(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記濾材が、繊維径が4μm以上の繊維で構成される繊維状媒体を基材とするフィルター材と、繊維径が4μm未満の繊維で構成される繊維状媒体を基材とするフィルター材とを含む、請求項1〜5いずれかに記載の血液処理フィルター。
前記双性イオンを含む官能基が、カルボベタイン、スルホベタイン、及びホスホベタインからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物に由来する官能基である、請求項11に記載の血液処理フィルター。
前記ポリマーが、非イオン性基を有するモノマー単位(l)と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)からなる、請求項11又は12に記載の血液処理フィルター。
フィルター基材を用意する工程と、該基材の少なくとも一方の表面をグラビアコート法により前記ポリマーで被覆する工程を含む、請求項9〜13のいずれかに記載の血液処理フィルターの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
固体表面の濡れ性を示す指標として、一般的には、臨界表面張力が用いられている。臨界表面張力とは、液体と固体の接触角(θ)が0になった時の液体の表面張力を示しており、臨界表面張力以上の表面張力をもつ液体を接しても、固体表面は拡張ぬれを起こさない。しかしながら、濾材のような多孔質体では、同じ素材でも平らな固体上で測定した臨界表面張力と異なる値が得られる。このことは、多孔質体の濡れ性が素材自体の表面張力だけでなく、孔径に依存するためであると推測される。そのため、多孔質体の濡れ性を示す指標としては、臨界湿潤表面張力(CWST)が用いられている(特開平01−249063号公報参照)。
本実施形態においては、濾材に含まれるフィルター材の一方の表面Aと他方の表面BのCWST値が異なる。
【0014】
以下に、CWST値の測定方法を示す。
複数の異なる表面張力を有する表面張力が既知の溶液を、購入、調製するなどして用意する。用意した溶液の表面張力は、温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気(JIS K 7100)で、自動表面張力計(協和界面化学製、Wilhelmy平板法)にて測定するものとする。
水平にした試料の上に、或る表面張力を有する溶液を、1滴辺り10μLずつ静かに10滴載せ、10分間放置する。濾材と溶液の接触角が90度以下となった場合、滴下した溶液が湿潤したと判断し、10滴中9滴以上が湿潤した場合、濾材はその表面張力の溶液に湿潤したと判定する。10滴中2滴以上が湿潤しない場合、濾材はその表面張力の溶液に湿潤しないと判定する。
濾材が湿潤しなかった場合には先に使用した溶液より2mN/m小さい表面張力を有する溶液を用い、また、試料が湿潤した場合には先に使用した溶液より2mN/m大きい表面張力を有する溶液を用いて、同様の操作を繰り返して、湿潤する溶液の表面張力の最大値と、湿潤しない溶液の表面張力の最小値を決定し、その平均値を試料のCWST値とする。
温度23℃、相対湿度50%とは異なる温度・湿度での測定した場合は、換算表がある場合、表を用いて温度23℃、相対湿度50%におけるCWST値を算出する。
【0015】
本実施形態においては、濾材に含まれる少なくとも一つのフィルター材の表裏のCWST値(温度23℃、相対湿度50%)が異なる。ここで、「フィルター材の表裏のCWST値が異なる」とは、濾材に含まれる少なくとも一つのフィルター材の表裏のCWST値の差が1mN/m以上であることをいう。
本実施形態において、フィルター材のCWST値が大きい方の表面Aは72mN/m以上110mN/m以下(72dyn/cm以上110dyn/cm以下)であることが好ましい。濾材の表面のCWST値が小さすぎる場合、濾材が血液でプライミングされるまでに時間がかかり、血液でプライミングされない部分は血液が流れず、濾材が有効に活用されない。特にポンプ等で高流速にて血液を処理する場合には、自然落差による場合と異なり、強制的に濾過面積が狭い状態で濾過されるので、赤血球への負荷が大きく、赤血球が破壊されて溶血してしまう。よって、ポンプ等で血液を濾過する場合には濾材の濡れ性が一定以上であることが好ましく、濾材が速やかにプライミングされるために濾材に含まれるフィルター材のCWST値が大きい方の表面AのCWST値が72mN/m以上であることが好ましい。
フィルター材の一つの表面AのCWST値が72mN/m以上、より好ましくは80mN/m以上、さらに好ましくは90mN/m以上、である場合、濾材が血液で速やかに満たされるため赤血球への負荷が減少し、溶血することなく短時間で血液を濾過することができる。表面AのCWST値は高いほど濾材が血液で速やかに満たされるため好ましいが、技術的な容易性の観点からは、CWST値が110mN/m以下とすることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、フィルター材の表面Aと反対側の表面BのCWST値を、表面AのCWST値よりも小さくする。このようにすることによって、疎水性傾向にある表面Bにおいて白血球などの好ましくない成分を効果的に捕捉しながら、親水性傾向にある表面Aにおいて圧力損失の増加を抑制し、濾過時間の延長を防ぐことができることを本発明者らは見出した。
