特許第6795451号(P6795451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795451
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20201119BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F25D11/00 101Y
   F25D17/06 312
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-98177(P2017-98177)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-194233(P2018-194233A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 平成29年2月6日 販売先 株式会社 大一器械 他
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】森下 和敏
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 真吾
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−174119(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0102984(US,A1)
【文献】 特開2002−228322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 〜 16/00
F25D 17/06
F25D 27/00
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵対象を収納するための庫内(R)を有する貯蔵庫本体(1)と、貯蔵庫本体(1)に開閉可能に取り付けられて庫内(R)に通じる前面開口を閉塞するドア(2)と、庫内(R)の庫内空気を循環させる循環ファン(5)と、庫内空気を冷却する冷却装置(3)と、庫内空気を加熱する加熱ヒータ(4)と、庫内温度(D)を検出する温度センサ(6)と、庫内(R)の目標温度(D0)の入力を受け付ける温度設定部(26)と、温度設定部(26)により入力された目標温度(D0)に基づいて目標温度帯を設定し、庫内温度(D)が目標温度帯内に維持されるように、冷却装置(3)、加熱ヒータ(4)、及び循環ファン(5)の作動状態を制御する制御装置(25)とを備える冷却貯蔵庫であって、
庫内温度(D)が上昇傾向にある場合の冷却装置(3)を構成する圧縮機(9)のオン温度(Dn1)が、庫内(R)の目標温度帯の上限温度より低温に設定されており、庫内温度(D)が低下傾向にある場合の圧縮機(9)のオフ温度(Df1)が、庫内(R)の目標温度帯の下限温度より高温に設定されており、
温度センサ(6)により検出された庫内温度(D)が、目標温度(D0)を超えて圧縮機(9)のオン温度(Dn1)に達すると、制御装置(25)は、循環ファン(5)と圧縮機(9)とを作動させ、同時に加熱ヒータ(4)を作動させる1次温度制御を行うことを特徴とする冷却貯蔵庫。
【請求項2】
圧縮機(9)の発停保護時間を計時する発停保護タイマー(30)と、温度補正値が格納された補正値テーブル(31)とを備えており、
1次温度制御においては、制御装置(25)は第1の回転速度で循環ファン(5)を回転させており、
1次温度制御の実行中に、加熱ヒータ(4)の作動開始から、補正値テーブル(31)に格納された補正値で決定される加熱時間(T3)が経過すると、制御装置(25)は加熱ヒータ(4)の作動を停止させる2次温度制御を行い、
2次温度制御において、発停保護タイマー(30)による計時時間が圧縮機(9)の最短オン時間であるオン保護時間(T1)を超えると、制御装置(25)は、第1の回転速度よりも高速の第2の回転速度で循環ファン(5)を回転させ、さらに、庫内温度(D)が目標温度(D0)まで低下すると、制御装置(25)は循環ファン(5)を再び第1の回転速度で回転させる3次温度制御を行い、
3次温度制御において、庫内温度(D)が圧縮機オフ温度(Df1)まで達すると、制御装置(25)は第1の回転速度による循環ファン(5)の回転を維持したまま、圧縮機(9)の作動を停止する4次温度制御を行う請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
4次温度制御において、発停保護タイマー(30)による計時時間が圧縮機(9)の最短オフ時間であるオフ保護時間(T2)を経過する前に、庫内温度(D)が目標温度帯の上限温度より高温側に設定された上限閾値温度を越えると、制御装置(25)は圧縮機(9)と加熱ヒータ(4)と循環ファン(5)の作動状態を第1復帰モードで制御しており、
第1復帰モードにおいては、発停保護タイマー(30)による計時時間が圧縮機(9)のオフ保護時間(T2)を経過すると、制御装置(25)は循環ファン(5)を第1の回転速度で回転させたままで圧縮機(9)を起動する5次温度制御を行い、
5次温度制御により、庫内温度(D)が上限閾値温度まで低下すると、制御装置(25)は加熱ヒータ(4)を加熱時間(T3)だけ作動させて庫内温度を低下させる6次温度制御を行い、
6次温度制御において、発停保護タイマー(30)による計時時間が圧縮機(9)のオン保護時間(T1)を超えると、通常制御モードの3次温度制御に移行し、循環ファン(5)を第2の回転速度で回転させて庫内温度(D)を低下させ、庫内温度(D)が目標温度(D0)まで低下した時点で循環ファン(5)を第1の回転速度に復帰させる請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
3次温度制御において、圧縮機(9)のオン保護時間(T1)が経過する前の庫内温度が、目標温度(D0)まで低下したとき、制御装置(25)は圧縮機(9)と加熱ヒータ(4)と循環ファン(5)の作動状態を第2復帰モードで制御しており、
第2復帰モードにおいては、圧縮機(9)と加熱ヒータ(4)が作動して、庫内温度(D)が低下傾向にある状態で、圧縮機(9)のオン保護時間(T1)が経過する前に、庫内温度(D)が目標温度(D0)まで低下すると、制御装置(25)は循環ファン(5)を第1の回転速度で回転させる7次温度制御を行い、
