特許第6795583号(P6795583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795583
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】造形ステージ用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20201119BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20201119BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20201119BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201119BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20201119BHJP
   C09J 121/00 20060101ALI20201119BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20201119BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20201119BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20201119BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J7/21
   C09J7/22
   C09J201/00
   C09J133/00
   C09J121/00
   C09J183/04
   B29C64/245
   B33Y30/00
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-505789(P2018-505789)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2017007778
(87)【国際公開番号】WO2017159349
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-53220(P2016-53220)
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 慈子
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 裕
(72)【発明者】
【氏名】川西 道朗
【審査官】 武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−103460(JP,A)
【文献】 特開2016−030398(JP,A)
【文献】 特開2000−211031(JP,A)
【文献】 特表2012−506803(JP,A)
【文献】 特開2012−149182(JP,A)
【文献】 特開2017−65190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J7/00−7/50
C09J201/00−201/10
B29C64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層とを含む積層構造を有し、
前記基材は、紙製基材、不織布製基材、およびプラスチック製基材のうち少なくとも一つを含み、
前記基材の厚さは20〜130μmであり、該基材の密度は0.1〜0.8g/cm3であり、
前記粘着剤層の厚さは、3〜200μmであり、
曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させる過程での最大荷重としての突刺強度が3.3〜12Nである、造形ステージ用粘着シート。
【請求項2】
第1の粘着剤層と、第2の粘着剤層と、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置する基材とを含む積層構造を有し、
前記基材は、紙製基材、不織布製基材、およびプラスチック製基材のうち少なくとも一つを含み、
前記基材の厚さは20〜130μmであり、該基材の密度は0.1〜0.8g/cm3であり、
前記粘着剤層の厚さは、3〜200μmであり、
曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させる過程での最大荷重としての突刺強度が3.3〜12Nである、造形ステージ用粘着シート。
【請求項3】
サンプル幅18mm、チャック間距離125mm、および引張速度300mm/分の条件で行われる引張破断試験において破断に至るまでに要する破壊エネルギーが0.24〜4N・mである、請求項1または2に記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項4】
引張破断歪が4〜50%である、請求項1から3のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項5】
アクリル平面に対して0.5〜15N/18mmの90・剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す、請求項1から4のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項6】
アルミニウム平面に対して0.5〜15N/18mmの90・剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す、請求項1から5のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項7】
アルミニウム平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該アルミニウム平面に対して0.5〜15N/18mmの90・剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す、請求項1から6のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項8】
ポリイミド平面に対して0.5〜15N/18mmの90・剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す、請求項1から7のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項9】
ポリイミド平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該ポリイミド平面に対して0.5〜15N/18mmの90・剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す、請求項1から8のいずれか一つに記載の
造形ステージ用粘着シート。
【請求項10】
前記紙製基材は、和紙、クレープ紙、クラフト紙、グラシン紙、および合成紙からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1から9のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項11】
前記不織布製基材は、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、およびポリビニルアルコール繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1から10のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項12】
前記パルプは、麻パルプおよび木材パルプからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項11に記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項13】
前記プラスチック製基材は、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂フィルム、および酢酸ビニル系樹脂フィルムからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1から12のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項14】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、またはシリコーン系粘着剤を含む、請求項1から13のいずれか一つに記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項15】
前記アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットを50質量%以上有するアクリル系ポリマーを含む、請求項14に記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項16】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびメタクリル酸メチルからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項15に記載の造形ステージ用粘着シート。
【請求項17】
前記ゴム系粘着剤は、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項14に記載の造形ステージ用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置等の具備する造形ステージとその上に形成される造形物との間の定着および分離の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリンタと呼称されることもある積層造形装置の開発が進められている。積層造形装置は、立体的な造形物がその上に形成されることとなる造形ステージを具備する。積層造形装置においては、このような造形ステージ上において、熱溶解積層法や、インクジェット法、光造形法、粉末焼結法、粉末固着法、シート積層法等のいわゆるアディティブマニュファクチャリング技法によって、造形物が形成される。そのような積層造形装置については、例えば下記の特許文献1〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−24552号公報
【特許文献2】特開2011−101834号公報
【特許文献3】特開2015−212042号公報
【特許文献4】特開2016−5869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層造形装置にて採用されている造形技法によっては、造形ステージ上での造形物形成過程において、形成途中の造形物が造形ステージ表面に定着する場合がある。そのような場合、造形ステージ上での造形物形成過程の終了後には、造形ステージ上から造形物を取り外す必要がある。その際、造形ステージとその表面に定着している造形物との間に、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具を押し入れて、造形ステージと造形物との間を分離する手法が採られる場合が多い。
【0005】
