(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795594
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両用電力変換装置および鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20201119BHJP
B60L 50/13 20190101ALI20201119BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20201119BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20201119BHJP
B61C 7/04 20060101ALI20201119BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20201119BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20201119BHJP
【FI】
B60L3/00 JZHV
B60L50/13
B60L1/00 G
B60L9/18 A
B61C7/04
H02M7/493
H02M7/48 M
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-528465(P2018-528465)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2017023625
(87)【国際公開番号】WO2018016275
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-141008(P2016-141008)
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一史
(72)【発明者】
【氏名】山口 智司
(72)【発明者】
【氏名】小暮 浩史
(72)【発明者】
【氏名】望月 健人
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇弘
【審査官】
大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−53976(JP,A)
【文献】
特開2009−254206(JP,A)
【文献】
特開2003−274509(JP,A)
【文献】
特開2015−16815(JP,A)
【文献】
特開2010−284032(JP,A)
【文献】
特開2003−34132(JP,A)
【文献】
特開2014−140294(JP,A)
【文献】
特開2014−187783(JP,A)
【文献】
特開2013−115995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12,7/00−13/00
B60L 15/00−58/40
B61C 7/04
H02M 7/48,7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床下にエンジンと共に搭載された車両用電力変換装置であって、
前記エンジンの回転力により発電を行う発電機で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記直流電力を車両駆動用モータに供給するための交流電力に変換する第1のインバータと、
前記直流電力を補機に供給するための交流電力に変換する第2のインバータと、
前記第1のインバータを構成する素子の温度を測定する第1の温度センサと、
前記第2のインバータを構成する素子の温度を測定する第2の温度センサと、
前記コンバータを構成する素子の温度を測定する第3の温度センサと、
前記コンバータ並びに前記第1および前記第2のインバータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1の温度センサで測定した前記第1のインバータを構成する素子の温度、前記第2の温度センサで測定した前記第2のインバータを構成する素子の温度および前記第3の温度センサで測定した前記コンバータを構成する素子の温度の少なくともいずれか1つの温度が所定温度以上になった場合に、前記補機の稼働台数を減少させるもしくは前記第2のインバータのスイッチング動作を制御して前記第2のインバータの出力電力を制限する
ことを特徴とする車両用電力変換装置。
【請求項2】
鉄道車両の床下にエンジンと共に搭載された車両用電力変換装置であって、
前記エンジンの回転力により発電を行う発電機で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記直流電力を車両駆動用モータに供給するための交流電力に変換する第1のインバータと、
前記直流電力を補機に供給するための交流電力に変換する第2のインバータと、
当該車両用電力変換装置の筐体内の温度を測定する温度センサと、
