。
【0039】
更に図1及び図3に示すように、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の、一端に位置する厚肉部23の裏面側であって、その突状の延びる方向F1の中央部分からは、孔配置部45aが突出すると共に、該孔配置部45aの端部から、舌片状をなした挿入部45が、基部20の裏面側から次第に離れるように斜め外方に向けて延設されている。
【0040】
そして、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、挿入部45の孔配置部45aが、取付孔5の内周縁部に配置されるようになっており(図5参照)、取付孔5に対してプラグ10が位置ずれしたときに、取付孔5の内周縁部に当接して、プラグ10の位置ずれを防止する。すなわち、この挿入部45の孔配置部45aも、本発明における「位置ずれ防止部」をなしている。なお、舌片状の挿入部45は、取付孔5の裏側に一対の係止脚30,30を係止させるべく、取付孔5の表側から一対の係止脚30,30を挿入する際に、取付孔5への挿入ガイドともなる。
【0041】
更に、挿入部45の、延出方向先端側であって、その内面(基部20の裏面に対向する面)側の中央には、挟持突部46が設けられている。この挟持突部46は、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、同取付孔5の、係止脚30が係止していない裏側部分に部分的に当接して、フランジ部50との間で被取付部材1を挟持するものであり、取付孔5に対するプラグ10の取付け強度を高めることができると共に、取付孔5の寸法バラツキ等にも対応して、被取付部材1をフランジ部50との間でしっかりと挟持できるようになっている。
【0042】
また、図1図3に示すように、前記一対の係止脚30,30が延出された厚肉部24と、前記位置ずれ防止部(ここでは挿入部45の孔配置部45a)が設けられた厚肉部23との間に位置する、薄肉部27の裏面側には、該薄肉部27の肉厚を部分的に厚くする補助リブ47が設けられている。
【0043】
この実施形態においては、図1及び図3に示すように、基部20の、厚肉部23と厚肉部24との間の、薄肉部27の裏面側であって、上記挿入部45の孔配置部45aの幅方向両側部と、一対の係止脚30,30の、挿入部45側の先端面との間には、補助リブ47,47が設けられており、この補助リブ47により、当該薄肉部27の肉厚が部分的に厚く形成されている。この補助リブ47は、被取付部材1の湾曲形状に対応して、基部20の薄肉部27が弾性変形して曲がったときに、該薄肉部27を弾性復元させやすくするものである。
【0044】
なお、この実施形態においては、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の一端及び他端に位置する厚肉部23,25の裏面側に、位置ずれ防止部(突部40及び挿入部45の孔配置部45a)を設けたが、複数の厚肉部のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の一端又は他端のいずれかの厚肉部23,25に、位置ずれ防止部を設けてもよく、特に限定はされない。また、前記補助リブは、突部40,40からなる位置ずれ防止部を設けた厚肉部25と、一対の係止脚30,30が延出された厚肉部24との間に位置する、薄肉部27の裏面側に設けてもよく、特に限定はされない。
【0045】
図1及び図2に示すように、この実施形態におけるフランジ部50は、基部20を構成する厚肉部23,24,25及び薄肉部27,27の外周の全周から、基部20の裏面側に向けて斜め外方に延出している。すなわち、この実施形態のフランジ部50は、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の両端に配置された厚肉部23,25の外周から延設された部分を有している。
【0046】
そして、このフランジ部50は、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、取付孔5の表側を囲うように被取付部材1の表側に配置されて、取付孔5の表側外周に当接可能とされている(図3参照)。
【0047】
なお、フランジ部が「取付孔の表側を囲う」とは、図4に示すように、被取付部材1の面方向に対して直交する方向から取付孔5を見たときに、フランジ部50の外周が、取付孔5の表側の周縁よりも外側に配置されて、フランジ部50によって取付孔5の表側全周が囲まれたことを意味する。
