(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散されたエステル化セルロースエーテル粒子a)の中央粒子サイズd50が、最大7マイクロメートルであり、かかる中央粒子サイズ(d50)が、前記粒子の50体積パーセントがより小さい等価直径を有し、50体積パーセントがより大きな等価直径を有するサイズである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性組成物。
前記水性組成物が、前記エステル化セルロースエーテルa)及びb)の総重量に基づいて、c)0.05〜20パーセントの脂肪酸の塩をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
水性組成物において分散された様々な既知のエステル化セルロースエーテル、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)粒子は、粘着性があり、昇温で水性分散体において集塊する傾向がある。最終的に、HPMCAS粒子は、集塊し始め、水性HPMCAS分散体の粘度は、著しく上昇し始める。HPMCAS粒子が水性分散体中に集塊し始める温度は、これより、分散体の「相転移温度」と指定されている。
【0015】
HPMCAS粒子を含む、高粘度の水性分散体は、水性分散体が浸漬ピン上でまたはいくつかのコーティングプロセスにおいてカプセル殻を形成するために使用されるときに所望される。選択された処理温度で高粘度の水性分散体は、浸漬ピン及び錠剤等のコーティングされた他の基材に対する水性分散体の粘着性を改善する。カプセルを製造するプロセス及びいくつかのコーティングプロセスにおいて、水性分散体は、一般に、例えば、均一化のために水性分散体の軽度の撹拌のために低剪断のみに供される。
【0016】
その一方で、高粘度は、しばしば、HPMCAS粒子が高剪断に供されるとき、例えば、HPMCAS粒子がHPMCAS分散体の調製時に、他の材料と混合されるとき、エステル化セルロースエーテル粒子が、水性分散体を生成するために水の存在下で磨砕に供されるとき、または水性分散体が噴霧目的のために使用されるときには望ましくない。
【0017】
以下のさらに詳述される本発明は、かなり低い剪断を依然として維持しつつ、低い剪断で水性分散体の粘度の増加及び必要に応じた粘度の調節を可能にし、そのため、より高い剪断で水性分散体のかなり良好な取り扱いを可能にする。本明細書で使用される、「低い剪断」は、約200秒
−1以下の剪断速度を意味する。既知の増粘剤において、必要に応じた粘度の増加は、水性組成物中に新規の水溶性エステル化セルロースエーテルを取り込むことにより達成される。かかる水溶性エステル化セルロースエーテルは、2015年3月16日に出願された米国仮出願第62/133,514号の優先権を主張する、2016年3月8日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US16/021330号、及び2015年3月16日に出願された米国仮出願第62/133,518号の優先権を主張する、2016年3月8日に出願された国際特許出願第PCT/US16/021326号に記載されており、全ては、本発明の特許出願の出願者により出願された。水溶性エステル化セルロースエーテルが、水性組成物中の分散された粒子のエステル化セルロースエーテルとして類似の化学構造を有する増粘剤として使用されるため、水性組成物へのこの増粘剤の取り込みは、腸溶性特性等の分散された粒子のエステル化セルロースエーテルにより提供される所望の特性を軽減しないまたは脅かさない。
【0018】
本発明の水性組成物中に含まれるエステル化セルロースエーテルa)及びb)は、本発明の文脈において無水グルコース単位として表される、β−1,4グリコシド結合したD−グルコピラノース繰り返し単位を有するセルロース骨格を有する。エステル化セルロースエーテルは、好ましくは、エステル化アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、またはヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。これは、本発明の組成物中に含まれるエステル化セルロースエーテルにおいて、無水グルコース単位のヒドロキシル基の少なくとも一部が、アルコキシル基もしくはヒドロキシアルコキシル基、またはアルコキシル基とヒドロキシアルコキシル基との組み合わせにより置換されていることを意味する。ヒドロキシアルコキシル基は、典型的には、ヒドロキシメトキシル、ヒドロキシエトキシル、及び/またはヒドロキシプロポキシル基である。ヒドロキシエトキシル及び/またはヒドロキシプロポキシル基が好ましい。典型的には、ヒドロキシアルコキシル基の1種または2種がエステル化セルロースエーテルに存在する。好ましくは、単一種のヒドロキシアルコキシル基、より好ましくはヒドロキシプロポキシルが存在する。アルコキシル基は、典型的には、メトキシル、エトキシル、及び/またはプロポキシル基である。メトキシル基が好ましい。上記で定義されたエステル化セルロースエーテルの例は、エステル化メチルセルロース、エチルセルロース、及びプロピルセルロース等のエステル化アルキルセルロース、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロース等のエステル化ヒドロキシアルキルセルロース、エステル化ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルエチルセルロース等のエステル化ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ならびにエステル化ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロース等の2つ以上のヒドロキシアルキル基を有するものである。最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルは、エステル化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のエステル化ヒドロキシアルキルメチルセルロースである。
【0019】
ヒドロキシアルコキシル基による無水グルコース単位のヒドロキシル基の置換度は、ヒドロキシアルコキシル基のモル置換、MS(ヒドロキシアルコキシル)によって表される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、エステル化セルロースエーテルにおける無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応の間に、セルロース骨格に結合したヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基は、アルキル化剤、例えば、メチル化剤、及び/またはヒドロキシアルキル化剤によってさらにエーテル化され得ることを理解されたい。無水グルコース単位の同じ炭素原子位置に対する複数のその後のヒドロキシアルキル化エーテル化反応は側鎖を生み出し、その場合、複数のヒドロキシアルコキシル基がエーテル結合によって互いに共有結合しており、各側鎖は全体としてセルロース骨格にヒドロキシアルコキシル置換基を形成している。
【0020】
故に、「ヒドロキシアルコキシル基」という用語は、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位としてのヒドロキシアルコキシル基を指すものとして、MS(ヒドロキシアルコキシル)の文脈において解釈されるべきであり、上に概説されるように、単一のヒドロキシアルコキシル基または側鎖を含み、2つ以上のヒドロキシアルコキシル単位は、エーテル結合によって互いに共有結合している。この定義内で、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基がさらにアルキル化、例えばメチル化されるかどうかは重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化両方のヒドロキシアルコキシル置換基が、MS(ヒドロキシアルコキシル)の決定に対して含まれる。エステル化セルロースエーテルa)及びb)は、一般に、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.08、より好ましくは少なくとも0.12、最も好ましくは少なくとも0.15のモル置換を有する。モル置換度は、一般に、1.00以下、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.70以下、最も好ましくは0.50以下である。
