特許第6795407号(P6795407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795407開き扉の引手構造、及び、開き扉付き什器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795407
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】開き扉の引手構造、及び、開き扉付き什器
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/12 20060101AFI20201119BHJP
   A47B 95/02 20060101ALI20201119BHJP
   E05B 63/14 20060101ALI20201119BHJP
   E05B 1/06 20060101ALI20201119BHJP
   E05B 65/02 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   E05C1/12
   A47B95/02 504C
   A47B95/02 501C
   A47B95/02 503A
   A47B95/02 504G
   E05B63/14 E
   E05B1/06 103
   !E05B65/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-4185(P2017-4185)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112022(P2018-112022A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】ハーフォード アレキザンダー
(72)【発明者】
【氏名】大上 政樹
(72)【発明者】
【氏名】藤形 亮
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−174065(JP,A)
【文献】 特開2005−254027(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0119294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00 − 21/02
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き扉の扉本体と一体化され、若しくは、開き扉の扉本体に取り付け可能とされた基壁と、
指入れスペースを挟んで前記基壁と対向して配置された指掛け壁と、
前記指掛け壁と前記基壁を連結して、前記基壁と前記指掛け壁とともに凹形状部を形成する底壁と、
前記基壁に回動可能に支持され、回動によって前記開き扉のラッチ機構を解除可能な解除操作レバーと、を備え、
前記解除操作レバーは、
前記凹形状部内に配置されて当該凹形状部内での前記指掛け壁の引き操作方向と異なる方向に操作される操作部と、
回動中心が前記凹形状部の前記基壁側の外側位置に配置される回動軸と、を有していることを特徴とする開き扉の引手構造。
【請求項2】
前記解除操作レバーの前記回動中心は、前記指掛け壁の前記底壁と逆側の端部よりも前記底壁から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の開き扉の引手構造。
【請求項3】
前記操作部の指接触部には弾性部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の開き扉の引手構造。
【請求項4】
前記解除操作レバーは、前記ラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、前記凹形状部の開口の少なくも一部を閉塞するように設置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の開き扉の引手構造。
【請求項5】
前記解除操作レバーは、前記ラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、前記凹形状部の開口の少なくも一部を閉塞し弾性変形可能な指接触部を兼ねる弾性ブロックを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の開き扉の引手構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の開き扉の引手構造を備えていることを特徴とする開き扉付き什器。
【請求項7】
前記指掛け壁は、前記開き扉の自由端側の端辺に沿って延出し、
