特許第6795552号(P6795552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795552
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】電力中継装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/00 20060101AFI20201119BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H01R9/00 B
   H01R4/34
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-121205(P2018-121205)
(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公開番号】特開2020-4544(P2020-4544A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 崇
(72)【発明者】
【氏名】分部 健太郎
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−326275(JP,A)
【文献】 特開平09−073933(JP,A)
【文献】 特開2001−126606(JP,A)
【文献】 実開平06−015267(JP,U)
【文献】 特開2007−137389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
9/15 −9/28
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を中継して電装品に供給する電力中継装置であって、
前記電源に電気的に接続される電源側端子と、前記電装品に電気的に接続される負荷側端子とを有する装置本体と、
前記電源側端子及び前記負荷側端子の一方に電気的に接続される接続端子を有する端子カバーと、
前記装置本体に対して前記端子カバーが組み付けられた状態で移動されることにより、前記端子カバーに設けられた前記接続端子と、当該接続端子の接続先である前記電源側端子及び前記負荷側端子の前記一方とが電気的に未接続の仮保持位置と、それら両端子が電気的に接続される本保持位置とに保持する保持機能部と、を備え
前記装置本体に設けられた前記電源側端子及び前記負荷側端子の前記一方に電気的に接続される前記接続端子を第1接続端子と規定し、
前記装置本体に設けられた前記電源側端子及び前記負荷側端子の他方に電気的に接続される第2接続端子を備え、
前記第1接続端子及び前記第2接続端子は共に、それぞれの接続先である前記電源側端子又は前記負荷側端子に面接触する端子本体部と、当該端子本体部から屈曲された外部接続媒体取付部とを有する電力中継装置。
【請求項2】
前記保持機能部は、前記装置本体及び前記端子カバーの一方に設けられた係合部と、前記装置本体及び前記端子カバーの他方に設けられた被係合部とを有し、
前記係合部と前記被係合部との協働により、前記装置本体に対する前記端子カバーの組み付け方向に沿った抜け出しを防止するロック部が構成されている
請求項1に記載の電力中継装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記被係合部に向かって延びる腕部と、当該腕部の先端に設けられて前記被係合部に係合されつつ前記ロック部を構成する爪部とを有し、
前記被係合部は、仮保持位置から本保持位置に向かう前記腕部の移動を規制する移動規制部を有する
請求項に記載の電力中継装置。
【請求項4】
前記被係合部は、前記仮保持位置から前記本保持位置に向かう前記腕部の移動をガイドするガイド部を有し、
前記腕部は、弾性変形しつつ前記ガイド部によるガイドを受けて前記仮保持位置から前記本保持位置に向かって移動可能な弾性を有する
請求項に記載の電力中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両組み立て工場では、組み立て途中の電装チェックにおいて、バッテリの電力を用いて電装品の作動チェックが行われる。近年、ハイブリッド車やエンジンの肥大化によりバッテリをエンジンルームに搭載できず、コンソール等、簡単に取り出せない箇所にバッテリが搭載される場合がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−169407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンソール等にバッテリが搭載される場合、バッテリ端子の取り外しが困難であり、電装チェックを行うために車両出荷まで常にバッテリ端子が接続された状態が続くと、バッテリ容量が減少することになる。