(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795405
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ダンパリング
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20201119BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20201119BHJP
F16F 3/10 20060101ALI20201119BHJP
F16H 55/14 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
F16F15/04 M
F16F15/04 B
F16F7/00 H
F16F3/10 A
!F16H55/14
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-3206(P2017-3206)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-112254(P2018-112254A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】水町 昭二
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−257170(JP,A)
【文献】
実開平04−041156(JP,U)
【文献】
特開2000−283295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00 −15/08
F16F 3/10
F16F 7/00
F16H 55/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同心配置される内周側部材と外周側部材との間の環状隙間に、円周方向に並んだ状態で適当な間隔で介装されるゴム弾性体からなる複数のダンパ本体と、各ダンパ本体に埋設されると共にこれらダンパ本体同士を連結する芯材とを備え、前記ダンパ本体に前記内周側部材又は前記外周側部材に形成された切欠部に係止されるストッパ部が形成され、前記芯材は、ゴム弾性体より剛性が高くかつ適度な弾性を有する材質からなるものであって、この芯材に、軸方向両側へ張り出すと共に前記ダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなるフィンを設けるとともに、
前記芯材は、ワイヤまたはコイルスプリングであることを特徴とするダンパリング。
【請求項2】
互いに同心配置される内周側部材と外周側部材との間の環状隙間に、円周方向に並んだ状態で適当な間隔で介装されるゴム弾性体からなる複数のダンパ本体と、各ダンパ本体に埋設されると共にこれらダンパ本体同士を連結する芯材とを備え、前記ダンパ本体に前記内周側部材又は前記外周側部材に形成された切欠部に係止されるストッパ部が形成され、前記芯材は、ゴム弾性体より剛性が高くかつ適度な弾性を有する材質からなるものであって、この芯材に、軸方向両側へ張り出すと共に前記ダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなるフィンを設けるとともに、
フィンが、ストッパ部が形成されたダンパ本体の間に位置することを特徴とするダンパリング。
【請求項3】
互いに同心配置される内周側部材と外周側部材との間の環状隙間に、円周方向に並んだ状態で適当な間隔で介装されるゴム弾性体からなる複数のダンパ本体と、各ダンパ本体に埋設されると共にこれらダンパ本体同士を連結する芯材とを備え、前記ダンパ本体に前記内周側部材又は前記外周側部材に形成された切欠部に係止されるストッパ部が形成され、前記芯材は、ゴム弾性体より剛性が高くかつ適度な弾性を有する材質からなるものであって、この芯材に、軸方向両側へ張り出すと共に前記ダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなるフィンを設けるとともに、
芯材に、軸方向両側のフィンの間の位置からこのフィンと直交する方向へ張り出すと共にダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなる直交フィンを設けたことを特徴とするダンパリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば四輪駆動車のトランスファ装置等に使用されるダンパリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪駆動車のトランスファ装置は、主変速機からの回転駆動力を入力してHi(高速出力モード)、Lo(低速出力モード)の2段切り替えを選択可能とする遊星歯車式の副変速機を有する。