【0021】
無水グルコース1単位当たりの、メトキシル基等のアルコキシル基によって置換されたヒドロキシル基の平均数は、アルコキシル基の置換度、DS(アルコキシル)と表される。上記のDSの定義において、「アルコキシル基によって置換されたヒドロキシル基」という用語は、本発明内では、セルロース骨格の炭素原子に直接結合したアルキル化ヒドロキシル基だけでなく、セルロース骨格に結合したヒドロキシアルコキシル置換基のアルキル化ヒドロキシル基も包含するものとして解釈されるべきである。エステル化セルロースエーテルa)及びb)は、好ましくは、少なくとも1.0、より好ましくは少なくとも1.1、さらにより好ましくは少なくとも1.2、最も好ましくは少なくとも1.4、特に少なくとも1.6のDS(アルコキシル)を有する。DS(アルコキシル)は、好ましくは、2.5以下、より好ましくは2.4以下、さらにより好ましくは2.2以下、最も2.05以下である。
【0022】
最も好ましくは、エステル化セルロースエーテルa)及びb)は、DS(アルコキシル)について上に示した範囲内のDS(メトキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシル)について上に示した範囲内のMS(ヒドロキシプロポキシル)を有するエステル化ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0023】
本発明の水性組成物中の分散された粒子として表されるエステル化セルロースエーテルa)は、(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)一価の脂肪族アシル基と式−C(O)−R−COOAの基との組み合わせを有し、式中、Rが二価の炭化水素基であり、Aが水素または陽イオンである。陽イオンは、好ましくは、NH
4+等のアンモニウム陽イオン、またはナトリウムもしくはカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、より好ましくはナトリウムイオンである。最も好ましくは、Aは、水素である。
【0024】
本発明の水性組成物中に存在するエステル化セルロースエーテルb)は、一価の脂肪族アシル基と式−C(O)−R−COOHの基を有する。
【0025】
エステル化セルロースエーテルb)及び任意にエステル化セルロースエーテルa)中に存在する一価の脂肪族アシル基は、好ましくは、アセチル、プロピオニル、またはn−ブチリルもしくはi−ブチリル等のブチリルである。式−C(O)−R−COOA及び−C(O)−R−COOHの好ましい基は、−C(O)−CH
2−CH
2−COOA及び−C(O)−CH
2−CH
2−COOHである。
【0026】
エステル化セルロースエーテルa)及びb)の具体的な例は、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPCAS)、プロピオン酸コハク酸ヒドロキシブチルメチルセルロース(HBMCPrS)、プロピオン酸コハク酸ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(HEHPCPrS)、または酢酸コハク酸メチルセルロース(MCAS)である。酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)が最も好ましいエステル化セルロースエーテルa)及びb)である。
【0027】
エステル化セルロースエーテルb)において、基−C(O)−R−COOHの中和度は、0.4以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、最も好ましくは0.1以下、及び特に0.05以下、またはさらに0.01以下である。中和度は、本質的には、ゼロ、または例えば、最大10
−3またはさらに最大10
−4等のそれをわずかに上回り得る。本明細書に使用される「中和度」という用語は、脱プロトン化カルボン酸基の脱プロトン化及びプロトン化カルボン酸基の合計に対する比率を定義し、即ち、中和度=[−C(O)−R−COO
−]/[−C(O)−R−COO
−+−C(O)−R−COOH]。基−C(O)−R−COOHが部分的に中和される場合、陽イオンは、好ましくは、NH
4+等のアンモニウム陽イオン、またはナトリウムもしくはカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、より好ましくはナトリウムイオンである。
【0028】
エステル化セルロースエーテルa)において、基−C(O)−R−COOHの中和度は、0.4以下であり得るが、好ましくは、それは、エステル化セルロースエーテルb)において、基−C(O)−R−COOHの中和度について、上記で示される範囲内である。
【0029】
本発明の水性組成物中の分散された粒子として表されるエステル化セルロースエーテルa)は、その総エステル置換度により、エステル化セルロースエーテルb)とは異なる。分散された粒子のエステル化セルロースエーテルa)において、総エステル置換度、即ち、i)一価の脂肪族アシル基の置換度と、ii)式−C(O)−R−COOAの基の置換度との合計が、0.70超、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80である。記述された合計は、一般に、2.0以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.15以下、最も好ましくは1.10以下、特に1.00以下である。
【0030】
分散された粒子のエステル化セルロースエーテルa)において、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基等の一価の脂肪族アシル基の置換度は、一般に、1.75以下、好ましくは1.50以下、より好ましくは1.25以下、最も好ましくは1.00以下、またはさらに0.65以下である。一価の脂肪族アシル基の置換度は、ゼロであり得るが、好ましくは、それは、少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.10、最も好ましくは少なくとも0.20である。分散された粒子のエステル化セルロースエーテルa)において、スクシニル等の式−C(O)−R−COOAの置換度は、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.10である。式−C(O)−R−COOAの基の置換度は、一般に、最大1.6、好ましくは最大1.30、より好ましくは最大1.00、最も好ましくは最大0.70、またはさらに最大0.60である。i)一価の脂肪族アシル基、及びii)式−C(O)−R−COOAの基の置換度は、それらの合計が、上述のように、0.70超で選択される。
【0031】
本発明の水性組成物中のエステル化セルロースエーテルb)は、総エステル置換度が0.03〜0.70であるように、一価の脂肪族アシル基及び式−C(O)−R−COOHの基を有する。i)一価の脂肪族アシル基の置換度と、ii)式−C(O)−R−COOHの基の置換度との合計は、中和度が0.4以下であり、エステル化セルロースエーテルb)の本質的特徴である。総エステル置換度は、少なくとも0.03、一般に、少なくとも0.07、好ましくは少なくとも0.10、より好ましくは少なくとも0.15、最も好ましくは少なくとも0.20、特に少なくとも0.25である。エステル化セルロースエーテルb)において、総エステル置換度は、0.70以下、一般に、0.67以下、好ましくは最大0.65、より好ましくは最大0.60、最も好ましくは最大0.55または最大0.50である。本発明の一態様では、0.10〜0.65、特に0.20〜0.60の総エステル置換度を有するエステル化セルロースエーテルb)が、好ましい。本発明の別の態様では、0.20〜0.50、特に0.25〜0.44の総エステル置換度を有するエステル化セルロースエーテルb)が、好ましい。
【0032】
