(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2キャップの前記第1液出口と前記第2液出口の少なくとも一方の液出口が、前記円筒ケースハウジングの軸方向と異なる方向に形成され、前記集水管の前記円筒ケースハウジングの第2端部側の開口部と連結管で連結されている、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)
図1、
図2の中空糸膜モジュール
中空糸膜モジュール10は、円筒状のケースハウジング11内に多孔筒状体からなる集水管12と中空糸膜束13が収容されている。
またケースハウジング11は、原水入口41を有する第1端部11aと、前記第1端部11aと軸方向反対側の第2端部11bを有し、第1端部11a側が原水入口41を有する第1キャップ40で閉塞され、前記円筒ケースハウジングの第2端部11b側が第1液出口(ろ過水出口)51と第2液出口(濃縮水出口)52を有する第2キャップ50で閉塞されている。
ケースハウジング11の第1端部11aと第2端部11bには、ヘッダー15a又は15bが取り付けられている。これらのヘッダー15a又は15bに対して、第1キャップ40又は第2キャップ50が被せられており、これらの接続は、それぞれの材質に応じて、ねじ合わせ、接着剤による接着、溶接などの方法を適用することができる。
【0012】
ケースハウジング11、集水管12、ヘッダー15a、ヘッダー15b、第1キャップ40、第2キャップ50は、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製や金属製のものを用いることができる。
前記の合成樹脂を使用するときは、ケースハウジング11、集水管12、ヘッダー15a、ヘッダー15b、第1キャップ40、第2キャップ50の強度を高めたり光を遮断したりする目的で、充填剤や顔料等を含有させることができる。
【0013】
ケースハウジング11内では、集水管12の周囲に中空糸膜束13が配置され、少なくとも第2端部11b側の中空糸膜束13が、樹脂封止部35bにて封止用樹脂でケースハウジング11および集水管12と共に一体化されており、好ましくは中空糸膜束13の第1端部11a側と第2端部11b側のそれぞれが、樹脂封止部35a又は35bにて封止用樹脂でケースハウジング11および集水管12と共に一体化されている。
また中空糸膜束13において、中空糸膜束13の第1キャップ40側の端部13aが閉塞され、第2キャップ50側の端部13bが開口され、両端部側が第1キャップ40内部または第2キャップ50内部に面している。
【0014】
中空糸膜束13は、数百〜数千本の公知の中空糸膜が束ねられたものである。
中空糸膜は公知のものであり、外径が好ましくは1〜3mm、より好ましくは1.3〜1.6mmの親水性膜(酢酸セルロースなどのセルロース系膜)または疎水性膜(ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)を使用することができる。
【0015】
中空糸膜束13の第1端部11a側が、樹脂封止部35aにて封止用樹脂で前記円筒ケースハウジングおよび前記集水管と共に一体化されている場合、中空糸膜束13の第1キャップ40内部に面した部分は、封止用樹脂35aを厚さ方向に貫通して形成された複数の原水導入孔14を有してもよい。
複数の原水導入孔14は、封止用樹脂層35aを貫通して形成されているものであり、導入孔の先端部が封止用樹脂で固定されていない中空糸膜束13の内部にまで到達されていてもよいが、封止用樹脂層35bには到達していない。
原水導入孔14の開口面積は特に制限されないが、中空糸膜束13の半径方向の断面積に対して1〜15%の範囲にすることが好ましい。
【0016】
中空糸膜束13の第1端部13a側と第2端部13b側は、中空糸膜束13の間に配置された筒部材30と共に樹脂封止部35a又は35bにて封止用樹脂で一体化されていてもよい。
筒部材30を用いた場合、筒部材30の周壁部31の外周面31aと中空糸膜束13が封止用樹脂で固着されており、集水管12は樹脂と接していない。
なお、集水管12自体の長さをより長くして、筒部材30の長さをより短くすることで、集水管12の端部と筒部材30の両方が樹脂と接触するようにしてもよい。
【0017】
筒部材30は、周壁部31の下方において、下部外周壁部32aと下部内周壁部32bの間に形成された筒状溝部33を有している。
筒部材30の内側には、筒状溝部33と軸方向に対向する位置に環状段差面31cが形成されている。
筒部材30と集水管12は、筒部材30の筒状溝部33内に集水管12の端部が嵌め込まれた状態で固定されている。
【0018】
