(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側フレームが前記第1位置にあるとき、前記外側フレームの前記開放端部部分及び前記内側フレームの前記開放端部部分はそれぞれ、同じ方向に配置され、前記外側フレームが前記第2位置にあるとき、前記外側フレームの前記開放端部部分は、前記内側フレームの前記開放端部部分とは反対の方向に配置される、請求項1に記載の人工心臓弁。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1022] 本明細書では、内側フレームに結合された外側フレームを含む人工心臓弁が説明されている。外側フレーム及び内側フレームは、それらの間に環状空間を規定し、及び、ポケットクロージャが、環状空間の境界をなして、血栓が形成されて保持され得るポケットを形成する。いくつかの実施形態では、人工心臓弁は、内側フレームに結合された外側フレームを含んで、外側フレームが、内側フレームに対する第1位置と、外側フレームが内側フレームに対して裏返しにされる、内側フレームに対する第2位置との間で動かされ得るようにする。そのような実施形態では、ポケットクロージャは伸縮性ポケットカバーを含み、この伸縮性ポケットカバーは、外側フレームが内側フレームに対して第1位置にあるときに、ポケットカバーが第1長さを有する第1位置から、外側フレームが内側フレームに対して第2位置にあるときに、ポケットカバーが第1長さを上回る第2長さを有する第2位置へと動き得る。
【0008】
[1023] いくつかの実施形態では、本明細書で説明する人工心臓弁は、患者の心臓内へと人工弁を送達するための裏返し構成へ動かされるように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、人工弁は、人工弁がバイアスされた拡張構成にあるときに、内側フレームに対して裏返され得る外側フレームを含む。人工僧帽弁は、例えば、形状記憶材料で形成され得る。外側フレームを裏返した後、人工弁は、送達シースのルーメンに挿入され得、人工弁は、潰れた構成へと動かされる。
【0009】
[1024] 送達シースを使用して、本明細書で説明するような裏返された人工弁を、人工心臓弁(例えば、人工僧帽弁)を送達するための様々な異なる送達アプローチを使用して、患者の心臓内へと送達し得、そこで、裏返された人工弁は、心房を通って心臓に入る。例えば、本明細書で説明する人工弁は、上記に参照により援用されている国際特許出願第PCT/US15/14572号(‘572号PCT出願)に説明されているような経大腿送達アプローチ、又は2015年9月18日出願の米国仮特許出願第62/220,704号(「Apparatus and Methods for Transatrial Delivery of Prosthetic Mitral Valve」)、(「‘704号仮出願」)に説明されており、かつ2016年9月14日出願の米国特許出願第15/265,221号(‘221号出願)などに説明されているような経心房アプローチを介して、送達され得、それらの開示全体を本願明細書に援用する。別の例では、本明細書で説明するような裏返された弁は、‘221号出願に説明されているように、経頸静脈アプローチを介して、右心房を経由して心房中隔を通って左心房内へと送達され得る。本明細書で説明する人工弁はまた、所望の場合には、心尖に送達され得る。送達シースが左心房内に配置された後、人工僧帽弁は、送達シースから出て遠位に動かされて、裏返された外側フレームが元に戻り、かつ人工弁がそのバイアスされた拡張構成を取るようにする。その後、人工僧帽弁は、心臓の僧帽弁輪内に位置決めされ得る。
【0010】
[1025] 人工心臓弁100の概略図が
図1A及び
図1Bに示されている。人工心臓弁100(「人工弁」又は「弁」)は、損傷した又は疾患のある自己心臓弁(native heart valve)、例えば僧帽弁の代わりとなるように設計される。弁100は、外側フレームアセンブリ110と、外側フレームアセンブリに結合されている内側弁アセンブリ140とを含む。
【0011】
[1026]
図1A及び
図1Bの外側フレームアセンブリ110の概略図では別個には示さないが、外側フレームアセンブリ110は、外側フレーム120で形成され、及び、その外面の全て又は一部分が外側カバー(図示せず)によって被覆され、及び、その内面の全て又は一部分が内側カバー(図示せず)によって被覆され得る。内側カバー及び外側カバーを示す人工弁の実施形態は、
図3〜
図5につき下記で説明する。いくつかの実施形態では、外側フレームアセンブリ110は、外側フレーム120の外面のみ又は内面のみにカバーを含み得る。いくつかの実施形態では、外側フレーム120の内面及び/又は外面には2層以上のカバーがあり得る。外側フレームアセンブリ110の内側カバー及び外側カバーは、外側フレーム120の内面及び/又は外面を完全に被覆し得るか、又は、外側フレーム120の内面及び/又は外面を部分的に被覆し得る。いくつかの実施形態では、外側フレームアセンブリ110は、外側フレーム120の内面又は外面にカバーを含まなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、外側フレームアセンブリ110は、外側フレーム120の内面には材料又はカバーを含まず、及び、外側フレーム120の外面に2つの層又はカバーが配置され得る。そのような実施形態では、第1層又はカバーは、例えば、外側フレーム120の外面を十分に被覆する組織とし得、及び、最も外側の層又はカバーは、外側フレーム120の一部分のみを被覆する薄いポリエステルとし得る。例えば、最も外側のカバーは、外側フレーム120のカフ部分のセルの1列又は2列を被覆することができる。
【0012】
[1027] 外側フレーム120は、人工心臓弁100に、一次構造として、弁を自己心臓弁器に固着するための固着機構、及び/又は、別個の固着機構用の取付点、内側弁アセンブリ140を支えるための支持体、及び/又は、人工心臓弁100と自己心臓弁器との間の弁周囲逆流(paravalvular leakage)を阻止するためのシールの機能を果たすことを含め、いくつかの機能を提供し得る。
