(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような蒸発燃料処理装置が搭載された車両に給油する際には、燃料タンク内の蒸発燃料が給油口から大気に放出されることを防ぐため、給油前に封鎖弁を開いて燃料タンクの内圧を減圧する減圧制御が行われる。また、燃料タンクの満タン時にベーパ通路を閉鎖することによって燃料タンクとベーパ通路の連通を遮断する弁装置として、フロート式の弁体を持つORVRバルブ(Onboard Refueling Vapor Recovery valve)と称される弁装置が設けられていることが多い。この弁装置は燃料タンクが非満タンの通常時には弁体が重力により弁座から下方に離れてベーパ通路を開放しているが、封鎖弁が開弁してベーパ通路の流量が限界まで増加すると弁体が弁座側に吸い寄せられてベーパ通路を閉鎖する現象が起こる。
【0005】
そのため、燃料タンクの減圧制御においてはフロート式の弁装置によってベーパ通路が閉鎖されないようにベーパ通路の流量が制御される。ベーパ通路の流量は封鎖弁の開度及び燃料タンクの内圧で決まるが、封鎖弁の開弁開始位置を基準として封鎖弁の開度を決める場合、開弁開始位置が誤学習されていたり、開弁開始位置が記憶されていなかったりした場合には封鎖弁を意図した開度に制御できない。その結果として、減圧制御の際にペーパ通路が閉鎖される上述の現象が起こって減圧制御が完了できない可能性がある。燃料タンクの減圧制御の完了をフューエルリッドの開放条件として給油を許可する車両の場合、減圧制御が完了しなければフューエルリッドが開かれずに給油口にユーザがアクセスできないためユーザによる給油が物理的に不可能となる。
【0006】
そこで、本発明は、封鎖弁の開弁開始位置に関する学習処理の実施の有無及び学習結果の有無に関わらずに給油前の減圧制御を行うことができ、ベーパ通路の閉鎖によって減圧制御が完了できない事態を回避できる蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蒸発燃料処理装置は、車両の燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、前記キャニスタと前記燃料タンクとを接続するベーパ通路と、前記ベーパ通路に設けられ、前記ベーパ通路を流れる蒸発燃料の流量を調整できるように開度変更可能な封鎖弁と、前記燃料タンクの燃料レベルに応じたフロート式の弁体の変位を利用して前記ベーパ通路を開閉する弁装置と、前記燃料タンクへの給油前に
当該燃料タンクの内圧が減圧されるように前記封鎖弁を制御する減圧制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記燃料タンクへの給油前において前記内圧が所定値を超える場合、前記ベーパ通路の流量が前記弁装置の前記弁体にて前記ベーパ通路が閉鎖される限界流量を超えない範囲で前記内圧の減圧が進行し、かつ前記内圧が低くなるほど前記封鎖弁の開弁速度が速くなるように前記内圧を監視しながら前記減圧制御を行うものである。
【0008】
この蒸発燃料処理装置によれば、燃料タンクの内圧を監視しながら減圧制御が行われるので、封鎖弁の開弁開始位置を基準として封鎖弁を制御する必要がない。したがって、封鎖弁の開弁開始位置に関する学習処理の実施の有無及び学習結果の有無に関わらずに減圧制御を行うことができる。また、フロート式の弁体にてベーパ通路が閉鎖される限界流量を超えない範囲で減圧制御が行われるので、ベーパ通路の閉鎖によって燃料タンクの減圧制御が完了できない事態を回避できる。さらに、燃料タンクの内圧が低くなるほど封鎖弁の開弁速度が速くなるように制御されるので、一定の開弁速度で減圧制御を行う場合よりも短時間で減圧制御が完了する。
【0010】
本発明の蒸発燃料処理装置の一態様において
は、前記内圧に関し、その大きさ毎に段階分けされた複数の判定領域が設定されており、前記制御手段は、同じ前記判定領域内では前記封鎖弁の開弁速度が一定に維持され、かつ低段階の前記判定領域ほど前記封鎖弁の開弁速度が速くなるように前記減圧制御を行
う。この態様によれば、同じ判定領域内では封鎖弁の開弁速度が一定に維持されるため外乱等によって制御に乱れが生じにくく制御が安定するから減圧制御時にベーパ通路の流量が限界流量を超えるリスクを低減できる。
【0011】
