(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発煙剤組成物は、(A)成分として、燃料を含有する。(A)成分は、白煙を発生させるための燃料(可燃剤)である。
【0013】
(A)成分は、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、糖類が好ましい。
(A)成分の糖類としては、
(A−1)グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、リボース、デオキシリボース等の単糖類、
(A−2)スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等の二糖類
(A−3)デンプン、セルロース、グリコーゲン、キチン、アガロース、ペクチン等の多糖類
が挙げられる。
(A)成分は、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、好ましくは(A−1)成分及び(A−2)成分から選ばれる1種以上であり、より好ましくは(A−2)成分から選ばれる1種以上である。
【0014】
(A−1)成分としては、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、好ましくはグルコース、ガラクトース及びフルクトースから選ばれる1種以上であり、より好ましくはグルコース及びガラクトースから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはガラクトースである。
【0015】
(A−2)成分としては、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、好ましくはスクロース及びラクトースから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスクロースである。
【0016】
(A−3)成分としては、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、好ましくはデンプン、セルロース及びグリコーゲンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはデンプン及びセルロースから選ばれる1種以上である。
【0017】
(A)成分は、上記の中でも、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、好ましくはグルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース及びラクトースから選ばれる1種以上であり、より好ましくはグルコース、ガラクトース及びスクロースから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはガラクトース及びスクロースから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはスクロースである。
【0018】
(A)成分である糖類は、粒子状で本発明の発煙剤組成物に含有することが好ましく、(A)成分の平均粒径は、発煙による視覚的な遮断効果の観点から、好ましくは300μm以上、より好ましくは400μm以上、更に好ましくは450μm以上、より更に好ましくは500μm以上、また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、更に好ましくは650μm以下、より更に好ましくは600μm以下である。
【0019】
本発明の発煙剤組成物は、(B)成分として、白煙剤を含有する。(B)成分は、作動時における熱により気化(状態変化)してガス(白煙源)となり、前記ガスが冷却されて液滴となって白煙となる成分(白煙剤)である。気化によって拡散する空間に白煙を均一濃度に分散させることができるほか、広範囲にわたって拡散させることができる。
【0020】
(B)成分は、発煙による視覚的な遮断効果を得る観点から、パラフィン化合物を含むワックス類及びポリアルキレングリコールから選ばれる1種以上が好ましい。
(B)成分である、パラフィン化合物を含むワックス類及びポリアルキレングリコールから選ばれる1種以上としては、
(B−1)パラフィンワックス(主成分:ノルマルパラフィン)、マイクロクリスタリンワックス(主成分:イソパラフィン、シクロパラフィン)等のパラフィン化合物を含むワックス類
(B−2)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、等のポリアルキレングリコール
が挙げられる。
(B)成分は、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくは(B−1)成分である。
【0021】
(B−1)成分としては、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくはパラフィンワックス(主成分:ノルマルパラフィン)及びマイクロクリスタリンワックス(主成分:イソパラフィン、シクロパラフィン)から選ばれる1種以上であり、より好ましくはパラフィンワックス(主成分:ノルマルパラフィン)である。
また(B−1)成分としては、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくはノルマルパラフィン、イソパラフィン及びシクロパラフィンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはノルマルパラフィンである。
