特許第6795609号(P6795609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795609車両シート用スピーカーグリルアッセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795609
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両シート用スピーカーグリルアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20201119BHJP
   A47C 7/72 20060101ALI20201119BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B60N2/879
   A47C7/72
   H04R1/02 102B
   H04R1/02 104Z
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-548676(P2018-548676)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公表番号】特表2019-513102(P2019-513102A)
(43)【公表日】2019年5月23日
(86)【国際出願番号】US2017021481
(87)【国際公開番号】WO2017160572
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】15/071,631
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード・カイル・スバット
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・オズワルド
【審査官】 毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−291454(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0270322(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0201260(US,A1)
【文献】 特開2009−247388(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
H04R 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのヘッドレストであって、
音響トランスデューサを収容する内部チャンバ、
前記内部チャンバと前記シートのヘッドレストの外部開口との間に配置された音響チャネル、
前記外部開口の外縁の少なくとも一部分の周りに配置された軟質の外層、および
前記外層に配置されたまたは取り付けられた、剛性のグリルマウントであって、前記音響チャネルの外縁の周りに少なくとも部分的に延在し、嵌合構成でグリルアセンブリの一部分と係合するように構成されたグリルマウント、
を備えることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記グリルマウントは、前記ヘッドレストの実質的に剛性の部分から少なくとも部分的に前記軟質の外層によって分離されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記軟質の外層が、50未満のショアA硬度を有する材料を備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記軟質の外層が、独立気泡発泡体を備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記グリルマウントが、前記軟質の外層上にオーバーモールドされていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記グリルマウントが、前記グリルアセンブリの一部分と係合するように構成されたスナップ嵌め機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
記グリルアセンブリの少なくとも一部分が、ショアA硬度が90未満である材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項8】
前記材料が、液体シリコーンゴムまたはゴムウレタンを含むことを特徴とする請求項7に記載のヘッドレスト。
【請求項9】
前記グリルマウントが、前記グリルアセンブリと係合すると視覚的に閉塞されることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項10】
