特許第6795413号(P6795413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795413
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】自動電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/14 20060101AFI20201119BHJP
   H01F 29/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G05F1/14 Z
   H01F29/04 502L
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-14105(P2017-14105)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-124625(P2018-124625A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和憲
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠二
(72)【発明者】
【氏名】古田 将空
(72)【発明者】
【氏名】久富 和郎
(72)【発明者】
【氏名】白土 紀明
(72)【発明者】
【氏名】平野 南洋
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−42279(JP,A)
【文献】 特開2009−5528(JP,A)
【文献】 特開平7−123582(JP,A)
【文献】 実開昭55−132676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/00− 7/00
H02M 1/00− 7/98
H01F 29/00−29/14
H02H 7/00− 7/30
H02J 3/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次巻線が線路に直列に接続され一次側に調整電圧が与えられる直列変圧器と、複数のタップを備えたタップ巻線を有し、前記線路の電圧を入力として前記直列変圧器の一次側に与える調整電圧を前記複数のタップの中から選択された通電タップを通して出力する調整変圧器と、前記通電タップを切り換えるために前記調整変圧器のタップ巻線と前記直列変圧器の一次側との間に設けられたタップ切換器とを備え、前記タップ切換器は、前記直列変圧器の一次端子に接続された調整電圧出力端子と、前記タップ巻線と前記調整電圧出力端子との間に設けられた複数のタップ切換用スイッチと、前記調整電圧出力端子間に限流抵抗器を通して接続された橋絡用スイッチとを有し、前記タップ切換用スイッチ及び橋絡用スイッチはサイリスタスイッチからなっている自動電圧調整装置であって、
前記タップ切換器の調整電圧出力端子間を橋絡するように設けられた保護用スイッチを有して、前記調整電圧出力端子間に印加されている電圧が設定された判定電圧以上になったときに前記保護用スイッチをオン状態にすることにより、前記直列変圧器の一次端子間が開放されたときに前記直列変圧器の一次側に発生する異常過電圧から前記タップ切換器を保護する保護動作を行なう保護装置を備え、
前記判定電圧は、前記直列変圧器の鉄心の磁束密度が飽和したときに前記直列変圧器から調整電圧出力端子間に印加される電圧以上で、かつ、タップ切換器の橋絡用スイッチを構成しているサイリスタが降伏するときの調整電圧出力端子間の電圧未満の電圧に設定されていることを特徴とする自動電圧調整装置。
【請求項2】
前記保護装置は、前記調整電圧出力端子間に印加されている電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部が検出した電圧が前記判定電圧以上であるときに保護指令を発生する保護指令発生部と、前記保護指令が発生したときに前記保護用スイッチをオン状態にする制御を行う保護用スイッチ制御部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の自動電圧調整装置。
【請求項3】
前記保護用スイッチ制御部は、前記保護指令が発生したときに前記タップ切換器の橋絡用スイッチをオン状態にする制御をも行うように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動電圧調整装置。
【請求項4】
両端に印加されている電圧が設定された制限電圧を超えたときに両端電圧を制限電圧以下に保つ電圧制限動作をし、両端に印加されている電圧が前記制限電圧以下に低下したときに前記電圧制限動作を解除するデバイスである低圧用サージ防護デバイスが前記調整電圧出力端子間に並列に接続され、
前記サージ防護デバイスの制限電圧は、前記調整電圧出力端子間の電圧が示す変動範囲のうち、前記橋絡用スイッチ及び保護用スイッチの正常な閉路動作が保証される範囲の上限値である閉路動作上限電圧以下に設定されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の自動電圧調整装置。
【請求項5】
前記判定電圧は、前記タップ切換器の橋絡用スイッチを構成しているサイリスタが降伏するときの前記調整電圧出力端子間の電圧未満で、かつ前記制限電圧以下に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の自動電圧調整装置。
【請求項6】
前記直列変圧器は一次巻線及び二次巻線を3相分有し、
前記調整変圧器は、3相Y結線若しくはΔ結線されるか又は3相V結線されたタップ巻線を有し、
前記保護装置は、前記直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときにも前記保護用スイッチをオン状態にして保護動作を行うように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一つに記載の自動電圧調整装置。
【請求項7】
タップ切換時に前記直列変圧器の一次電圧に過渡的に現れる過電圧を検出したとき及び(又は)タップ切換時に前記直列変圧器の3相の一次電圧に過渡的に生じる不平衡を検出したときに保護動作が行われるのを防止するために、前記タップ切換器がタップ切換動作を完了した直後の一定時間の間だけ前記保護動作をロックして該保護動作が行なわれるのを禁止する保護動作ロック手段が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の自動電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に設置される間接切換式の自動電圧調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
間接切換式の自動電圧調整装置は、二次巻線が線路に直列に接続され、一次端子間に調整電圧が与えられる直列変圧器と、複数のタップを備えたタップ巻線を有し、線路の電圧を入力として直列変圧器の一次端子間に与える調整電圧を複数のタップの中から選択された通電タップを通して出力する調整変圧器と、調整変圧器のタップ巻線と直列変圧器の一次端子との間に設けられて、タップ巻線のタップの中から通電タップとして選択するタップを切り換えるタップ切換器と、線路の電圧を設定された範囲に保つようにタップ切換器を制御する制御装置とを備えている。
【0003】
間接切換式の自動電圧調整装置として、タップ切換器に設ける切換用スイッチとしてサイリスタスイッチを用いたサイリスタ式の自動電圧調整装置が知られている。図12は、一例として、特許文献1に示されたサイリスタ式自動電圧調整装置の一相分の構成を示したものである。同図において、1は一次巻線1p及び二次巻線1sを3相分有する直列変圧器、2は一次巻線2p及びタップ巻線としての二次巻線2sを3相分有する調整変圧器、3は直列変圧器1の各相の一次巻線と調整変圧器2の各相の二次巻線との間に設けられたタップ切換器である。
