特許第6795406号(P6795406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アース製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795406
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】2相液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20201119BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20201119BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/03
   A61K8/41
   A61K8/34
   A61Q11/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-3503(P2017-3503)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-111663(P2018-111663A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】冨永 一輝
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124533(WO,A1)
【文献】 特開2014−051444(JP,A)
【文献】 特開2014−051445(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02127632(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油剤(A)、油剤(B)および(C)水を含有し、
前記油剤(A)は、1−オクタノール/水計算分配係数(CLogPow値)が10.5以上11.5以下である流動パラフィンから選択される1種以上であり、
前記油剤(B)は、ミリスチン酸オクチルドデシルおよび/またはトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルであることを特徴とする、
2相分離型液体口腔用組成物。
【請求項2】
油剤(A)の油剤(B)に対する配合比率が、重量比で1.0以上であることを特徴とする、請求項1に記載の2相分離型液体口腔用組成物。
【請求項3】
さらに、(D)四級アンモニウム塩を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の2相分離型液体口腔用組成物。
【請求項4】
さらに、(E)アルコール化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜いずれかに記載の2相分離型液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時の均一な分散性と使用後の分離性と清澄性を同時に実現でき、洗口液として好適な2相液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油液層と水層の2相に分離した製剤で、静置時には2相に分離しており、振とうすることにより一時的な水中油滴型のエマルションを形成させて使用する液体組成物は公知であり、特許文献1には口内洗剤が、特許文献2には口腔用液体組成物が記載されている。
油液層と水層の2相に分離した口腔用組成物を洗口液として使用する場合には、振とう後、均一なエマルション状態が一定時間保持される必要がある。一方で、均一なエマルション状態を保持しようとすると、洗口に使用後もなかなか2相に分離せず、美観上好ましくないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−305022号公報
【特許文献2】特開平11−079962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、使用時の均一な分散性と使用後の分離性と清澄性を同時に実現できる、2相液体口腔用組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の油剤(A)および(B)を併用し、これを(C)水と混合することにより、振とう後は均一なエマルション状態が一定時間保持されるものの、使用後は速やかに2相に分離し清澄性が得られること、すなわち、使用時の均一な分散性と使用後の分離性と清澄性を同時に実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従来の2相に分離した口腔用組成物において、2種類の油剤を組み合わせることは公知の手法であったが、本発明は、特定の2種の油剤を組み合わせることにより、新たな効果が得られることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.油剤(A)、油剤(B)および(C)水を含有し、
