(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フォースリミッタ部材は、前記荷重付与部における前記フォースリミッタ部材の支持部分から反移動方向側への所定範囲で前記フォースリミッタ部材の支持部分における前記荷重付与部の接線方向へ長くされたタイミング調整部を備える請求項1又は請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の各実施の形態を
図1から
図8に基づいて説明する。なお、各図において矢印FRは、本ウェビング巻取装置10が適用された車両前側を示し、矢印OUTは、車幅方向外側を示し、矢印UPは、車両上側を示す。また、各図において矢印Aは、本ウェビング巻取装置10のスプール18がウェビング20を巻取る際のスプール18の回転方向である巻取方向を示し、矢印Bは、巻取方向とは反対の引出方向を示す。
【0021】
また、以下の各実施の形態を説明するにあたり、第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位については、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0022】
<第1の実施の形態の構成>
図1に示されるように、ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、本ウェビング巻取装置10が適用される車両のリヤシートの車両後側で車体(何れも図示省略)に固定されている。フレーム12は、一対の脚板14、16を備えており、これらの脚板14、16は、車幅方向に互いに対向されている。フレーム12の脚板14と脚板16との間には、スプール18が設けられている。スプール18は、略円筒形状に形成されている。スプール18の中心軸線方向は、車幅方向に沿っており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。スプール18には、長尺帯状のウェビング20の長手方向基端部が係止され、ウェビング20は、スプール18の外周部に巻取られている。
【0023】
ウェビング20は、スプール18から車両前側へ引出されている。スプール18から引出されたウェビング20は、リヤシートにおける乗員の着座位置の車幅方向外側で、リヤシートのシートバックの車両上側を通ってシートバックに沿って車両下側へ延び、リヤシートのシートバックとシートクッション(何れも図示省略)の間を通っている。リヤシートのシートクッションの車両下側には、アンカプレート(図示省略)が設けられている。アンカプレートは、車両の床部等の車体に固定されており、アンカプレートには、ウェビング20の長手方向先端部が係止されている。
【0024】
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、タングとバックル装置(何れも図示省略)とを備えている。タングは、リヤシートのシートバックの車両前側においてウェビング20に設けられており、タングは、ウェビング20に沿って移動可能とされている。これに対して、バックル装置は、リヤシートの着座位置の車幅方向内側に設けられている。リヤシートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、タングがバックル装置に係合されることによって、乗員の身体にウェビング20が装着される。
【0025】
一方、フレーム12の車幅方向内側には、渦巻きばね等のスプール付勢手段が設けられており、スプール18は、スプール付勢手段に直接又は間接的に連結され、スプール18は、スプール付勢手段によって巻取方向へ付勢されている。また、フレーム12の車幅方向内側には、プリテンショナ(図示省略)が設けられている。プリテンショナは、車両衝突時等の車両緊急時に作動され、プリテンショナが作動されることによって、スプール18が巻取方向へ回転され、これによって、ウェビング20が、その長手方向基端側からスプール18に巻取られる。
【0026】
また、スプール18の内側には、回転力吸収部材としてのトーションバー22が設けられている。トーションバー22は、車幅方向に長い棒状とされており、トーションバー22の車幅方向内側端部は、スプール18の内側に配置されている。トーションバー22の車幅方向内側端部は、スプール18に連結されており、スプール18に対する相対回転が阻止されている。
【0027】
一方、スプール18の車幅方向外側には、ロック手段としてのロック機構28を構成するロック回転体としてのロックベース30が設けられている。ロックベース30にはトーションバー22の車幅方向外側端部が連結されており、トーションバー22の車幅方向外側端部は、ロックベース30に対する相対回転が阻止されている。ロックベース30は、フレーム12の脚板16に形成されたラチェット孔34の内側に配置されている。
【0028】