エステル化セルロースエーテルb)は、一般に、少なくとも0.03または0.05、好ましくは少なくとも0.10、より好ましくは少なくとも0.15、最も好ましくは少なくとも0.20、特に少なくとも0.25または少なくとも0.30の、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基等の一価の脂肪族アシル基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルは、一般に、最大0.69、好ましくは最大0.60、より好ましくは最大0.55、最も好ましくは最大0.50、特に最大0.45またはさらに最大0.40の、一価の脂肪族アシル基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルb)は、一般に、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、より好ましくは少なくとも0.05、最も好ましくは少なくとも0.10の、スクシニル等の式−C(O)−R−COOHの基の置換度を有する。エステル化セルロースエーテルは、一般に、最大0.65、好ましくは最大0.60、より好ましくは最大0.55、最も好ましくは最大0.50または最大0.45の、式−C(O)−R−COOHの基の置換度を有する。上述の、基−C(O)−R−COOHの中和度は、0.4以下である。
【0033】
さらに、エステル化セルロースエーテルb)において、i)一価の脂肪族アシル基の置換度、及びii)式−C(O)−R−COOHの基の置換度、及びiii)アルコキシル基、DS(アルコキシル)の置換度の合計は、一般に、2.60以下、好ましくは2.55以下、より好ましくは2.50以下、最も好ましくは2.45以下である。エステル化セルロースエーテルb)は、一般に、少なくとも1.7、好ましくは少なくとも1.9、最も好ましくは少なくとも2.1の、i)一価の脂肪族アシル基及びii)式−C(O)−R−COOHの基、及びiii)アルコキシル基の置換度の合計を有する。
【0034】
アセテート及びスクシネートエステル基の含有量は、“Hypromellose Acetate Succinate”,United States Pharmacopeia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550に従って決定される。報告された値は揮発性物質について補正される(上記のHPMCASモノグラフのセクション「乾燥減量(loss on drying)」に記載されているように決定される)。本方法は、プロピオニル、ブチリル、及び他のエステル基の含有量を決定するために類似の手法で使用してよい。
【0035】
エステル化セルロースエーテルにおけるエーテル基の含有量は、“Hypromellose”,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp 3467−3469に記載されているものと同じ手法で決定される。
【0036】
上記の分析によって得られたエーテル及びエステル基の含有量は、以下の式に従って個々の置換基のDS及びMS値に変換される。その式は、他のセルロースエーテルエステルの置換基のDS及びMSを決定するために類似の手法で使用してよい。
【0043】
慣例により、重量パーセントは、全ての置換基を含むセルロース繰り返し単位の総重量を基準とする平均重量百分率である。メトキシル基の含有量は、メトキシル基(即ち、−OCH
3)の質量に基づいて報告される。ヒドロキシアルコキシル基の含有量は、ヒドロキシプロポキシル(即ち、−O−CH
2CH(CH
3)−OH)等のヒドロキシアルコキシル基(即ち、−O−アルキレン−OH)の質量に基づいて報告される。一価の脂肪族アシル基の含有量は、−C(O)−R
1(式中、R
1は、アセチル(−C(O)−CH
3)等の一価脂肪族基である)の質量に基づいて報告される。式−C(O)−R−COOHの基の含有量は、この基の質量、例えばスクシノイル基(即ち、−C(O)−CH
2−CH
2−COOH)の質量に基づいて報告される。
【0044】
エステル化セルロースエーテルb)の別の本質的な特性は、その水溶性である。エステル化セルロースエーテルは、2℃で少なくとも2.0重量パーセントの水中溶解度を有し、即ち、それは、2℃で少なくとも2.0重量パーセント溶液、好ましくは少なくとも3.0重量パーセント溶液、より好ましくは少なくとも5.0重量パーセント溶液、またはさらに少なくとも10.0重量溶液として水に溶解し得る。一般に、エステル化セルロースエーテルb)は、最大20重量パーセント溶液として溶解され得るか、または最も好ましい実施形態では、2℃の温度でさらに最大30重量パーセント溶液として水に溶解し得る。本明細書で使用される、「2℃で水中にx重量パーセント溶液」という用語は、xgのエステル化セルロースエーテルb)が、2℃で(100−x)gの水に溶解することを意味する。
【0045】
より一般的な用語では、基−C(O)−R−COOHのその低い中和度にもかかわらず、エステル化セルロースエーテルb)は、エステル化セルロースエーテルb)の中和度が0.4超または上に列挙される好ましい範囲まで増加しない水性液体とエステル化セルロースエーテルが配合されるときでさえ、例えば、エステル化セルロースエーテルが脱イオン水または蒸留水等の水のみと配合するときに、10℃未満、より好ましくは8℃未満、さらにより好ましくは5℃以下、最も好ましくは最大3℃の温度で水性液体に溶解する。わずか少量の沈殿物を有する、または好ましい実施形態では沈殿物を有さない、透明なまたは不透明な溶液は、2℃で得られる。調製された溶液の温度が20℃まで上昇するとき、沈殿物は生じない。
【0046】
本発明の組成物中に含まれるエステル化セルロースエーテルa)及びb)は、一般に、“Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550”に従って、20℃の0.43重量%のNaOH水溶液中でエステル化セルロースエーテルの2.0重量パーセント溶液として測定される、少なくとも1.2mPa・s、好ましくは最小1.8mPa・s、より好ましくは最小2.4mPa・s、一般に、200mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、最も好ましくは30mPa・s以下の粘度を有する。
【0047】
エステル化セルロースエーテルb)は、一般に、最大500,000ダルトン、好ましくは最大250,000ダルトン、より好ましくは最大200,000ダルトン、最も好ましくは最大150,000ダルトン、特に最大100,000ダルトンの重量平均分子量M
wを有する。一般に、それらは、少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも12,000ダルトン、より好ましくは少なくとも15,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも20,000ダルトン、特に少なくとも30,000ダルトンの重量平均分子量M
wを有する。M
w及び数平均分子量M
nは、アセトニトリル40体積部と、50mMのNaH
2PO
4及び0.1MのNaNO
3を含有する水性緩衝液60体積部との混合物を移動相として使用して、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定される。移動相は8.0のpHに調整される。M
w及びM
nの測定は、実施例においてより詳細に記載される。
【0048】
本発明の水性組成物は、一般に、水性組成物において分散された状態で、少なくとも5パーセント、好ましくは少なくとも10パーセント、より好ましくは少なくとも15パーセント、最も好ましくは少なくとも20パーセント、及びある条件下で、さらに少なくとも25パーセントのエステル化セルロースエーテルa)を含む。本発明の水性組成物は、一般に、水性組成物において分散された状態で、最大40パーセントまたは最大35パーセントのエステル化セルロースエーテルa)を含む。
【0049】
本発明の水性組成物は、好ましくは、水性組成物において、少なくとも1パーセント、より好ましくは少なくとも2パーセント、最も好ましくは少なくとも5パーセントのエステル化セルロースエーテルb)を含む。本発明の水性組成物は、一般に、水性組成物において、最大30パーセント、好ましくは最大15パーセント、より好ましくは最大10パーセントのエステル化セルロースエーテルb)を含む。
【0050】
本発明の水性組成物において、エステル化セルロースエーテルa)とエステル化セルロースエーテルb)との重量比は、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも5:1、最も好ましくは少なくとも10:1である。水性組成物において、エステル化セルロースエーテルa)とエステル化セルロースエーテルb)との重量比は、好ましくは、最大40:1、より好ましくは最大30:1、最も好ましくは最大20:1である。