記グリルアセンブリの一部分が、グリルリングの少なくとも一部分を備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項11】
車両シートのヘッドレストに配置されたスピーカーシステム用の、剛性のグリルマウントであって、前記グリルマウントが、
前記スピーカーシステムに関連する音響チャネルの外部開口の外縁の少なくとも一部分の周りに配置された、前記グリルマウントを前記車両シートの外層に取り付けることを可能にする取付面、および
嵌合構成においてスピーカーグリルアセンブリの一部と係合するように構成された係合構造であって、係合後に、前記スピーカーグリルアセンブリが取り外し可能である、係合構造、
を備え、
前記グリルマウントが、前記音響チャネルの外縁の周りに、少なくとも部分的に延在していることを特徴とするグリルマウント。
【請求項12】
前記係合構造が、前記スピーカーグリルアセンブリの一部分と係合するように構成されたスナップ嵌め機構を備えることを特徴とする請求項11に記載のグリルマウント。
【請求項13】
前記スピーカーグリルアセンブリの少なくとも一部分が、ショアA硬度が90より小さい材料から構成されていることを特徴とする請求項11に記載のグリルマウント。
【請求項14】
前記材料が、液体シリコーンゴムまたはゴムウレタンを含むことを特徴とする請求項13に記載のグリルマウント。
【請求項15】
前記グリルマウントが、前記グリルマウントがその周りに配置される前記音響チャネルの外縁の少なくとも一部分の形状と嵌合するように構成されることを特徴とする請求項11に記載のグリルマウント。
【請求項16】
前記車両シートの一部分が、ヘッドレストを備えることを特徴とする請求項11に記載のグリルマウント。
【請求項17】
車両シート内に配置された、音響トランスデューサのためのハウジングであって、
内部チャンバと、
前記内部チャンバと前記ハウジングの外部開口との間に配置された音響チャネルと、
を備え、
前記外部開口の外縁の少なくとも一部分が、
軟質の外層と、
前記軟質の外層にオーバーモールドされた、剛性のグリルマウントであって、前記グリルマウントが前記音響チャネルの外縁の周りに、少なくとも部分的に延在し、グリルアセンブリの少なくとも一部分を受容するように構成された、グリルマウントと、
を備えることを特徴とするハウジング。
【請求項18】
前記軟質の外層が、独立気泡発泡体を備えることを特徴とする請求項17に記載のハウジング。
【請求項19】
記グリルアセンブリの少なくとも一部分が、前記軟質の外層上にオーバーモールドされていることを特徴とする請求項17に記載のハウジング。
【請求項20】
記グリルアセンブリの一部分が、グリルリングの少なくとも一部分を備えることを特徴とする請求項19に記載のハウジング。
【請求項21】
前記グリルマウントが、前記グリルアセンブリと係合するように構成されたスナップ嵌め機構を備えることを特徴とする請求項17に記載のハウジング。
【請求項22】
記グリルアセンブリの少なくとも一部分が、ショアA硬度が90未満である材料から構成されていることを特徴とする請求項17に記載のハウジング。
【請求項23】
前記材料が、液体シリコーンゴムまたはゴムウレタンを含むことを特徴とする請求項22に記載のハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、スピーカーなどの音響出力装置を含むシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両シートに使用されるヘッドレストには、近接場音響体験を提供するためのスピーカーが含まれ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本明細書は、音響トランスデューサを収容する内部チャンバと、内部チャンバとシートヘッドレストの外部開口との間に配置された音響チャネルと、を含むシートヘッドレストを特徴とする。ヘッドレストは、外部開口の外縁の少なくとも一部分の周りに配置された軟質の外層と、グリルマウントと、をさらに含む。グリルマウントは、外層内に配置されるか、または、外層に取り付けられる。グリルマウントは、少なくとも部分的に音響チャネルの外縁に延在し、嵌合構成においてスピーカーグリルアセンブリの一部と係合するように構成される。
【0004】
別の態様では、本明細書は、車両シートの一部に配置されたスピーカーシステムのためのグリルマウントを特徴とする。グリルマウントは、グリルマウントを車両シートの外層に取り付けることができるように構成された取付面を含む。外層は、スピーカーシステムに関連する音響チャネルの外部開口の外縁の少なくとも一部分の周りに配置される。グリルマウントは、スピーカーグリルアセンブリが係合後に係合構造から取り外し可能となるように、嵌合構成においてスピーカーグリルアセンブリの一部分と係合するように構成された係合構造を特徴とする。グリルマウントは、少なくとも部分的に、音響チャネルの外縁に延在している。