前記解除操作レバーの前記操作部は、前記指掛け壁の延出方向のほぼ全域に亘るように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の開き扉付き什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ機構を解除するための解除操作レバーを備えた開き扉の引手構造、及び、その構造を採用した開き扉付き什器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収納具等の開き扉付き什器として、開き扉を什器本体に閉じ状態で係留するラッチ機構を備えたものが知られている。ラッチ機構を解除操作するための解除操作レバーは、開き扉を開操作する際に使用されるため、多くの場合、開き扉の引手部の近傍に設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の開き扉の引手構造は、引手が開き扉の自由端側の端辺に回動可能に設けられ、引手自体が解除操作レバーを兼ねるようになっている。即ち、引手には、引手の引き方向の回動操作によってラッチ機構を解除する連動機構が設けられており、開き扉を開くために引手を手前に引いたときに、連動機構を介してラッチ機構が解除されるようになっている。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の開き扉の引手構造の場合、開き扉を開くための引手の引き操作方向とラッチ機構を解除するための引手の操作方向が同方向であるため、引手に加える力の向きや力加減等によって、ラッチ機構が完全に解除される前に引手や開き扉の本体部に無理な力が加わることが懸念される。
【0005】
これに対処し得る開き扉の引手構造として、ラッチ機構を解除するための解除操作レバーが引手の指入れスペースの内側に設けられたものが案出されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に記載の開き扉の引手構造は、開き扉の扉本体と一体の基壁と、指入れスペースを挟んでその基壁と対向して配置された指掛け壁と、基壁と指掛け壁を連結する底壁とによって凹形状部が形成され、その凹形状部の内側(指入れスペース)にラッチ機構を解除操作するための解除操作レバーが配置されている。解除操作レバーは、開き扉の自由端側の端辺に沿うように回動軸が基壁の凹形状部内に臨む位置に設置され、回動軸から延出する操作部が凹形状部内に突出している。
この引手構造の場合、引手を引き操作する前に凹形状部内に指を差し入れるときに、指先で解除操作片の操作部を解除方向に操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−092022号公報
【特許文献2】特開平09−032396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の開き扉の引手構造の場合、解除操作レバーの回動軸が基壁の凹形状部内に臨む位置に設置されているため、凹形状部の内側空間が奥行方向に深くなり、外部からの見栄えが低下するとともに、開き扉のデザイン上の制約が大きくなってしまう。
【0009】
そこで本発明は、見栄えの低下やデザイン上の制約を小さく抑えつつ、開き扉の開き操作時に、操作者がラッチ機構の解除操作と引手の引き操作とを明確に区別して実行することができる開き扉の引手構造、及び、開き扉付き什器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る開き扉の引手構造は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る開き扉の引手構造は、開き扉の扉本体と一体化され、若しくは、開き扉の扉本体に取り付け可能とされた基壁と、指入れスペースを挟んで前記基壁と対向して配置された指掛け壁と、前記指掛け壁と前記基壁を連結して、前記基壁と前記指掛け壁とともに凹形状部を形成する底壁と、前記基壁に回動可能に支持され、回動によって前記開き扉のラッチ機構を解除可能な解除操作レバーと、を備え、前記解除操作レバーは、前記凹形状部内に配置されて当該凹形状部内での前記指掛け壁の引き操作方向と異なる方向に操作される操作部と、回動中心が前記凹形状部の前記基壁側の外側位置に配置される回動軸と、を有していることを特徴とする。
【0011】
上記の構成により、開き扉を開くときには、凹形状部内の指入れスペースに操作者が指先を挿入し、指先によって解除操作レバーの操作部を押す。これにより、解除操作レバーは、基壁の外側位置に配置されている回動軸を中心として回動してラッチ機構を解除する。操作者は、その後に指掛け壁に凹形状部の内側から指を掛け、指掛け壁を引き操作する。これにより、開き扉は開かれる。操作者は、ラッチ機構の解除操作と引手の引き操作を明確に区別して実行することができる。