図8はこの種の副変速機の一例を示すもので、すなわちトランスファケース101と、内周のスプライン102aにおいて不図示の主変速機の出力軸とスプライン嵌合され、主変速機からの回転駆動力を入力する入力軸102と、入力軸102の後端部外周に一体に設けられたサンギヤ103と、サンギヤ103の周りに配置された複数のプラネタリギヤ104と、プラネタリギヤ104を所定の角度間隔で支持するキャリア105と、トランスファケース101に支持されたリングギヤ106とを有する。各プラネタリギヤ104は、サンギヤ103の外周歯と噛合されると共にリングギヤ106の内周歯と噛合されている。
【0003】
キャリア105は、ボールベアリング107を介してトランスファケース101に回転自在に支持され、入力軸102は、ニードルベアリング108を介してキャリア105の内周に回転自在に支持されている。トランスファケース101の軸孔とこれに挿通された入力軸102との間の隙間は、オイルシール109によって密封されている。
【0004】
また、入力軸102の後方には、後方出力軸110が同軸かつ回転自在に配置されており、この後方出力軸110の外周に形成されたスプライン110aには、切替アーム112によって軸方向へ移動可能な切替スリーブ111がスプライン嵌合しており、この切替スリーブ111の外周に形成したスプライン111aが、サンギヤ103の内周部に形成されたスプライン103a又はキャリア105の内周部に形成されたスプライン105aに選択的に嵌合可能となっている。
【0005】
そして、図示のように切替スリーブ111のスプライン111aがサンギヤ103のスプライン103aと嵌合した状態では、入力軸102に入力された回転駆動力がサンギヤ103から切替スリーブ111を介して後方出力軸110へ伝達されるので、後方出力軸110は入力軸102と等速で回転することになり(高速出力モード)、切替スリーブ111が後方出力軸110のスプライン110a上を後方へ移動してキャリア105のスプライン105aと嵌合した状態では、入力軸102に入力された回転駆動力が、サンギヤ103からプラネタリギヤ104、キャリア105、切替スリーブ111を介して減速されつつ後方出力軸110へ伝達されることになる(低速出力モード)。
【0006】
ここで、上述のような副変速機では、プラネタリギヤ104と噛合されたリングギヤ106は、トランスファケース101に対してスプライン嵌合され、すなわち、リングギヤ106の外周面に形成されたスプライン106aが、トランスファケース101のリングギヤ支持部内周面に形成されたスプライン101aと嵌合しており、スナップリング113によって抜け止め固定されている。そして、リングギヤ106とトランスファケース101との間のクリアランスによる径方向のがたつきを防止するために、リングギヤ106におけるスプライン106aが形成されていない前部外周面106bと、トランスファケース101のリングギヤ支持部内周面におけるスプライン101aが形成されていない奥側内周面101bとの間には、ダンパリング200が介装されている。
【0007】
すなわち、リングギヤ106の組み付けに際しては、まずトランスファケース101のリングギヤ支持部の奥側内周面101bへダンパリング200を挿入し、その周辺にオイルを塗布してから、リングギヤ106を、その外周のスプライン106aをトランスファケース101のスプライン101aと嵌合させながら、前端面がトランスファケース101のリングギヤ支持部の奥側段差面と当接するまで挿入し、スナップリング113によって抜け止めする。このとき、リングギヤ106の挿入過程で、リングギヤ106の前部外周面106bがダンパリング200に圧入されると共に、ダンパリング200の外周面がトランスファケース101のリングギヤ支持部内周面における奥側内周面101bに圧接し、すなわちダンパリング200が適当な潰し代をもって径方向に圧縮されるため、リングギヤ106を、ダンパリング200を介してトランスファケース101に弾性的にフローティング支持された状態とし、これによってトランスファケース101とリングギヤ106の接触による衝撃や異雑音の発生を防止することができる。
【0008】
ここで、ダンパリング200は、例えばゴム弾性体の単体からなるものである場合は、トランスファケース101のリングギヤ支持部の奥側内周面101bへ挿入してからオイルを塗布してリングギヤ106を挿入するまでの間に、自らの重量による変形力に耐え切れずにトランスファケース101のリングギヤ支持部の上部内周面から下側へ折れ込むように脱落してしまいやすいことから、それを防止する目的で、従来、
図9に示すように、内部に補強のための芯材を埋設したものが知られている。
【0009】
すなわち