前記油剤(A)は、1−オクタノール/水計算分配係数(CLogPow値)が10.5以上11.5以下である流動パラフィンから選択される1種以上であり、
前記油剤(B)は、ミリスチン酸オクチルドデシルおよび/またはトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルであることを特徴とする、
2相分離型液体口腔用組成物。
2.油剤(A)の油剤(B)に対する配合比率が、重量比で1.0以上であることを特徴とする、1.に記載の2相分離型液体口腔用組成物。
3.さらに、(D)四級アンモニウム塩を含有することを特徴とする、1.または2.に記載の2相分離型液体口腔用組成物。
4.さらに、(E)アルコール化合物を含有することを特徴とする、1.〜3.いずれかに記載の2相分離型液体口腔用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2相液体口腔用組成物は、振とうにより均一なエマルション状態が一定時間保持され、その後速やかに2相に分離するので、洗口液として使用した場合には、使用後速やかに分離するため、清澄性や美観に優れ好適である。
さらに、本発明の2相液体口腔用組成物は、均一なエマルション状態から速やかに2相に分離するため、油液層に含有される油剤、特に、油剤(B)が水により分解する恐れが少なく、油剤(A)および(B)において油溶性薬用成分を高濃度配合した処方においても、製剤安定性に優れた処方を得ることが可能である。
また、本発明の2相液体口腔用組成物を洗口液とした場合には、高濃度に配合した油剤(A)および(B)により、歯の汚れ、特に油汚れに対する高い洗浄効果が得られるほか、油剤による歯牙のコーティングや殺菌効果、口腔内の保湿効果を得ることができる。さらに、成分(D)の四級アンモニウム塩を配合することにより、四級アンモニウム塩が有する抗菌効果も併せ得ることもでき、さらに、成分(E)のアルコール化合物を配合することにより、さっぱりとした使用感を高めることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の2相液体口腔用組成物について詳細に説明する。
本発明の2相液体口腔用組成物は、2つの油剤(A)および(B)を含有してなる油液層と、(C)水を含有してなる水層との2相に分離した製剤型のものである。
ここで、2相に分離した製剤型とは、静置時には油液層と水層の2相に分離しており、使用時に振とうすることにより均一なエマルション状態となり、使用後静置すると速やかに2相に分離する形態の製剤を意味する。すなわち、2相に分離した製剤は、静置しておくと油液層と水層の2相に分離した外観であり、使用時は振とうにより2相が混ざり合い均一なエマルション状態となり、静置すると再度速やかに2相に分離した外観に戻る。さらに、この製剤は、振とうして使用した後に静置しておくと、油液層と水層との2相が分離した状態が維持されるが、2相に分離した後に再度振とうすれば、再び均一なエマルション状態となり、静置および振とうを繰り返して何度も使用することができる。
本発明の2相液体口腔用組成物において、「速やかに2相に分離する」とは、均一なエマルション状態となった後、静置し概ね15〜30秒以内に2相に分離した状態に戻ることを意味する。
また、「2相に分離する」とは、100mL容量のサンプル瓶に組成物100gを入れ、1秒間に2回の速さで上下に20回振とうした後、静置した場合に、組成物が概ね2つの相に分離することが外観上視認できることを意味する。ここで、2相の境界に油液層、水層とは外観上異なる乳白色の水や油の微小な粒子の分散層を有していても良いが、この分散層は、油液層と水層とを合わせた全体の体積として5%以下とする。
【0009】
本発明の2相液体口腔用組成物は、油剤(A)として流動パラフィンを含有するものである。
<油剤(A)について>
本発明における、油剤(A)の流動パラフィンは、2相に分離する製剤として外観を特徴づけるものである。
本発明の「流動パラフィン」は、無色無臭の液状の炭素数20以上のアルカンの混合物であって、市販されている公知のものが使用可能であり、特に限定されるものではないが、本発明においては、日本薬局方等に規定する規格に適合するもの等を好ましく用いることができる。
本発明における、油剤(A)の流動パラフィンは、1−オクタノール/水計算分配係数(CLogPow値)が10.5以上11.5以下である流動パラフィンから選択される1種以上のもの(例えば、(株)モレスコ社製のモレスコホワイトP−200、CLogPow:10.95〜11.01等)を、好適に使用することができる。
ここで、1−オクタノール/水計算分配係数(calculated octanol-water partition coefficient:CLogPow:以下、「LogP」ということがある。)は、一般に常用対数表記で示される値である。LogP値は、化学物質の性質を表す数値の一つであり、添加量に依存しない一定の値である。対象とする物質が、1−オクタノールと水の混合液において、1−オクタノール相と水相が接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度をその常用対数で示したものである。LogP値が大きくなると、比較的に疎水性が増大する傾向があり、LogP値が小さくなると、比較的に親水性が増大する傾向がある。
