(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る制御装置および軸送り制御方法について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施の形態の構成]
図1は、第1の実施の形態に係る制御装置14を有する工作機械10の構成例を示した斜視図である。
図1に示されたように、工作機械10は例えばワイヤ放電加工機であって、本体12および制御装置14を有する。
【0013】
まず、本体12について説明する。本体12は、移動対象物16(
図2参照)に向けたワイヤ電極18を供給する供給系統20a、移動対象物16を通過したワイヤ電極18を回収する回収系統20b、および加工液が貯留された槽42を有する。
【0014】
供給系統20aは、ワイヤボビン22、ブレーキシュー26、ブレーキモータ28、および上ワイヤガイド32を有する。ワイヤボビン22にはワイヤ電極18が巻かれるとともに、トルクモータ24によりトルクが付与される。ブレーキシュー26はワイヤ電極18に対して摩擦による制動力を付与するとともに、ブレーキモータ28によりブレーキトルクが付与される。上ワイヤガイド32は、槽42内に配置されるよう設けられており、移動対象物16の上方でワイヤ電極18をガイドする。また、このほか、供給系統20aには、ワイヤ電極18の張力の大きさを検出するための張力検出部30等も設けられる。
【0015】
回収系統20bは、下ワイヤガイド34、ピンチローラ36、フィードローラ38、およびワイヤ回収箱40を備える。下ワイヤガイド34は、槽42内に配置されるよう設けられており、移動対象物16の下方でワイヤ電極18をガイドする。ピンチローラ36およびフィードローラ38はワイヤ電極18を挟持および搬送するために設けられており、搬送されたワイヤ電極18はワイヤ回収箱40により回収される。この上ワイヤガイド32と下ワイヤガイド34とによって、ワイヤ電極18が移動対象物16に対してZ軸方向に沿って搬送される。
【0016】
上記の本体12を有する工作機械10では、槽42の加工液中においてテーブル等の支持部44(
図2参照)に移動対象物16が支持され、ワイヤ電極18と移動対象物16とで形成される隙間に電圧が印加される。これにより、加工液中で放電が発生し、移動対象物16に放電加工が施される。支持部44は、Z軸方向と交差するX軸方向およびY軸方向に移動可能である。したがって、支持部44がX軸方向およびY軸方向に移動することにより、移動対象物16が3次元に加工される。なお、上ワイヤガイド32は、X軸方向に平行なU軸方向、およびY軸方向に平行なV軸方向に移動可能である。
【0017】
次に、制御装置14について以下で説明する。制御装置14は、上記した軸送り操作がされた場合に、移動対象物16(支持部44)の軸送りを制御するものである。
【0018】
図2は、第1の実施の形態に係る制御装置14を有する工作機械10の概略的な構成を示したブロック図である。
【0019】
図2に示されたように、工作機械10のワイヤ電極18および支持部44には、各々に電圧を印加するための電源46が接続される。また、制御装置14と支持部44とは、駆動機構48を介して接続される。
【0020】
駆動機構48は支持部44を移動させるための機構であって、支持部44を予め決められた座標系におけるX軸方向およびY軸方向にそれぞれ駆動させるためのモータ50X、50Yが含まれる。すなわち、本実施の形態では、支持部44および支持部44上の移動対象物16は、モータ50X、50Yが回転することで移動する。このときのモータ50X、50Yの回転は、制御装置14によって制御される。また、モータ50X、50Yの各々には、各々の回転角を計測するエンコーダ51X、51Yが備わる。
【0021】
なお、予め決められた座標系とは、工作機械10の設計段階で決まる機械的な座標系でもよいし、オペレータが任意に原点を設定する座標系であってもよい。ただし、本実施の形態では、説明を簡単にするために、予め決められた座標系とは、工作機械10の設計段階で決まる機械的な座標系を指すこととして説明する。
【0022】
図3は、第1の実施の形態に係る制御装置14の概略的な構成を示したブロック図である。
図3に示されたように、制御装置14は、入力部52、制御部54、および表示部56を備える。
【0023】
図4は、第1の実施の形態に係る入力部52の操作キーの配置例を概略的に示した図である。
【0024】
入力部52は、それは例えば操作盤であって、軸送り操作および軸送り速度の指定をオペレータが行うためのものである。