前記コンバータ並びに前記第1および前記第2のインバータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記温度センサで測定した前記筐体内の温度が所定温度以上になった場合に、前記補機の稼働台数を減少させるもしくは前記第2のインバータのスイッチング動作を制御して前記第2のインバータの出力電力を制限する
ことを特徴とする車両用電力変換装置。
【請求項3】
鉄道車両の床下にエンジンと共に搭載された車両用電力変換装置であって、
前記エンジンの回転力により発電を行う発電機で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記直流電力を車両駆動用モータに供給するための交流電力に変換する第1のインバータと、
前記直流電力を補機に供給するための交流電力に変換する第2のインバータと、
前記コンバータ並びに前記第1および前記第2のインバータを制御する制御装置と、
前記制御装置の温度を測定する温度センサと
を備え、
前記制御装置は、前記温度センサで測定した前記制御装置の温度が所定温度以上になった場合に、前記補機の稼働台数を減少させるもしくは前記第2のインバータのスイッチング動作を制御して前記第2のインバータの出力電力を制限する
ことを特徴とする車両用電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用電力変換装置を床下に搭載した鉄道車両であって、
前記エンジンを前記床下に搭載し、
前記発電機、前記車両駆動用モータおよび前記補機を更に搭載する
ことを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,車両に搭載される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,鉄道車両においてエンジンによって発電機を動作させ,その発電機によって出力された電力を電力変換装置によって変換し,モータなどの電車の車両駆動装置や空調や照明,バッテリ充電装置などの車上電気品に電力を供給するシステムが登場している。エンジン,発電機,電力変換装置などの装置は,多くの場合,鉄道車両の床下に艤装される。そのため,通常の電車システムと比較して,高温となったエンジンの排気により電力変換装置温度がさらに上昇する。また、一般的に鉄道車両は前後双方向に走行するため,電力変換装置がエンジン排気の影響を避けることが難しい。電力変換装置では,装置内温度上昇により電力変換用半導体素子や制御論理部の故障や寿命の低下を防ぐために,一般的に半導体素子や制御論理部に温度センサを設け,その温度センサの値が許容値以上になった場合に電力変換装置を停止させる機能を有している。エンジン及び発電機によって電力変換装置に電力を供給するシステムでは,エンジンの排気により電力変換装置が熱せられ,この停止機能により頻繁に電力変換装置が停止してしまう可能性がある。この解決策として,特許文献1には電力変換装置の負荷であるモータの出力を下げる方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−269815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制御方法を鉄道車両に適用すると,所望のモータトルクより出力トルクを下げることになるため,時刻表通りに運転することができず,列車遅延の原因となる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は,時刻表通りの運転を維持しつつ,エンジンの出力排気温度を低減し,コンバータまたはインバータ温度が許容値を超えて、非常停止することを抑制する車両用電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,エンジンの回転力により発電を行う発電機で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータと,直流電力を車両駆動用モータに供給する交流電力に変換する第1のインバータと,直流電力を補機に供給するための交流電力に変換する第2のインバータと,を備えた車両用電力変換装置において,第1のインバータの温度を測定する第1の温度センサと,第1の温度センサで測定した第1のインバータの温度が所定温度以上になった場合に、第2のインバータの出力電力を制限する制御装置と,を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,時刻表通りの運転を維持しつつ,補機の消費電力を制限することでエンジンの出力排気温度を低減し,コンバータまたはインバータ温度が許容値を超えて、非常停止することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は,本発明の実施例1に係る電力変換装置のシステム構成図である。
【
図2】
図2は,実施例1の素子過温度検知部91による制御フローチャートを示す図である。
【
図3】
図3は,実施例2に係る電力変換装置のシステム構成図である。
【
図4】
図4は,実施例2の筐体内過温度検知部93による制御フローチャートを示す図である。
【
図5】
図5は,実施例3に係る電力変換装置のシステム構成図である。