さらに、ロックベース30には、ロック部材としてのロックパウル36が設けられている。ロックパウル36には、フレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯に噛合可能なラチェット歯が形成されており、ロックパウル36がロック方向(
図1及び
図2の矢印C方向)へ移動されると、ロックパウル36のラチェット歯がラチェット孔34のラチェット歯へ接近されてラチェット孔34のラチェット歯に噛合う。これによって、ロックベース30の引出方向への回転が阻止される。
【0029】
一方、ロック機構28は、センサ機構(図示省略)を備えている。センサ機構は、車両衝突時等の車両緊急時における車両の加速度(減速度)又は車両衝突時等の車両緊急時におけるスプール18の引出方向への回転加速度が作用されることによって作動され、センサ機構が作動されることによってロックパウル36は、フレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯へ接近移動される。
【0030】
一方、
図1及び
図2に示されるように、本ウェビング巻取装置10は、フォースリミッタ手段としてのセレクタブルフォースリミッタ機構42を備えている。なお、以下、「セレクタブルフォースリミッタ」を「SFL」と省略して記載する。SFL機構42は、ベース部材としてのSFLハウジング44を備えている。SFLハウジング44の車幅方向外側には、カバー部材としてのSFLシート46が設けられている。SFLハウジング44及びSFLシート46は、板状に形成されており、SFLハウジング44の厚さ方向及びSFLシート46の厚さ方向は、車幅方向に沿っている。SFLハウジング44及びSFLシート46は、フレーム12の脚板14と脚板16との間における脚板16側に設けられており、SFLハウジング44及びSFLシート46は、ねじ等の締結手段によってフレーム12の脚板16に固定されている。
【0031】
SFLハウジング44には、ベースリング収容部48が形成されている。ベースリング収容部48は、SFLハウジング44において車幅方向外側面で開口された孔部とされ、ベースリング収容部48の内側には、SFL回転体としてのベースリング50が設けられている。ベースリング50は、外側面の断面形状が円形のリング状に形成されており、ベースリング50は、スプール18に対する同軸上に設けられている。ベースリング50の車幅方向内側端部は、SFLハウジング44に回転自在に支持されており、ベースリング50の車幅方向外側端部は、SFLシート46に回転自在に支持されている。
【0032】
ベースリング50の内側には、スプール18の車幅方向外側端部に形成されたパウル収容部56が配置されている。パウル収容部56には、SFL連結部材としてのSFLパウル58が設けられている。SFLパウル58は、ロック機構28のロックベース30に連結されており、スプール18がロックベース30に対して引出方向へ相対回転されることによってロックベース30との連結が解消される。このようにSFLパウル58とロックベース30との連結が解消されると、SFLパウル58は、付勢力等によってベースリング50に接近移動され、SFLパウル58のラチェット歯がベースリング50の内側面のラチェット歯に噛合う。
【0033】
一方、ベースリング50には、エネルギー吸収長尺部材としてフォースリミッタ手段のフォースリミッタ部材を構成するワイヤ60が設けられている。ワイヤ60は、長尺の金属線材によって螺旋形状に形成されている。ワイヤ60の長手方向先端側は、ワイヤ60の長手方向基端側に対して引出方向側へ向いており、更に、ワイヤ60の長手方向先端側は、ワイヤ60の長手方向基端側に対して車幅方向内側へ変位されている。この螺旋形状のワイヤ60は、ベースリング50の径方向外側に設けられる。
【0034】
また、ワイヤ60は、弾性力によってSFLハウジング44のベースリング収容部48の内側面に圧接され、これによって、ワイヤ60は、初期状態でSFLハウジング44に保持されている。さらに、ワイヤ60の長手方向先端部は、ベースリング50に形成されたワイヤ係止部(図示省略)に係止されている。これによって、ワイヤ60は、ベースリング50と共に回転される。また、SFLハウジング44のベースリング収容部48内におけるベースリング50の車両後側にはピース62が設けられている。ピース62の車両後側には、ワイヤ60の長手方向先端側の第1巻目部分が通っており、ワイヤ60の長手方向先端側の第1巻目部分よりも長手方向基端側は、ピース62の車両前側を通っている。
【0035】
また、ピース62は、フォースリミッタ手段の荷重付与部としての第1しごき部64を備えている。第1しごき部64は、ピース62の車両上側部分の一部とされている。第1しごき部64は、車幅方向外側から見て、概ね、車両上下方向に長くされており、第1しごき部64の車両上側端は、車両後側へ膨らむように湾曲されている。さらに、ピース62は、フォースリミッタ手段の荷重付与部としての第3しごき部66を備えている。第3しごき部66は、ピース62の車両後側部分の一部とされており、第1しごき部64の車両下側に設けられている。第3しごき部66の車両後側端は、車両後側へ膨らむように湾曲されている。第1しごき部64と第3しごき部66との間は谷部68とされている。谷部68は、車両前下側へ凹んでおり、谷部68の底は、第1しごき部64の車両上側端よりも車両下側で第3しごき部66の車両後側端よりも車両前側に配置されている。