図4に示されたように、入力部52は、オペレータが軸送り速度を指定するための複数の速度選択キー58(58A〜58E)を備える。速度選択キー58Aは、「超高速」に対応し、速度選択キー58Bは、「高速」に対応する。同様に、速度選択キー58C、58D、58Eは、「中速」、「低速」、「微速」に対応する。
【0025】
入力部52は、移動対象物16の軸送りをオペレータが指定するための複数の軸送りキー60(60X+、60X−、60Y+、60Y−)を備える。オペレータによる軸送りキー60X+、60X−、60Y+、60Y−の操作を、軸送り操作と呼ぶ。例えば、オペレータは、移動対象物16(支持部44)を、+X軸方向に移動させたい場合は軸送りキー60X+を操作し、−X軸方向に移動させたい場合は軸送りキー60X−を操作する。同様に、移動対象物16(支持部44)を、+Y軸方向に移動させたい場合は軸送りキー60Y+を操作し、−Y軸方向に移動させたい場合は軸送りキー60Y−を操作する。
【0026】
さらに、入力部52は、後述する丸め処理の対象として座標位置と移動量とのいずれかをオペレータが選択するための2つの丸め対象選択キー62(62A、62B)を備える。オペレータは、丸め処理の対象として座標位置を選択したい場合は丸め対象選択キー62Aを操作し、丸め処理の対象として移動量を選択したい場合は丸め対象選択キー62Bを操作する。
【0027】
なお、本実施の形態における「座標位置」とは、予め決められた座標系における移動対象物16の存在位置を指す。また、本実施の形態における「移動量」とは、予め決められた座標系において移動対象物16が軸送り操作の開始から解除までの間に移動する距離を指す。
【0028】
表示部56は、それは例えば液晶ディスプレイであって、移動対象物16の座標位置を少なくとも表示するためのものである。なお、必要に応じて、表示部56に表示される情報は変更されてよい。例えば、座標位置のみならず移動量や軸送り速度も表示部56に表示されるようにしてよい。
【0029】
制御部54はプロセッサおよびメモリ(不図示)を備えており、工作機械10の制御に必要なプログラムが実行されるように構成されている。例えば、速度選択キー58A〜58Eのいずれか1つが操作されると、制御部54は、軸送り速度を、操作された速度選択キー58に応じた速度に設定する。例えば、速度選択キー58Aが操作された場合は、制御部54は、軸送り速度を「超高速」に設定する。各段階での具体的な速度は適宜変更されてよいが、本実施の形態では、「超高速」を指定すると軸送り速度が最も速くされ、「微速」を指定すると軸送り速度が最も遅くされることとする。
【0030】
また、
図3に示されたように、本実施の形態では、制御部54は、モータ駆動制御部64、移動量検出部66、座標位置検出部68、および丸め処理部70を有する。
【0031】
モータ駆動制御部64は、オペレータによって軸送り操作がされたときにその操作が解除されるまで、および後述の丸め処理が行われたときにその結果に基づいて、移動対象物16が移動するようにモータ50X、50Yを駆動させるための処理部である。例えば、本実施の形態では、モータ駆動制御部64は、軸送りキー60X+が操作された場合は、その操作が解除されるまで、設定された軸送り速度で+X軸方向に移動対象物16が移動するようにモータ50Xを駆動させる。また、軸送りキー60X−が操作された場合は、その操作が解除されるまで、設定された軸送り速度で−X軸方向に移動対象物16が移動するようにモータ50Xを駆動させる。同様に、モータ駆動制御部64は、軸送りキー60Y+、60Y−が操作された場合はその操作に応じてモータ50Yを駆動させる。
【0032】
移動量検出部66は、移動対象物16の軸送り方向における移動量を検出するための処理部である。本実施の形態では、移動量検出部66は、エンコーダ51X、51Yが計測するモータ50X、50Yの回転角に基づいて、軸送り方向における移動対象物16の移動量を検出する。なお、移動量検出部66は、移動対象物16の移動量を検出することが可能なセンサ等が工作機械10に設けられるのであれば、エンコーダ51X、51Yからの情報に依らなくてもよい。
【0033】
座標位置検出部68は、移動量検出部66が検出した移動対象物16の移動量に基づいて、移動対象物16の軸送り方向における座標位置を検出する。なお、本実施の形態では、移動量および座標位置のいずれも1mm(ミリメートル)を単位とする小数点第四位までの数値で検出されるものとするが、検出対象の数値の単位や桁数は適宜変更されてよい。
【0034】
丸め処理部70は、移動対象物16の座標位置および移動量の少なくとも一方の、指定された軸送り速度に対応する丸め桁以下の数字を丸める丸め処理を行う処理部である。