フィルター材の表裏のCWST値の差は3mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは5mN/m以上、さらに好ましくは10mN/m以上である。また、表面BのCWST値に対する表面AのCWST値の比は1.03以上であることが好ましく、より好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.10以上である。
さらに、表面AのCWST値が72mN/m以上100mN/m以下であり、表面BのCWST値が60mN/m以上95mN/m以下であることが好ましい。CWST値がこの範囲であることにより一枚のフィルター材においてフィルター材が血液で速やかに満たされ、かつ白血球などの好ましくない成分を効果的に捕捉することができる。
【0017】
表裏でCWST値が異なるフィルター材を製造する方法に限定はなく、片面を薬品処理やプラズマ処理により親水化してもよいし、フィルター基材の少なくとも一方の表面にポリマーをコートし、ポリマー被覆層を設けることによって、その面を親水性化又は疎水性化してもよい。
フィルター基材の少なくとも一方の表面にポリマーをコートする方法に特に制限はないが、本実施形態においては、グラビアコート法によって親水性のポリマーをフィルター基材の表面にコートする方法が特に好適であることが判明した。
【0018】
グラビアコート法としては、印刷・塗布技術として既存の方法を用いることができる。本発明者らは、グラビアロールを用いて親水性のポリマーをフィルター基材にコートする場合には、グラビアロールとニップロール間距離を調整することによって、得られるフィルター材の表裏のCWST値に差が生じることを見出した。表裏のCWST値に差が生じるためには、ロール間距離は、フィルター基材の厚みにもよるが、概ね50〜400μmであることが好ましく、より好ましくは100〜400μm、さらに好ましくは200〜400μmである。グラビアロールとニップロール間距離によって、その間を通過するフィルター基材に掛かる圧力が変わる。グラビアロールとニップロール間距離を小さくすると、フィルター基材に大きな圧力が加わり、ニップロール側までポリマー含有液に濡れるため、表裏でCWST値が近くなる。一方で、グラビアロールとニップロール間距離を大きくすると、ニップロール側までポリマー含有液が届きにくいため、表裏でCWST値に差が生まれる。しかし、グラビアロールとニップロール間距離を大きくしすぎると、十分な親水性を付与することができない。
【0019】
親水性のポリマーとしては、特に限定はないが、非イオン性親水基と塩基性含窒素官能基とを有するポリマーを用いることが好ましい。このようなポリマーを用いてフィルター材表面を親水化することにより、フィルター材の濡れ性を改善するだけでなく、荷電性官能基を導入することで血液細胞の捕捉性能を向上させられるため好適である。
【0020】
本実施形態において、非イオン性親水基としてはヒドロキシル基及びアミド基などが挙げられる。
非イオン性親水基を含有するモノマーとしては、上述のヒドロキシル基及びアミド基を含むモノマー、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール(酢酸ビニルとして重合後、加水分解させる)、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。また、非イオン性親水基としては、前期のヒドロキシル基及びアミド基の他にポリエチレンオキサイド鎖も挙げられる。ポリエチレンオキサイド鎖を含むモノマーとしては、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
以上のモノマーの中でも、入手しやすさ、重合時の扱いやすさ、血液を流した時の性能などから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0021】
また、塩基性含窒素官能基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、4級アンモニウム基、及びピリジン基、イミダゾール基などの含窒素芳香族等が挙げられる。
塩基性含窒素官能基を含むモノマーとしては、アリルアミン;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の誘導体;p(パラ)−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン等のスチレン誘導体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、4−ビニルイミダゾール等の含窒素芳香族化合物のビニル誘導体;及び上記ビニル化合物をハロゲン化アルキル等によって4級アンモニウム塩とした誘導体を挙げることができる。
