特許第6795414号(P6795414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795414
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】自動車の補助バッテリ配置構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20201119BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B62D25/20 H
   B60R16/04 D
   B60R16/04 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-16362(P2017-16362)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-122726(P2018-122726A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154782
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知二
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 界
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 繁孝
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドメンバと、インナパネルと、前記インナパネル及び前記サイドメンバの各々の上端面に沿って配置されるフロアパネルとを有する自動車の補助バッテリを、前記フロアパネルの上方に配置させる補助バッテリ配置構造であって、
前記フロアパネルの下面側にて前記インナパネルの車両外側の側面に接続されるとともに、前記自動車の後輪のホイールハウスに対して車両後ろ側に位置する第1支持部、
前記フロアパネルの下面側にて前記インナパネルの車両内側の側面及び前記サイドメンバの車両外側の側面に接続される第2支持部、
前記フロアパネルの上面に接続されるとともに、前記フロアパネルを介して前記第1支持部の上端面及び前記第2支持部の上端面とを接続するように配置される、前記補助バッテリを保持する補助バッテリ保持部、
を有する自動車の補助バッテリ配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の補助バッテリ配置構造に関し、特に、補助バッテリがサイドメンバより車両左右方向外側に配置されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の補助バッテリ配置構造について、図5に示す電動車両の車体後部構造を用いて説明する。電動車両の車体後部構造では、車両前後方向に延びるサイドメンバ11と、このサイドメンバ11に支持するバッテリーケース21と、このサイドメンバ11に支持するリヤサスペンションアーム31と、このサイドメンバ11に設けられた共通ブラケット40と、を備える。そして、共通ブラケット40は、バッテリーケース21を支持するバッテリーマウント部42と、リヤサスペンションアーム31を支持するサスペンションマウント部43と、を有する。これにより、後突による衝撃荷重入力時、サイドメンバに衝撃荷重が集中することを抑制し、サイドメンバの変形を防止できる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−218910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の電動車両の車体後部構造には、以下に示す改善すべき点がある。バッテリーケース21には、電気自動車に搭載する走行用電動モータの電源である駆動用バッテリとして用いるバッテリーパックを内蔵している。つまり、別途、エアコンディショナやオーディオ、その他のアクセサリに電力を供給するための補助バッテリを配置する必要がある。
【0005】
一方、コンパクトカーや軽自動車等、サイドメンバ間のスペースや、車両高さ方向の等、車両にスペースが十分でない自動車においては、補助バッテリの固定を維持しながら、スペースを有効に活用することが難しい、という改善すべき点がある。例えば、補助バッテリを荷室に配置することによって、補助バッテリを安定して固定できる一方、補助バッテリを配置した分、荷室が狭くなる。
【0006】
また、追突のように、車両の後方から力が作用した場合、車両左右に配置されているサイドメンバがその力を受けることになる。このため、車両の後方からの力に対して、サイドメンバが大きく変形する、という別の解決すべき課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、車両内の空間を有効活用しながら、車両後方から作用する力に対して車体の強度を向上させる自動車の補助バッテリ配置構造を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0009】