図9に示すダンパリング200は、ゴム弾性体からなるソーセージ形状の複数のダンパ本体201と、これらダンパ本体201に埋設されると共にダンパ本体201同士を円周方向に互いに連結する金属又はプラスチックからなる環状の芯材202とを備える。そしてこのダンパリング200は、
図10に示すように、直線的に延びる芯材202にダンパ本体201を加硫成形した後で、芯材202の両端に形成された結合部202a,202b同士を結合することによって、
図9のように環状としたものである。
【0010】
また、複数のダンパ本体201のうち、所定の位置にある一対のダンパ本体201
1,201
2には、それぞれ径方向外側へ突出したストッパ部201aが形成されている。トランスファケース101のリングギヤ支持部の円周方向1か所には、ダンパリング200の装着位置の調整やスナップリング113の装着の容易化等の目的で、軸方向へ延びる切欠部101cが形成されており、この切欠部101cにおける幅方向両側の段差面101d,101dに、ダンパ本体201
1,201
2に形成されたストッパ部201aを係止することによって、ダンパリング200の回り止めを図っている(例えば下記の先行技術文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−257170号公報
【特許文献2】特開2002−257171号公報
【特許文献3】特開2002−257188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来のダンパリング200は、ストッパ部201aを、図示の例のように径方向外側を向いた状態、あるいは逆に径方向内側を向いた状態とする必要がある場合、芯材202の両端の結合部202a,202b同士を結合することによって環状とした状態では、芯材202の構造上、その捻れ方向(
図9における矢印T方向)への向きは規制されないことから、ダンパ本体201
1,201
2におけるストッパ部201aの向きも規制されず、このため、図示の例のように、ストッパ部201aを、径方向外側を向いた状態、あるいは逆に径方向内側を向いた状態に維持することが困難であった。
【0013】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、トランスファ装置等に使用されるダンパリングにおいて、ダンパ本体に形成されたストッパ部を、回り止め機能を奏するための所定の方向を向いた状態に維持可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示における第一の態様に係るダンパリングは、互いに同心配置される内周側部材と外周側部材との間の環状隙間に、円周方向に並んだ状態で適当な間隔で介装されるゴム弾性体からなる複数のダンパ本体と、各ダンパ本体に埋設されると共にこれらダンパ本体同士を連結する芯材とを備え、前記ダンパ本体に前記内周側部材又は前記外周側部材に形成された切欠部に係止されるストッパ部が形成され、前記芯材は、ゴム弾性体より剛性が高くかつ適度な弾性を有する材質からなるものであって、この芯材に、軸方向両側へ張り出すと共に前記ダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなるフィンを設け
るとともに、前記芯材は、ワイヤまたはコイルスプリングであることを特徴とするものである。
【0015】
本開示における第二の態様に係るダンパリングは、
互いに同心配置される内周側部材と外周側部材との間の環状隙間に、円周方向に並んだ状態で適当な間隔で介装されるゴム弾性体からなる複数のダンパ本体と、各ダンパ本体に埋設されると共にこれらダンパ本体同士を連結する芯材とを備え、前記ダンパ本体に前記内周側部材又は前記外周側部材に形成された切欠部に係止されるストッパ部が形成され、前記芯材は、ゴム弾性体より剛性が高くかつ適度な弾性を有する材質からなるものであって、この芯材に、軸方向両側へ張り出すと共に前記ダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなるフィンを設けるとともに、フィンが、ストッパ部が形成されたダンパ本体の間に位置することを特徴とするものである。
【0016】
本開示における第三の態様に係るダンパリングは、