【0035】
本実施の形態では、オペレータが丸め対象選択キー62A、62Bのいずれかを操作すると、その操作に応じて、移動対象物16の座標位置および移動量のいずれかが丸め処理の対象として丸め処理部70に設定される。また、丸め処理部70は、丸め処理の対象(座標位置および移動量のいずれか)の数値のうちの少なくとも一方の現在値の、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように丸め桁未満の桁の数字を切上げることで、丸め処理を行う。
【0036】
なお、軸送り速度および丸め処理の対象は、オペレータによる指定のほか、工作機械10の起動時に初期設定として制御部54が自動的に設定してもよい。
【0037】
図5は、丸め処理が行われるときの制御部54の制御の流れを示したフローチャート図である。
【0038】
ステップS1では、制御部54は、軸送り操作が行われているか否かを判定する。例えば、軸送りキー60X+〜60Y−のいずれかが操作されることで入力部52から送信される信号を制御部54が受信したときに、制御部54は、軸送り操作が行われていると判定する。そして、軸送り操作が行われていると判定した場合は、制御部54は、ステップS2、S3を実行する。
【0039】
ステップS2では、丸め処理部70が、丸め処理の対象の数値を取得する。例えば、丸め処理の対象が「座標位置」であった場合には、丸め処理部70は、その時点での移動対象物16の軸送り方向における座標位置を座標位置検出部68から取得する。これにより、ステップS2が完了する。
【0040】
図6は、制御部54のメモリに格納された軸送り速度と丸め桁との関係の例を示した対応表である。
【0041】
ステップS3では、丸め処理部70が、丸め後の数値を算出する。まず、丸め処理部70は、メモリに格納された軸送り速度と丸め桁との対応関係を参照して、指定されている軸送り速度に対応した丸め桁を決定する。例えば、軸送り速度と丸め桁との対応関係が
図6のとおりであって、オペレータの指定していた軸送り速度が「超高速」であったとする。この場合、丸め処理部70は、丸め桁を「一の位」(1mm単位)に決定する。
【0042】
続いて、丸め処理部70は、丸め処理の対象となっている数値のうちの丸め桁以下の数字を丸めることによって、丸め後の数値を算出する。例えば、ステップS2で取得した座標位置が「(X軸方向)0.1234(mm)」であったとする。このとき、丸め処理の対象が「座標位置」であり、丸め桁が「一の位」であったとすると、丸め処理部70は、現在値の一の位未満の数字を切上げることで丸め後の数値「(X軸方向)1.0000(mm)」を算出する。丸め後の数値を算出すると、丸め処理部70は、その算出結果をメモリに格納する。これにより、ステップS3が完了する。
【0043】
ステップS4は、モータ駆動制御部64によるモータ50X、50Yの制御を行うステップである。ステップS4では、オペレータの軸送り操作に従って移動対象物16が座標系上を移動する。
【0044】
ステップS5では、制御部54が、軸送り操作が解除されたか否かを判定する。例えば、軸送りキー60X+〜60Y−のいずれかが操作されている間だけ入力部52から制御部54に送信される信号が途絶えたときに、制御部54は、軸送り操作が解除されたと判定する。軸送り操作が解除されたと判定しない限り、制御部54は、ステップS2〜S4を繰り返し実行する。つまり、本実施の形態では、座標位置および移動量が変化するたびに丸め処理が行われ、メモリに格納された丸め後の数値が繰り返し更新され続ける。
【0045】
ステップS5で軸送り操作が解除されたと判定されると、制御部54は、ステップS6を実行する。ステップS6では、モータ駆動制御部64が、メモリに格納された最新の丸め後の数値に基づいて、モータ50X、50Yを制御する。例えば、丸め処理の対象が「座標位置」であり、丸め桁が「一の位」であって、最新の丸め後の数値が「(X軸方向)200.0000(mm)」であったとする。この場合、モータ駆動制御部64は、移動対象物16の「座標位置」が「200.0000(mm)」に移るようにモータ50Xを自動的に制御する。
【0046】
以上が、丸め処理が行われるときの制御部54の制御の流れである。
【0047】
なお、上記では「座標位置」を丸める場合を説明したが、移動量検出部66で検出される「移動量」を丸め処理の対象としてもよい。例えば、丸め処理の対象が「移動量」であり、丸め桁が「一の位」であり、移動量が「(+Y軸方向)1.0001(mm)」であれば、丸め後の数値を「(+Y軸方向)2.0000(mm)」としてメモリに格納する。
