特許第6795564号(P6795564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795564
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】支持構造および工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   F16M 11/24 20060101AFI20201119BHJP
   B23Q 1/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F16M11/24 H
   B23Q1/00 T
   B23Q1/00 U
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-191928(P2018-191928)
(22)【出願日】2018年10月10日
(65)【公開番号】特開2020-60258(P2020-60258A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2020年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】有松 洋平
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−327859(JP,A)
【文献】 中国実用新案第207554687(CN,U)
【文献】 特開2000−107976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/24
B23Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置を支持する支持構造であって、
前記装置を支持するベース部と、
前記ベース部を支持する複数の脚部と、
前記ベース部の上、且つ、前記装置の下に設置されて、振動を抑制する振動抑制部と、
を備え、
複数の前記脚部の少なくとも一つは、前記ベース部の高さ方向に長さを調節可能な高さ調節機構と、接地する接地部材とを有し、前記接地部材は、前記ベース部との間に前記高さ調節機構を挟んで前記ベース部に固定されることにより前記高さ調節機構を固定し、前記接地部材の接地面は凸状の曲面になっている、支持構造。
【請求項2】
装置を支持する支持構造であって、
前記装置を支持するベース部と、
前記ベース部を支持する複数の脚部と、
を備え、
複数の前記脚部の少なくとも一つは、前記ベース部の高さ方向に長さを調節可能な高さ調節機構と、接地する接地部材とを有し、前記接地部材は、前記ベース部との間に前記高さ調節機構を挟んで前記ベース部に固定されることにより前記高さ調節機構を固定し、前記接地部材の接地面は凸状の曲面になっており、
前記高さ調節機構は、楔型部材と、前記楔型部材を上下から挟む上側部材および下側部材と、を含む、支持構造。
【請求項3】
請求項に記載の支持構造であって、
前記ベース部の上、且つ、前記装置の下に設置されて、振動を抑制する振動抑制部を備える、支持構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の支持構造であって、
前記高さ調節機構は、前記上側部材と前記下側部材との上下方向の間隔を変化させるために、前記楔型部材と螺合する高さ調整ボルトを備える、支持構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の支持構造であって、
前記楔型部材、前記上側部材および前記下側部材は、第1ボルトを貫通させるための貫通孔をそれぞれ有し、
前記接地部材は、前記第1ボルトのねじ溝と螺合するねじ穴を有する、支持構造。
【請求項6】
請求項に記載の支持構造であって、
前記楔型部材および前記上側部材は、第2ボルトを貫通させるための貫通孔をそれぞれ有し、前記下側部材は、前記第2ボルトのねじ溝と螺合するねじ孔を有し、
前記接地部材は、前記第2ボルトの先端に対応する逃げ穴を有する、支持構造。
【請求項7】
請求項に記載の支持構造であって、
前記下側部材が、前記接地部材を兼ねている、支持構造。
【請求項8】
請求項に記載の支持構造であって、
前記楔型部材および前記上側部材は、ボルトを貫通させるための貫通孔をそれぞれ有し、
前記下側部材は、前記ボルトのねじ溝と螺合するねじ穴を有する、支持構造。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の支持構造であって、
少なくとも3つの前記脚部の接地面は凸状の曲面になっている、支持構造。
【請求項10】
請求項1または3に記載の支持構造であって、
前記振動抑制部は、床からの振動および前記装置からの振動の少なくとも一方を抑制する、支持構造。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の支持構造であって、