【0048】
また、図3に示すように、前記基部20とフランジ部50との最大外径は、取付孔5の内径よりも大きくなるように構成されている。
【0049】
更に、図1に示すように、フランジ部50のうち、基部20の厚肉部25の、突条の延びる方向F1に沿った側縁部から延出した部分であって、その裏面側には、一対の排水用突部51,51が突設されている。この一対の排水用突部51,51は、一対の突部40,40の配置間隔よりも幅広となるように配置されている。
【0050】
そして、この一対の排水用突部51,51は、取付孔5に一対の係止脚30,30が係止した状態で、取付孔5の表側周縁に当接して、その部分におけるフランジ部50の裏面と被取付部材1の表面との間に、排水用の隙間G(図3参照)を形成する。その結果、この隙間Gから、外側パネル2と内側パネル3との間に溜まった水を、排水可能となっている。
【0051】
次に、上記構成からなるプラグ10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0052】
すなわち、被取付部材1の湾曲部分に設けた取付孔5の表側から、プラグ10の挿入部45を斜めに挿入しつつ、一対の係止脚30,30を押し込んでいく。すると、各係止脚30は、取付孔5の内周に押圧されて、テーパ面32を介して撓みながら押し込まれていき、係止部31が取付孔5の裏側に至ると、各係止脚30が弾性復帰して、取付孔5の裏側に、一対の係止脚30,30の係止部31,31がそれぞれ係止すると共に、一対の突部40,40及び挿入部45の孔配置部45aが取付孔5の内周縁部に配置され(図5参照)、更に、取付孔5の表側の外周縁部に、フランジ部50が弾性的に当接して、取付孔5にプラグ10を取付けることができる(図3及び図6(a)参照)。
【0053】
そして、被取付部材1を構成する内側パネル3には、凸状部3c及び凹状部3dからなる湾曲部分が設けられているが、このプラグ10においては、基部20が、薄肉部27よりも肉厚が厚くなるように、薄肉部27の表面27a(図3参照)よりも隆起して、突条をなした厚肉部23,24,25が所定間隔で並んで配置されており、それらの間には、厚肉部23,24,25よりも薄く柔軟性の高い複数の薄肉部27,27が配置された構造をなしている。そのため、図3図6(a)に示すように、基部20は、複数の薄肉部27を介して、被取付部材1の湾曲形状に適合するように曲がることができるので、基部20の外周のフランジ部50を、取付孔5の外周にしっかりと当接させて、取付孔5を覆った状態で取付けることができる。なお、フランジ部50により取付孔5を覆った状態とは、図4に示すように、被取付部材1の面方向に対して直交する方向から取付孔5を見たときに、取付孔5の開口部全体がフランジ部50によって覆われた状態であることを意味する。
【0054】
また、図6(b)には、外側パネル2に対して内側パネル3の直線状部3aが所定角度傾斜して、湾曲形状が変化した状態の被取付部材1が示されており、図6(c)には、図6(b)よりも、更に外側パネル2に対して内側パネル3の直線状部3aの傾斜角度が大きくなって、湾曲形状が変化した状態の被取付部材1が示されている。このような被取付部材1であっても、図6(b)や図6(c)に示すように、基部20が、薄肉部27を介して適宜曲がって、被取付部材1の湾曲形状に適合することができるので、フランジ部50を、取付孔5の外周にしっかりと当接させて、取付孔5を覆った状態で取付けることができる。更に、一対の係止脚30,30は、厚肉部(ここでは厚肉部24)の裏面側から延出されているので、薄肉部27による基部20の柔軟性を維持することができる。
【0055】
また、この実施形態においては、一対の係止脚30,30は、基部20を構成する厚肉部24の裏面側から延出されているので、基部20の剛性を高めることができ、一対の係止脚30,30を取付孔5にしっかりと係止させて、取付孔5にプラグ10を強固に取付けることができる。更に、一対の係止脚30,30は、複数の厚肉部23,24,25のうち、同じ厚肉部(ここでは厚肉部24)の、突状の延びる方向に分かれて、その裏面側から延出されているため、一対の係止脚30,30の対向方向と薄肉部27による基部20の変形方向とが交差するので、取付孔5に対する一対の係止脚30,30の係止状態が解除されづらくすることができる。
【0056】