【0005】
別の態様では、本明細書は、音響トランスデューサ用のハウジングを特徴とする。ハウジングは、内部チャンバと、内部チャンバとハウジングの外部開口との間に配置された音響チャネルと、を含み、外部開口の外縁の少なくとも一部分は軟質の外部層を含む。ハウジングはまた、軟質の外層上にオーバーモールドされたグリルマウントを含み、グリルマウントは、少なくとも部分的に音響チャネルの外縁に延在し、スピーカーグリルアセンブリの少なくとも一部分を受容するように構成される。
【0006】
上記の態様の実施例は、以下の特徴の1つまたは複数を含み得る。
【0007】
グリルマウントは、ヘッドレストの実質的に剛性の部分から、少なくとも部分的に、軟質の外層によって分離され得る。軟質の外層は、50未満のショアA硬度を有する材料を含み得る。軟質の外層は、独立気泡発泡体を含み得る。グリルマウントは、軟質の外層にオーバーモールドされ得る。グリルマウントは、スピーカーグリルアセンブリの一部分と係合するように構成されたスナップ嵌め機構を含み得る。グリルアセンブリの少なくとも一部分は、ショアA硬度が90より小さい材料から構成され得る。材料は、液体シリコーンゴムまたはゴムウレタンを含み得る。グリルマウントは、スピーカーグリルとの係合時に視覚的に閉塞され得る。スピーカーグリルアセンブリの一部は、グリルリングの少なくとも一部分を含み得る。
【0008】
係合構造は、スピーカーグリルの一部分と係合するように構成されたスナップ嵌め機構を含み得る。グリルアセンブリの一部は、ショアA硬度が90より小さい材料から構成され得る。グリルマウントは、その周りにグリルマウントが配置されている音響チャネルの外縁の少なくとも一部分の形状と嵌合するように構成され得る。車両シートの一部分は、ヘッドレストを含み得る。
【0009】
軟質の外層は独立気泡発泡体を含み得る。スピーカーグリルアセンブリの少なくとも一部分は、軟質の外層上にオーバーモールドされ得る。スピーカーグリルアセンブリの一部分は、グリルリングの少なくとも一部分を含み得る。
【0010】
本明細書に記載された様々な実施形態は、以下の利点のうちの1つ以上を提供し得る。グリルマウントを剛性の基礎構造から分離することにより、グリルを車両シートまたはヘッドレストの外面により近づけて配置することを可能にする。いくつかの実施形態では、これにより、グリルアセンブリのいくつかの部分を変形可能にすることができ、使用者の快適度を改善することができる。場合によっては、快適性レベルを改善するためにグリル自体が軟質の材料(例えば、ショアA硬度が90未満の硬度の材料)から構成され得る。
【0011】
発明の概要で説明したものを含めて、本開示に記載された特徴の2つ以上を組み合わせて、本明細書に具体的に記載されていない実施形態を形成することができる。
【0012】
1つまたは複数の実施例の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】スピーカーを含むヘッドレストの内部を示す斜視図である。
図1B】スピーカーを含むヘッドレストの内部を示す斜視図である。
図1C】グリルアセンブリがヘッドレストの音響チャネルに取り付けられたヘッドレストの例を示す図である。
図1D】グリルアセンブリがヘッドレストの音響チャネルに取り付けられたヘッドレストの例を示す図である。
図2A】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図2B】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図2C】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図2D】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図2E】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図2F】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図2G】対応するグリルアセンブリがヘッドレストの剛性構造から分離されるヘッドレストの例を示す図である。
図3】実施例の材料の硬度を示すチャートである。
図4A】軟質の材料から構成されたグリルアセンブリの例を示す図である。
図4B】軟質の材料から構成されたグリルアセンブリの例を示す図である。
図4C】軟質の材料から構成されたグリルアセンブリの例を示す図である。
図5】本明細書に記載の技術による例示的なヘッドレストの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