【0013】
[1028] 外側フレーム120は、好ましくは、変形(圧縮及び/又は拡張)させられ、かつ、解放されると、その元の(変形されていない)形状に戻ることができるように、形成される。これを達成するために、外側フレーム120は、好ましくは、形状記憶特性を有する金属やプラスチックなどの材料で形成される。金属に関しては、オーステナイト系、マルテンサイト系又は超弾性となるように処理され得るため、ニチノール(Nitinol)(登録商標)が特に有用であることが分かっている。他の形状記憶合金、例えばCu−Zn−Al−Ni合金、及びCu−Al−Ni合金を使用してもよい。
【0014】
[1029] 外側フレーム120は、好ましくは、ニチノール(登録商標)のレーザー切断された薄壁のチューブから形成される。レーザー切断によって、薄いニチノール(登録商標)チューブに規則的な切り欠き部を形成する。チューブは、半径方向に拡張され、所望の形状の型又はマンドレルに配置され、マルテンサイト系温度に加熱されてから、急冷され得る。このような方法でのフレームの処理は、開放型格子フレーム構造を形成し、及び外側フレーム120の心房端部部分116にフレア状端部又はカフを有し得る。それゆえ、外側フレーム120は形状記憶特性を有し、較正された温度において記憶形状に簡単に戻る。あるいは、外側フレーム120は、編組ワイヤ又は他の好適な材料から構成され得る。
【0015】
[1030]
図2A〜
図2Cに内側弁アセンブリ140をより詳細に概略的に示す。内側弁アセンブリ140は、内側フレーム150、外側カバー160、及び弁尖170を含み得る。
図2Aに概略的に示す単純な形態では、内側フレーム150は、外側カバー160と弁尖170とを支持する6個の軸方向の支柱又はフレーム部材を含む。弁尖170は、
図2Aに接合支柱152として示す、支柱のうちの3つに沿って取り付けられ、及び、外側カバー160は、
図2Aの154である他の3つの支柱に、及び、任意選択的に接合支柱152に取り付けられる。外側カバー160は、内側フレーム150の内面、又は、内側フレーム150の外面に取り付けられ得る。
図2Aに概略的に示すように、外側カバー160及び弁尖170はそれぞれ、ほぼ方形の材料シートで形成され、それらは、それらの上端部、すなわち心房端部において接合される。外側カバー160の下側の心室端部は、外側フレームアセンブリ110(
図2Aには図示せず)の内側カバー(図示せず)に接合され得、及び弁尖170の下側の心室端部は、接合支柱152の下端部に結合されるにもかかわらず、自由縁を形成し得る。いくつかの実施形態では、カバー160及び弁尖170は、単一の方形の材料シートで形成された後、内側フレームに折り重ねられて内側フレームの形状にトリミングされ、材料が折り重ねられる内側フレームの上部に接続されたままとなり得る。いくつかの実施形態では、カバー160及び/又は弁尖170は、方形以外の形状を有する材料、例えば半円形の材料片から形成され得るか、又は内側フレームの形状にレーザー切断され得る。
【0016】
[1031]
図2B及び
図2Cに示すように、弁尖170は、第1又は開放構成(
図2B)と、弁尖170が接合する、又はシール当接式に接触する第2又は閉鎖構成(
図2C)との間で移動可能である。
【0017】
[1032] 下端部すなわち心室端部において、弁尖170の外周は、外側カバー160よりも小さいとし得る。それゆえ、接合支柱152間の弁尖170の自由下縁は(隣接する接合支柱間の弁尖170の各部分は、弁尖170の「腹部」と呼ばれる)、外側カバー160の下縁から半径方向に離間される。この半径方向の間隔によって、収縮期中の心室から心房への血液の逆流が腹部の自由縁を捕らえて弁尖を押して閉鎖し得るので、
図2Bの開放位置から
図2Cの閉鎖位置への弁尖の運動を促す。
【0018】
[1033] 外側フレームアセンブリ110の外側カバー及び内側カバー、外側カバー160及び弁尖170は、任意の好適な材料、又は材料の組み合わせで形成され得る。いくつかの実施形態では、外側フレームアセンブリ110の外側カバー及び内側カバー、外側カバー160及び弁尖170は、組織で形成され得る。いくつかの実施形態では、組織は、任意選択的に、生体組織、例えば、豚などの動物の心臓弁からの化学的に安定化させた組織、又は、牛(ウシ心膜)又は羊(ヒツジ心膜)又は豚(ブタ心膜)又は馬(ウマ心膜)などの動物の心膜組織である。好適な組織の例は、製品Duraguard(登録商標)、Peri-Guard(登録商標)、及びVascu-Guard(登録商標)に使用されているものを含み、これら製品は全て、現在、外科的処置において使用されており、及び一般的に30か月未満のウシから摘出されているとして販売されている。あるいは、弁尖170は、任意選択的に、心膜組織又は小腸粘膜下組織から作製され得る。
【0019】
[1034] 合成材料、例えばポリウレタン又はポリテトラフルオロエチレンも弁尖170に使用され得る。薄くて耐久性のある合成材料が、例えば外側フレームアセンブリ110の外側カバー又は内側カバーに考えられ、例えば伸展ポリテトラフルオロエチレン又はポリエステルなどの合成ポリマー材料が任意選択的に使用され得る。他の好適な材料は、任意選択的に、熱可塑性ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、セグメント化ポリエーテルウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、シリコーン−ポリカーボネートウレタン、及び超高分子量ポリエチレンを含む。追加的な生体適合性ポリマーは、任意選択的に、ポリオレフィン、エラストマー、ポリエチレン−グリコール、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、他のフルオロポリマー、シリコーンポリエステル、シロキサンポリマー及び/又はオリゴマー、及び/又はポリラクトン、及びそれらを使用するブロックコ−ポリマーを含み得る。
【0020】