筒部材30は、目視で反対側の樹脂封止部35a又は35bが容易に見える程度の透明性を有するものにすることができる。
筒部材30を透明にするときは、PET樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂製のものが好ましい。
【0019】
樹脂封止部35a又は35bを形成するために用いる封止用樹脂としては、尿素樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、レソルシノール樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリウレタン接着剤、ビニルウレタン接着剤を挙げることができ、これらの中でもポリウレタン接着剤が好ましい。
【0020】
集水管12は周面に多孔を有する多孔筒状体であり、集水管12は第1キャップ40側と第2キャップ50側が共に開口されている。集水管12は、公知のパイプを使用できるほか、コルゲート管を使用することができる。
集水管(コルゲート管)12は各種分野において汎用されているものであり、
図3及び
図4に示すように、周方向に連続して形成された凹部21と周方向に連続して形成された凸部22が、それぞれ軸方向に交互に形成されたものである。
【0021】
集水管(コルゲート管)12は、
図3に示すように、周面の凹部21に通水孔25を有しているものである。通水孔25は凹部21のみに形成され、凸部22には形成されていない。
【0022】
通水孔21は、1つの凹部21に等間隔で2〜12個形成されていることが好ましく、4〜10個形成されていることがより好ましく、6〜8個形成されていることがさらに好ましい。
例えば、1つの凹部21に10個の通水孔25が形成され、凹部21が全体で100あれば、合計で1000個の通水孔25が形成されていることになる。
表面が平滑な集水管の場合、余りに多くの通水孔を形成すると、集水管自体の強度が低下して実用できなくなるが、集水管12としてコルゲート管を使用すると、凸部22が補強用のリブとして作用することから、表面が平滑な集水管と比べるより多くの通水孔を形成することができる。
【0023】
通水孔25の開口部径は、集水管12の大きさにより調整することができるが、2〜10mmが好ましく、3〜8mmがより好ましく、4〜5mmがさらに好ましい。なお、通水孔25が円形の場合には前記開口部径は内径であり、円形以外の場合には同面積の円に換算したときの内径である。
上記したとおり、コルゲート管を使用することによって、表面が平滑な集水管と比べるとより多くの通水孔25を形成することができるため、通水孔25全体の総開口面積を大きくしたまま(あるいは従来と同程度に維持したまま)、開口部径を小さくすることができる。通水孔25の開口部径を小さくすることで、集水管12から通水孔25へ原水が流出するときの水圧を減少させることができるため、通水孔25に近接する位置にある中空糸膜13への影響を小さくできるので好ましい。
【0024】
通水孔25の総開口面積は、集水管12の半径方向断面積の3倍以上であることが好ましく、3〜6倍であることがより好ましい。なお、集水管12の半径方向断面積は、半径方向に正対する凹部同士間の断面積である。
前記断面積比が3以上であると、集水管12から通水孔25へ原水が流出するときの水圧をより減少させることができるため好ましい。
【0025】
集水管(コルゲート管)12の凹凸部の軸方向断面形状は、
図4(a)、(b)に示すような台形状のものが好ましく、前記台形の角部分は中空糸膜13と接触した場合でも損傷させることがないように丸みを付けたものが好ましい。
図4(a)は、凸部22が閉塞面20で閉塞されたものであり、
図4(b)は、閉塞面20に相当するものがなく、凸部22が開口したものであり、どちらの構造のものでも使用することができる。
軸方向に隣接する凸部22同士の間隔(p
1)は、軸方向に隣接する凹部21同士の間隔と同じであるから、凹部21に形成する通水孔25の開口径を考慮して決定される。
凸部22の高さ(凹部21の深さ)(h
1)は6〜8mm程度にすることができる。
【0026】
中空糸膜モジュール10は、第1液出口(ろ過水出口)51と第2液出口(濃縮水出口)52の少なくとも一方の液出口と、集水管12の第2キャップ50側の開口部とを連結する出口連結管70を有している。
連結管70は、濃縮水出口または濃縮水ラインとして使用され、連結管70と連結する液出口が濃縮水出口となる。また筒部材30を用いる場合、出口連結管70を筒部材30に固定して、集水管12と連結してもよい。
【0027】
出口連結管70は、周壁部71と、集水管に近い開口部側に形成されたフランジ部72を有していてもよい。