【0051】
本発明の水性組成物は、好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤を含む。界面活性剤(複数可)の総量は、一般に、エステル化セルロースエーテル(複数可)の総重量に基づいて、少なくとも0.05パーセント、好ましくは少なくとも0.1パーセント、より好ましくは少なくとも0.3パーセント、さらにより好ましくは少なくとも0.5パーセント、最も好ましくは少なくとも0.8パーセント、特に少なくとも1.0パーセントである。界面活性剤の総量は、一般に、エステル化セルロースエーテルa)及びb)の総重量に基づいて、最大20パーセント、好ましくは最大15パーセント、より好ましくは最大12パーセント、さらにより好ましくは最大10パーセントもしくは8パーセント、最も好ましくは最大6.0パーセント、またはさらに最大5.0パーセントである。界面活性剤は、一般に、分散体を安定化するために、即ち、水相において分散されたエステル化セルロースエーテル粒子a)を維持するために使用される。
【0052】
多様な陰イオン性、陽イオン性、及び非イオン性界面活性剤が存在する。周知の陰イオン界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウムである。周知の非イオン性界面活性剤は、Pluronic(商標)界面活性剤等のエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、または商標名Tween 80としても既知であるPolysorbate 80等のポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートである。
【0053】
好ましい界面活性剤は、脂肪酸の塩、好ましくは飽和または不飽和脂肪酸のアンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属塩である。好ましい脂肪酸塩は、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属塩である。好ましいアンモニウムイオンは、NH
4+である。好ましいアルカリ金属イオンは、ナトリウムまたはカリウムイオンである。好ましいアルカリ土類金属イオンは、カルシウムイオンである。脂肪酸は、飽和または不飽和であり得る。例示的な飽和脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びセロチン酸である。不飽和脂肪酸は、モノ−、ジ−、またはトリ不飽和脂肪酸であり得、モノ−不飽和及びジ−飽和脂肪酸が好ましい。例示的なモノ−不飽和脂肪酸は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、及びバクセン酸である。例示的なジ−不飽和脂肪酸は、リノール酸及びリノエライジン酸である。ステアリン酸またはオレイン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩、特に上述されるそれらの塩が最も好ましい。界面活性剤として脂肪酸の塩を含む水性分散体、それらの利点、及びそれらを調製するためのプロセスは、2014年4月8日に出願された米国仮出願第61/976,726号の優先権を主張する、WO/2015/156922として公開された2015年3月3日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US15/018390号、2015年7月28日に出願された米国仮出願第62/197,605号の優先権を主張する、2016年7月8日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US16/041455号にさらに詳細に記載されている。
【0054】
本発明の水性組成物は、水性分散体の形態で、典型的には、安定した分散体の形態である。分散されたエステル化セルロースエーテル粒子の中央粒子サイズd50は、好ましくは、最大7マイクロメートル、より好ましくは最大4マイクロメートル、さらにより好ましくは最大3マイクロメートル、最も好ましくはさらに最大2マイクロメートルである。分散されたエステル化セルロースエーテル粒子の中央粒子サイズd50は、典型的には、0.3マイクロメートル以上、より典型的には、0.5マイクロメートル以上、最も典型的には、0.7マイクロメートル以上である。粒子サイズは、例えば、Beckman Coulter(California)から市販のBeckman Coulterレーザー回折粒子サイズ分析器を使用するレーザー回折粒子サイズ分析によって測定される。中央粒子サイズd50は、粒子の50体積パーセントがより小さい等価直径を有し、50体積パーセントがより大きな等価直径を有する直径である。典型的には、d90は、0.7マイクロメートル以上、より典型的には、1.0マイクロメートル以上、最も典型的には、1.5マイクロメートル以上、典型的には、最大12マイクロメートル、より典型的には、最大10マイクロメートル、さらにより典型的には、最大9マイクロメートル、最も典型的には、最大7マイクロメートルであり、多くの場合、さらに最大5マイクロメートルであり、d90は、粒子の90体積パーセントがより小さい等価直径を有し、残りの10体積パーセントがより大きな等価直径を有する直径である。等価粒子の直径dは、所与の粒子の体積と同じ体積を有する球の直径である。平均粒子の直径は、典型的には、0.5マイクロメートル以上、より典型的には、0.7マイクロメートル以上、最も典型的には、0.8マイクロメートル以上、典型的には、最大8マイクロメートル、より典型的には、最大6マイクロメートル、さらにより典型的には、最大4マイクロメートル、最も典型的には、さらに最大3マイクロメートルである。
【0055】
本発明の水性組成物は、水性希釈剤を含む。水性希釈剤は、水であり、任意に、少量の有機溶媒と混合される。水性希釈剤は、水及び有機溶媒の総重量に基づいて、好ましくは、50〜100重量パーセント、より好ましくは65〜100重量パーセント、最も好ましくは75〜100重量パーセントの水と、好ましくは0〜50重量パーセント、より好ましくは0〜35重量パーセント、最も好ましくは0〜25重量パーセントの有機溶媒とからなる。有用な有機溶媒は、酸素、窒素、または塩素等のハロゲンのような、1つ以上のヘテロ原子を有する極性有機溶媒である。より好ましい有機溶媒は、アルコール、例えば、グリセロール等の多官能性アルコール、または好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはn−プロパノール等の単官能性アルコール;テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン等のケトン;メチルエチルケトン、またはメチルイソブチルケトン;酢酸エチル等のアセテート;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;またはアセトニトリル等のニトリルである。好ましくは、本発明の水性組成物は、水性希釈剤として単独で水を含む。水性希釈剤の量は、水性組成物の総重量に基づいて、典型的には、少なくとも50パーセント、より典型的には、少なくとも60パーセント、最も典型的には、少なくとも65パーセントである。水性希釈剤の量は、水性組成物の総重量に基づいて、典型的には、85パーセント以下、より典型的には、80パーセント以下、最も典型的には、75パーセント以下である。
【0056】
一実施形態では、上述の分散されたエステル化セルロースエーテルa)及びb)の合計は、任意に、脂肪酸c)の塩(複数可)の合計は、水性希釈剤を含まない水性組成物の成分の総重量の少なくとも50パーセント、典型的には、少なくとも60パーセント、より典型的には、少なくとも80パーセント、最大100パーセント、典型的には、最大95パーセント、より典型的には、最大90パーセントになる。別の実施形態では、エステル化セルロースエーテルa)及びb)の合計は、水性組成物の総ポリマー重量の少なくとも50パーセント、典型的には、少なくとも60パーセント、より典型的には、少なくとも80パーセント、最大100パーセント、典型的には、最大99パーセント、より典型的には、最大95パーセントになる。
【0057】