[1035] 別の実施形態では、弁尖170は、任意選択的に、これに限定されるものではないが、固定化ヘパリンなどの抗凝固薬で処理された(又はそれと反応した)表面を有し得る。そのような現在入手可能なヘパリン化ポリマーが当業者には知られており、かつ、利用可能である。
【0021】
[1036]
図1A、
図1B、及び
図2Aに示すように、内側弁アセンブリ140は、実質的にシリンダー状としてもよく、及び、外側フレームアセンブリ110は、下側の心室部分112(内側弁アセンブリ140に結合される箇所)におけるより小さい直径(内側弁アセンブリ140の外径よりもわずかに大きい)から、より大きい直径の心房部分116まで延在してテーパが付けられてもよく、心房部分116と心室部分112との間にはそれぞれ中間の直径の輪部分114がある。
【0022】
[1037] それゆえ、内側弁アセンブリ140の外表面と外側フレームアセンブリ110の内表面との間にはテーパ付の環状空間又はポケット185(本明細書では「心房ポケット」とも称す)が形成され、弁アセンブリ100の心房端部に開口している。弁アセンブリ100が自己心臓弁輪に配置されると、心房からの血液は、ポケット185に出入りすることができる。血液は凝固して血栓を形成することがある。凝固、弁100の表面への組織の内方成長(ingrowth)を強めるため、及び、他の利点を生じるために、ポケットは、ポケットクロージャ180(「心房ポケットクロージャ」とも称す)によって覆われ得るか、又は囲まれ得る。
【0023】
[1038] ポケットクロージャ180は、少なくとも一部は、任意の好適な材料で形成され得、この材料は、特に赤血球を含む血液がポケット185に入ることができるように十分に大きな細孔の多孔質であるが、不必要に大きい血栓がポケット185から離れることができるようにする程の大きさの細孔の多孔質ではないとし得る。例えば、ポケットクロージャ180は、少なくとも一部は、アパーチャが160μ未満及び好ましくは90μ〜120μの織り又は編みのポリエステルファブリックから形成され得る。いくつかの実施形態では、ポケットクロージャ180は、少なくとも一部は、所望の大きさの細孔での多孔性を有する編組ニチノール材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、ポケットクロージャ180は、少なくとも一部は、編組のチューブ状ニチノール材料から形成され得る。ポケットクロージャ180全体が同じ多孔性の同じ材料から形成される必要はない。例えば、ポケットクロージャ180のいくつかの部分は、あまり多孔質ではない、又は血液不透過性の材料で形成され、及び他の部分は、上述の多孔性の範囲の材料で形成され得る。外側フレームアセンブリ110の一部分、又は内側弁アセンブリ140は、所望の多孔性を有する材料で形成されたクロージャによって覆われたポケット180と連通するアパーチャを備えて形成され得るため、血液は入り得るが血栓は心房ポケット185から離れないようにする別の経路を提供することも考慮される。
【0024】
[1039] 内側弁アセンブリ110の外表面、及び/又は、外側フレームアセンブリ140の内表面は、
図1A及び
図1Bに概略的に示すように横断面が円形である必要はないが、弁100の中心軸に沿った所与の箇所において半径は一定でないとし得る。それゆえ、ポケット185は、一定の横断面でなくても、及び連続的でなくてもよく、むしろ、2つ以上の流体的に隔離された、部分的に環状の体積部に形成され得る。同様に、ポケットクロージャ180は、
図1A及び
図1Bに概略的に示すように一定の幅のリング形状である必要はなく、むしろ、より複雑な連続的な形状の、可変の連続的なリングとし得るか、又は複数の別個のセクションに形成され得る。いくつかの実施形態では、ポケットクロージャ180は、内部領域を規定するチューブ状部材として形成され得る。
【0025】
[1040] ポケットクロージャ180は、ポケット185内の血流を止める及び/又は遅くする働きをし、ポケット185での血栓の形成及び保持を増大させ得る。また、人工心臓弁100のいくつかのカバーへの自己組織のアクティブな内方成長を促進し、自己心臓弁において弁100をさらに安定化させる。内側弁アセンブリ140の外側カバーを形成する材料はまた、硬化又は強化され、弁尖170をより良好に支持し得る。また、血栓の塊が充満しているポケット185は、内側弁アセンブリ140を入れるポット(potting)としての機能を果たし、弁アセンブリをさらに安定化させ得る。内側弁アセンブリ140の安定性を高めることによって、弁尖170により信頼性の高い接合、それゆえより効果的な性能を提供し得る。血栓の塊はまた、自己弁器に取り付けられかつそれに柔軟に適合された後、外側フレームアセンブリ110を安定化させ得る。これは、人工心臓弁100と自己弁器との間により効果的なシールを提供して、弁周囲逆流(perivalvular leakage)を減少させ得る。
【0026】
[1041]
図3〜
図5は、それぞれ、実施形態による人工心臓弁200の前面図、底面図、及び上面図である。人工心臓弁200(本明細書では「弁」又は「人工弁」とも称す)は、損傷した又は疾患のある自己心臓弁、例えば僧帽弁に代わるものとして設計される。弁200は、外側フレームアセンブリ210と、外側フレームアセンブリ210に結合された内側弁アセンブリ240とを含む。
【0027】
[1042] 図示の通り、外側フレームアセンブリ210は外側フレーム220を含み、外側フレームは、その外面の全て又は一部分が外側カバー230で被覆され、かつその内面の全て又は一部分が内側カバー232によって被覆されている。外側フレーム220は、人工心臓弁200に、一次構造として、弁を自己心臓弁器に固着するための固着機構、及び/又は別個の固着機構のための取付点、内側弁アセンブリ240を支える支持体、及び/又は人工心臓弁200と自己心臓弁器との間の弁周囲逆流を抑制するシールの機能を果たすことを含め、いくつかの機能を提供し得る。
【0028】
