【実施例】
【0011】
本実施例について、
図1、
図2、
図3、
図4を用いて説明する。なお、本実施例は、スクロール式流体機械の一つであるモータ直動式スクロール圧縮機を例に説明する。
【0012】
図1は、本実施例におけるモータ直動式スクロール圧縮機1の外観斜視図である。
図1において、モータ直動式スクロール圧縮機1は、主に、本体ユニットとそれを駆動するモータユニットで構成されている。本体ユニットは、本体ケーシング15と、後述する固定スクロール7と、固定スクロール7と対向して設けられ旋回運動する旋回スクロール6とを有し、流体を膨張または圧縮する。モータユニットは、本体ユニットに接続され、本体ユニットを駆動する駆動軸である後述するシャフト3とモータケーシング11と、モータケーシング11の外周部にモータケーシング冷却フィン12を有している。また、後述する冷却ファン8による冷却風をガイドし、後述する旋回スクロール6及び固定スクロール7を冷却するための冷却風導風部材10a、10b、10c、及び10dを設けている。
【0013】
図2はモータ直動式スクロール圧縮機1の正面図を示し、
図3は
図2のF−F位置から見た断面図である。また、
図4は冷却風導風部材を取り外した状態の正面図であり、固定スクロール冷却フィン13の構造図を示している。
【0014】
図3において、モータ直動式スクロール圧縮機1は、シャフト3とロータ4とステータ5がモータの役割を担っており、ステータ5に電流を流すことでロータ4と、ロータ4と一体となったシャフト3が回転をする。シャフト3の一端は旋回スクロール6を駆動する駆動軸である偏芯部を有しており、この偏芯部に旋回スクロール6を組付けている。また、旋回スクロール6に対向し、固定スクロール7を組付けており、シャフト3の回転により、固定スクロール7に対し、旋回スクロール6が旋回運動を行う。旋回スクロール6と固定スクロール7の鏡板には渦巻き状のラップが設けられており上述の旋回運動を行うことで流体を圧縮する。電流が流れるため発熱するステータ5や、流体を圧縮するため発熱する旋回スクロール6及び固定スクロール7を冷却するために、シャフトの偏芯部の他端に冷却ファン8を設けている。冷却風を矢印9のように流し旋回スクロール6及び固定スクロール7を冷却するための冷却風導風部材10a、10b、10c、及び10dを設けている。すなわち、本体ユニット側から冷却ファン8に向けて流れる冷却風でモータユニットの外周面を冷却し、また、冷却ファン8から本体ユニット側に向けて流れる冷却風でモータユニットの外周面を冷却する。
【0015】
冷却効率向上のため、ステータ5を保持するモータケーシング11の外周部、及び、固定スクロール7及び旋回スクロール6に、
図1に示すモータケーシング冷却フィン12、
図3に示す、固定スクロール冷却フィン13、旋回スクロール冷却フィン14を設けている。
【0016】
なお、旋回スクロール6に対して駆動軸を支持する旋回軸受は、旋回スクロール6の鏡板よりもモータユニット側に配置されている。これにより、軸方向寸法を低減するために鏡板内に旋回軸受が入り込んだ形状に比べて、同じ径の旋回スクロール6及び固定スクロール7であっても、圧縮室を削減することなく圧縮量を確保できる。
【0017】
また、ロータ4とステータ5とは軸方向に対向するように構成されている。これにより軸方向寸法を低減することができる。
【0018】
また、本体ユニットとモータユニットは、本体ケーシング15とモータケーシング11との間で締結部材により着脱可能に締結されている。
【0019】
また、モータケーシング11の径方向寸法を軸方向寸法よりも長くすることで、軸方向寸法を低減すると同時に冷却面積を確保できる。
【0020】
ここで、発熱体である旋回スクロール6、固定スクロール7、ステータ5の冷却部を円筒に近似した場合、固定スクロール7と旋回スクロール6のラップと冷却フィン13、14で構成している点線で示す領域Aの有効冷却面積をS
Aとし、ステータ5とモータケーシング11のステータ5との嵌合部のみで構成している点線で示す領域Bの有効冷却面積をS
Bとすると、S
A、S
Bは、式(1)、(2)で近似できる。
【0021】
S
A=固定、旋回スクロール鏡板面積+固定、旋回スクロール円筒側面積
=2π×(α/2)
2+2π
(α/2)×lc
=πα
2/2+
παlc ・・・(1)
S
B=モータケーシングステータ部円筒側面積
=
πDmls ・・・(2)
ここで、α:固定スクロール冷却フィン13の冷却風に対する水平方向寸法(固定スクロールの鏡板の径方向寸法)、
lc:旋回スクロール冷却フィン14端面から固定スクロール冷却フィン13端面までの距離、
Dm:モータケーシング径方向寸法(冷却フィン含む)、
ls:ステータ軸方向寸法、である。
【0022】
また、モータ直動式スクロール圧縮機は、一般的に、圧縮機本体の効率よりもモータの効率が高い。投入電力から効率分を差し引いた分が損失分となり、それぞれの損失分がそれぞれの発熱量に比例するので、圧縮機本体の発熱量はモータの発熱量よりも大きくなる。ここで本実施例のモータ直動式スクロール圧縮機においては、固定スクロール及び旋回スクロールの発熱量Qcはモータの入力に対して10〜40%、ステータの発熱量Qsはモータの入力に対して約10%のため、QsとQcの関係は式(3)の関係となる。
Qc/4≦Qs≦Qc ・・・(3)
【0023】
本体ユニットとモータユニットとの放熱が不均衡にならないように、S
AとS
Bの関係は、式(3)に対応した面積を設ける必要があるため、式(4)の関係となる。
SA/4≦SB≦SA ・・・(4)
【0024】
よって、式(1)、(2)、(4)より下記、式(5)が導かれる。
α
2/
8+αlc/4≦Dmls≦α
2/
2+αlc ・・・(5)
【0025】
ここで、αとDmの関係について説明する。α>Dmの場合、冷却風経路が複雑もしくは経路長さを長くしなければならなくなるため、冷却風の圧力損失が増大し風量が低下し旋回スクロール、固定スクロールの冷却が悪化してしまう。また、Dmを小さくするため、Isが大きくなり全体の軸方向寸法Lが大きくなってしまう。一方で、α<Dmの場合、モータケーシング11に冷却風が流れづらくなるため、モータ冷却が悪化する。また、モータケーシングが大きくなるため、これを避けるような冷却風導風部材の構造にしなければならず、結果として冷却風導風部材が複雑形状となり、圧力損失が増大し冷却風量が減少してしまう。以上の理由からαとDmの関係は、式(6)の関係とした。
α=Dm ・・・(6)
【0026】
式(6)の近似が成立するため、モータケーシングの冷却フィンの先端は少なくとも固定スクロールに形成されたラップの最外周面よりも外側にある。
【0027】
式(6)を用いると、式(5)は式(7)となる。
α/
8+lc/4≦ls≦α/
2+lc ・・・(7)
【0028】
よって、本実施例では式(7)を満たすように、α、Ic、Isを設定することで、本体ユニットとモータユニットの放熱を均等にでき、軸長を短縮することが可能なモータ直動式スクロール圧縮機を提供できる。よって、モータ直動式スクロール圧縮機の小型化と温度低減が同時に図れ、顧客メリットが生じる。
【0029】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例はスクロール圧縮機について説明したが、圧縮機以外の例えばブロアやポンプ等でもよく、いわゆるスクロール式流体機械でよい。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。