【0022】
(B−2)成分としては、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくはポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはポリエチレングリコールである。
【0023】
(B)成分は、上記の中でも、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはパラフィンワックスである。
また(B)成分は、上記の中でも、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくはノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはノルマルパラフィンである。
【0024】
本発明の発煙剤組成物は、(C)成分として、酸化剤を含有する。(C)成分は、(A)成分である燃料(可燃剤)を瞬時に燃焼させて大量のガス(窒素ガスや二酸化炭素を含むガス)を発生させると共に、酸化剤自体が変化することで白煙源を生じさせることができる。
【0025】
(C)成分としては、
(C−1)塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム等の塩素酸塩、
(C−2)過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸塩、
(C−3)硝酸ストロンチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等の硝酸塩
が挙げられる。
(C)成分は、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくは(C−3)成分である。
【0026】
(C−1)成分は、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくは塩素酸カリウムである。
(C−2)成分は、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくは過塩素酸カリウムである。
(C−3)成分は、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくは硝酸カリウム及び硝酸ストロンチウムから選ばれる1種以上であり、より好ましくは硝酸カリウムである。
【0027】
(C)成分は、上記の中でも、安全性、取り扱い易さの観点から、好ましくは塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸カリウムから選ばれる1種以上であり、より好ましくは過塩素酸カリウム、硝酸ストロンチウム及び硝酸カリウムから選ばれる1種以上であり、更に好ましくは過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムから選ばれる1種以上であり、最も好ましくは硝酸カリウムである。
【0028】
本発明の発煙剤組成物は、(D)成分としてイソアルキルアルコールを含有する。(D)成分は、発煙剤組成物を製造する際に、(A)成分を溶解しないため、(A)成分の粒子形状を維持することができる。(D)成分は、(A)成分の粒子形状を維持して、発煙剤組成物を製造することを目的として配合される。
【0029】
(D)成分としては、(A)成分の粒子を溶解させない観点から、好ましくはイソプロパノール、イソブタノール、イソペンタノール及びイソヘキサノールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはイソプロピルアルコールである。
【0030】
本発明の発煙剤組成物中、各成分の含有割合は(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部に対して、次の通りである。
(A)成分は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、より更に好ましくは30質量部以上、また、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは35質量部以下である。
(B)成分は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは18質量部以下である。
(C)成分は、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは45質量部以上、より更に好ましくは47質量部以上、また、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、より更に好ましくは53質量部以下である。
【0031】
本発明の発煙剤組成物中、(D)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部に対して、(A)成分の粒子を溶解させない観点から、好ましくは1ppm以上、そして、(D)成分の含有割合が多くなると、発煙作動時の妨げになる観点から、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0032】
本発明の発煙剤組成物は、(E)成分として、バインダーを含有することが好ましい。(E)成分は、発煙剤組成物を所望形状に成形するときに使用する成分である。
【0033】