また、この開き扉の引手構造の場合、解除操作レバーの回動軸の回動中心が凹形状部の基壁の外側位置に配置されているため、回動軸の回動中心が凹形状部の内側に無い分、凹形状部の内側空間を奥行方向に狭めることができる。
【0012】
前記解除操作レバーの前記回動中心は、前記指掛け壁の前記底壁と逆側の端部よりも前記底壁から離間した位置に配置されるようにしても良い。
この場合、解除操作レバーの回動中心から操作部の延出端までの距離が充分に長く確保されるため、解除操作レバーの操作部を操作する際に、軽い力で操作部を操作することが可能になる。したがって、この構成を採用した場合には、解除操作レバーをよりスムーズに操作することができる。
【0013】
前記操作部の指接触部には弾性部材が取り付けられるようにしても良い。
この場合、操作者が解除操作レバーを指先で操作する際の感触を弾性部材によって良好にすることができるとともに、指先による解除操作レバーの操作を弾性部材によって安定させることができる。
【0014】
前記解除操作レバーは、前記ラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、前記凹形状部の開口の少なくも一部を閉塞するように設置されるようにしても良い。
この場合、解除操作レバーが回動操作されるまでは、凹形状部の少なくとも一部が解除操作レバーによって閉塞されているため、解除操作レバーを解除操作せずに指掛け壁が引き操作されにくくなる。また、凹形状部の開口の少なくとも一部が解除操作レバーによって閉塞されるため、凹形状部の内部が開口を通して見えにくくなる。したがって、この構成を採用した場合には、外部からの見栄えも良好に保つことができる。
【0015】
前記解除操作レバーは、前記ラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、前記凹形状部の開口の少なくも一部を閉塞し弾性変形可能な指接触部を兼ねる弾性ブロックを備えている構成としても良い。
この場合、解除操作レバーが回動操作されるまでは、凹形状部の少なくとも一部が弾性ブロックによって閉塞されているため、弾性ブロックを押圧して解除操作レバーを解除操作せずに指掛け壁が引き操作されにくくなる。また、凹形状部の開口の少なくとも一部が弾性ブロックによって閉塞されるため、凹形状部の内部が開口を通して見えにくくなる。したがって、この構成を採用した場合には、外部からの見栄えも良好に保つことができる。さらに、弾性ブロックは操作部の指掛け部を兼ねるため、操作者が解除操作レバーを指先で操作する際の感触を弾性ブロックによって良好にすることができるとともに、指先による解除操作レバーの操作を弾性ブロックによって安定させることができる。
また、操作者が弾性ブロックを指先で押圧したときに弾性ブロックが弾性変形するため、解除操作レバーの解除操作時の回動ストロークを大きく確保できない場合であっても、凹形状部に挿入した指先を指掛け壁に掛けて指掛け壁を確実に引き操作することができる。
【0016】
また、本発明に係る開き扉付き什器は、上記課題を解決するために、上記のいずれかに記載の開き扉の引手構造を備えるようにした。
【0017】
前記指掛け壁は、前記開き扉の自由端側の端辺に沿って延出し、前記解除操作レバーの前記操作部は、前記指掛け壁の延出方向のほぼ全域に亘るように形成されるようにしても良い。
この場合、開き扉の自由端側の端辺に指掛け壁が連続するように配置されているため、開き扉の外観が良好になり、しかも、解除操作レバーの操作部が指掛け壁の延出方向のほぼ全域に亘るように形成されていることから、指掛け壁の延出方向のいずれの部位の裏側に指を差し入れても解除操作レバーを確実に操作することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、解除操作レバーの操作部が、凹形状部内に配置されて当該凹形状部内での指掛け壁の引き操作方向と異なる方向に操作されるように構成されるとともに、解除操作レバーの回動中心が凹形状部の基壁側の外側位置に配置されているため、見栄えの低下やデザイン上の制約を小さく抑えつつ、開き扉の開き操作時に、操作者がラッチ機構の解除操作と引手の引き操作とを明確に区別して実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る開き扉付き什器の正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る開き扉付き什器の図1のII−II線に沿う断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る開き扉付き什器の図2のIII部に対応する断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る開き扉付き什器の開き扉の斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る開き扉付き什器のラッチ機構の解除操作部を示す斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態の変形例を示す断面図である。