[1043] 外側フレーム220は、バイアスされた拡張構成を有し、及び、操作及び/又は変形(例えば、圧縮及び/又は拘束)させられ、解放されると、その元の変形されていない形状に戻る。これを達成するために、外側フレーム220は、形状記憶特性を有する金属やプラスチックなどの材料で形成され得る。金属に関しては、オーステナイト系、マルテンサイト系又は超弾性となるように処理され得るため、ニチノール(登録商標)が特に有用であることが分かっている。他の形状記憶合金、例えばCu−Zn−Al−Ni合金、及びCu−Al−Ni合金を使用してもよい。
【0029】
[1044]
図3に最もよく示すように、外側フレームアセンブリ210は、(例えば、心房部分216にある)上端部、(例えば、心室部分212にある)下端部、及びそれらの間の(例えば、輪部分214にある)内側部分を有する。上端部又は心房部分216(「自由端部部分」又は「開放端部部分」とも称す)は、外側フレームアセンブリ210の開放端部部分を規定する。外側フレームアセンブリ210の内側又は輪部分214は、自己房室弁輪に収まるように構成される(例えば、そのようなサイズ、形状にされる)外周を有する。外側フレームアセンブリ210の上端部の外周は、内側部分の外周よりも大きい。いくつかの実施形態では、外側フレームアセンブリ210の上端部の外周は、内側部分の外周よりも実質的に大きい外周を有する。
図5に最もよく示すように、外側フレームアセンブリ210の上端部及び内側部分は、D字形状の横断面を有する。このように、外側フレームアセンブリ210は、自己房室弁輪に好適に収めるのを促す。
【0030】
[1045] 内側弁アセンブリ240は、内側フレーム250、外側カバー260、及び弁尖270を含む。図示の通り、内側弁アセンブリ240は、複数のアーチで形成された周辺を有する上側部分を含む。内側フレーム250は、外側カバー260及び弁尖270を支持する6個の軸方向の支柱又はフレーム部材を含む。弁尖270は、接合支柱252(
図4に最もよく示す)として示す支柱のうちの3つに沿って取り付けられ、及び外側カバー260は、他の3つの支柱254(
図4に最もよく示す)に、及び任意選択的に接合支柱252に取り付けられる。外側カバー260及び弁尖270はそれぞれ、外側カバー160及び弁尖170に関して上記で説明したように形成され得る。例えば、外側カバー260及び弁尖270はそれぞれ、それらの上端部又は心房端部において接合されるほぼ方形の材料シートで形成され得る。外側カバー260の下側の心室端部は、外側フレームアセンブリ210の内側カバー232に接合され、及び弁尖270の下側の心室端部は、接合支柱252の下端部に結合されているが、自由縁275を形成し得る。
【0031】
[1046] 内側弁アセンブリ240は、3つの弁尖を有するとして示すが、他の実施形態では、内側弁アセンブリは、任意の好適な数の弁尖を含み得る。弁尖270は、開放構成と、弁尖270が接合する、又はシール当接式に接触する閉鎖構成との間で移動可能である。
【0032】
[1047] 外側フレームアセンブリ210の外側カバー230及び外側フレームアセンブリ210の内側カバー232、内側弁アセンブリ240の外側カバー260及び内側弁アセンブリ240の弁尖270は、弁100に関して上記で説明したような任意の好適な材料、又は材料の組み合わせで形成され得る。この実施形態では、外側フレームアセンブリ210の内側カバー232、内側弁アセンブリ240の外側カバー260、及び内側弁アセンブリ240の弁尖270は、少なくとも一部は、ブタ心膜で形成される。さらに、この実施形態では、外側フレームアセンブリ210の外側カバー230は、少なくとも一部は、ポリエステルで形成される。
【0033】
[1048] 人工弁200はまた、内側弁アセンブリ240の外表面と外側フレームアセンブリ210の内表面との間に形成されたテーパ付の環状空間又はポケット(図示せず)を規定し、弁アセンブリ200の心房端部に開口している。図示の通り、ポケットクロージャ又はカバー280(ポケットは、
図5の上面図ではポケットクロージャ280の下側に配置されている)は、内側弁アセンブリ240の上端部の周辺に沿って、及びまた外側弁アセンブリ210に結合されている。いくつかの実施形態では、ポケットクロージャ280、又はその一部分は、内側弁アセンブリ240の任意の好適な部分に沿って結合され得る。
【0034】
[1049] 上述の通り、ポケットクロージャ280は、少なくとも一部は任意の好適な材料で形成され、この材料は、特に赤血球を含む血液がポケットに入ることができるように十分に大きな細孔の多孔質であるが、不必要に大きい血栓がポケットから離れることができるようにする程の大きさの細孔の多孔質ではないとし得る。この実施形態では、ポケットクロージャ280は、全体的に、アパーチャが約90〜120ミクロンの編みのポリエステル(すなわち、PET縦編みファブリック)で形成される。いくつかの実施形態では、ポケットクロージャは、約160ミクロン未満のアパーチャを含み得る。
【0035】
[1050] 既に説明した通り、いくつかの実施形態では、人工心臓弁、例えば人工僧帽弁は、患者の心臓内へと人工弁を送達するための裏返し構成へ動かされるように構成され得る。例えば、外側フレームは、弁の内側フレームに対して動かされ得るか又は裏返しにされ得る。外側フレームを裏返した後、人工弁は、送達シースのルーメンに挿入されて、人工弁が、心臓まで弁を送達するための潰れた構成まで動かされ得る。
図6A〜
図6D及び
図7A及び
図7Bは、使用するためのバイアスされた拡張構成と、心臓まで送達するための裏返し構成との間で動かされ得る人工弁の実施形態を概略的に示す。
【0036】
[1051]
図6A及び
図6Bは、それぞれ第1構成及び第2構成において示す、実施形態による人工心臓弁300の一部分の概略図であり、及び
図6C及び
図6Dは、送達シース326のルーメン内に配置された状態で示される、それぞれ
図6A及び
図6Bの人工心臓弁300の部分を示す。
図7A及び
図7Bは、それぞれ
図6A及び
図6Bの人工心臓弁300の一部分を示し、及び第1構成及び第2構成のそれぞれにおける人工心臓弁の長さ寸法を示す。人工心臓弁300(本明細書では、「人工弁」又は「弁」とも称す)は、例えば、人工僧帽弁とし得る。弁300は、外側フレーム320及び内側フレーム350を含む。外側フレーム320及び内側フレーム350は、それぞれ、チューブ状構造として形成される。外側フレーム320及び内側フレーム350は、下記でより詳細に説明するように、内側フレーム350の外周及び外側フレーム320の外周に配置される複数のカップリング継手346において結合され得る。弁300はまた、