以上のモノマーの中でも、入手しやすさ、重合時の取り扱いやすさ、血液を流した時の性能などから、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0022】
本実施形態においては、前述のポリマーによるポリマー被覆層の塩基性窒素原子の含量が、0.2〜8.0質量%であることが好ましく、これにより、不織布の血液に対する濡れ性を向上させることができる。
塩基性窒素原子の含量が0.2質量%以上であると、フィルターの血液に対する濡れ性が高くなり、初期の血液の染み込みが良くなる結果、濾過時間を短縮できる。さらに、血液が濾材の流れやすいところのみを通過し、濾材全体が使用されない片流れと呼ばれる状態を抑制できる結果、濾過時間が短縮し、白血球除去能が向上する。反対に、塩基性窒素原子の含量が8.0質量%以下であることにより、繊維間へのコート剤の目詰まりによる赤血球の溶血を防ぎやすい。
塩基性窒素原子の含量は、全血製剤用であれば0.2〜8.0質量%が好ましく、より好ましくは、0.3〜7.0質量%である。また、血小板製剤用であれば、白血球と血小板との選択分離性を高める目的から0.2〜4.0質量%であることが好ましい。
塩基性願窒素原子の含量は、EtOH等の溶剤にフィルター材を浸漬して被覆ポリマーを抽出し、その蒸発乾固物の窒素含量を元素分析等により測定することにより算出できる。また、非イオン性親水基や塩基性含窒素官能基の有無は、多重全反射赤外線分光法(ATR−IR)あるいは飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、フィルター材の表面を分析することにより特定できる。
【0023】
また、本実施形態においては、フィルター基材の少なくとも一方の表面に、双性イオンを含む官能基を含有するポリマーをコートすることにより、表裏でCWST値が異なるフィルター材を得ることもできる。双性イオンを含む官能基としては、下記一般式(1)〜(3)で表される官能基が挙げられる。
【化1】
一般式(1)中、R
1は炭素数1以上のアルキル基である。
【化2】
一般式(2)中、R
2は炭素数1以上のアルキル基である。
【化3】
一般式(3)中、R
3は炭素数1以上のアルキル基である。
【0024】
一般式(1),(2),(3)で表される双性イオンを含む官能基は、各々、カルボベタイン(カルボキシル基を有するベタイン)、スルホベタイン(スルホン酸基を有するベタイン)、及び、ホスホベタイン(ホスホン酸基を有するベタイン)に由来する官能基であり、これらのうち、経済性の面から好ましいのは、下記一般式(4)で表されるメタクリル酸メチルベタインに由来する官能基である。
【化4】
【0025】
より高い溶血防止性を発揮させる観点で、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位の割合はコーティングポリマーが有するモノマー単位全体に対してモル比で1.5%以上が好ましい。全モノマー単位に対する双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位の割合は、ポリマーを可溶な溶媒に抽出し、核磁気共鳴(NMR)測定、アミノ基量測定、を組み合わせて算出する。
なお、ポリマー中、双性イオンを含む官能基は、側鎖に存在していることが好ましい。
【0026】
コーティングポリマーは、双性イオンを含む官能基を有するモノマーと、非イオン性基を有するモノマー及び塩基性含窒素官能基を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0027】
非イオン性基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、及びフェニル基が挙げられる。
【0028】
非イオン性基を有する化合物の典型的な例としてアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案すると2−メトキシエチル(メタ)アクリレートである事が好ましい。
【0029】
塩基性含窒素官能基としては、例えば、前述したものが挙げられ、好ましい例として、−NH
2,−NHR
1,−NR
2R
3,−N
+R
4R
5R
6(R
1,R
2,R
3,R
4,R
5,R
6は炭素数1〜3のアルキル基)で表されるアミノ基が挙げられる。
【0030】
塩基性含窒素官能基を有する化合物の典型的な例としてはN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案するとN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