本発明の蒸発燃料処理装置の一態様において、前記制御手段は、前記減圧制御を開始してから前記内圧の変化量が所定量を超えるまで前記ベーパ通路の流量が前記限界流量を超えないことを限度として設定された開弁速度で駆動されるように、前記封鎖弁を制御
する。この態様によれば、燃料タンクの内圧の変化量が所定量に達するまではベーパ通路の流量が限界流量を超えない限度で封鎖弁の開弁速度を速めることができる。これにより、より短時間に減圧制御を完了できる。
【0012】
本発明において、封鎖弁の開弁速度とは、封鎖弁の開方向の動作量の時間微分として定義される速度のみならず、その動作量の所定時間での変化量をも意味する。内圧が低くなるほど開弁速度が速くなるとは、内圧の変化に対して開弁速度が滑らかな曲線を描くように変化する場合だけではない。例えば、開弁速度が一定の区間が段階的に接続された折れ線を描くように変化していて内圧が低い区間の開弁速度が、内圧が高い区間の開弁速度よりも速くなっている場合も内圧が低くなるほど開弁速度が速くなることに含まれる。また、内圧の変化に応じて封鎖弁の動作量が変化する期間内に、開弁速度がゼロつまり封鎖弁が動作停止する期間が存在していても、内圧が低い条件の開弁速度と内圧が高い条件の開弁速度とを比べた場合に前者が後者よりも速くなっている関係が少なくとも成立していれば、内圧が低くなるほど開弁速度が速くなるように封鎖弁が制御されているといえる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の蒸発燃料処理装置によれば、燃料タンクの内圧を監視しながら減圧制御が行われるので封鎖弁の開弁開始位置を基準として封鎖弁を制御する必要がない。したがって、封鎖弁の開弁開始位置に関する学習処理の実施の有無及び学習結果の有無に関わらずに減圧制御を行うことができる。また、フロート式の弁体にてベーパ通路が閉鎖される限界流量を超えない範囲で減圧制御が行われるので、ベーパ通路の閉鎖によって燃料タンクの減圧制御が完了できない事態を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の形態)
図1に示すように、車両1は、走行用駆動源として設けられ、ガソリンエンジンとして構成された内燃機関2と、内燃機関2の燃料であるガソリンを貯留する燃料タンク3とを備えている。燃料タンク3に貯留された燃料Fは燃料ポンプ4にて吸い上げられてフィードパイプ5及び燃料噴射弁6を介して内燃機関2の吸気通路7に供給される。吸気通路7には空気濾過用のエアフィルタ8と吸入空気量を調整するスロットルバルブ9とが設けられている。
【0016】
燃料タンク3には給油用のインレットパイプ10が設けられている。インレットパイプ10の端部には給油口10aが形成されており、給油口10aは給油時にユーザにて取り外し可能なフューエルキャップ11にて塞がれている。フューエルキャップ11は、非給油時には車両1のボデーBに設けられたフューエルリッド12にて隠されている。フューエルリッド12はユーザにて給油ボタン13が押されると後述する減圧制御の完了を条件としてリッド駆動装置14にて開かれる。これにより、フューエルキャップ11へのアクセスが可能となり給油可能な状態になる。燃料タンク3に貯留された燃料Fの残量はフロート式の残量センサ15にて検出される。
【0017】
車両1には燃料タンク3内で発生した蒸発燃料を処理するための蒸発燃料処理装置17が設けられている。蒸発燃料処理装置17は蒸発燃料を吸着する吸着材18aを内蔵するキャニスタ18と、キャニスタ18と燃料タンク3とを接続するベーパ通路19と、ベーパ通路19に設けられていて、ベーパ通路19を閉鎖及び開通可能で、かつベーパ通路19を流れる蒸発燃料の流量を調整できるように開度変更可能な封鎖弁20と、キャニスタ18に設けられ大気に開放する大気連通管21と、大気連通管21を介してキャニスタ18に導入された外気によってキャニスタ18から分離されたパージガスを内燃機関2の吸気通路7に供給するパージ装置22とを備えている。
【0018】
ベーパ通路14と燃料タンク3との接続部には本発明に係る弁装置の一例としてのORVRバルブ23が設けられている。ORVRバルブ23は燃料タンク3内の燃料Fの液面が設置高さにまで達した場合、すなわち燃料タンク3の燃料レベルが限界に達して満タンになった場合にベーパ通路19を閉鎖することによってベーパ通路19と燃料タンク3との連通を遮断する。ORVRバルブ23は、燃料タンク3の燃料レベルが限界に達した場合にベーパ通路19を塞ぐフロート式の弁体23aと、閉弁時に弁体23aが密着する弁座23bとを備えている。
