特許第6795445号(P6795445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6795445-排熱回収器 図000002
  • 特許6795445-排熱回収器 図000003
  • 特許6795445-排熱回収器 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795445
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】排熱回収器
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   F01N5/02 B
   F01N5/02 G
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-82335(P2017-82335)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-178924(P2018-178924A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】村田 登志朗
(72)【発明者】
【氏名】新保 善一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
【審査官】 坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−515180(JP,A)
【文献】 特開2016−118322(JP,A)
【文献】 特開2008−309348(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0129169(US,A1)
【文献】 特開2009−144606(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/185963(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−1/24,5/00−5/04,
13/00−99/00,
F28F 9/00−9/26,21/00−27/02,
F28C 1/00−3/18,
F28D 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流通する排気管の内部に設けられ、前記排気ガスと熱媒体との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器へ導入するための入口部と、前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器から導出するための出口部と、で構成された一対の口部と、
前記入口部に接続され、前記熱媒体を前記排気管の外側から前記入口部を介して前記熱交換器へ導入する導入管と、
前記出口部に接続され、前記熱媒体を前記熱交換器から前記出口部を介して前記排気管の外側へ導出する導出管と、
前記入口部と前記導入管との間、及び前記出口部と前記導出管との間をシールする一対のシール部材であって、当該一対のシール部材の少なくとも一方が、前記排気管を流通している排気ガスに接触せず且つ前記熱媒体に接触する位置に配置されたOリングで構成された前記一対のシール部材と、
を備え、
前記導入管及び前記導出管のそれぞれは、前記一対の口部のそれぞれに挿し込まれ、
前記一対の口部のそれぞれは、前記排気管の径方向外側へ突出し、
前記Oリングは、前記一対の口部のそれぞれの内側に配置され、前記排気管に対する径方向外側にて、前記導入管及び前記導出管のそれぞれの外面と、前記一対の口部のそれぞれの内面との間をシールする
排熱回収器。
【請求項2】
前記排気ガスの流通方向周りに前記熱交換器の周囲に配置され、前記熱交換器と前記排気管との間をシールし且つ、その間で緩衝する緩衝材
を備える請求項1に記載の排熱回収器。
【請求項3】
排気ガスが流通する排気管の内部に設けられ、前記排気ガスと熱媒体との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器へ導入するための入口部と、前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器から導出するための出口部と、で構成された一対の口部と、
前記入口部に接続され、前記熱媒体を前記排気管の外側から前記入口部を介して前記熱交換器へ導入する導入管と、
前記出口部に接続され、前記熱媒体を前記熱交換器から前記出口部を介して前記排気管の外側へ導出する導出管と、
前記入口部と前記導入管との間、及び前記出口部と前記導出管との間をシールする一対のシール部材であって、当該一対のシール部材の少なくとも一方が、前記排気管を流通している排気ガスに接触せず且つ前記熱媒体に接触する位置に配置されたOリングで構成された前記一対のシール部材と、
前記Oリングに対するガス流通方向の上流側及び下流側に配置されたガスシールと、