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、電源容量減少の抑制を可能にした電力中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電力中継装置は、電源からの電力を中継して電装品に供給する電力中継装置であって、前記電源に電気的に接続される電源側端子と、前記電装品に電気的に接続される負荷側端子とを有する装置本体と、前記電源側端子及び前記負荷側端子の一方に電気的に接続される接続端子を有する端子カバーと、前記装置本体に対して前記端子カバーが組み付けられた状態で移動されることにより、前記端子カバーに設けられた前記接続端子と、当該接続端子の接続先である前記電源側端子及び前記負荷側端子の前記一方とが電気的に未接続の仮保持位置と、それら両端子が電気的に接続される本保持位置とに保持する保持機能部と、を備え、前記装置本体に設けられた前記電源側端子及び前記負荷側端子の前記一方に電気的に接続される前記接続端子を第1接続端子と規定し、前記装置本体に設けられた前記電源側端子及び前記負荷側端子の他方に電気的に接続される第2接続端子を備え、前記第1接続端子及び前記第2接続端子は共に、それぞれの接続先である前記電源側端子又は前記負荷側端子に面接触する端子本体部と、当該端子本体部から屈曲された外部接続媒体取付部とを有する
【0007】
この構成によれば、端子カバーに設けられた接続端子と、装置本体に設けられた電源側端子及び負荷側端子の一方とが電気的に未接続の仮保持状態において、当該接続端子と、装置本体に設けられた電源側端子及び負荷側端子の他方とを、必要に応じて電気接続することによって、一時的に電源から電装品に電力を供給することが可能になる。これにより、常に電源から電装品に電力が供給される状態が続く訳ではないため、電源容量の減少を抑制できる。
【0009】
この構成によれば、第2接続端子が、当該第2接続端子の接続先に電気接続されているとともに、第1接続端子が、当該第1接続端子の接続先に未接続の仮保持状態において、それぞれの外部接続媒体取付部を繋ぐように外部接続媒体を取り付けることによって、電源から電装品に電力を供給することが可能になる。これにより、電装品の作動チェックを容易に行うことができる。
【0010】
上記電力中継装置について、前記保持機能部は、前記装置本体及び前記端子カバーの一方に設けられた係合部と、前記装置本体及び前記端子カバーの他方に設けられた被係合部とを有し、前記係合部と前記被係合部との協働により、前記装置本体に対する前記端子カバーの組み付け方向に沿った抜け出しを防止するロック部が構成されていることとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、端子カバーの抜け出しが防止されるため、作業性を向上できる。
上記電力中継装置について、前記係合部は、前記被係合部に向かって延びる腕部と、当該腕部の先端に設けられて前記被係合部に係合されつつ前記ロック部を構成する爪部とを有し、前記被係合部は、仮保持位置から本保持位置に向かう前記腕部の移動を規制する移動規制部を有することとしてもよい。
【0012】
この構成によれば、装置本体及び端子カバーの一方に設けられた腕部が、他方に設けられた移動規制部による規制を受けることによって、仮保持状態が維持される。これにより、作動チェックに必要な接続作業を安定して行うことができる。
【0013】
上記電力中継装置について、前記被係合部は、前記仮保持位置から前記本保持位置に向かう前記腕部の移動をガイドするガイド部を有し、前記腕部は、弾性変形しつつ前記ガイド部によるガイドを受けて前記仮保持位置から前記本保持位置に向かって移動可能な弾性を有することとしてもよい。
【0014】
この構成によれば、作動チェックの完了後において、仮保持状態から本保持状態への移行作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源容量の減少を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車室内のコンソールに搭載されるバッテリからの電力が、エンジンルームに搭載されるリレーボックスを含む電力中継装置によって中継されてパワーシートに供給される例を示す各部品の配置図と、電力中継装置の要部を示す斜視図。
図2】電力中継装置の要部を示す分解斜視図。
図3】端子カバーがリレーボックスに組み付けられる前の電力中継装置の要部を示す斜視図。
図4】端子カバーがロックされる前の電力中継装置の要部を示す正面図。
図5図4のA−A断面図。
図6】端子カバーのロックが完了した電力中継装置の要部を示す正面図。
図7図6のB−B断面図。
図8】端子カバーがリレーボックスに仮保持された電力中継装置の要部を示す斜視図。
図9】同じく一部を拡大して示す正断面斜視図。
図10】同じく側断面斜視図。
図11】端子カバーがリレーボックスに本保持された電力中継装置の要部を示す斜視図。
図12】同じく一部を拡大して示す正断面斜視図。
図13】同じく側断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電力中継装置の一実施の形態について説明する。