図1に示したように、燃料タンク3が非満タン時には弁体23aが重力により弁座23bから下方に離れてベーパ通路19を開放している。もっとも、封鎖弁20が開弁してベーパ通路19の流量が限界流量を超えるまで増加すると弁体23aが弁座23b側に吸い寄せられてORVRバルブ23がベーパ通路19を閉鎖する現象が起こる場合がある。
【0019】
パージ装置22は、キャニスタ18と内燃機関2の吸気通路7とを接続してパージガスを内燃機関2に導くためのパージ通路25と、パージ通路25に設けられたパージコントロールバルブ26とを備えている。パージコントロールバルブ26は吸気通路7の負圧によって動作するバキュームスイッチングバルブ(VSV)として構成されている。パージコントロールバルブ26が開弁すると大気連通管21を介してキャニスタ18に外気が導かれて上述したパージガスが内燃機関2の吸気通路7に供給される。なお、キャニスタ18に導入される外気は大気連通管21に設けられたエアフィルタ21aにて濾過される。
【0020】
大気連通管21とキャニスタ18との接続部にはキーオフポンプ27が設けられている。キーオフポンプ27はキャニスタ18や燃料タンク3等の検査対象の穴あき等の異常を検出する検査を行うために設けられている。キーオフポンプ27はその検査時に駆動されるポンプの他にキャニスタ18内の圧力を測定する圧力センサ28を内蔵している。また、燃料タンク3内の圧力(内圧)は燃料タンク3に設けられた本発明に係る検出手段の一例としての圧力センサ29にて測定される。
【0021】
図2に詳細を示した封鎖弁20は、閉状態でベーパ通路19を閉鎖するとともに、開状態でベーパ通路19の開通を許容しかつ開状態での開度を変化させることにより蒸発燃料の流量を制御可能な流量制御弁として構成されている。
図2に示すように、封鎖弁20は、ケーシング30と、ケーシング30に収められた弁体31と、弁体31を駆動するステッピングモータ32とを備えている。
【0022】
ケーシング30には、蒸発燃料が流入する流入路41と、蒸発燃料が流出する流出路42と、流入路41及び流出路42のそれぞれと通じていて弁体31が収納される弁室43とが形成されている。弁体31は流入路41を閉鎖可能な内側弁部51と、内側弁部51を囲むように配置され、
図2の上側が閉鎖されかつ下側が開放されたガイド部52とを含んでいる。内側弁部51とガイド部52とは、互いに軸線Axの方向に相対移動可能な状態で軸線Axを中心として同心状に組み合わされている。内側弁部51の下端には例えば合成ゴムで構成されたシール部材54が設けられており、シール部材54は流入路41の開口位置に設けられたケーシング30の弁座60に密着して流入路41を閉鎖できる。
【0023】
内側弁部51とガイド部52との間には、内側弁部51を弁座60側に付勢するコイルばね55が圧縮状態で設けられている。ガイド部52は軸線Axの方向に移動可能な状態で、かつ軸線Axの回りを回転不能な状態でケーシング30に設けられている。また、ガイド部52とケーシング30との間にはコイルばね56が圧縮状態で設けられている。このコイルばね56の弾性力により、ガイド部52は弁座60から離れる方向に付勢されている。ガイド部52の上部には雌ねじ部57が設けられている。雌ねじ部57に形成された雌ねじ57aはステッピングモータ32の出力軸58に形成された雄ねじ58aと噛み合っている。これにより、ステッピングモータ32の動作量に応じて弁体31のガイド部52は矢印Xで示した開方向及びその反対方向の閉方向に移動する。
【0024】
図2の状態は、弁体31のガイド部52の下端が弁座60に接触する閉方向の限界に位置しかつベーパ通路19が閉鎖される初期位置の状態である。この初期位置では、内側弁部51のシール部材54がコイルばね55の弾性力によって弁座60に押し付けられていて封鎖弁15は閉状態にある。初期位置からガイド部52が開方向に移動するようにステッピングモータ32が駆動されるとガイド部52の下端が弁座60から離れ始める。そして、さらに開方向の動作量が増加するとガイド部52に設けられて内向きに突出する突出部52aと、内側弁部51に設けられて外向きに突出する突出部51aとが突き当たる。これらの突出部52a、51aが互いに突き当るまでは、内側弁部51のシール部材54が弁座60に押し付けられた閉状態に維持される。さらに、これらの突出部52a、51aが互いに突き当たった状態でガイド部52が開方向に動作すると、ガイド部52と内側弁部51とが一緒に開方向に移動し、内側弁部51のシール部材54が弁座60から離れる。これにより流入路41が開放されるので、流入路41と流出路42とが弁室43を介して互いに連通し、ベーパ通路19の開通が許容される。