図7】本発明の第1の実施形態の他の変形例を示す断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る開き扉付き什器の図3と同様の断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る開き扉付き什器の図3と同様の断面図である。
図10】本発明の第4の実施形態に係る開き扉付き什器の図3と同様の断面図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係る開き扉付き什器の図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1図5に示す第1の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る開き扉付き什器1を正面から見た図であり、図2は、開き扉付き什器1の図1のII−II線に沿う断面を示す図である。
開き扉付き什器1は、例えば、物品を内部に収納する収納棚やクローゼット等の什器であり、前方側に開口部2を有する什器本体3と、什器本体3の前方側の開口部2を開閉する開き扉4A,4Bと、を備えている。本実施形態の場合、開き扉付き什器1は、左右一対の開き扉4A,4Bを備え、左右の開き扉4A,4Bが図示しないヒンジを介して什器本体3の前部を観音開き式に左右に開閉できるようになっている。
【0022】
図1における向かって右側の開き扉4Aと左側の開き扉4Bは、概略同様の構造とされているが、右側の開き扉4Aは、扉本体5の自由端側の端辺に引手構造体6が設けられ、さらに、裏面側の上下の端部近傍に開き扉4Aを閉じ状態に係留するための同様のラッチ機構7が設けられている。ラッチ機構7は、右側の開き扉4Aを什器本体3に対して係留する。
【0023】
左側の開き扉4Bには、引手構造体6とラッチ機構7は設けられていない。引手構造体6は、右側の開き扉4Aの自由端側の端辺において、開き扉4Aの開き操作時に操作者が指を掛けられるようになっている。また、詳細な図示は省力されているが、右側の開き扉4Aには、閉じられた左側の開き扉4Bの自由端側の前面の一部に重なり、左側の開き扉4Bの開きを規制する開き規制部が設けられている。したがって、左側の開き扉4Bが閉じられた状態で、右側の開き扉4Aがラッチ機構7によって什器本体3に係留されると、左右の開き扉4B,4Aが閉じ状態に維持される。
【0024】
図3(A),(B)は、図2のIII部を拡大して示した断面図である。図3(A)は、引手構造体6が操作者によって操作されていないときの状態を示し、図3(B)は、引手構造体6が操作者によって操作されているときの状態を示している。図中符号Fは、操作者の指である。
引手構造体6は、開き扉4Aの扉本体5の自由端側の端縁に取り付けられる基壁8と、基壁8の前面側に指入れスペースSを挟み基壁8と対向して基壁8と略平行に配置された指掛け壁9と、開き扉4Aの自由端側の端部において指掛け壁9と基壁8を連結して、基壁8と指掛け壁9とともに凹形状部10を形成する底壁11と、を備えている。基壁8と指掛け壁9は、扉本体5の前面と略平行になるように形成されるとともに、扉本体5の自由端側の端部よりも外側(左側の開き扉4B側)に配置されている。凹形状部10は、開き扉4Aの自由端側の端辺に沿って開き扉4Aの上端部から下端部に亘って延出している。
【0025】
指掛け壁9は、その外側面が扉本体5の外側面と面一となるように形成されており、指掛け壁9と扉本体5の自由端側の端部との間には、指挿入開口12が形成されている。指挿入開口12は、扉本体5の自由端側の端辺に沿って開き扉4Aの上下方向のほぼ全域に亘って形成されている。指掛け壁9の裏面側の指入れスペースSには、指挿入開口12を通して操作者の指先を差し入れられるようになっている。
【0026】
図4は、右側の開き扉4Aを自由端側の裏面上方から見た図である。