しかしながら、このような手法では、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具を介して造形物に比較的に大きな力が作用する場合が多いので、当該道具による造形物の損傷および破壊を招きやすい。
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、積層造形装置等の具備する造形ステージ上で形成されて造形ステージ表面に定着し得る造形物についてその破損を抑制しつつ造形ステージ上から取り外すのに適した造形ステージ用粘着シートを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面により提供される造形ステージ用粘着シートは、積層造形装置等の具備する造形ステージの造形物形成面に貼り合わされて使用されるものであって、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有し、且つ、曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させる過程での最大荷重としての突刺強度が3.3〜12Nである。本造形ステージ用粘着シートは、いわゆる片面粘着シートであってもよいし、いわゆる両面粘着シートであってもよい。また、本造形ステージ用粘着シートは、例えば巻き回された、粘着テープの形態をとってもよい。
【0008】
本造形ステージ用粘着シートは、具体的には次のようにして使用される。まず、造形物を形成するための積層造形装置等の造形ステージの造形物形成面に、本造形ステージ用粘着シートがその粘着剤層を介して貼り合わせられる。装置稼動時には、造形物形成面に本粘着シートを伴う造形ステージの上に目的の造形物が所定のプロセスを経て次第に形作られる。造形ステージ上に造形物が形成される過程では、本造形ステージ用粘着シートは造形ステージ表面に貼着し、且つ、形成途中の造形物は造形ステージ上の本造形ステージ用粘着シート表面に定着している。そして、造形ステージ上での造形物形成過程の終了後には、造形ステージの造形物形成面からの本造形ステージ用粘着シートの剥離作業を行い、これにより、本造形ステージ用粘着シートを造形ステージ表面から剥離するとともに造形ステージ上から造形物を取り外す。
【0009】
本造形ステージ用粘着シートは3.3N以上の上記突刺強度を有するところ、このような構成は、上記の剥離作業において造形ステージ用粘着シートが破断するのを回避するのに適する。造形ステージ上に形成される造形物は、その設計によっては造形ステージ側端部に鋭利な部分や突き出た部分を有し、上記の剥離作業時には、引っ張られて造形ステージからの剥離が展開される造形ステージ用粘着シートに造形物の鋭利部や突出部が突き当たる場合もある。例えばこのような場合において、本造形ステージ用粘着シートが3.3N以上の上記突刺強度を有するという構成は、本造形ステージ用粘着シートの破断を回避または抑制するのに適する。剥離作業時に造形ステージ用粘着シートが破断すると、造形ステージ上から造形物を取り外すためにスクレーパー等の道具が必要となる場合がある。
【0010】
また、本造形ステージ用粘着シートの上記突刺強度は12N以下であるところ、このような構成は、造形ステージ用粘着シートの剛性が過剰となるのを回避して上記剥離作業において求められる造形ステージ用粘着シートの変形のしやすさを確保するのに適する。
【0011】
以上のように、本発明の第1の側面に係る本造形ステージ用粘着シートは、造形ステージからの剥離作業において破断を回避または抑制しつつ、当該剥離作業において求められる変形容易性を確保するのに適する。このような造形ステージ用粘着シートを、積層造形装置等による造形物の形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ上から造形物を取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避ないし抑制することが可能である。したがって、本造形ステージ用粘着シートは、積層造形装置等の具備する造形ステージ上で形成された造形物についてその破損を抑制しつつ造形ステージ上から取り外すのに適する。造形ステージ上から造形物を取り外すうえで鋭利な先端を有する道具の使用を回避ないし抑制することを可能とさせる本造形ステージ用粘着シートは、造形物取り外し時に造形ステージの損傷を抑制するうえでも好適である。
【0012】
本発明の第2の側面により提供される造形ステージ用粘着シートは、積層造形装置等の具備する造形ステージの造形物形成面に貼り合わされて使用されるものであって、第1の粘着剤層と、第2の粘着剤層と、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置する基材とを含む積層構造を有する。そして、本造形ステージ用粘着シートは、曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させる過程での最大荷重としての突刺強度が3.3〜12Nである。また、本造形ステージ用粘着シートは、例えば巻き回された、粘着テープの形態をとってもよい。
【0013】
本造形ステージ用粘着シートは、具体的には次のようにして使用される。まず、造形物を形成するための積層造形装置等の造形ステージの造形物形成面に、本造形ステージ用粘着シートが例えばその第1の粘着剤層を介して貼り合わせられる。装置稼動時には、造形物形成面に本粘着シートを伴う造形ステージの上に目的の造形物が所定のプロセスを経て次第に形作られる。造形ステージ上に造形物が形成される過程では、本造形ステージ用粘着シートは造形ステージ表面に第1の粘着剤層側にて貼着し、且つ、形成途中の造形物は造形ステージ上の本造形ステージ用粘着シートの第2の粘着剤層側表面に定着している。そして、造形ステージ上での造形物形成過程の終了後には、造形ステージの造形物形成面からの本造形ステージ用粘着シートの剥離作業を行い、これにより、本造形ステージ用粘着シートを造形ステージ表面から剥離するとともに造形ステージ上から造形物を取り外す。
【0014】
本造形ステージ用粘着シートは3.3N以上の上記突刺強度を有するところ、このような構成は、上記の剥離作業において造形ステージ用粘着シートが破断するのを回避するのに適する。上記の剥離作業時には、引っ張られて造形ステージからの剥離が展開される造形ステージ用粘着シートに造形物の鋭利部や突出部が突き当たる場合があるところ、例えばこのような場合において、本造形ステージ用粘着シートが3.3N以上の上記突刺強度を有するという構成は、本造形ステージ用粘着シートの破断を回避または抑制するのに適する。剥離作業時に造形ステージ用粘着シートが破断すると、造形ステージ上から造形物を取り外すためにスクレーパー等の道具が必要となる場合がある。
【0015】
また、本造形ステージ用粘着シートの上記突刺強度は12N以下であるところ、このような構成は、造形ステージ用粘着シートの剛性が過剰となるのを回避して上記剥離作業において求められる造形ステージ用粘着シートの変形のしやすさを確保するのに適する。
【0016】
以上のように、本発明の第2の側面に係る本造形ステージ用粘着シートは、造形ステージからの剥離作業において破断を回避または抑制しつつ、当該剥離作業において求められる変形容易性を確保するのに適する。このような造形ステージ用粘着シートを、積層造形装置等による造形物の形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージ上から造形物を取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避ないし抑制することが可能である。したがって、本造形ステージ用粘着シートは、積層造形装置等の具備する造形ステージ上で形成された造形物についてその破損を抑制しつつ造形ステージ上から取り外すのに適する。造形ステージ上から造形物を取り外すうえで鋭利な先端を有する道具の使用を回避ないし抑制することを可能とさせる本造形ステージ用粘着シートは、造形物取り外し時に造形ステージの損傷を抑制するうえでも好適である。
【0017】
本発明の第1および第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、好ましくは、サンプル幅18mm、チャック間距離125mm、および引張速度300mm/分の条件で行われる引張破断試験において破断に至るまでに要する破壊エネルギーが0.24〜4N・mである。粘着シートの破壊エネルギーは粘着シートの靭性の指標となるところ、本造形ステージ用粘着シートの当該破壊エネルギーが0.24N・m以上であるという構成は、本造形ステージ用粘着シートにおいて破断抑制のための充分な靭性ないし強度を実現するうえで好適である。本造形ステージ用粘着シートの当該破壊エネルギーが4N・m以下であるという構成は、本造形ステージ用粘着シートについて靭性ないし強度を確保しつつ剥離作業上の良好な変形容易性を確保するうえで好適である。
【0018】
本発明の第1および第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートの引張破断歪は、好ましくは4〜50%である。本造形ステージ用粘着シートの引張破断歪すなわち破断伸びが4%以上であるという構成は、上記の剥離作業において、引っ張られて造形ステージからの剥離が展開される造形ステージ用粘着シートに造形物ないしその鋭利部や突出部等が突き当たる箇所の応力を分散させるうえで好適である。そのような応力分散は、剥離作業時の本造形ステージ用粘着シートの破断を抑制するのに資する。また、そのような応力分散は、剥離作業時の造形物の破損を抑制するのにも資する。一方、本造形ステージ用粘着シートの引張破断歪すなわち破断伸びが50%以下であるという構成は、本造形ステージ用粘着シートにおいて破断抑制のための充分な強度を確保するうえで好適である。
【0019】
本発明の第1の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、好ましくは、アクリル平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。アクリル平面とは、アクリル樹脂を95質量%以上含有するアクリル樹脂板等のアクリル樹脂製部材の平面をいうものとする。また、本発明の第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、その第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の側にて、好ましくは、アクリル平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。積層造形装置は、少なくとも造形物形成面がアクリル樹脂よりなる造形ステージを具備する場合があるところ、当該90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという構成は、造形物形成時における当該造形ステージ表面からの造形ステージ用粘着シートの剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、造形ステージ用粘着シート上で形成途中の造形物の位置ずれを抑制するうえで、好適である。当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、少なくとも造形物形成面がアクリル樹脂よりなる造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、少なくとも造形物形成面がアクリル樹脂よりなる造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離に際して当該造形ステージ表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0020】