【0025】
このように、封鎖弁20が初期位置から開方向に動作してガイド部52の突出部52aと内側弁部51の突出部51aとが互いに突き当たるまでは閉状態に維持される。そのため、初期位置から開方向に動作して突出部52a、51aが互いに突き当たるまでの封鎖弁20の動作範囲が閉弁範囲であり、本発明に係る不感帯の一例に相当する。そして、これらの突出部52a、51aが互いに突き当たった状態でガイド部52が開方向に動作して内側弁部51のシール部材54が弁座60から離れる位置が本発明に係る開弁開始位置の一例に相当する。
【0026】
この開弁開始位置は、封鎖弁20のガイド部52や内側弁部51等の公差やこれらの経年変化によってばらつきが生じる。そのため、封鎖弁20に固有の開弁開始位置を検出して記憶する学習処理が実施される。一例として、この学習処理は、
図1に示した内燃機関2の運転状態を制御するコンピュータとして構成されたエンジンコントロールユニット(ECU)70にて行われる。
【0027】
図1に示したように、ECU70には、キーオフポンプ27に内蔵された圧力センサ28の出力信号と燃料タンク3に設けられた圧力センサ29の出力信号とが入力される。ECU70は、これらの出力信号に対応する圧力の測定値を監視しながら封鎖弁20のステッピングモータ32を操作して開弁開始位置の学習処理を行う。例えば、
図3に示すように、ECU70は、封鎖弁20の開方向の動作量(バルブリフト量)を初期位置から階段状に徐々に増加させる。一回あたりの増加量はステッピングモータ32の数ステップの回転量(例えば4ステップ)として適宜設定される。ECU70は、封鎖弁20の開方向の動作によってキャニスタ18内の圧力(システム圧力)の規定圧ΔA以上の上昇又は燃料タンク3の内圧(タンク圧力)の規定圧ΔB以上の降下を検出した場合に、その一回前の動作量を開弁開始位置の学習値として記憶する。
【0028】
また、ECU70は、給油時に燃料タンク3内の蒸発燃料が給油口10aから大気に放出されることを防ぐため、燃料タンク3への給油前に封鎖弁20を開いて燃料タンク3の内圧を減圧する減圧制御を行う。
【0029】
図4は、ECU70が実行する制御ルーチンの一例を示している。
図4の制御ルーチンのプログラムはECU70にて適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ECU70は、
図4の制御ルーチンを実行することによって本発明に係る制御手段の一例として機能する。
【0030】
ステップS1において、ECU70は給油スイッチ13がONされたか否かを判定する。給油スイッチ13がONされた場合はステップS2に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0031】
ステップS2において、ECU70は、初期ステップ数STP1までステッピングモータ32を高速駆動する。初期ステップSTP1は、封鎖弁20の不感帯に設計上確実に収まる初期位置(
図2参照)からの開方向の動作量を与えるステッピングモータ32のステップ数として予め設定されている。一般に、ステッピングモータは1つのパルスが供給されると1ステップ動作するので、ステッピングモータ32に供給されるパルス間の時間を駆動周期と定義した場合、封鎖弁20の開弁速度を駆動周期で表すことができる。駆動周期が短いほど封鎖弁20の開弁速度は速く、駆動周期が長いほど封鎖弁の開弁速度は遅くなる。ステップS2の高速駆動においては、駆動周期として例えば6[ms]の一定値に設定される。
【0032】
ステップS3において、ECU70は、燃料タンク3に設けられた圧力センサ29の出力信号を参照して燃料タンク3の内圧PTを取得する。次に、ステップS4において、ECU70は燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも高いか否かを判定する。所定値PTaは、封鎖弁20がどのような開度で開弁されてもベーパ通路19の流量がORVRバルブ23にてベーパ通路19が閉鎖される限界流量を超えることがない燃料タンク3の内圧PTの上限値として適宜に設定される。
【0033】