【0036】
一方、
図1及び
図2に示されるように、SFLハウジング44には、阻止解除手段を構成する駆動装置72が設けられている。駆動装置72は、ベースカートリッジ74を備えている。ベースカートリッジ74は、SFLハウジング44又はSFLシート46に連結されて保持されている。また、ベースカートリッジ74は、筒状に形成されており、車両上下方向(
図1及び
図2の矢印UP方向及びその反対方向)に貫通されている。ベースカートリッジ74には、駆動手段としてのマイクロガスジェネレータ78と移動部材としてのピストン84が設けられている。以下、「マイクロガスジェネレータ」を「MGG」と省略して記載する。
【0037】
MGG78は、ベースカートリッジ74の車両上側端からベースカートリッジ74へ挿入されている。MGG78の車両上側部分には、コネクタ(図示省略)が接続されている。MGG78は、コネクタを介して制御手段としてのECU(図示省略)に接続されている。ECUは、例えば、リヤシートのシートクッション等に設けられた荷重センサ、本ウェビング巻取装置10のスプール18から引出されたウェビング20の長さを検出するウェビング引出長さ検出センサ等の体格検出手段に電気的に接続されている。
【0038】
ECUでは、体格検出手段から出力される体格検出信号に基づいて、リヤシートの着座位置に着座した乗員の体格が標準以上であるか否かが判定される。ECUにおいて乗員の体格が標準未満であると判定された場合には、車両衝突時等の車両緊急時にECUから出力される起動信号がHighレベルからLowレベルに切替わり、MGG78が作動される。これによって、MGG78にてガスが発生され、このガスの圧力によってピストン84が車両下側(
図2の矢印D方向)へ移動される。
【0039】
ピストン84の車両下側には切替パウル90が設けられている。切替パウル90は、SFLハウジング44及びSFLシート46の少なくとも一方に支持されており、切替パウル90は、車幅方向を軸方向とする軸周り方向へ回動可能とされている。切替パウル90は、荷重受け片94を備えている。荷重受け片94は、ピストン84の車両下側でピストン84の先端(車両下側端)と対向されており、MGG78が作動されてピストン84が車両下側へ移動されると、荷重受け片94は、ピストン84によって押圧される。これによって、切替パウル90は、車幅方向を軸方向とする軸周り方向の一方である保持解除方向(
図1及び
図2の矢印F方向)へ回動される。
【0040】
また、切替パウル90の車両前側には、SFLレバー96が設けられている。SFLレバー96は、SFLハウジング44及びSFLシート46の少なくとも一方に支持されており、SFLレバー96は、車幅方向を軸方向とする軸周り方向へ回動可能とされている。SFLレバー96及び切替パウル90の初期状態(
図2における実線状態)で切替パウル90の保持片92がSFLレバー96に対して車両後上側から当接されている。これによって、SFLレバー96は、車幅方向を軸方向とする軸周り方向の一方である離脱方向(
図1及び
図2の矢印E方向)への回動が阻止されており、切替パウル90が保持解除方向(
図1及び
図2の矢印F方向)へ回動されて保持片92のSFLレバー96との当接が解消されることによってSFLレバー96は、離脱方向へ回動される。
【0041】
さらに、SFLレバー96は、フォースリミッタ手段の荷重付与部としての第2しごき部98を備えている。第2しごき部98の先端部は、SFLレバー96の初期状態でピース62の第3しごき部66の車両後側端と第1しごき部64の車両上側端との間に配置されており、第2しごき部98の先端は、ピース62の谷部68と対向されている。また、SFLレバー96の初期状態で第2しごき部98の先端は、車両前下側へ膨らむように湾曲されており、この状態で、ワイヤ60の長手方向先端側の第1巻目部分は、ピース62とSFLレバー96の第2しごき部98の先端との間を通っている。
【0042】
図6に示されるように、SFLレバー96の初期状態でワイヤ60においてピース62の第1しごき部64よりも長手方向先端側部分と、第3しごき部66よりも長手方向基端側部分との間の長さが最も短くなった場合には、ワイヤ60は、第1しごき部64の車両上側端、SFLレバー96の第2しごき部98の先端、第3しごき部66の車両後側端へ当接される。この状態では、ワイヤ60の第1しごき部64よりもワイヤ60の長手方向先端側部分におけるワイヤ60の長手方向(
図6の一点鎖線の矢印G1方向)は、ワイヤ60の第1しごき部64と第2しごき部98との間の部分におけるワイヤ60の長手方向(
図6の一点鎖線の矢印H1方向)に対してθ11の角度で傾斜されている(曲がっている)。このため、ワイヤ60の第1しごき部64よりも長手方向先端側部分がワイヤ60の長手方向先端側へ移動されると、ワイヤ60は、第1しごき部64の車両上側端よってしごかれて変形される。