白血球除去及び/又は血小板除去用途のフィルターの場合、コーティングポリマーは、非イオン性基を有するモノマー単位と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオン含む官能基を有するモノマー単位と、からなり、これら以外のモノマー単位は含まないことが好ましい。換言すれば、コーティングポリマーを構成するモノマー単位のモル比の全体を100として、コーティングポリマーに含まれる非イオン性基を有するモノマー単位(l)と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、双性イオン含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l+m+n=100,0<l,m,n<100であることが好ましい。モル比が上記範囲内にあることにより、赤血球に溶血等のダメージを抑えつつ、優れた白血球除去性能及び血小板除去性能を実現できる。
双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位のモル比が32.5%を上回り、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位のモル比が1.5%を下回ると、赤血球の溶血には問題はないものの、白血球除去性能及び血小板除去性能が低下する傾向にある。溶血防止効果を確保しつつ、白血球除去及び/又は血小板除去の効果をより一層発揮するという観点から、コーティングポリマーに含まれる非イオン性基を有するモノマー単位と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位と、のモル比は、例えば40〜97/1.5〜32.5/1.5〜32.5であり、好ましくは40〜95/2.5〜30/2.5〜30であり、より好ましくは50〜95/2.5〜30/2.5〜30であり、さらに好ましくは60〜95/2.5〜30/2.5〜30である。
【0032】
コーティングポリマーに含まれる非イオン性基を有するモノマー単位と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位と、のモル比の測定及び算出手順を、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと、メタクリル酸メチルベタインと、を例に説明する。
まず、コーティングポリマーをジメチルスルホキシド等の適切な溶媒へ溶解後、プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)測定を行う。得られた
1H−NMRから、すべてのモノマー単位に含まれるHに帰属するピーク(後述する
図1の例ではa,b)からモノマー単位の全体量を求める。次に、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位に含まれるHに帰属されるピーク(d)と、メタクリル酸メチルベタインモノマー単位に含まれるHに帰属するピーク(i)から、各々の量を求める。さらに、モノマー単位の全体量から、先に求めた2つのモノマー単位の量を差し引いた残りを、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位の量として、コーティングポリマー中のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位と、メタクリル酸メチルベタインモノマー単位と、のモル比を算出する。
【0033】
本実施形態において、濾材は、表裏のCWST値が異なるフィルター材を少なくとも1つ含むものであればよく、例えば、そのようなフィルター材単体であってもよいし、そのようなフィルター材を複数積層した積層体であってもよいし、一つ又は複数の表裏のCWST値が異なるフィルター材と一つ又は複数の表裏のCWST値が同一のフィルター材とを積層した積層体であってもよい。これらの場合、フィルター材とは、濾材を構成する積層構造の最小単位とみなすこともできる。
本実施形態において、濾材の形状は特に限定しないが、フィルター材を平板状に積層したもの、または、それらをさらに円筒状に成型したもの(例えば、積層体を巻物状にしたもの)が挙げられる。前者は、コンパクトかつ比較的簡便に成型できるため従来から輸血フィルター等に汎用されており、後者は、多量の液体処理に適しているため、体外循環用のフィルターに好ましく使用できる。
【0034】
本実施形態において、フィルター材がフィルター基材の少なくとも一方の表面にポリマー被覆層を有するものである場合、ポリマーは、フィルター材(フィルター基材とポリマー被覆層の合計)1gあたり1.0mg以上の量で担持されていることが好ましい。
【0035】
本実施形態において、血液処理フィルターは、濾材と、濾材を充填(収容)する容器とを含む。
血液処理フィルターの濾材を収容する容器は、被処理液(血液成分を含む液体または血液)の入口と、処理済み液(白血球等の好ましくない成分が除去された液体(血液))の出口になる2つの口を有するものであれば特に限定されないが、濾材の形状に応じて、濾材が平板状の場合には、四角形、六角形などの多角形や、円形、楕円形などの曲線からなる形状とすることができ、濾材が円筒状の場合には円筒状とすることができる。