【0004】
直列変圧器1の各相の二次巻線1sの一端及び他端はそれぞれ一次側(電源側)線路接続端子4及び二次側(負荷側)線路接続端子5に接続され、一次側線路接続端子4及び二次側線路接続端子5がそれぞれ対応する相の一次側線路6及び二次側線路7に接続されることにより直列変圧器1の各相の二次巻線1sが対応する相の線路に直列に接続される。
この例では直列変圧器1の3相の一次巻線1pがスター結線されている。
【0005】
調整変圧器2の一次巻線2pの一端は二次側線路接続端子5に接続され、他端は中性点Nに接続されている。この例では、調整変圧器の3相の一次巻線2pがスター結線された状態で線路に並列に接続されている。調整変圧器の各相の二次巻線2sは、その一端及び他端にそれぞれ一端側最端タップ2t1及び他端側最端タップ2t4を有し、最端タップ2t1と2t4との間に中間タップ2t2及び2t3を有している。
【0006】
タップ切換器3は、直列変圧器1に調整電圧を与えるために直列変圧器の一次端子に接続される調整電圧出力端子8及び9と、一端が調整電圧出力端子8に共通接続されるとともに他端がそれぞれタップ2t1,2t2及び2t3に接続されたタップ選択用スイッチA,B及びCと、一端が調整電圧出力端子9に共通接続されると共に他端がそれぞれ最端タップ2t4及び2t1に接続された第1及び第2の極性切換用スイッチT1及びT2と、調整電圧出力端子8,9間に限流抵抗器Rを通して並列に接続された橋絡用スイッチSとを備えている。
【0007】
図示の例では、一方の調整電圧出力端子8が直列変圧器の非中性点側の一次端子10に接続され、他方の調整電圧出力端子9が直列変圧器の中性点側の一次端子11に接続されている。図示の例では、3相のタップ切換器3の調整電圧出力端子9が直列変圧器1の一次側の中性点とともに接地されている。この例では、タップ選択用スイッチA〜Cと第1及び第2の極性切換用スイッチT1及びT2とがタップ切換用スイッチを構成している。
タップ切換器3の各スイッチは、逆並列接続された一対のサイリスタにより構成されたサイリスタスイッチからなっていて、図示しない制御装置によりオンオフ制御される。
【0008】
図12に示されたタップ切換器3は、橋絡用スイッチSを一時的に閉路状態にすることにより直列変圧器の一次端子間が開放状態になるのを防ぎつつ、閉路状態にするタップ選択用スイッチと閉路状態にする極性切換用スイッチの組み合わせを切り換えることにより通電タップとするタップを切り換えて、調整変圧器2から直列変圧器1の一次端子間に印加する調整電圧Vaを切り換える。
【0009】
図12に示されたような間接切換式の自動電圧調整装置においては、タップ切換器3の各スイッチと調整変圧器2のタップとの間を接続している接続部に接触不良が生じた場合や、各スイッチを構成するサイリスタに故障又は誤動作が生じた場合等に、直列変圧器1の一次端子間が開放状態にされる事故(以下、直列変圧器開放事故、または単に開放事故という。)が発生することがある。
【0010】
例えば図12において、タップ選択用スイッチAと極性切換スイッチT1とをオン状態にして、調整変圧器2の二次巻線の両端の電圧を調整電圧としてタップ切換器の調整電圧出力端子から直列変圧器に入力している状態で、図に×印で示した箇所で導通不良が生じたとすると、直列変圧器1の一次端子間が開放状態にされて、直列変圧器の二次側(系統側)を流れる負荷電流がすべて励磁電流となるため,直列変圧器の一次巻線に異常過電圧が発生する。この異常過電圧が調整電圧出力端子8,9を通してタップ切換器3内のオフ状態にあるサイリスタスイッチの両端に印加されると、該スイッチが破損するおそれがある。
【0011】
そこで、この種の自動電圧調整装置では、直列変圧器開放事故が発生したときに直列変圧器の一次側からタップ切換器3側の回路に印加される電圧を抑制する保護装置を設けている。この保護装置は、タップ切換器3の調整電圧出力端子8,9間に並列に接続された保護用スイッチ(図12には図示せず。)を備えていて、タップ切換器3の調整電圧出力端子8,9間の電圧(直列変圧器の一次端子間の電圧)が設定された判定電圧以上であるときに保護用スイッチをオン状態にすることにより保護動作を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−335121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、間接切換式の自動電圧調整装置では、タップ切換器3の調整電圧出力端子8,9間の電圧が設定された判定電圧以上になったときに直列変圧器の一次端子間が開放状態にされたと判定して保護用スイッチをオン状態にすることにより、タップ切換器側の回路を過電圧から保護する保護動作を行わせるようにしている。このような保護動作を行わせるためには、直列変圧器の一次端子間が開放状態になったことを確実に検出することが重要であり、そのためには、タップ切換器の調整電圧出力端子8,9間の電圧と比較する判定電圧を適確に設定しておくことが必要である。また、適確な保護動作を行なう保護装置を構成するためには、判定電圧を定めるための指針を明らかにしておくことが必要である。
【0014】
しかしながら、直列変圧器の一次端子間が開放状態にされたことを判定するために最適な判定電圧の決定方法を、理論的な根拠に基づいて明確に示した文献等の資料は存在せず、間接切換式自動電圧調整装置の保護装置についての設計上の指針は存在していないのが現状である。そのため、従来は、判定電圧がとるべき値の範囲が明確でない状態で、経験に頼って実験を何度も繰り返すことにより判定電圧を決定しており、保護装置の設計に多くの手間がかかるという問題があった。
【0015】
間接切換式の自動電圧調整装置において起こる直列変圧器の一次側開放事故としては、直列変圧器の3相の一次端子間がすべて開放された状態になる事故の他、一部の相の一次端子間のみが開放状態になる事故もある。タップ切換器側の回路を過電圧から保護するためには、直列変圧器の3相の一次端子間がすべて開放された状態になる事故だけでなく、一部の相の一次端子間のみが開放状態になる事故をも確実に検出して、保護動作を行い得るようにしておく必要がある。
【0016】
本発明の目的は、直列変圧器の一次端子間が開放されたことを確実に検出して、直列変圧器の一次端子間が開放された際に発生する異常過電圧からタップ切換器側の回路を確実に保護することができるようにした自動電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願においては、上記の目的を達成するために少なくとも以下に示す第1ないし第10の発明が開示される。
<第1の発明>
本発明は、二次巻線が線路に直列に接続され一次側に調整電圧が与えられる直列変圧器と、複数のタップを備えたタップ巻線を有し、線路の電圧を入力として直列変圧器の一次側に与える調整電圧を複数のタップの中から選択された通電タップを通して出力する調整変圧器と、通電タップを切り換えるために調整変圧器のタップ巻線と直列変圧器の一次側との間に設けられたタップ切換器とを備えた自動電圧調整装置を対象とする。上記タップ切換器は、直列変圧器の一次端子に接続された調整電圧出力端子と、タップ巻線と調整電圧出力端子との間に設けられた複数のタップ切換用スイッチと、調整電圧出力端子間に限流抵抗器を通して接続された橋絡用スイッチとを有していて、タップ切換用スイッチ及び橋絡用スイッチがサイリスタスイッチにより構成される。
【0018】