本発明の水性組成物は、任意の成分、例えば、肥料、除草剤、もしくは殺虫剤等の活性成分、またはビタミン、ハーブ、及びミネラルサプリメント及び薬物等の生物活性成分、または1つ以上の可塑剤、着色剤、色素、乳白剤、風味、もしくは呈味改善剤、抗酸化剤等の補助剤、またはこれらの任意の組み合わせ等をさらに含み得る。任意の添加剤は、好ましくは薬学的に許容される。これらの任意の成分の量は、典型的には、水性希釈剤を含まない水性組成物の成分の総重量の0〜50パーセントである。典型的には、この量は、水性希釈剤を含まない水性組成物の成分の総重量の1パーセント以上、より典型的には、5パーセント以上、最も典型的には、10パーセント以上、最大40パーセント、より典型的には、最大20パーセント、最も典型的には、最大10パーセントである。
【0058】
有用な可塑剤には、フタル酸エステル、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、及びフタル酸ジイソプロピル;クエン酸エステル、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、及びクエン酸アセチルトリブチル;リン酸エステル、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、及びリン酸トリフェニル;乳酸アルキル;グリセロールエステル;グリセロール及びグリセロールエステル、例えば、トリアセチンとしても知られているグリセロールトリアセテート;ショ糖エステル;油及び脂肪酸エステル;ステアリン酸ブチル;セバシン酸ジブチル;酒石酸ジブチル;アジピン酸ジイソブチル、トリブチリン;プロピレングリコール;ヒマシ油、リン脂質、レシチン;ならびにこれらの混合物が含まれる。有用な可塑剤は、一般に、800g/モル以下の分子量を有する。
【0059】
水性組成物は、エステル化セルロースエーテルb)に加えてポリマー膜形成助剤、例えば、ゼラチン、プルラン、ヒドロキシプロピルデンプン等の非腸溶性デンプン誘導体;ポリ酢酸ビニル(PVA);ポリオキシエチレンエステル;ポリエチレングリコール及びこれらの組み合わせを含み得る。しかしながら、ポリマー膜形成助剤が水性組成物に取り込まれる場合、それらの量は、本発明の水性組成物の総重量に基づいて、好ましくは、0.5%以下、より好ましくは0.2%以下、さらにより好ましくは0.1%以下である。
【0060】
本発明の水性組成物は、様々な方法によって調製することができる。ある方法は、水性希釈剤の存在下で、任意に1つ以上の補助剤の存在下で、エステル化セルロースエーテルa)を磨砕することを含む。別の方法は、任意に、1つ以上の補助剤の存在下で、昇温でエステル化セルロースエーテルを溶融させることと、溶融または軟化された質量を水性希釈剤中で乳化することと、を含む。エステル化セルロースエーテルb)は、その後、分散された粒子のエステル化セルロースエーテルa)と配合され得る。しかしながら、エステル化セルロースエーテルa)、エステル化セルロースエーテルb)、界面活性剤、及び水性希釈剤を室温で単に物理的に配合することによる水性組成物の調製は、安定分散体を調製する上で通常は好適ではない。
【0061】
一実施形態では、本発明の水性組成物は、上述の水性希釈剤の存在下で、上述の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルa)を磨砕するステップを含むプロセスにおいて生成される。水性希釈剤の存在下で、さらに上述される、中央粒子サイズd50まで、エステル化セルロースエーテルを磨砕するために適している任意の磨砕デバイスを、使用することができる。好ましい磨砕デバイスは、媒体ミルまたはビーズミル等の湿式磨砕ユニットである。磨砕は、典型的には、少なくとも2℃、より典型的には、少なくとも15℃の温度で、典型的には、最大40℃、より典型的には、最大35℃の温度で行われる。磨砕は、分散されたエステル化セルロースエーテル粒子の上述の中央粒子サイズd50を達成するために十分な時間行われる。
【0062】
別の実施形態では、本発明の水性組成物は、上述の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルa)を溶解させるステップと、上述の水性希釈剤中で溶融されたエステル化セルロースエーテルを乳化するステップと、乳剤を冷却して、水性分散体を形成するステップと、を含む、プロセスにおいて生成される。プロセスのこの実施形態は、好ましくは、押出機内で行われる。あるいは、加圧バッチ式混練機が、プロセスのこの実施形態を行うために使用することができる。プロセスを実行するために有用である一般的なプロセス条件及び装置は、米国特許第5,539,021号及び同第7,763,676号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)において開示される。
【0063】
好ましくは、界面活性剤、例えば、脂肪酸の塩、及び任意の1つ以上の補助剤が、エステル化セルロースエーテルa)の磨砕前、磨砕中、もしくは磨砕後に、または水性希釈剤中で溶解されたエステル化セルロースエーテルa)の乳化ステップ前、乳化ステップ中、もしくは乳化ステップ後に、エステル化セルロースエーテルと配合される。好ましくは、上にさらに記載される種類及び量の界面活性剤を、水性希釈剤中でエステル化セルロースエーテルa)の上述の磨砕もしくは乳化前または磨砕もしくは乳化中に、エステル化セルロースエーテルa)に添加する。
【0064】
エステル化セルロースエーテルb)の不在下で、エステル化セルロースエーテルa)の分散体の生成は、WO/2015/156922として公開され、2014年4月8日に出願された米国仮出願第61/976,726号の優先権を主張する、2015年3月3日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US15/018390号、2015年7月28日に出願された米国仮出願第62/197,605号の優先権を主張する、2016年7月8日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US16/041455号に記載されており、全ては、本発明の特許出願の出願者により、本発明の実施例において出願された。
【0065】
上述の少なくとも1つのエステル化セルロースエーテルb)は、エステル化セルロースエーテルa)の磨砕前、磨砕中、もしくは磨砕後に、または水性希釈剤中で溶解されたエステル化セルロースエーテルa)の乳化ステップ前、乳化ステップ中、もしくは乳化ステップ後に、添加される。エステル化セルロースエーテルb)は、有利には、エステル化セルロースエーテルa)の磨砕後にのみ、または水性希釈剤中で溶解されたエステル化セルロースエーテルa)の乳化ステップ後にのみ、及び乳剤の冷却後に、添加される。即ち、エステル化セルロースエーテルb)は、好ましくは、分散された粒子のエステル化セルロースエーテルa)を含む水性分散体の調製後にのみ添加される。エステル化セルロースエーテルb)は、好ましくは、1〜25℃、より好ましくは4〜15℃の温度で、分散された粒子のエステル化セルロースエーテルa)を含む水性分散体に添加される。
【0066】
エステル化セルロースエーテルb)の生成は、2015年3月16日に出願された米国仮出願第62/133,514号の優先権を主張する、2016年3月8日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US16/021330号、及び2015年3月16日に出願された米国仮出願第62/133,518号の優先権を主張する、2016年3月8日に出願された国際特許出願第PCT/US16/021326号に記載されており、全ては、本発明の特許出願の出願者により、本発明の実施例において出願された。これらの国際特許出願は、無水酢酸、無水酪酸、または無水プロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸無水物と、反応希釈剤として酢酸等の脂肪族カルボン酸において、無水コハク酸等のジカルボン酸無水物とセルロースエーテルの反応を記載している。
【0067】