本発明の第1の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、好ましくは、アルミニウム平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。本発明の第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、その第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の側にて、好ましくは、アルミニウム平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。積層造形装置は、少なくとも造形物形成面がアルミニウムよりなる造形ステージを具備する場合があるところ、当該90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという構成は、造形物形成時における当該造形ステージ表面からの造形ステージ用粘着シートの剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、造形ステージ用粘着シート上で形成途中の造形物の位置ずれを抑制するうえで、好適である。当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、少なくとも造形物形成面がアルミニウムよりなる造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、少なくとも造形物形成面がアルミニウムよりなる造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離に際して当該造形ステージ表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0021】
本発明の第1の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、好ましくは、アルミニウム平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該アルミニウム平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。本発明の第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、その第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の側にて、好ましくは、アルミニウム平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該アルミニウム平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。積層造形装置は、少なくとも造形物形成面がアルミニウムよりなり且つ加熱機能を伴う造形ステージを具備する場合があるところ、当該90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという構成は、造形物形成時における当該加熱機能付造形ステージ表面からの造形ステージ用粘着シートの剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、造形ステージ用粘着シート上で形成途中の造形物の位置ずれを抑制するうえで、好適である。当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、少なくとも造形物形成面がアルミニウムよりなる加熱機能付造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、少なくとも造形物形成面がアルミニウムよりなる加熱機能付造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離に際して当該造形ステージ表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0022】
本発明の第1の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、好ましくは、ポリイミド平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。ポリイミド平面とは、ポリイミド樹脂を95質量%以上含有するポリイミド樹脂板やポリイミド製の粘着テープ基材等のポリイミド樹脂製部材の平面をいうものとする。本発明の第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、その第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の側にて、好ましくは、ポリイミド平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。積層造形装置は、造形ステージの造形物形成面にポリイミドシートが貼り合わされたうえで使用される場合があるところ、当該90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという構成は、造形物形成時における当該造形ステージ表面からの造形ステージ用粘着シートの剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、造形ステージ用粘着シート上で形成途中の造形物の位置ずれを抑制するうえで、好適である。当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、造形物形成面にポリイミドシートの張り合わされている造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、造形物形成面にポリイミドシートの張り合わされている造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離に際して当該造形ステージ表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0023】
本発明の第1の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、好ましくは、ポリイミド平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該ポリイミド平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。本発明の第2の側面に係る造形ステージ用粘着シートは、その第1の粘着剤層および/または第2の粘着剤層の側にて、好ましくは、ポリイミド平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該ポリイミド平面に対して0.5〜15N/18mmの90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示す。積層造形装置は、加熱機能を伴う造形ステージの造形物形成面にポリイミドシートが貼り合わされたうえで使用される場合があるところ、当該90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという構成は、造形物形成時における当該加熱機能付造形ステージ表面からの造形ステージ用粘着シートの剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、造形ステージ用粘着シート上で形成途中の造形物の位置ずれを抑制するうえで、好適である。当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、造形物形成面にポリイミドシートの張り合わされている造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、当該90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、造形物形成面にポリイミドシートの張り合わされている加熱機能付造形ステージからの造形ステージ用粘着シートの剥離に際して当該造形ステージ表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0024】
本発明の第1および第2の側面において、好ましい一の実施の形態では、基材は紙製基材を含む。この紙製基材は、好ましくは、和紙、クレープ紙、クラフト紙、グラシン紙、および合成紙からなる群より選択される少なくとも一種を含む。本発明の第1および第2の側面において、好ましい一の実施の形態では、基材は不織布製基材を含む。この不織布製基材は、好ましくは、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、およびポリビニルアルコール繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む。不織布製基材のためのパルプは、好ましくは、麻パルプおよび木材パルプからなる群より選択される少なくとも一種を含む。本発明の第1および第2の側面において、好ましい一の実施の形態では、基材はプラスチック製基材を含む。このプラスチック製基材は、好ましくは、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂フィルム、および酢酸ビニル系樹脂フィルムからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0025】
本発明の第1および第2の側面において、粘着剤層は、好ましくは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、またはシリコーン系粘着剤を含む。粘着剤層がアクリル系粘着剤を含む場合、当該アクリル系粘着剤は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットを50質量%以上有するアクリル系ポリマーを含む。この(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびメタクリル酸メチルからなる群より選択される少なくとも一種を含む。粘着剤層がゴム系粘着剤を含む場合、当該ゴム系粘着剤は、天然ゴムおよび合成ゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートの部分断面図である。
図2】本発明に係る造形ステージ用粘着シートの使用態様を表す図である。(a)は造形物形成開始前を表し、(b)は造形物形成過程を表し、(c)は造形物形成後の剥離作業を表す。
図3】本発明の他の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX1の部分断面図である。粘着シートX1は、基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有する片面粘着シートである。この粘着シートX1は、例えば図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置等の具備する造形ステージSにおいて使用されるものである。具体的には、造形物形成開始前に、図2(a)に示すように、粘着シートX1は、造形ステージSの造形物形成面Saに張り合わせられる。粘着シートX1の粘着剤層12側が、造形物形成面Saに貼着される。装置稼動時の造形物形成過程では、積層造形装置等において採用されているアディティブマニュファクチャリング技法に応じた所定のプロセスを経て、図2(b)に示すように、表面に粘着シートX1を伴う造形ステージS上に目的の造形物Wが次第に形作られる。アディティブマニュファクチャリング技法としては、例えば、熱溶解積層法、インクジェット法、光造形法、およびシート積層法が挙げられる。このような造形物形成過程では、粘着シートX1は造形ステージSの造形物形成面Saに貼着し、且つ、形成途中の造形物Wは造形ステージS上の粘着シートX1に定着している。そして、造形物形成後、図2(c)に示すように、剥離作業ないし造形物Wの取外し作業が行われる。