図1〜
図5に関して上記で説明したものなどの他の特徴を含み得る。例えば、弁300は、
図1〜
図5に関して上記で説明した外側フレームアセンブリ及び内側弁アセンブリと同じ又は同様に形成又は構成され得る、外側フレーム320を含む外側フレームアセンブリと、内側フレーム350を含む内側弁アセンブリとを含み得る。説明のために、内側フレーム350及び外側フレーム320のみを
図6A〜
図7Bに関して説明する。
図6A〜
図7Bに関して説明された弁300の様々な特性及び特徴は、ここで説明する人工弁のいずれにも適用され得る。
【0037】
[1052] 外側フレーム320は、バイアスされた拡張された、すなわち変形されていない形状を有するように構成され、及び操作及び/又は変形(例えば、圧縮又は拘束)され、解放されると、その元の(拡張されたすなわち変形されていない)形状に戻り得る。例えば、外側フレーム320は、形状記憶特性を有する金属やプラスチックなどの材料で形成され得る。金属に関しては、オーステナイト系、マルテンサイト系又は超弾性となるように処理され得るため、ニチノール(登録商標)が特に有用であることが分かっている。他の形状記憶合金、例えばCu−Zn−Al−Ni合金、及びCu−Al−Ni合金を使用してもよい。内側フレーム350は、ニチノール(登録商標)のレーザー切断されたチューブから形成され得る。内側フレーム350も、バイアスされた拡張された、すなわち変形されていない形状を有し、及び操作及び/又は変形(例えば、圧縮及び/又は拘束)され、解放されると、その元の(拡張されたすなわち変形されていない)形状に戻り得る。内側フレーム350及び外側フレーム320に関するさらなる詳細について、下記で及び弁200及び
図3〜
図5に関して説明する。
【0038】
[1053] 弁300は、例えば、‘572号PCT出願に説明されているような経大腿送達アプローチ、又は‘704号仮出願及び‘221号出願に説明されているような経心房アプローチ、又は例えば、‘221号出願に説明されているような経頸静脈アプローチを含む、様々な異なる送達アプローチを使用して、左心房内に送達されて展開され得る。上述の通り、場合によっては、例えば経大腿、経頸静脈又は経心房アプローチを介して人工弁を心臓に送達するとき、送達シースのルーメンのサイズが小さいため、送達の最中、人工弁のサイズは、それに応じたサイズにされる必要がある。それゆえ、心臓(例えば、自己僧帽弁輪内)に移植するためのバイアスされた拡張構成と、送達シースのルーメン内で送達できるようにするためのより小さい外周又はプロファイルを有する送達構成との間で再構成され得る人工弁を有することが望ましい。人工弁300、及び本明細書で説明する人工弁の実施形態は、これらの所望の機能及び特性を達成するように構成及び形成され得る。
【0039】
[1054] より具体的には、弁300は、バイアスされた拡張構成(
図6A及び
図7Aに示すような)、裏返し構成(
図6B及び
図7Bに示すような)、及び圧縮された又は潰れた構成(
図6C及び
図6Dに示すような)を有し得る。拡張構成は、心臓内に移植されたときに弁300が機能できるようにする。弁300は、患者の心臓まで弁300を送達するために、裏返し構成及び圧縮された又は潰れた構成へと動かされ得る。
【0040】
[1055] 弁300を裏返し構成へと動かすことができるようにするために、外側フレーム320は、外側フレーム320が内側フレーム350に対して動くことができるように、内側フレーム350に結合され得る。より具体的には、カップリング継手346は、外側フレーム320が内側フレーム350に対して動かされることができるように、外側フレーム320を内側フレーム350に結合し得る。例えば、いくつかの実施形態では、カップリング継手346は、外側フレーム320がカップリング継手346の周りで内側フレーム350に対して回転できるように、構成され得る。いくつかの実施形態では、カップリング継手は、外側フレーム320と内側フレーム350との間の枢結部を提供し得る。いくつかの実施形態では、カップリング継手は、外側フレーム320と内側フレーム350との間の柔軟な取り付け部を提供し得る。カップリング継手346は、人工弁の様々な実施形態を参照して本明細書で説明するような様々な異なるタイプ及び構成とし得る。例えば、カップリング継手146は、一体丁番、柔軟性部材、複数の縫合糸、開口部を通して巻き付けられた縫合糸、開口部を通して挿入されたピン又はタブ又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0041】
[1056] 弁300を拡張構成(
図6A)から裏返し構成(
図6B)へ動かすために、外側フレーム320は、カップリング継手346の周りで外側フレーム320を動かす(例えば、回転させる、枢動させる、屈曲させる)ことによって、
図6B、
図6D及び
図7Bに示すような、内側フレーム350に対して脱出したすなわち裏返し構成へと動かされる。弁300の外側フレーム320の弾性又は超弾性構造はまた、外側フレーム320が、内側フレーム350に対して、脱出したすなわち裏返し構成へと動かされ、かつそこに配置できるようにする。外側フレーム320を、内側フレーム350に対して裏返し構成に動かすために、外側フレーム320は、カップリング継手346を介して内側フレーム350に対して遠位に(
図6Bでは右側へ)折り畳まれるか又は裏返される。
図6A及び
図7Aに示すように、外側フレーム320は、裏返しにされる前に、内側フレーム350に対して第1位置にあり、ここでは、開放又は自由端部部分316(外側フレーム320の心房部分316とも称す)が近位に又はカップリング継手346の左側に、及び内側フレーム350の自由端部部分347(内側フレームの第2端部部分とも称す)と同じ方向に配置される。外側フレーム320が裏返し構成(すなわち、内側フレーム350に対して第2位置)へ動かされると、自由端部部分316は、カップリング継手346の遠位に(すなわち、