容器の材料に限定はなく、硬質材料であってもよいし、可撓性材料であってもよい。
【0036】
濾材は、一般に、容器中に、容器内部を入口側と出口側とに隔てるように配置される。
また、容器中における濾材の配置に限定はなく、濾材に含まれるフィルター材の表面A(CWST値が大きい方の表面)及び表面Bのいずれが入口側或いは出口側に面するように配置してもよいが、例えば、表面Aが入口側に、表面Bが出口側に面するように容器内に配置してもよい。容器入口側に、よりCWST値が大きくより親水性の表面Aを配置することにより、濾材が血液で速やかに満たされ易くなる。一方、容器出口側に、CWST値が小さくより疎水性の表面Bを配置すると、白血球などの好ましくない成分を効果的に捕捉する上で好ましい。
【0037】
本実施形態において、フィルター材の素材であるフィルター基材の形態は、血液を濾過し得る細孔を有する形態であれば特に限定はないが、天然繊維、ガラス繊維、編布、織布、不織布などの繊維状媒体、多孔膜、三次元網目状連続孔を有するスポンジ状構造物が特に好ましい。
またフィルター基材の材料としては、血球にダメージを与えにくいものであれば特に限定はなく各種のものを用いることができ、有機高分子材料、無機高分子材料、金属等が挙げられる。その中でも有機高分子材料は切断等の加工性に優れるため好ましい基材である。例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ弗化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリ弗化ビニリデン、ポリトリフルオロクロロビニル、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリエーテル−ポリアミドブロック共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、セルロースアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくはポリエステル、ポリオレフィン、特に好ましくはポリエステルである。
【0038】
濾材は、単一のフィルター材からなってもよく、複数のフィルター材からなってもよい。複数のフィルター材からなる場合、異なる種類のものを用いてもよいし、同一種類のものを用いてもよい。
濾材が複数のフィルター材からなる場合、役割の異なる複数種類のフィルター材(例えば、繊維径の範囲が異なる繊維状媒体を基材とするフィルター材)を含むことが好ましい。
具体例としては、実際に使用される際に上流(すなわち、容器の被処理液の入口近く)となる側に主に微小凝集物を除去するためのプレフィルター材、その下流(すなわち、容器の被処理液の出口近く)となる側に微小凝集物以外の好ましくない成分(主たる異物)を除去するためのメインフィルター材を、各々、一つ又は複数含む態様が挙げられる。この場合、例えば、プレフィルター材として繊維径が4μm以上の繊維から構成される繊維状媒体を、また、メインフィルター材として繊維径が4μm未満の繊維から構成される繊維状媒体を用いることができる。ここで、繊維状基材の繊維径は以下の手順によって求められる値をいう。先ず、繊維状基材の一部をサンプリングし、走査電子顕微鏡を用いて写真に撮る。サンプリングに際しては、繊維状基材(濾材に既に含まれている場合には、濾材の有効濾過断面積部分)を、1辺が0.5cmの正方形に区分し、その中から6区分をランダムサンプリングする。これらの各区分を拡大倍率2500倍で観察する。その際、6区分のうち、3区については一方の面、残りの3区分については他方の面を観察する。各区分について、サンプル中央部分およびその近傍箇所の写真を撮っていき、その写真に撮られた繊維の合計本数が各区分100本以上となるまで撮る。このようにして得た写真について、写っている全ての繊維の直径を測定する。ここで直径とは、繊維軸に対して直角方向の繊維の幅をいう。測定した全ての繊維の直径の和を、繊維の数で割った値である平均繊維直径を繊維径とする。但し、複数の繊維が重なり合って他の繊維の陰になるなどして直径が正確に測定できない場合、複数の繊維が溶融するなどして合一している場合、及び、著しく直径の異なる(該繊維を除いた場合の平均繊維直径の2倍以上)繊維が混入している場合、等については、これらのデータは上記平均繊維直径には算入しない。
例えば、入口側に繊維径が4〜40μmの不織布を含むプレフィルター材を主に凝集物除去のために一つ又は複数配置し、次に繊維径が0.3〜3.0μm、の不織布を含むメインフィルター材を主に凝集物以外の好ましくない成分を除去するために一つ又は複数配置し、更に下流側に特定の孔径を有するポストフィルター材を積層してもよい。
【0039】
さらに、メイン、プレ及びポストフィルター材について、各々複数用いる場合、いずれも、複数種類のものを用いてもよいし、同一種類のものを用いてもよい。例えば、繊維径が30〜40μmの不織布および繊維径が10〜20μmの不織布からなる2種類のプレフィルター材を上流側に配置したり、プレフィルター材の下流側に、繊維径が1.5〜2.5μmの不織布および繊維径が0.5〜1.8μmの不織布からなる2種類のメインフィルター材を配置したりしてもよい。