前記接地部材は、金属板を介して接地されている、支持構造。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の支持構造であって、
前記接地部材の接地面は部分球面形状の曲面になっている、支持構造。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の支持構造と、工作機械である前記装置と、を備える、工作機械システム。
【請求項14】
工作機械と、前記工作機械を支持する支持構造とを有する工作機械システムであって、
前記支持構造は、
前記工作機械を支持するベース部と、
前記ベース部を支持する複数の脚部と、
を備え、
複数の前記脚部の少なくとも一つは、前記ベース部の高さ方向に長さを調節可能な高さ調節機構と、接地する接地部材とを有し、前記接地部材は、前記ベース部との間に前記高さ調節機構を挟んで前記ベース部に固定されることにより前記高さ調節機構を固定し、前記接地部材の接地面は凸状の曲面になっている、工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置を支持するための支持構造および工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記に示す特許文献1に記載の工作機械は、高さ調節機構を備えた脚を4本備えた支持構造により支えられている。各脚の底部は平面になっており、床が平面であれば工作機械全体を安定して支えることができる。工具および各軸にかかる力を偏らせないためには加工テーブルを水平に保つ必要があり、そのために各脚に高さ調節機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−49586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、工作機械としての装置が設置される場所の床面の状態は、必ずしも理想的な平面ではない。概ね水平な平面であっても、各々の脚が着座する床面を微視的に見た場合、コンクリートのモルタルの凹凸、ひび割れによる微小な段差、経年的に生じた床のうねり、または施工時のコテの跡などによって床に凹凸が生じている。したがって、特許文献1に記載の工作機械の各々の脚部品の底面の全面が、非理想的な床に安定して着座するのは事実上不可能であり、支持機構および装置のガタつきの原因となり、高精度な加工または動作を行うことができない。
【0005】
高さ調節機構は高さ方向の長さがずれやすい構成であるため、支持機構のガタつきによる振動によって高さ方向の長さがずれてしまい、装置を安定に保てないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、非理想的な床であっても装置を安定させて支持することが可能な支持構造および工作機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、装置を支持する支持構造であって、前記装置を支持するベース部と、前記ベース部を支持する複数の脚部と、を備え、複数の前記脚部の少なくとも一つは、前記ベース部の高さ方向に長さを調節可能な高さ調節機構と、接地する接地部材とを有し、前記接地部材は、前記ベース部との間に前記高さ調節機構を挟んで前記ベース部に固定されることにより前記高さ調節機構を固定し、前記接地部材の接地面は凸状の曲面になっている。
【0008】
本発明の第2の態様は、工作機械システムであって、上記の支持構造と、工作機械である前記装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非理想的な床であっても装置を安定させて支持することが可能な支持構造および工作機械システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】工作機械システムの構成を示す側面図である。
図2】支持構造の一部を示す斜視図である。
図3】ベース部に固定されている脚部の様子を示す斜視図である。
図4】ベース部に固定される前の高さ調節機構および接地部材の様子を示す斜視図である。
図5】ベース部に固定される前の高さ調節機構および接地部材の様子を示す別の斜視図である。
図6】変形例1における装置を支持する支持構造の構成を示す側面図である。
図7】変形例3における高さ調節機構の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る支持構造および工作機械システムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
[実施の形態]