したがって、燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも高い場合は、封鎖弁20の開度によっては限界流量に達する可能性があるのでステップS5に処理を進める。一方、内圧PTが所定値PTa以下の場合は封鎖弁20をどのような開度で開弁しても限界流量を超えることがないのでステップS7に進んで、ECU70は目標ステップ数STPtまでステッピングモータ32を高速駆動して減圧制御を完了する。目標ステップ数STPtは燃料タンク3の減圧が十分に可能な封鎖弁20の開度を与えるステッピングモータ32のステップ数であり、例えば封鎖弁20が全開となるステップ数として設定される。ステップS7の高速駆動においては、駆動周期として例えば6[ms]の一定値に設定される。次のステップS8において、ECU70はフューエルリッド12が開かれるようにリッド駆動装置14を制御する。これにより、燃料タンク3への給油が可能となる。そして、ルーチンを終了する。
【0034】
ステップS5において、ECU70は測定時の内圧PTでベーパ通路19の流量が限界流量を超えない範囲で封鎖弁20の駆動周期txを算出する。この駆動周期txの算出は、例えば、実機試験やシミュレーション等に基づいて作成されて内圧PTを変数として限界流量を超えない範囲で封鎖弁20の駆動周期txを与えるデータ構造を持つマップ(不図示)をECU70が検索することにより実現される。そのマップには、燃料タンク3の内圧PTが低いほど駆動周期txが短くなるように、つまり内圧PTが低いほど封鎖弁20の開弁速度が速くなるように、内圧PTと駆動周期とが設定されている。
【0035】
ステップS6において、ECU70はステップS5で算出された駆動周期txで所定ステップ数だけステッピングモータ32を駆動して、処理をステップS3に戻す。所定ステップ数はECU70の演算速度などを考慮して適宜に定められ、所定ステップ数として例えば5ステップに設定される。ステップS3〜ステップS6の処理は、ステップS4で内圧PTが所定値PTa以下であると判定されるまで繰り返される。ステップS5では燃料タンク3の内圧PTが低いほど短い駆動周期が算出されるので、ステップS3〜ステップS6の処理が繰り返されることにより、燃料タンク3の内圧PTを監視しながらベーパ通路19の流量が限界流量を超えない範囲で燃料タンク3の内圧PTが低くなるほど封鎖弁20の開弁速度が速くなるように減圧制御が実施される。
【0036】
図5はECU70が実行した制御結果の一例を模式的に示している。
図5に示すように、時刻t0で給油スイッチ13がONされると、初期ステップ数STP1に到達する時刻t1まで封鎖弁20が高速駆動される。初期ステップ数STP1は、封鎖弁20の不感帯内に設定されているため、時刻t0から時刻t1まで封鎖弁20は閉状態に維持される。時刻t1で初期ステップ数STP1に到達すると、このケースでは時刻t1における燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも大きいので取得した内圧PTに応じて計算された駆動周期txにて封鎖弁20の駆動が開始される。駆動周期txでの駆動は内圧PTが所定値PTa以下になる時刻t2まで継続する。時刻t2で内圧PTが所定値PTaに到達すると高速駆動に切り替えられて、時刻t2から目標ステップ数STPtに到達する時刻t3まで封鎖弁20は高速駆動される。本形態では、目標ステップ数STPtに到達した時から所定時間Tを経過することを条件として減圧制御の完了と判断し、時刻t4でリッド駆動装置14が操作されてフューエルリッド12が開かれる。なお、内圧PTに基づいて減圧制御の終了を判定してもよい。
【0037】
本形態によれば、燃料タンク3の内圧PTを監視しながら減圧制御が行われるので、必ずしも封鎖弁20の開弁開始位置を基準として封鎖弁20を制御する必要がない。したがって、封鎖弁20の開弁開始位置の学習結果に依存せずに給油前の減圧制御を行うことができる。また、ORVRバルブ23に設けられたフロート式の弁体23aにてベーパ通路19が閉鎖される限界流量を超えない範囲で駆動周期txが算出されて減圧制御が行われるので、ORVRバルブ23によるベーパ通路19の閉鎖によって燃料タンク3の減圧制御が完了できない事態を回避できる。さらに、燃料タンク3の内圧PTが低くなるほど封鎖弁20の開弁速度が速くなるように制御されるので、一定の開弁速度で減圧制御を行う場合よりも短時間で減圧制御が完了する。