図3図4に示すように、引手構造体6の基壁8は、指掛け壁9及び底壁11と一体の肉厚の金属板によって形成された基壁本体8Aと、基壁本体8Aと別体の金属板によって形成された補助プレート8Bと、を有している。なお、図4においては、補助プレート8Bの図示は省略されている。基壁本体8Aは、縦長の矩形枠状に形成され、周縁の枠部の内側に矩形状の開口8Aaが形成されている、基壁本体8Aは、開口8Aaの一部が扉本体5の自由端側の端辺よりも外側に位置されるように、扉本体5の裏面に締結固定されている。また、補助プレート8Bは、基壁本体8Aの開口8Aaの一部を覆うように、扉本体5の裏面に締結固定されている。扉本体5に取り付けられた基壁本体8Aと補助プレート8Bの間には、後述する解除操作レバー14の操作部16が挿入状態で配置される縦長のスリット状の操作窓13が形成されている。また、基壁本体8Aには、開口8Aaを開き扉4Aの裏面側から覆う裏面カバー17が取り付けられている。裏面カバー17は、一面が開口したボックス状に形成され、開口側が扉本体5側に向いて配置され、ボック状の覆い部分が扉本体5に対して裏面側に膨出している。
【0027】
図5は、上部側のラッチ機構7に対する解除操作部を開き扉4Aの自由端側の裏面上方から見た図である。以下では、上部側のラッチ機構7について説明するが、下部側のラッチ機構7は、構成部品の上下の向きが逆であるだけで基本的な構造は上部側のラッチ機構7と同様となっている。
ラッチ機構7は、図4図5に示すように、什器本体3側に形成された図示しないラッチ溝と係合可能なラッチ爪18と、ラッチ爪18を上下揺動可能に保持するラッチハウジング19と、ラッチ爪18を係合方向に付勢する付勢スプリング20と、ラッチ爪18に付勢スプリング20の力に抗した解除操作力を伝達する入力レバー21と、を有している。上部側のラッチ機構7は、ラッチ爪18が上方に向かって突出し、什器本体3の上辺部に下向き形成されたラッチ溝に対して係合可能とされている。上部側のラッチ機構7のラッチ爪18は、ラッチハウジング19に上下方向に揺動可能に保持されており、付勢スプリング20によって上方(ラッチ溝と係合させる方向)に付勢されている。付勢スプリングの下端は、例えば、裏面カバー17の上面等によって支持されている。
【0028】
ラッチハウジング19は、図4に示すように、引手構造体6の基壁本体8A(基壁8)に取り付けられている。右側の開き扉4Aの扉本体5の裏面には、ラッチハウジング19の一部と入力レバー21が収容配置される図示しない窪み部が形成されている。ラッチハウジング19の一部と入力レバー21は、扉本体5の窪み部と基壁本体8A(基壁8)の間に配置されている。
【0029】
解除操作レバー14は、引手構造体6の基壁本体8Aに回動可能に支持される回動軸15と、回動軸15から径方向外側に延出して操作者による操作力が入力される操作部16と、を有している。回動軸15は、回動中心oが開き扉4Aの上下方向に沿うように配置されている。回動軸15は、上下の各端部にあって基壁本体8Aに図示しない軸受部を介して回動可能に支持される一対のアーム軸22と、一対のアーム軸22に同軸に一体に結合された連結軸23と、から構成されている。各アーム軸22は、軸本体部22aと、軸本体部22aから径方向外側に延出した後に上方または下方に屈曲した略L字状の連動アーム部22bと、を有している。上方側のアーム軸22の連動アーム部22bは、図4図5に示すように、上方に屈曲しており、下方側のアーム軸22の連動アーム部22bは、下方に屈曲している。各連動アーム部22bの先端部は、上下の対応するラッチ機構7の入力レバー21に当接している。
【0030】
本実施形態の場合、連動アーム部22bは、回動軸15が上方から見て時計回りに回動操作されたときに、ラッチ爪18を付勢スプリング20の付勢力に抗してラッチ解除方向(下方)に回動させるようになっている。また、解除操作レバー14の回動軸15には、上下のラッチ機構7の付勢スプリング20から上方から見て反時計回りの付勢力が作用している。この付勢力は、解除操作レバー14を初期位置に戻す復帰力とされている。
【0031】
ここで、上下のアーム軸22と連結軸23とから成る解除操作レバー14の回動軸15は、図3に示すように、回動中心oが引手構造体6の凹形状部10の基壁8側の外側位置(基壁8よりも開き扉4Aの裏側位置)で、かつ、指掛け壁9の指挿入開口12側の端部よりも底壁11から離間した位置に配置されている。本実施形態の場合、回動軸15の全体が引手構造体6の凹形状部10の基壁8側の外側位置に配置されている。また、解除操作レバー14の操作部16は、回動軸15の連結軸23部分と一体に形成されている。操作部16は、連結軸23から径方向外側に板状に延出するとともに、開き扉4Aの上端部の近傍から下端部の近傍に亘るように上下方向にも延出している。したがって、操作部16は、指掛け壁9の上下の延出方向のほぼ全域に亘るように形成されている。
【0032】