図1は、工作機械システム10の構成を示す側面図である。工作機械システム10は、工作機械としての装置11と、装置11を搭載する支持台11aと、装置11および支持台11aを支持する支持構造12と、を備える。支持構造12は、装置11を支持する架台であるベース部14と、ベース部14を支持する複数の脚部16と、を備える。さらに、支持構造12は、ベース部14の上、且つ、装置11の下に設置されて、振動を抑制する振動抑制部18を備える。振動抑制部18は、ベース部14の上に設置されて、支持台11aを直接支持する。脚部16は、工作機械システム10全体の重量を支えるのに不可欠な主脚であり、その数は3以上である。なお、主脚以外に補助的な脚を追加してもよい。
【0013】
装置11の具体例は、超精密加工機である。要求される加工精度の分解能が100ナノメートル以下の超精密加工機は、位置制御の指令単位が10ナノメートル刻み、またはそれより微細な刻みになる。装置11の他の例としては、半導体のウェハー研削装置である。支持構造12が支える装置11が有する加工テーブルの水平レベルの目標値は、0.2mm/1m以下の水平度を要する。
【0014】
複数の脚部16のうちの一つである脚部16aは、ベース部14の高さ方向(Z方向)に長さを調節可能な高さ調節機構22と、支持構造12の設置場所の床に接地する接地部材24とを有している。設置場所の床は、X方向およびY方向に平行であり、重力の向きは−Z方向である。Z方向を上の方向、−Z方向を下の方向として、上下を定める。高さ調節機構22は、装置11が有する加工テーブルの水平だしなどのために設けられている。接地部材24は、ベース部14との間に高さ調節機構22を挟んでベース部14に固定されることにより高さ調節機構22を固定する。接地部材24の接地面24aは凸状の曲面になっている。複数の脚部16の少なくとも一つは、高さ調節機構22および接地部材24を有する脚部16aである必要がある。なお、複数の脚部16の全てが高さ調節機構22および接地部材24を有する脚部16aであってもよい。
【0015】
複数の脚部16のうちの一つである脚部16bは、高さ調節機構22を有していないが、脚部16bの接地面17は接地面24aと同様の凸状の曲面になっている。したがって、複数の脚部16が脚部16aと、脚部16bとから構成されるならば、複数の脚部16の全ての接地面は凸状の曲面になっている。
【0016】
なお、脚部16は3つ以上あれば支持構造12は安定するので、少なくとも3つの脚部16の接地面が凸状の曲面になっていればよい。これにより、床面の凹凸に対して凸状の曲面が略点状で床面を捉えて接触することが確実に可能となり、支持構造12のガタつきを防いで、支持構造12を確実に安定化できる。接地面が凸状の曲面になっている脚部16のうち少なくとも一つが高さ調節機構22および接地部材24を有する脚部16aであれば、残りは高さ調節機構22を有さない脚部16bであってもよい。また、少なくとも3つの脚部16の接地面が凸状の曲面になっていれば、接地面が平面の補助的な脚部が脚部16とは別に支持構造12に設けられてもよい。
【0017】
図2は、支持構造12の一部を示す斜視図である。図2では、高さ調節機構22および接地部材24を有する脚部16aがY方向に2つ並んでいる様子が示されている。振動抑制部18が効果的に機能するためには、ベース部14および脚部16に高い剛性が要求される。したがって、接地部材24は、十分な厚さの金属、またはそれに準ずる剛性のある材料で構成されている必要がある。例えば、接地部材24を構成する材料は、SS400、S45Cといった金属である。接地部材24の材料は、支持構造12が設置される床のコンクリートの硬さまたは脆さを勘案して選定するのが好ましい。接地部材24の接地面24aは、半径Rが50mm〜1000mm程度の部分球面形状の曲面になっていることが好ましい。特に、半径Rが100mm〜500mmの間の部分球面形状の曲面が好適である。これにより、床面の凹凸に対して接地面24aの凸状の曲面が略点状で床面をより好適に捉えて接触することが可能になる。
【0018】
半径Rが小さくなるほど、支持構造12の適正な許容荷重は小さくなるが、対応可能な床面の凹凸の程度および傾きの大きさに対する許容範囲は広くなる。逆に、半径Rが大きくなるほど、支持構造12が支持可能な荷重は大きくなるが、対応可能な床面の凹凸の程度および傾きの大きさに対する許容範囲は狭まっていく。例えば、床面の傾斜を5度までと想定すると、図1の支持構造12から上の全体の機械の重さが1トン〜5トン程度であれば、半径R=300〜400mm程度の球面が好ましい。
【0019】
図3は、ベース部14に固定されている脚部16aの様子を示す斜視図である。図4は、ベース部14に固定される前の高さ調節機構22および接地部材24の様子を示す斜視図である。図5は、ベース部14に固定される前の高さ調節機構22および接地部材24の様子を示す別の斜視図である。
【0020】