【0038】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態を
図6及び
図7を参照しながら説明する。第2の形態は減圧制御の内容を除いて第1の形態と共通する。したがって、以下においては物理的構成等の第1の形態との共通部分の説明を省略し、上述した第1の形態の説明及び図面が適宜参照される。
【0039】
第2の形態の制御はECU70が
図6の制御ルーチンを実行することにより実現され、ECU70は本発明に係る制御手段の一例として機能する。第2の形態では、上述した封鎖弁20の開弁開始位置の学習処理によってECU70が記憶する開弁開始位置の学習値を利用した減圧制御を実施する。
図6の制御ルーチンのプログラムはECU70にて適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。
【0040】
ステップS11において、ECU70は給油スイッチ13のONを判定し、給油スイッチ13がONの場合はステップS12に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップしてルーチンを終了する。
【0041】
ステップS12において、ECU70は封鎖弁20の開弁開始位置の学習処理が実施済みであるか否かを判定する。学習処理が実施済みであり開弁開始位置を学習値と記憶している場合、ECU70はステップS13において、初期位置から開弁開始位置までのステップ数である初期ステップ数STP2まで高速駆動する。この場合の駆動周期は例えば6msに設定されている。一方、学習処理が未実施の場合、ECU70はステップS14において、第1の形態と同様に封鎖弁20の不感帯に設計上収まる初期ステップ数STP1まで高速駆動、例えば6msの駆動周期で駆動する。
【0042】
ステップS15〜ステップS20の処理は、第1の形態の
図4のステップS3〜ステップS8の処理と同じであるので説明を省略する。
【0043】
第2の形態によれば、第1の形態と同様の効果が得られる。さらに、第2の形態によれば、
図7から明らかなように、学習処理が実施済みで封鎖弁20の開弁開始位置が記憶されている場合には、学習処理が未実施の場合の初期ステップ数STP1よりも多い初期ステップ数STP2まで高速駆動される。すなわち、開弁開始位置までの封鎖弁20の開弁速度が開弁開始位置を超えてからの開弁速度よりも速くなる。そのため、開弁開始位置が記憶されている場合は短時間で不感帯を通過できる。したがって、減圧制御の完了までの時間をさらに短縮できる。
【0044】
(第3の形態)
次に、本発明の第3の形態を
図8及び
図9を参照しながら説明する。第3の形態は減圧制御の内容を除いて第1の形態と共通する。したがって、以下においては物理的構成等の第1の形態との共通部分の説明を省略し、上述した第1の形態の説明及び図面が適宜参照される。
【0045】
第3の形態の制御はECU70が
図8の制御ルーチンを実行することにより実現され、ECU70は本発明に係る制御手段の一例として機能する。第3の形態では、燃料タンク3の内圧に関して、その大きさ毎に段階分けされた複数の判定領域を設定し、各判定領域で封鎖弁20の開弁速度を一定に維持して減圧制御を行う。
図8の制御ルーチンのプログラムはECU70にて適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。
【0046】
ステップS21において、ECU70は給油スイッチ13のONを判定し、給油スイッチ13がONの場合はステップS22に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップしてルーチンを終了する。ステップS22において、ECU70は、上述した初期ステップ数STP1までステッピングモータ32を高速駆動する。ステップS22の高速駆動においては、駆動周期として例えば6[ms]の一定値に設定される。ステップS23において、ECU70は、燃料タンク3に設けられた圧力センサ29の出力信号を参照して燃料タンク3の内圧PTを取得する。
【0047】
ステップS24〜ステップS31の処理によって、ECU70は燃料タンク3の内圧PTに関して、大きさ毎に段階分けされた複数の判定領域を設定し、判定領域毎に設定された一定の駆動周期で封鎖弁20を駆動する。本形態では、