【
図6】
図6は,実施例3の制御装置過温度検知部94による制御フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態として,図面を参照しながら,実施例1〜実施例3について説明する。尚,各図および各実施例において,同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し,重複するものについては説明を省略することがある。
【実施例1】
【0010】
図1は,本発明の実施例1に係る電力変換装置のシステム構成図である。まず,本システムの基本構成から説明する。エンジン1に発電機2が接続されており,この発電機2で発電される交流電力が電力変換装置3に取り込まれる。電力変換装置3は,取り込んだ交流電力をコンバータ4で直流電力に変換し,この直流電力を第1のインバータ5(モータ駆動用インバータ)にて三相交流電力に変換して交流モータ6から電車を駆動させる動力を発生させる。また,前述したコンバータ4によって作られた直流電力を基に第2のインバータ7(補助電源装置)により交流電力を作り出し,空調や照明,ブレーキコンプレッサなどの補機8に電力を供給している。補機8は電力変換装置3の制御装置9からの負荷低減指令を受けて,負荷を低減する機能を有する。また,制御装置9に関しては,補機8に対する負荷低減指令を作成する機能の他に,コンバータ4,第1のインバータ5,第2のインバータ7の制御を含むシステム全体を統括する機能,および,コンバータ4,第1のインバータ5,第2のインバータ7に過温度などの異常が認められた場合にシステムの停止・再起動を行う保護機能を有している。尚,
図1では,制御装置9の中のコンバータ4,第1のインバータ5,第2のインバータ7の制御を含むシステム全体の統括を行う機能の詳細,および,コンバータ4,第1のインバータ5,第2のインバータ7の異常検知時にシステムの停止・再起動を行う保護機能の詳細については,図示を省略している。
【0011】
次に,補機8に対する負荷低減指令を作成する制御装置9の処理態様について説明する。電力変換装置3のコンバータ4,第1のインバータ5,第2のインバータ7にはそれぞれ、スイッチング素子の温度を計測して、計測結果を素子温度情報として出力する温度センサを備える。制御装置9は,素子過温度検知部91にて,コンバータ4,第1のインバータ5,第2のインバータ7のそれぞれに搭載される温度センサ101,102,103からの素子温度情報であるコンバータ素子温度情報1010、第1のインバータ素子温度情報1020、第2のインバータ素子温度情報1030から過温度検知信号910を生成し,負荷低減指令作成部92に出力する。
【0012】
図2は,
図1の素子過温度検知部91による制御フローチャートを示す図である。この制御フローチャートは,電力変換装置3における温度センサ101,102,103からのコンバータ素子温度情報1010、第1のインバータ素子温度情報1020、第2のインバータ素子温度情報1030から過温度検知信号910を作成するための基本的な制御の流れを示すものである。
【0013】
ステップS001で,素子過温度検知部91(以下,「検知部」と略す)は処理を開始する。ステップS002で,検知部は,第1のインバータの素子温度が所定温度以上であるか否かを判定する。第1のインバータ素子温度が所定温度以上であれば(Yes),ステップS006にて過温度と判定して過温度検知信号910をONし,ステップS007にて処理を終了する。一方,ステップS002にて第1のインバータ素子温度が所定温度未満であれば(No),ステップS003に移行する。
【0014】
ステップS003で,検知部は,第2のインバータからの素子温度が所定温度以上であるか否かを判定する。第2のインバータ素子温度が所定温度以上であれば(Yes),ステップS006にて過温度と判定して過温度検知信号910をONし,ステップS007にて処理を終了する。一方,ステップS003にて第2のインバータ素子温度が所定温度未満であれば(No),ステップS004に移行する。
【0015】
ステップS004で,検知部は,コンバータからの素子温度が所定温度以上であるか否かを判定する。コンバータ素子温度が所定温度以上であれば(Yes),ステップS006にて過温度と判定して過温度検知信号910をONし,ステップS007にて処理を終了する。一方,ステップS004にてコンバータ素子温度が所定温度未満であれば(No),ステップS005にて過温度ではないと判定して過温度検知信号910をOFFし,ステップS007にて処理を終了する。
【0016】
ここにおいて,所定温度は各素子の許容温度以下に設定する。具体的には各素子の許容温度の60℃〜30℃程度低い温度に設定する。これは,温度センサで測定できる素子温度は,パッケージ温度であるため,素子のジャンクション温度はパッケージ温度より高くなっているためである,また,許容値ぎりぎりに所定温度を設定すると,負荷を軽減して温度上昇を抑制する効果が現れる前に保護が働き,電力変換装置が停止してしまう。また,使用されている素子が異なれば,第1のインバータ,第2のインバータ,コンバータの所定温度は異なってもよい。また,ステップS002,S003,S004の処理順序は,必ずしも