7次温度制御において、庫内温度(D)が圧縮機オフ温度(Df1)まで達した時点で、圧縮機(9)の作動を停止する請求項2又は3に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望温度の下で対象物を保管する冷却貯蔵庫に関する。本発明に係る冷却貯蔵庫は、特に至適温度に医薬品を保冷収納する薬品保管庫に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る冷却貯蔵庫は、庫内空気を加熱するためのヒータを備えるが、このように冷却貯蔵庫にヒータを設けること自体は、例えば特許文献1、2に開示されており、公知である。特許文献1の冷却貯蔵庫では、庫壁内に冷却パイプと電気式ヒータとが埋設されており、これら冷却パイプと電気式ヒータの作動により、庫内温度を医薬品の至適温度範囲に制御している。より具体的には、温度センサにより検出された庫内温度が下限設定温度に到達すると圧縮機の稼働を停止し、温度センサにより検出された庫内温度が上限設定温度に達すると、圧縮機を稼働させている。また、庫内温度が下限設定温度を下回る過冷却状態となったときに、電気式ヒータに通電している。
【0003】
特許文献2に記載の冷却貯蔵庫では、庫内温度が上限設定温度に達すると、圧縮機を稼働させて冷凍機を作動させ、庫内温度が下限設定温度に達すると、圧縮機の稼働を停止するととともに、ヒータに通電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−102594号公報
【特許文献2】特開2001−174119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のように、庫内温度が上限設定温度に達したときに、圧縮機をオン制御するとともに、庫内温度が下限設定温度に達したときに、圧縮機をオフ制御する、或いはヒータをオン制御する制御形態では、圧縮機やヒータの応答性が遅く、庫内温度が下降し始めたり、庫内温度が上昇し始めたりするまでに遅れ時間が発生すると、庫内温度が設定温度を大幅に超過するオーバーシュート状態に陥りやすい。
【0006】
かかるオーバーシュートの問題は、上限設定温度よりも低温の設定温度を別に設けて、例えば庫内温度が上限設定温度をオーバーシュートしそうなときは、上記の低温の設定温度に至ると圧縮機をオンするなどの制御を行うことで対応できる。しかし、庫内の上限設定温度と下限設定温度で規定される目標温度範囲が、例えば2℃以内と極めて狭い場合、すなわち、より高精度に庫内温度を管理する場合には、2℃以内の温度範囲内に上記のような設定温度を複数個設定しても、圧縮機やヒータに向けてオンオフ制御信号が頻繁に発せられるだけであり、特に圧縮機やヒータの応答性が悪い場合には、却ってオーバーシュート状態に陥りやすく、庫内温度を目標温度範囲内に正確に維持することは不可能である。また、圧縮機は発停保護時間の制約を受けるため、作動頻度を上げることにも限界がある。
【0007】
一方、生ワクチンやワクチン製剤などの要冷蔵薬品には、至適温度範囲を含む「貯法」が定められており、取扱いには温度管理の徹底が求められているが、従来の薬品保管庫では、先のオーバーシュート等に起因して庫内温度の変動幅が大きくなることが避けられず、多種多様な要冷蔵薬品を同じ庫内において一括で保管することは困難となっていた。このため、より温度幅の狭い目標温度範囲内において、庫内温度を均一に維持することが可能な、換言すれば高精度に庫内温度を管理することが可能な冷却貯蔵庫の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、以上のような従来の冷却貯蔵庫の抱える問題を解決するためになされたものであり、より高精度に庫内温度を管理することが可能な、新規な冷却貯蔵庫を提供することを目的とする。
本発明は、発停保護時間内に庫内温度が圧縮機の起動温度あるいは停止温度に達してしまうのを防止して、庫内温度を温度幅が狭い目標温度帯に維持することができ、さらに圧縮機およびヒータの作動頻度を低下させて無駄なエネルギー消費を解消できる冷却貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、貯蔵対象を収納するための庫内Rを有する貯蔵庫本体1と、貯蔵庫本体1に開閉可能に取り付けられて庫内Rに通じる前面開口を閉塞するドア2と、庫内Rの庫内空気を循環させる循環ファン5と、庫内空気を冷却する冷却装置3と、庫内空気を加熱する加熱ヒータ4と、庫内温度Dを検出する温度センサ6と、庫内Rの目標温度D0の入力を受け付ける温度設定部26と、温度設定部26により入力された目標温度D0に基づいて目標温度帯を設定し、庫内温度Dが目標温度帯内に維持されるように、冷却装置3、加熱ヒータ4、及び循環ファン5の作動状態を制御する制御装置25とを備える冷却貯蔵庫を対象とする。この冷却貯蔵庫では、庫内温度Dが上昇傾向にある場合の冷却装置3を構成する圧縮機9のオン温度Dn1は、庫内Rの目標温度帯の上限温度より低温に設定されており、庫内温度Dが低下傾向にある場合の圧縮機9のオフ温度Df1は、庫内Rの目標温度帯の下限温度より高温に設定されている。そして、温度センサ6により検出された庫内温度Dが、目標温度D0を超えて圧縮機9のオン温度Dn1に達すると、制御装置25は、循環ファン5と圧縮機9とを作動させ、同時に加熱ヒータ4を作動させる1次温度制御を行うことを特徴とする。
【0010】
圧縮機9の発停保護時間を計時する発停保護タイマー30と、温度補正値が格納された補正値テーブル31とを備える。1次温度制御においては、制御装置25は第1の回転速度で循環ファン5を回転させている。1次温度制御の実行中に、加熱ヒータ4の作動開始から、補正値テーブル31に格納された補正値で決定される加熱時間T3が経過すると、制御装置25は加熱ヒータ4の作動を停止させる2次温度制御を行う。2次温度制御において、発停保護タイマー30による計時時間が圧縮機9の最短オン時間であるオン保護時間T1を超えると、制御装置25は、第1の回転速度よりも高速の第2の回転速度で循環ファン5を回転させ、さらに、庫内温度Dが目標温度D0まで低下すると、制御装置25は循環ファン5を再び第1の回転速度で回転させる3次温度制御を行う。3次温度制御において、庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1まで達すると、制御装置25は第1の回転速度による循環ファン5の回転を維持したまま、圧縮機9の作動を停止する4次温度制御を行う。
【0011】
4次温度制御において、発停保護タイマー30による計時時間が圧縮機9の最短オフ時間であるオフ保護時間T2を経過する前に、庫内温度Dが目標温度帯の上限温度より高温側に設定された上限閾値温度を越えると、制御装置25は圧縮機9と加熱ヒータ4と循環ファン5の作動状態を第1復帰モードで制御する。この第1復帰モードにおいては、発停保護タイマー30による計時時間が圧縮機9のオフ保護時間T2を経過すると、制御装置25は循環ファン5を第1の回転速度で回転させたままで圧縮機9を起動する5次温度制御を行う。5次温度制御により、庫内温度Dが上限閾値温度まで低下すると、制御装置25は加熱ヒータ4を加熱時間T3だけ作動させて庫内温度Dを低下させる6次温度制御を行う。6次温度制御において、発停保護タイマー30による計時時間が圧縮機9のオン保護時間T1を超えると、通常制御モードの3次温度制御に移行し、循環ファン5を第2の回転速度で回転させて庫内温度Dを低下させ、庫内温度Dが目標温度D0まで低下した時点で循環ファン5を第1の回転速度に復帰させる。