本発明におけるLogP値は、既知の計算方法により算出したものである。また、LogP値は、定量的構造活性相関アルゴリズムを用いた市販ソフト等による計算によって求めた値を用いたものであってもよいし、フラグメント法を採用してもよい。フラグメント法では、ある分子の分配係数を、その分子の部分構造ごとの分配係数の総和によって計算する。
LogP値を計算により算出可能な市販ソフトとしては、Chemdraw Pro12.0等を挙げることができ、また、http://www.vcclab.org/lab/alogps/start.htmlを利用して得た値としてもよい。
【0010】
さらに、本発明における、油剤(A)の流動パラフィンは、40℃における動粘度が4.0mm/s以上60.0mm/s以下、より好ましくは、9.0mm/s以上40.0mm/s以下である流動パラフィンから選択される1種以上のものを好適に使用することができる。これらの流動パラフィンとしては、三光化学工業(株)社製の150−S(動粘度:約25.4mm/s)、260−S(動粘度:約49.0mm/s)や、(株)モレスコ社製のモレスコホワイトP−120(動粘度:約23.5mm/s)、P−150(動粘度:約30.1mm/s)、P−200(動粘度:約39.3mm/s)等が挙げられる。
ここで、動粘度はJIS K2283に基づいて測定することができ、具体的には、一定容量(25mL)の試料が、40℃の条件下でウベローデ型粘度計の毛細管を自然流下するのに要した時間(秒)を測定し、この値を動粘度の値とすることができる。
【0011】
本発明の2相液体口腔用組成物は、油剤(B)としてミリスチン酸オクチルドデシルおよび/またはトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを、含有するものである。
<油剤(B)について>
本発明における油剤(B)は、油剤(A)の流動パラフィン同様に、2相に分離する製剤として外観を特徴づけるものである。
本発明の油剤(B)として、ミリスチン酸オクチルドデシルを単独で使用すると、均一なエマルション状態から油液層と水層の2相に速やかに分離する点において、より好適である。
【0012】
本発明の2相液体口腔用組成物における、油剤(A)および(B)の配合量は、使用時の均一な分散性と使用後の分離性と清澄性を同時に実現する観点から、組成物全体の5重量%以上50重量%以下が好ましく、7重量%以上30重量%以下がより好ましく、10重量%以上20重量%以下が最も好ましい。
さらに、油剤(A)の油剤(B)に対する配合比率は、重量比で1.0以上20.0以下にすると、均一なエマルション状態から油液層と水層の2相に速やかに分離する観点において好ましく、2.0以上にするとより好ましく、3.0以上にすることが均一な分散後の分離性と清澄性が速やかに得られるために最も好ましい。
【0013】
本発明の2相液体口腔用組成物における油液層成分には、油溶性の任意の成分、例えば、香料、油溶性着色剤、油溶性薬用成分等を配合できる。
香料としては、例えば、メントール、アネトール、オイゲノール、カンファー、シトロネロール、1,8−シネオール、シンナミックアルデヒド、チモール、バニリルブチルエーテル、バニリン、フェネチルアルコール、ヘリオトロピン、ボルネオール、サリチル酸メチル、p−メンタン−3,8−ジオール、ラクトン酸メンチル、リナロール、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、ライム油、セージ油、タイム油、ローズマリー油、ローレル油、桂皮油、ピメント油、シソ油、ユーカリ油などが挙げられる。また、アップルフレーバー、アプリコットフレーバー、ストロベリーフレーバー、チェリーフレーバー、パイナップルフレーバー、ピーチフレーバー、バナナフレーバー、メロンフレーバーなどのフレーバー香料を配合することができる。さらに、エタノール、プロピレングリコールなどの香料溶剤を配合することも可能である。なお、これらの香料は単独で用いても2種以上を併用してもよいが、発明の効果を損なわない範囲の配合量は、通常、油液層成分に対して0.01重量%以上20重量%以下、好ましくは0.1重量%以上15重量%以下である。
油溶性着色剤としては、例えば、赤色215号、赤色225号、黄色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号などの中から1種あるいは2種以上を適宜選択できるが、発明の効果を損なわない範囲の配合量は、通常、2相液体口腔用組成物に対して0.001重量%以下が好ましい。