米国仮出願第62/133,514号の優先権を主張する、2016年3月8日に出願された国際特許出願第PCT/US16/021330号において、エステル化セルロースエーテルb)は、エステル化触媒の不在下、特に、アルカリ金属カルボン酸塩の不在下で生成される。これは、既知のプロセスとは対照的である。国際特許出願第PCT/US16/021330号において記載される一般的な手順に従って、セルロースエーテル、好ましくは上にさらに列挙される種類のうちの1つは、無水酢酸、無水酪酸、及び無水プロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸無水物と、無水コハク酸等のジカルボン酸無水物と反応させる。脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位とのモル比は、一般に、0.1/1〜7/1、好ましくは0.3/1〜3.5/1、より好ましくは0.5/1〜2.5/1である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位とのモル比は、好ましくは、0.1/1〜2.2/1、好ましくは0.2/1〜1.2/1、より好ましくは0.3/1〜0.8である。セルロースエーテルの無水グルコース単位のモル数は、DS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシアルコキシル)からの置換無水グルコース単位の平均分子量を計算することにより、出発材料として使用されるセルロースエーテルの重量から決定することができる。セルロースエーテルのエステル化は、酢酸、プロピオン酸、または酪酸、最も好ましくは酢酸等の反応希釈剤としての脂肪酸カルボン酸中で行われる。モル比[脂肪酸カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、一般に、少なくとも0.7/1、好ましくは少なくとも1.2/1、より好ましくは少なくとも1.5/1である。モル比[脂肪酸カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位]は、一般に、最大10/1、好ましくは最大9/1である。より低い比率、例えば、最大7/1またはさらに最大4/1、及び最適化条件下で、さらに最大2/1もまた、使用することができ、必要とされる反応希釈剤の量を最大限利用する。既知のプロセスとは対照的に、本発明のエステル化セルロースエーテルは、エステル化触媒の不在下で、特に、アルカリ金属カルボン酸塩の不在下で生成される。エステル化のための反応温度は、一般に、60℃〜110℃、好ましくは70℃〜100℃である。エステル化反応は、典型的には、2〜8時間内、より典型的には、3〜6時間内で完了される。エステル化反応の完了後、エステル化セルロースエーテルは、米国特許第4,226,981号、国際特許出願第WO2005/115330号、欧州特許出願第EP0219426号、または国際特許出願第WO2013/148154号において記載される、既知の様式で、反応混合物から沈殿させることができる。沈殿したエステル化セルロースエーテルを、その後、好ましくは70〜100℃の温度で、水で洗浄する。
【0068】
本発明の別の態様では、本発明の水性組成物は、コーティングされた組成物を形成するために、錠剤、顆粒、ペレット、カプレット、トローチ剤、坐薬、ペッサリー、または移植可能な剤形をコーティングするために使用され得る。コーティングは、例えば、既知の浸漬または噴霧プロセスによる、既知の様式で行われ得る。
【0069】
本発明のさらに別の態様では、本発明の水性組成物は、水性組成物を浸漬ピンと接触させるステップを含むプロセスにおいてカプセル殻の製造のために使用され得る。カプセル殻を調製するために使用され得る一般的なプロセス条件及び装置は、国際特許出願第WO2013/164122号及び同第WO2013/164121号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)において記載されている。
【0070】
本発明の水性組成物は、剤形のコーティング、またはカプセル殻の形成に関して特に有用であり、すべてが、好ましくは腸溶性使用のため、即ち、腸管に溶解されて、剤形またはカプセル中に含まれる薬物のような活性成分を放出するコーティングまたはカプセル殻である。
【0071】
これより本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において詳細に記載する。
【実施例】
【0072】
特に明記しない限り、全ての部及び百分率は重量による。実施例では、以下の試験手順が使用される。
【0073】
酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)の粘度
0.43重量%のNaOH水溶液中の2.0重量%のHPMCASは、“Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF 29,pp.1548−1550に記載されるように調製し、続いて、DIN 51562−1:1999−01(January 1999)に従って、20℃でウベローデ粘度測定を行う。
【0074】
HPMCASのエーテル及びエステル基の含有量
HPMCASにおけるエーテル基の含有量は、“Hypromellose”,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP 35,pp 3467−3469に記載されているものと同じ手法で決定される。アセチル基(−CO−CH
3)でのエステル置換及びスクシニル基(−CO−CH
2−CH
2−COOH)でのエステル置換は、Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary, NF 29,pp.1548−1550”に従って決定される。エステル置換について報告された値は、揮発性物質について補正される(上記のHPMCASモノグラフのセクション「乾燥減量(loss on drying)」に記載されているように決定される)。
【0075】
温度の関数としてHPMCASを含む水性組成物の見かけの粘度
HPMCASを含む水性分散体の見かけの粘度は、CC−27カップ形状及び4ブレードベーン形状ST26−4V−20を有するAnton Paar MCR 501レオメーターで行われた温度掃引実験に従って、10〜50℃の温度範囲にわたって、0.5℃/分の加熱速度及び40rpmのベーン形状の一定速度及び0.25分の測定点持続時間温度の関数として測定する。この温度掃引試験前に、材料を、10℃で、250rpm(高い剪断)で、30分間処理する。20mlの試料体積を、これらの測定のために使用する。粘度測定前に、試料を室温で保存している。
【0076】
剪断速度に応じて水性組成物の粘度の決定
HPMCASを含む水性HPMCAS分散体の粘度は、各10年間5つのデータポイントで、0.1〜1000s
−1の安定した剪断速度範囲にわたって安定した剪断流れ曲線実験において円錐平板形状(C−60/1°)を有するHaake RS600レオメーター(Thermo Fischer Scientific,Karlsruheからの)を用いて21℃で測定される。
【0077】
分散されたHPMCAS粒子a)を含む分散体の特性
HPMCAS分散体におけるHPMCAS粒子サイズ測定
粒子サイズを測定するために、以下に記載されるように生成された1〜2gの水性HPMCAS分散体を、20mlの精製水で希釈する。希釈した分散体の粒子サイズは、Beckman Coulter(California)から市販のBeckman Coulter LS 13 320レーザー回折粒子サイズ分析器を使用するレーザー回折粒子サイズ分析によって測定される。フラウンホーファ光学モデル、偏光強度回折散乱(PIDS)システム、及び超音波処理制御ユニットを有するユニバーサル液体モジュール(ULM)を使用する。超音波処理制御ユニットにおいて、HPMCAS分散体を、HPMCAS添加(約30秒間)及び粒子サイズ測定(約90秒間)の間、最大120秒間超音波処理に供する。
【0078】
HPMCAS分散体における固体含有量の決定
固体含有量は、水分バランス(Mettler Toledo Advanced Moisture Analyzer,Model HB43−S)を用いて決定される。機器の設定は以下のとおりである:120℃の温度設定点(初めの3分間、40%の超過量)による急速乾燥プログラムを用い、スイッチオフ基準5(140秒にわたる1mg未満の重量変化)を用いた、3gの分散体。水を除去するために乾燥させて、残留する固体含有量(全ての添加剤を含む)を計量する。
【0079】
水溶性HPMCAS b)の特性
Mw及びMnの測定
特に明記しない限り、M
w及びM
nは、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743に従って測定される。移動相は、アセトニトリル40体積部と、50mMのNaH
2PO
4及び0.1MのNaNO