本発明が対象とする自動電圧調整装置では、タップ切換器の調整電圧出力端子間を橋絡するように設けられた保護用スイッチを有して、調整電圧出力端子間に印加されている電圧が設定された判定電圧以上になったときに保護用スイッチをオン状態にすることにより、直列変圧器の一次端子間が開放されたときに直列変圧器の一次側に発生する異常過電圧からタップ切換器を保護する保護動作を行なう保護装置が設けられる。本発明においては、上記判定電圧を、直列変圧器の鉄心の磁束密度が飽和したときに直列変圧器から調整電圧出力端子間に印加される電圧以上で、かつ、タップ切換器の橋絡用スイッチを構成しているサイリスタが降伏するときの調整電圧出力端子間の電圧未満の電圧に設定する。
【0019】
上記のように、直列変圧器の一次端子間が開放状態にされたか否かを判定するためにタップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧と比較する判定電圧を、直列変圧器の鉄心の磁束密度が飽和したときに直列変圧器の一次側から調整電圧出力端子間に印加される電圧以上の電圧に設定しておくと、通常の使用状態で発生し得る過電圧により直列変圧器の一次端子間が開放されたとの誤判定がされるのを防いで、直列変圧器の一次端子間が開放状態にされたが否かを確実に判定することができる。
【0020】
また、タップ切換器の調整電圧出力端子間には橋絡用スイッチが並列に接続されているため、直列変圧器の一次端子間が開放されて異常過電圧が発生したときに橋絡用スイッチを構成するサイリスタが降伏してオン状態になる現象(降伏現象)が生じると、異常過電圧が抑制されてしまう。このように橋絡用スイッチを構成するサイリスタが降伏する現象が生じて異常過電圧が抑制された状態でも、直列変圧器の一次端子間の開放を確実に検出し得るようにしておく必要がある。従って、直列変圧器の一次端子間が開放されているか否かの判定を確実に行なうためには、上記のように、判定電圧をタップ切換器の橋絡用スイッチを構成しているサイリスタが降伏する現象が発生するときの調整電圧出力端子間の電圧未満の電圧に設定しておく必要がある。
【0021】
<第2の発明>
第2の発明は、第1の発明に適用される。本発明においては、保護装置が、調整電圧出力端子間に印加される電圧を検出する電圧検出部と、電圧検出部が検出した電圧が判定電圧以上であるときに保護指令を発生する保護指令発生部と、保護指令が発生したときに保護用スイッチをオン状態にする制御を行う保護用スイッチ制御部とを備えている。
【0022】
<第3の発明>
本願に開示された第3の発明は、第1の発明または第2の発明に適用される。本発明においては、保護用スイッチ制御部を、保護指令が発生したときにタップ切換器の橋絡用スイッチをオン状態にする制御をも行うように構成する。
【0023】
上記のように構成しておくと、直列変圧器の一次端子間の開放が検出されたときに先ず動作が速いサイリスタスイッチからなる橋絡用スイッチがオン状態になって直列変圧器の一次側の電圧を抑制し、続いて保護用スイッチがオン状態になって直列変圧器の一次巻線を短絡するので、タップ切換器側の回路が異常過電圧により破壊するのを確実に防ぐことができる。
【0024】
<第4の発明>
本願に開示された第4の発明は、第1ないし第3の発明の何れかに適用されるものである。本発明においては、両端に印加されている電圧が設定された制限電圧を超えたときに両端電圧を制限電圧以下に保つ電圧制限動作をし、両端に印加されている電圧が制限電圧以下に低下したときに電圧制限動作を解除するデバイスである低圧用サージ防護デバイスが、調整電圧出力端子間に並列に接続される。この場合、低圧用サージ防護デバイスの制限電圧は、調整電圧出力端子間の電圧が示す変動範囲のうち、保護用スイッチ及び橋絡用スイッチの正常な閉路動作が保証される範囲の上限値である閉路動作上限電圧以下に設定される。
【0025】
このように構成しておくと、直列変圧器の一次端子間が開放されたときに、タップ切換器側の回路に印加される電圧を、橋絡用スイッチ及び保護用スイッチの正常な閉路動作が保証される電圧の上限値以下に制限することができるので、橋絡用スイッチ及び保護用スイッチの閉路動作を確実に行なわせて、タップ切換器側の回路の保護を確実に図ることができる。
【0026】
<第5の発明>
第5の発明は、第4の発明に適用される。本発明においては、判定電圧を、橋絡用スイッチを構成しているサイリスタが降伏する現象が発生するときの調整電圧出力端子間の電圧未満で、かつ上記制限電圧以下に設定する。
【0027】
タップ切換器の調整電圧出力端子間にサージ防護デバイスを接続した場合には、直列変圧器の一次端子間が開放されたときに発生する過電圧が、サージ防護デバイスの制限電圧以下に制限される。上記のように判定電圧を設定しておけば、直列変圧器の一次端子間が開放されたときに発生する過電圧がサージ防護デバイスの制限電圧以下に制限される場合でも、保護動作を確実に行なわせることができる。
【0028】
<第6の発明>
第6の発明は、第1の発明ないし第5の発明の何れかに適用されるもので、本発明においては、直列変圧器が一次巻線及び二次巻線を3相分有し、調整変圧器は、3相Y結線若しくはΔ結線されるか、又は3相V結線されたタップ巻線を有している。本発明においては、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときにも保護用スイッチをオン状態にして保護動作を行うように保護装置が構成される。
【0029】
直列変圧器の3相の一次端子間の内、1相の一次端子間のみ、または2相の一次端子間のみが開放された場合には、直列変圧器の一次端子間が開放されたときに直列変圧器の一次側に誘起する過電圧が比較的低いため、タップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧を判定電圧と比較する方法によった場合、直列変圧器の一次側の開放を確実に検出できないおそれがある。第6の発明は、このような問題を解消することを目的としている。
【0030】
直列変圧器の3相の一次端子間の内、1相の一次端子間のみ、または2相の一次端子間のみが開放された場合には、直列変圧器の3相の一次電圧が不平衡になるため、上記のように、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときに保護動作を行なわせるようにしておくと、直列変圧器の1相の一次端子間のみが開放された場合、及び2相の一次端子間のみが開放された場合にも保護動作を確実に行なわせることができる。また実験の結果から、直列変圧器の3相の一次端子間がすべて開放された場合にも、3相の一次電圧が不平衡になることが確認されている。従って、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときに保護動作を行なわせるようにしておくと、直列変圧器の全相の一次端子間が開放された場合にも保護動作を行なわせることができる。
【0031】
<第7の発明>
第7の発明は、第6の発明に適用される。本発明においては、タップ切換時に直列変圧器の一次電圧に過渡的に現れる過電圧を検出したとき及び(又は)タップ切換時に直列変圧器の3相の一次電圧に過渡的に生じる不平衡を検出したときに保護動作が行われるのを防止するために、タップ切換器がタップ切換動作を完了した直後の一定時間の間だけ保護動作をロックして該保護動作が行なわれるのを禁止する保護動作ロック手段が設けられる。
【0032】
間接切換式の自動電圧調整装置では、タップ切換時に一旦タップを素通しタップに切換えた後に目的のタップに切替えるようにしている。タップを素通しタップから目的のタップに切替える際には、直列変圧器が無電圧状態から励磁されることになるため、直列変圧器に励磁突入電流が流れて直列変圧器の一次側に電圧変動が生じ、直列変圧器の3相の1次電圧が不平衡になることがある。この電圧不平衡により、直列変圧器の一次端子間が開放されたとの誤判定が行なわれると、保護動作が行なわれるため、タップ切換え動作を行なうことができなくなる。上記第7の発明のように構成しておくと、タップ切換時に流れる直列変圧器の励磁突入電流により生じる電圧変動に起因して発生する直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡により、直列変圧器の一次端子間が開放されたとの誤検出が行われて、不要な保護動作が行われるのを防ぐことができる。