【0048】
以上で説明した第1の実施の形態に係る制御装置14によれば、軸送り操作の解除後において、軸送り操作中に算出された丸め後の数値が示す座標位置または移動量となるように、モータ50X、50Yが自動制御される。したがって、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物16の停止位置や移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。しかも、丸め後の数値は、軸送り操作中に算出される。このため、第1の実施の形態に係る制御装置14は、軸送り操作によるモータ50X、50Yの制御が解除された後、丸め後の数値に基づく上記自動制御へ即座に移行する。
【0049】
第1の実施の形態では、丸める桁は、オペレータの指定した軸送り速度に対応して軸送り速度が速いほどに大きな桁になるように決定される。軸送り操作においては軸送り速度が速いほど停止させたい位置と実際に停止する位置との誤差が大きくなり易い傾向にあるが、第1の実施の形態に係る制御装置14によれば、移動対象物16を停止させたい位置と実際に停止する位置との誤差を軸送り速度に応じた大きさで丸めることができる。
【0050】
第1の実施の形態では、丸め桁未満の数字を切上げて丸め後の数値を算出した。これにより、移動対象物16は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、オペレータが操作していた軸送り方向と同じ方向に移動する。したがって、移動対象物16が一度通過した座標位置に再び戻ってしまうことが抑制される。
【0051】
[変形例]
以上、本発明の一例として第1の実施の形態が説明されたが、上記第1の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0052】
(変形例1)
第1の実施の形態では、座標位置および移動量が変化するたびに丸め処理を行った。丸め処理は、繰り返し実行されるのであれば、必ずしも座標位置および移動量が変化するたびに実行されなくてよい。例えば、丸め処理部70は、丸め後の数値のうちの丸め桁に位置する数字が更新されるタイミングに限って丸め処理を実行するようにしてもよい。
【0053】
具体例として、座標位置の丸め処理が丸め桁未満の数字の切上げによって行われる場合を挙げて説明する。この例での丸め桁は「一の位」とする。そのような例においては、座標位置が「(X軸方向)200.0001〜201.0000(mm)」の範囲であれば、丸め処理をいつ行ったとしても、その結果は「201.0000(mm)」である。この例において、丸め後の数値のうちの丸め桁に位置する数字が更新されるタイミングとは、丸め処理の結果が「202.0000(mm)」になるタイミングのことを指す。言い換えると、丸め後の数値のうちの丸め桁に位置する数字が更新されるタイミングとは、移動対象物16の座標位置が、最後に算出された丸め後の数値(上記の例で言えば「201.0000(mm)」)を超えたときのことを指す。したがって、丸め処理部70は、移動対象物16の座標位置が、最後に算出された丸め後の数値を超えたタイミングに限って丸め処理を実行してもよい。これにより、丸め処理の実行頻度を低減することができる。そして、その結果、丸め処理部70の処理負荷を低減することができる。
【0054】
(変形例2)
丸め処理部70は、移動対象物16の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方の丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を切捨てることで丸める丸め処理を行ってもよい。
【0055】
これにより、移動対象物16は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、オペレータが操作していた軸送り方向と逆方向に移動する。すなわち、移動対象物16が座標系上を軸送り方向に沿って必要以上に進んでしまうことが抑制される。なお、変形例1と同様に、丸め処理部70は、丸め後の数値のうちの丸め桁に位置する数字が更新されるタイミングに限って丸め処理を実行するようにしてもよい。そのタイミングとは、例えば、丸め処理の対象の現在値のうちの丸め桁に位置する数字が更新されたときである。
【0056】
(変形例3)
丸め処理部70は、移動対象物16の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方の丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を四捨五入することで丸める丸め処理を行ってもよい。