図9にも示したように、内圧PTに関して4つの判定領域Ra〜Rdが設定され、判定領域毎に4つの駆動周期A〜Dが設定されている。各駆動周期A〜Dは、各判定領域Ra〜Rdの内圧PTにおいてベーパ通路19の流量が限界流量を超えない範囲内の駆動周期として設定されている。これらの詳細は以下の通りである。
【0048】
・判定領域Ra:PT≦PTa、駆動周期A
・判定領域Rb:PTb<PT≦PTc、駆動周期B
・判定領域Rc:PTc<PT≦PTd、駆動周期C
・判定領域Rd:PT>PTd、駆動周期D
ただし、各閾値PTa〜PTdには、PTa<PTb<PTc<PTdの関係が成立し、各駆動周期A〜Dには、A<B<C<Dの関係が成立している。
【0049】
ステップS24において、ECU70は燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも高いか否かを判定する。所定値PTaは第1の形態のものと同じであるから、燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも高い場合は、ベーパ通路19の流量が限界流量を超えないようにステップS25〜ステップS31の処理を実施する。一方、燃料タンク3の内圧PTが所定値PTa以下の場合は封鎖弁20をどのような開度で開弁しても限界流量を超えることがないのでステップS32に進んで、ECU70は目標ステップ数STPtまでステッピングモータ32を高速駆動して減圧制御を完了する。そして、ステップS33において、ECU70はフューエルリッド12が開かれるようにリッド駆動装置14を制御してルーチンを終了する。
【0050】
ステップS25において、ECU70は内圧PTが所定値PTdよりも高いか否かを判定し、内圧PTが所定値PTdよりも高い場合、すなわち上記判定領域Rdに属する場合はステップS26で駆動周期Dにて封鎖弁20を駆動してステップS23に処理を戻す。一方、内圧PTが所定値PTd以下の場合はステップS27に進む。
【0051】
ステップS27において、ECU70は内圧PTが所定値PTcよりも高いか否かを判定し、内圧PTが所定値PTcよりも高い場合、すなわち上記判定領域Rcに属する場合はステップS28で駆動周期Cにて封鎖弁20を駆動してステップS23に処理を戻す。一方、内圧PTが所定値PTc以下の場合はステップS29に進む。
【0052】
ステップS29において、ECU70は内圧PTが所定値PTbよりも高いか否かを判定し、内圧PTが所定値PTbよりも高い場合、すなわち上記判定領域Rbに属する場合はステップS30で駆動周期Bにて封鎖弁20を駆動してステップS23に処理を戻す。一方、内圧PTが所定値PTb以下の場合は上記判定領域Raに属することになるので、ステップS31で駆動周期Aにて封鎖弁20を駆動してステップS23に処理を戻す。
【0053】
ステップS23〜ステップS31の処理はステップS24で内圧PTが所定値PTa以下であると判定されるまで繰り返される。そのため、
図9を参照すれば明らかなように、各判定領域Ra〜Rdについて同じ判定領域内では駆動周期が一定に維持され、かつ低段階の判定領域ほど駆動周期が短くなっている。換言すれば、本形態の減圧制御においては、各判定領域Ra〜Rdについて同じ判定領域内では封鎖弁20の開弁速度が一定に維持され、かつ低段階の判定領域ほど封鎖弁20の開弁速度が速くなる。
【0054】
第3の形態によれば第1の形態と同様の効果が得られる。さらに、第3の形態によれば、同じ判定領域内では封鎖弁20の開弁速度が一定に維持されるため外乱等によって制御に乱れが生じにくく制御が安定するから減圧制御時にベーパ通路19の流量が限界流量を超えるリスクを低減できる。
【0055】
(第4の形態)
次に、本発明の第4の形態を
図10及び
図11を参照しながら説明する。第4の形態は減圧制御の内容を除いて第1の形態と共通する。したがって、以下においては物理的構成等の第1の形態との共通部分の説明を省略し、上述した第1の形態の説明及び図面が適宜参照される。
【0056】
第4の形態の制御はECU70が
図10の制御ルーチンを実行することにより実現され、ECU70は本発明に係る制御手段の一例として機能する。第4の形態では、減圧制御を開始してから燃料タンク3の内圧の変化量が所定量を超えるまで封鎖弁20の開弁速度をベーパ通路19の流量が限界流量を超えない限度の速度に設定する。
図10の制御ルーチンのプログラムはECU70にて適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。
【0057】