互いに同心配置される内周側部材と外周側部材との間の環状隙間に、円周方向に並んだ状態で適当な間隔で介装されるゴム弾性体からなる複数のダンパ本体と、各ダンパ本体に埋設されると共にこれらダンパ本体同士を連結する芯材とを備え、前記ダンパ本体に前記内周側部材又は前記外周側部材に形成された切欠部に係止されるストッパ部が形成され、前記芯材は、ゴム弾性体より剛性が高くかつ適度な弾性を有する材質からなるものであって、この芯材に、軸方向両側へ張り出すと共に前記ダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなるフィンを設けるとともに、芯材に、軸方向両側のフィンの間の位置からこのフィンと直交する方向へ張り出すと共にダンパ本体の間を延びるゴム弾性体からなる直交フィンを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るダンパリングによれば、フィンによって芯材の捻れが抑制されるので、ダンパ本体のストッパ部の捻れ方向への不用意な変位が規制され、このため、ストッパ部を、内周側部材又は外周側部材に形成された切欠部に係止されることにより回り止め機能を奏するための所定の方向を向いた状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るダンパリングの第一の実施の形態を示す軸方向投影図である。
【
図2】本発明に係るダンパリングの第一の実施の形態において、芯材を環状に結合する前の状態を示す図である。
【
図3】本発明に係るダンパリングの第一の実施の形態における芯材の両端の結合部を示す部分拡大図である。
【
図4】本発明に係るダンパリングの第一の実施の形態を示す要部斜視図である。
【
図5】本発明に係るダンパリングの第二の実施の形態を示す軸方向投影図である。
【
図6】本発明に係るダンパリングの第二の実施の形態において、芯材を環状に結合する前の状態を示す図である。
【
図7】本発明に係るダンパリングの第二の実施の形態を示す要部斜視図である。
【
図8】トランスファ装置における副変速機の一例と、これに装着されるダンパリングとの関係を示す説明図である。
【
図9】従来のダンパリングの一例を示す軸方向投影図である。
【
図10】従来のダンパリングにおいて、芯材を環状に結合する前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るダンパリングの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず
図1は、第一の実施の形態を示すものである。
【0020】
すなわち第一の実施の形態のダンパリング10は、
図1に示すように、ゴム弾性体からなる複数のダンパ本体11と、ゴム弾性体より剛性の高い例えば金属又は合成樹脂からなりダンパ本体11の中心を通った状態に埋設されると共に各ダンパ本体11同士を円周方向に互いに連結する芯材12と、を備える。このダンパリング10は、
図2に示すように、直線的に延びる芯材12にダンパ本体11を加硫成形した後で、芯材12の両端に形成された結合部12a,12b同士を結合することによって、
図1のように環状としたものである。
【0021】
ダンパ本体11は、先に説明した
図8に示すトランスファケース101のリングギヤ支持部内周面における奥側内周面101bと、その内周に固定されるリングギヤ106の前部外周面106bとの間に圧縮状態で介装されることによって、リングギヤ106を、トランスファケース101の内周に弾性的にフローティング支持し、これによってトランスファケース101とリングギヤ106の接触による衝撃や異雑音の発生を防止するものであって、両端が球面状の凸面をなすソーセージ形状に形成されており、互いに適当な間隔をもって並んで配置されている。なお、トランスファケース101は
上記第一から第三の態様それぞれに記載された外周側部材に相当するものであり、リングギヤ106は
上記第一から第三の態様それぞれに記載された内周側部材に相当するものである。
【0022】
図3及び
図4に示すように、芯材12は、この実施の形態ではバネ鋼製の細長いコイルスプリングからなるものであって、ダンパ本体11と、このダンパ本体11から連続して延びるゴム弾性体からなり芯材12(コイルスプリング)の巻き径と略同等の線径の連絡部13に、ダンパ本体11及び連絡部13を交互に通るように埋設されている。
【0023】
また、コイルスプリングからなる芯材12の両端に形成された結合部12a,12bは、
図3に示すように、連絡部13のゴム弾性体から露出していて、このうち一方の結合部12aは、コイルスプリングの巻きピッチが小さくかつ大径となっており、他方の結合部12bは、コイルスプリングの巻きピッチが小さくかつ小径で、結合部12aの内周に螺合可能となっている。すなわち、結合部12a,12bは、
図3に矢印T1,T2で示すようにコイルスプリングの巻き方向とは逆の方向へ捩ってから、矢印Xで示すように互いに突き合わせた状態で捩り力を解放させることで、互いに螺合して結合状態とすることができる。
【0024】
ダンパ本体11のうち、芯材12の結合部12a,12bと180度対称位置の円周方向両側で互いに対向するダンパ本体11
1,11
2、言い換えれば
図2に示すように直線的に延びた状態における長手方向中間付近で互いに対向するダンパ本体11
1,11