【0043】
また、
図6に示される状態では、ワイヤ60の第1しごき部64と第2しごき部98との間の部分におけるワイヤ60の長手方向(
図6の一点鎖線の矢印H1方向)は、ワイヤ60の第2しごき部98と第3しごき部66との間の部分におけるワイヤ60の長手方向(
図6の一点鎖線の矢印J1方向)に対してθ21の角度で傾斜されている(曲がっている)。このため、ワイヤ60の第1しごき部64よりも長手方向先端側部分がワイヤ60の長手方向先端側へ移動されると、ワイヤ60は、第2しごき部98の先端よってしごかれて変形される。
【0044】
さらに、
図6に示される状態では、ワイヤ60の第2しごき部98と第3しごき部66との間の部分におけるワイヤ60の長手方向(
図6の一点鎖線の矢印J1方向)は、ワイヤ60の第3しごき部66よりもワイヤ60の長手方向基端側部分におけるワイヤ60の長手方向(
図6の一点鎖線の矢印K1方向)に対してθ31の角度で傾斜されている(曲がっている)。このため、ワイヤ60の第1しごき部64よりも長手方向先端側部分がワイヤ60の長手方向先端側へ移動されると、ワイヤ60は、第3しごき部66の車両後側端よってしごかれて変形される。
【0045】
ここで、
図3に示されるように、初期状態のワイヤ60の長手方向先端側部分は、曲部としての第1曲部100を備えている。第1曲部100は、ピース62の第1しごき部64の車両上側端に沿うように湾曲されており、第1曲部100は、第1しごき部64の車両上側端へ当接されている。また、ワイヤ60の初期状態では、第1曲部100におけるワイヤ60の長手方向先端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印G2方向)は、第1曲部100におけるワイヤ60の長手方向基端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印H2方向)に対してθ12の角度で傾斜されており(曲がっており)、この角度θ12は、上述した角度θ11よりも大きくされている。
【0046】
また、初期状態のワイヤ60は、曲部としての第2曲部102を備えている。第2曲部102は、第1曲部100よりもワイヤ60の長手方向基端側に設けられている。第2曲部102ではワイヤ60が車両前下側へ膨らむように湾曲されている。また、第2曲部102は、ピース62の谷部68とSFLレバー96の第2しごき部98の先端との間に配置されている。ワイヤ60の初期状態では、第2曲部102におけるワイヤ60の長手方向先端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印H2方向)は、第2曲部102におけるワイヤ60の長手方向基端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印J2方向)に対してθ22の角度で傾斜されており(曲がっており)、この角度θ22は、上述した角度θ21よりも大きく、角度θ12よりも大きくされている。
【0047】
さらに、ワイヤ60は、第2曲部102よりも長手方向基端側で第2しごき部98へ当接されている。ワイヤ60の第2しごき部98との当接位置は、第2しごき部98におけるSFLレバー96の幅方向中央(
図3の一点鎖線L1)よりもワイヤ60の長手方向基端側とされている。このため、第2曲部102よりもワイヤ60の長手方向先端側部分が、ワイヤ60の長手方向先端側へ移動された際には、第2曲部102及びワイヤ60における第2曲部102よりも長手方向基端側部分は、その形状を維持したまま第2しごき部98との当接位置よりもワイヤ60の長手方向先端側へ移動することができない。
【0048】
また、初期状態のワイヤ60は、曲部としての第3曲部104を備えている。第3曲部104は、第2曲部102よりもワイヤ60の長手方向基端側に設けられている。第3曲部104ではワイヤ60が車両後下側へ膨らむように湾曲されている。また、第3曲部104は、ピース62の第3しごき部66の車両後側端よりも車両後側に配置されている。ワイヤ60の初期状態では、第3曲部104におけるワイヤ60の長手方向先端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印J2方向)は、第3曲部104におけるワイヤ60の長手方向基端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印K2方向)に対してθ32の角度で傾斜されており(曲がっており)、この角度θ32は、上述した角度θ31よりも大きく、角度θ22よりも大きくされている。
【0049】
さらに、ワイヤ60は、第3曲部104よりも長手方向基端側で第3しごき部66へ当接されている。ワイヤ60の第3しごき部66との当接位置は、第3しごき部66の幅方向中央(