【0012】
3次温度制御において、圧縮機9のオン保護時間T1が経過する前の庫内温度が、目標温度D0まで低下したとき、制御装置25は圧縮機9と加熱ヒータ4と循環ファン5の作動状態を第2復帰モードで制御する。この第2復帰モードにおいては、圧縮機9と加熱ヒータ4が作動して、庫内温度Dが低下傾向にある状態で、圧縮機9のオン保護時間T1が経過する前に、庫内温度Dが目標温度D0まで低下すると、制御装置25は循環ファン5を第1の回転速度で回転させる7次温度制御を行う。そして、7次温度制御において、庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1まで達した時点で、圧縮機9の作動を停止する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る冷却貯蔵庫においては、温度センサ6により検出された庫内温度Dが、目標温度D0を超えて圧縮機9のオン温度Dn1に達すると、循環ファン5と圧縮機9とを作動させ、同時に加熱ヒータ4を作動させるので、圧縮機9のみを作動させる形態に比べて、加熱ヒータ4を作動させる分だけ、庫内Rに短時間に多量の冷風が送給されることを抑えることができる。このように、庫内Rに短時間に多量の冷風が送給されることを抑えることができると、庫内温度Dにバラツキが生じることを抑えて、庫内温度Dの均一化を図ることができる。従って、より高精度に庫内温度Dを管理することが可能な冷却貯蔵庫を得ることができる。
【0014】
この種の冷却貯蔵庫において、庫内の目標温度帯が、目標温度±1℃などのように温度幅が狭い場合には、必然的に圧縮機9を頻繁に作動させて、庫内温度Dを目標温度帯に維持せざるを得ないが、このように圧縮機9の作動頻度が多くなるほど、圧縮機9が作動を開始してから停止するまでの最短のオン時間である「オン保護時間(T1)」の制約を受けやすく、当該オン保護時間T1が経過するまでは圧縮機9を停止することができなくなり、適切なタイミングで圧縮機9を停止させることができず、庫内温度Dを正確に制御することが困難となる。これに対して、本発明においては、循環ファン5を回転させた状態で、圧縮機9だけでなく、加熱ヒータ4を作動させるので、加熱ヒータ4を作動させずに圧縮機9のみを起動した場合に比べて、庫内温度Dを緩やかに低下させて、オン保護時間T1が経過するときの温度低下を緩やかにし、冷え過ぎを防止することができる。これにより、圧縮機9が起動してから、次に圧縮機9の停止が求められるまでの時間をオン保護時間T1より充分に長くすることができるので、圧縮機9を適切なタイミングで停止させて、庫内温度Dを正確に制御できる。
【0015】
2次温度制御において、第1の回転速度よりも高速の第2の回転速度で循環ファン5を回転させるようにしていると、蒸発器14における熱交換量を増やして、庫内温度Dの低下を促進することができる。また、蒸発器14における熱交換量が増えるので、庫内温度Dを目標温度D0まで速やかに低下できるうえ、庫内Rの冷気の循環度合を高めて庫内温度Dを均一にできる。さらに、3次温度制御において、庫内温度Dが目標温度D0まで低下した後は、循環ファン5を低速の第1の回転速度で回転させるので、蒸発器14における熱交換量を減少させることができる。これにより、庫内温度Dの低下度合いを緩やかなものとして、圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにすることができ、庫内温度Dがアンダーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。
【0016】
第1復帰モードの5次温度制御では、加熱ヒータ4を作動させずに圧縮機9のみを起動するようにしたので、上限閾値温度を越えた庫内温度Dを、当該上限閾値温度まで急速に低下させることができる。また、6次温度制御においては、庫内温度Dが上限閾値温度まで低下した時点で、加熱ヒータ4を加熱時間T3だけ作動させるようにしたので、庫内温度を緩やかに低下させて、オン保護時間T1が経過するときの温度低下を緩やかにし、冷え過ぎを防止することができる。さらに、圧縮機9が起動してから、圧縮機9が停止するまでの時間を、オン保護時間T1より充分に長くすることができるので、圧縮機9が頻繁に作動するのを防止できる。6次温度制御の終段においては、3次温度制御へ移行して、循環ファン5を第2の回転速度で回転させて庫内温度Dを低下させ、庫内温度Dが目標温度D0まで低下した時点で、循環ファン5を第1の回転速度で回転させて庫内温度Dの低下速度を緩和し、庫内温度Dの低下傾向を弱めることができる。従って、圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにして、庫内温度Dがアンダーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。
【0017】
第2復帰モードにおいては、圧縮機9と加熱ヒータ4が作動して、庫内温度Dが低下傾向にある状態で、圧縮機9のオン保護時間T1が経過する前に、庫内温度が目標温度D0まで低下すると、制御装置25は循環ファン5を第1の回転速度で回転させる7次温度制御を行う。これによれば、循環ファン5を低速回転状態に維持して、蒸発器14における熱交換量を小さくすることができるので、以後の庫内温度Dの低下度合いを緩やかなものとすることができる。また、7次温度制御においては、低下傾向にある庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1まで低下した時点で、早めに圧縮機9を停止させるので、庫内温度Dの低下傾向を弱めて圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにすることができる。従って、第2復帰モードにおいても、庫内温度Dがアンダーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る冷却貯蔵庫の高精度運転モードの通常制御モードにおける動作を示すタイムチャートである。
図2】冷却貯蔵庫の構成を示す図である。
図3】冷却貯蔵庫の冷媒回路図である。
図4】冷却貯蔵庫のブロック図である。
図5】高精度運転モードの第1復帰モードにおける動作を示すタイムチャートである。
図6】高精度運転モードの第2復帰モードにおける動作を示すタイムチャートである。
図7】第1除霜モードにおける動作を示すタイムチャートである。
図8】第2除霜モードにおける動作を示すタイムチャートである。
図9】本発明に係る冷却貯蔵庫のエコモードにおける動作を示すタイムチャートである。
図10】(a)は高精度運転モードの通常制御モードにおける庫内温度変化の確認試験結果を示すものであり、各測定点における最高温度、最低温度、及び平均温度を示す図であり、(b)は庫内の測定点を説明する図である。