出口連結管70は、フランジ部72の半径方向の環状周面73が筒部材30の内周面31bに当接されている。
また、出口連結管70は、フランジ部の環状平面72aが筒部材の環状段差面31cに当接された状態であってもよい。
【0028】
出口連結管70は、連結管のフランジ部72、連結管の周壁部71の外周面、および連結管の周壁部71の外周面に正対する筒部材の内周面31bにより形成される筒状空間(接着部60)内に充填された接着剤により筒部材30に対して固定されている。
【0029】
また出口連結管70の形状及び構造、並びに筒部材30の形状及び構造は、上記とは異なる態様として、特許文献3の
図3、
図4に図示され、段落0031〜0036に記載された態様のものも用いることができる。
【0030】
第2キャップ50において、第1液出口(ろ過水出口)51と第2液出口(濃縮水出口)52は、円筒ケースハウジング11の軸方向、又は軸方向と異なる方向、好ましくは軸方向と直交する方向のいずれに形成されてもよいが、出口連結管70と連結しない液出口(即ち、ろ過水出口51)が円筒ケースハウジング11の軸方向に形成され、出口連結管70と連結する液出口(即ち、濃縮水出口52)が円筒ケースハウジング11の軸方向と異なる方向、好ましくは軸方向と直交する方向に形成されることが好ましい。
【0031】
第2キャップ50において、ろ過水出口51が円筒ケースハウジング11の軸方向に形成され、濃縮水出口52が円筒ケースハウジング11の軸方向と異なる方向、好ましくは軸方向と直交する方向に形成される場合、出口連結管70は、円筒ケースハウジング11の軸方向と異なる方向、好ましくは軸方向と直交する方向に形成された濃縮水出口52と連結される。
出口連結管70は、集水管12の第2キャップ50側の開口部と連結する側に、エルボ管等の屈曲管74を用いて、円筒ケースハウジング11の軸方向と直交する方向に形成された濃縮水出口52と連結されてもよい。屈曲管74は90°のエルボ管を用いても良く、90°以外のエルボ管を用いてもよい。
また屈曲管74と濃縮水出口52との間に可撓性の管(パイプ)75を介して連結されてもよい。可撓性の管(パイプ)75は、可撓性を有する樹脂配管を用いればよく、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン系などのエラストマー樹脂、塩化ビニル樹脂、軟質ポリエチレン樹脂等を用いることができる。
【0032】
第2キャップ50において、出口連結管70と連結する濃縮水出口が円筒ケースハウジング11の軸方向に形成され(例えば、第1液出口51)、出口連結管70と連結しない第2液出口が円筒ケースハウジング11の軸方向と異なる方向、好ましくは軸方向と直交する方向に形成される場合(例えば、第2液出口52)、出口連結管70は、集水管12の第2キャップ50側の開口部と連結する側と反対側が、軸方向に延ばされ、第1液出口51と連結される。
【0033】
第1キャップ40において、原水入口41は、
図1に示すように、円筒ケースハウジング11の軸方向と異なる方向、好ましくは軸方向と直交する方向に形成されていてもよく、
図5に示すように、円筒ケースハウジング11の軸方向に形成されていてもよい。原水入口41の位置は、取り換え容易性の観点から、取り換える内圧式の中空糸膜モジュールの原水入口の位置に応じて、上記態様を選択することができる。
【0034】
第1キャップ40において、原水入口41が円筒ケースハウジング11の軸方向に形成されている場合、
図5、6に示すように、原水入口41と、集水管12の第1キャップ40側の開口部とを入口連結管80で連結させてもよい。入口連結管80を用いることで、集水管12への原水供給が効率的となり、ろ過効率もよくなる。入口連結管80と集水管12を連結させる態様は、上記した出口連結管70と集水管12を連結させる態様と同じであってよい。
【0035】
入口連結管80には、
図5、6に示すように、周面に通水孔81を有しても良い。入口連結管80に通水孔81が形成されると、中空糸膜束13に封止用樹脂35aが厚さ方向に貫通して形成された複数の原水導入孔14を有している場合に、通水孔81を通して、原水を原水導入孔14に供給することができる。集水管12と原水導入孔14へ原水が供給されることで効率の良いろ過が可能となる。
【0036】
通水孔81は、入口連結管80の周面に等間隔で、2〜12個形成されていることが好ましく、4〜8個形成されていることがより好ましい。
通水孔81の開口部径は、入口連結管80の大きさにより調整することができるが、5〜50mmが好ましく、10〜30mmがより好ましい。なお、通水孔81が円形の場合には、前記開口部径は内径であり、円形以外の場合には同面積の円に換算したときの内径である。