【0028】
粘着シートX1の基材11は、粘着シートX1において支持体として機能するとともに造形物定着面をなすための部位である。そのような基材11をなすための材料としては、例えば、紙材、不織布、およびプラスチックフィルムが挙げられる。すなわち、基材11としては、例えば、紙製基材、不織布製基材、およびプラスチック製基材が挙げられる。
【0029】
基材11をなすための紙材としては、例えば、和紙、クレープ紙、クラフト紙、グラシン紙、および合成紙が挙げられる。和紙には、叩解された木材パルプ等のパルプを含む混抄体や、当該パルプに加えて合成短繊維を含む混抄体が含まれる。当該合成短繊維の素材としては、例えば、レーヨン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0030】
基材11をなすための不織布の素材としては、例えば、麻パルプや木材パルプ等のパルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、およびポリビニルアルコール繊維が挙げられる。不織布繊維どうしを結合させるためには、例えば、バインダー樹脂が繊維体に含浸される。
【0031】
基材11をなすためのプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂フィルム、および酢酸ビニル系樹脂フィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、および、エチレン-プロピレン共重合体からなるフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0032】
粘着シートX1の基材11は、一種類の材料からなってもよし、二種類以上の材料からなってもよい。基材11は、構成材料の異なる複数の層からなるラミネート体であってもよい。また、基材11における粘着剤層12側の表面は、粘着剤層12との密着性の向上のための表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理としては、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、および、下塗り処理等の化学的処理が、挙げられる。このような基材11について、厚さは例えば20〜130μmであり、密度は例えば0.1〜0.8g/cm3である。
【0033】
粘着シートX1の粘着剤層12は、粘着面12aを有し、積層造形装置における造形ステージの造形物形成面に対して着剥可能である。粘着剤層12は、主剤として粘着剤を含有する粘着剤組成物によって形成され得る。主剤とは、構成成分中で最も大きな質量割合を占める成分とする。そのような粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有される粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤が挙げられる。粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12における粘着剤の含有率は、例えば50〜100質量%である。
【0034】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物、従って粘着剤層12が、粘着剤としてアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを、質量比で最も多い主たるモノマーユニットとして有する重合体である。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
【0035】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、上記アクリル系ポリマーを形成するためのモノマーたる、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーをなすうえでは、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、当該アクリル系ポリマーのための(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびメタクリル酸メチルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。また、当該アクリル系ポリマーにおける、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの含有率は、例えば50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有率に関するこのような構成は、アクリル系粘着剤の粘着性等の基本特性を粘着剤層12にて適切に発現させるうえで好適である。
【0036】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有される粘着剤としてのアクリル系ポリマーは、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(環含有(メタ)アクリル酸エステル)に由来するモノマーユニットを有してもよい。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための環含有(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル系ポリマーを形成するための共重合性モノマーたる環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、および2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、および(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーをなすうえでは、一種類の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよいし、二種類以上の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。また、当該アクリル系ポリマーにおける、環含有(メタ)アクリル酸エステル由来のモノマーユニットの含有率は、粘着剤層12において適度な柔軟性を実現するという観点から、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0037】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有される粘着剤としてのアクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーに由来するモノマーユニットを有してもよい。カルボキシ基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つのカルボキシ基を有することとなるモノマーであり、アクリル系ポリマーにおけるカルボキシ基は、例えば、後述の架橋剤との反応を生ずる架橋点として機能し得る。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすためのカルボキシ基含有モノマー、即ち、アクリル系ポリマーを形成するための共重合性モノマーたるカルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸が挙げられる。粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーをなすうえでは、一種類のカルボキシ基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のカルボキシ基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、当該アクリル系ポリマーのためのカルボキシ基含有モノマーとして、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。また、当該アクリル系ポリマーにおける、カルボキシ基含有モノマー由来のモノマーユニットの含有率は、粘着剤としてのアクリル系ポリマーにおいて適切に架橋構造を実現するという観点から、好ましくは0.1〜20質量%である。
【0038】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有される粘着剤としてのアクリル系ポリマーは、水酸基含有モノマーに由来するモノマーユニットを有してもよい。水酸基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの水酸基を有することとなるモノマーである。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための水酸基含有モノマー、即ち、アクリル系ポリマーを形成するための共重合性モノマーたる水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、およびアリルアルコールが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)が挙げられる。粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーをなすうえでは、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。また、当該アクリル系ポリマーにおける、水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの含有率は、粘着剤層12において粘着性とともに適度な凝集力を実現するという観点から、好ましくは0.1〜20質量%である。
【0039】
以上のようなアクリル系ポリマーは、原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合を行うに際しては、溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、エステル類、およびケトン類を用いることができる。また、当該アクリル系ポリマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合反応の種類に応じて、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。
【0040】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物、従って粘着剤層12が、粘着剤としてゴム系粘着剤を含有する場合、当該ゴム系粘着剤としては、例えば、ジエン系合成ゴムや非ジエン系合成ゴム等の合成ゴム、および天然ゴムが挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、およびクロロプレンゴムが挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、およびシリコーンゴムが挙げられる。