3を含有する水性緩衝液60体積部との混合物である。移動相は8.0のpHに調整される。セルロースエーテルエステルの溶液を、0.45μmの孔径のシリンジフィルターを通してHPLCバイアルに濾過する。M
w及びM
nの測定の正確な詳細は、表題“Determination of M
w,M
nand M
z”下でセクション“Examples”において国際特許出願第WO2014/137777号において開示されている。
【0080】
水溶性HPMCAS b)の水溶性
2重量パーセントの、HPMCASと水の混合物を、0.5℃で16時間激しい撹拌下で、その乾燥重量に基づいて、2.0gのHPMCASを98.0gの水と混合することによって調製される。次いで、HPMCASと水の混合物の温度を、2℃に増加させる。エステル化セルロースエーテルの水溶性は、目視検査によって決定される。HPMCASが2%で、2℃で水溶性があるか否かの決定は、以下のとおりに行われる。「2%で水溶性がある−ある」とは、沈殿物のない溶液が、上の手順に従って得られることを意味する。「2%で水溶性がある−ない」とは、少なくともHPMCASのかなりの部分が、上の手順に従って、その乾燥重量に基づいて、2.0gのHPMCASを、98.0gの水と混合するときに、溶解せず、沈殿物を形成することを意味する。「2%で水溶性がある−部分的」とは、HPMCASの少量部分のみが、上の手順に従って、その乾燥重量に基づいて、2.0gのHPMCASを、98.0gの水と混合するときに、溶解せず、沈殿物を形成することを意味する。
【0081】
分散されたHPMCAS粒子a)を含む分散体の生成
水性HPMCAS分散体を生成するために、23.0%のメトキシル基(DS
メトキシル=1.89)、7.3%のヒドロキシプロポキシル基(MS
ヒドロキシプロポキシル=0.25)、9.1%のアセチル基(DS
アセチル=0.54)、11.6%のスクシニル基(DS
スクシニル=0.29)、及び2.9mPa・sの粘度、を有し、0.43重量%のNaOH水溶液中の2.0重量%のHPMCAS溶液として測定された、HPMCASを使用する。
【0082】
HPMCAS、及び界面活性剤としてステアリン酸ナトリウムを、水に添加し、Drais DCP−12 Advantis媒体ミル(1.0mmのセラミック媒体、0.5mmのスクリーンサイズ)を通して再循環させた。ミル速度は、初めに1400〜1500rpmで設定され、次いで、ミル出口温度を制御するために、必要に応じて約1100〜1400rpmまで減少する。
【0083】
HPMCAS及びステアリン酸ナトリウムを、重量比でプレブレンドして、HPMCASに基づいて、4.8%のステアリン酸ナトリウムのパーセンテージを得る。HPMCAS及びステアリン酸ナトリウムのプレブレンドを、水に少しずつ充填し、ミルを通して再循環させる。組成物の総重量に基づいて、30%の総固体充填が達成されるまで、添加を継続する。組成物の総重量に基づいて、HPMCASのパーセンテージは、測定された固体含油量及びHPMCASとステアリン酸ナトリウムとの所与の重量比から計算する。全ての固体の添加後、最終粒子サイズが得られるまで約3時間ミル処理を継続する。ミル処理プロセス中、軽度の熱処理は、ミルジャケット、タンク、及び熱交換器への冷却を提供するために使用された冷却装置システムに対してミル速度及び設定点を調節することによって適用する。ミル処理中、最大温度は、39〜41℃である。生成された水性分散体は、HPMCAS分散体の総重量に基づいて、28.5パーセントのHPMCAS含有量を有する。
【0084】
新たに生成された水性HPMCAS分散体の粒子サイズ分布は、さらに上述のレーザー回析粒子サイズ分析によって決定される。平均粒子直径は、1.7μmであり、中央粒子サイズd50は、1.2μmであり、粒子サイズd90は、3.7μmである。中央粒子サイズd50は、粒子の50体積パーセントがより小さい等価直径を有し、50体積パーセントがより大きな等価直径を有する直径であり、d90は、粒子の90体積パーセントがより小さい等価直径を有し、残りの10体積パーセントがより大きな等価直径を有する直径である。
【0085】
水溶性HPMCAS b)の生成
水溶性HPMCASポリマーは、2015年3月16日に出願された米国仮出願第62/133,514号の優先権を主張する、2016年3月8日に出願された同時係属の国際特許出願第PCT/US16/021330号に記載されるように生成される。
【0086】
無水コハク酸及び無水酢酸を、70℃で氷酢酸に溶解する。次いで、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、水を含まず)を、撹拌下で添加する。これらの量を、下表1中に列挙する。HPMCの量は乾燥ベースで計算される。いかなる量の酢酸ナトリウムも添加しない。
【0087】
HPMCは、以下の表2に列挙されるように、メトキシル置換(DS
M)及びヒドロキシプロポキシル置換(MS
HP)を有し、ASTM D2363−79(再承認2006)による20℃において水中の2%の溶液として測定して、3.0mPa
.sを有する。HPMCの重量平均分子量は、約20,000ダルトンである。HPMCは、The Dow Chemical CompanyからMethocel E3 LV Premiumセルロースエーテルとして商業的に入手可能である。次いで、反応混合物を、最大85〜110℃に2時間加熱する。次いで、粗生成物を、21℃の温度を有する1〜2Lの水を添加することによって沈殿させる。
【0088】
続いて、沈殿した生成物を、濾過により混合物から分離する。沈殿した反応質量を二等分に分割する。第1の半分を、95℃の温度を有する水で数回洗浄する(試料1)。第2の半分を、21℃の温度を有する水で数回洗浄する(試料2)。次いで、生成物を、濾過によって単離し、55℃で一晩乾燥させる。
【0089】
水溶性HPMCAS試料の特性を、下表2中に列挙される。表2において、略語は以下の意味を有する。
DS
M=DS(メトキシル):メトキシル基での置換度、
MS
HP=MS(ヒドロキシプロポキシル):ヒドロキシプロポキシル基でのモル置換、
DS
Ac:アセチル基での置換度、
DS
s:スクシニル基での置換度。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
比較実施例A
さらに上述の生成されている、分散されたHPMCAS粒子a)を含む分散体を、いかなる他の成分も混合せず、それ自体は分析のために使用される。分散体中の総固体含有量は、29.9パーセントであり、HPMCAS含有量は、28.5パーセントであり、ステアリン酸ナトリウム含有量は、1.4パーセントであり、それぞれ、分散体の総重量に基づいている。
【0093】
実施例1
水溶性HPMCASの試料2の10部を、4℃の温度を有する水の90部に溶解し、これは、10重量%のHPMCASの水溶液をもたらす。あるいは、水溶性HPMCASの試料2の10部を、2℃の温度を有する水の90部に溶解することができる。水溶性HPMCASの試料2は、2℃で少なくとも10重量パーセントの水中の溶解性を有する。
【0094】
100gの比較実施例Aの分散体を、10℃の温度で、17gの10重量%のHPMCAS水溶液と混合する、即ち、分散されたHPMCAS粒子a)と水溶性HPMCAS b)との重量比は、約17:1である。
【0095】
比較実施例Aの分散体及び実施例1の水性組成物の粘度は、剪断速度の関数として、上で詳述される、Haake RS600レオメーターを用いて21℃で測定される。これらの結果を
図1に示す。
【0096】
実施例1及び比較実施例Aの水性組成物の見かけ粘度はまた、それらの温度の関数として、さらに上述される。この温度掃引実験前に、さらに上述されるように、材料を、10℃、250rpmで30分間処理する。これらの結果を
図2に示す。
【0097】
実施例2及び3
水溶性HPMCASの試料1の10部を、4℃の温度を有する水の90部に溶解し、これは、10重量%のHPMCASの水溶液をもたらす。あるいは、水溶性HPMCASの試料1の10部を、2℃の温度を有する水の90部に溶解することができる。水溶性HPMCASの試料1は、2℃で少なくとも10重量パーセントの水中の溶解性を有する。
【0098】
実施例2では、21.0gのこの10重量%のHPMCAS水溶液を、10℃の温度で、70gの比較実施例Aの分散体と混合する。
【0099】
実施例3では、31.5gのこの10重量%のHPMCAS水溶液を、10℃の温度で、70gの比較実施例Aの分散体と混合する。
【0100】