【0033】
<第8の発明>
第8の発明は、一次巻線及び二次巻線を3相分有して二次巻線が線路に直列に接続され、一次側に調整電圧が与えられる直列変圧器と、3相Y結線若しくはΔ結線されるか又は3相V結線されたタップ巻線を有し、線路の電圧を入力として直列変圧器の一次側に与える調整電圧をタップ巻線に設けられた複数のタップの中から選択された通電タップを通して出力する調整変圧器と、通電タップを切り換えるために調整変圧器のタップ巻線と直列変圧器の一次側との間に設けられたタップ切換器とを備えた自動電圧調整装置を対象とする。上記タップ切換器は、直列変圧器の一次端子に接続された調整電圧出力端子と、タップ巻線と調整電圧出力端子との間に設けられた複数のタップ切換用スイッチと、調整電圧出力端子間に限流抵抗器を通して接続された橋絡用スイッチとを有していて、タップ切換用スイッチ及び橋絡用スイッチがサイリスタスイッチにより構成されている。
【0034】
本発明においては、タップ切換器の調整電圧出力端子間を橋絡するように設けられた保護用スイッチを有して、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときに保護用スイッチをオン状態にすることにより、直列変圧器の一次端子間が開放されたときに直列変圧器の一次側に発生する異常過電圧からタップ切換器を保護する保護動作を行なう保護装置が設けられる。
【0035】
<第9の発明>
第9の発明は、第8の発明に適用されるもので、本発明においては、タップ切換時に直列変圧器の一次電圧に過渡的に現れる過電圧を検出したとき及び(又は)タップ切換時に直列変圧器の3相の一次電圧に過渡的に生じる不平衡を検出したときに保護動作が行われるのを防止するために、タップ切換器がタップ切換動作を完了した直後の一定時間の間だけ保護動作をロックして該保護動作が行なわれるのを禁止する保護動作ロック手段が設けられる。
【0036】
<第10の発明>
第10の発明は、第1ないし第9の発明の何れかに適用されるもので、本発明においては、サイリスタスイッチが、サイリスタをスイッチング素子として用いた双方向性を有するソリッドステートコンタクタにより構成されている。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、直列変圧器の一次端子間が開放されたか否かを判定するためにタップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧と比較する判定電圧を、直列変圧器の鉄心の磁束密度が飽和したときに調整電圧出力端子間に現れる電圧以上で、かつ、タップ切換器の橋絡用スイッチを構成しているサイリスタが降伏するときの調整電圧出力端子間の電圧未満の電圧に設定したので、直列変圧器の一次端子間が開放される事故が発生したときに、その事故の発生を確実に検出して保護動作を行なわせることができ、タップ切換器側の回路を構成する部品が過電圧により破壊するのを防いで、信頼性を向上させることができる。本発明によれば、判定電圧を決定するための指針が明確にされるので、保護装置の設計を容易にすることができる。
【0038】
特に第4の発明又は第5の発明によれば、直列変圧器の調整電圧出力端子間に並列に低圧用サージ防護デバイスを接続したことにより、直列変圧器の一次端子間が開放されたときにタップ切換器側の回路に印加される電圧を、保護用スイッチ及び橋絡用スイッチの正常な閉路動作が保証される電圧の上限値以下に制限して、保護用スイッチ及び橋絡用スイッチの閉路動作を確実に行なわせることができるため、タップ切換器側の回路の保護を確実に図ることができる。
【0039】
また第6の発明又は第7の発明によれば、タップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧を判定電圧と比較して、調整電圧出力端子間の電圧が判定値以上になったときに直列変圧器の一次側の開放を検出するだけでなく、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときにも、直列変圧器の一次側の開放を検出するので、直列変圧器の一部の相の一次端子間が開放される事故が発生した場合にもその事故の発生を確実に検出して、タップ切換器側の回路を保護する保護動作を行なわせることができる。
【0040】
更に、第7の発明又は第9の発明によれば、タップ切換時に過渡的に発生する直列変圧器の一次電圧の不平衡により直列変圧器の一次端子間が開放されたとの誤検出が行われて、不要な保護動作が行われるのを防ぐことができるため、保護装置を設けたことにより本来のタップ切換え動作に支障を来す事態が生じるおそれを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係る自動電圧調整装置の第1の実施形態の1相分の構成を示した回路図である。
図2】第1の実施形態に係る自動電圧調整装置において、直列変圧器の3相の一次端子間を開放した際に観察されたU相の電圧波形を示した波形図である。
図3】第1の実施形態に係る自動電圧調整装置において、直列変圧器の3相の一次端子間を開放した際に観察されたV相の電圧波形を示した波形図である。
図4】第1の実施形態に係る自動電圧調整装置において、直列変圧器の3相の一次端子間を開放した際に観察されたW相の電圧波形を示した波形図である。
図5】本発明に係る自動電圧調整装置の第2の実施形態の1相分の構成を示した回路図である。
図6】第2の実施形態に係る自動電圧調整装置において、直列変圧器の3相の一次端子間を開放した際に観察されたU相の電圧波形を示した波形図である。
図7】第2の実施形態に係る自動電圧調整装置において、直列変圧器の3相の一次端子間を開放した際に観察されたV相の電圧波形を示した波形図である。
図8】第2の実施形態に係る自動電圧調整装置において、直列変圧器の3相の一次端子間を開放した際に観察されたW相の電圧波形を示した波形図である。
図9】第1の実施形態に係る自動電圧調整装置において、タップ切換え前後に観察された直列変圧器のU相の一次端子間の電圧波形を示した波形図である。
図10】第1の実施形態に係る自動電圧調整装置において、タップ切換え前後に観察された直列変圧器のV相の一次端子間の電圧波形を示した波形図である。
図11】第1の実施形態に係る自動電圧調整装置において、タップ切換え前後に観察された直列変圧器のW相の一次端子間の電圧波形を示した波形図である。
図12】従来の自動電圧調整装置の1相分の構成を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下図面を参照して、本発明に係る自動電圧調整装置の実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態の回路構成及び動作について>
図1は本発明に係る自動電圧調整装置の第1の実施形態の1相分の構成を示したものである。同図において1は一次巻線1p及び二次巻線1sを3相分有する直列変圧器、2は一次巻線2p及び二次巻線(タップ巻線)2sを3相分有する調整変圧器、3は直列変圧器1の各相の一次巻線と調整変圧器2の各相の二次巻線との間に設けられたタップ切換器である。
【0043】
直列変圧器1の各相の二次巻線1sの一端及び他端はそれぞれ対応する相の一次側(電源側)線路接続端子3及び二次側(負荷側)線路接続端子4に接続され、各相の一次側線路接続端子3及び二次側線路接続端子4がそれぞれ対応する相の一次側線路5及び二次側線路6に接続されることにより、各相の直列変圧器の二次巻線1sが各相の線路に直列に接続される。図示の例では直列変圧器の3相の一次巻線1pがスター結線されていて、3相の一次巻線の中性点が接地されている。