油溶性薬用成分としては、例えば、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、イブプロフェンなどが挙げられる。なお、これらの薬用成分は単独で用いても2種以上を併用してもよいが、発明の効果を損なわない範囲の配合量は、通常、2相液体口腔用組成物に対して0.001重量%以上10重量%以下、好ましくは0.01重量%以上1.0重量%以下である。
【0014】
本発明の2相液体口腔用組成物は、さらに、成分(D)として四級アンモニウム塩を配合することが好ましい。四級アンモニウム塩を配合することにより、当該化合物が有する抗菌性により、本発明の2相液体口腔用組成物の保存安定性を向上させることができる。
成分(D)の四級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を併用することができる。この中でも、塩化セチルピリジニウムの配合が好ましい。
これら成分(D)の四級アンモニウム塩は、カチオン性界面活性剤として公知の化合物群であるため、油液層と水層の2相の分離性においては、成分(D)の配合は好ましくないものの、四級アンモニウム塩が有する抗菌性を本発明の2相液体口腔用組成物に付与するためには、成分(D)を配合することが好ましい。一般的に、成分(D)の四級アンモニウム塩の配合は、均一な分散性を促進し2相への分離性を阻害すると考えられるが、本発明の2相液体口腔用組成物においては、成分(D)の四級アンモニウム塩を配合しても分離性に影響がないことが、後述する試験データより明らかとなった。本発明の2相液体口腔用組成物に成分(D)の四級アンモニウム塩を配合する場合には、油液層と水層の2相の分離性と抗菌性の両方の効果を得るために、2相液体口腔用組成物全体の0.001重量%以上0.1重量%以下の範囲で配合することが好ましく、0.005重量%以上0.05重量%以下の範囲で配合することがより好ましい。
【0015】
本発明の2相液体口腔用組成物は、さらに、成分(E)としてアルコール化合物を配合することが好ましい。
成分(E)のアルコール化合物としては、ソルビット、キシリット、マルチトール、エリスリトール、スクラロースなどの糖アルコールや、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコールを配合することが可能であり、さらに、エタノールなどの炭素数が1〜4の低級アルコールを、成分(C)の水とともに溶剤として配合することも可能である。成分(E)のアルコール化合物の配合は、一般的には、均一な分散性を促進し2相への分離性を阻害すると考えられるが、本発明の2相液体口腔用組成物においては、成分(E)のアルコール化合物を配合しても分離性に影響がなく、分離後の清澄性や美観に優れることも特徴の1つである。特に、エタノールは、本発明の2相液体口腔用組成物を洗口液として使用する場合において、さっぱりとした使用感を付与するために好適である。
成分(E)のアルコール化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、2相液体口腔用組成物に対して5重量%以上30重量%以下が好ましく、10重量%以上25重量%以下がより好ましい。
【0016】
本発明の2相液体口腔用組成物の水層には、成分(C)の水、さらに成分(D)の四級アンモニウム塩、成分(E)のアルコール化合物に加え、その他の公知の水溶性成分を必要に応じて配合することができ、例えば、粘度調整剤、矯味剤、着色剤、pH調整剤などが挙げられる。
粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体や、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナンなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤などが挙げられ、これらの1種または2種以上を配合することができる。これらの配合量は、2相液体口腔用組成物全体に対して0.001重量%以上1.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上0.5重量%以下がより好ましい。
【0017】
矯味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビアエキスなどの甘味料のほか、上記成分(E)のアルコール化合物の例示化合物として挙げたソルビット、キシリット、マルチトール、エリスリトール、スクラロースなどの糖アルコールも使用することができるが、発明の効果を損なわない範囲の配合量は、通常、2相液体口腔用組成物に対して0.001重量%以上1.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上0.5重量%以下がより好ましい。
着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、橙色205号、青色1号、緑色3号、緑色201号などの水溶液色素が挙げられるが、発明の効果を損なわない範囲の配合量は、通常、2相液体口腔用組成物に対して0.001重量%以下が好ましい。