【0057】
これにより、移動対象物16は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、その移動量がより少なくて済みやすくなる。なお、変形例1、2と同様に、丸め処理部70は、丸め後の数値のうちの丸め桁に位置する数字が更新されるタイミングに限って丸め処理を実行するようにしてもよい。そのタイミングとは、例えば、丸め処理の対象の現在値のうちの丸め桁の一つ下の桁に位置する数字が「5」になったときである。
【0058】
(変形例4)
変形例4では、丸め処理の対象が「移動量」である場合に、「座標位置」の数値を使って「移動量」の丸め処理を行う一例を記載する。
【0059】
丸め処理部70は、軸送り操作が開始された時点での移動対象物16の軸送り方向における座標位置の丸め桁未満の桁の数字を、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように丸められた移動対象物16の座標位置の現在値に加算することで移動量を丸めてもよい。
【0060】
具体例を記載する。例えば、丸め処理部70は、軸送り操作が開始された時点において、このときの移動対象物16の座標位置に関する情報をメモリに格納させる。ここでは、+X軸方向での軸送り操作がされたこととし、メモリに格納される情報が「X軸方向 0.1234(mm)」であったとする。
【0061】
次いで、丸め処理部70は、座標位置の現在値を丸め桁で丸めた場合の数値を算出する。丸め方はとくに限定しないが、ここでは、丸め桁未満の数字を切上げるものとし、現在値は「0.9000(mm)」であるとする。したがって、丸め桁が「一の位」であれば、「0.9000(mm)」を丸めた結果は「1.0000(mm)」となる。
【0062】
次いで、丸め処理部70は、上記した2つの数値を足し合わせる。すなわち、「0.1234(mm)」と「1.0000(mm)」とを加算して「1.1234(mm)」を算出する。これにより、移動対象物16は、例えばX軸方向の座標位置「0.9000(mm)」で軸送り操作を解除されたとしても、自動的にX軸方向の座標位置「1.1234(mm)」(移動量「1.0000」(mm))に移動される。
【0063】
以上のようにして、「座標位置」の数値を使って「移動量」を丸めるような処理を丸め処理部70に実行させてもよい。これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物16の移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0064】
(変形例5)
丸め処理部70は、移動対象物16の移動量の丸め桁未満の桁の数字を、移動対象物16の座標位置の数値
から減算することで移動量を丸める前記丸め処理を行ってもよい。
【0065】
具体例を記載する。例えば、丸め処理部70は、座標位置「(X軸方向)0.2468(mm)」を始点とする軸送り操作中において、このときの移動対象物16の軸送り方向での座標位置および移動量を取得する。ここでは、座標位置の取得結果が「(X軸方向)201.1234(mm)」であり、移動量の取得結果が「(X軸方向)200.8766(mm)」であったとする。このときに取得される移動量は移動量検出部66が検出してもよいし、軸送り操作の開始時点での座標位置および丸め処理の開始時点での座標位置の間の差分に基づいて丸め処理部70が算出してもよい。
【0066】
次いで、丸め処理部70は、移動対象物16の移動量の現在値のうちの丸め桁未満の桁の数字を、移動対象物16の座標位置の現在値
から減算する。丸め桁が「一の位」であれば、丸め処理部70は、「0.8766(mm)」を「201.1234(mm)」から減算し、「200.2468(mm)」を算出する。
【0067】
これにより、移動対象物16は、例えばX軸方向の座標位置「201.1234(mm)」で軸送り操作を解除されたとしても、自動的にX軸方向の座標位置「200.2468(mm)」(移動量「200.0000」(mm))に移動される。
【0068】
以上のようにして、「移動量」を丸めるような処理を丸め処理部70に実行させてもよい。これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物16の移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0069】
(変形例6)