解除操作レバー14の操作部16は、凹形状部10の基壁8側の外側位置に配置された回動軸15から基壁8の操作窓13を通して引手構造体6の凹形状部10内に突出している。より詳細には、操作部16は、回動軸15から操作窓13方向に延出する基部領域16aと、基部領域16aから指掛け壁9方向に向かって屈曲して操作窓13に挿通される連結部領域16bと、連結部領域16bから底壁11方向に若干屈曲した先端部領域16cと、を有し、連結部領域16bの一部と先端部領域16cとが、凹形状部10の内側の指入れスペースS内に配置されている。
【0033】
実施形態の場合、解除操作レバー14が操作者によって操作されない図3(A)に示す初期状態においては、前述したラッチ機構7の付勢スプリング20の力を受けて、操作部16の連結部領域16bが操作窓13の扉本体5寄りの端部に当接、若しくは、近接している。操作部16の先端部領域16cは、図3(A)に示すように、その延出端側が指掛け壁9の指挿入開口12側の端部から若干指入れスペースS方向には入り込んだ位置に位置されている。
【0034】
右側の開き扉4Aは、この状態で什器本体3に対して閉じられると、上下のラッチ機構7のラッチ爪18が什器本体3側のラッチ溝と係合し、それによって閉じ状態のまま係留される。
【0035】
この状態から操作者が右側の開き扉4Aを開く場合には、図3(B)に示すように、操作者が指挿入開口12を通して引手構造体6の指入れスペースS方向に指Fを差し入れる。これにより、操作者の指先が解除操作レバー14の操作部16の先端部領域16cに当接する。操作部16は、操作者の指先によって凹形状部10の底壁11方向に向かって押圧操作される。このとき、解除操作レバー14が回動軸15を中心として回動し、回動軸15の上下のアーム軸22部分の連動アーム部22bが上下の対応するラッチ機構7を解除操作する。即ち、連動アーム部22bが各ラッチ機構7の入力レバー21を回動させてラッチ爪18を係合解除方向に後退させる。この結果、上下のラッチ機構7による係留が解除される。
【0036】
この後に、操作者が引手構造体6の凹形状部10に挿入した指先を凹形状部10の内側から指掛け壁9に掛け、そのまま指掛け壁9を手前に引くことにより、右側の開き扉4Aは開かれる。
【0037】
なお、解除操作レバー14の操作部16は、硬質樹脂や金属材料によって形成されている。図3(A),(B)に示した例では、操作部16の先端部領域16cの外側面に、そのまま操作者の指先が接触するようになっているが、図6に示すように、操作部16の先端部領域16cの外側面(指接触部)にゴム材料等の弾性部材24を付設するようにしても良い。これにより、操作者が解除操作レバー14を解除操作する際の指先の感触が良好になるとともに、指先が滑りにくくなって解除操作レバー14の解除操作が安定することになる。
【0038】
また、操作部16の先端部領域16cの外側面(指接触部)に弾性部材24を付設する場合には、図7に示すように、操作部16の先端部領域16cに予め凹部25を形成しておき、その凹部25内に弾性部材24を付設するようにしても良い。この場合、弾性部材24が凹部25によって安定して保持され、操作に伴う弾性部材24の位置ずれや脱落を未然に防止することが可能になる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る開き扉4Aの引手構造においては、解除操作レバー14の操作部16が、凹形状部10内に配置されて指掛け壁9に対する引き操作方向と略直交する方向(底壁11方向)に押し込み操作されるように構成されているとともに、解除操作レバー14の回動軸15の回動中心oが、凹形状部10の基壁8側の外側位置(基壁8よりも開き扉4Aの裏側位置)に配置されている。このため、操作者がラッチ機構7を解除して指掛け壁9を引き操作する際に、ラッチ機構7を確実に解除操作した後に指掛け壁9を引くことができ、しかも、解除操作レバー14の回動軸15が凹形状部10の内側空間を占有することがないため、凹形状部10の奥行方向の空間を狭めることができる。したがって、本実施形態に係る引手構造を採用した場合には、見栄えの低下やデザイン上の制約を小さく抑えつつ、開き扉4Aの開き操作時に、操作者がラッチ機構7の解除操作と指掛け壁9の引き操作とを明確に区別して実行することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る開き扉4Aの引手構造は、解除操作レバー14の回動軸15の回動中心oが、指掛け壁9の底壁11と逆側の端部よりも底壁11から離間した位置に配置されているため、解除操作レバー14の回動中心oから操作部16の延出端までの距離を充分に長く確保することができる。したがって、この構造を採用した場合には、解除操作レバー14によってラッチ機構7を解除操作する際に、軽い力で操作部16をスムーズに操作することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る引手構造を採用した開き扉付き什器1は、指掛け壁9が開き扉4Aの自由端側の端辺に沿って上下に延出し、解除操作レバー14の操作部16が、指掛け壁9の上下の延出方向のほぼ全域に亘るように形成されているため、開き扉4Aの外観が良好になるとともに、操作者が指掛け壁9の延出方向のいずれの部位の裏側に指Fを差し入れても、解除操作レバー14を確実に解除操作することができる。