【0044】
調整変圧器2の各相の一次巻線2pの一端は対応する相の二次側線路接続端子5に接続され、各相の一次巻線2pの他端は中性点Nに接続されている。本実施形態では、3相の調整変圧器2の一次巻線2pがスター結線された状態で線路に並列に接続されている。調整変圧器2の各相の二次巻線2sは、その一端及び他端にそれぞれ一端側最端タップ2t1及び他端側最端タップ2t4を有するとともに、最端タップ2t1と2t4との間に中間タップ2t2及び2t3を有している。調整変圧器2は、線路の電圧を入力として、直列変圧器1の一次側に与える調整電圧を複数のタップの中から選択された通電タップを通して出力する。
【0045】
各相のタップ切換器3は、直列変圧器1に調整電圧を与えるために直列変圧器1の各相の一次端子に接続される調整電圧出力端子8及び9と、調整電圧出力端子8,9と調整変圧器2のタップとの間に設けられた複数のタップ切換用スイッチA〜C及びT1,T2と、調整電圧出力端子8,9間に限流抵抗器Rを通して接続された橋絡用スイッチSとを備えており、各相のタップ切換器3の調整電圧出力端子8及び9がそれぞれ直列変圧器1の対応する相の一次端子10及び11に接続されている。
【0046】
タップ切換用スイッチを構成しているスイッチの内、スイッチA〜Cは、一端が共通接続されるとともに、他端がそれぞれタップ2t1ないし2t3に接続されたタップ選択用スイッチであり、タップ選択用スイッチA〜Cの一端の共通接続点は、調整電圧出力端子8に接続されている。またスイッチT1及びT2はそれぞれ第1及び第2の極性切換用スイッチで、第1の極性切換用スイッチT1及び第2の極性切換用スイッチT2の一端は、調整電圧出力端子9に共通接続され、第1の極性切換用スイッチT1及び第2の極性切換用スイッチT2の他端はそれぞれ調整変圧器2の二次巻線2sの最端タップ2t4及び2t1に接続されている。
【0047】
図示してないが、線路の電圧を設定された範囲に保つようにタップ切換器3を制御する制御装置が設けられている。この制御装置は、図示しない計器用変圧器を通して検出した線路の電圧が設定された範囲から外れたときに、橋絡用スイッチSを一時的にオン状態にすることにより直列変圧器1の一次端子間が開放状態になるのを防止しつつ、閉路状態にするタップ選択用スイッチと閉路状態にする極性切換用スイッチとの組み合わせを切り換えて、線路電圧を設定された範囲に収めるように調整変圧器2の通電タップを切り換える制御を行う。
【0048】
例えば線路電圧が6600[V]である場合には、タップ選択用スイッチAが閉路状態にあり、第2の極性切換用スイッチT2が閉路状態にあって、他のタップ選択用スイッチB、C、第1の極性切換用スイッチT1及び橋絡用スイッチSが開路状態にあるときに、調整変圧器3u〜3wから直列変圧器1u〜1wの一次巻線に印加される調整電圧が0となって、6480ボルトのタップを選択した状態になるようにしておく。この状態から閉路状態にするタップ選択用スイッチと閉路状態にする極性切換用スイッチの組合わせを切り換えることにより、120ボルトステップでタップを切換えることにより、配電線電圧を調整する。
【0049】
タップを切り換える際には、タップ選択用スイッチ及び極性切換用スイッチの双方が開路状態になる瞬間に直列変圧器の一次側から負荷時タップ切換器3側を見た回路が開放状態になって直列変圧器の一次巻線に異常過電圧が誘起するのを防ぐために、一時的に橋絡用スイッチSを閉路状態にして、直列変圧器の一次端子間に限流抵抗器Rを並列に接続する。
【0050】
例えば、タップ選択用スイッチAが閉路状態にあり、第2の極性切換用スイッチT2が閉路状態にあって、タップ選択用スイッチB、C及び橋絡用スイッチSが開路状態にある状態から配電線電圧を1ステップ分(120ボルト分)上昇させて6600ボルトのタップを選択した状態にする場合には、タップ選択用スイッチA及び第2の極性切換用スイッチT2を閉路状態にしたままで、先ず橋絡用スイッチSを閉路状態にして直列変圧器の一次端子間に限流抵抗器Rを接続する。その後、タップ選択用スイッチA及び第2の極性切換用スイッチT2を共に開路状態にし、タップ選択用スイッチCと第1の極性切換用スイッチT1とを閉路状態にする。次いで、橋絡用スイッチSを開路状態にして、タップ選択用スイッチCと第1の極性切換用スイッチT1のみが閉路した状態にする。この状態では、調整変圧器の二次巻線の1タップ間の電圧が調整電圧として直列変圧器の一次巻線に印加され、6600ボルトのタップを選択した状態になる。
【0051】
同様にして、橋絡用スイッチを閉路状態にすることにより、直列変圧器の一次巻線の両端が開放状態になるのを防止しつつ、閉路状態にするタップ選択用スイッチと極性切換用スイッチの組合わせを切り換えることにより、選択するタップの電圧を120ボルト刻みで調整する。
【0052】
本実施形態では、タップ選択用スイッチA〜C,極性切換用スイッチT1,T2及び橋絡用スイッチSがサイリスタスイッチにより構成されている。サイリスタスイッチは、サイリスタをスイッチング素子として構成した双方向性を有するスイッチ主回路(主回路電流をオンオフするスイッチ回路)と、このスイッチ回路を構成するサイリスタに制御信号(トリガ信号)を与えるドライバとにより構成される。サイリスタスイッチのスイッチ主回路は、単方向性を有する対のサイリスタを逆並列接続して構成したものでもよく、双方向性を有するサイリスタ(例えばトライアック)により構成したものでもよい。
【0053】
サイリスタスイッチとしては、サイリスタと該サイリスタにトリガ信号を与える回路を構成する電子部品とを組み合わせたディスクリートな構成を有するものを用いてもよいが、コストの低減を図るためには、市販のソリッドステートコンタクタ(SSC)を用いるのが好ましい。ソリッドステートコンタクタは、サイリスタをスイッチング素子とした双方向性のスイッチ主回路と、該スイッチ主回路を構成するサイリスタを駆動するドライバとをユニット化したもので、外部から与える制御信号によりオンオフ制御することができる。
【0054】
<過電圧検出に基づく開放事故の検出と回路の保護>
前述したように、間接切換式の自動電圧調整装置では、タップ切換器3側の回路で接触不良が生じたり、タップ切換用スイッチが劣化により動作不良になったりした場合に直列変圧器の一次端子間が開放された状態になって、その一次巻線に異常過電圧が発生し、この過電圧によりタップ切換器を構成する部品が破損する事故が発生するおそれがある。そのため、この種の自動電圧調整装置では、直列変圧器の一次端子間が開放される事故に備えて、タップ切換器側の回路を保護する保護装置を設けている。
【0055】
本実施形態では、この保護装置が、タップ切換器3の調整電圧出力端子8,9間に並列に接続された保護用スイッチ12と、調整電圧出力端子8,9間の電圧を検出する電圧検出部13と、電圧検出部13が検出した電圧が判定電圧以上であるときに保護指令を発生する保護指令発生部14と、保護指令が発生したときに保護用スイッチ12をオン状態にする制御を行う保護用スイッチ制御部15を備えていて、タップ切換器3の調整電圧出力端子8,9間の電圧が設定された判定電圧以上であるときに保護用スイッチ12をオン状態にすることにより保護動作を行なうように構成されている。直列変圧器1と、調整変圧器2と、タップ切換器3と、上記保護装置とにより、自動電圧調整装置16が構成されている。
【0056】
本実施形態では、直列変圧器の一次巻線1pの両端に電磁接触器MCが並列に接続され、この電磁接触器MCが保護用スイッチ12として用いられている。保護用スイッチ制御部15は、保護指令発生部14が保護指令を発生した時に橋絡用スイッチSを構成するサイリスタスイッチにトリガ信号を与えると同時に、電磁接触器MCの駆動コイルに励磁電流を与えて、橋絡用スイッチSをオン状態にする制御と、電磁接触器MCをオン状態にする制御とを行わせるように構成されている。
【0057】