丸め処理およびその処理結果に基づく制御が行われる対象は、支持部44に限定されない。例えば、制御装置14は、上ワイヤガイド32がV軸、U軸、およびZ軸のいずれかに沿って軸送りされたときに丸め処理を実行し、その結果に基づいて上ワイヤガイド32を移動させてもよい。また、下ワイヤガイド34についても上ワイヤガイド32と同様に制御してよい。
【0070】
(変形例7)
制御装置14が適用される工作機械10は、軸送り操作が備わる工作機械であれば、ワイヤ放電加工機に限定されない。例えば、工作機械10が射出成形機であって、その射出成形機において移動対象物16が軸送りされたときに、制御装置14が丸め処理を実行するようにしてもよい。
【0071】
(変形例8)
上記実施の形態および変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0072】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0073】
<第1の発明>
第1の発明は、移動対象物(16)を軸送りするためのモータ(50X、50Y)を制御する制御装置(14)であって、オペレータが軸送り操作および軸送り速度の指定を行うための入力部(52)と、オペレータによって軸送り操作がされている間だけ、指定された軸送り速度で移動対象物(16)が移動するように、モータ(50X、50Y)を駆動させるモータ駆動制御部(64)と、移動対象物(16)の軸送り方向における移動量を検出する移動量検出部(66)と、移動量に基づいて、予め決められた座標系における移動対象物(16)の軸送り方向における座標位置を検出する座標位置検出部(68)と、座標位置を少なくとも表示する表示部(56)と、軸送り操作がされている間、移動対象物(16)の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方の、指定された軸送り速度に対応する丸め桁以下の数字を丸める丸め処理を繰り返し行う丸め処理部(70)と、を備え、モータ駆動制御部(64)は、軸送り操作が解除された後において、最後に行われた丸め処理の結果に基づいて、移動対象物(16)の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方が丸められるようにモータ(50X、50Y)を駆動させる。
【0074】
これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物(16)の停止位置や移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0075】
丸め処理部(70)は、座標位置および移動量が変化するたびに丸め処理を行ってもよい。これにより、丸め後の数値が軸送り操作中において繰り返し更新され続ける。
【0076】
丸め処理部(70)は、移動対象物(16)の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方の数値のうちの、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を切上げることで丸め処理を行ってもよい。これにより、移動対象物(16)は、丸め処理の結果に基づいて移動する際であっても、オペレータが操作していた軸送り方向と同じ方向に移動する。すなわち、移動対象物(16)が一度通過した座標位置に再び戻されることが抑制される。
【0077】
丸め処理部(70)は、移動対象物(16)の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方の数値のうちの、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を切捨てることで丸め処理を行ってもよい。これにより、移動対象物(16)は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、オペレータが操作していた軸送り方向と逆方向に移動する。すなわち、移動対象物(16)が座標系上を軸送り方向に沿って必要以上に進んでしまうことが抑制される。
【0078】
丸め処理部(70)は、移動対象物(16)の座標位置および移動量のうちの少なくとも一方の数値のうちの、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を四捨五入することで丸め処理を行ってもよい。これにより、移動対象物(16)は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、その移動量がより少なくて済みやすくなる。