図11】高精度運転モードにおける動作を示すフローチャートである。
図12】高精度運転モードにおける動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例) 図1ないし図12に、本発明に係る冷却貯蔵庫を薬品保管庫に適用した実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2に示すように、薬品保管庫は、貯蔵対象である医薬品を収納保管するための保管空間を有する保管庫本体(貯蔵庫本体)1と、保管庫本体1の前面の出し入れ開口を揺動開閉するドア2と、保管庫本体1の保管空間である庫内Rに冷気を供給する冷却装置3と、庫内Rの空気を加熱する加熱ヒータ4と、庫内空気を循環させる循環ファン5などを備えている。保管庫本体1の下側には機械室8が設けられており、その内部に冷却装置3を構成する圧縮機9と、凝縮器10と凝縮器ファン11などが配置されている。
【0020】
保管庫本体1は断熱箱として構成されており、庫内Rの上部には熱交換室12が区画され、その後面壁に沿って冷気ダクト13が区画されている。先の循環ファン5と、冷却装置3を構成する蒸発器14は、熱交換室12の後寄りに配置されており、蒸発器14の後面に加熱ヒータ4が配置されている。また、熱交換室12の天井壁のうち蒸発器14の前面に隣接して庫内温度Dを検知する温度センサ6が設けられており、蒸発器14に除霜センサ15が設けられている。庫内Rには、試薬、血液製剤、ワクチンなどの医薬品をグループごとに収納保管するための棚16が多段状に設けられている。循環ファン5で送給された庫内空気は、蒸発器14を通過する間に冷却されて冷気ダクト13へと流動し、同ダクト13の上下複数個所に開口した冷気吹出口から庫内Rへ送給される。図2において符号17はドア2の開閉を検知する開閉センサ、符号18は保管庫本体1の前面上部に配置した制御ボックスである。循環ファン5の回転速度は、低速(第1の回転速度)、中速(第2の回転速度)、高速の3段階に変更可能に構成されている。
【0021】
図3に示すように、冷却装置3は、モーターで駆動される圧縮機9と、凝縮器10と、ドライヤー21と、膨張器22と、蒸発器14とを、冷媒配管24でループ状に接続して構成される。圧縮機9、加熱ヒータ4、循環ファン5の運転状態を制御して、庫内温度Dを目標温度帯に維持するために、先の制御ボックス18の内部に制御装置25が収容されている。図3において、符号26は目標とする庫内温度(以下、目標温度D0と言う)を制御装置25に入力する目標温度設定部(温度設定部)であり、制御ボックス18の前面に設けられる。目標温度D0は、庫内Rに保管される医薬品の種類に応じて、例えば3℃、4℃、5℃などに設定することができる。
【0022】
図4に示すように制御装置25には、発停保護タイマー30が接続されている。また、制御装置25に接続されたメモリには、外気温と庫内の目標温度D0によって決まる温度補正値が格納された補正値テーブル31が格納されている。発停保護タイマー30は、圧縮機9が起動してから停止可能なオン保護時間T1(本実施例では3分)が経過したこと、あるいは圧縮機9が停止してから起動可能なオフ保護時間T2(本実施例では5分)が経過したことを計時する。制御装置25は、予め入力された目標温度D0と、温度センサ6で検知した庫内温度Dと、発停保護タイマー30の計時結果と、補正値テーブル31から読込んだ外気温に応じた温度補正値に基づき、各機器の作動状態を制御する。この薬品保管庫では、高精度運転モードと、エコモードの二つの制御モードを備えており、高精度運転モードにおいては、庫内温度Dを、目標温度D0を中心にした±1℃の目標温度帯の範囲に維持する(例えば、D0±1℃)。エコモードでは、庫内温度Dを、目標温度D0を中心にした±2℃の目標温度帯の範囲に維持する(例えば、D0±2℃)。エコモードでは、高精度運転モードに比べて消費電力を抑えることができる。
【0023】
以下の説明では、高精度運転モードの常態における運転モードを通常制御モードと規定し、当該高精度運転モードにおいて異常状態に陥ったときの運転モードを復帰モードと規定する。すなわち、高精度運転モードが選択されたとき、制御装置25は、常態においてはメインの運転モードである通常制御モードで温度制御を行っており、例外的に庫内温度Dが目標温度帯の上限温度を越えて異常に高くなった場合には第1復帰モードに従って、また例外的に庫内温度Dの低下速度が異常に速い場合には第2復帰モードに従って、先の機器4・5・9の作動状態を制御して、庫内温度Dを通常制御モードで制御できる状態に戻して通常制御モードへ移行させる。
【0024】
(通常制御モード)
高精度運転モードにおける通常制御モードを図1のタイムチャート、及び図11のフローチャートを使って説明する。図1に示すように、圧縮機9、および加熱ヒータ4がオフ状態にあり、循環ファン5が低速回転されており、上昇傾向にある庫内温度Dが圧縮機9のオン温度Dn1以下である状態を当初状態とするとき(t0)、制御装置25は、以下に詳述するような1次温度制御から4次温度制御を行って、庫内温度Dを目標温度帯に維持する。ここでは、目標温度は3℃であり、目標温度帯は目標温度D0を中心とした±1℃の範囲、すなわち2℃〜4℃(3℃±1℃)に設定されている。
【0025】
まず、当初状態(t0)においては、循環ファン5が低速回転されているだけであり、圧縮機9はオフ状態にあるため、蒸発器14による冷却動作は行われず、庫内温度Dは時間の経過とともに緩やかに上昇する(図11のスタート)。そして、発停保護タイマー30により計時された時間が、圧縮機9の最短オフ時間である「オフ保護時間T2」を経過している状態において(図11のS1において「YES」)、上昇傾向にある庫内温度Dが、目標温度D0(3℃)より上昇して圧縮機オン温度Dn1(3.3℃)に達した時点(t1、図11のS2において「=」)で1次温度制御が行われる。具体的には、上昇傾向にある庫内温度Dが、目標温度D0(3℃)より上昇して圧縮機オン温度Dn1(3.3℃)に達した時点(t1)で、制御装置25は循環ファン5を低速回転させた状態のままで圧縮機9を起動させ、同時に加熱ヒータ4を作動させる(図11のS3)。このように、庫内温度Dが目標温度D0から0.3℃上昇した時点で圧縮機9を作動させて、それまで上昇傾向にあった庫内温度Dを低下させるようにしていると、圧縮機オン温度Dn1の近傍における温度変化を緩やかにして、庫内温度Dがオーバーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。また、循環ファン5を低速回転させた状態で、圧縮機9と加熱ヒータ4を作動させるので、加熱ヒータ4を作動させずに圧縮機9のみを起動した場合に比べて、庫内温度Dを緩やかに低下させて、オン保護時間T1が経過するときの温度低下を緩やかにし、冷え過ぎを防止することができる。これにより、圧縮機9が起動してから、次に圧縮機9が停止するまでの時間をオン保護時間T1より充分に長くして、圧縮機9が頻繁に作動するのを防止できる。さらに、循環ファン5を低速回転させた状態で、圧縮機9だけでなく、同時に加熱ヒータ4を作動させるので、庫内Rに短時間に多量の冷風が送給されることを抑えることができる。従って、庫内温度Dにバラツキが生じることを抑えて、庫内温度Dの均一化に貢献できる。