【0042】
つづいて、図8に示す第2の実施形態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、第1の実施形態と共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
図8(A)は、引手構造体106が操作者によって操作されていないときの図3(A)と同様の断面を示す図であり、図8(B)は、引手構造体106が操作者によって操作されているときの図3(B)と同様の断面を示す図である。
本実施形態に係る引手構造体106は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、ラッチ機構の解除操作がされない初期位置にあるときに解除操作レバー14の操作部16Aの凹形状部10内での姿勢と位置が異なっている。即ち、本実施形態の解除操作レバー14の操作部16Aは、回動軸15に接続される基部領域16aから操作窓13方向に一段屈曲した後に先端部領域16cがそのまま直線状に延出し、解除操作レバー14が初期位置にあるときに先端部領域16cが凹形状部10(指挿入スペースS)の開口を略直交方向から閉塞するようになっている。
【0043】
本実施形態に係る開き扉4Aの引手構造においては、第1の実施形態と同様の基本的な効果を得ることができるうえ、解除操作レバー14の操作部16Aが、初期状態において、凹形状部10の開口を略直交方向から閉塞するように設置されているため、操作部16Aが操作者の指先で押し込み操作されずに、指掛け壁9が操作者によって引き操作されることがなくなる。したがって、この構造を採用した場合には、ラッチ機構が解除操作されずに指掛け壁9が引き操作されるのをより確実に防止することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る開き扉4Aの引手構造の場合、凹形状部10の開口が解除操作レバー14の操作部16によって閉塞されるため、凹形状部10の内部が開口を通して見えなくなる。したがって、この構成を採用した場合には、外部からの見栄えもより良好に保つことができる。
なお、解除操作レバー14の操作部16Aは、初期状態において、凹形状部10の開口のほぼ全域を必ずしも閉塞する必要がなく、開口の少なくとも一部を閉塞できれば、上述に近い効果を得ることができる。
【0045】
図9は、第3の実施形態に係る引手構造体206を示す図である。図9(A)は、引手構造体206が操作者によって操作されていないときの図3(A)と同様の断面を示す図であり、図9(B)は、引手構造体206が操作者によって操作されているときの図3(B)と同様の断面を示す図である。
本実施形態に係る引手構造体206は、第1の実施形態と同様の基本形状の解除操作レバー14が採用されている。解除操作レバー14の操作部16の先端部領域16cの外側面のほぼ全域に、凹形状部10の開口の外側に向かって膨出する弾性ブロック26が取り付けられている。弾性ブロック26は、ラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、図9(A)に示すように、凹形状部10の開口のほぼ全域を閉塞し、かつ、解除操作レバー14の操作部16の弾性変型可能な指接触部を兼ねるようになっている。
【0046】
本実施形態に係る引手構造においては、第2の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができるうえ、弾性ブロック26が操作部16の指掛け部を兼ねることから、操作者が解除操作レバー14を指先で操作する際の感触を弾性ブロック26によって良好にすることができるとともに、指先による解除操作レバー14の操作を弾性ブロック26によって安定させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る引手構造においては、操作者がラッチ解除操作時に弾性ブロック26を指先で押圧したときに弾性ブロック26が凹形状部10の内側方向に弾性変形するため、解除操作レバー14の解除操作ストロークを大きく確保することが難しい場合であっても、図9(B)に示すように、凹形状部10内に挿入された指先を指掛け壁9に掛けて指掛け壁9を確実に引き操作することができる。