(E)成分は、グアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン及びデキストリンから選ばれる1種以上が挙げられ、結合性、取り扱い易さの観点から、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)及びエチルセルロースから選ばれる1種以上であり、より好ましくはエチルセルロースである。
なお、(E)成分であるデンプン及びエチルセルロースは、(A)成分としても使用可能である。
【0034】
本発明の発煙剤組成物は、(E)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.7質量部以上、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下である。
【0035】
本発明の発煙剤組成物は、(A)成分以外の可燃剤として、ニトロセルロース、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンシアヌレート、5−アミノテトラゾール、5,5’−ビステトラゾールジアンモニウム塩、シリコーンオイル及びクエン酸三カリウムから選ばれる可燃剤を含有してもよい。但し、これらは本願の効果の一つである人体への害・影響の軽減を考慮すると、含まないことが好ましい。
【0036】
本発明の発煙剤組成物は、本発明の効果を奏する観点から、下記(i)〜(vi)から選ばれる化合物を含有してもよい。
(i)酸化第二銅、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化ビスマス、シリカ、アルミナ等の金属酸化物
(ii)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化コバルト、水酸化鉄等の金属水酸化物
(iii)炭酸コバルト、炭酸カルシウム等の金属炭酸化物
(iv)酸性白土、カオリン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、ヒドロタルサイト等の金属酸化物又は水酸化物の複合化合物
(v)ケイ酸ナトリウム、マイカモリブデン酸塩、モリブデン酸コバルト、モリブデン酸アンモニウム等の金属酸塩
(vi)二硫化モリブデン、ステアリン酸カルシウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、メタホウ酸、ホウ酸、無水ホウ酸等
【0037】
本発明の発煙剤組成物は、粉末体又造粒体として使用することができ、また所望形状の成形体にすることができる。
造粒体として使用する場合の発煙剤組成物の平均粒径は、発煙による視覚的な遮断効果の観点から、好ましくは550μm以上、より好ましくは1000μm以上、そして、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。
成形体は、単孔または多孔を有する円柱状成形体または角柱状成形体、ディスク状成形体、粒状成形体に形成することができる。
成形方法としては、公知のエアバッグ装置で使用するガス発生器用のガス発生剤成形体の製造方法を適用することができ、例えば、特開平10−87390号公報の段落番号0035〜0037、実施例1に記載の製造方法を適用することができる。
すなわち本発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を混合する、発煙剤組成物の製造方法を提供する。
本発明の発煙剤組成物の製造方法は、本発明の発煙剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
【0038】
本発明の発煙剤組成物を防犯装置用の発煙器、例えば
図1に示される煙幕発生器(発煙器)において使用するときは、発煙剤組成物(粉末状または成形体)を1つの容器に入れた状態で発煙器に収容することができる。
図1に示される煙幕発生器(発煙器)を以下に説明する。
【0039】
<
図1の煙幕発生器>
煙幕発生器1Aは、筒状ハウジング10内に煙幕発生剤56および各部品が配置されている。
【0040】
筒状ハウジング10の第1端10a側の周壁部11の内周面は第1環状段差面12を有しており、第1環状段差面12から第1端10aまでは厚さの薄い第1先端周壁部13になっている。第1先端周壁部13の内周面13aはねじ部を有している。
筒状ハウジング10の第2端10b側の周壁部11の内周面は第2環状段差面14を有しており、第2環状段差面14から第2端10bまでは厚さの薄い第2先端周壁部15になっている。第2先端周壁部15の外周面15aはねじ部を有している。
【0041】
筒状ハウジング10の第1端10a側は、第1クロージャ20で閉塞されている。
第1クロージャ20は略カップ形状のものであり、底面部21と周壁部22を有している。
底面部21は中心部に凸部23を有しており、凸部23の周囲には、底面部21を貫通して形成された複数の点火生成物の放出孔24を有している。複数の点火生成物の放出孔24は、周方向に均等間隔で2〜8個程度形成されている。
また底面部21は放出孔24との間には必要に応じてシールテープを設け、煙幕発生剤のこぼれ防止や、湿度対策をとることもできる。
周壁部22は、第1先端周壁部13の内周面13aのねじ部に対してねじ込むことができるねじ部22aを有している。
【0042】
第1クロージャ20の内部空間25には、点火器カラー6を有する点火器5が取り付けられている。
点火器5は、第1クロージャ20の内周壁面25aに対して点火器カラー6がねじ込まれることで取り付けられている。
点火器5の着火部5aは、内部空間25内に位置している。
【0043】
筒状ハウジング10の第2端10b側は、第2クロージャ30で閉塞されている。
第2クロージャ30は、第1部材31と第2部材40の組み合わせからなるものであるが、一つの部材からなるものにすることもできる。