図3の一点鎖線L2)よりもワイヤ60の長手方向基端側とされている。このため、第3曲部104よりもワイヤ60の長手方向先端側部分が、ワイヤ60の長手方向先端側へ移動された際には、第3曲部104及びワイヤ60における第3曲部104よりも長手方向基端側部分は、その形状を維持したまま第3しごき部66との当接位置よりもワイヤ60の長手方向先端側へ移動することができない。
【0050】
また、
図2に示されるように、ピース62の第3しごき部66が内側から接するスプール18に対する一点鎖線の同心円Mにおいて、第3しごき部66との当接部分での同心円Mの接線方向(
図2の一点鎖線の矢印N方向)は、第3曲部104におけるワイヤ60の長手方向基端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印K2方向)に対してθ4の角度で傾斜されている(曲がっている)。このため、SFLレバー96が離脱方向(
図1及び
図2の矢印E方向)へ回動された状態でワイヤ60における第3しごき部66との当接部分よりも長手方向先端側が、同心円Mの中心周りに引出方向側へ回転された場合には、ワイヤ60が第3しごき部66によってしごかれて変形される(
図6参照)。
【0051】
<第1の実施の形態の作用、効果>
本ウェビング巻取装置10では、車両のリヤシートに着座した乗員によってスプール18から引出されたウェビング20が、乗員の身体に掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタングが、バックル装置に係合されることにより、乗員の身体へのウェビング20の装着状態になる。
【0052】
車両衝突時等の車両緊急時には、ロック機構28のセンサ機構が作動され、これによって、ロック機構28のロックパウル36がフレーム12の脚板16のラチェット孔34のラチェット歯へ接近移動される。これによって、ロックパウル36のラチェット歯がラチェット孔34のラチェット歯に噛合うと、ロックベース30の引出方向への回転が阻止される。このように、ロックベース30の引出方向への回転が阻止されることによってスプール18の引出方向への回転が阻止されるため、この状態では、ウェビング20のスプール18からの引出しが阻止され、乗員の身体の車両前側への移動をウェビング20によって制限できる。
【0053】
また、車両緊急時にフレーム12の車幅方向内側に設けられたプリテンショナが作動されると、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られ、乗員の身体がウェビング20によってそれまでよりも強く拘束される。
【0054】
さらに、ロック機構28によるスプール18の引出方向への回転阻止状態で、ウェビング20からスプール18に付与される引出方向への回転力が、トーションバー22を、その中心軸線周りに捻り変形させるために必要な回転荷重よりも大きくなると、トーションバー22の車幅方向内側部分が車幅方向外側部分に対して引出方向へ相対回転され、これによって、トーションバー22が捻り変形される。スプール18の引出方向への回転力の一部は、このトーションバー22の捻り変形に供されて吸収されると共に、スプール18の引出方向への回転量に応じた長さのウェビング20がスプール18から引出される。このスプール18からのウェビング20の引出し長さ分だけ、乗員の身体は車両前側へ慣性移動できる。
【0055】
また、ロックベース30の引出方向への回転が阻止された状態でスプール18が引出方向へ回転されると、SFLパウル58がベースリング50に接近する方向へ移動され、SFLパウル58のラチェット歯がベースリング50の内側面のラチェット歯に噛合う。これによって、ベースリング50がスプール18に連結される。
【0056】
この状態で、更にウェビング20が引張られてスプール18が引出方向へ回転されると、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転され、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50によって引張られ、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転される。これによって、ワイヤ60は、ピース62の第1しごき部64の車両上側端によってしごかれて変形される。これによって、スプール18の引出方向への回転力の一部は、トーションバー22の捻り変形と第1しごき部64でのワイヤ60の変形に供されて吸収される。
【0057】
一方、ワイヤ60の第2曲部102は、SFLレバー96の第2しごき部98から離れて設けられており、ワイヤ60は、第2曲部102よりも長手方向基端側で第2しごき部98へ当接されている。ここで、ワイヤ60の第2しごき部98との当接位置は、第2しごき部98におけるSFLレバー96の幅方向中央(
図3の一点鎖線L1)よりもワイヤ60の長手方向基端側とされている。
【0058】