【0026】
1次温度制御を行っている状態で、加熱ヒータ4の作動を開始してから加熱時間T3が経過すると(t2、図11のS4でYES)、制御装置25は、加熱ヒータ4の作動を停止させて(図11のS5)2次温度制御を行う。かかる加熱時間T3は、補正値テーブル31に格納された補正値から導くことができ、外気温の変化に応じて異なっており、外気温が低い場合の時間T3は、外気温が高い場合の時間T3に比べて長くなるように設定されている。以上のような2次温度制御では、加熱ヒータ4の作動が停止されるため、庫内温度Dの低下度合いは、2次温度制御を行う前の庫内温度Dの低下度合いに比べて大きくなる。
【0027】
2次温度制御を行っている状態において、圧縮機9が起動してから停止可能な最低オン時間である「オン保護時間T1」が経過したことが発停保護タイマー30により計時されたときに(t3、図11のS6で「YES」)、庫内温度Dが目標温度D0を超えていると(図11のS7で「YES」)、制御装置25は、循環ファン5の回転速度を低速回転から中速回転に切り替える3次温度制御を行う(t3、図11のS8)。このように循環ファン5の回転速度を低速回転から中速回転に上昇させることにより、蒸発器14における熱交換量が増えるので、庫内温度Dの低下を促進することができる。また、蒸発器14における熱交換量が増えるので、庫内温度Dを目標温度D0まで速やかに低下できるうえ、庫内の冷気の循環度合を高めて庫内温度を均一にできる。さらに、3次温度制御において、庫内温度Dが目標温度D0まで低下した後は(図11のS9で「YES」)、循環ファン5を低速回転させる(t4、図11のS10)。このように、循環ファン5を低速回転させることにより、蒸発器14における熱交換量を減少させることができるので、庫内温度Dの低下度合いを緩やかなものとして、圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにすることができる。
【0028】
3次温度制御後に、低下傾向にある庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1(2.7℃)まで低下すると(t5、図11のS11で「YES」)、制御装置25は、圧縮機9の作動を停止させて、庫内温度Dを上昇に転向させる4次温度制御を行う(図11のS12)。このように、庫内温度Dが目標温度D0から0.3℃低下した時点で早めに圧縮機9を停止させることで、庫内温度Dの低下傾向を弱めることができるので、圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにして、庫内温度Dがアンダーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。
【0029】
4次温度制御を行ったのちは当初状態に戻って、再び1次温度制御を行う。4次温度制御後の庫内温度は、保冷庫本体1およびドア2を介して失われる冷熱分ずつ上昇するだけであるので、庫内温度が冷凍装置3で強制的に低下される場合に比べて、温度上昇傾向は極めて緩やかで緩慢なものとなる(t5〜t6)。そのため、外気温が極端に高い場合はともかく、外気温度が常温温度帯である多くの場合には、発停保護タイマー30で計測された時間が圧縮機9のオフ保護時間T2が経過するまでに、庫内温度Dが圧縮機オン温度Dn1まで上昇するおそれは少ない。従って、圧縮機9が停止してから、圧縮機9が次に起動するまでの時間をオフ保護時間T2より充分に長くして、圧縮機9が頻繁に作動するのを防止できる。尤も、発停保護タイマー30で計測された時間が、圧縮機9のオフ保護時間T2を経過していない場合には(図11のS1で「NO」)、圧縮機9は作動されない。
【0030】
以上のように、高精度運転モードにおける通常制御モードでは、特に、1次温度制御において、循環ファン5を低速回転させた状態で、圧縮機9と加熱ヒータ4を作動させるようにしたので(t1、図11のS3)、加熱ヒータ4を作動させずに圧縮機9のみを起動した場合に比べて、庫内温度Dを緩やかに低下させて、オン保護時間T1が経過するときの温度低下を緩やかにし、冷え過ぎを防止することができる。また、温度低下を緩やかにできるので、圧縮機9が起動してから、次に圧縮機9が停止するまでの時間をオン保護時間T1より充分に長くして、圧縮機9が頻繁に作動するのを防止できる。また、循環ファン5を低速回転させた状態で、圧縮機9だけでなく、同時に加熱ヒータ4を作動させるようにしたので(t1)、庫内Rに一度に多量の冷風が送給されることはなく、庫内温度Dにバラツキが生じることを抑えて、庫内温度Dを均一にできる。
【0031】
(第1復帰モード)
高精度運転モードにおける第1復帰モードについて、図5のタイムチャートと、図11図12のフローチャートを参照して説明する。例えば、外気温が庫内温度Dより高い状態でドア2を開放して医薬品の出し入れを行う場合には(t0)、外気が庫内Rに入込むため、圧縮機9のオフ保護時間T2が経過していないにも拘わらず、庫内温度Dが目標温度帯の上限温度(D0+1℃)を大きく越えることがある(t1)。さらに、ドア2の開放時間が長引く場合にも、庫内温度Dが目標温度帯の上限温度(D0+1℃)を大きく超えることがある。こうした状況に陥ると、制御装置25は、圧縮機9と加熱ヒータ4と循環ファン5の作動状態を第1復帰モードで制御して、庫内温度Dを速やかに目標温度帯(D0±1℃)まで低下させる。かかる第1復帰モードでは、目標温度D0+γ(本実施例では、目標温度D0を中心とする目標温度帯の高温側の温度幅(+1℃)の2倍の温度(2℃))で規定される上限閾値温度に基づいて、制御装置25は圧縮機9と加熱ヒータ4と循環ファン5の作動状態を制御する。つまり本実施例では、目標温度D0よりも2℃高い温度に上限閾値温度を設定している。
【0032】
第1復帰モードにおいては、制御装置25は、ドア2が閉じ操作されて開閉センサ17がオン状態に切り換った状態で(t0)、発停保護タイマー30により計時されたオフ保護時間T2が経過するのを待ち(図11のS1で「YES」)、その時点で庫内温度Dが圧縮機オン温度Dn1を超えていた場合には(図11のS2で「>」)、制御装置25は循環ファン5を低速回転させた状態のままで、圧縮機9と加熱ヒータ4を作動させ(t1、図11のS13)、このときの庫内温度Dが目標温度D0よりも2℃高い上限閾値温度を超えているときには(図11のS14で「>」)、5次温度制御を行う。なお、庫内温度Dが上限閾値温度以下の場合には(図11のS14で「≦」)、5次温度制御を行わず、通常制御モードに移行する(図11のS4)。