2には、それぞれ径方向外側へ向けて突出したストッパ部11aが形成されている。トランスファケース101のリングギヤ支持部の円周方向1か所には、ダンパリング10の装着位置の調整やスナップリングの装着の容易化等の目的で、軸方向へ延びる切欠部101cが形成されており、この切欠部101cにおける幅方向両側の段差面101d,101dに、ダンパ本体11
1,11
2に形成されたストッパ部11aを係止することによって、ダンパリング10の回り止めを図っている。
【0025】
ここで、ダンパリング10は、トランスファケース101のリングギヤ支持部のうち切欠部101cが形成された位置では、ダンパ本体11があっても圧縮されず、ダンパとしての機能をなさない。このため、切欠部101cに係止されるストッパ部11aを有するダンパ本体11
1,11
2の間の位置にはダンパ本体11が設けられておらず、また、これとは180度対称位置となる結合部12a,12b付近にも、リングギヤ106に対する支持荷重バランスをとる目的で、ダンパ本体11が設けられていない。
【0026】
そして芯材12のうち、ストッパ部11aを有するダンパ本体11
1,11
2の間を延びる部分には、ダンパ本体11
1,11
2から連続して延び、連絡部13と一体のゴム弾性体からなるフィン14が一体に設けられている。
【0027】
図4に示すように、フィン14は、芯材12が埋設された連絡部13からその軸方向両側へ張り出した扁平な形状となっている。一方のフィン14の張り出し端部から他方のフィン14の張り出し端部までの軸方向幅wは、ダンパ本体11(11
1,11
2)の線径と略同等である。そしてこのフィン14は、軸方向幅wに比較して径方向厚さtが小さいため、芯材12を、軸方向に対しては曲がりにくく、径方向に対しては相対的に曲がりやすくする機能を有する。
【0028】
上述のように構成されたダンパリング10の製造においては、まず直線的に延びるコイルスプリングからなる芯材12に、不図示の金型を用いて、
図2に示すように、直線的に並んだ複数のダンパ本体11及び連絡部13とフィン14を一体に加硫成形する。詳しくは、金型のパーティング面には複数のダンパ本体成形用凹部及びその間の芯材支持凹部が直線的に並んで形成されており、このうち長手方向中間に位置する芯材支持凹部の幅方向両側にはフィン成形用凹部が張り出し形成されており、この金型に、芯材12を、ダンパ本体成形用凹部及び芯材支持凹部を交互に通るようにセットしてから型締めし、この型締めによって、ダンパ本体成形用凹部間、芯材支持凹部間、及びフィン成形用凹部間に画成される互いに連続するキャビティに、未加硫ゴム材料を充填して加硫成形する。すなわちダンパ本体成形用凹部間のキャビティではダンパ本体11が成形され、芯材支持凹部間では連絡部13が成形され、フィン成形用凹部間では連絡部13から張り出したフィン14が成形される。
【0029】
このようにして
図2に示すように成形され、金型から取り出された成形品は、ダンパ本体11
1,11
2に形成されたストッパ部11aが径方向外側を向くように曲げながら、芯材12の両端の結合部12a,12b同士を結合することによって、
図1に示すような環状とする。
【0030】
このとき、ダンパ本体11
1,11
2間の連絡部13に一体に設けられたフィン14は、ストッパ部11aの突出方向と平行な方向(径方向,
図4における厚さt方向)には曲がりやすく、幅w方向には曲がりにくいため、ストッパ部11aが径方向外側を向くように、芯材12の曲げ方向が案内される。
【0031】
そしてこのようにして環状とされたダンパリング10は、
図8に示すトランスファケース101へのリングギヤ106の組み付け過程で、次のように装着される。
【0032】
すなわち、まずダンパリング10をトランスファケース101のリングギヤ支持部の奥側内周面101bへ挿入する。このとき、ダンパリング10を補強している芯材12は、任意に変形可能であるため、適当に変形させながら容易に挿入することができる。
【0033】
また、ダンパリング10の挿入過程では、ダンパ本体11
1,11
2から径方向外側を向いて突出したストッパ部11a,11aを、トランスファケース101のリングギヤ支持部の内周面に形成された切欠部101c内を移動させることができる。このため、ストッパ部11a,11aを切欠部101cの幅方向両側の段差面101d,101dに係止させてダンパリング10を回り止めすることができる。
【0034】
また、トランスファケース101への挿入過程でのダンパリング10の捻れは、ダンパ本体11
1,11
2間の連絡部13から軸方向両側へ張り出したフィン14,14によって抑制されるので、ダンパ本体11
1,11
2に形成されたストッパ部11a,11aが径方向外側を向いた状態が維持され、したがってストッパ部11a,11aを、切欠部101cの幅方向両側の段差面101d,101dに確実に係止させることができる。