比較実施例Aの分散体ならびに実施例1及び2の水性組成物の粘度は、剪断速度の関数として、上で詳述される、Haake RS600レオメーターを用いて21℃で測定される。これらの結果を
図3に示す。
【0101】
実施例2及び3ならびに比較実施例Aの水性組成物の見かけ粘度はまた、さらに上述されるように測定される。この温度掃引実験前に、さらに上述されるように、材料を、10℃、250rpmで30分間処理する。これらの結果を
図4に示す。
【0102】
図1及び3は、21℃での低剪断速度で、実施例1、2、及び3の水性組成物の粘度が、比較実施例Aの粘度よりもさらに高いことを示す。低剪断速度で、実施例1、2、及び3の水性組成物の驚くことに高い粘度は、水性分散体が低い剪断に供されるとき、例えば、水性分散体が、コーティングを生成するまたは浸漬ピン上にカプセル殻を形成するために徐々に撹拌するときのいくつかの出現では、望ましい。定温、例えば、21℃で粘度の増加は、錠剤等のコーティングされた基材の表面に、またはカプセル生成の場合は、浸漬ピンに組成物の付着を増加される場合に大いに有利である。
【0103】
一方、水性組成物の低粘度及び良好な処理可能性が、21℃で噴霧コーティング等の他の最終使用のために望ましい場合、これは、高い剪断によって達成され得る。増加された剪断で、例えば、200秒
−1以上またはさらに1000秒
−1以上で、実施例1、2、及び3の水性組成物の粘度は、比較実施例Aの水性組成物の粘度に対して、かなり低く、非常に同様であるか、またはさらに本質的に同一である。
【0104】
図2及び4は、水溶性HPMCASの添加により、水性組成物の相転移温度及び粘度は、特定の最終使用における必要に応じて調節され得る。相転移温度を上回って、実施例1、2、及び3の水性組成物を加熱するときに、比較実施例Aの粘度よりもかなり高い粘度が、達成される。また、相転移温度は、水溶性HPMCASの添加により、広範な範囲に調節され、制御され得る。一方、室温で、実施例1、2、及び3の水性組成物の粘度は、比較実施例Aの粘度ほど高くない。これは、室温で組成物の取り扱いを容易にした。
【0105】
比較実施例B
カプセルの形成のために本発明の水性組成物の有用性を試験するために、クエン酸トリエチル(TEC)の添加時に、組成物の粘度が評価される。TECは、カプセル生成に使用される周知の膜形成助剤である。
【0106】
比較実施例Bでは、クエン酸トリエチル(TEC)を、比較実施例Aの分散体に滴加する。TECの量は、HPMCASの重量に基づいて、20パーセントである。
【0107】
実施例4及び5
水溶性HPMCASの試料2の10部を、4℃の温度を有する水の90部に溶解し、これは、10重量%のHPMCASの水溶液をもたらす。
【0108】
実施例4では、19.95gの10重量%のHPMCAS水溶液を、10℃の温度で、70gの比較実施例Aの分散体と混合する。TECを、得られた水性組成物に滴加する。TECの量は、水性組成物中のHPMCASの総重量に基づいて、20%である。さらに、18.9gの蒸留水を添加する。
【0109】
実施例5では、39.9gの10重量%のHPMCAS水溶液を、10℃の温度で、70gの比較実施例Aの分散体と混合する。TECを、得られた水性組成物に滴加する。TECの量は、水性組成物中のHPMCASの総重量に基づいて、20%である。さらに、9.45gの蒸留水を添加する。
【0110】
比較実施例Bならびに実施例4及び5の水性組成物の見かけ粘度は、それらの温度の関数として、さらに上述される。これらの結果を
図5に示す。
【0111】
図5は、実施例4及び5の水性組成物の粘度が、それぞれ、「相転移温度」と表す、約23℃または21℃の温度で著しく増加し始めることを示す。この粘度の増加は、浸漬ピンに対する水性分散体の粘着を改善する場合に重要である。
【0112】
カプセル体の調製
成形ピンを、70℃の温度に予熱し、次いで、10℃の温度を有する実施例5のHPMCAS組成物に浸漬する。次いで、これらのピンを、HPMCAS分散体から引き抜き、膜を成形ピン上で形成する。成形ピン上の膜を、80℃の温度を有する乾燥チャンバ内で120分間乾燥させる。カプセル体は、乾燥後に生じる。
(態様)
(態様1)
水性組成物であって、
a)分散された粒子のエステル化セルロースエーテルであって、(i)式−C(O)−R−COOAの基、または(ii)一価の脂肪族アシル基と式−C(O)−R−COOAの基との組み合わせを含み、式中、Rが二価の炭化水素基であり、Aが水素または陽イオンであり、総エステル置換度が0.70超である、分散された粒子のエステル化セルロースエーテルと、
b)エステル化セルロースエーテルであって、一価の脂肪族アシル基と、式−C(O)−R−COOHの基とを含み、Rが二価の炭化水素基であり、I)前記基−C(O)−R−COOHの中和度が0.4以下であり、II)総エステル置換度が0.03〜0.70であり、III)前記エステル化セルロースエーテルb)が2℃で少なくとも2.0重量パーセントの水中溶解度を有する、エステル化セルロースエーテルと、を含む、水性組成物。
(態様2)
前記水性組成物の総重量に基づいて、少なくとも15パーセントの前記分散された粒子a)を含む、態様1に記載の水性組成物。
(態様3)
前記水性組成物の総重量に基づいて、少なくとも2パーセントの前記エステル化セルロースエーテルb)を含む、態様1または態様2に記載の水性組成物。
(態様4)
前記分散されたエステル化セルロースエーテル粒子a)の中央粒子サイズd50が、最大7マイクロメートルであり、かかる中央粒子サイズ(d50)が、前記粒子の50体積パーセントがより小さい等価直径を有し、50体積パーセントがより大きな等価直径を有するサイズである、態様1〜3のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様5)
前記分散されたエステル化セルロースエーテル粒子a)の総エステル置換度が、0.75〜1.10である、態様1〜4のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様6)
前記エステル化セルロースエーテルb)の総エステル置換度が、0.20〜0.60である、態様1〜5のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様7)
前記水性組成物が、前記エステル化セルロースエーテルa)及びb)の総重量に基づいて、c)0.05〜20パーセントの脂肪酸の塩をさらに含む、態様1〜6のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様8)
前記エステル化セルロースエーテルa)及びb)中の前記一価の脂肪族アシル基が、アセチル、プロピオニル、またはブチリル基であり、式−C(O)−R−COOA及び−C(O)−R−COOHの基中の−R−が、−CH2−CH2−である、態様1〜7のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様9)
前記エステル化セルロースエーテルa)及びb)が、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、態様1〜8のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様10)
前記エステル化セルロースエーテルa)及びb)の合計が、前記水性組成物において、全ポリマー重量の少なくとも50パーセントになる、態様1〜9のいずれか一項に記載の水性組成物。
(態様11)
前記エステル化セルロースエーテルa)及びb)の合計が、前記水性組成物において、全ポリマー重量の少なくとも80パーセントになる、態様1〜10のいずれか一項に記
載の水性組成物。
(態様12)
態様1〜11のいずれか一項に記載の水性組成物から調製されるコーティング剤でコーティングされる、剤形。
(態様13)
態様1〜11のいずれか一項に記載の水性組成物から作製される、カプセル殻。
(態様14)
態様13に記載のカプセル殻を含み、薬物または栄養補助剤または食品補助剤またはこれらの組み合わせをさらに含む、カプセル剤。
(態様15)
カプセル殻を生成するためのプロセスであって、態様1〜11のいずれか一項に記載の水性組成物を提供するステップと、
前記水性組成物よりも高い温度まで成形ピンを予熱するステップと、
前記予熱した成形ピンを、前記水性組成物に浸漬するステップと、
前記ピンを前記水性組成物から引き抜くことにより、前記成形ピン上で膜を形成するステップと、
前記成形ピン上で前記膜を乾燥させるステップと、を含む、プロセス。