【0041】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物、従って粘着剤層12は、ポリマー間を架橋するための架橋剤を含有してもよい。ポリマー間での当該架橋剤による架橋反応を利用して、粘着剤層12のゲル分率をコントロールすることができる。そのような架橋剤としては、例えば、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびイソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0042】
オキサゾリン系架橋剤は、分子内にオキサゾリン環を持つ化合物であり、そのようなオキサゾリン系架橋剤には、オキサゾリン環を有するモノマー、および、オキサゾリン環含有モノマーをモノマーユニットとして有するポリマーが含まれる。そのようなオキサゾリン系架橋剤としては、例えば、エポクロス K-2010E、エポクロス K-2020E、エポクロス K-2030E、エポクロス WS-300、エポクロス WS-500、エポクロス WS-700(いずれも株式会社日本触媒製)等の市販品が挙げられる。
【0043】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、およびビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルが挙げられる。また、エポキシ系架橋剤としては、分子内にエポキシ基を二つ以上有するエポキシ系樹脂も挙げられる。加えて、エポキシ系架橋剤としては、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0044】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、低級脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類、および芳香族ポリイソシアネート類が挙げられる。低級脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネート類としては、例えば、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、および水素添加キシレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびキシリレンジイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(商品名「タケネートD-110N」,三井化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0045】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12は、一種類の架橋剤を含有してもよいし、二種類以上の架橋剤を含有してもよい。粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12が架橋剤を含有する場合、当該粘着剤組成物ないし粘着剤層12における架橋剤の含有率は、粘着剤層12において被着体に対する充分な接着信頼性を実現するという観点から、好ましくは0.1〜15質量%である。
【0046】
粘着剤層12形成用の粘着剤組成物ないし粘着剤層12は、上述の成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を更に含有してもよい。そのような他の成分としては、例えば。架橋促進剤、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、老化防止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、および、顔料や染料などの着色剤が、挙げられる。
【0047】
粘着剤層12の厚さは、例えば3〜200μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0048】
以上のような積層構造を有する粘着シートX1について、曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させる過程での最大荷重としての突刺強度は、3.3〜12Nであり、好ましくは4〜6.5N、より好ましくは4.3〜6.5Nである。このような突刺強度については、例えば、ニードル貫通力測定機(商品名「KES-G5」,カトーテック株式会社製)を使用して測定することが可能である。その測定において、測定温度は例えば23℃とされる。また、その測定においては、測定対象物について円形(直径は例えば11mm)の両面露出領域を残しつつ挟持する治具を使用して、当該治具に測定対象物を挟持させた状態でその円形両面露出領域の中央部に突刺針を上述のようにして突刺す。粘着シートX1における当該突刺強度の上記範囲への調節手法としては、例えば、基材11についての構成材料の選択や、密度の調整、厚さの調整、並びに、粘着剤層(本実施形態では粘着剤層12)についての厚さの調整や、粘着剤の組成および含有量の調整、架橋剤の選択、架橋剤の含有量の調整、その他の添加剤の選択、添加剤の含有量の調整が、挙げられる。
【0049】
粘着シートX1が3.3N以上の上記突刺強度を有するという構成は、例えば図2(c)を参照して上述した剥離作業において、粘着シートX1が破断するのを回避するのに適する。造形ステージS上に形成される造形物Wは、その設計によっては造形ステージ側端部に鋭利な部分や突き出た部分を有し、剥離作業時には、引っ張られて造形ステージSからの剥離が展開される粘着シートX1に造形物の鋭利部や突出部が突き当たる場合もある。例えばこのような場合において、粘着シートX1が3.3N以上の上記突刺強度を有するという構成は、粘着シートX1の破断を回避または抑制するのに適する。また、粘着シートX1の上記突刺強度は12N以下であるところ、このような構成は、粘着シートX1の剛性が過剰となるのを回避して上述のような剥離作業において求められる粘着シートX1の変形のしやすさを確保するのに適する。以上のように、突刺強度に関する上記の構成を有する粘着シートX1は、造形ステージSからの剥離作業において破断を回避または抑制しつつ、当該剥離作業において求められる変形容易性を確保するのに適する。このような粘着シートX1を、積層造形装置等による造形物Wの形成に際して上述のように使用する場合、造形ステージS上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避ないし抑制することが可能である。したがって、粘着シートX1は、積層造形装置等の具備する造形ステージS上で形成された造形物Wについてその破損を抑制しつつ造形ステージS上から取り外すのに適する。造形ステージS上から造形物Wを取り外すうえで鋭利な先端を有する道具の使用を回避ないし抑制することを可能とさせる粘着シートX1は、造形物取り外し時に造形ステージSの損傷を抑制するうえでも好適である。
【0050】
また、粘着シートX1について、サンプル幅18mm、チャック間距離125mm、および引張速度300mm/分の条件で行われる引張破断試験において破断に至るまでに要する破壊エネルギーは、好ましくは0.24〜4N・m、より好ましくは0.28〜2.5N・mである。当該破壊エネルギー(E)は、引張方向における測定開始時の測定対象物ないしサンプル片の変形量(x=0)から破断時のサンプル片の変形量までを積分範囲とする下記の式(1)によって、求めることができる。式(1)において、F(x)は、引張破断試験において測定対象物ないしサンプル片に作用する引張り力である。
【数1】
【0051】
このような破壊エネルギーについては、例えば、引張破断試験機(商品名「オートグラフ AG-20kNG」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することが可能である。その測定において、測定温度は例えば23℃とされる。また、その測定においては、装置の具備する一対のチャック部(引張方向に離隔している)のそれぞれに測定対象物を固定し、測定開始時(x=0)のチャック間距離は上述のように125mmとされる。粘着シートX1における当該破壊エネルギーの上記範囲への調節手法としては、例えば、基材11についての構成材料の選択や、密度の調整、厚さの調整、並びに、粘着剤層(本実施形態では粘着剤層12)についての厚さの調整や、粘着剤の組成および含有量の調整、架橋剤の選択、架橋剤の含有量の調整、その他の添加剤の選択、添加剤の含有量の調整が、挙げられる。
【0052】
粘着シートX1の破壊エネルギーは粘着シートX1の靭性の指標となるところ、粘着シートX1の当該破壊エネルギーが0.24N・m以上であるという構成は、粘着シートX1において破断抑制のための充分な靭性ないし強度を実現するうえで好適である。粘着シートX1の当該破壊エネルギーが4N・m以下であるという構成は、粘着シートX1についてそのような靭性ないし強度を確保しつつ剥離作業上の良好な変形容易性を確保するうえで好適である。
【0053】
加えて、粘着シートX1の引張破断歪は、好ましくは4〜50%、より好ましくは4〜45%、より好ましくは5〜31%である。引張破断歪すなわち破断伸びは、引張方向における測定開始時の測定対象物ないしサンプル片の初期の長さに対する破断時のサンプル片の変形量ないし伸び長さの割合であるところ、このような引張破断歪については、例えば、引張破断試験機(商品名「オートグラフ AG-20kNG」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することが可能である。その測定において、測定温度は例えば23℃とされる。粘着シートX1における当該引張破断歪の上記範囲への調節手法としては、例えば、基材11についての構成材料の選択や、密度の調整、厚さの調整、並びに、粘着剤層(本実施形態では粘着剤層12)についての厚さの調整や、粘着剤の組成および含有量の調整、架橋剤の選択、架橋剤の含有量の調整、その他の添加剤の選択、添加剤の含有量の調整が、挙げられる。
【0054】
粘着シートX1の引張破断歪すなわち破断伸びが4%以上であるという構成は、例えば図2(c)を参照して上述した剥離作業において、引っ張られて造形ステージSからの剥離が展開される粘着シートX1に造形物Wないしその鋭利部や突出部等が突き当たる箇所の応力を分散させるうえで好適である。そのような応力分散は、剥離作業時の粘着シートX1の破断を抑制するのに資する。また、そのような応力分散は、剥離作業時の造形物Wの破損を抑制するのにも資する。一方、粘着シートX1の引張破断歪すなわち破断伸びが50%以下であるという構成は、粘着シートX1において破断抑制のための充分な強度を確保するうえで好適である。
【0055】
更に加えて、粘着シートX1ないしその粘着剤層12は、アクリル平面、アルミニウム平面、およびポリイミド平面からなる群より選択される少なくとも一つに対して0.5〜15N/18mmの第1の90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示すのが好ましい。このような第1の90°剥離粘着力については、例えば、剥離試験機(商品名「テンシロン型剥離試験機 TMC-1kNB」,株式会社タンスイ製)を使用して測定することが可能である。その測定において、測定温度ないし剥離温度は上記のように23℃とされ、試験対象物ないし試験片の幅は18mmとされ、引張角度は90°とされ、引張速度は上記のように300mm/分とさる。アクリル平面とは、アクリル樹脂を95質量%以上含有するアクリル樹脂板等のアクリル樹脂製部材の平面をいうものとする。ポリイミド平面とは、ポリイミド樹脂を95質量%以上含有するポリイミド樹脂板やポリイミド製の粘着テープ基材等のポリイミド樹脂製部材の平面をいうものとする。粘着剤層12における粘着力の上記範囲への調節手法としては、例えば、粘着剤層(本実施形態では粘着剤層12)についての粘着剤の組成および含有率の調整、架橋剤の選択、架橋剤の含有量の調整、並びに厚さの調整が、挙げられる。