図1に示すように、電力中継装置の一例を構成するリレーボックス1は、エンジンルームに搭載され、車室内のコンソール等に搭載されるバッテリ2からの電力を中継して電装品の一例であるパワーシート3に供給する。また、エンジンルームには、DC/DCコンバータ4が搭載され、リレーボックス1は、DC/DCコンバータ4からの電力を中継してパワーシート3に供給する。パワーシート3は、車両走行時にはDC/DCコンバータ4の出力による電力を用いて作動するとともに、車両組み立て工場での組み立て途中の電装チェック時にはバッテリ2の電力を用いて作動チェックが行われる。バッテリ2が電源の一例に相当する。
【0018】
バッテリ2の陽極には、電源ケーブル5の一端が電気的に接続されているとともに、電源ケーブル5の他端に設けられた接続端子6が、リレーボックス1の端子台の一区画(便宜上、左側の区画)にボルト締めされている。また、バッテリ2の陰極には、グランドケーブル7の一端が電気的に接続されているとともに、グランドケーブル7の他端が車体に電気的に接続されつつ接地されている。接続端子6が第1接続端子の一例に相当する。
【0019】
リレーボックス1の端子台において、上記一区画に隣接する他区画(便宜上、右側の区画)には、電源ケーブル5とは別のケーブル8の一端に設けられた接続端子9がボルト締めされているとともに、ケーブル8の他端がDC/DCコンバータ4の出力端子に電気的に接続されている。接続端子9が第2接続端子の一例に相当する。
【0020】
図2に示すように、リレーボックス1の端子台における上記一区画には、接続端子6が電気的に接続される電源側端子11が設けられているとともに、上記他区画には、接続端子9が電気的に接続される負荷側端子12が設けられている。電源側端子11は、リレーボックス1に組み付けられた第1プレートの一部分であるとともに、負荷側端子12は、リレーボックス1に組み付けられた第2プレートの一部分である。これら両プレートは、互いに独立したそれぞれの部品によって構成されている。
【0021】
電源側端子11は平板形状をなし、端子台に設けられたボルト取付孔13に対応して貫通孔14が形成されている。同様に、負荷側端子12は平板形状をなし、端子台に設けられたボルト取付孔15に対応して貫通孔16が形成されている。
【0022】
接続端子6は、電源側端子11の上面に面接触する端子本体部21と、当該端子本体部21の先端中央から幅狭く略垂直に屈曲されたクリップ取付部22とを有し、端子本体部21には、電源側端子11の貫通孔14に対応して貫通孔23が形成されている。同様に、接続端子9は、負荷側端子12の上面に面接触する端子本体部24と、当該端子本体部24の先端中央から幅狭く略垂直に屈曲されたクリップ取付部25とを有し、端子本体部24には、負荷側端子12の貫通孔16に対応して貫通孔26が形成されている。端子本体部21に対するクリップ取付部22の突出量は、端子本体部24に対するクリップ取付部25の突出量よりも小さく、それらの差分は、接続端子6をリレーボックス1に組み付ける際の上下方向のストローク量に一致する。
【0023】
クリップ取付部22が上方に向かって突出する向きで、端子本体部21の上方から貫通孔23及び貫通孔14にボルト27が挿通され、そのボルト27がボルト取付孔13に締結されることによって、接続端子6がリレーボックス1の端子台における上記一区画に保持されている(図1参照)。同様に、クリップ取付部25が上方に向かって突出する向きで、端子本体部24の上方から貫通孔26及び貫通孔16にボルト28が挿通され、そのボルト28がボルト取付孔15に締結されることによって、接続端子9がリレーボックス1の端子台における上記他区画に保持されている(図1参照)。
【0024】
図3に示すように、接続端子9を有するケーブル8が単独でリレーボックス1に組み付けられているのに対し、接続端子6を有する電源ケーブル5は、端子カバー30に組み付けられて一体化された上でリレーボックス1に組み付けられる。端子カバー30には、別体の第1カバー31及び第2カバー32との協働により、接続端子6と電源ケーブル5との接続部位を収容する収容室33(図2参照)が形成されている。接続端子6は、基端側である電源ケーブル5との接続部位が収容室33に配置されているとともに、先端側の端子本体部21が収容室33から略水平に突出し、且つ、クリップ取付部22が端子本体部21の先端から上方に向かって突出する向きで配置されている。尚、端子カバー30には、ケーブル8との干渉を避ける逃げ溝34(図2参照)が収容室33に隣接して設けられている。
【0025】
端子カバー30の幅方向両側には、弾性を有する一対の係合部35、36が高さ位置を少しずらすようにして形成されている。一例では、ケーブル8の逃げ溝34に近い右側の係合部36が、電源ケーブル5の収容室33に近い左側の係合部35よりも低い位置に形成されている(図4及び図5を参照)。係合部35は、基端からリレーボックス1に向かって水平に延びる腕部37と、当該腕部37の先端に設けられて端子カバー30の幅方向外側に向かって突出する爪部38とを有している。同様に、係合部36は、基端からリレーボックス1に向かって水平に延びる腕部39と、当該腕部39の先端に設けられて端子カバー30の幅方向外側に向かって突出する爪部40とを有している。
【0026】