車両シートには、近接場音響体験を提供するための音響トランスデューサまたはスピーカーが取り付けられている。例えば、スピーカーをシートの乗員の耳に近接させるようにスピーカーをシートに装着して、臨場感があり、パーソナライズされた音響体験を提供することができる。スピーカーは、例えば、シートのヘッドレスト、または乗員の首または肩に近いシートの部分に配置され得る。複数のスピーカーが使用される場合、スピーカーは、例えば、没入型音響効果を提供するために、シートの様々な部分に分配され得る。本明細書では主に、シートヘッドレストの例を使用して本技術を説明している。しかしながら、本技術は、シートの他の部分に配置されたスピーカーにも適用可能である。さらに、以下の実施例は、車両シートを指すが、他のタイプの音響的に可能なシート、または、家具に、本明細書に記載された方法でスピーカーを設置し得る。例えば、本技術は、マッサージチェア、ソファー、リクライニング装置、テーブル、またはスピーカーを備えたベッドに使用され得る。
【0015】
図1Aおよび1Bは、スピーカー102を組み込んだヘッドレスト100の一例を示す。図1Aを参照すると、スピーカー102は、U字型の支持ロッド104に取り付けられ、スピーカー102が使用者の頭の直ぐ後ろに(すなわち、U字型の支持体の左右に配置されているのに対して場合によっては2つの別個のバーの組み合わせによって置き換えられ得る)位置し、これにより、ヘッドレスト100のいずれかの側で発散方向に外向きに音を出す。
【0016】
場合によっては、小さなプラスチックのエンクロージャ106が音響エンクロージャを形成するように各スピーカー102に取り付けられる。これらのサブアセンブリの各々は、U字型の支持ロッド104に固定された2つの板金ケージ108にねじ止めされる。図1Aは、スピーカー102およびエンクロージャ106を見るために板金ケージ108の前部が取り外された状態で部分的なアセンブリを示す。図1Bは、前部110が所定位置に完全に組み付けられた板金ケージ108を示す。発泡体クッションの成形片がそのアセンブリの周りに配置され、その後、カバー材112(例えば、布または革)で覆われる。場合によっては、発泡体クッションに1つ以上の開口が設けられ、音響エネルギーをスピーカーからヘッドレストを取り囲む環境に通過させることができる。スピーカー102からの音響エネルギーが放射される開口の各々は、図1Cに示すように、グリルアセンブリ116を用いてカバーされ得る。グリルアセンブリ116は、対応するスピーカー102を保護することができ、ヘッドレスト100の前面に向かって音響エネルギーの放射を向けるのを助けることができる。グリルアセンブリ116は、ヘッドレスト100のいずれかの側面に、または音響チャンネルの開口の場所に応じて任意の場所に配置され得る。
【0017】
場合によっては、グリルアセンブリ116に機械的安定性をもたらすように、グリルは、シートの剛性(例えば、硬質または非圧縮性)部分に結合され得る。例えば、グリルアセンブリ116は、シートまたはヘッドレストの金属フレーム、または音響エンクロージャの一部に取り付けられ得る。場合によっては、図1Dに示すように、グリルアセンブリ116はグリルリング118を含み、グリルリング118が代わりにヘッドレストの剛性部分に連結される。グリルアセンブリ116またはグリルリング118をシートの剛性部分に取り付けることは、グリルアセンブリ全体の機械的安定性をもたらすが、場合によっては、ユーザーエクスペリエンスおよび快適性を改善するようにグリルアセンブリをシートの剛性部分から切り離すことがより望ましいことがある。例えば、グリルアセンブリがヘッドレスト上に配置されている場合、使用者は、ヘッドレストを手で掴んだり、頭部をヘッドレストの前部、場合によっては前縁側を横切って彼または彼女の頭を旋回したりすることがある。グリルアセンブリの一部がヘッドレストの前側縁部の近くに配置され、手または頭からの力がグリルアセンブリの部分を介してヘッドレストの剛性内部構造に伝達されると、使用者に不快感を与え、ユーザーエクスペリエンスを下げる。本明細書に記載された技術を使用することにより、グリルアセンブリは、シートの剛性部分から切り離され、これにより、使用者によって加えられる力が軟化され、結果としてユーザーエクスペリエンスが快適になり得る。場合によっては、グリルアセンブリの少なくとも一部分(例えば、グリルリング118)は、使用者の快適性レベルをさらに高めるために軟質の材料(例えば、ショアA硬度が90未満の材料)から構成され得る。このような軟質の材料の例には、液状シリコーンゴム(LSR)、ゴムウレタン、または20〜90の範囲のショアA硬度を有する他の材料が含まれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、グリルアセンブリは、グリルアセンブリの一部分(例えば、グリルリングまたはグリル)を軟質発泡体などの、場合によってはシートの外層を形成する、非剛性材料に直接取り付けることによって、シートの剛性の基礎構造から分離され得る。例えば、グリルは、軟質発泡体上に画定された溝にスナップ嵌めされ得る。しかしながら、場合によっては、グリルは時間が経つにつれて緩くなり、グリルアセンブリ116とその下の非剛性材料との間に隙間が形成され得る。これは、グリルアセンブリおよび一般的なシートの見た目の魅力を低下させ得る。従って、グリルアセンブリがシートの剛性構造から分離された際、グリルアセンブリが時間の経過とともに緩んでいないような方法でグリルを非剛性の外層にしっかりと取り付けられることが望ましいだろう。