【0056】
積層造形装置は、少なくとも造形物形成面Saがアクリル樹脂よりなる造形ステージSを備える場合、少なくとも造形物形成面Saがアルミニウムよりなる造形ステージSを備える場合、および、造形ステージSの造形物形成面Saにポリイミドシートが貼り合わされたうえで使用される場合がある。上記条件での粘着シートX1の第1の90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという上記構成は、例えば図2(b)を参照して上述した造形物形成過程において、造形ステージS表面からの粘着シートX1の剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、粘着シートX1上で形成途中の造形物Wの位置ずれを抑制するうえで、好適である。上記条件での粘着シートX1の第1の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという上記構成は、造形ステージSからの粘着シートX1の剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、上記条件での粘着シートX1の第1の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという上記構成は、造形ステージSからの粘着シートX1の剥離に際して当該造形ステージSの表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0057】
更に加えて、粘着シートX1ないしその粘着剤層12は、アルミニウム平面またはポリイミド平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該平面に対して0.5〜15N/18mmの第2の90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示すのが好ましい。このような第2の90°剥離粘着力については、例えば、剥離試験機(商品名「テンシロン型剥離試験機 TMC-1kNB」,株式会社タンスイ製)を使用して測定することが可能である。その測定において、測定温度ないし剥離温度は上記のように23℃とされ、試験対象物ないし試験片の幅は18mmとされ、引張角度は90°とされ、引張速度は上記のように300mm/分とさる。粘着剤層12における粘着力の上記範囲への調節手法としては、上述のように、例えば、粘着剤層(本実施形態では粘着剤層12)についての粘着剤の組成および含有率の調整、架橋剤の選択、架橋剤の含有量の調整、並びに厚さの調整が、挙げられる。
【0058】
積層造形装置は、少なくとも造形物形成面Saがアルミニウムよりなり且つ加熱機能を伴う造形ステージSを備える場合や、加熱機能を伴う造形ステージSの造形物形成面Saにポリイミドシートが貼り合わされたうえで使用される場合がある。加熱過程を経た後の上記条件での粘着シートX1の第2の90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという上記構成は、例えば図2(b)を参照して上述した造形物形成過程において、加熱機能付の造形ステージSの表面からの粘着シートX1の剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、粘着シートX1上で形成途中の造形物Wの位置ずれを抑制するうえで、好適である。加熱過程を経た後の上記条件での粘着シートX1の第2の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、加熱機能付の造形ステージSからの粘着シートX1の剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、加熱過程を経た後の上記条件での粘着シートX1の第2の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、加熱機能付の造形ステージSからの粘着シートX1の剥離に際して当該造形ステージSの表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0059】
以上のような粘着シートX1については、例えば、粘着剤層12形成用の粘着剤組成物を基材11上に塗布して粘着剤組成物層を形成した後、当該粘着剤組成物層について乾燥および必要に応じて架橋反応を進行させることによって、製造することができる。このようにして製造される粘着シートX1は、基材11における粘着剤層12とは反対の側の面に例えば剥離剤が塗布されたうえで、ロール状に巻き回された形態をとってもよい。また、粘着シートX1には、粘着剤層12の粘着面12aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレーターは、粘着シートX1の粘着剤層12が露出しないように保護するための要素であり、粘着シートX1を被着体に貼り合わせる際に粘着シートX1から剥がされる。セパレーターとしては、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低粘着性基材、および、無極性ポリマーからなる低粘着性基材が挙げられる。セパレーターの厚さは、例えば5〜200μmである。
【0060】
図3は、本発明の他の実施形態に係る造形ステージ用粘着シートたる粘着シートX2の部分断面図である。粘着シートX2は、基材11と、粘着剤層12(第1の粘着剤層)と、粘着剤層13(第2の粘着剤層)とを含む積層構造を有し、粘着剤層12,13の間に基材11が位置する両面粘着シートである。粘着シートX2は、粘着剤層13を更に備える点において、上述の粘着シートX1と異なる。このような粘着シートX2は、粘着シートX1と同様、例えば図2に示すように、造形物を形成するための積層造形装置等の具備する造形ステージSにおいて使用されるものである。
【0061】
粘着シートX2の基材11は、粘着シートX2において支持体として機能するための部位である。粘着シートX2の基材11の構成材料および厚さについては、粘着シートX1の基材11の構成材料および厚さについて上述したのと同様である。
【0062】
粘着シートX2の粘着剤層12は、粘着面12aを有する。粘着面12aは、例えば、積層造形装置における造形ステージSの造形物形成面Saに対して着剥可能な面とされる。粘着シートX2の粘着剤層12の構成については、粘着シートX1の粘着剤層12の構成について上述したのと同様である。
【0063】
粘着シートX2の粘着剤層13は、粘着面13aを有する。粘着面13aは、例えば、積層造形装置による造形物形成過程において造形物Wが定着することとなる面とされる。粘着剤層13は、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、またはシリコーン系粘着剤を主剤として含有する粘着剤組成物から形成される層である。粘着剤層13の構成材料については、具体的には、粘着シートX1の粘着剤層12の構成材料について上述したのと同様である。また、粘着シートX2において、粘着剤層13の構成材料は、粘着剤層12の構成材料と同一組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。このような粘着剤層13の厚さは、例えば3〜200μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0064】
粘着シートX2においては、粘着剤層13の粘着面13aが造形ステージSの造形物形成面Saに対して着剥可能な面とされ、且つ、粘着剤層12の粘着面12aが造形物形成過程で造形物Wが定着することとなる面とされてもよい。
【0065】
以上のような積層構造を有する粘着シートX2について、曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させる過程での最大荷重としての突刺強度は、3.3〜12Nであり、好ましくは4〜6.5N、より好ましくは4.3〜6.5Nである。このような突刺強度については、例えば、ニードル貫通力測定機(商品名「KES-G5」,カトーテック株式会社製)を使用して測定することが可能である。粘着シートX2の突刺強度に関する測定手法および調節手法については、粘着シートX1の突刺強度に関して上述した測定手法および調節手法と同様である。
【0066】
粘着シートX2が3.3N以上の上記突刺強度を有するという構成は、例えば図2(c)に示されるような剥離作業において、粘着シートX2が破断するのを回避するのに適する。造形ステージS上に形成される造形物Wは、その設計によっては造形ステージ側端部に鋭利な部分や突き出た部分を有し、剥離作業時には、引っ張られて造形ステージSからの剥離が展開される粘着シートX2に造形物の鋭利部や突出部が突き当たる場合もある。例えばこのような場合において、粘着シートX2が3.3N以上の上記突刺強度を有するという構成は、粘着シートX2の破断を回避または抑制するのに適する。また、粘着シートX2の上記突刺強度は12N以下であるところ、このような構成は、粘着シートX2の剛性が過剰となるのを回避して上述のような剥離作業において求められる粘着シートX2の変形のしやすさを確保するのに適する。以上のように、突刺強度に関する上記の構成を有する粘着シートX2は、造形ステージSからの剥離作業において破断を回避または抑制しつつ、当該剥離作業において求められる変形容易性を確保するのに適する。このような粘着シートX2を、積層造形装置等による造形物Wの形成に際して使用する場合、造形ステージS上から造形物Wを取り外すうえで、鋭利な先端を有するスクレーパー等の道具の使用を回避ないし抑制することが可能である。したがって、粘着シートX2は、積層造形装置等の具備する造形ステージS上で形成された造形物Wについてその破損を抑制しつつ造形ステージS上から取り外すのに適する。造形ステージS上から造形物Wを取り外すうえで鋭利な先端を有する道具の使用を回避ないし抑制することを可能とさせる粘着シートX2は、造形物取り外し時に造形ステージSの損傷を抑制するうえでも好適である。
【0067】
また、粘着シートX2について、サンプル幅18mm、チャック間距離125mm、および引張速度300mm/分の条件で行われる引張破断試験において破断に至るまでに要する破壊エネルギーは、好ましくは0.24〜4N・m、より好ましくは0.28〜2.5N・mである。このような破壊エネルギーについては、例えば、引張破断試験機(商品名「オートグラフ AG-20kNG」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することが可能である。粘着シートX2の破壊エネルギーに関する測定手法、導出手法、および調節手法については、粘着シートX1の破壊エネルギーに関して上述した測定手法、導出手法、および調節手法と同様である。
【0068】
粘着シートX2の破壊エネルギーは粘着シートX2の靭性の指標となるところ、粘着シートX2の当該破壊エネルギーが0.24N・m以上であるという構成は、粘着シートX2において破断抑制のための充分な靭性ないし強度を実現するうえで好適である。粘着シートX2の当該破壊エネルギーが4N・m以下であるという構成は、そのような靭性ないし強度を確保しつつ剥離作業上の良好な変形容易性を確保するうえで好適である。
【0069】