リレーボックス1には、係合部35が係合される被係合部41の他、係合部36が係合される被係合部42が形成されている。被係合部41は、リレーボックス1に対する端子カバー30の組み付け方向に沿った爪部38の抜け出しを防止する係止部43を有している(図6及び図7を参照)。同様に、被係合部42は、リレーボックス1に対する端子カバー30の組み付け方向に沿った爪部40の抜け出しを防止する係止部44を有している(図6及び図7を参照)。爪部38と係止部43との協働によりロック部の一例が構成されているとともに、爪部40と係止部44との協働によりロック部の一例が構成されている。本実施の形態では、それら一対のロック部によって、リレーボックス1に対する端子カバー30の組み付け方向に沿った抜け出しが防止されている。
【0027】
図9に示すように、被係合部42は、上側位置から下側位置に向かって内側への突出量が線形に大きくなる内壁47を有し、その突出量が傾斜面48によって規定されている。傾斜面48のいずれかの部位で腕部39が係止される他、同様に腕部37が内壁45の傾斜面46のいずれかの部位で係止されることによって、端子カバー30がリレーボックス1に仮保持される。傾斜面46(傾斜面48)は、図8及び図9に示す仮保持位置から図11及び図12に示す本保持位置に向かう腕部37(腕部39)の移動を規制する移動規制部の一例に相当する。
【0028】
図10に示すように、端子カバー30がリレーボックス1に仮保持されている状態では、接続端子6と電源側端子11とが電気的に未接続であり、このとき、クリップ取付部22の上端面と、リレーボックス1の端子台にボルト締めされている接続端子9におけるクリップ取付部25の上端面とが同じ高さ位置となっている。この仮保持状態において、クリップ取付部22とクリップ取付部25とを繋ぐように金属製のクリップ50(図1参照)が取り付けられることによって、バッテリ2からパワーシート3に電力が供給されつつパワーシート3の作動チェックが行われる。金属製のクリップ50は、外部接続媒体の一例に相当し、クリップ取付部22、25は共に、外部接続媒体取付部の一例に相当する。
【0029】
図9及び図12を参照して、傾斜面46(傾斜面48)は、弾性変形を伴わずに仮保持位置から本保持位置に向かう腕部37(腕部39)の移動を規制するとともに、弾性変形を伴って仮保持位置から本保持位置に向かう腕部37(腕部39)の移動をガイドする。傾斜面46(傾斜面48)は、仮保持位置から本保持位置に向かう腕部37(腕部39)の移動をガイドするガイド部の一例に相当する。腕部37(腕部39)は、弾性変形しつつ傾斜面46(傾斜面48)によるガイドを受けて仮保持位置から本保持位置に向かって移動可能な弾性を有している。腕部37が内壁45を乗り越えたところで弾性変形を解かれるとともに、腕部39が内壁47を乗り越えたところで弾性変形を解かれた状態で、端子カバー30がリレーボックス1に本保持される。
【0030】
すなわち、上記したパワーシート3の作動チェックが完了すると、金属製のクリップ50が取り外されるとともに、腕部37、39の弾性力に抗して端子カバー30が押し下げられる。このとき、接続端子6の端子本体部21が電源側端子11に面接触することによって、接続端子6と電源側端子11とが電気的に接続される。そして、ボルト27による接続端子6の締結作業を経て、端子カバー30がリレーボックス1に本保持される(図13参照)。
【0031】
本実施の形態では、リレーボックス1と端子カバー30とにより、電力中継装置の一例が構成されている。リレーボックス1は、装置本体の一例に相当する。そして、端子カバー30に設けられた係合部35、36と、リレーボックス1に設けられた被係合部41、42との協働により、接続端子6と電源側端子11とが未接続の仮保持状態と、それら両端子6、11が電気的に接続される本保持状態とが設定された保持機能部の一例が構成されている。
【0032】
次に、電力中継装置の作用について説明する。
まず図3を参照して、接続端子9を有するケーブル8が単独でリレーボックス1に組み付けられるとともに、接続端子6を有する電源ケーブル5が端子カバー30に組み付けられて一体化された上でリレーボックス1に組み付けられる。このとき、端子カバー30が略水平方向に一致する組み付け方向に沿ってリレーボックス1に組み付けられることによって、端子カバー30がリレーボックス1に仮保持される(図8図10を参照)。そして、この仮保持状態において、金属製のクリップ50(図1参照)により、接続端子6のクリップ取付部22と接続端子9のクリップ取付部25とを一時的に繋ぐことによって、パワーシート3の作動チェックが行われる。
【0033】
パワーシート3の作動チェックが完了すると、金属製のクリップ50が取り外されるとともに、仮保持状態の端子カバー30が押し下げられる。このとき、接続端子6の端子本体部21が電源側端子11に面接触するまで端子カバー30がワンタッチで押し下げられた後、ボルト27による接続端子6の締結作業を経て、端子カバー30がリレーボックス1に本保持される(図11図13を参照)。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)端子カバー30に設けられた接続端子6と、リレーボックス1に設けられた電源側端子11とが電気的に未接続の仮保持状態において、当該接続端子6と、リレーボックス1に設けられた負荷側端子12とを、必要に応じて電気接続することによって、一時的にバッテリ2からパワーシート3に電力を供給することが可能になる。これにより、常にバッテリ2からパワーシート3に電力が供給される状態が続く訳ではないため、バッテリ容量の減少を抑制できる。