【0019】
いくつかの実施形態では、シートの剛性構造から分離されたグリルアセンブリの機械的安定性は、グリルアセンブリの少なくとも一部分をシートの外層にしっかりと取り付けることによって増加させ得る。そのような構成の一例が、シートヘッドレスト200に配置されたグリルアセンブリを図示する図2A図2Cに示される。図2Aは、グリルアセンブリの外縁の一部分の周りにのみグリルマウント205が配置されるグリルアセンブリの例を示す。図2Bは、図1の例と比較して、グリルマウント205がグリルアセンブリの周囲のより大きな部分にわたって延在する別の例を示す。いくつかの実施形態では、ヘッドレスト200は、スピーカーなどの音響トランスデューサを収容する内部チャンバ(図5を参照してさらに詳細に説明する)と、内部チャンバとシートの外部開口との間の1つ以上のシートヘッドレスト200に取り付けられている。図2Aに示すように、穴あきグリル202を含むグリルアセンブリは、例えば、美観を改善し、音響トランスデューサからの音響エネルギーが外側に放射することを可能にするために、外部開口の上に配置され得る。いくつかの実施形態では、ヘッドレスト200は、ヘッドレストの外層(例えば、軟質発泡体)210上に配置されたカバー層(図示せず)を含む。カバー層は、皮膚と呼ぶこともできる。カバー層としては、例えば、皮革、布帛、合成皮革などが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、グリルアセンブリは、シートフレームまたは内部チャンバのような剛性の基礎構造から切り離される。そのような場合、グリルアセンブリの機械的安定性は、グリルアセンブリに、ヘッドレスト200の外層210にしっかりと取り付けられた実質的に剛性のグリルマウント205を含むことによって改善され得る。図2Cを参照すると、グリルマウント205は、グリルアセンブリを支持するために、音響チャネル226の周囲の少なくとも一部の周りに配置され得る。いくつかの実施形態では、グリルアセンブリは、グリルリング215を含むことができ、グリルリング215の一部は、例えば図2Cに示すような係合構造220を介してグリルマウント205と係合する。いくつかの実施態様では、係合構造220は、係合後に係合構造から取り外すことができるように、嵌合構成(例えばスナップ係合機構)のスピーカーグリルアセンブリの一部に係合するように構成される。これにより、例えば、スピーカーグリルアセンブリは、シートまたはヘッドレストの組立中に取り外し可能な構成でグリルマウント205に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、グリルマウントと係合するグリルアセンブリ(例えば、グリルリング)の部分は、係合するとグリルマウントを視覚的に閉塞するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ヘッドレスト200のカバー層または表皮は、グリルマウントを視覚的に閉塞してもよい。場合によっては、そのような構成は審美的に好ましい場合がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、グリルマウント205は、音響チャネルの周辺の一部の周りにのみ延在する。例えば、グリルマウント205は、グリルアセンブリの対応する部分(例えば、グリルリング215の対応する部分)と係合するように(図2Aに示すように)点206と207の間だけに延在してもよく、このような場合、グリルリング215の残りの部分は、例えば、定義された溝を使用して(例えば、グリルマウント205のような介在する剛性層なしで)外層210に直接的に取り付けることができる外層210内に配置され、グリルリング215を保持する表面の一部を所定の位置に浮かせる。グリルリングを保持する表面の一部分を所定位置に浮かせることによって、グリルリング(ある実施形態では、実質的に剛性であり得る)を、加えられた力によって移動するように構成することができ、それにより、外側の層210がそのような加えられた力の一部を吸収することを可能にする。これは、次に、より大きな(およびより軟質の)外層210に局所的に加えられた力を広げ、それによって使用者(例えば、シートの乗員)が受ける快適性を改善することができる。いくつかの実施形態では、軟質の外層210は、連続気泡発泡体または独立気泡発泡体などの固体発泡体を含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、グリルマウント205は、点206と207との間のものよりも、音響チャネルの外縁のより大きな部分の周りに延在し得る。