このため、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転されてワイヤ60における第2曲部102よりも長手方向先端側部分が長手方向先端側へ移動された場合には、ワイヤ60は、第2しごき部98との当接位置で第2しごき部98によって支持される。このため、第2曲部102及びワイヤ60における第2曲部102よりも長手方向基端側部分は、その形状を維持したまま第2しごき部98との当接位置よりもワイヤ60の長手方向先端側へ移動することができない。
【0059】
このため、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転されてワイヤ60における第2曲部102よりも長手方向先端側部分が長手方向先端側へ移動されると、ワイヤ60は、第1しごき部64との当接部分と第2しごき部98との当接部分との間で変形され、ワイヤ60の第2曲部102が第2しごき部98へ接近される。
【0060】
このワイヤ60の変形によって、ワイヤ60の第1しごき部64との当接部分よりも長手方向基端側部分におけるワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印H2方向)に対するワイヤ60の第1しごき部64との当接部分よりも長手方向先端側部分におけるワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印G2方向)の角度が小さくされると共に、ワイヤ60における第1しごき部64との当接部分と第2しごき部98との当接部分との間の長さが短くされる。
【0061】
このようなワイヤ60の変形によって、
図4に示されるように、ワイヤ60における第1しごき部64との当接部分と第2しごき部98との当接部分との間の長さが最短にされた状態で、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に更に引出方向へ回転されると、ワイヤ60は、ピース62の第1しごき部64との当接部分でしごかれて変形されると共に、SFLレバー96の第2しごき部98との当接部分でしごかれて変形される。これによって、スプール18の引出方向への回転力の一部は、トーションバー22の捻り変形、第1しごき部64及び第2しごき部98でのワイヤ60の変形に供されて吸収される。
【0062】
一方、ワイヤ60の第3曲部104は、ピース62の第3しごき部66から離れて設けられており、ワイヤ60は、第3曲部104よりも長手方向基端側で第3しごき部66へ当接されている。ここで、ワイヤ60の第3しごき部66との当接位置は、第3しごき部66の幅方向中央(
図3の一点鎖線L2)よりもワイヤ60の長手方向基端側とされている。このため、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転されてワイヤ60における第3曲部104よりも長手方向先端側部分が長手方向先端側へ移動された場合には、ワイヤ60は、第3しごき部66との当接位置で第3しごき部66によって支持される。
【0063】
このため、第3曲部104及びワイヤ60における第3曲部104よりも長手方向基端側部分は、その形状を維持したまま第3しごき部66との当接位置よりもワイヤ60の長手方向先端側へ移動することができない。しかも、ワイヤ60の初期状態での第3曲部104におけるワイヤ60の長手方向基端側部分に対するワイヤ60の長手方向先端側部分の傾斜角度θ32は、ワイヤ60の初期状態での第2曲部102におけるワイヤ60の長手方向基端側部分に対するワイヤ60の長手方向先端側部分の傾斜角度θ22よりも大きい。
【0064】
このため、SFLレバー96の第2しごき部98においてワイヤ60のしごきが開始されてから更にワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転されてワイヤ60における第3曲部104よりも長手方向先端側部分が長手方向先端側へ移動されると、ワイヤ60は、第2しごき部98との当接部分と第3しごき部66との当接部分との間で変形され、ワイヤ60の第3曲部104が第3しごき部66へ接近される。
【0065】
このワイヤ60の変形によって、ワイヤ60の第2しごき部98との当接部分よりも長手方向基端側部分におけるワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印J2方向)に対するワイヤ60の第2しごき部98との当接部分よりも長手方向先端側部分におけるワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印H2方向)の角度が小さくされると共に、ワイヤ60における第2しごき部98との当接部分と第3しごき部66との当接部分との間の長さが短くされる。
【0066】
このようなワイヤ60の変形によって、
図5に示されるように、ワイヤ60における第2しごき部98との当接部分と第3しごき部66との当接部分との間の長さが最短にされた状態で、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に更に引出方向へ回転されると、第3しごき部66におけるワイヤ60との当接部分を中心に、ワイヤ60の第3しごき部66との当接部分よりも長手方向基端側部分が、SFLハウジング44の内壁部側(