図1、
図2に示すように、第1部材31は、外径の大きな環状基板32、環状基板32上に形成された、環状基板32よりも外径の小さな環状凸部33、環状基板の内周壁部34a、環状基板の外周壁部34b、環状底面部35を有している。
環状凸部33は、環状基板32との外径の差から、軸方向に面した、環状基板の内周壁部34a側の環状内側段差面36aと、軸方向に面した、環状基板の外周壁部34b側の環状外側段差面36bを有している。
環状凸部33は、環状基板32との外径の差から、半径方向(軸方向に直交する方向)内側に面した環状内側周壁面37aと、半径方向外側に面した環状外側周壁面37bを有している。
第1部材31の中心部であり、環状内側段差面36aの内側には、煙幕源排出口38が形成されている。
第1部材31は、環状外側周壁面37bが筒状ハウジング10の内壁面10cに当接され、環状外側段差面36bが第2環状段差面14に当接され、環状基板の外側周壁部34bが第2先端周壁部15に当接された状態で、筒状ハウジング10の第2端開口部10bに嵌め込まれている。
【0044】
第2部材40は、略カップ形状のものであり、周壁部41と中心部に貫通孔43が形成された底面部42を有しており、周壁部41は内周面にねじ部44を有している。
貫通孔43の内径は、煙幕源排出口38の内径よりも大きく、環状底面部35の外径よりも小さくなっている。
第2部材40は、ねじ部44が第2先端周壁部15の外周面15aに対してねじ込まれることで固定されている。
第2部材40の底面部42は、第1部材31の環状底面部35を軸方向(第1端開口部10a方向)に押さえつけているため、第1部材31は、第2部材40と第2環状段差面14の間において挟み付けられることで固定されている。
【0045】
筒状ハウジング10内には、網が筒状に成形された多孔筒状体50が配置されている。
多孔筒状体50は、第1開口部50a側が第1クロージャ20の凸部23に外側から嵌め込まれ、第2開口部50b側が第2クロージャの第1部材31の環状内側段差面36aと環状内側周壁面37aに当接されている。
多孔筒状体50は、軸方向の両側から固定されているため、作動前および作動時においても動くことがない。
【0046】
筒状ハウジング10の内周面10cと多孔筒状体50の間の筒状空間が、発煙剤組成物56が収容された発煙剤組成物収容室55である。
発煙剤組成物56は、円柱、ディスク形状、粉状、顆粒のような所望形状の剤型にすることができる。
発煙剤組成物収容室55の第1端開口部10a側には、第1クロージャ20の底面部21に形成された複数の点火生成物の放出孔24が面しており、第2端開口部10b側は第2クロージャ30の第1部材31に面している。
【0047】
点火器5、多孔筒状体50、煙幕源排出口38および第2部材40の貫通孔43は、それらの中心軸と筒状ハウジング10の軸が同軸になるように配置されている。
【0048】
図3に示すように、第1環状仕切り板60は、第1内筒部材70の第2開口部70bと第2内筒部材71の第1開口部71aとの間に挟み付けられた状態で配置されている。第1環状仕切り部材60は、多孔筒状体50を通すための貫通孔61aと作動時に煙幕源を通すための第1煙幕源通過孔61bを有している。
第2環状仕切り板62は、第2内筒部材71の第2開口部71bと第3内筒部材72の第1開口部72aとの間に挟み付けられた状態で配置されている。第2環状仕切り部材62は、多孔筒状体50を通すための貫通孔62aと作動時に煙幕源を通すための第2煙幕源通過孔62bを有している。
第1煙幕源通過孔61bと第2煙幕源通過孔63bの大きさは、煙幕発生剤56よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
第1煙幕源通過孔61bと第2煙幕源通過孔63bの数は特に制限されないが、第1環状仕切り板60と第2環状仕切り板62に均等間隔をおいて4〜20個程度を分散して形成することができる。
【0049】
発煙剤組成物収容室55は、第1環状仕切り板60と第2環状仕切り板62により第1クロージャ20側から第2クロージャ30に向かって順に第1室55a、第2室55b、第3室55cに分割されている。
第1内筒部材70、第2内筒部材71および第3内筒部材72の外径は、筒状ハウジング10内に挿入でき、かつ内周面10cに当接できる大きさに調整されている。
図2では、筒状ハウジング10の周壁部11の厚さを調整することで、第3内筒部材72の第2開口部72b側が第2クロージャ30側の環状段差面11aに当接され、第1内筒部材70の第1開口部70a側が第1クロージャ20に当接されることで、軸方向に固定されている。
【0050】
本発明の発煙剤組成物を防犯装置(発煙器)に使用したときの作動状態を説明する。
防犯装置は、センサー、電気式点火器を備え、発煙剤組成物が収容されたものであり、室内の天井や壁に取り付けられて使用される。
発煙剤組成物は、例えば防犯装置に設けられた一つの収容室内にまとめて収容されていてもよい。
【0051】
室内に不法侵入者が入ったとき、センサーが感知することで電気式点火器を作動させて燃焼生成物(火炎や高温ガスなどが混在したもの)を発生させる。
その後、燃焼生成物と(B)成分の白煙剤が接触することによって白煙源が生じる。
(B)成分の白煙剤は、電気式点火器の燃焼生成物(熱)によってガス(白煙源)に変化した状態で防犯装置から噴出され、噴出後に空気中で冷却されることで白煙(液滴)に変化する。
【0052】
白煙剤と燃焼生成物の接触と並行して、(A)成分及び(C)成分も燃焼生成物と接触して着火燃焼される。