を備え、
前記導入管及び前記導出管のそれぞれに対して、前記一対の口部のそれぞれが挿し込まれ、
前記一対の口部のそれぞれは、前記排気管の径方向外側へ突出し、
前記Oリングは、前記導入管及び前記導出管のそれぞれの内側に配置され、前記排気管に対する径方向外側にて、前記導入管及び前記導出管のそれぞれの内面と、前記一対の口部のそれぞれの外面との間をシールする
排熱回収器。
【請求項4】
前記熱交換器と前記一対の口部とは、炭化珪素で一体に形成されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の排熱回収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気管(ダクト部)の内部に設けられた熱交換器(蒸発部)を備える排熱回収器が開示されている。特許文献1の排熱回収器では、熱交換器へ熱媒体(作動流体)を導入する導入管(凝縮側連結部)と、熱交換器から排気管の外側へ熱媒体を導出する導出管(蒸発側連結部)とのそれぞれが、熱交換器に設けられた一対の口部(ジョイント)のそれぞれに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−062915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、管(導入管又は導出管)が口部に接続される排熱回収器において、口部と管との間をシールするシール部材が、排気管を流通する高温の排気ガスに直接さらされるシール構造では、口部におけるシール性を確保するために、複雑な構造を機械加工にて形成する必要があった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、口部におけるシール構造を簡易な構造にできる排熱回収器を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る排熱回収器は、排気ガスが流通する排気管の内部に設けられ、前記排気ガスと熱媒体との間で熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器へ導入するための入口部と、前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器から導出するための出口部と、で構成された一対の口部と、前記入口部に接続され、前記熱媒体を前記排気管の外側から前記入口部を介して前記熱交換器へ導入する導入管と、前記出口部に接続され、前記熱媒体を前記熱交換器から前記出口部を介して前記排気管の外側へ導出する導出管と、前記入口部と前記導入管との間、及び前記出口部と前記導出管との間をシールする一対のシール部材であって、当該一対のシール部材の少なくとも一方が、前記排気管を流通している排気ガスに接触せず且つ前記熱媒体に接触する位置に配置されたOリングで構成された前記一対のシール部材と、を備え、前記導入管及び前記導出管のそれぞれは、前記一対の口部のそれぞれに挿し込まれ、前記一対の口部のそれぞれは、前記排気管の径方向外側へ突出し、前記Oリングは、前記一対の口部のそれぞれの内側に配置され、前記排気管に対する径方向外側にて、前記導入管及び前記導出管のそれぞれの外面と、前記一対の口部のそれぞれの内面との間をシールする。
【0007】
請求項1に係る排熱回収器によれば、熱媒体が、導入管によって排気管の外側から入口部を介して熱交換器へ導入される。熱交換器に導入された熱媒体は、熱交換器において、排気管を流通する排気ガスとの間で熱交換される。排気ガスとの間で熱交換された熱媒体は、導出管によって、熱交換器から出口部を介して排気管の外側へ導出される。
【0008】
ここで、請求項1の構成では、入口部と導入管との間、及び出口部と導出管との間をシールする一対のシール部材の少なくとも一方が、排気管を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されたOリングで構成されている。
【0009】
このように、請求項1の構成では、一対のシール部材の少なくとも一方が、排気管を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されており、高温の排気ガスにさらされないため、当該少なくとも一方をOリングで構成することができる。このように、シール部材としてOリングを用いるので、口部におけるシール構造を簡易な構造にできる。
【0011】
請求項1に係る排熱回収器によれば、Oリングが、一対の口部のそれぞれの内側に配置されているため、排気管を流通している排気ガスにOリングが接触しない。このように、Oリングを口部の内側に配置することで排気ガスにOリングが接触しないようにしているため、Oリングが排気ガスに接触しないように構成するための部材を追加する必要がない。
【0013】
請求項1に係る排熱回収器によれば、Oリングは、排気管に対する径方向外側にて、導入管及び導出管のそれぞれの外面と、一対の口部のそれぞれの内面との間をシールする。