【0033】
第5次温度制御では、制御装置25は加熱ヒータ4を停止しながら(図12のS15)、庫内温度Dが上限閾値温度まで低下するまで(t2、図12のS16で「YES」)、圧縮機9を作動させる。かかる第5次温度制御において、圧縮機オン保護時間T1の経過までに(図12のS21で「NO」)、庫内温度Dが上限閾値温度まで低下した場合には(t2、図12のS16で「YES」)、加熱ヒータ4を作動させて(図12のS17)、庫内温度Dを緩やかに低下させる6次温度制御を行う。
【0034】
6次温度制御において、加熱ヒータ4の作動時間が加熱時間T3に至ると(図12のS18で「YES」)、加熱ヒータ4を停止させる(t3、図12のS19)。6次温度制御を行ったのちに、オン保護時間T1が経過したことを発停保護タイマー30が計時した時点で(t4、図12のS20で「YES」)、先の通常制御モードの3次温度制御に移行し、循環ファン5を中速回転させて庫内温度Dを低下させ(図11のS8)、庫内温度が目標温度D0まで低下した時点(t5)で、循環ファン5を低速回転させて庫内温度Dの低下速度を緩和する。なお、庫内温度Dが上限閾値温度まで低下する前に(図12のS16で「NO」)、圧縮機オン保護時間T1が経過した場合にも(図12のS21で「YES」)、先の通常制御モードの3次温度制御に移行する(図11のS8)。加熱ヒータ4の通電時間T3が経過する前に(図12のS18で「NO」)、圧縮機9のオン保護時間T1が経過した場合にも(図12のS22で「YES」)、加熱ヒータ4を停止して(図12のS23)、先の通常制御モードの3次温度制御に移行する(図11のS8)。6次温度制御における加熱ヒータ4は、庫内温度Dが上限閾値温度まで低下してから作動し始めるので、加熱ヒータ4が作動を停止して循環ファン5が中速回転されるまでの時間(t3〜t4)は、通常制御モードの場合に比べて短くなる。
【0035】
上記のように、5次温度制御においては、圧縮機9のみを起動するので、上限閾値温度(D0+2℃)を越えた庫内温度Dを、当該上限閾値温度(D0+2℃)まで急速に低下させることができる。また、6次温度制御においては、庫内温度Dが上限閾値温度(D0+2℃)まで低下した時点で、加熱ヒータ4を加熱時間T3だけ作動させて庫内温度Dを緩やかに低下させるので、オン保護時間T1が経過するときの温度低下を緩やかにし、冷え過ぎを防止することができる。さらに、圧縮機9が起動してから、圧縮機9が停止するまでの時間を、オン保護時間T1より充分に長くすることができるので、圧縮機9が頻繁に作動するのを防止できる。6次温度制御の終段においては、3次温度制御へ移行して、循環ファン5を中速回転させて庫内温度Dを低下させ、庫内温度Dが目標温度D0まで低下した時点で、循環ファン5を低速回転させて庫内温度Dの低下速度を緩和し、庫内温度Dの低下傾向を弱めることができる。従って、圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにして、庫内温度Dがアンダーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。3次温度制御が終了した後は、通常制御モードの4次温度制御に移行する。
【0036】
(第2復帰モード)
高精度運転モードにおける第2復帰モードについて、図6のタイムチャートと図11のフローチャートを参照して説明する。外気温が庫内温度Dより低い状態でドア2を開放して医薬品の出し入れを行う場合には、外気が庫内Rに入込むため、発停保護タイマー30により計時される圧縮機9のオン保護時間T1が経過していないにも拘わらず、庫内温度Dが目標温度D0を越えて低くなることがある。こうした状況においては、制御装置25は、圧縮機9と加熱ヒータ4と循環ファン5の作動状態を、以下のような第2復帰モードで制御して、庫内温度Dが急速に低下するのを防止する。
【0037】
第2復帰モードにおいては、ドア2が閉じ操作されて開閉センサ17がオン状態に切換ったとき(t0)、庫内温度Dは低下傾向にあるため、圧縮機9のオン保護時間T1が経過する前に庫内温度Dが目標温度D0まで低下してしまうことがある。その場合には、圧縮機9のオン保護時間T1が経過したとしても(t1、図11のS6で「YES」、S7で「NO」)、循環ファン5は依然として低速回転させた状態に保持する7次温度制御を行う。また、7次温度制御において、庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1まで達した時点(t2)で、圧縮機9の作動を停止して庫内温度Dを上昇に転移させる通常制御モードの4次温度制御に移行する。
【0038】
上記のように、7次温度制御においては、圧縮機9のオン保護時間T1が経過する前に庫内温度Dが目標温度D0まで低下しているので、循環ファン5を低速回転状態に維持して、蒸発器14における熱交換量を小さくする。これにより、以後の庫内温度Dの低下度合いを緩やかなものとすることができる。また、7次温度制御においては、低下傾向にある庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1(2.7℃)まで低下した時点で、早めに圧縮機9を停止させるので、庫内温度Dの低下傾向を弱めて圧縮機オフ温度Df1の近傍における温度変化を緩やかにすることができる。従って、第2復帰モードにおいても、庫内温度Dがアンダーシュート状態に陥るのを確実に防止できる。
【0039】
加えて、高精度運転モードの通常制御モードにおいては、除霜センサ15の検知温度に基づき、一定時間(3時間)おきに、以下に詳述するような第1除霜モードを行い、さらにドア2が開放される毎に第2除霜モードを行って、蒸発器14の冷媒管やフィン群に付着した霜を除去する。図7に、第1除霜モードのタイムチャートを、図8に第2除霜モードのタイムチャートを示す。
【0040】
(第1除霜モード)
第1除霜モードは、通常制御モードにおいて設定された3時間が経過し、低下傾向にある庫内温度が圧縮機オフ温度Df1(2.7℃)まで低下して圧縮機9の作動が停止された直後に開始される(t0)。詳しくは、制御装置25は、圧縮機9が停止するのと同時に循環ファン5を第2の回転速度よりも高速の第3の回転速度(高速回転)で回転させ、蒸発器14における熱交換量を増加させて、蒸発器14のフィン群や冷媒管に付着した霜や氷を除去する。このとき、循環ファン5を除霜完了まで連続して高速回転させると、圧縮機9のオフ保護時間T2が経過する前に、庫内温度Dが上昇して目標温度帯の上限温度(D0+1℃)を越えてしまうおそれがある。そこで、制御装置25は、圧縮機9が停止する毎に循環ファン5を断続的に高速回転させ、しかも循環ファン5の運転停止条件を、除霜センサ15の設定温度R0(1.5℃)と実際の検知温度との関係、あるいは除霜時の庫内温度に応じて以下のように設定する。
【0041】