プレ及びメインフィルター材を共に複数用いる場合、両者は交互に配置されていても良いが、その場合、プレフィルター材がまず上流側に配置されることが好ましい。
なお、表裏でCWST値の異なるフィルター材は、濾材中のどこかに含まれていればよく、例えば、上述のプレ、メイン及びポストフィルター材のいずれかに含まれていてもよいし、全てに含まれていてもよい。
【0040】
また、メインフィルター材として、複数のフィルター材を含む場合、複数のメインフィルター材のうち、容器の一方の口(例えば、入口)に最も近く位置するフィルター材の該一方の口側(入口側)の表面のCWST値が、容器の他方の口(例えば、出口)に最も近く位置するフィルター材の該他方の口側(出口側)の表面のCWST値より大きくなるようにしてもよい。さらに、容器の一方の口から他方の口(例えば、入口から出口)にかけて、フィルター材の表面のCWST値が連続的に、または上下動を繰り返しながら段階的に、減少するように配置することができる。
また、以上の場合において、例えば、容器入口側に、よりCWST値が大きくより親水性の表面Aを配置することにより、濾材が血液で速やかに満たされ易くなる。一方、容器出口側に、CWST値が小さくより疎水性の表面Bを配置すると、白血球などの好ましくない成分を効果的に捕捉する上で好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例、比較例で用いた諸数値は以下の方法によって測定した。
【0042】
(CWST値の測定)
酢酸水溶液(54〜70mN/m)及び水酸化ナトリウム水溶液(72〜100mN/m)を用いて、前述の方法で、フィルター材の一方の表面Aおよび他方の表面BのCWST値をそれぞれ測定した。
【0043】
(濾材の作製)
フィルター材として、平均繊維直径12μm、目付30g/m
2、比表面積0.24m
2/gのポリエステル製不織布Pを8枚、平均繊維直径1.8μm、目付60g/m
2、比表面積1.1m
2/gのポリエステル製不織布Xを2枚、及び、各実施例、比較例で準備した平均繊維直径1.2μm、目付40g/m
2、比表面積1.47m
2/gのポリエステル製不織布にポリマーコートしたものYを32枚用意した。
フィルター材P、X、及びYを、上流から順に、P(4枚)−X(1枚)−Y(32枚)(ただし、Yが2種類からなる場合、Y1(16枚)−Y2(16枚))−X(1枚)−P(4枚)という順に重ね、積層体として、濾材を作製した。なお、フィルター材Yについては、表裏のCWST値が異なる場合には表裏の向きが全て同じになるように積層した。
この濾材を、血液入口又は出口となるポートを有する2枚の可撓性塩化ビニル樹脂シートの間に挟み、高周波溶着機を用いて、濾材と可撓性シートの周縁部分を溶着、一体化させ、有効濾過面積43cm
2の血液処理フィルターを作製した。なお、下記の白血球除去性能試験に先立ち、血液処理フィルターに対して115℃、59分間高圧蒸気滅菌を実施した。
(白血球除去性能試験)
血液製剤として欧州基準に従って調製された赤血球製剤を用い、これを落差100cmの自然落差で実施例1〜5、比較例1〜7の血液処理フィルターを用いて濾過、回収し、濾過後血液製剤を得た。
【0044】
(白血球除去性能)
以下の計算式に従い、白血球除去性能を算出した。
白血球除去能=−log[(濾過後血液製剤中の白血球濃度)/(濾過前血液製剤中の白血球濃度)]
なお、濾過前後の血液製剤中の白血球濃度の測定は、べクトンデッキンソン社(BD社)製白血球数測定用キット「LeucoCOUNT」及びBD社製フローサイトメーター FACS CantoIIを使用して行った。
【0045】
[実施例1]
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート97モル%とジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート3モル%からなる共重合体(重量平均分子量570,000、塩基性窒素原子の含量0.32質量%、非イオン性親水基97モル%、塩基性窒素原子の量3モル%、ピークトップ分子量3.75×10
5、低分子量成分の含有量26.0%)を含む重合溶液(共重合体濃度39質量%、エタノール溶液)に、4倍体積量のエタノールを加えて40℃にて均一に溶解した。この溶液を25℃の室温下で12時間放置することにより熱誘起相分離法にて液液相分離した後、ポリマー濃厚相溶液(共重合体濃度31質量%)のみを分別回収した。
このポリマー濃厚相溶液にエタノールを加えた後40℃の温度で溶解して、共重合体濃度1.68質量%の均一なポリマーコート溶液を調製した。
上述の方法で調整したポリマーコート溶液を用いて、平均繊維直径1.2μm、目付40g/m
2、比表面積1.47m
2/gのポリエステル製不織布を連続的にグラビアロールとニップロール間を通過させることによりコーティングを行った。グラビアロールとニップロール間距離は300μmに設定した。コーティングされた不織布を、40℃の第1乾燥室内と60℃の第2乾燥室内を通過させた後巻き取り、32枚のフィルター材を切り出し、これをフィルター材Yとして用いた。ライン速度は、10m/分に固定した。