【0014】
このため、排気管を流通している排気ガスの熱がOリングに伝わりにくく、排気ガスの熱によるOリングの劣化を抑制できる。
【0015】
請求項2に係る排熱回収器は、請求項1の構成において、前記排気ガスの流通方向周りに前記熱交換器の周囲に配置され、前記熱交換器と前記排気管との間をシールし且つ、その間で緩衝する緩衝材を備える。
【0016】
請求項2に係る排熱回収器によれば、排気ガスの流通方向周りに熱交換器の周囲に配置された緩衝材は、熱交換器と排気管との間をシールし且つ、熱交換器と排気管との間で緩衝する。
【0017】
このため、排気管で発生した振動などが、熱交換器を介してOリングに伝わりにくく、Oリングにかかるストレスを低減できる。
【0018】
請求項3に係る排熱回収器は、排気ガスが流通する排気管の内部に設けられ、前記排気ガスと熱媒体との間で熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器へ導入するための入口部と、前記熱交換器に形成され前記熱媒体を前記熱交換器から導出するための出口部と、で構成された一対の口部と、前記入口部に接続され、前記熱媒体を前記排気管の外側から前記入口部を介して前記熱交換器へ導入する導入管と、前記出口部に接続され、前記熱媒体を前記熱交換器から前記出口部を介して前記排気管の外側へ導出する導出管と、前記入口部と前記導入管との間、及び前記出口部と前記導出管との間をシールする一対のシール部材であって、当該一対のシール部材の少なくとも一方が、前記排気管を流通している排気ガスに接触せず且つ前記熱媒体に接触する位置に配置されたOリングで構成された前記一対のシール部材と、前記Oリングに対するガス流通方向の上流側及び下流側に配置されたガスシールと、を備え、前記導入管及び前記導出管のそれぞれに対して、前記一対の口部のそれぞれが挿し込まれ、前記一対の口部のそれぞれは、前記排気管の径方向外側へ突出し、前記Oリングは、前記導入管及び前記導出管のそれぞれの内側に配置され、前記排気管に対する径方向外側にて、前記導入管及び前記導出管のそれぞれの内面と、前記一対の口部のそれぞれの外面との間をシールする。
【0019】
請求項3に係る排熱回収器によれば、ガスシールが、Oリングに対するガス流通方向の上流側及び下流側に配置されているので、排気ガスのOリングへの進入が抑制される。これにより、Oリングが高温の排気ガスにさらされにくく、Oリングの劣化を抑制できる。
【0021】
請求項3に係る排熱回収器によれば、Oリングは、排気管に対する径方向外側にて、導入管及び導出管のそれぞれの内面と、一対の口部のそれぞれの外面との間をシールする。
【0022】
このため、排気管を流通している排気ガスの熱がOリングに伝わりにくく、排気ガスの熱によるOリングの劣化を抑制できる。
【0023】
請求項4に係る排熱回収器は、請求項1〜3のいずれか1項の構成において、前記熱交換器と前記一対の口部とは、炭化珪素で一体に形成されている。
【0024】
ここで、炭化珪素は高硬度であるため、炭化珪素で形成された一対の口部のそれぞれと、導入管及び導出管のそれぞれとの間のシール性を確保するために、当該口部に対して行う機械加工が容易ではなかった。なお、シール性を確保するための機械加工としては、例えば、シール部材が接触する接触面の表面粗さを小さくする研磨加工や、シール部材を設置するための凹部を形成する機械加工が挙げられる。
【0025】
これに対して、本発明では、シール部材がOリングで構成されているため、例えば、円筒状に形成されたシール部材等を用いたシール構造(シール範囲が広いシール構造)に比べ、炭化珪素で形成された口部とOリングとの接触面積が小さく、炭化珪素で形成された口部におけるシール性を確保するための加工範囲を低減できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成としたので、口部におけるシール構造を簡易な構造にできるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態に係る排気管構造の構成を示す断面図である。
図2】第一実施形態に係る排熱回収器の構成を示す斜視図である。
図3】第二実施形態に係る排気管構造の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0029】
<第一実施形態>
(排気管構造10)
まず、第一実施形態に係る、排熱回収器30が適用された排気管構造10の構成について説明する。図1は、排気管構造10の断面図である。
【0030】
排気管構造10は、自動車等の車両用の排気管構造であり、車両のエンジン(図示省略)から排出された排気ガスを大気(車両の外)へ排出するための管構造である。具体的には、排気管構造10は、図1に示されるように、排気管20と、排熱回収器30と、を備えている。
【0031】
排気管20は、筒状の管で構成されており、内部において排気ガスが一方向へ流通する。各図では、排気ガスが流通するガス流通方向が、矢印A方向にて示されている。排気管20は、具体的には、排気管本体22と、カバー部24と、を有している。