図5のP方向側)へ回動される。
【0067】
これによって、
図6に示されるように、ワイヤ60の第3しごき部66との当接部分よりも長手方向基端側部分が、SFLハウジング44の内壁部側へ当接される。この状態から、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に更に引出方向へ回転されると、ワイヤ60は、第1しごき部64及び第2しごき部98の各々との当接部分でしごかれて変形されると共に、第3しごき部66との当接部分でしごかれて変形される。これによって、スプール18の引出方向への回転力の一部は、トーションバー22の捻り変形と、第1しごき部64、第2しごき部98、第3しごき部66の各々でのワイヤ60の変形に供されて吸収される。
【0068】
ここで、本実施の形態では、SFLレバー96の第2しごき部98でのワイヤ60のしごきの開始は、ピース62の第1しごき部64でのワイヤ60のしごきの開始後に、ワイヤ60の長手方向先端部が、ベースリング50と共に引出方向へ回転されてからになる。すなわち、第2しごき部98でのワイヤ60のしごきは、第1しごき部64でのワイヤ60のしごきの開始から遅れて開始される。
【0069】
さらに、ピース62の第3しごき部66でのワイヤ60のしごきの開始は、SFLレバー96の第2しごき部98でのワイヤ60のしごきの開始後に、更に、ワイヤ60の長手方向先端部が、ベースリング50と共に引出方向へ回転されてワイヤ60の第3しごき部66との当接部分よりも長手方向基端側部分が、SFLハウジング44の内壁部側へ当接されてからになる。すなわち、第3しごき部66でのワイヤ60のしごきは、第2しごき部66でのワイヤ60のしごきの開始から遅れて開始される。
【0070】
このように、本実施の形態では、第1しごき部64、第2しごき部98、第3しごき部66の各々でのワイヤ60のしごき開始のタイミングがずれる。このため、第1しごき部64、第2しごき部98、第3しごき部66の各々でワイヤ60のしごきが開始されることで、一時的にワイヤ60の変形に要する荷重(すなわち、スプール18の引出方向への回転力)が大きくなるタイミングをずらすことができる。
【0071】
これによって、第1しごき部64、第2しごき部98、第3しごき部66の各々でワイヤ60のしごきが開始された際に、一時的に大きくなるワイヤ60の変形に要する荷重が重なることを抑制でき、第1しごき部64、第2しごき部98、第3しごき部66の各々でのワイヤ60のしごき開始時にワイヤ60の変形に要する荷重が大きくなることを抑制できる。
【0072】
一方、リヤシートにおける本ウェビング巻取装置10に対応する着座位置に着座した乗員の体格が標準未満の場合には、車両衝突時等の車両緊急時にECUから出力される起動信号がHighレベルからLowレベルに切替わり、MGG78が作動される。これによって、MGG78にてガスが発生され、このガスの圧力によってピストン84が車両下側(
図2の矢印D方向)へ移動されると、切替パウル90の荷重受け片94がピストン84によって押圧され、これによって、切替パウル90が保持解除方向(
図2の矢印F方向)へ回動される。このように切替パウル90が回動されることによって、切替パウル90の保持片92とSFLレバー96との当接が解消される。
【0073】
この状態で、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転されると、ワイヤ60におけるSFLレバー96の第2しごき部98との当接部分によってSFLレバー96が押圧され、これによって、SFLレバー96は、離脱方向(
図2の矢印E方向)へ回動される。このため、
図6に示されるように、この状態では、ワイヤ60におけるピース62の第3曲部104との当接部分よりも長手方向先端側が、スプール18に対する同軸上で引出方向側へ回転され、ワイヤ60は、ピース62の第1しごき部64、SFLレバー96の第2しごき部98から離れる。このため、この状態では、第1しごき部64及び第2しごき部98よるワイヤ60のしごきは、行なわれない。
【0074】
一方、
図2に示されるように、ピース62の第3しごき部66が内側から接するスプール18に対する一点鎖線の同心円Mにおいて、第3しごき部66との当接部分での同心円Mの接線方向(
図2の一点鎖線の矢印N方向)は、第3曲部104におけるワイヤ60の長手方向基端側部分でのワイヤ60の長手方向(
図3の一点鎖線の矢印K2方向)に対してθ4の角度で傾斜されている。このため、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50と共に引出方向へ回転されると、ワイヤ60が第3しごき部66によってしごかれて変形される(
図6参照)。
【0075】
このように、乗員の体格が標準未満の場合には、第1しごき部64及び第2しごき部98よるワイヤ60のしごきは、行なわれず、第3しごき部66によってワイヤ60がしごかれて変形される。このため、乗員の体格が標準以上の場合に比べてスプール18の引出方向への回転力の吸収量を小さくできる。