【0035】
(2)接続端子9が負荷側端子12に電気接続されているとともに、接続端子6が電源側端子11に未接続の仮保持状態において、クリップ取付部22とクリップ取付部25とを繋ぐように金属製のクリップ50を取り付けることによって、バッテリ2からパワーシート3に電力を供給することが可能になる。これにより、パワーシート3の作動チェックを容易に行うことができる。
【0036】
(3)爪部38(爪部40)と係止部43(係止部44)との協働による一対のロック部によって、リレーボックス1に対する端子カバー30の組み付け方向に沿った抜け出しが防止されるため、作業性を向上できる。
【0037】
(4)端子カバー30に設けられた腕部37(腕部39)が、リレーボックス1に設けられた傾斜面46(傾斜面48)による規制を受けることによって、仮保持状態が維持される。これにより、作動チェックに必要な接続作業を安定して行うことができる。
【0038】
(5)弾性変形を伴って仮保持位置から本保持位置に向かう腕部37(腕部39)の移動が傾斜面46(傾斜面48)によってガイドされるため、作動チェックの完了後において、仮保持状態から本保持状態への移行作業を容易に行うことができる。
【0039】
(6)仮保持状態の端子カバー30をワンタッチで押し下げることによって本保持状態へ移行させることができるため、作業性を向上できる。
(7)端子カバー30の仮保持状態から本保持状態への移行に伴う上下方向のストローク量を最小限とすることができるため、電源ケーブル5に関して電線余長を削減できる。
【0040】
(8)端子カバー30が仮保持状態で組み付けられたリレーボックス1をエンジンルームに搭載して作動チェックを行った後の本保持状態への移行作業として、端子カバー30をワンタッチで押し下げる作業がある。この作業には、略水平方向に一致する組み付け方向への作業を伴わないため、リレーボックス1の周囲に広い作業スペース(ハンドスペース)を確保できない場合でも、比較的簡単に作業を行うことができる。
【0041】
尚、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施の形態及び以下の変更例は技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
・接続端子6を有する電源ケーブル5に代えて接続端子9を有するケーブル8が端子カバー30に組み付けられて一体化された上でリレーボックス1に組み付けられてもよい。この場合、接続端子6を有する電源ケーブル5が単独でリレーボックス1に組み付けられる。接続端子9が第1接続端子の一例に相当し、接続端子6が第2接続端子の一例に相当する。また、接続端子9について端子本体部24に対するクリップ取付部25の突出量は、接続端子6について端子本体部21に対するクリップ取付部22の突出量よりも小さいことが望ましく、それらの差分は、接続端子9をリレーボックス1に組み付ける際の上下方向のストローク量に一致することが望ましい。
【0042】
この構成によれば、電源ケーブル5によってバッテリ2とリレーボックス1とが常に接続された状態が続いても、接続端子9と負荷側端子12とが電気的に未接続の仮保持状態において、金属製のクリップ50によってクリップ取付部22と端子本体部24とを繋がない限り、バッテリ2からパワーシート3に電力が供給されない。したがって、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0043】
・一対の係合部35、36をリレーボックス1に設けるとともに、それらが係合される被係合部41、42を端子カバー30に設けてもよい。この構成によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
・上記実施の形態では、移動規制部とガイド部とを傾斜面46、48で兼用したが、移動規制部とガイド部とを互いに独立して被係合部41、42に設けてもよい。
・作動チェックの対象となる電装品はパワーシート3に限定されない。
【0045】
・車両に搭載される電力中継装置に限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1…リレーボックス(電力中継装置、装置本体)、2…バッテリ(電源)、3…パワーシート(電装品)、6…接続端子(第1接続端子)、9…接続端子(第2接続端子)、11…電源側端子、12…負荷側端子、21,24…端子本体部、22,25…クリップ取付部(外部接続媒体取付部)、30…端子カバー(電力中継装置)、35,36…係合部(保持機能部)、37,39…腕部、38,40…爪部(ロック部)、41,42…被係合部(保持機能部)、43,44…係止部(ロック部)、46,48…傾斜面(移動規制部、ガイド部)、50…クリップ(外部接続媒体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13