【0032】
排気管本体22は、筒状の管で構成されている。この排気管本体22には、排熱回収器30の後述の熱交換器32を排気管本体22の内部に収容するための収容口27が形成されている。カバー部24は、収容口27を覆うと共に、一例として締結部材23により排気管本体22に固定されている。カバー部24には、排熱回収器30の後述の入口部34及び出口部35が差し入れられる開口25が形成されている。なお、排気ガスは、例えば、200℃以上800℃以下の範囲の温度を有する。
【0033】
排熱回収器30は、排気管20を流通する排気ガスと熱媒体との間で熱交換することで当該排気ガスの熱を回収し、その熱を再利用する機能を有している。熱媒体としては、例えば、エンジンを冷却するための冷却水(Long Life Coolant:LLC)が用いられる。熱媒体は、排気ガスの温度より低い温度を有する。熱媒体として冷却水を用いる場合では、熱媒体の温度は、例えば、最高130℃程度となる。
【0034】
排熱回収器30は、具体的には、図1に示されるように、熱交換器32と、入口部34及び出口部35(一対の口部の一例)と、導入管36と、導出管37と、Oリング38、39(一対のシール部材の一例)と、シール材33(緩衝材の一例)と、を有している。
【0035】
熱交換器32は、排気管20の内部に設けられており、排気管20の内部を流通する排気ガスと熱媒体との間で熱交換する機能を有している。具体的には、熱交換器32は、熱交換器本体321と、流入路341及び流出路351が形成された流路形成部323と、を有している。
【0036】
流路形成部323は、熱交換器本体321の上面に一体に設けられている。流入路341は、熱交換器本体321の上面において、入口部34からの熱媒体を図1の紙面手前側(図2の−D方向)及び図1の紙面奥側(図2の+D方向)へ流通させる。流出路351は、熱交換器本体321の上面において、熱交換器本体321からの熱媒体を出口部35に向かって図1の紙面奥側(図2の−E方向)及び図1の紙面手前側(図2の+E方向)へ流通させる。
【0037】
熱交換器本体321には、図2に示されるように、熱交換器本体321の側面32Fから側面32R(図1参照)へ矢印A方向に沿って排気ガスを流通させる複数のガス流路32Aが形成されている。
【0038】
ガス流路32Aは、矢印A方向に見て、二次元状(格子状)に配置されており、ガス流路32Aの入口及び出口は、それぞれ、側面32F及び側面32R(図1参照)のそれぞれに二次元状に配置されている。
【0039】
さらに、熱交換器本体321の内部には、図1に示されるように、熱媒体を流入路341(入口部34)から流出路351(出口部35)へ向かって流通させる複数の媒体流路32Bが形成されている。複数の媒体流路32Bは、複数のガス流路32Aと互い違いに配置されており、仕切壁(図示省略)によってガス流路32Aと仕切られている。そして、媒体流路32Bを流通する熱媒体と、ガス流路32Aを流通する排気ガスと、の間で、前述の仕切壁(図示省略)を介して熱交換がなされる。
【0040】
また、熱交換器32は、熱交換器本体321及び流路形成部323を含めて、炭化珪素で形成されている。炭化珪素は、高硬度であり、耐熱性及び耐摩耗性を有している。
【0041】
入口部34は、熱媒体を熱交換器32の内部(流入路341)へ導入するための口部である。入口部34は、熱交換器32の流路形成部323と一体に炭化珪素で形成されている。具体的には、入口部34は、図1に示されるように、熱交換器32の流路形成部323におけるガス流通方向(A方向)下流側部分の上端部(流入路341の上方部分)から上方へ延出している。さらに、入口部34の先端部は、排気管20のカバー部24の開口25を通じて、排気管20の径方向外側へ突出している。入口部34には、流入路341と連通する導入路34Aが形成されている。
【0042】
出口部35は、熱媒体を熱交換器32の内部(流出路351)から導出するための口部である。出口部35は、熱交換器32の流路形成部323と一体に炭化珪素で形成されている。具体的には、出口部35は、図1に示されるように、熱交換器32の流路形成部323におけるガス流通方向(A方向)上流側部分の上端部から上方へ延出している。さらに、出口部35の先端部は、排気管20のカバー部24の開口25を通じて、排気管20の径方向外側へ突出している。出口部35には、流出路351と連通する導出路35Aが形成されている。
【0043】
前述のように、入口部34及び出口部35は、先端部が排気管20の外側へ突出しており、入口部34の内側(内面側)の空間及び出口部35の内側(内面側)の空間は、排気管20の内部空間から隔離されている。以上のように、本実施形態では、熱交換器32に形成される一対の口部が、入口部34及び出口部35によって構成されている。
【0044】