ステップS41において、ECU70は給油スイッチ13のONを判定し、給油スイッチ13がONの場合はステップS42に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップしてルーチンを終了する。ステップS42において、ECU70は、上述した初期ステップ数STP1までステッピングモータ32を高速駆動する。ステップS42の高速駆動においては、駆動周期として例えば6[ms]の一定値に設定される。ステップS43において、ECU70は、燃料タンク3に設けられた圧力センサ29の出力信号を参照して燃料タンク3の内圧PTを取得する。
【0058】
ステップS44において、ECU70は燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも高いか否かを判定する。所定値PTaは第1の形態のものと同じであるから、燃料タンク3の内圧PTが所定値PTaよりも高い場合は、ベーパ通路19の流量が限界流量を超えないようにステップS45〜ステップS49の処理を実施する。一方、燃料タンク3の内圧PTが所定値PTa以下の場合は封鎖弁20をどのような開度で開弁しても限界流量を超えることがないのでステップS50に進んで、ECU70は目標ステップ数STPtまでステッピングモータ32を高速駆動して減圧制御を完了する。そして、ステップS51において、ECU70はフューエルリッド12が開かれるようにリッド駆動装置14を制御してルーチンを終了する。
【0059】
ステップS45において、ECU70は燃料タンク3の内圧PTの変化量ΔPTを算出する。変化量ΔPTは、
図11に示したように減圧制御の開始時の燃料タンク3の内圧である初期内圧PTiと現在の内圧PTとの差分として定義される。
【0060】
ステップS46において、ECU70は変化量ΔPTが所定量PJDよりも大きいか否かを判定する。所定量PDJは、燃料タンク3の内圧PTの変化が封鎖弁20の開弁による減圧であると判断可能となる値として適宜に設定される。変化量ΔPTが所定量PDJよりも大きい場合はステップS47に進み、ECU70はステップS47で第1の形態と同様に駆動周期txを算出し、次のステップS48で駆動周期txにて封鎖弁20を駆動して処理をステップS43に戻す。
【0061】
一方、変化量ΔPTが所定量PJD以下の場合は、封鎖弁20の開弁による減圧が開始していないと判断できる。そこで、ECU70は、ステップS49において、ベーパ通路19の流量が限界流量を超えない限度で可能な限り開弁速度が速くなるように設定された駆動周期Eにて封鎖弁20を駆動して処理をステップS43に戻す。これにより、ステップS46において内圧PTの変化量ΔPTが所定値PJDを超えると判定されるまでは封鎖弁20の開弁速度は維持される。したがって、
図11と第1の形態の
図5とを比較すれば理解できるように、第4の形態の場合は初期ステップ数STP1に到達した時刻t1から時刻t1′までは駆動周期Eにて駆動されるので、第1の形態の場合と比べて燃料タンク3の内圧PTの変化に応じた制御の開始時期t1′が遅くなり、かつその制御期間t1′〜t2も短くなる。
【0062】
第4の形態によれば第1の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第4の形態によれば、燃料タンク3の内圧PTの変化量ΔPTが所定量PJDに達するまではベーパ通路19の流量が限界流量を超えない限度で封鎖弁20の開弁速度を速めることができる。これにより、より短時間に減圧制御を完了できる。
【0063】
本発明は上記各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。上記各形態の封鎖弁20は一例にすぎず、開方向の不感帯を設計上持っていない弁を採用してもよい。また、開方向の不感帯を有する弁であっても、上記各形態の封鎖弁20の構造とは異なり、例えば、貫通流路が形成された球状の弁体と、その弁体を回転可能に保持しベーパ通路に通じている弁座とを有し、弁体をモータで回転させることにより開度調整可能であるボールバルブを封鎖弁として採用できる。
【0064】
また、上記各形態のように設計上の不感帯を有する封鎖弁であるか否かを問わず、本発明は封鎖弁の開弁開始位置を学習する学習処理の実施を前提とするものではない。したがって、上記各形態とは異なり封鎖弁の開弁開始位置の学習処理を実施しない形態の蒸発燃料処理装置として本発明を実施することもできる。