直列変圧器1の一次端子間が開放され、直列変圧器の一次側に異常過電圧が誘起すると、直列変圧器の一次端子10,11に接続されているタップ切換器の調整電圧出力端子8,9間の電圧が判定電圧を超えるため、保護指令発生部14が直列変圧器1の一次端子間の開放を検出して保護指令を発生する。保護指令が発生すると、保護用スイッチ制御部15が橋絡用スイッチSにトリガ信号を与えて該橋絡用スイッチをオン状態にする制御と、電磁接触器MCに励磁電流を与えて該電磁接触器をオン状態にする制御とを行わせる。これらの制御が行われると、先ず動作が速いサイリスタスイッチからなる橋絡用スイッチSがオン状態になって調整電圧出力端子8,9間を抵抗器Rを通して橋絡することにより、直列変圧器の一次端子間に誘起する電圧を抑制し、次いで電磁接触器MCがオン状態になってタップ選択器3の調整電圧出力端子8,9間を短絡するため、タップ切換器3側の回路が異常過電圧により破壊するのを防ぐことができる。
【0058】
橋絡用スイッチSには限流抵抗器Rが直列に接続されているため、橋絡用スイッチSをオン状態にするだけでタップ切換器3側の回路を保護しようとした場合には、橋絡電流が限流抵抗器Rを流れることによって発生するジュール熱により、最終的に限流抵抗器Rが損傷してしまう。従って、橋絡用スイッチSをオン状態にするだけでタップ切換器側の回路を保護することはできないが、本実施形態では、橋絡用スイッチSをオン状態にした直後に電磁接触器MC(保護用スイッチ)をオン状態にしてタップ切換器3側の回路に印加される電圧を抑制し続けるので、タップ切換器3を構成している限流抵抗器を損傷することなく保護動作を行わせることができる。
【0059】
直列変圧器1の一次端子間が開放される事故が発生したときに上記の保護装置によりタップ切換器3側の回路を確実に保護するためには、保護指令発生部14が直列変圧器の一次側の開放を検出するために、タップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧と比較する判定電圧を適確に設定する必要がある。本実施形態では、上記判定電圧が、直列変圧器1の鉄心の磁束密度が飽和したときに直列変圧器の一次側から調整電圧出力端子8,9間に印加される電圧以上で、かつ、タップ切換器3の橋絡用スイッチSを構成しているサイリスタが降伏する現象が発生するときに調整電圧出力端子8,9間に現れている電圧(この電圧をサイリスタ降伏開始電圧という。)未満の電圧に設定される。
【0060】
直列変圧器1の一次端子間が開放されていない状態では、直列変圧器の一次側に飽和電圧(変圧器の鉄心が飽和した際に現れる一次電圧)以上の電圧が発生することは無いが、直列変圧器の一次端子間が開放されると、直列変圧器の二次側を流れる系統電流が全て励磁電流となることで高調波成分を含んだ電圧が発生し、これが変圧器の飽和電圧に重畳することで異常過電圧が発生する。したがって、直列変圧器の一次端子間が開放状態になったか否かを判定するために調整電圧出力端子8,9間の電圧と比較する判定電圧を、直列変圧器1の鉄心の磁束密度が飽和したときに直列変圧器の一次側から調整電圧出力端子8,9間に印加される電圧以上に設定しておくと、通常の使用状態で発生し得る過電圧により、直列変圧器の一次端子間が開放されたとの誤判定がされるのを防ぐことができ、直列変圧器の一次端子間が開放状態にされたが否かを確実に判定することができる。
【0061】
また、本発明が対象とする自動電圧調整装置においては、タップ切換器の調整電圧出力端子間に橋絡用スイッチが並列に接続されているため、直列変圧器の一次端子間が開放されることにより発生した異常過電圧がサイリスタ降伏開始電圧以上になると、橋絡用スイッチを構成するサイリスタが降伏してオン状態になる現象(降伏現象)が生じ、この橋絡用スイッチの導通により、異常過電圧が抑制される。過電圧の判定閾値(判定電圧)をサイリスタ降伏開始電圧以上に設定しておくと、直列変圧器の一次端子間が開放された後、橋絡用スイッチを構成するサイリスタが降伏現象によりオン状態になって直列変圧器の一次電圧が抑制されたときに、直列変圧器の一次端子間が開放されたことの判定を行うことができなくなる。従って、直列変圧器の一次端子間が開放されているか否かの判定を確実に行なうためには、判定電圧をサイリスタ降伏開始電圧未満の電圧に設定しておく必要がある。
【0062】
直列変圧器1の一次端子間が開放されているか否かを判定するために判定電圧と比較する電圧値(タップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧値)としては、3相の調整電圧出力端子間の電圧(直列変圧器の3相の一次電圧)のピーク値の内の最大値を用いるのが好ましい。従って、電圧検出部13は、3相の調整電圧出力端子8,9間の電圧のピーク値を検出して、検出した3相の電圧のピーク値の内の最大値を調整電圧出力端子間の電圧の検出値とするように構成しておく。
【0063】
なお、タップ切換器3の調整電圧出力端子8,9間の電圧の検出は、調整電圧出力端子8,9間で行ってもよく、直列変圧器の一次端子10,11間で行ってもよい。
【0064】
<直列変圧器の一次電圧の不平衡の検出による開放事故の検出>
間接切換式の自動電圧調整装置において起り得る直列変圧器開放事故は、直列変圧器の全相の一端子間が開放される事故(3相開放事故)だけでなく、直列変圧器の1相の一次端子間のみが開放される事故(1相開放事故)や、直列変圧器の2相の一次端子間のみが開放される事故(2相開放事故)が発生することもある。これらの事故の内、1相開放事故が生じたときに発生する過電圧は比較的低いため、この過電圧でタップ切換器側の回路が直ちに破壊されることはないが、タップ切換器側の回路に高い電圧が印加される状態が継続すると、回路を構成しているサイリスタスイッチにストレスがかかり続けるため好ましくない。
【0065】
また、直列変圧器の1相開放事故が生じると、変圧器の磁束がアンバランスになって飽和することから、変圧器から異音が発生したり、鉄心の過熱により変圧器が焼損したりするおそれがあるため、1相開放事故が発生した状態で長時間の運転を行うことは危険である。従って、発生した開放事故が1相開放事故である場合にも、保護動作を行い得るようにしておくことが好ましい。1相開放事故の場合は、直列変圧器の一次側に誘起する過電圧が比較的低いため、判定電圧の設定が適当でないと、その事故の発生を見落とすおそれがある。従って、1相開放事故をも確実に検出するための手段を用意しておくことが好ましい。
【0066】
直列変圧器の一部の相の一次端子間のみが開放される開放事故が発生した場合には、直列変圧器の3相の1次端子間の電圧が不平衡になるため、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出することにより、その開放事故を検出することができる。直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡は、1相開放事故の場合に顕著に現れるので、この方法によれば、発生する過電圧が低く、過電圧を検出する方法では検出に失敗するおそれがある1相開放事故を確実に検出することができる。
【0067】
また後記する模擬実験の結果から明らかなように、3相開放事故発生時にも直列変圧器の3相の一次電圧が不平衡になるため、3相の調整電圧出力端子8,9を通して検出される直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出する方法により、3相開放事故の検出をも行なうことができる。
【0068】
従って、図1に示した保護指令発生部14は、タップ切換器の調整電圧出力端子を通して検出される直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときに保護指令を発生するように構成することもできる。
【0069】