循環ファン5が1回目に高速回転された場合には(t0)、除霜センサ15の検知温度C1が下記の条件式1を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させる。あるいは、庫内の目標温度D0(3℃)に対して実際の庫内温度Dが下記の条件式2を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させている。
(R0:設定温度、C1:除霜センサ15の検知温度、目標温度D0)
条件式1・・・((R0−0.5℃)<C1)
条件式2・・・((D0+1.5℃)<実際の庫内温度D)
図7において、1回目に循環ファン5が高速回転された場合には、除霜センサ15の検知温度C1が最低温度から(R0−0.5℃)まで上昇した時点で、循環ファン5を低速回転させている(t1)。循環ファン5を低速回転させたのちは、先に説明した通常制御モードの1次温度制御から4次温度制御を行って、庫内温度Dが目標温度帯の上限温度を越えるのを防止し、圧縮機9が停止されるのを待って循環ファン5を再び高速回転させる。
【0042】
循環ファン5が2回目に高速回転された場合には(t2)、除霜センサ15の検知温度C1が下記の条件式3を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させる(t3)。あるいは、庫内の目標温度D0(3℃)に対して実際の庫内温度が前記の条件式2を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させている。
条件式3・・・(R0<C1)
図7において、2回目に循環ファン5が高速回転された場合には、上昇傾向にある除霜センサ15の検知温度C1が設定温度R0(1.5℃)に達した時点(t3)で循環ファン5を低速回転させている。
【0043】
循環ファン5が3回目あるいは4回目に高速回転された場合には(t4、t6)、除霜センサ15の検知温度C1が下記の条件式4を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させる(t5、t7)。あるいは、庫内の目標温度D0(3℃)に対して実際の庫内温度が前記の条件式2を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させている。
条件式4・・・((R0+0.5)<C1)
図7において、3回目および4回目に循環ファン5が高速回転された場合には、上昇傾向にある除霜センサ15の検知温度C1が2℃に達した時点(t5、t7)で循環ファン5を低速回転させている。
【0044】
上記のように、圧縮機9が停止する毎に循環ファン5を断続的に高速回転し、しかも循環ファン5の運転を停止するときの除霜センサ15の検知温度C1を徐々に高くすると、庫内温度Dが目標温度帯の上限を超えて上昇するのを防止しながら、蒸発器14の除霜を確実に行うことができる。因みに、従来の医薬用保冷庫においては、圧縮機が停止する毎に除霜運転を行ってから冷却運転を行っていた。また、圧縮機が停止する毎に除霜運転を行っても、充分に除霜できていない場合には、一定時間おきに除霜運転を行って冷却運転に移行していた。しかし、こうした運転制御方式では、除霜運転時に庫内温度が目標温度帯の上限を超えて上昇するのを避けられず、医薬品の変質や劣化を生じやすい点で問題があった。
【0045】
(第2除霜モード)
第2除霜モードについて、図8を参照して説明する。医薬品などの出し入れのためにドア2を開閉すると、庫内Rに浸入した外部空気に含まれる水分が蒸発器14に着霜して熱交換効率が低下する。こうした不具合を解消するために、第2除霜モードにおいてはドア2が開放される毎に除霜運転を行って、蒸発器14の冷媒管やフィン群に付着した霜を除去する。詳しくは、ドア2が開放されて(t0)、庫内温度Dが目標温度帯の上限温度を越えて上昇した場合には、通常制御モードにおいてドア2が閉じ操作されて開閉センサ17がオン状態に切換り、さらに圧縮機9のオフ保護時間T2が経過すると圧縮機9を起動する(t1)。圧縮機9が起動してから停止可能なオン保護時間T1が経過したことが発停保護タイマー30により計時されると、制御装置25は、循環ファン5を中速回転させて庫内温度Dの低下を促進させ(t2)、庫内温度Dが目標温度D0まで低下した時点で、循環ファン5を低速回転させて庫内温度Dの低下速度を緩和する(先の通常制御モードの3次温度制御)。庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1(2.7℃)まで低下すると(t3)、圧縮機9を停止して第2除霜モードに移行する。なお、圧縮機9を起動したときの庫内温度Dが5℃未満である場合には、圧縮機9の起動と同時に循環ファン5を低速回転から中速回転に増速して、庫内温度Dの低下を促進し、庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1(2.7℃)まで低下すると(t3)、圧縮機9を停止して第2除霜モードに移行する。
【0046】
第2除霜モードにおいては、圧縮機9が停止するのと同時に循環ファン5を高速回転させ(t3)、蒸発器14における熱交換量を増加させて、蒸発器14のフィン群や冷媒管に付着した霜や氷を除去する。循環ファン5の運転停止条件は、除霜センサ15の設定温度R0(1.5℃)と実際の検知温度の関係に応じて以下のように設定している。
【0047】
循環ファン5が1回目に高速回転された場合には(t3)、除霜センサ15の検知温度C1が下記の条件式5を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させる(t4)。あるいは、循環ファン5が高速回転を開始してから20分が経過しているにも拘らず、除霜センサ15の検知温度C1が上昇しない場合、例えば((R0+1℃)>=C1)であるとき循環ファン5を低速回転させる(t4)。
条件式5・・・((R0+1℃)<C1)
【0048】
第2除霜モードにおいては、循環ファン5を中速回転から高速回転に増速して(t3)、蒸発器14における熱交換量を高めて除霜を行う。循環ファン5を高速回転させて除霜が進行するのに伴って、除霜センサ15の検知温度C1が上昇するが、検知温度C1が(設定温度R0+1℃=2.5℃)まで上昇した時点で循環ファン5を低速回転させる(t4)。このように、循環ファン5が高速回転から低速回転へ切換えられるのは、圧縮機9の停止からオフ保護時間T2が経過する前であり、オフ保護時間T2が経過した時点で再び圧縮機9を起動し、同時に加熱ヒータ4を作動させて、庫内温度を低下傾向とする。なお、圧縮機9の停止からオフ保護時間T2が経過して、圧縮機9が起動されたときの庫内温度Dは、圧縮機オン温度Dn1をわずかに上回っており、圧縮機9のオン保護時間T1が経過した時点で、循環ファン5を低速回転から中速回転に増速して庫内温度Dの低下を促進する(t5)。
【0049】