本発明の2相液体口腔用組成物は、25℃におけるpHが6.0〜8.5の範囲に調整されることが好ましく、そのために、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸やこれらの水溶性塩をpH調整剤として使用することが好ましく、中でも、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウムを組み合わせたものを配合することが好適である。
なお、本発明の2相液体口腔用組成物は、均一なエマルション状態から油液層と水層の2相への速やかな分離性を得るためには、成分(D)以外の界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0018】
本発明の2相液体口腔用組成物における、油液層の水層に対する配合比率は、重量比で0.01以上10.0以下であることが好ましい。本発明の2相液体口腔用組成物を洗口液として使用する場合には、使用時の均一な分散性と使用後の分離性と清澄性を得て、かつ、歯の汚れ、特に油汚れに対する洗浄効果を得るために、油液層の水層に対する配合比率の上限を5.0以下とすることがより好ましく、1.0以下とすることがさらに好ましい。
本発明の2相液体口腔用組成物からなる洗口液は、静置時には油液層と水層との2相に分離しているが、使用するときに軽く振とうすることで、均一なエマルション状態が得られる。この均一なエマルション状態は一定時間保持されるので、この間に口に含み洗口することができる。使用後は静置することにより、速やかに2相に分離し清澄性が得られ、美観に優れた洗口液となる。また、2相に分離した洗口液は、再度振とうすることにより均一なエマルション状態となるため、これを何度も繰り返して使用することができる。
【実施例】
【0019】
以下、製剤例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の油剤(A)、油剤(B)および(C)水を含有する組成物の試験検体例を示す。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0020】
<分離性と清澄性の評価試験>
(1)試験検体
実施例1
モレスコホワイトP−200を14.0重量部、ミリスチン酸オクチルドデシルを1.0重量部、エタノールを5.0重量部、グリセリン10重量部および精製水を使用して、全体量を100重量部として2相液体口腔用組成物を調製した。
実施例2〜9は下記表1に、比較例1〜5は下記表2に示した配合で、実施例1と同様にして2相液体口腔用組成物を調製し、それぞれの試験検体を得た。
なお、以下の実施例および比較例の2相液体口腔用組成物の調製に際し、以下に示すものを使用した。
流動パラフィン1:(株)モレスコ社製モレスコホワイトP−200
LogP:10.95〜11.01
40℃における動粘度:約39.3mm/s
流動パラフィン2:(株)モレスコ社製モレスコホワイトP−40
LogP:8.63〜9.01
40℃における動粘度:約4.3mm/s
ミリスチン酸オクチルドデシル:高級アルコール工業(株)社製
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル:太陽化学(株)社製
ミリスチン酸イソプロピル:日光ケミカルズ(株)社製
アジピン酸ジイソプロピル:日光ケミカルズ(株)社製
塩化セチルピリジニウム・一水和物:メルク(株)社製
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
(2)分離性の評価試験方法
100mL容量のサンプル瓶にそれぞれの試験検体100gを入れ、1秒間に2回の速さで上下に20回振とうした後の均一な分散性を確認し、2相の分離が視認できるまでの時間(秒)を測定した。
本発明の2相液体口腔用組成物においては、15〜30秒以内に2相分離が視認できたものを分離性が良好であると評価した。
【0024】
(3)清澄性の評価試験方法
上記(2)分離性の評価試験で2相分離を視認確認したものを、3時間静置し、油液層および水層の清澄性を下記の評価基準により5段階で評価した。
[評価基準]
「◎」:油液層および水層ともに完全に透明である。
「〇」:油液層および水層ともに完全な透明ではないが清澄である。
「●」:油液層および水層ともに「〇」に準じて清澄である。
「△」:油液層および水層ともに少し濁っている。
「×」:油液層および水層ともに完全に濁っている。
【0025】
(4)油残り感と油臭さの評価試験方法
100mL容量のサンプル瓶にそれぞれの試験検体100gを入れ、1秒間に2回の速さで上下に20回振とうした後の均一な分散性を確認し、20mLを口に含み25秒間すすいでから吐き出した。
「口腔内の油残り感」評価は、パネラー8名が「油残り感が全くない(4点)」、「油残り感がほとんどない(3点)」、「やや油残り感がある(2点)」、「油残り感がある(1点)」、「油残り感が強い(0点)」の5段階で点数評価した。