加えて、粘着シートX2の引張破断歪は、好ましくは4〜50%、より好ましくは4〜45%、より好ましくは5〜31%である。このような引張破断歪については、例えば、引張破断試験機(商品名「オートグラフ AG-20kNG」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することが可能である。粘着シートX2の引張破断歪に関する測定手法および調節手法については、粘着シートX1の引張破断歪に関して上述した測定手法および調節手法と同様である。
【0070】
粘着シートX2の引張破断歪すなわち破断伸びが4%以上であるという構成は、例えば図2(c)に示されるような剥離作業において、引っ張られて造形ステージSからの剥離が展開される粘着シートX2に造形物Wないしその鋭利部や突出部等が突き当たる箇所の応力を分散させるうえで好適である。そのような応力分散は、剥離作業時の粘着シートX2の破断を抑制するのに資する。また、そのような応力分散は、剥離作業時の造形物Wの破損を抑制するのにも資する。一方、粘着シートX2の引張破断歪すなわち破断伸びが50%以下であるという構成は、粘着シートX2において破断抑制のための充分な強度を確保するうえで好適である。
【0071】
更に加えて、粘着シートX2ないしその粘着剤層12および/または粘着剤層13は、アクリル平面、アルミニウム平面、およびポリイミド平面からなる群より選択される少なくとも一つに対して0.5〜15N/18mmの第1の90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示すのが好ましい。このような第1の90°剥離粘着力については、例えば、剥離試験機(商品名「テンシロン型剥離試験機 TMC-1kNB」,株式会社タンスイ製)を使用して測定することが可能である。粘着シートX2の第1の90°剥離粘着力に関する測定手法および調節手法については、粘着シートX1の第1の90°剥離粘着力に関して上述した測定手法および調節手法と同様である。
【0072】
積層造形装置は、少なくとも造形物形成面Saがアクリル樹脂よりなる造形ステージSを備える場合、少なくとも造形物形成面Saがアルミニウムよりなる造形ステージSを備える場合、および、造形ステージSの造形物形成面Saにポリイミドシートが貼り合わされたうえで使用される場合がある。上記条件での粘着シートX2の第1の90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという上記構成は、例えば図2(b)に示されるような造形物形成過程において、造形ステージS表面からの粘着シートX2の剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、粘着シートX2上で形成途中の造形物Wの位置ずれを抑制するうえで、好適である。上記条件での粘着シートX2の第1の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという上記構成は、造形ステージSからの粘着シートX2の剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、上記条件での粘着シートX2の第1の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという上記構成は、造形ステージSからの粘着シートX2の剥離に際して当該造形ステージSの表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0073】
更に加えて、粘着シートX2ないしその粘着剤層12および/または粘着剤層13は、アルミニウム平面またはポリイミド平面に対する貼り合せと、その後の100℃での24時間の加熱処理と、その後の降温とを経た後に当該平面に対して0.5〜15N/18mmの第2の90°剥離粘着力(剥離温度23℃,引張速度300mm/分)を示すのが好ましい。このような90°剥離粘着力については、例えば、剥離試験機(商品名「テンシロン型剥離試験機 TMC-1kNB」,株式会社タンスイ製)を使用して測定することが可能である。粘着シートX2の第2の90°剥離粘着力に関する測定手法および調節手法については、粘着シートX1の第2の90°剥離粘着力に関して上述した測定手法および調節手法と同様である。
【0074】
積層造形装置は、少なくとも造形物形成面Saがアルミニウムよりなり且つ加熱機能を伴う造形ステージSを備える場合や、加熱機能を伴う造形ステージSの造形物形成面Saにポリイミドシートが貼り合わされたうえで使用される場合がある。加熱過程を経た後の上記条件での粘着シートX2の第2の90°剥離粘着力が0.5N/18mm以上であるという上記構成は、例えば図2(b)に示されるような造形物形成過程において、加熱機能付の造形ステージSの表面からの粘着シートX2の剥がれや浮きを抑制するうえで、ひいては、粘着シートX2上で形成途中の造形物Wの位置ずれを抑制するうえで、好適である。加熱過程を経た後の上記条件での粘着シートX2の第2の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、加熱機能付の造形ステージSからの粘着シートX2の剥離のしやすさを確保するうえで、好適である。加えて、加熱過程を経た後の上記条件での粘着シートX2の第2の90°剥離粘着力が15N/18mm以下であるという構成は、加熱機能付の造形ステージSからの粘着シートX2の剥離に際して当該造形ステージSの表面に糊残りが生ずるのを抑制するうえでも、好適である。
【0075】
粘着シートX2においては、積層造形装置による造形物形成過程において造形物Wが定着することとなる面が粘着面である。このような構成は、造形ステージS上において形成途中の造形物Wの位置ずれを抑制するうえで、好適である。
【0076】
以上のような粘着シートX2については、例えば次のようにして製造することができる。まず、粘着剤層12形成用の粘着剤組成物、および、粘着剤層13形成用の粘着剤組成物を、それぞれ調製する。次に、表面に離型処理の施されている第1の剥離ライナー上にて、粘着剤組成物12形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した後、当該粘着剤組成物層を乾燥させる。これにより、第1の剥離ライナー上に粘着剤層12が形成される。一方、表面に離型処理の施されている第2の剥離ライナー上にて、粘着剤組成物13形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した後、当該粘着剤組成物層を乾燥させる。これにより、第2の剥離ライナー上に粘着剤層13が形成される。そして、粘着剤層12を基材11の一方の面の側に貼り合わせ、且つ、粘着剤層13を基材11の他方の面の側に貼り合わせる。その後、必要に応じて粘着剤層12,13について更に乾燥させ、或いは架橋反応を進行させる。
【0077】
このようにして製造される粘着シートX2は、粘着剤層12の表面(粘着面12a)を被覆するように設けられるセパレーター(剥離ライナー)または粘着剤層13の表面(粘着面13a)を被覆するように設けられるセパレーター(剥離ライナー)を伴って、ロール状に巻き回された形態をとってもよい。また、粘着シートX2には、粘着面12a,13aを被覆するように一対のセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレーターは、粘着シートX2を被着体に貼り合わせる際に粘着シートX2から剥がされる。セパレーターとしては、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低粘着性基材、および、無極性ポリマーからなる低粘着性基材が挙げられる。セパレーターの厚さは、例えば5〜200μmである。
【実施例】
【0078】
〔実施例1〕
実施例1の造形ステージ用粘着シートを以下のように作製した。具体的には、まず、環流冷却器と、窒素ガス導入管と、撹拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、50質量部の水および0.2質量部の過硫酸カリウムを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら1時間の撹拌を行った。一方、93質量部のアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)と、5質量部のメタクリル酸メチル(MMA)と、2質量部のアクリル酸(AA)と、2質量部のラウリル硫酸ナトリウムと、1質量部のポリオキシエチレンラウリルエーテルと、50質量部の水とを含有して乳化させた乳化溶液を調製した。そして、窒素置換後の前記の混合物に対して当該乳化溶液を70℃で3時間かけて滴下し、滴下後の当該反応溶液について、70℃で2時間の熟成を行った。その後、当該反応溶液について、室温まで冷却し、10質量%のアンモニア水を用いて中和した。このようにして、2EHAとMMAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液P1)を得た。アクリル系ポリマー溶液P1の固形分濃度は46.5質量%であった。
【0079】
次に、100質量部のアクリル系ポリマー溶液P1に1質量部の水溶性オキサゾリン系架橋剤(商品名「エポクロスWS-500」,株式会社日本触媒製)を添加して粘着剤組成物を調製した。次に、和紙基材(厚さ73±5μm,密度0.59g/cm3)上に、当該組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、和紙基材上で当該粘着剤組成物層について乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて厚さ25μmの粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は5分間である。以上のようにして、実施例1の造形ステージ用粘着シート(片面粘着シート)を作製した。
【0080】
〔実施例2〕
100質量部の上記アクリル系ポリマー溶液P1に0.7質量部の水溶性オキサゾリン系架橋剤(商品名「エポクロスWS-500」,株式会社日本触媒製)を添加して粘着剤組成物を調製した。次に、和紙基材(厚さ70±5μm,密度0.59g/cm3)上に、当該組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、和紙基材上で当該粘着剤組成物層について乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて厚さ25μmの粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は130℃であり且つ加熱時間は5分間である。以上のようにして、実施例2の造形ステージ用粘着シート(片面粘着シート)を作製した。
【0081】
〔実施例3〕
実施例3の造形ステージ用粘着シートを以下のように作製した。具体的には、まず、環流冷却器と、窒素ガス導入管と、撹拌機と、温度計とを備えた反応容器内で、90質量部のアクリル酸n-ブチル(BA)と、5質量部のメタクリル酸メチル(MMA)と、5質量部のアクリル酸(AA)と、186質量部の重合溶媒たる酢酸エチルとを含む混合物について、窒素ガスを導入しながら1時間の撹拌を行った。次に、このようにして重合系内の酸素を除去した後、反応容器内の溶液について、63℃で10時間の反応を行った。その後、当該溶液について冷却し、BAとMMAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する溶液(アクリル系ポリマー溶液P2)を得た。アクリル系ポリマー溶液P2の固形分濃度は35質量%であった。
【0082】