【0076】
さらに、本実施の形態は、ピース62の第1しごき部64及び第3しごき部66、SFLレバー96の第2しごき部98を備えている(すなわち、3つの荷重付与部を備えている)。このため、ワイヤ60には、第1曲部100、第2曲部102、第3曲部104が設けられる(すなわち、3つの曲部が設けられる)。このように、本実施の形態では、荷重付与部及び曲部の数が複数で且つ奇数とされる。このため、第3曲部104よりもワイヤ60の長手方向基端側での長手方向(
図3の一点鎖線の矢印K2方向)に対する第1曲部100よりもワイヤ60の長手方向先端側での長手方向(
図3の一点鎖線の矢印G2方向)が成す角度を180度以上にできる。このため、第1曲部100でのしごきが終了したワイヤ60を車両前側へ折返すことができ、ワイヤ60をスプール180と共に引出方向へ回転させることができる。
【0077】
<第2の実施の形態>
次に第2の実施の形態について説明する。
【0078】
図8に示されるように、本実施の形態では、初期状態でのワイヤ60の第3曲部104は、ワイヤ60におけるピース62の第3しごき部66との当接部分よりもワイヤ60の長手方向基端側に設けられている。また、初期状態でのワイヤ60の第2曲部102と第3曲部104との間の部分は、タイミング調整部112を備えている。タイミング調整部112は、直線状とされており、SFLレバー96の第2しごき部98へ当接されていると共に、ピース62の第3しごき部66へ当接されている。
【0079】
したがって、タイミング調整部112の長手方向は、SFLレバー96の第2しごき部98におけるタイミング調整部112との当接部分での接線方向とされていると共に、ピース62の第3しごき部66におけるタイミング調整部112との当接部分での接線方向とされている。
【0080】
以上の構成の本実施の形態では、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転されることによって、ワイヤ60の長手方向先端部がベースリング50によって引張られる。これによって、ワイヤ60における第1しごき部64との当接部分と第2しごき部98との当接部分との間の長さが最短にされるまでワイヤ60が変形され、この状態から、ベースリング50がスプール18と共に引出方向へ回転されると、ワイヤ60は、長手方向先端側へ移動されて、ワイヤ60は、ピース62の第1しごき部64との当接部分でしごかれて変形されると共に、SFLレバー96の第2しごき部98との当接部分でしごかれて変形される。
【0081】
この状態では、ワイヤ60のタイミング調整部112の長手方向は、第3しごき部66におけるタイミング調整部112との当接部分における接線方向とされている。このため、タイミング調整部112の第3しごき部66との当接部分がワイヤ60の長手方向先端側へ移動されることによってタイミング調整部112がワイヤ60の長手方向先端側へ移動されると、タイミング調整部112は、第3しごき部66に対して摺接されるものの、第3しごき部66でのワイヤ60の変形が抑制される。
【0082】
このようにしてワイヤ60が長手方向先端側へ移動されることにより、
図6に示されるように、ワイヤ60の第3曲部104が第3しごき部66へ当接され、この状態からベースリング50がスプール18と共に引出方向へ更に回転されることによって、第3しごき部66においてワイヤ60のしごきが開始される。
【0083】
このように、本実施の形態でも、第3しごき部66におけるワイヤ60のしごきの開始を第1しごき部64及び第2しごき部98でのワイヤ60のしごきの開始よりも遅らせることができ、本実施の形態は、基本的に前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、初期状態でワイヤ60の第3曲部104よりもワイヤ60の長手方向先端側部分がピース62の第3しごき部66へ当接される。このため、例えば、初期状態でワイヤ60の第3曲部104よりもワイヤ60の長手方向基端側部分をピース62の第3しごき部66へ当接させるために第3しごき部66の車両下側(一例として、
図3の一点鎖線L2に沿った方向側)に大きなスペースを設けなくてもよい。
【0085】
なお、上記の各実施の形態では、荷重付与部及び曲部の数をそれぞれ3つとしたが、荷重付与部及び曲部の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0086】
さらに、本実施の形態では、ワイヤ60のしごきは、ピース62の第1しごき部64、SFLレバー96の第2しごき部98、ピース62の第3しごき部66の順番に開始される構成であった。しかしながら、例えば、上述した角度θ22を角度θ32よりも大きくして第3しごき部66でのワイヤ60のしごきを第2しごき部98でのワイヤ60のしごきよりも早く開始させる構成としてもよく、第1しごき部64、第2しごき部98、第3しごき部66でのワイヤ60のしごきの開始の順番に関しては特に限定されるものではない。