なお直列変圧器の3相の一次電圧の検出は、タップ切換器の調整電圧出力端子間で行ってもよく、直列変圧器の一次端子間で行ってもよい。
【0070】
また保護指令発生部14に、タップ切換器の調整電圧出力端子8,9間の電圧が判定電圧以上であるか否かを判定する判定部と、タップ切換器の調整電圧出力端子8,9を通して検出される直列変圧器の3相の一次電圧が不平衡であるか否かを判定する判定部との双方を設けて、調整電圧出力端子8,9間の電圧が判定電圧以上になったとき又は調整電圧出力端子8,9を通して検出される直列変圧器の3相の一次電圧が不平衡になったときに、直列変圧器の一次端子間が開放される事故が発生したと判定して保護指令を発生するように保護指令発生部14を構成するようにしてもよい。
【0071】
直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡は定常状態でも多少は発生する。従って、上記の保護装置は、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡の度合いが、定常時に観測される不平衡の度合いを超えていることを検出したときに3相の一次電圧に不平衡が生じているとして、保護用スイッチをオン状態にするように構成することが好ましい。3相の電圧の不平衡の度合は、逆相電圧を正相電圧で除することにより求めた不平衡率を用いて判定することが一般的であるが、3相の電圧のピーク値を比較する等の方法によっても3相の電圧の不平衡の度合いを判定することができる。
【0072】
保護用スイッチ制御部15は、何れかの相の直列変圧器の一次側で開放事故が発生したことが検出されて保護指令が与えられたときに、すべての相の保護用スイッチをオン状態にするように構成しておくのが好ましい。
【0073】
<模擬実験について>
本発明者は、図1に示した保護装置を搭載した自動電圧調整装置の試作機を6600Vの模擬系統に接続して、直列変圧器1の一次側を開放した場合に保護動作が適確に行われるか否かを検証するための模擬実験を行った。
【0074】
実験に用いた直列変圧器の鉄心の磁束密度が飽和する電圧(一次電圧)は計算上446Vである。実験結果より、タップ切換器側の回路に印加する電圧が1000Vを超えると、サイリスタの降伏現象が発生し、更に印加電圧を上げてもサイリスタの降伏により回路電圧は最大1300V程度に抑制されることがわかっている。これらのことより、直列変圧器開放事故を検出するために、タップ切換器の調整電圧出力端子間に印加されている電圧と比較する判定電圧(直列変圧器開放事故の判定閾値)を495Vとして直列変圧器開放模擬実験を行った。また、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出することにより、直列変圧器開放事故を検出できるか否かについての検証も行った。
【0075】
直列変圧器開放模擬実験では、線路に供試機の定格電流に等しい電流を流し、タップ切換器3のスイッチA及びT1をオン状態にしてタップ2t1を選択して通常運転している状態から、各相のタップ切換器を構成しているスイッチを強制的に遮断状態にする機能を有する開放不良模擬装置によりスイッチAを強制的に遮断状態にすることにより、直列変圧器の一次側を開放することで直列変圧器開放事故を模擬した。実験で用いた開放不良模擬装置は、タップ切換用スイッチAの遮断を各相毎に行い得るように構成されており、1相開放、2相開放及び3相開放をそれぞれ模擬し得るように構成されている。
【0076】
<過電圧と判定電圧との比較に基づく保護の可否>
実験では、直列変圧器の1相の一次端子間のみが開放される開放事故(1相開放事故)、直列変圧器の2相の一次端子間のみが開放される開放事故(2相開放事故)及び直列変圧器の3相の一次端子間がすべて開放される開放事故(3相開放事故)を模擬して、それぞれの場合にタップ切換器の調整電圧出力端子間に印加された電圧を測定し、一次側開放直後に測定された直列変圧器の3相の一次電圧の最初のピーク値の内の最大値を「電圧ピーク値」として、この電圧ピーク値を判定電圧(495V)と比較することにより直列変圧器開放事故を検出できるか否かについて検証した。
【0077】
また一次側開放時に直列変圧器の3相の一次電圧のピーク値を比較することにより3相の一次電圧の不平衡の度合いを求めて、この3相の電圧の不平衡の度合いが、定常時に(直列変圧器の一次端子間が開放されていないときに)観測される不平衡の度合いを超えているときに3相の一次電圧が不平衡になっていると判定することにより、直列変圧器開放事故の発生の有無を判定できるか否かについても検証した。この直列変圧器開放模擬実験の結果を下記の表1に示した。
【表1】
【0078】
表1において、「電圧ピーク値」は、開放直後に測定されたタップ切換器の3相の調整電圧出力端子間電圧のピーク値の内の最大値を示している。また「電圧比較による保護可否」は、測定された「電圧ピーク値」が判定電圧(495V)以上になったときに直列変圧器開放事故が発生したと判定してタップ切換器側回路の保護を図ることの可否であり、「電圧不平衡検出による保護可否」は、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出したときに直列変圧器開放事故が発生したと判定してタップ切換器側回路の保護を図ることの可否である。
【0079】
模擬実験では、1相開放事故を模擬した場合、2相開放事故を模擬した場合及び3相開放事故を模擬した場合について、タップ切換器の3相の調整電圧出力端子間の電圧波形を観測したが、参考のため、3相開放事故を模擬した場合に観察されたU,V,W3相の調整電圧出力端子間の電圧波形をそれぞれ図2図4に示した。
【0080】
表1から明らかなように、電圧ピーク値は、1相開放事故の場合、2相開放事故の場合及び3相開放事故の場合のいずれの場合も、直列変圧器の鉄心が磁気的に飽和した際に該変圧器の一次側に現れる飽和電圧446Vを上回っていることがわかる。また電圧ピーク値は2相開放事故発生時及び3相開放事故発生時にサイリスタ降伏開始電圧である1000Vを上回っているが、1相開放事故発生時には1000Vに達していない。この場合、判定電圧を直列変圧器の鉄心の磁束密度が飽和するときの直列変圧器の一次電圧以上で、かつ、タップ切換器で使用しているサイリスタが降伏する現象が発生するときの直列変圧器の一次電圧未満の電圧に設定して、直列変圧器の一次電圧がこの判定電圧以上になったか否かを監視することにより、直列変圧器の一次側で開放事故が発生したことを検出することができる。
【0081】
1相開放事故発生時には、直列変圧器の一次側に誘起する過電圧が低いが、判定電圧を適確に定めておけば、1相開放事故の発生の検出も十分可能である。模擬実験では、判定電圧を495Vに設定することにより、1相開放事故の検出を行っている。
【0082】
<電圧不平衡に基づく保護の可否>
模擬実験の結果から、1相開放事故発生時、2相開放事故発生時及び3相開放事故発生時のいずれの場合も、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡の度合いが、定常時に観測される3相の一次電圧の度合よりも大きくなることが明らかになった。したがって、表1に示された「電圧不平衡検出による保護可否」から明らかなように、直列変圧器の3相の一次電圧の不平衡を検出することにより、1相開放事故、2相開放事故及び3相開放事故の何れをも検出して保護動作を行わせることができる。特に1相開放事故発生時には、3相の調整電圧出力端子間の電圧の不平衡の度合いが大きくなるため、直列変圧器の一次側に誘起する過電圧が低い1相開放事故をも確実に検出することができる。
【0083】
<第2の実施形態:開放事故発生時に誘起する異常過電圧の抑制>