次に、剥離ライナー付きの粘着剤層を二つ形成した。各剥離ライナー付粘着剤層の形成においては、まず、アクリル系ポリマー溶液P2に対し、それに含有される固形分100質量部に対して0.02質量部の4官能エポキシ系架橋剤(商品名「テトラッドC」,三菱瓦斯化学株式会社製)と40質量部の重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD-135」,荒川化学株式会社製)とを加え、粘着剤組成物を調製した。次に、表面に離型処理の施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー)上に、当該組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、剥離ライナー上で当該粘着剤組成物層について乾燥させ且つ架橋反応を生じさせて、厚さ65μmの粘着剤層を形成した。このときの加熱温度は100℃であり、加熱時間は3分間である。このような手法により、剥離ライナー付きの粘着剤層(厚さ65μm)を二つ形成した。
【0083】
実施例3の造形ステージ用粘着シートの作製においては、次に、麻パルプ100%の不織布基材(厚さ75±6μm,密度0.30g/cm3)の一方の面に対して上述のようにして得た一方の剥離ライナー付粘着剤層の露出粘着面を貼り合わせ、且つ、当該不織布基材の他方の面に対して他方の剥離ライナー付粘着剤層の露出粘着面を貼り合わせた。次に、当該積層体について、50℃で48時間のエージングを施した。以上のようにして、実施例3の造形ステージ用粘着シート(両面粘着シート)を作製した。
【0084】
〔実施例4〕
実施例4の造形ステージ用粘着シートを以下のように作製した。具体的には、まず、クレープ紙基材(厚さ125μm,密度0.51g/cm3)の両面に対し、ポリ酢酸ビニルエマルション含有のサイズ剤を塗布して乾燥させることによって、サイズ剤処理を施した。この処理によって基材表面に付着させた固形分量は10g/m2である。次に、クレープ紙基材の一方の面(背面)に背面処理剤(商品名「ピーロイル1010」,一方社油脂工業株式会社製)を塗布してこれを乾燥させた。次に、100質量部の天然ゴム(RSS1級)と、50質量部の粘着付与剤たるテルペン樹脂(商品名「YSレジンPX1150N」,ヤスハラケミカル株式会社製)と、10質量部のアルキルフェノール樹脂(商品名「タッキロール201」,田岡化学工業株式会社製)と、2質量部の老化防止剤(商品名「ノクラックNS-5」,大内新興化学工業株式会社製)とをトルエンに溶解させた粘着剤組成物を、上述のようにして用意したクレープ紙基材における背面(背面処理剤塗布面)とは反対の側の面に塗布してこれを室温で乾燥させた。これにより、クレープ紙基材上に厚さ40μmのゴム系粘着剤層を形成した。以上のようにして、実施例4の造形ステージ用粘着シート(片面粘着シート)を作製した。
【0085】
〔比較例1〕
比較例1の粘着シートを以下のように作製した。具体的には、まず、和紙基材(厚さ60μm,密度0.48g/cm3)の両面に対し、ポリ酢酸ビニルエマルション含有のサイズ剤を塗布して乾燥させることによって、サイズ剤処理を施した。この処理によって基材表面に付着させた固形分量は8g/m2である。次に、和紙基材の一方の面(背面)に背面処理剤(商品名「ピーロイル1010」,一方社油脂工業株式会社製)を塗布してこれを乾燥させた。次に、100質量部の天然ゴム(RSS1級)と、50質量部の粘着付与剤(商品名「クイトンF-100」,日本ゼオン株式会社製)と、15質量部の軟化剤(商品名「ダイアナプロセスPW-300」,出光興産株式会社製)と、2質量部の老化防止剤(商品名「ノクラックNS-5」,大内新興化学工業株式会社製)とをトルエンに溶解させた粘着剤組成物を、上述のようにして用意した和紙基材における背面(背面処理剤塗布面)とは反対の側の面に塗布してこれを室温で乾燥させた。これにより、和紙基材上に厚さ30μmのゴム系粘着剤層を形成した。以上のようにして、比較例1の粘着シート(片面粘着シート)を作製した。
【0086】
〔比較例2〕
麻パルプ100%の不織布基材の代わりに別の不織布基材(厚さ45μm,密度0.32g/cm3,組成は麻パルプ40質量%と木材パルプ38質量%とレーヨン繊維19質量%とポリビニルアルコール繊維3質量%)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較例2の両面粘着シート(各粘着剤層の厚さは65μm)を作製した。
【0087】
〈突刺強度〉
実施例および比較例の各粘着シートについて、ニードル貫通力測定機(商品名「KES-G5」,カトーテック株式会社製)を使用して、突刺強度を求めた。具体的には、粘着シートから切り出した測定対象物たるサンプル片に対し、曲率半径0.5mmの球形部を先端に有する突刺針を突刺速度0.2mm/sで先端から突き刺して貫通させ、その貫通過程での最大荷重を測定した。本測定においては、測定温度は23℃とし、測定対象物について円形(直径11mm)の両面露出領域を残しつつ挟持する治具を使用して、当該治具に測定対象物を挟持させた状態でその円形両面露出領域の中央部に突刺針を上述のようにして突き刺した。この測定を各粘着シートに関して20回行い、20回の測定で得られた値の平均を当該粘着シートの突刺強度(N)とした。その結果を表1に掲げる。
【0088】
〈破壊エネルギーおよび引張破断歪〉
実施例および比較例の各粘着シートについて、引張破断試験機(商品名「オートグラフ AG-20kNG」,株式会社島津製作所製)を使用して、破壊エネルギーおよび引張破断歪を求めた。具体的には、粘着シートから切り出した試験対象物たるサンプル片(幅18mm)に対し、装置における一対のチャック部(引張方向に離隔している)のそれぞれにサンプル片の端部を固定し、初期のチャック間距離125mmおよび引張速度300mm/分の条件で、引張破断試験を行った。本測定において、測定温度は23℃である。サンプル片が破断に至るまでに要する破壊エネルギー(E)は、引張方向における測定開始時のサンプル片の変形量(x=0)から破断時のサンプル片の変形量までを積分範囲とする上記の式(1)によって、求めることができる。また、引張破断歪は、引張方向における測定開始時のサンプル片の初期の長さに対する破断時のサンプル片の変形量ないし伸び長さの割合である。各粘着シートに関して3回の引張破断試験を行い、3回の測定で得られた破壊エネルギー値および引張破断歪値のそれぞれの平均を当該粘着シートの破壊エネルギー(N・m)および引張破断歪(%)とした。これらの結果を表1に掲げる。
【0089】
〈90°剥離粘着力〉
実施例および比較例の各粘着シートについて、以下のようにして各種の90°剥離粘着力を求めた。
【0090】
[アクリル平面に対する第1の90°剥離粘着力]
まず、粘着力測定に付されるサンプル片(幅18mm×長さ100mm)を粘着シートから切り出し、被着体たるアクリル板(商品名「アクリライト板」,三菱レイヨン株式会社製)に対し、2kgのローラーを1往復させる圧着作業によって当該サンプル片を貼り合わせた。次に、常温環境下での30分間の放置の後、剥離試験機(商品名「テンシロン型剥離試験機 TMC-1kNB」,株式会社タンスイ製)を使用して、当該アクリル板に対するサンプル片の90°剥離粘着力を測定した。本測定において、測定温度ないし剥離温度は23℃とし、サンプル片の幅は上述のように18mmとし、引張角度は90°とし、引張速度は300mm/分とした。3回の剥離試験を行い、3回の測定で得られた値の平均を、当該アクリル板ないしアクリル平面に対する当該粘着シートの第1の90°剥離粘着力(N/18mm)とした。以上のような手法(手法M)で得られた結果を表1に掲げる。
【0091】
[アルミニウム平面に対する第1の90°剥離粘着力]
被着体をアクリル板に代えてアルミニウム板(商品名「SK-Aアルミ板」,住友金属株式会社製)としたこと以外は手法Mと同様にして、アルミニウム平面に対する第1の90°剥離粘着力を求めた。その結果を表1に掲げる。
【0092】
[ポリイミド平面に対する第1の90°剥離粘着力]
表面に片面粘着ポリイミドシート(商品名「No.360UL」,日東電工株式会社製)を貼り合わせたアルミニウム板をアクリル板の代わりに被着体として用いて当該ポリイミドシートの背面(ポリイミド平面)にサンプル片を貼り合わせたこと以外は手法Mと同様にして、ポリイミド平面に対する第1の90°剥離粘着力を求めた。
【0093】
[アルミニウム平面に対する第2の90°剥離粘着力]
被着体をアクリル板に代えてアルミニウム板(商品名「SK-Aアルミ板」,住友金属株式会社製)としたこと、および、被着体に対するサンプル片の貼り合せの後に100℃での24時間の加熱処理とその後の降温とを経たこと以外は、手法Mと同様にして、アルミニウム平面に対する第2の90°剥離粘着力を求めた。その結果を表1に掲げる。
【0094】
[ポリイミド平面に対する第2の90°剥離粘着力]
表面に片面粘着ポリイミドシート(商品名「No.360UL」,日東電工株式会社製)を貼り合わせたアルミニウム板をアクリル板の代わりに被着体として用いて当該ポリイミドシートの背面(ポリイミド平面)にサンプル片を貼り合わせたこと、および、被着体に対するサンプル片の貼り合せの後に100℃での24時間の加熱処理とその後の降温とを経たこと以外は手法Mと同様にして、ポリイミド平面に対する第2の90°剥離粘着力を求めた。その結果を表1に掲げる。
【0095】
〈造形ステージからの剥離性の評価〉
実施例および比較例の各粘着シートについて、造形ステージからの剥離性を調べた。具体的には、まず、積層造形装置たる熱溶解積層型3Dプリンタ(商品名「BS01+」,ボンサイラボ株式会社製)の造形ステージの造形物形成面に粘着シートを貼り合わせた。次に、装置を稼動させ、表面に粘着シートを伴う造形ステージ上に6個の造形物を並行して形成した。造形のためのモデル材としては、断面直径1.75mmφのポリ乳酸フィラメント(商品名「Polyplus」,ナチュラルカラータイプ,Polymaker社製)を用いた。造形物形成過程において、造形ステージの温度は50℃であり、造形ステージ上にモデル材を吐出供給するノズルの内部でのモデル材加熱温度は220℃である。各造形物は、平板(長さ50mm×幅10mm×厚さ2mm)である。片面粘着シート(実施例1,2,4と比較例1)の場合はその背面(基材)に、両面粘着シート(実施例3と比較例2)の場合は一方の粘着面に、造形物は形成される。そして、形成された造形物の温度が常温に下がった後、造形ステージからの粘着シートの剥離作業を行った。この剥離作業は、造形ステージ面に対して粘着シートのなす角度が45〜85°に収まる範囲内で粘着シートを引っ張って行った。このような剥離作業において、粘着シートが全く破れることなく造形ステージから粘着シートを剥離して造形物を取り外せた場合を優(◎)と評価し、粘着シートの一部に破れを生じつつも造形ステージから粘着シートを剥離して造形物を取り外せた場合を良(○)と評価し、粘着シートに生じた破れの程度が過度であって造形ステージから造形物を取り外すためにはスクレーパーを使用する必要のあった場合を不良(×)と評価した。その結果を表1に掲げる。
【0096】
[評価]
本発明の構成を具備する実施例1〜4の造形ステージ用粘着シートによると、造形ステージからの粘着シートの剥離作業によって造形ステージから造形物を適切に取り外すことができた。これに対し、比較例1,2の粘着シートによると、造形ステージからの粘着シートの剥離作業のみによっては造形ステージから造形物を適切に取り外すことができなかった。
【0097】
【表1】
【符号の説明】
【0098】
X1,X2 粘着シート(造形ステージ用粘着シート)
11 基材
12 粘着剤層
13 粘着剤層
S 造形ステージ
Sa 造形物形成面
W 造形物
図1
図2
図3