また、本実施形態では、前述のように、熱交換器本体321及び流路形成部323を含む熱交換器32と、入口部34と、出口部35とが、一体に炭化珪素で形成されている。具体的には、熱交換器32、入口部34及び出口部35は、例えば、炭化珪素焼成体で形成されている。
【0045】
導入管36は、熱媒体を排気管20の外側から入口部34を介して熱交換器32へ導入する導入管である。導入管36は、下流端部(下端部)が入口部34に接続されている。具体的には、導入管36の下流端部が、入口部34に挿し込まれている。
【0046】
Oリング38は、入口部34の内側であって、入口部34と導入管36との間に配置されている。具体的には、Oリング38は、導入管36の外面と入口部34の内面との間に配置されており、導入管36の外面と入口部34の内面との間をシールしている。さらに具体的には、Oリング38は、排気管20に対する径方向外側(上方側)の位置にて、導入管36の外面と入口部34の内面との間をシールしている。
【0047】
このように、Oリング38は、入口部34の内側に配置されているため、排気ガスよりも低温である熱媒体に接触するが、排気管20を流通している排気ガスには接触しない。すなわち、Oリング38は、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されている。
【0048】
Oリング38は、断面が円形のリング状に構成されており(JIS B 0142参照)、例えば、弾性を有する樹脂材料で形成されている。Oリング38は、径方向に圧縮(弾性)変形された状態で、導入管36の外面と入口部34の内面との間に配置されている。
【0049】
導出管37は、熱媒体を熱交換器32から出口部35を介して排気管20の外側へ導出する導出管である。導出管37は、上流端部(下端部)が出口部35に接続されている。具体的には、導出管37の上流端部が、出口部35に挿し込まれている。
【0050】
Oリング39は、出口部35の内側であって、出口部35と導出管37との間に配置されている。具体的には、Oリング39は、導出管37の外面と出口部35の内面との間に配置されており、導出管37の外面と出口部35の内面との間をシールしている。さらに具体的には、Oリング39は、排気管20に対する径方向外側(上方側)の位置にて、導出管37の外面と出口部35の内面との間をシールしている。
【0051】
このように、Oリング39は、出口部35の内側に配置されているため、排気ガスよりも低温である熱媒体に接触するが、排気管20を流通している排気ガスには接触しない。すなわち、Oリング39は、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されている。
【0052】
Oリング39は、断面が円形のリング状に構成されており(JIS B 0142参照)、例えば、弾性を有する樹脂材料で形成されている。Oリング39は、径方向に圧縮(弾性)変形された状態で、導出管37の外面と出口部35の内面との間に配置されている。以上のように、本実施形態では、入口部34と導入管36との間、及び出口部35と導出管37との間のそれぞれをシールする一対のシール部材が、Oリング38、39によって構成されている。
【0053】
シール材33は、図2に示されるように、ガス流通方向(A方向)周りに熱交換器32の周囲に配置されている。具体的には、シール材33は、熱交換器32の側面32M、32N、底面32T及び上面32Jに配置されている。シール材33は、熱交換器32の側面32M、32N及び底面32Tの全面に配置されている。シール材33は、熱交換器32の上面32Jでは、平面視にて、入口部34及び出口部35を囲む枠状に形成されている。
【0054】
そして、シール材33は、排気管20(排気管本体22及びカバー部24)の内周面と熱交換器32の側面32M、32N、底面32T及び上面32Jとの間に、圧縮変形された状態で配置されている。
【0055】
これにより、熱交換器32と排気管20との間がシールされ、排気管20の開口25への排気ガスの進入が抑制される。すなわち、シール材33は、排気管20の開口25への排気ガスの進入を抑制するガスシールとして機能する。また、シール材33が、排気管20の内周面と、熱交換器32の側面32M、32N、底面32T及び上面32Jとに押し付けられることで、熱交換器32が排気管20に保持される。さらに、シール材33は、熱交換器32と排気管20との間で緩衝する緩衝材としても機能する。シール材33としては、例えば、セラミックシートや、膨張黒鉛シートなどが用いられる。
【0056】
(第一実施形態の作用効果)
次に、第一実施形態の作用効果を説明する。
【0057】
第一実施形態に係る排熱回収器30によれば、熱媒体が、導入管36によって排気管20の外側から入口部34の導入路34Aを介して熱交換器32の流入路341へ導入される(図1参照)。流入路341に導入された熱媒体は、熱交換器本体321の媒体流路32Bを流通する。一方、排気管20内の排気ガスは、熱交換器本体321のガス流路32Aを流通する。そして、熱交換器本体321の媒体流路32Bを流通する熱媒体は、ガス流路32Aを流通する排気ガスとの間で熱交換される。排気ガスとの間で熱交換された熱媒体は、熱交換器32の流出路351及び出口部35の導出路35Aを流通した後、導出管37によって、排気管20の外側へ導出される。これにより、排気管20を流通する排気ガスの熱が回収される。そして、その熱が、排気管20の外側にて再利用される。