図2に記載の順序である必要はなく,処理順番を入れ替えることも可能である。
【0017】
また,上述した素子過温度検知部91は,それらの一部又は全部を,制御装置9の構成要素として採用される集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよく,また,制御装置9が備えるプロセッサ(図示せず)が,それぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することによりソフトウェアで実現してもよい。このプログラム等の情報は,メモリや,ハードディスク,SSD等の記録装置,または,ICカード,SDカード,DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0018】
図1に戻り,過温度検知信号910がONとなった以降の処理態様について説明する。負荷低減指令作成部92は,過温度検知信号910を基に負荷低減指令920を作成する。
【0019】
この負荷低減指令920は,補機8の種類によって異なる。例えば,補機8が空調の場合は,運転させる空調の台数を低減させるための指令となる。また,補機8が照明の場合は,点灯する照明の台数を低減させるための指令となる。この指令を補機8に入力方法として,メタル線による伝送でも,図示しない制御情報処理装置を利用した伝送でもよい。
【0020】
以上のように,実施例1の制御装置9では,素子過温度検知部91が第1のインバータ,第2のインバータ,コンバータの素子温度を測定する各温度センサからの温度情報を基に所定温度(素子許容温度より60℃〜30℃程度低い温度)を超えた過温度状態にあるか否かを判定し,負荷低減指令作成部92が補機8に対し,負荷低減指令920を出力する。
【0021】
なお、
図1では負荷低減指令920を補機8に出力し、補機の運転台数を低減させる実施形態を説明したが、負荷低減指令920を第2のインバータに出力し、補機へ供給する電力量を低減するように第2のインバータのスイッチング動作を制御することも可能である。
【0022】
床下の搭載されたエンジンによって発電機を動作させ,その発電機によって出力された電力を同じく床下に搭載された電力変換装置によって変換し,モータなどの電車の車両駆動装置や空調や照明,バッテリ充電装置などの車上電気品に電力を供給する鉄道車両システムでは,エンジンからの高温な排気により電力変換装置が熱せられて過温度保護で停止する事態がある。このような状態に陥らないように,過温度保護が働く前に第2のインバータの出力電力を低減することにより,エンジンの出力を低減させ,それにともないエンジンの排気温度を低減させることが可能である。これによって,電力変換装置の温度上昇を抑制し,電力変換装置が過温度保護で停止するのを低減することができる。
【実施例2】
【0023】
図3は,本発明の実施例2に係る電力変換装置のシステム構成図である。実施例2は,先に説明した実施例1において,電力変換装置温度を素子温度から,装置筐体内温度に変更したものである。そのため,実施例2は,電力変換装置3の筐体内に温度センサ104が取り付けられ,筐体内過温度検知部93を制御装置9に設けた点が実施例1と異なる。
【0024】
実施例2において制御装置9が補機8に対する負荷低減指令920を作成する処理態様を以下に示す。制御装置9は,筐体内過温度検知部93にて,電力変換装置3の筐体内に取り付けられた温度センサ104からの筐体内温度情報1040から過温度検知信号930を生成し,負荷低減指令作成部92に出力する。
【0025】
図4は,
図3の筐体内過温度検知部93による制御フローチャートを示す図である。この制御フローチャートは,電力変換装置3における温度センサ104からの筐体内温度情報1040から過温度検知信号930を作成するための基本的な制御の流れを示すものである。
【0026】
ステップS101で,筐体内過温度検知部93(以下,「検知部」と略す)は処理を開始する。ステップS102で,検知部は,筐体内温度が所定温度以上であるか否かを判定する。筐体内温度が所定温度以上であれば(Yes),ステップS104にて過温度と判定して過温度検知信号930をONし,ステップS105にて処理を終了する。一方,ステップS102にて筐体内温度が所定温度未満であれば(No),ステップS103にて過温度ではないと判定して過温度検知信号930をOFFし,ステップS105にて処理を終了する。
【0027】
ここで,所定温度は筐体内に取り付けられた電力変換装置を構成する部品の許容温度以下に設定する。具体的には各部品の許容温度の20℃〜10℃程度低い温度に設定する。これは,許容値ぎりぎりに所定温度を設定すると,負荷を軽減して温度上昇を抑制する効果が現れる前に保護が働き,電力変換装置が停止してしまう状態を避けるためである。
【0028】
過温度検知信号930がONとなった場合の負荷低減指令作成部92による処理態様については,実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0029】