【0048】
図10は、第4の実施形態に係る引手構造体306を示す図である。図10(A)は、引手構造体306が操作者によって操作されていないときの図3(A)と同様の断面を示す図であり、図10(B)は、引手構造体306が操作者によって操作されているときの図3(B)と同様の断面を示す図である。
本実施形態に係る引手構造体306は、第3の実施形態の引手構造体とほぼ同様の基本構成とされているが、解除操作レバー14の操作部16に取り付けられる弾性ブロック326の形状と、弾性ブロック326が取り付けられる部位が第3の実施形態のものと異なっている。
【0049】
即ち、弾性ブロック326は、解除操作レバー14の操作部16に取り付けられる基部壁326aと、基部壁326aから略直角に屈曲して延出する遮蔽壁326bと、を備えた断面略L字状の板形状に形成されている。また、解除操作レバー14の操作部16のうちの連結部領域16bと先端部領域16cの間には、凹状に窪むブロック係止部27が形成されており、そのブロック係止部27に弾性ブロック326の基部壁326aが嵌合固定されている。弾性ブロック326は、ラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、図10(A)に示すように、遮蔽壁326bが凹形状部10の開口のほぼ全域を略直角方向から閉塞している。また、遮蔽壁326bは、操作部16の弾性変形可能な指接触部を兼ね、図10(B)に示すように、操作者の指先によって押圧されたときに凹形状部10の内側に柔軟に変形するようになっている。
【0050】
本実施形態に係る引手構造は、第3の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができるうえ、弾性ブロック326の遮蔽壁326bが凹形状部10の開口を略直角方向からほぼ完全に閉塞することができるため、外部からの見栄えがより良好になる。また、弾性ブロック326の遮蔽壁326bが操作者の指先によって押圧されたときに遮蔽壁326bが柔軟に変形するため、解除操作レバー14の解除操作ストロークを大きく確保できない場合においても、図10(B)に示すように、凹形状部10内に挿入された指先を容易に、かつ確実に指掛け壁9に掛けることができる。
【0051】
図11は、第5の実施形態に係る引手構造体406を示す図である。図11(A)は、引手構造体406が操作者によって操作されていないときの図3(A)と同様の断面を示す図であり、図11(B)は、引手構造体406が操作者によって操作されているときの図3(B)と同様の断面を示す図である。
本実施形態に係る引手構造体406は、第1の実施形態の引手構造体とほぼ同様の基本構成とされているが、解除操作レバー14の操作部16の先端部領域16cAが短く形成され、かつ、図11(A)に示すラッチ機構の解除操作がされない初期状態において、解除操作レバー14の操作部16の先端部領域16cAが底壁11方向に大きく傾斜するようになっている。また、操作部16の先端部領域16cAの外側面には、弾性部材24が取り付けられている。本実施形態に係る引手構造体406の場合、図11(B)に示すように、凹形状部10の内側(指挿入スペースS)に操作者の指先が挿入されたときに、斜め下方に傾斜している弾性部材24に操作者の指先の爪Nが下方から当接するようになっている。
【0052】
本実施形態に係る引手構造においては、第1の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができるうえ、比較的に軽い操作力でもって解除操作レバー14を解除操作できるという利点を有する。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記実施形態の開き扉付き什器は、観音開き式の左右一対の開き扉を採用しているが、上記実施形態の右側の開き扉と同様の引手構造体を持つ開き扉であれば、一枚のみの開き扉を有する開き扉付き什器であっても良い。
また、上記の実施形態においては、引手構造体の基壁が扉本体と別体に構成されていたが、引手構造体の基壁は扉本体と一体部材として構成しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 開き扉付き什器
4A 開き扉
5 扉本体
7 ラッチ機構
8 基壁
9 指掛け壁
10 凹形状部
11 底壁
14 解除操作レバー
15 回動軸
16,16A 操作部
24 弾性部材
26,326 弾性ブロック
o 回動中心
S 指入れスペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11