図6B及び
図7Bにおいて右側に)、及び内側フレーム350の自由端部部分347とは反対の方向に配置される。換言すると、弁300が、バイアスされた拡張構成(例えば、
図6A)にあるとき、カップリング継手346は、内側フレーム350の第1端部部分344(テザー結合部分とも称す)と、外側フレーム320の自由端部部分316との間に配置される。弁300が、裏返し構成(例えば、
図6B)にあるとき(すなわち、外側フレーム320が、裏返し構成又は位置まで動かされている)、カップリング継手346は、内側フレーム350の自由端部部分又は第2端部部分347と、外側フレーム320の自由端部部分316との間に配置される。
【0042】
[1057] 裏返し構成にあるとき、弁300の全長は長くなるが、内側フレーム350の長さ及び外側フレーム320の長さは同じ(又は実質的に同じ)ままである。例えば、
図7A及び
図7Bに示すように、バイアスされた拡張構成(
図7Aに示すように裏返しにされる前)の弁300の全長L1は、裏返し構成(
図7B)にあるときの弁300の全長L2を下回る。内側フレーム350の長さLi及び外側フレーム320の長さLoは、弁300がバイアスされた拡張構成及び裏返し構成の双方にあるとき、実質的に同じ(又は同じ)である。さらに、場合によっては、外側フレームの特定の構成に依存して、弁300の全周又は外径は、弁300が裏返し構成にあるときに、より小さくなるとし得る。
【0043】
[1058] 弁300が裏返し構成にある状態で、
図6Dに示すように、弁300は、弁300を左心房に送達するために、送達シース326のルーメン内に配置され得る。送達シース326のルーメン内に配置されると、弁300は、潰れた又は圧縮された構成へ動かされ、ここでは、弁300の外径又は外周が小さくなる。弁300が裏返し構成にあるため、弁300は、そうでない場合に可能であるよりも細い送達シース326内に配置されることができる。例えば、比較のために、
図6Cは、送達シース326’のルーメン内に配置された弁300を示し、ここでは、弁300は、送達シース326’内に配置される前に、裏返し構成へと動かされていない。
図6Cに示すように、弁300の外径は小さくされるが、裏返し構成にあるときに送達シース326内に配置されるときの弁100の直径ほどは小さくされない。それゆえ、
図6Cでは、弁300は全周又は外径D1を有し、及び
図6Dでは、弁300は、D1を下回る全周又は外径D2を有する。
【0044】
[1059] それゆえ、裏返し構成に外側フレーム320を配置することによって、弁300は、弁300が単に半径方向に潰された場合に可能であるものよりも小さい全径に潰され得る、すなわちより小さい直径の送達シース326に配置され得る。これは、弁がバイアスされた拡張構成にあるとき、内側フレーム350が、外側フレーム320の内部に入れ子にされ、それゆえ、外側フレーム320は内側フレーム350の周りで潰される必要があるためである。いくつかの実施形態では、内側フレーム350及び外側フレームは同心状に配置される。裏返し構成である一方で、内側フレーム350及び外側フレーム320は、互いに対して軸方向に配置され(すなわち、内側フレームは、外側フレーム350内に入れ子にされない)、外側フレーム320は、内側フレーム350の構造全てをその内部に収容する必要なく、潰され得る。換言すると、内側フレーム350がほとんど外側フレーム320の内側に配置されるか又は入れ子にされる状態で、フレーム構造の複数の層又は大部分は、直径を小さくするように圧縮されることができない。さらに、フレームが入れ子にされる場合、構造はあまり柔軟性がなく、それゆえ、例えば曲がりくねった血管系を通過するように弁を曲げるためには、又は心房中隔を通過した後、僧帽弁輪内へ挿入するための適切な向きになるように左心房において鋭角で曲がるためには、より大きな力が必要とされる。
【0045】
[1060]
図8A及び
図8Bは、様々な異なる送達アプローチを使用して左心房内に送達されて展開され得、及び弁300に関して上記で説明した通り拡張構成と裏返し構成との間で動かされ得る人工心臓弁の別の実施形態を示す。人工心臓弁400(本明細書では、「人工弁」又は「弁」とも称す)は、例えば、人工僧帽弁とし得る。弁400は、外側フレーム420を含む外側フレームアセンブリと、内側フレーム450を含む内側弁アセンブリとを含む。外側フレーム420及び内側フレーム450は、それぞれ、チューブ状構造として形成される。弁400はまた、
図1A〜
図7Dに関して上記で説明したものなどの他の特徴を含み得る。説明のために、内側フレーム450及び外側フレーム420のみについて
図8A〜
図8Bに関して説明する。
図1A〜
図7Dに関して上記で説明した弁の様々な特性及び特徴が、弁400に適用されることを理解されたい。
【0046】
[1061] 外側フレーム420及び内側フレーム450は、弁300に関して上記で説明したように、内側フレーム450の外周及び外側フレーム420の外周に配置される複数のカップリング継手446において結合され得る。カップリング継手446は、弁300に関して上記で説明したように、内側フレーム450に対して外側フレーム420を動かすことができるようにする。例えば、外側フレーム420は、内側フレーム450に対する第1位置(
図8A)と、内側フレーム450に対する第2位置(
図8B)との間で動かされ得る。第1位置では、外側フレーム420の開放自由端部部分416は、内側フレーム450の開放自由端部部分447と同じ方向に配置される(
図8A参照)。第2位置では、外側フレーム420は、内側フレーム450に対して裏返されて、外側フレーム420の自由端部部分416が、ここでは、内側フレーム450の自由端部部分447とは反対の方向に配置されるようにする(
図8B参照)。
【0047】