フィルター材のCWST値は、一方の表面Aが91mN/m、他方の表面Bが77mN/mであった。
上記フィルター材Yを用いた血液処理フィルターについて、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.7Log、濾過時間は25.0分であった。比較例1に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0046】
[実施例2]
また、グラビアロールとニップロール間距離を400μmに設定した以外は実施例1と同様にコーティング、乾燥した不織布から16枚のフィルター材1を切り出した。このフィルター材1のCWST値は、一方の表面Aが95mN/m、他方の表面Bが81mN/mであった。
また、実施例1と同様にして、フィルター材2を16枚作製した。
このようにして得られたフィルター材1及び2を、各々、フィルター材Y1、Y2として用い、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.7Log、濾過時間は20.4分であった。比較例2に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0047】
[実施例3]
グラビアロールとニップロール間距離を120μmに設定した以外は実施例1と同様にコーティング、乾燥し、32枚のフィルター材を得た。得られたフィルター材のCWST値は、一方の表面Aが91mN/m、他方の表面Bが81mN/mであった。これをフィルター材Yとして用いた。
上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.6Log、濾過時間は24.8分であった。比較例1に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0048】
[実施例4]
グラビアロールとニップロール間距離を200μmに設定した以外は実施例1と同様にコーティング、乾燥した不織布から16枚のフィルター材1を切り出した。このフィルター材のCWST値は、一方の表面Aが95mN/m、他方の表面Bが85mN/mであった。
また、実施例3と同様にして、フィルター材2を作製した。
このようにして得られたフィルター材1及び2を、各々、フィルター材Y1、Y2として用い、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.5Log、濾過時間は21.0分であった。比較例2に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0049】
[実施例5]
グラビアロールとニップロール間距離を50μmに設定した以外は実施例1と同様にコーティング、乾燥し、32枚のフィルター材を得た。得られたフィルター材のCWST値は一方の表面Aが90mN/m、他方の表面Bが87mN/mであった。これをフィルター材Yとして用いた。
上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.4Log、濾過時間は24.9分であった。比較例1に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0050】
[実施例6]
グラビアロールとニップロール間距離を100μmに設定した以外は実施例1と同様にコーティング、乾燥したから16枚のフィルター材1を切り出した。このフィルター材のCWST値は、一方の表面Aが95mN/m、他方の表面Bが92mN/mであった。
また、実施例5と同様にして、フィルター材2を作製した。
このようにして得られたフィルター材1及び2を、各々、フィルター材Y1、Y2として用い、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.3Log、濾過時間は20.6分であった。比較例2に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0051】
[実施例7]
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート(MEMA)と、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DEAEMA)と、メタクリル酸メチルベタイン(CMB)と、の共重合体を通常の溶液重合によって合成した。重合条件は、各モノマー濃度が1モル/Lのエタノール溶液に、開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.0025モル/L存在下、60℃で8時間重合反応を行った。得られたポリマー重合液を水中に滴下し、析出したポリマーを回収した。回収したポリマーは粉砕した後、減圧条件下で24時間乾燥してコーティングポリマーを得た。