直列変圧器の一次側で開放事故が発生した際に、橋絡用スイッチや保護用スイッチ(電磁接触器MC)に過大な電圧が印加されると、これらのスイッチを正常に閉路させることができなくなって保護動作を適確に行うことができなくなるおそれがある。このような事態が生じるのを防ぐために、開放事故発生時に直列変圧器の一次側に誘起する過電圧を、事故の発生の検知に支障を来さない範囲で抑制することが好ましい。
【0084】
開放事故発生時に直列変圧器の一次側に誘起する過電圧を抑制するために、避雷器(ZnO)を用いることが考えられるが、直列変圧器の一次側に発生する過電圧を抑制する際に必要なエネルギ耐量を有する避雷器は非常に大形であるため、自動電圧調整装置内に組み込むことはできない。そこで、本発明者は、小形でありながら、開放事故発生時に直列変圧器の一次側に発生する過電圧を抑制するために必要なエネルギ耐量を有する低圧用サージ防護デバイスに着目して、図5に示すように、このデバイスをタップ切換器の調整電圧出力端子8,9間に並列に接続することで、開放事故発生時に直列変圧器の一次側に誘起する過電圧を抑制することについて検討した。
【0085】
低圧用サージ防護デバイスは、SPD(Surge Protect Device )と略称されるデバイスで、両端に印加されている電圧が設定された制限電圧を超えたときに内蔵しているスイッチ手段をオン状態にして両端電圧を制限電圧以下に保つ電圧制限動作をし、両端に印加されている電圧が制限電圧以下に低下したときに内蔵のスイッチ手段をオフ状態にして電圧制限動作を自動的に解除するデバイスである。本実施形態においては、タップ切換器の調整電圧出力端子間に並列に接続される低圧用サージ保護デバイスとして、直列変圧器から保護用スイッチ及び橋絡用スイッチに印加される電圧が示す変動範囲のうち、保護用スイッチ及び橋絡用スイッチSの正常な閉路動作が保証される電圧範囲の上限値である「閉路動作上限電圧」以下の制限電圧を有するデバイスが選定される。低圧用サージ保護デバイスは複数のメーカーが市販しており、種々の制限電圧を有するものを簡単に入手することができる。
【0086】
本実施形態のように構成することにより、直列変圧器1の一次端子間が開放されたときに、タップ切換器3側の回路に印加される電圧を、橋絡用スイッチS及び保護用スイッチ(電磁接触器MC)の正常な閉路動作が保証される電圧の上限値以下に制限することができれば、橋絡用スイッチ及び保護用スイッチの両端にかかる電圧が過大であることに起因して、これらのスイッチが正常な閉路動作をすることができない事態が生じるのを防ぐことができ、橋絡用スイッチ及び保護用スイッチの閉路動作を確実に行なわせて、タップ切換器3側の回路の保護を確実に図ることができる。
【0087】
<低圧用サージ保護デバイスによる過電圧抑制を検証するための模擬実験>
そこで本発明者は、図5に示した自動電圧調整装置について模擬実験を行って、低圧用サージ保護デバイスを接続することの妥当性について検証した。この模擬実験では、低圧用サージ保護デバイスとして、動作電圧(制限電圧)が700Vのものを用いた。この模擬実験の結果は下記の表2の通りである。
【表2】
【0088】
この模擬実験で観測された直列変圧器の3相の一次端子間をすべて開放した時に観測されたU,V,W3相の調整電圧出力端子間の電圧波形をそれぞれ図6ないし図8に示した。
【0089】
表2から明らかなように、2相開放事故発生時及び3相事故発生時において、事故発生直後の直列変圧器の一次電圧が、表1に示された電圧にくらべて大幅に抑制されていることが分かる。試験後に低圧用サージ保護デバイスの点検を行ったところ、破壊している低圧用サージ保護デバイスは皆無であった。これらのことから、直列変圧器の一次側開放事故の際に発生する異常過電圧を抑制するために低圧用サージ保護デバイスが有効であることが確認された。
【0090】
また、1相開放事故発生時、2相開放事故発生時及び3相開放事故発生時のいずれの場合も、発生した過電圧が直列変圧器の飽和電圧である446Vを上回っていることから、動作電圧(制限電圧)が適切な低圧用サージ保護デバイスを選定すれば、低圧用サージ保護デバイスにより異常過電圧を抑制した状態でも、タップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧(直列変圧器の一次端子間の電圧)を判定電圧と比較することで、開放事故の検出を行うことが可能であり、1相開放事故発生時、2相開放事故発生時及び3相開放事故発生時のいずれの場合も、タップ切換器の調整電圧出力端子間の電圧を判定電圧と比較することで開放事故を検知して保護動作を行わせることにより、タップ切換器側の回路を保護することが可能であることが確認された。
【0091】
<直列変圧器の励磁突入電流に起因する保護動作の誤動作防止について>
タップ切換時に一旦素通し状態としてから目的タップを投入するようにしたサイリスタ式自動電圧調整装置においては、投入時に変圧器の一次巻線に励磁突流が流れ、タップ切換後もしばらくの間電圧が動揺し、この動揺に起因して、3相の直列変圧器の一次電圧が不平衡になるおそれがある。図9ないし図11はそれぞれ昇圧タップへのタップ切換の前後の直列変圧器のU相〜W相の一次電圧の波形を示したものである。これらの図から明らかなように、直列変圧器の一次電圧は、タップ切換中に一旦素通しタップの電圧まで低下した後、昇圧タップの電圧値まで上昇するが、昇圧タップ投入時に流れる励磁突入電流の影響により、タップ切換後しばらくの間は電圧が変動し、3相の一次電圧が不平衡になる。このように、励磁突入電流の影響で、3相の一次電圧に不平衡が生じると、電圧不平衡に基づく開放事故の検出を適確に行うことができなくなって、不要な保護動作が行われ、電圧調整を正常に行うことができない事態が生じるおそれがある。
【0092】
電圧不平衡に基づいて開放事故の発生を検出して保護動作を行う場合に上記のような問題が生じるのを防ぐためには、タップ切換直後の一定時間の間(タップ切換時に流れる励磁突入電流の影響で電圧変動が生じる期間の間)、電圧不平衡に基づいて開放事故の発生を検出して行う保護動作をロックして(停止させて)、保護用スイッチが導通状態にされるのを禁止するようにしておくことが好ましい。
【0093】
<変形例>
上記の実施形態では、タップ切換器3が3つのタップ選択用スイッチA〜Cを備えているが、タップ選択用スイッチの数は調整変圧器の二次巻線に設けるタップの数により異なるのはもちろんである。
【0094】
また上記の実施形態では、タップ切換器3として、タップ選択用スイッチA〜Cの他に極性切換用スイッチT1及びT2をタップ切換用スイッチとして備えた形式のものを採用したが、本発明は上記のようなタップ切換器を用いる場合に限定されない。例えば、調整変圧器の二次巻線に設けるタップの数を多くすることにより必要な調整範囲の電圧調整を行うことができる場合には、極性切換用スイッチT1及びT2を省略することもできる。
【0095】
上記の実施形態では、直列変圧器の一次側及び調整変圧器の二次側(タップ巻線)の結線を共に3相Y結線としたが、本発明において、直列変圧器の一次側及び調整変圧器の二次側の結線は任意である。例えば調整変圧器の二次側の結線を3相Δ結線としてもよく、3相V結線としてもよい。タップ巻線をV結線する構成を採用する場合には、タップ切換器を2台設ければよいため、構成の簡素化を図ることができる。
【0096】
上記の実施形態では、調整変圧器として一次巻線及び二次巻線を有する絶縁変圧器を用いたが、調整変圧器としては、タップ付きの単巻変圧器を用いることもできる。
【符号の説明】
【0097】
1 直列変圧器
1p 直列変圧器の一次巻線
1s 直列変圧器の二次巻線
2 調整変圧器
2p 調整変圧器の一次巻線
2s 調整変圧器の二次巻線
3 タップ切換器
6、7 線路
8,9 タップ切換器の調整電圧出力端子
10,11 直列変圧器の一次端子
A〜C タップ選択用スイッチ
T1 第1の極性切換スイッチ
T2 第2の極性切換スイッチ
R 限流抵抗器
S 橋絡用スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図12