[1062] 弁100及び200に関して上記で説明したように、内側弁アセンブリの外表面と外側フレームアセンブリの内表面との間にテーパ付の環状空間又はポケット485(「心房ポケット」とも称す)が形成され、弁400の心房端部に開口している。弁400が自己心臓弁輪に配置されると、心房からの血液が、ポケット485に出入りすることができる。血液は凝固して血栓を形成することがある。凝固、弁400の表面への組織の内方成長を強めるため、及び他の利点を生じるために、ポケット485は、ポケットクロージャ480(「心房ポケットクロージャ」とも称す)によって覆われ得るか、又は囲まれ得る。ポケットクロージャ480は、内側フレーム450の外周及び外側フレーム420の外周に結合されて、弁400の心房端部においてポケット485を終わらすようにする。
図8A及び
図8Bに示すように、ポケットクロージャ480は、結合部分482において内側フレーム450に、及び結合部分483において外側フレーム420に結合される。ポケットクロージャ480は、材料の1つの連続的なセグメント又は部分で形成され得るか、又は結合されている2つ以上の部分又はセグメントで形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポケットクロージャ480は、縫合糸又は他の好適な結合方法で縫われている3つの部分又はセグメントで形成され得る。
【0048】
[1063] 上述の通り、ポケットクロージャ480は、少なくとも一部は、任意の好適な材料で形成され得、この材料は、特に赤血球を含む血液がポケット485に入ることができるように十分に大きな細孔の多孔質であるが、不必要に大きい血栓がポケット485から離れることができるようにする程の大きさの細孔の多孔質ではないとし得る。例えば、ポケットクロージャ480は、少なくとも一部は、アパーチャが160μ未満、及び好ましくは90μ〜120μの材料から形成され得る。この実施形態では、ポケットクロージャ480は、少なくとも一部は、所望の大きさの細孔での多孔性を有する編組ニチノール材料(又は編組のチューブ状ニチノール材料)から形成され得る。編組ニチノール材料はまた、内側フレーム450に対する第1位置と、内側フレーム450に対する第2裏返した位置との間での外側フレーム420の動きに対応するように、所望の伸縮性、柔軟性又は変形性を提供する。例えば、編組ニチノール材料は、ポケットクロージャ480が変形及び/又は伸張され、その後、解放されると、元の形状又は構成へと元に戻ることができる形状記憶特性を有し得る。
【0049】
[1064]
図8Aに示すように、外側フレーム420が、内側フレーム450に対して第1位置にあるとき、ポケットクロージャ480は第1構成に配置される。
図8Bに示すように、外側フレーム420が内側フレーム450に対して第2位置(すなわち、裏返された)にあるとき、ポケットクロージャ480は第2構成に配置される。より具体的には、外側フレーム420が、外側フレーム420が内側フレーム420に対して裏返される第2位置に動かされると、ポケットクロージャ480の材料及び構造は、
図8Bに示すように、ポケットクロージャ480が外側フレーム420と一緒に伸張できるようにする。換言すると、
図8Bに示すように、ポケットクロージャ480は、内側フレーム(すなわち、結合部分482)に結合されている箇所と、外側フレーム(すなわち、結合部分483)に結合されている箇所との間で、外側フレーム420が
図8Aに示すように第1位置にあるときを上回る長さまで、伸張されるか又は細長くされる。外側フレーム420が内側フレーム450に対して第1位置まで戻るように動かされると、ポケットクロージャ480は、
図8Aに示すように、その第1構成を取り得る。
【0050】
[1065]
図9A及び
図9Bは、弁の送達及び左心房内での展開のために、拡張構成と裏返し構成との間で動かされている弁に適合し得るポケットクロージャを含む人工心臓弁の別の実施形態を示す。人工心臓弁500(本明細書では、「人工弁」又は「弁」とも称す)は、例えば、人工僧帽弁とし得る。弁500は、外側フレーム520を含む外側弁アセンブリと、内側フレーム550を含む内側弁アセンブリとを含む。外側フレーム520及び内側フレーム550はそれぞれ、チューブ状構造として形成される。弁500はまた、
図1A〜
図7Dに関して上記で説明したようなものなどの他の特徴を含み得る。説明のために、内側フレーム550及び外側フレーム520のみを
図8A〜
図8Bに関して説明する。
図1A〜
図7Dに関して上記で説明した弁の様々な特性及び特徴が、弁500に適用され得ることを理解されたい。
【0051】
[1066] 先の実施形態のように、外側フレーム520及び内側フレーム550は、弁300に関して上記で説明した通り、内側フレーム550の外周及び外側フレーム520の外周に配置された複数のカップリング継手546において結合され得る。カップリング継手546は、弁300に関して上記で説明した通り、外側フレーム520を内側フレーム550に対して動かすことができるようにする。例えば、外側フレーム520は、内側フレーム550に対する第1位置(
図9A)と、内側フレーム550に対する第2位置(
図9B)との間で動かされ得る。第1位置では、外側フレーム520の開放自由端部部分516は、内側フレーム550の開放自由端部部分547と同じ方向に配置される(
図9A参照)。第2位置では、外側フレーム520は、内側フレーム550に対して裏返されて、外側フレーム520の自由端部部分516が、ここでは、内側フレーム550の自由端部部分547とは反対の方向に配置される(
図9B参照)。
【0052】
[1067] 弁100及び200に関して上記で説明した通り、内側弁アセンブリの外表面と外側フレームアセンブリの内表面との間にテーパ付の環状空間又はポケット585(「心房ポケット」とも称す)が形成され、弁500の心房端部に開口している。弁500が自己心臓弁輪に配置されると、心房からの血液が、ポケット585に出入りすることができる。血液は凝固して血栓を形成することがある。凝固、弁500の表面への組織の内方成長を強めるため、及び他の利点を生じるために、ポケット585は、ポケットクロージャ580(「心房ポケットクロージャ」とも称す)によって覆われ得るか、又は囲まれ得る。
【0053】
[1068] この実施形態では、ポケットクロージャ580は第1部分584を含み、この第1部分は第2部分586に結合されている。