図4に示すように、ベース部14に形成されたボルト穴26に挿入される第1ボルト28と、ベース部14に形成されたボルト穴30に挿入される第2ボルト32とによって、高さ調節機構22および接地部材24はベース部14に固定される。高さ調節機構22は、上側部材34、楔型部材36、下側部材38および高さ調節ボルト40を備える。高さ調節機構22においては、それぞれが楔型部材36と同じ傾きのテーパ面を持つ二つの部材である上側部材34および下側部材38が楔型部材36を上下から挟んでいる。上記テーパ面は、X方向に進むとZ方向の高さが変化する斜面である。X方向に延びる高さ調節ボルト40は、楔型部材36と螺合している。高さ調節ボルト40を一方に回すことにより楔型部材36はX方向に駆動され、高さ調節ボルト40を他方に回すことにより楔型部材36は−X方向に駆動される。したがって、高さ調節ボルト40を操作することにより上側部材34と下側部材38との上下方向の間隔が変化するので、高さ調節機構22の高さ方向(Z方向)の長さを適切に調節することができる。そして、床の傾きに合わせて高さ調節ボルト40を操作して、高さ調節機構22の高さ方向(Z方向)の長さを調節することにより、装置11が有する加工テーブルを水平に保つように調節することができる。
【0021】
そして、上側部材34、楔型部材36および下側部材38は、第1ボルト28を貫通させるための貫通孔42をそれぞれ有している。さらに、接地部材24は、第1ボルト28のねじ溝と螺合するねじ穴24bを有している。すなわち、第1ボルト28は、接地部材24と螺合するボルトである。なお、楔型部材36の貫通孔42は第1ボルト28と干渉しないようにX方向の径がY方向の径より大きい長孔になっている。第1ボルト28により、接地部材24は、ベース部14との間に高さ調節機構22を挟んでベース部14に固定される。その結果、高さ調節機構22をベース部14に確実に固定することができる。
【0022】
また、上側部材34および楔型部材36は、第2ボルト32を貫通させるための貫通孔44aをそれぞれ有し、下側部材38は、第2ボルト32のねじ溝と螺合するねじ孔44bを有している。すなわち、第2ボルト32は、下側部材38と螺合するボルトである。さらに、接地部材24は、第2ボルト32の先端に対応する逃げ穴24cを有している。なお、楔型部材36の貫通孔44aは第2ボルト32と干渉しないようにX方向の径がY方向の径より大きい長孔になっている。第2ボルト32により、下側部材38は、ベース部14との間に上側部材34および楔型部材36を挟んでベース部14に固定される。その結果、高さ調節機構22全体をベース部14に確実に固定することができる。
【0023】
高精度な加工を要求される工作機械システム10では振動が高精度加工の妨げとなるので、その対策として、加工テーブルを含んだ装置11の全体を振動抑制部18の上に配置している。振動抑制部18は、床からの振動を抑制する除振機能を有し、振動抑制部18の上側の支持台11aおよび装置11に振動を伝えないようにしている。この場合、振動抑制部18は、床の振動を検出して当該振動を相殺する制御を行う能動型除振制御を実行する。
【0024】
また、振動抑制部18は、装置11からの振動を抑制する制振機能を有し、床に振動を伝えないようにする。さらに、振動抑制部18は、装置11および支持台11aの内外の様々な振動源からの振動を抑制する制振制御を実行してもよい。これにより、振動抑制部18は、振動抑制部18が支持する支持台11aおよび装置11を、あたかも上空の一点から吊り下げられているかのように空間の一定位置に保つことができる。すなわち、スカイフックダンパが実現できる。したがって、装置11において実際に加工が実行される位置である加工点も空間の一定位置に保つことができる。
【0025】
なお、振動抑制部18は、除振機能および制振機能の双方の機能を有しているが、いずれか一方の機能を有しているのでもかまわない。すなわち、振動抑制部18は、床からの振動および装置11からの振動の少なくとも一方を抑制することができれば、装置11を安定して制御することが可能になる。
【0026】
以下に、本実施の形態の効果を説明する。楔型部材36と、楔型部材36を上下から挟んでいる上側部材34および下側部材38とからなる構成の高さ調節機構22は、高さ方向の長さがずれやすい構成である。しかしながら、本実施の形態にかかる支持構造12においては、接地部材24が、ベース部14との間に高さ調節機構22を挟んでベース部14に固定されることにより、高さ調節機構22がしっかりとベース部14に固定されてガタつきが抑えられる。その結果、高さ調節機構22の高さ方向の長さがずれにくくなり脚部16aが安定化するという効果が得られる。さらに、接地部材24の接地面24aが凸状の曲面になっていることにより、非理想的な床面の凹凸に対して接地面24aの凸状の曲面が略点状で床面を捉えて接触することが可能になり、支持構造12のガタつきを防ぐことができる。凸状の曲面を介して支持構造12が安定するように接地するので、上記効果も含めて支持構造12が装置11を安定させて支持することが可能になる。これにより、高精度の加工動作が必要な工作機械システム10の性能を向上させることが可能となる。
【0027】