以上のように,実施例2の制御装置9では,筐体内過温度検知部93が電力変換装置の筐体内温度を測定する温度センサからの温度情報を基に所定温度(筐体内に取り付けられた電力変換装置を構成する部品の許容温度より20℃〜10℃程度低い温度)を超えた過温度状態にあるか否かを判定し,負荷低減指令作成部92が補機8又は第2のインバータに対し,負荷低減指令920を出力する。
【0030】
上記のシステムにより,エンジンによって発電機を動作させ,その発電機によって出力された電力を電力変換装置によって変換し,モータなどの電車の車両駆動装置や空調や照明,バッテリ充電装置などの車上電気品に電力を供給する鉄道車両システムで,エンジンからの高温な排気により電力変換装置が熱せられ、過温度保護で停止するのを低減することができる。
【実施例3】
【0031】
図5は,本発明の実施例3に係る電力変換装置のシステム構成図である。実施例3は,先に説明した実施例1において,電力変換装置温度を素子温度から,制御装置温度に変更したものである。そのため,実施例3は,電力変換装置3の制御装置9に温度センサ105が取り付けられ,制御装置過温度検知部94を制御装置9に設けた点が実施例1と異なる。
【0032】
実施例3において制御装置9が補機8に対する負荷低減指令920を作成する処理態様を以下に示す。制御装置9は,制御装置過温度検知部94にて,制御装置9に取り付けられた温度センサ105からの制御装置温度情報1050から過温度検知信号940を生成し,負荷低減指令作成部92に出力する。
【0033】
図6は,
図5の制御装置過温度検知部94による制御フローチャートを示す図である。この制御フローチャートは,電力変換装置3における温度センサ105からの制御装置温度情報1050から過温度検知信号940を作成するための基本的な制御の流れを示すものである。
【0034】
ステップS201で,制御装置過温度検知部94(以下,「検知部」と略す)は処理を開始する。ステップS202で,検知部は,制御装置温度が所定温度以上であるか否かを判定する。制御装置温度が所定温度以上であれば(Yes),ステップS204にて過温度と判定して過温度検知信号940をONし,ステップS205にて処理を終了する。一方,ステップS202にて制御装置温度が所定温度未満であれば(No),ステップS203にて過温度ではないと判定して過温度検知信号940をOFFし,ステップS205にて処理を終了する。
【0035】
ここにおいて,所定温度は制御装置9を構成する部品の許容温度以下に設定する。具体的には各部品の許容温度の20℃〜10℃程度低い温度に設定する。これは,許容値ぎりぎりに所定温度を設定すると,負荷を軽減して温度上昇を抑制する効果が現れる前に保護が働き,電力変換装置が停止してしまう。
【0036】
図5に戻るが,過温度検知信号940がONとなった以降の処理態様については,実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0037】
以上のように,実施例3の制御装置9では,制御装置過温度検知部94が制御装置温度を測定する温度センサからの温度情報を基に所定温度(制御装置を構成する部品の許容温度より20℃〜10℃程度低い温度)を超えた過温度状態にあるか否かを判定し,負荷低減指令作成部92が補機8又は第2のインバータに対し,負荷低減指令920を出力する。
【0038】
上記のシステムにより,エンジンによって発電機を動作させ,その発電機によって出力された電力を電力変換装置によって変換し,モータなどの電車の車両駆動装置や空調や照明,バッテリ充電装置などの車上電気品に電力を供給する鉄道車両システムで,エンジンからの高温な排気により電力変換装置が過温度保護で停止するのを低減することができる。
【0039】
以上,本発明の実施例1〜3について説明したが,これら各実施例の構成はあくまで一例であり,本発明は,技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。例えば,実施例1〜3では,第1のインバータ5,第2のインバータ7およびコンバータ4は一つの制御装置9で制御されるように記載したが,それぞれ,個別の制御装置で制御してもよい。この場合,それぞれの制御装置で過温度検知し,負荷低減指令920を補機8に出力する。また,第1のインバータ5,第2のインバータ7およびコンバータ4は一つの筐体に格納しているように記載したが,例えば,第1のインバータ5と第2のインバータ7は別の筐体に格納されていてもよい。この場合も,それぞれの制御装置で過温度検知し,負荷低減指令を補機8に出力する。
【符号の説明】
【0040】
1: エンジン, 2: 発電機, 3: 電力変換装置, 4: コンバータ, 5:
第1のインバータ, 6: 交流モータ, 7: 第2のインバータ, 8: 補機,
9: 制御装置, 91: 素子過温度検知部, 92: 負荷低減指令作成部, 93: 筐体内過温度検知部, 94: 制御装置過温度検知部, 101,102,103,104,105 温度センサ, 910,930,940: 過温度検知信号, 920: 負荷低減指令, 1010: コンバータ素子温度情報, 1020: 第1のインバータ素子温度情報, 1030: 第2のインバータ素子温度情報, 1040:
筐体内温度情報, 1050: 制御装置温度情報