【0058】
ここで、本実施形態では、入口部34と導入管36との間、及び出口部35と導出管37との間のそれぞれをシールする一対のシール部材が、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されたOリング38、39で構成されている。
【0059】
このように、本実施形態の構成では、当該一対のシール部材が、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されており、高温の排気ガスにさらされないため、劣化しにくく、当該一対のシール部材をOリング38、39で構成することができる。このように、シール部材としてOリング38、39を用いるので、入口部34及び出口部35におけるシール構造を安価且つ簡易な構造にできる。
【0060】
また、本実施形態の排熱回収器30では、熱交換器32、入口部34及び出口部35は、炭化珪素で一体に形成されている。炭化珪素は、高硬度であるため、熱媒体に対するシール性を確保するための機械加工が容易ではない。なお、機械加工としては、例えば、シール部材(Oリング)が接触する接触面の表面粗さを小さくする研磨加工や、シール部材を設置するための凹部を形成する機械加工が挙げられる。
【0061】
そして、排熱回収器30では、Oリング38、39によって、入口部34と導入管36との間、及び出口部35と導出管37との間をシールしている。Oリング38、39は、断面が円形のリング状に構成されている。このため、例えば、円筒状に形成されたシール部材等を用いたシール構造(シール範囲が口部(入口部34及び出口部35)の軸方向に広いシール構造)に比べ、入口部34及び出口部35との接触面積が小さく、入口部34及び出口部35におけるシール性を確保するための加工範囲を低減できる。
【0062】
さらに、排熱回収器30では、Oリング38は、排気管20の内部空間から隔離された入口部34の内側に配置されている。さらに、Oリング39は、排気管20の内部空間から隔離された出口部35の内側に配置されている。このため、Oリング38、39が、高温となる排気ガスに接触しない。このように、Oリング38、39を入口部34及び出口部35の内側に配置することで排気ガスにOリング38、39が接触しないようにしているため、Oリング38、39が排気ガスに接触しないように構成するための部材を追加する必要がない。
【0063】
また、本実施形態では、Oリング38、39は、排気管20に対する径方向外側にて、導入管36及び導出管37のそれぞれの外面と、入口部34及び出口部35のそれぞれの内面との間をシールする。このため、排気管20を流通している排気ガスの熱が、Oリング38、39に伝わりにくく、排気ガスの熱によるOリング38、39の劣化を抑制できる。
【0064】
さらに、ガス流通方向(A方向)周りに熱交換器32の周囲に配置されたシール材33は、熱交換器32と排気管20との間で緩衝する緩衝材としても機能する。このため、排気管20で発生した振動などが、熱交換器32を介してOリング38、39に伝わらず、Oリング38、39にかかるストレスを低減できる。
【0065】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係る、排熱回収器30が適用された排気管構造210について説明する。図3は、排気管構造210の断面図である。ここでは、前述の第一実施形態と異なる部分を中心に説明し、前述の第一実施形態と同一機能を有する部分については、同一符号を付して、説明を適宜省略する。
【0066】
排気管構造210は、自動車等の車両用の排気管構造であり、車両のエンジン(図示省略)から排出された排気ガスを大気(車両の外)へ排出するための管構造である。
【0067】
排気管構造210の排気管20におけるカバー部24には、図3に示されるように、第一実施形態における開口25が形成されておらず、導入管36及び導出管37が一体に設けられている。具体的には、導入管36の下流端部及び導出管37の上流端部が、カバー部24に接続されている。
【0068】
排気管構造210では、排熱回収器30における入口部34の先端部が、導入管36に挿し込まれている。そして、Oリング38は、導入管36の内側であって、入口部34と導入管36との間に配置されている。具体的には、Oリング38は、入口部34の外面と導入管36の内面との間に配置されており、入口部34の外面と導入管36の内面との間をシールしている。
【0069】