また、支持構造12が振動抑制部18を備える場合は、制振動作によって強弱が変動する動的な荷重が発生して脚部16に作用する。しかし、本実施の形態の脚部16を用いることで、脚部16の周辺の剛性を維持して、振動抑制部18の除振機能および制振機能の低下を防ぐことができる。すなわち、支持構造12を安定させることができるので、振動抑制部18は、最大限の制御性能を発揮することが可能となる。その結果、スカイフックダンパ状態に安定して制御された装置11が得られる。そして、装置11の各種加工軸に対してより高精度な制御が可能となるので、超精密加工機または超精密研削機といった高精度の加工動作が必要な装置11の性能をさらに向上させることが可能となる。
【0028】
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0029】
<変形例1>
図6は、変形例1における装置11を支持する支持構造12の構成を示す側面図である。図6は、接地部材24が金属板46を介して接地されている様子を示している。接地部材24の凸状の曲面である接地面24aと、支持構造12の設置場所の床の凹凸との噛み合い状態をより好適にするために、接地部材24の接地面24aが金属板46を介して接地されている。なお、脚部16bの接地面17も金属板46を介して接地されている。金属板46は、アルミ板、銅板、軟鋼板などの比較的柔らかい材質の金属の薄板である。金属板46の厚みは、0.1mm〜5mm程度であることが望ましく、特に好ましくは0.5mm〜3mm程度である。金属板46を、床と接地部材24との間に適宜挟むことによって、床のコンクリートの細かな凹凸を金属板46が倣って吸収する。それと共に、接地面24aの凸状の曲面が程よく金属板46に沈み込むため、支持構造12の接地状態をより好適にするのに効果的である。なお、例えば、金属板46の代わりにゴムまたはマット類を設置してしまうと、ゴムまたはマット類は柔らかな弾性体なので、振動抑制部18の制御の妨げになる。また、金属板46としては、薄さの不十分な鉄板も弾性体となり得るため、好ましくない。
【0030】
<変形例2>
図3および図4においては、接地部材24と螺合する第1ボルト28および下側部材38と螺合する第2ボルト32がそれぞれ一本ずつであるとして説明した。しかし、第1ボルト28が複数本あって、それぞれに対応する複数の貫通孔42が上側部材34、楔型部材36および下側部材38に形成されて、それぞれに対応する複数のねじ穴24bが接地部材24に形成されている構成にしてもよい。また、第2ボルト32がない構成であってもかまわない。さらに、第1ボルト28が少なくとも一本あるのであれば、第2ボルト32が複数本ある構成であってもかまわない。第1ボルト28または第2ボルト32を複数本用いることにより、接地部材24および高さ調節機構22をベース部14にさらに確実に固定することができる。
【0031】
<変形例3>
図7は、変形例3における高さ調節機構22aの構成を示す側面図である。高さ調節機構22aは、上側部材34、楔型部材36、下側部材48および高さ調節ボルト40を備える。そして、下側部材48は、上記実施の形態における下側部材38と同様に機能すると共に、上記実施の形態における接地部材24を兼ねている。すなわち、下側部材48の接地面48aは、接地部材24の接地面24aと同様な凸状の曲面になっている。
【0032】
図7に示すように、ベース部14に形成されたボルト穴26に挿入されるボルト50と、ベース部14に形成されたボルト穴30に挿入されるボルト50とによって、高さ調節機構22aはベース部14に固定される。なお、図7では、ボルト50が二本として説明しているが、ボルト50は一本でもよく、三本以上の複数存在する構成であってもかまわない。
【0033】
上側部材34は、ボルト50を貫通させるための貫通孔52を有し、楔型部材36は、ボルト50を貫通させるための貫通孔54を有し、下側部材48は、ボルト50のねじ溝と螺合するねじ穴56を有している。すなわち、ボルト50は、下側部材48と螺合するボルトである。なお、楔型部材36の貫通孔54はボルト50と干渉しないようにX方向の径がY方向の径より大きい長孔になっている。ボルト50により、下側部材48は、ベース部14との間に上側部材34および楔型部材36を挟んでベース部14に固定される。その結果、高さ調節機構22a全体をベース部14に確実に固定することができる。
【0034】
すなわち、高さ調節機構22aの底面自体が凸状の曲面になっている。これにより、上記実施の形態のように高さ調節機構22に加えて接地部材24を設ける必要がなく、上記実施の形態より支持構造12の部品点数を減らしても装置11を安定させて支持することができる。
【0035】
<変形例4>
また、支持構造12は、工作機械以外の装置11に適用することも可能であり、装置11および支持台11aが、ナノメートルオーダーまたはピコメートルオーダーの測定が可能な超精密測定器を構成してもかまわない。本実施の形態の支持構造12を利用すれば、超精密測定器の性能の向上も可能になる。
【0036】
<変形例5>