コーティングポリマー中の2−メトキシエチル(メタ)アクリレートモノマー単位と、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートモノマー単位と、メタクリル酸メチルベタインモノマー単位のモル比は、得られたコーティングポリマーをジメチルスルホキシドへ溶解した後、
1H−NMR測定を行うことにより算出した。
図1にコーティングポリマーの
1H−NMRチャート及び各H原子の帰属を示す。f,d,iのH原子よりモル比を算出した結果、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート単位と、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート単位と、メタクリル酸メチルベタイン単位のモル比は、70/10/20であった。
上記コーティングポリマーを90W/W%のエチルアルコールへ添加した後、12時間撹拌し、コーティングポリマー濃度が0.56質量%の均一なポリマーコート溶液を調製した。
上述の方法で調整したポリマーコート溶液を用いて、平均繊維直径1.2μm、目付40g/m
2、比表面積1.47m
2/gのポリエステル製不織布を連続的にグラビアロールとニップロール間を通過させることによりコーティングを行った。グラビアロールとニップロール間距離は100μmに設定した。コーティングされた不織布を、40℃の第1乾燥室内と60℃の第2乾燥室内を通過させた後巻き取り、16枚のフィルター材1を切り出した。ライン速度は、10m/分に固定した。
フィルター材1のCWST値は、一方の表面Aが80mN/m、他方の表面Bが76mN/mであった。
また、グラビアロールとニップロール間距離を50μmに設定した以外は上記フィルター材1と同様にコーティング、乾燥してから16枚のフィルター材2を切り出した。このフィルター材2のCWST値は、一方の表面Aが78mN/m、他方の表面Bが73mN/mであった。
このようにして得られたフィルター材1及び2を、各々、フィルター材Y1、Y2として用い、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は4.0Log、濾過時間は26.8分であった。比較例3に比べて、白血球性能並びに濾過時間が向上した。
【0052】
[比較例1]
実施例1で調製したポリマーコート溶液に平均繊維直径1.2μm、目付40g/m
2、比表面積1.47m
2/gのポリエステル製不織布を連続的に浸漬した後、ニップロール間を通過させた。コーティングされた不織布を、実施例1と同様にして乾燥させ、32枚のフィルター材を切り出し、これをフィルター材Yとして用いた。
フィルター材のCWST値は、一方の表面Aが88mN/m、他方の表面Bが88mN/mであった。
上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.1Log、濾過時間は25.8分であった。
【0053】
[比較例2]
実施例1のコーティングに使用したポリマーコート溶液の濃度を1.5倍とした以外は比較例1と同様にして、コーティング、乾燥した不織布から16枚のフィルター材1を切り出した。このフィルター材1のCWST値は、一方の表面Aが95mN/m、他方の表面Bが95mN/mであった。
また、比較例1と同様にしてフィルター材2を作製した。
このようにして得られたフィルター材1及び2を、各々、フィルター材Y1、Y2として用い、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は2.9Log、濾過時間は20.8分であった。
【0054】
[比較例3]
実施例7で調製したポリマーコート溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、コーティング、乾燥した不織布から16枚のフィルター材1を切り出した。このフィルター材1のCWST値は、一方の表面Aが78mN/m、他方の表面Bが78mN/mであった。
また、実施例7のコーティングに使用したポリマーコート溶液の濃度を0.75倍としたポリマーコート溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、コーティング、乾燥した不織布から16枚のフィルター材2を切り出した。このフィルター材2のCWST値は、一方の表面Aが75mN/m、他方の表面Bが75mN/mであった。
このようにして得られたフィルター材1及び2を、各々、フィルター材Y1、Y2として用い、上述の方法で白血球除去性能試験を行ったところ、白血球除去性能は3.5Log、濾過時間は27.0分であった。
【0055】
[総合評価]
以下の表1に示すように、表裏でCWST値が異なるフィルター材を用いることにより、白血球などの好ましくない成分を効果的に捕捉し、且つ、圧力損失の増加を抑制し、濾過時間の延長を防ぐことが可能になった結果、比較例と比べて、白血球除去性能並びに濾過時間が向上した。
【0056】
実施例と比較例の結果を表1に示す。
【0057】
【表1】