さらに具体的には、Oリング38は、排気管20に対する径方向外側(上方側)の位置にて、入口部34の外面と導入管36の内面との間をシールしている。このように、Oリング38は、導入管36の内側であって、排気管20に対する径方向外側に配置されているため、排気ガスよりも低温である熱媒体に接触するが、排気管20を流通している状態の排気ガスには接触しない。すなわち、Oリング38は、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されている。また、Oリング38は、径方向に圧縮(弾性)変形された状態で、入口部34の外面と導入管36の内面との間に配置されている。
【0070】
また、排気管構造210では、排熱回収器30における出口部35の先端部が、導出管37に挿し込まれている。そして、Oリング39は、導出管37の内側であって、出口部35と導出管37との間に配置されている。具体的には、Oリング39は、出口部35の外面と導出管37の内面との間に配置されており、出口部35の外面と導出管37の内面との間をシールしている。
【0071】
さらに具体的には、Oリング39は、排気管20に対する径方向外側(上方側)の位置にて、出口部35の外面と導出管37の内面との間をシールしている。このように、Oリング39は、導出管37の内側であって、排気管20に対する径方向外側に配置されているため、排気ガスよりも低温である熱媒体に接触するが、排気管20を流通している排気ガスには接触しない。すなわち、Oリング39は、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されている。また、Oリング39は、径方向に圧縮(弾性)変形された状態で、出口部35の外面と導出管37の内面との間に配置されている。
【0072】
なお、入口部34の基端部(下端部)及び出口部35の基端部(下端部)は、基端側(下側)に向けて徐々に外径が大径化されるテーパ形状に形成されている。
【0073】
また、シール材33(ガスシールの一例)は、Oリング38、39に対するガス流通方向(A方向)の上流側及び下流側に配置された上流部分33A及び下流部分33Bを有している。これにより、シール材33は、Oリング38、39に対するガス流通方向(A方向)の上流側及び下流側で、排気管20を矢印A方向へ流通する状態の排気ガスがOリング38、39側へ進入するのを抑制している。このため、Oリング38、39が高温の排気ガスにさらされにくく、Oリング38、39の劣化を抑制できる。
【0074】
また、前述のように、本実施形態の構成では、当該一対のシール部材が、排気管20を流通している排気ガスに接触せず且つ熱媒体に接触する位置に配置されており、高温の排気ガスにさらされないため、劣化しにくく、当該一対のシール部材をOリング38、39で構成することができる。このように、シール部材としてOリング38、39を用いるので、入口部34及び出口部35におけるシール構造を安価且つ簡易な構造にできる。
【0075】
また、Oリング38、39は、排気管20に対する径方向外側にて、導入管36及び導出管37のそれぞれの内面と、入口部34及び出口部35のそれぞれの外面との間をシールする。このため、排気管20を流通している排気ガスの熱がOリング38、39に伝わりにくく、排気ガスの熱によるOリング38、39の劣化を抑制できる。
【0076】
<変形例>
前述の第一、第二実施形態では、熱媒体として、冷却水を用いていたが、これに限られない。熱媒体としては、熱交換に用いられる液体や気体等の流体を広く適用することができる。
【0077】
前述の第一、第二実施形態では、熱交換器本体321及び流路形成部323を含む熱交換器32と、入口部34と、出口部35とが、一体に炭化珪素で形成されていたが、これに限られない。例えば、熱交換器32と入口部34と出口部35とは、別体で形成された後に組み付けられたものであってもよい。また、熱交換器32と入口部34と出口部35とは、炭化珪素以外の材料にて形成されていてもよい。
【0078】
前述の第一、第二実施形態では、入口部34及び出口部35の両方が炭化珪素で形成されていたが、これに限られない。例えば、入口部34及び出口部35の一方が、炭化珪素で形成されていればよく、入口部34及び出口部35の他方は、炭化珪素以外の材料で形成された後に組み付けられる構成であってもよい。さらに、入口部34及び出口部35の一方が、炭化珪素以外の材料で形成されている場合には、当該一方に対して、Oリング以外のシール部材を配置する構成であってもよい。
【0079】
前述の第一、第二実施形態では、シール材33は、ガス流通方向(A方向)周りに熱交換器32の周囲に配置されていたが、これに限られない。シール材33としては、例えば、熱交換器32の上面32Jにおいて、平面視にて、入口部34及び出口部35を囲む枠状に形成された部分のみを有する構成であってもよい。
【0080】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0081】
20 排気管
30 排熱回収器
32 熱交換器
33 シール材(緩衝材の一例、ガスシールの一例)
34 入口部
35 出口部
36 導入管
37 導出管
38、39 Oリング(シール部材の一例)
図1
図2
図3