なお、上記変形例1〜4を矛盾が生じない範囲で任意に組み合わせた態様であってもかまわない。
【0037】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0038】
<第1の発明>
装置(11)を支持する支持構造(12)は、装置を支持するベース部(14)と、ベース部(14)を支持する複数の脚部(16)と、を備える。複数の脚部(16)の少なくとも一つは、ベース部(14)の高さ方向に長さを調節可能な高さ調節機構(22)と、接地する接地部材(24)とを有し、接地部材(24)は、ベース部(14)との間に高さ調節機構(22)を挟んでベース部(14)に固定されることにより高さ調節機構(22)を固定し、接地部材(24)の接地面(24a)は凸状の曲面になっている。
【0039】
これにより、高さ調節機構(22)がしっかりとベース部(14)に固定されてガタつきが抑えられ、高さ調節機構(22)の高さ方向の長さがずれにくくなるという効果が得られる。非理想的な床面の凹凸に対して接地面(24a)の凸状の曲面が略点状で床面を捉えて接触することが可能になり、支持構造(12)のガタつきを防ぐことができる。凸状の曲面を介して支持構造(12)が安定するように接地するので、上記効果も含めて支持構造(12)が装置(11)を安定させて支持することが可能になる。
【0040】
支持構造(12)は、ベース部(14)の上、且つ、装置(11)の下に設置されて、振動を抑制する振動抑制部(18)を備えもよい。これにより、振動抑制部(18)は、最大限の制御性能を発揮することが可能となり、高精度の加工動作が必要な装置(11)の性能をさらに向上させることが可能となる。
【0041】
高さ調節機構(22)は、楔型部材(36)と、楔型部材(36)を上下から挟む上側部材(34)および下側部材(38)と、を含んでもよい。
【0042】
楔型部材(36)、上側部材(34)および下側部材(38)は、第1ボルト(28)を貫通させるための貫通孔(42)をそれぞれ有してもよい。接地部材(24)は、第1ボルト(28)のねじ溝と螺合するねじ穴(24b)を有してもよい。これにより、高さ調節機構(22)をベース部(14)に確実に固定することができる。
【0043】
楔型部材(36)および上側部材(34)は、第2ボルト(32)を貫通させるための貫通孔(44a)をそれぞれ有し、下側部材(38)は、第2ボルト(32)のねじ溝と螺合するねじ孔(44b)を有してもよい。接地部材(24)は、第2ボルト(32)の先端に対応する逃げ穴(24c)を有してもよい。これにより、高さ調節機構(22)全体をベース部(14)に確実に固定することができる。
【0044】
下側部材(48)が、接地部材(24)を兼ねていてもよい。これにより、高さ調節機構(22)に加えて接地部材(24)を設ける必要がなく、支持構造(12)の部品点数を減らしても装置(11)を安定させて支持することができる。
【0045】
楔型部材(36)および上側部材(34)は、ボルト(50)を貫通させるための貫通孔(52、54)をそれぞれ有してもよい。下側部材(48)は、ボルト(50)のねじ溝と螺合するねじ穴(56)を有してもよい。これにより、高さ調節機構(22a)全体をベース部(14)に確実に固定することができる。
【0046】
支持構造(12)の少なくとも3つの脚部(16)の接地面は凸状の曲面になっていてもよい。これにより、支持構造(12)を確実に安定化できる。
【0047】
振動抑制部(18)は、床からの振動および装置(11)からの振動の少なくとも一方を抑制してもよい。これにより、装置(11)を安定して制御することが可能になる。
【0048】
接地部材(24)は、金属板(46)を介して接地されてもよい。これにより、支持構造(12)の接地状態をより好適にすることができる。
【0049】
接地部材(24)の接地面(24a)は部分球面形状の曲面になっていてもよい。これにより、床面の凹凸に対して接地面(24a)の凸状の曲面が略点状で床面をより好適に捉えて接触することが可能になる。
【0050】
<第2の発明>
工作機械システム(10)は、上記の支持構造(12)と、工作機械である装置(11)と、を備える。
【0051】
これにより、高精度の加工動作が必要な工作機械システム(10)の性能を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10…工作機械システム 11…装置
11a…支持台 12…支持構造
14…ベース部 16、16a、16b…脚部
17、24a、48a…接地面 18…振動抑制部
22、22a…高さ調節機構 24…接地部材
24b、56…ねじ穴 24c…逃げ穴
26、30…ボルト穴 28…第1ボルト
32…第2ボルト 34…上側部材
36…楔型部材 38、48…下側部材
40…高さ調節ボルト 42、44a、52、54…貫通孔
44b…ねじ孔 46…金属板
50…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7