本発明に係る自動車の補助バッテリ配置構造は、サイドメンバと、インナパネルと、前記インナパネル及び前記サイドメンバの各々の上端面に沿って配置されるフロアパネルとを有する自動車の補助バッテリを、前記フロアパネルの上方に配置させる補助バッテリ配置構造であって、前記フロアパネルの下面側にて前記インナパネルの車両外側の側面に接続されるとともに、前記自動車の後輪のホイールハウスに対して車両後ろ側に位置する第1支持部、前記フロアパネルの下面側にて前記インナパネルの車両内側の側面及び前記サイドメンバの車両外側の側面に接続される第2支持部、前記フロアパネルの上面に接続されるとともに、前記フロアパネルを介して前記第1支持部の上端面及び前記第2支持部の上端面とを接続するように配置される、前記補助バッテリを保持する補助バッテリ保持部、を有する。
【0010】
このように、後輪のホイールハウスに接続され、ホイールハウスに対して車両後ろ側に位置する第1支持部を配置することによって、補助バッテリを後輪のホイールハウスに対し車両後ろ側の空間に配置することができる。後輪のホイールハウスに対し車両後ろ側の空間は、いわゆる荷室としては機能しないため、車両内の空間を有効活用できる。
【0011】
また、車両に対して後ろ側から力が作用した場合に、サイドメンバが受ける力を、第2支持部、補助バッテリ保持部を用いて、車両外側に向かって分散し、ホイールハウスへ伝達する。ホイールハウスは、強度が高いため、結果的に、車両後ろ側から作用した力Fに対して、サイドメンバだけでなく、ホイールハウスにも伝達できるため、車両後ろ側から作用する力を、サイドメンバだけに集中的に作用させるのではなく、ホイールハウスにも分散的に伝達できるので、サイドメンバの変形を低減し、結果的に、車体の強度を向上させるすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る一実施形態に係る自動車の補助バッテリ配置構造100が搭載される自動車AMを示す図である。
図2図1においてフロアパネルFPを透過的に記載した状態を示す図である。
図3】補助バッテリ配置構造100を車両後ろ側から見た状態を示す図である。
図4図2に示す補助バッテリ配置構造100を車両上側から見た状態を示す図である。
図5】従来の補助バッテリ配置構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0014】
本発明に係る自動車の補助バッテリ配置構造100(以下、補助バッテリ配置構造100とする。)は、自動車に補助バッテリを配置するとともに、補助バッテリを配置する付近に作用する力に対する強度を向上させるものである。ここで、自動車の補助バッテリとは、走行に使用する駆動用バッテリとは異なり、エアコンディショナやオーディオ、その他のアクセサリに電力を共有するためのバッテリをいう。なお、駆動用バッテリを搭載する自動車としては、例えば、ハイブリッド型の自動車がある。
【0015】
第1 自動車AMの構成
補助バッテリ配置構造100が形成される自動車AMの構成について、図1図4を用いて説明する。なお、補助バッテリ配置構造100が搭載される車両後輪付近の斜視図を図1に、図1においてフロアパネルFPを透過的に記載した状態を図2に、補助バッテリ配置構造100を車両後ろ側から見た状態を図3に、図2に示す補助バッテリ配置構造100を車両上側から見た状態を図4に、それぞれ示す。なお、各図では、補助バッテリ保持部105に搭載する補助バッテリBT、及び、透過的に記載するフロアパネルFPを点線で示す。
【0016】
図1に示すように、ホイールハウスHHに対して車両内側にサイドメンバSMが車両前後方向に沿って配置されている。サイドメンバSMの上端面に沿って、フロアパネルFPが配置されている。図2に示すように、自動車AMの左後輪のホイールハウスHHの車両内側の端面に沿って、インナパネルIPが、車両後方に向かって接続されている。フロアパネルFPは、インナパネルIPの上端面に沿って配置されている。
【0017】
第2 補助バッテリ配置構造100の構成
図2に示すように、補助バッテリ配置構造100は、左後輪のホイールハウスHHに対して車両後ろ側に形成される。補助バッテリ配置構造100は、第1支持部101、第2支持部103、及び、補助バッテリ保持部105を有している。
【0018】
第1支持部101は、断面矩形状の筒状形状を有している。第1支持部101は、ホイールハウスHHに対して車両後ろ側に位置する。また、図3に示すように、第1支持部101では、車両中央側の面P101aが、インナパネルIPの車両外側の面P1に接続される。つまり、第1支持部101は、インナパネルIPに対して、車両外側に配置される。なお、第1支持部101は、インナパネルIPを介して、ホイールハウスHHに接続される。