【0035】
さらに、このようにしてトランスファケース101のリングギヤ支持部の奥側内周面101bへ挿入されたダンパリング10は、コイルスプリングからなる芯材12によって、ゴム弾性体の単体のみからなるものに比較して剛性が高いものとなっているため、リングギヤ支持部の奥側内周面101bに沿って円形の状態に保持される。したがって、その後に挿入されるリングギヤ106の前部外周面106bによってダンパリング10が内周側から支持される前に、このダンパリング10が自らの重量による変形力に耐え切れずにトランスファケース101のリングギヤ支持部の上部内周面から下側へ折れ込んだり、リングギヤ106に噛み込まれたり、切断されてしまったりするのを有効に防止することができる。
【0036】
次に
図5〜
図7は、本発明に係るダンパリングの第二の実施の形態を示すものである。この第二の実施例のダンパリング10において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、芯材12のうち、ストッパ部11aを有するダンパ本体11
1,11
2の間を延びる部分に、軸方向両側へ張り出したフィン14,14のほか、このフィン14,14の間の位置から、フィン14と直交する方向、具体的にはストッパ部11aの突出方向(径方向外側)へ張り出した直交フィン15を設けた点にある。この直交フィン15も、フィン14と同様、芯材12にダンパ本体11(及び連絡部13)を一体に加硫成形する際に同時に成形することができる。その他の構成は、第一の実施の形態と同様となっている。
【0037】
詳しくは、
図7に示すように、直交フィン15は、片側のフィン14と略同等の大きさであって、芯材12が埋設された連絡部13からその径方向外側へ張り出した扁平な形状となっており、芯材12を、ストッパ部11aが径方向外側となる方向へ曲げる場合は、このような曲げを比較的容易に許容する反面、その逆方向、すなわちストッパ部11aが径方向内側となる方向へ芯材12を曲げようとした場合には、直交フィン15に圧縮応力による軸方向への逃げを生じて、うまく曲がらなくする機能を有する。
【0038】
したがって、芯材12の曲げを、ストッパ部11aの突出方向と平行な方向へ案内するフィン14,14の機能に加え、上述のように、直交フィン15によって、ストッパ部11aが径方向内側となるような方向へは曲げにくくなるため、
図6に示す直線的な形状から、芯材12を、確実にストッパ部11aが径方向外側を向くように曲げて、
図5に示す形状とすることができる。
【0039】
また、軸方向両側へ張り出したフィン14,14に加えて、これと直交する方向へ張り出した直交フィン15を設けたことによって、ダンパ本体11
1,11
2の間の捻れに対する剛性も一層高めることができる。
【0040】
なお、上述した第一及び第二の実施の形態では、芯材12がバネ鋼によるコイルスプリングからなるものとして説明したが、この芯材12は、らせん状に巻かれていないバネ鋼などの金属あるいは合成樹脂製のワイヤからなるものであってもよい。
【0041】
また、上述した第一及び第二の実施の形態のように、芯材12がバネ鋼によるコイルスプリングからなるものである場合、金型によるダンパ本体11の成形過程で、未加硫ゴム材料がダンパ本体成形用キャビティ内からコイルスプリングの内周に沿って芯材支持部へ流れ込むため、隣接するダンパ本体11,11の間には、コイルスプリングと一体の連絡部13が形成されるが、芯材12をらせん状に巻かれていないバネ鋼などの金属あるいは合成樹脂製のワイヤからなるものとした場合は、ダンパ本体11,11,・・・が芯材12のみを介して連結されたものとすることができる。
【0042】
また、上述した第一及び第二の実施の形態では、軸方向へ張り出したフィン14あるいは径方向へ張り出した直交フィン15は、芯材12のうち、ストッパ部11aを有するダンパ本体11
1,11
2の間を延びる部分のみに設けたが、芯材12のうちさらにダンパ本体11
1,11
2以外のダンパ本体11,11の間を延びる部分にも設けても良い。
【0043】
さらに、上述した第一及び第二の実施の形態では、ストッパ部11aが、トランスファケース101の切欠部101cに係止させるために径方向外側を向いているものとなっているが、本発明は、径方向内側を向いているものである場合や、その他の方向を向いているものである場合にも適用可能であり、ストッパ部11aの形状も、これを係止する切欠部101cの形状等に応じて決定されるものである。
【符号の説明】
【0044】
10 ダンパリング
11 ダンパ本体
11a ストッパ部
12 芯材
12a,12b 結合部
13 連絡部
14 フィン
15 直交フィン
101 トランスファケース(外周側部材)
101c 切欠部
101d 段差面
106 リングギヤ(内周側部材)