【0037】
次に
図1〜
図2に示す中空糸膜モジュールの作製方法を説明する。
本発明の中空糸膜モジュールは、周知の遠心接着法(特開昭51−93788号公報、特開昭52−38797号公報、特開昭61−171503号公報、特開昭61−171504号公報等)のほか、特開2005−52736号公報の段落番号0029〜0031に記載された製造方法、特開2006−281051号公報の段落番号0010〜0024に記載された製造方法を利用することで、集水管12、中空糸膜(束)13、ケースハウジング11、及び筒部材30を封止用樹脂で一体化することで製造することができる。
【0038】
その後、樹脂封止部35bを切断して中空糸膜(束)13の端部を開口させる。なお樹脂封止部35aは、切断により中空糸膜(束)13の端部を開口させない。
その後、出口連結管70を所定位置に配置した状態で、筒状空間(接着部60)内に接着剤を充填して筒部材30に対して固定する。
【0039】
その後、第1キャップ40及び第2キャップ50を取り付ける。キャップ50は、第2液出口(濃縮水出口)52と出口連結管70が連結するようにして、開口周縁部をヘッダー15bに対して嵌め込んで取り付ける。第1キャップ40又は第2キャップ50とヘッダー15a又は15bとの接触部分にもシール部材を介在させることができる。
ここで、第2キャップ50の第2液出口(濃縮水出口)52が円筒ケースハウジング11の軸方向と直交する方向に形成される場合、出口連結管70に屈曲管74と可撓性の管(パイプ)75を用いると、屈曲管74により筒部材30により固定された出口連結管70を軸方向から軸方向と直交する方向に向きを変更でき、また可撓性の管(パイプ)75を介することで濃縮水出口52と容易に連結することができる。
【0040】
集水管として、
図3に示すようなコルゲート管を使用した
図1〜
図2に示す中空糸膜モジュールの濾過運転方法について説明する。
中空糸膜モジュール10の運転時においては、集水管12を通過する源水は、集水管12の凹部21に形成されている通水孔25を通って、中空糸膜束13内部に入り、ろ過される。ここで中空糸膜束13の第1端部11a側が、樹脂封止部35aにて封止用樹脂で円筒ケースハウジング11および集水管12と共に一体化され、中空糸膜束13に封止用樹脂35aを厚さ方向に貫通して形成された複数の原水導入孔14を有している場合、原水が中空糸膜束13の中心部と中心部以外の周囲にも供給されながらろ過されることから、原水流の偏りが小さくなるため、中空糸膜の表面に懸濁物質に由来する堆積物層も形成され難くなり、ろ過効率もよくなる。
【0041】
その後、中空糸膜束13で濾過して得られたろ過水は、第2キャップ50内の空間53内を満たした後、第1液出口(ろ過水出口)51を経て排水されるか、又は透過水タンクに送られて貯水される。透過水タンクに貯水された透過水は中空糸膜束13の逆圧洗浄等に再利用することができる。
また透過水の生成に伴って生じる濃縮水は、集水管12、集水管12の端部に接続された筒部材30、出口連結管70および第2液出口(濃縮水出口)52を経て排水される。
【0042】
本発明の外圧式の中空糸膜モジュール10は、内圧式の中空糸膜モジュールを用いた水処理システムにおいて、被処理水(原水)の濁度が高まった場合に、内圧式の中空糸膜モジュールと、原水入口、ろ過水出口及び濃縮水出口の位置が同じであるため、中空糸膜モジュール外の配管の取り付けに工夫を要せず、内圧式の中空糸膜モジュールから外圧式の中空糸膜モジュールへの取り換えが容易である。
内圧式の中空糸膜モジュールは、原水入口を有する第1端部と、前記第1端部と軸方向反対側の第2端部を有する円筒ケースハウジング内に中空糸膜束が収容されており、前記円筒ケースハウジングの第1端部側が前記原水入口を有する第1キャップで閉塞され、前記円筒ケースハウジングの第2端部側が前記ろ過水出口と前記濃縮水出口を有する第2キャップで閉塞されているものであることが、本発明の外圧式の中空糸膜モジュールへの取り換え容易性の観点から好適である。
特に特許文献1又は3に記載の内圧式の中空糸膜モジュールは、第2キャップのろ過水出口が円筒ケースハウジングの軸方向に、濃縮水出口が円筒ケースハウジングの軸方向と直交する方向に形成されており、本発明の外圧式の中空糸膜モジュール10の第2キャップ50において、ろ過水出口51が円筒ケースハウジング11の軸方向に形成され、濃縮水出口52が円筒ケースハウジング11の軸方向と直交する方向に形成されると、ろ過水出口と濃縮水出口の位置が同じであるため、当該内圧式の中空糸膜モジュールと本発明の外圧式の中空糸膜モジュールとの取り換えがより容易である。