庫内温度Dが目標温度D0(3℃)まで低下したら(t6)、循環ファン5を低速回転させて、以後の温度低下を緩やかなものとする。庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df1(2.7℃)まで低下した状態で圧縮機9を停止し(t7)、同時に循環ファン5を高速回転させ、蒸発器14における熱交換量を増加させて、蒸発器14のフィン群や冷媒管に付着した霜や氷を再び除去する。循環ファン5が2回目に高速回転されたときには(t7)、除霜センサ15の検知温度C1が先に説明した条件式3(R0<C1)を満たし、その状態が3秒間維持された場合に循環ファン5を低速回転させる(t8)。あるいは、循環ファン5が高速回転を開始してから20分が経過しているにも拘らず、除霜センサ15の検知温度C1が上昇しない場合、例えば((R0+1℃)>=C1)であるとき循環ファン5を低速回転させる(t8)。
【0050】
図8において、2回目に循環ファン5が高速回転された場合には(t7)、上昇傾向にある除霜センサ15の検知温度C1が設定温度R0(1.5℃)に達した時点で循環ファン5を低速回転させている(t8)。このように、第2除霜モードにおいては、圧縮機9が停止するのと同時に循環ファン5を2回に分けて断続的に高速回転する。また、除霜センサ15の検知温度C1が(設定温度R0+1℃=2.5℃)まで上昇した時点と、検知温度C1が設定温度R0(1.5℃)に達した時点で循環ファン5を低速回転させて、庫内温度Dの急上昇を防止する。従って、庫内温度Dが目標温度帯の上限を超えて上昇するのを防止しながら、ドア2が開放される毎に蒸発器14の除霜を確実に行うことができる。
【0051】
(エコモード)
エコモードについて、図9のタイムチャートを参照して説明する。図9に示すように、圧縮機9がオフ状態にあり、循環ファン5が低速回転されており、上昇傾向にある庫内温度が圧縮機9のオン温度Dn2以下である状態を当初状態とするとき(t0)、制御装置25は、以下のような制御を行って、庫内温度Dを目標温度帯に維持する。ここでは、目標温度D0は3℃であり、目標温度帯は目標温度D0が中心とした±2℃の範囲、すなわち1℃〜5℃(3℃±2℃)に設定されている。
【0052】
まず、当初状態(t0)においては、循環ファン5が低速回転されているだけであり、圧縮機9はオフ状態にあるため、蒸発器14による冷却動作は行われず、庫内温度Dは時間の経過とともに穏やかに上昇する。そして、上昇傾向にある庫内温度Dが、目標温度D0(3℃)より上昇して圧縮機オン温度Dn2(3.7℃)に達した時点(t1)で、制御装置25は圧縮機9を起動させて蒸発器14による冷却動作を開始し、庫内温度Dを低下させる。圧縮機9が起動してから停止可能なオン保護時間T1が経過したことが発停保護タイマー30により計時されると(t2)、制御装置25は、循環ファン5の回転速度を低速回転から中速回転に切り替える。
【0053】
循環ファン5の回転速度を低速回転から中速回転に上昇させることにより、蒸発器14における熱交換量が増えるので、庫内温度Dの低下を促進することができる。庫内温度Dを目標温度D0まで速やかに低下できるうえ、庫内Rの冷気の循環度合を高めて庫内温度Dを均一にできる。低下傾向にある庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df2(2.3℃)まで低下すると(t3)、制御装置25は、圧縮機9の作動を停止させるとともに、循環ファン5の回転速度を中速回転から低速回転に低下させて、庫内温度Dを上昇に転向させる。このように、庫内温度Dが圧縮機オフ温度Df2(2.3℃)まで低下すると(t3)、圧縮機9の作動の停止と同時に、循環ファン5の回転速度を中速回転から低速回転に低下させると、庫内温度Dを穏やかに上昇させることができるので、庫内温度Dが圧縮機オン温度Dn2に至って、圧縮機9が起動するまでの時間をオフ保護時間T2より充分に長くすることができる。以後は、上述と同様の手順で圧縮機9と循環ファン5の作動状態を制御することで、庫内温度Dを目標温度帯に維持することができる。
【0054】
図10に、高精度運転モードの通常制御モードにおける庫内温度変化の確認試験結果を示す。本確認試験は、高精度運転モードにおける庫内Rの全体における庫内温度Dのバラツキ具合や、庫内温度Dの均一具合を確認するためのものであり、図10(b)に示すように、薬品保管庫の庫内Rの上下3段に設置された各棚16の4つのコーナー部と中央部のそれぞれに温度センサを設置して、通常制御モードで運転したときの各温度センサにより検出された庫内温度Dの変化を捉えている。
【0055】
ここでは、上段の棚16における4つのコーナー部に係る測定点をA〜Dとし、棚16の中央部に係る測定点をEとしている。同様に、中段部の棚16に係る測定点をF〜Jとし、下段の棚16に係る測定点をK〜Oとしている。外気条件は、気温30℃、湿度60%であった。設定温度(目標温度D0)は3℃とした。測定時間は3時間とした。
【0056】
図10(a)に示すように、各測定点(A〜O)における平均温度を見てみると、最低温度は3.3℃(測定点J)であり、最高温度は3.8℃(測定点A、D、E)であった。このことから本実施例に係る薬品保管庫の高精度運転モードでは、庫内Rの全測定点における平均温度は、目標温度D0に対して±1.0℃の範囲内に収めることができ、庫内温度分布を、水平方向のみならず垂直方向においても、バラツキ無く均一に保つことができることが確認できた。
【0057】
加えて、各測定点(A〜O)における温度変動幅は、最大で1.8℃(測定点F)であった(最小は1.0℃(測定点E))。このことから本実施例に係る薬品保管庫の高精度運転モードでは、庫内Rの各測定点における温度変動幅は、2℃以内に収めることができ、庫内全体において優れた温度安定性を備えるものであることが確認できた。
【0058】
さらに、全測定点における最高温度は4.4℃(測定点A、B、C、D、N)であり、最低温度は2.5℃(測定点F、J)であることから、全測定点における変動幅は1.9℃(4.4℃−2.5℃)であった。このことから本実施例に係る薬品保管庫の高精度運転モードでは、庫内Rの各測定点における温度変動幅だけでなく、庫内Rの全測定点における温度変動幅も2℃以内に収めることができ、庫内全体において優れた温度安定性を備えるものであることが確認できた。
【0059】
上記実施例では、冷却貯蔵庫を薬品保管庫に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。目標温度や目標温度帯は、上記実施例に示したものに限られない。
【符号の説明】
【0060】
1 貯蔵庫本体(保管庫本体)
2 ドア
3 冷却装置
4 加熱ヒータ
5 循環ファン
6 温度センサ
9 圧縮機
25 制御装置
26 温度設定部
30 発停保護タイマー
31 補正値テーブル
R 庫内
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図12