「口に含んだ際に感じる油臭さ」評価は、パネラー8名が「油臭さが全くない(4点)」、「油臭さがほとんどない(3点)」、「やや油臭さがある(2点)」、「油臭さがある(1点)」、「油臭さが強い(0点)」の5段階で点数評価した。
それぞれの評価点数から平均値を求め、以下の判定基準で判定した結果を表3に示す。
[評価基準]
「◎」:平均点3.5点以上。
「〇」:平均点2.5点以上、3.5点未満。
「●」:平均点1.5点以上、2.5点未満。
「△」:平均点0.5点以上、1.5点未満。
「×」:平均点0.5点未満。
【0026】
上記(2)〜(4)の評価試験結果を、まとめ表3に示した。
【表3】
【0027】
表3の評価試験の結果より、本発明の2相液体口腔用組成物の具体例である実施例1〜9は、15〜30秒以内に油液層と水層の2相に分離する分離性と、3時間後の清澄性ともに優れた組成物であることが明らかとなった。さらに、実施例1〜9の2相液体口腔用組成物は、洗口液として使用した場合においても、油残り感や油臭さの評価が良好であり、使用感に優れることが明らかとなった。
さらに詳しく説明すると、実施例1〜3と実施例4〜6との比較により、流動パラフィンとミリスチン酸オクチルドデシルとの組み合わせは、流動パラフィンとトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルとの組み合わせに比べ、分離性と清澄性において、より優れた組み合わせであることが明らかとなった。また、実施例2と実施例7、8との比較により、1−オクタノール/水計算分配係数が特定範囲である流動パラフィンを採用することや、成分(E)としてアルコール化合物を配合しても、分離性や清澄性を損なうことなく、洗口液として高い性能が得られることも確認できた。さらに、実施例9の結果より、成分(D)四級アンモニウム塩を配合しても、分離性や清澄性を損なうことなく、洗口液に抗菌性を付与できることが明らかとなった。
一方、比較例1〜5は、油残り感や油臭さの評価の何れかまたは両方が、最低評価「×」であり、洗口液として利用することはできない組成であることが確認された。
これらの結果より、特定の油剤(A)および(B)を組み合わせ、(C)水を配合することによる本発明の2相液体口腔用組成物は、分離性と清澄性に優れた組成であり、洗口液として使用する場合には、油剤(A)および(B)による油残り感や油臭さもないため、好適な組成であることが明らかとなった。さらに、成分(D)の四級アンモニウム塩を配合しても分離性と清澄性を維持したまま、洗口液に抗菌性を付与できることが確認され、成分(E)としてアルコール化合物を配合しても、分離性と清澄性を損なうことなく使用感を高めることが明らかとなった。
本発明の2相液体口腔用組成物が奏するこれらの効果は、本発明者が多くの実験を行い初めて確認した格別顕著な効果である。
【0028】
<処方例>
以下に示す油液層と水層からなる、本発明の2相液体口腔用組成物を調製した。
油液層:モレスコホワイトP−200、ミリスチン酸オクチルドデシル、薬用成分、香料および着色剤
上記油液層における、モレスコホワイトP−200のミリスチン酸オクチルドデシルに対する配合比率は、重量比で約4.0である。
水層:エタノール、グリセリン、塩化セチルピリジニウム、粘度調整剤、pH調整剤、矯味剤、着色剤および精製水
この処方例における、油液層の水層に対する配合比率は、重量比で約0.18である。
【0029】
上記処方例による本発明の2相液体口腔用組成物を、上述の(2)分離性や(3)3時間後の清澄性の評価を行ったところ、30秒以内に2相分離が視認でき分離性に優れることが、また、3時間静置したものは油液層および水層ともに完全に透明であり、清澄性にも優れることが明らかとなった。
さらに、上述の(4)油残り感や油臭さの評価を行ったところ、処方例による本発明の2相液体口腔用組成物を洗口液とすると、歯の汚れ、特に油汚れに対する高い洗浄効果を期待できることや、油液層による油残り感や油臭さもないことから、好適な処方であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の2相液体口腔用組成物は、特定の油剤(A)および(B)を組み合わせ、(C)水と配合することにより、振とうにより均一なエマルション状態が一定時間保持され、その後速やかに2相に分離し清澄性が得られる。この速やかな分離性により、油液層に含有される油剤、特に、油剤(B)が水により分解する恐れが少なく、油剤(A)および(B)において油溶性薬用成分を高濃度配合した処方においても、製剤安定性に優れた処方を得ることが可能である。
特に、本発明の2相液体口腔用組成物を洗口液として使用すると、高濃度に配合した油剤(A)および(B)により、歯の汚れ、特に油汚れに対する高い洗浄効果が得られるほか、油剤による歯牙のコーティングや殺菌効果、口腔内の保湿効果を得ることができる。さらに、成分(D)の四級アンモニウム塩を配合することにより、四級アンモニウム塩が有する抗菌効果も併せ得ることができ、さらに、成分(E)のアルコール化合物を配合することにより、さっぱりとした使用感を高めることができるため好適である。