【0079】
丸め処理部(70)は、軸送り操作が開始された時点での移動対象物(16)の軸送り方向における座標位置の丸め桁未満の桁の数字を、移動対象物(16)の座標位置の現在値のうちの丸め桁未満の桁の数字をゼロに丸めた数値に加算することで移動量を丸める丸め処理を行ってもよい。これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物(16)の移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0080】
丸め処理部(70)は、移動対象物(16)の移動量の数値のうちの丸め桁未満の桁の数字を、移動対象物(16)の座標位置の数値
から減算することで移動量を丸める丸め処理を行ってもよい。これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物(16)の移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0081】
<第2の発明>
第2の発明は、軸送り制御方法であって、移動対象物(16)の座標位置および移動量のいずれかを丸め処理の対象として設定するステップと、オペレータによる軸送り速度の指定および軸送り操作に応じて、指定された軸送り速度で座標系上を移動対象物(16)が移動するようにモータ(50X、50Y)を駆動させるステップと、予め決められた対応関係に基づいて軸送り速度に対応する丸め桁を決定するステップと、軸送り操作中に、丸め処理の対象の数値を取得するステップと、軸送り操作中に、丸め処理の対象の数値を丸め桁で丸めることで丸め後の数値を算出する丸め処理を繰り返し行うステップと、軸送り操作の解除後において、丸め処理の対象の実際の数値が最後に算出された丸め後の数値と一致するようにモータ(50X、50Y)を駆動させるステップと、を有する。
【0082】
これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物(16)の停止位置や移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0083】
丸め処理は、座標位置および移動量が変化するたびに行われてよい。これにより、丸め後の数値が軸送り操作中において繰り返し更新され続ける。
【0084】
丸め処理では、丸め処理の対象の数値のうちの、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を切上げることで丸め後の数値を算出してもよい。これにより、移動対象物(16)は、丸め処理の結果に基づいて移動する際であっても、オペレータが操作していた軸送り方向と同じ方向に移動する。すなわち、移動対象物(16)が一度通過した座標位置に再び戻されることが抑制される。
【0085】
丸め処理では、丸め処理の対象の数値のうちの、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を切捨てることで丸め後の数値を算出してもよい。これにより、移動対象物(16)は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、オペレータが操作していた軸送り方向と逆方向に移動する。すなわち、移動対象物(16)が座標系上を軸送り方向に沿って必要以上に進んでしまうことが抑制される。
【0086】
丸め処理では、丸め処理の対象の数値のうちの、丸め桁未満の桁の数字がゼロとなるように、丸め桁未満の桁の数字を四捨五入することで丸め後の数値を算出してもよい。これにより、移動対象物(16)は、丸め処理の結果に基づいて移動する際、その移動量がより少なくて済みやすくなる。
【0087】
丸め処理では、軸送り操作が開始された時点での移動対象物(16)の軸送り方向における座標位置の丸め桁未満の桁の数字を、移動対象物(16)の座標位置のうちの丸め桁未満の桁の数字をゼロに丸めた数値に加算することで移動量を丸めてもよい。これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物(16)の移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。
【0088】
丸め処理では、移動対象物(16)の移動量の
数値のうちの丸め桁未満の桁の数字を、移動対象物(16)の座標位置
の数値から減算することで移動量を丸めてもよい。これにより、オペレータの軸送り操作中に生じる移動対象物(16)の移動量のばらつきが、軸送り操作後に自動的に低減される。