更にこの実施形態においては、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向に交差する方向の、一端及び他端に位置する、厚肉部23,25の裏面側に設けた一対の突部40,40及び挿入部45の孔配置部45aが、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、取付孔5の内周縁部に配置されるようになっている(図5参照)。このように、一対の係止脚30,30が取付孔5の裏側に係止した状態で、取付孔5の内周縁部に、一対の突部40,40や挿入部45の孔配置部45aが配置されるので、取付孔5に対してプラグ10を、位置ずれを防止して取付けることができる。
【0057】
また、この実施形態においては、一対の係止脚30,30が延出された厚肉部24と、位置ずれ防止部(挿入部45の孔配置部45a)が設けられた厚肉部23との間に位置する、薄肉部27の裏面側には、該薄肉部27の肉厚を部分的に厚くする補助リブ47が設けられているので、被取付部材1の湾曲形状に対応して、基部20の薄肉部27が弾性変形して曲がったときに、該薄肉部27を弾性復元させやすくして、基部20を被取付部材1の湾曲形状に適合させやすくすることができ、基部20の外周のフランジ部50を、取付孔5の外周に、よりしっかりと当接させることができる。
【0058】
更に、この実施形態においては、フランジ部50は、複数の厚肉部23,24,25のうち、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の両端に配置された、厚肉部23,25の外周から延設された部分を有している(図1及び図2参照)。そのため、フランジ部50の、基部20側の剛性を高めることができるので、フランジ部50の、取付孔5の表側外周への密着性や、取付孔5に対する弾性当接力を高めることができる。
【0059】
また、図4に示すように、この実施形態においては、厚肉部23,24,25は、その突条の延びる方向F1に交差する方向F2の幅W1が、薄肉部27の同方向F2における幅W2よりも幅広に形成されている。そのため、薄肉部27による柔軟性を維持しつつ、剛性の高い厚肉部23,24,25の面積を広く確保することができるので、取付孔5に対する一対の係止脚30,30の係止力を向上させて、取付孔5にプラグ10をよりしっかりと取付けることができると共に、取付孔5の表側に対するフランジ部50の密着性をより高めることができる。
【0060】
更に図3に示すように、この実施形態においては、基部20は、被取付部材1の凸状部3cに対応する凸曲面21と、被取付部材1の凹状部3dに対応する凹曲面22とを有しており、更に図4に示すように、凹曲面22に配置された厚肉部25の、突条の延びる方向F1に交差する方向F2の幅W1は、凸曲面21に配置された厚肉部23,24の前記方向F2の幅W1よりも、幅狭に形成されている。このように、取付孔5への取付け時に、基部20が凸状に引き伸ばされて変形する凸曲面21に、幅広の厚肉部23,24が配置され、基部20が凹状に圧縮変形する凹曲面22に、幅狭の厚肉部25が配置されるので、基部20の剛性を高めつつ、被取付部材1の湾曲形状に対する適合性を高めることができる。
【0061】
また、上記のように、取付孔5に一対の係止脚30,30が係止した状態では、フランジ部50に設けた一対の排水用突部51,51が、取付孔5の表側周縁に当接して、フランジ部50の裏面と被取付部材1の表面との間に、排水用の隙間Gを形成されるようになっている(図3参照)。その結果、この隙間Gから、外側パネル2と内側パネル3との間に溜まった水を、排水することができる。
【0062】
更に、取付孔5にはプラグ10が取付けられて、図4に示すように、被取付部材1の面方向に対して直交する方向から取付孔5を見たときに、取付孔5の開口部全体がフランジ部50によって覆われた状態となるので、本実施形態のように、被取付部材1を車両の荷室6の開口部に開閉可能に取付けられるリッドとした場合には(図7参照)、車外からの排気ガスや埃等が、取付孔5を通って被取付部材1の内部空間に侵入しにくくすることができると共に、騒音を低減することができる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 被取付部材
3c 凸状部
3d 凹状部
5 取付孔
10 プラグ
20 基部
21 凸曲面
22 凹曲面
23,24,25 厚肉部
27 薄肉部
30 係止脚
50 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7