(A)成分である可燃剤は、酸化剤の作用により燃焼して、窒素ガス、二酸化炭素ガスなどを含む高温ガスを瞬時に発生させる。
(C)成分である酸化剤は、(A)成分である可燃剤を燃焼させると共に、酸化剤自体は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、酸化カリウム、炭酸カリウムなどの白煙源に変化して、微細な粉末のまま白煙となる。なおガス発生剤が燃焼するときの熱を使って(B)成分の分解を促進することもできる。
【0053】
本発明の発煙組成物を使用することで、(B)成分から生じた白煙が、(A)成分から発生したガスの作用により勢いよく噴出されることから、白煙が濃くなり、室内に均一にかつ迅速に広範囲に拡散される。
そして、このように防犯装置から室内に白煙が噴出され拡散されることで、侵入者に対して威嚇が行われ、侵入者の視界が妨げられ、行動が抑止または遅延されることから、犯罪行為が抑止乃至は防止、牽制される。
【実施例】
【0054】
(A)成分
スクロース:大日本明治製糖株式会社製、粒径500〜600μm
(B)成分
パラフィンワックス:日本精蝋株式会社製、平均粒径120μm
(C)成分
硝酸カリウム:大塚化学株式会社製、平均粒径60μm
【0055】
<透過率測定器>
(投光側の機器)
機器名:可視光レーザー405nm,635nm,785nm((株)キコー技研)
型番(405nm):MLXA-D12-405-20(CN4)
型番(635nm):MLXA-D12-635-5(CN4)
型番(785nm):MLXA-D12-785-70(CN4)
(受光側の機器)
機器名:光センサ(日置電機(株))
型番:9742-10
(増幅器)
機器名:光パワーメータ(日置電機(株))
型番:3664
(計測器)
機器名:データ収集システム((株)キーエンス)
型番:NR-2000
【0056】
<発煙剤組成物の製造>
表1に示す各成分からなる発煙剤組成物成形体を公知のガス発生剤成形体の製造方法と同様にして製造した。即ち、実施例1〜3の発煙剤組成物成形体は以下の方法により製造した。
(実施例1〜3)
(D)成分であるイソプロピルアルコールに(E)成分であるエチルセルロースを2質量%溶解させた溶液(日新化成株式会社製、EC−ビヒクル)に(A)成分、及び(B)成分を投入し、目視で均一に混合されていると確認できるまで、導電性スパチュラで撹拌した。その後、(C)成分を投入し、イソプロピルアルコールの含有量が全質量の10質量%以下に揮発するまで、質量を確認しながら撹拌した。イソプロピルアルコールの含有量が全重量の10質量%以下に到達後、発煙剤組成物成形体を乾燥機に入れて、乾燥温度40℃で5時間以上乾燥を行った。
発煙剤組成物は、外径1mm、長さ2mm、質量0.05gとなるように造粒したものを使用した。
【0057】
また比較例1〜3の発煙剤組成物成形体は以下の方法により製造した。
(比較例1)
水に(E)成分であるカルボキシルメチルセルロースを2質量%溶解させた溶液に(A)成分、及び(B)成分を投入し、目視で均一に混合されていると確認できるまで、導電性スパチュラで撹拌した。その後、(C)成分を投入し、粒状に成形後、乾燥機に入れて、乾燥温度20℃で20時間以上乾燥を行った。
得られた発煙剤組成物は、外径2mm、長さ5mm、質量0.5gとなるように造粒したものを使用した。
【0058】
(比較例2)
(A)成分、(B)成分、(C)成分を、目視で均一に混合されていると確認できるまで、導電性スパチュラで撹拌混合した。混合した発煙剤組成物を成形金型に秤量して、油圧プレス機により粉体混合品を圧縮して粉体圧縮品の成形を行った。
得られた発煙剤組成物は、外径10mm、長さ0.9mm、質量0.9gとなるように円柱状に成形したものを使用した。
【0059】
(比較例3)
(A)成分、(B)成分、(C)成分を、目視で均一に混合されていると確認できるまで、導電性スパチュラで撹拌混合した。
混合した発煙剤組成物は、そのまま粉体として使用した。
【0060】
<(D)成分の定量試験>
発煙剤組成物中の(D)成分であるイソプロピルアルコールの含有量は、以下の方法により定量した。
実施例1の発煙剤組成物927.2mgをメタノール20mL(7827.5mg)に2日浸漬し、発煙剤組成物に含まれているイソプロピルアルコールを抽出した。抽出液をガスクロマトグラム質量分析器(GC/MS(SIM))(島津製作所社製、ガスクロマトグラム質量分析器)を用いて、検量線によりイソプロピルアルコールの含有量を定量したところ、得られたピーク強度は定量限界(信頼性の限界値)である64ppm未満であったが、定量結果は理論値として32ppmであった。また実施例2,3の(D)成分の含有量は、(D)成分と(E)成分の添加に用いたイソプロピルアルコールにエチルセルロースを2質量%溶解させた溶液の添加量から実施例1の当該添加量を基準に換算して求めた値である。
【0061】
得られた発煙剤組成物成形体を使用して、発煙状態を確認する試験をした。
図1に示す煙幕発生器に各発煙剤組成物80gを充填したものを使用した。
30m
3(縦6m、横2.5m、高さ2m)のコンテナの床面の中心に煙幕発生装置を置いた。容器内は室温(20℃)に維持した。
容器の長辺と短辺の角部の長辺側の壁面に沿って透過率測定器の受光側の機器をセットし、受光側の機器から長辺方向に50cm離れた位置に投光側の機器をセットした。
点火装置を作動させてから100秒後に、投光側の機器から405nm、635nm、780nmの各波長の光を照射して、受光側の光センサで検出し、増幅器を介して計測器につなぎ透過率を測定した。結果を表1に示す。透過率が小さいほど煙幕濃度が高く、白煙による視覚的な遮断効果に優れることを意味する。
【0062】
【表1】