【0019】
図2に戻って、第2支持部103は、箱形形状を有している。また、図3に示すように、第2支持部103では、車両内側の面P103aが、インナパネルIPの車両内側の面P3に接続される。また、第2支持部103では、車両内側の面P103bが、サイドメンバSMの車両内側の面P5に接続される。つまり、第2支持部103は、インナパネルIPに対して、車両内側に、また、サイドメンバSMに対して車両側に、配置される。
【0020】
図1に戻って、補助バッテリ保持部105は、補助バッテリBT(点線)の下部を包含する箱形形状を有している。図3に示すように、補助バッテリ保持部105は、第1支持部101、及び、第2支持部103に対して車両上側に配置される。また、補助バッテリ保持部105では、車両下側の面P105が、フロアパネルFPを介して、第1支持部101の上端面P101cに、及び、第2支持部103の上端面P13cに、それぞれ接続される。つまり、補助バッテリ保持部105は、第1支持部101と第2支持部103とを接続するように配置される。
【0021】
補助バッテリ保持部105は、インナパネルIPより車両外側に補助バッテリBTを保持する。つまり、補助バッテリBTは、インナパネルIPに対して車両外側で、第1支持部101によって下側から支持されるように配置される。
【0022】
第3 補助バッテリ配置構造100の作用
図2に示すように、補助バッテリ配置構造100を用いることによって、補助バッテリBTを、フロアパネルFP上の、ホイールハウスHHに対し車両後ろ側、インナパネルIPに対して車両外側の空間に配置することができる。これにより、インナパネルIPより車両内側の荷室空間を従来通り広く使える、つまり、車両内の空間を有効活用できる。
【0023】
ここで、第1支持部101を用いることなく、補助バッテリBTをホイールハウスHHに対し車両後ろ側、インナパネルIPに対して車両外側の空間に配置したとすると、フロアパネルFPのインナパネルIPに対して車両外側の領域は、インナパネルIPに対して片持ち梁となるため、重量物である補助バッテリBTをフロアパネルFPに配置すると、片持ち梁となるフロアパネルFPが振動し、補助バッテリBTの固定が緩んでくる。一方、第1支持部101を配置することによって、補助バッテリBTを下側から支持するとともに、片持ち梁となるフロアパネルFPも下側から支持することになるため、フロアパネルFPの振動を低減でき、ひいては、補助バッテリBTの固定を維持することができる。まお、補助バッテリ保持部105は、インナパネルIPに対して車両内側において、フロアパネルFPを介して第2支持部103に接続されている。これにより、補助バッテリ保持部105と第2支持部103とで、フロアパネルFPを挟持して保持するため、フロアパネルFPの振動をさらに低減できる。
【0024】
また、図4に示すように、追突のように、車両に対して後側から力Fが作用した場合、力Fは、サイドメンバSMに作用し、サイドメンバSMが変形する。さらに、力Fは、サイドメンバSMから、第2支持部103、そして、補助バッテリ保持部105に向かう矢印a1方向へ伝達する。つまり、力Fは、サイドメンバSMから分岐する第2支持部103によって一部が車両外側に向かって伝達し、さらに、インナパネルIPを介して、矢印a3方向に沿ってホイールハウスHHへ伝達する。ホイールハウスHHは、強度が高いため、結果的に、車両後ろ側から作用した力Fに対して、サイドメンバSMだけでなく、ホイールハウスHHにも伝達できる。つまり、車両後ろ側から作用する力を、サイドメンバSMだけに集中的に作用させるのではなく、ホイールハウスHH等、他の部材にも分散的に作用させることができるので、サイドメンバSMの変形を低減することができる。つまり、車体の強度を向上させることができる。
【0025】
このように、補助バッテリ配置構造100を用いることによって、補助バッテリBTを、フロアパネルFP上の、ホイールハウスHHに対し車両後ろ側、インナパネルIPに対して車両外側の空間に配置し、荷室空間を従来通り広く使え、車両内の空間を有効活用できとともに、車両後ろ側から作用する力に対して、サイドメンバSMの変形を低減し、車体の強度を向上させることができる
【0026】
[他の実施形態]
(1)補助バッテリ配置構造100の形成位置:前述の実施例1における補助バッテリ配置構造100は、左後輪のホイールハウスHHに対して車両後ろ側に形成される。としたが、右後輪のホイールハウスに対して車両後ろ側に形成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
100 補助バッテリ配置構造
101 第1支持部
P101c 上端面
103 第2支持部
P103c 上端面
105 補助バッテリ保持部
AM 自動車
BT 補助バッテリ
HH ホイールハウス
IP インナパネル
SM サイドメンバ
FP フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5