図9Bの詳細図に示すように、第1部分584は、カップリング継手587において外側フレーム520に結合された第1端部と、カップリング継手588において第2部分586に結合された第2端部とを含む。第2部分586は、カップリング継手588において第1部分584に結合された第1端部と、カップリング継手589において外側フレーム520に結合された第2端部とを有する。それゆえ、この実施形態では、ポケットクロージャ580は、外側フレーム520にのみ結合される。ポケットクロージャ580は、弁500の心房端部においてポケットを終わりにし得る。ポケットクロージャ580の第1部分584及び第2部分586は、それぞれ、材料の1つの連続的なセグメント又は部分として形成され得るか、又は例えば、縫合糸又は他の好適な結合方法によって結合される2つ以上の部分又はセグメントによって形成され得る。
【0054】
[1069] 上述の通り、ポケットクロージャ580は、少なくとも一部は、任意の好適な材料で形成され得、この材料は、特に赤血球を含む血液がポケット585に入ることができるように十分に大きな細孔の多孔質であるが、不必要に大きい血栓がポケット585から離れることができるようにする程の大きさの細孔の多孔質ではないとし得る。例えば、ポケットクロージャ580は、少なくとも一部は、アパーチャが160μ未満、及び好ましくは90μ〜120μの材料から形成され得る。この実施形態では、ポケットクロージャ580の第1部分584は、少なくとも一部は、アパーチャが160μ未満、及び好ましくは90μ〜120μの織り又は編みのポリエステルファブリックから形成され得る。ポケットクロージャ580の第2部分586は、弁400に関して上記で説明したように、内側フレーム550に対する第1位置と、内側フレーム550に対する裏返した第2位置との間で動く外側フレーム520に対応するように、所望の伸縮性又は柔軟性又は変形性を提供し得るチューブ状の編組ニチノール材料で形成され得る。
【0055】
[1070]
図9Aに示すように、外側フレーム520が、内側フレーム550に対して第1位置にあるとき、ポケットクロージャ580は第1構成に配置される。
図9Bに示すように、外側フレーム520が内側フレーム550に対して第2位置にあるとき(すなわち、裏返されている)、ポケットクロージャ580は第2構成に配置される。より具体的には、外側フレーム520が、外側フレーム520が内側フレーム520に対して裏返される第2位置に動かされると、ポケットクロージャ580の第2部分586の材料及び構造は、
図9Bに示すように、ポケットクロージャ580が外側フレーム520と一緒に伸張できるようにする。換言すると、
図9Bに示すように、ポケットクロージャ580の第2部分586は、ポケットクロージャ580の第1部分584に結合されている箇所(すなわち、カップリング継手588)と、外側フレーム520に結合されている箇所(すなわち、結合部分589)との間で、
図9Aに示すような外側フレーム520が第1位置にあるときを上回る長さまで、伸張し得るか又は細長くなり得る。ポケットクロージャ580の第1部分584は、外側フレーム520が内側フレーム550に対して第2位置に動かされる(すなわち、裏返される)ときには伸張しない。外側フレーム520が、内側フレーム550に対して第1位置に戻るように動かされると、ポケットクロージャ580は、
図9Aに示すようなその第1構成を取り得る。
【0056】
[1071] 人工心臓弁のいくつかの実施形態では、先の実施形態に関して上記で説明した外側カバー(例えば、外側カバー160)に加えて、追加的な材料層が内側フレームに取り付けられ得る。追加的な材料層は、弁の内側フレームの内面又は外面に取り付けられ得る。例えば、追加的な材料層は、内側フレームの内面に、及び弁の弁尖の外部に取り付けられ得る。換言すると、外側カバーは、弁尖と追加的な材料層との間に配置され、3つの構成要素全て(弁尖、外側カバー及び追加的な材料層)が弁の内側フレームの内側に配置され得る。追加的な材料層は、弁尖の腹部領域に発生し得る膨らみを防止することが望ましいとし得る。そのような膨らみは、例えば、弁尖を閉鎖させ得る背圧も弁尖の腹部領域に圧力を加えるときに、発生し得、それらを、外側フレームに向かってポケット領域内へと突出させる可能性がある。追加的な材料層は、様々な異なる材料で構成され得る。
図10A〜
図10Cは、そのような材料層625を含む人工心臓弁600を示す。この実施形態では、材料層625は、内側フレーム650のベース622から内側フレーム650の先端又は心房端部624まで内側フレーム650を被覆するシリンダーとして配置される。
図10A及び
図10Bに示すように、弁600は弁尖670を含む。
図10Cに示すように、シリンダー状に配置された材料層625は、フレーム650の先端624を橋渡しする。代替的な実施形態では、
図10Dに示すように、材料層は、内側フレームの形状に従うように構成され得る。この実施形態では、弁600’は、内側フレーム650の形状に実質的に従うすなわち一致する材料層625’を含む。換言すると、材料層625’は、内側フレーム650のフレーム部分間に広がる。いくつかの実施形態では、材料層625、625’は、例えば、ポリエステル材料とし得る。
【0057】
[1072] 様々な実施形態を上記で説明したが、それらは、限定ではなく、例として提示されたにすぎず、及びそのようなものとして、形態及び/又は詳細において様々な変更がなされ得ることを理解されたい。本明細書で説明した装置及び/又は方法のいずれの部分も、特に明示されない限り、任意の好適な組み合わせに組み合わせられ得る。本明細書で説明した実施形態は、説明した異なる実施形態の機能、構成要素、及び/又は特徴の様々な組み合わせ及び/又はサブコンビネーションを含み得る。
【0058】
[1073] 上述の方法が、いくつかの事象がある順序で発生することを示す場合、いくつかの事象の順序及び/又は流れのパターンは、修正され得る。さらに、いくつかの事象は、可能であるときには、並行するプロセスにおいて同時に実施されても、及び連続的に実施されてもよい。