そのような実施例の例が、図2Bに示されている。例えば、グリルマウント205は、音響チャネルの外縁の周りに配置され、これにより、グリルリング215が、グリルリング215の外縁の周りにおいてグリルマウント205に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の分離グリルマウント(例えば、グリルリング215の異なる部分と係合するように、音響チャネルの外縁の略対向する部分に配置された2つの別個のグリルマウント)が使用され得る。グリルマウント205は、外縁の異なる部分に配置され得る。図2A図2Cにおいて、グリルマウント205は、ヘッドレスト200の背面に向かって配置されている。図2Dおよび図2Eは、異なるタイプのグリルリング215を有する別のヘッドレスト230の例を示す。
【0023】
いくつかの実施形態では、グリルアセンブリは、グリルリング215と係合する有孔グリル202を含む。有孔グリル202は、様々な方法でグリルリング215と係合するように構成され得る。例えば、図2Cは、グリル202とグリルリング215との間の嵌合構成225の一例を示す。図2Eは、グリル202とグリルリングとの間の嵌合構成225の別の例を示す。グリルリングは、様々なタイプの係合構造220を介してグリルマウント205に取り付けることもできる。図2Cおよび図2Eは、係合構造220の2つの異なる例をそれぞれ示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、グリルマウント205は、それが配置されているシートとは別に製造され、シート内の音響チャネルの外縁の一部分に取り付けられる。例えば、グリルマウント205は、外層210の対応する面にしっかりと接着する取付面227に塗布された接着剤を用いて、車両シートの外層210に取り付けられ得る。グリルマウント205は、その周りに配置された音響チャネルの外縁の一部分の形状に嵌合するように構成され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、グリルマウント205は、シートまたはヘッドレストの一体部分として製造され得る。例えば、グリルマウント205は、ヘッドレストなどのシート部分の製造中に外層210にオーバーモールドされ得る。これは、図2Fおよび図2Gに示す変形例に示されている。この例では、グリルマウント205は、外層210の一体部分であり、オーバーモールド工程によって一緒に製造され得る。いくつかの実施形態では、このようなオーバーモールド成形は、外層210(例えば、軟質発泡体)にグリルマウント205との表面結合を形成させ得る。製造上の観点から、外層210へのグリルマウントのオーバーモールドは、費用対効果の高い場合があり得る。いくつかの実施形態では、オーバーモールド工程の間、グリルリング215の構造的固定要素として作用するオーバーモールドグリルマウント205を用いて、グリルリング215と外層210との間の係合構造220が拡大され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、グリルアセンブリの少なくともいくつかの部分は、軟質の材料を用いて構成され得る。例えば、グリルリング215および/または有孔グリル202は、閾値(例えば、90)よりも低いショアA硬度を有する材料から構成され得る。ヘッドレスト内に配置されたグリルアセンブリの少なくとも一部分を構成するために軟質の材料(例えば、LSRまたは軟質ウレタン)が使用される場合、グリルアセンブリは、例えば、剛性内部構造へのバネのような力伝達によりかかる力を緩和する。このことは、場合によっては、グリルアセンブリをより変形可能にし、および/または快適性レベルおよびユーザーエクスペリエンスを改善し得る。グリルアセンブリに使用される軟質の材料は快適性レベルを改善し得るが、グリルアセンブリが通常の使用中に適所にとどまることを確実にするために、閾値を超える硬度が必要とされ得る。したがって、適切な硬度範囲内の材料を使用して、グリルアセンブリの少なくとも一部分が構成され得る。例えば、20〜90の範囲のショアA硬度を有する材料(例えば、液体シリコーンゴム(LSR)およびゴムウレタンなど)が、グリルリング215、有孔グリル202、および/または、グリルのアセンブリの他の部分のために選択され得る。いくつかの例示的な材料のショア硬度が、図3に示されるチャートで表されている。いくつかの実施形態では、材料は、グリルアセンブリの一部分に適用されるべき目標壁厚に基づいて選択され得る。例えば、材料は、閾値(例えば、3mm)未満の壁厚が達成され得るという判断に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、グリルアセンブリにこのような軟質の材料および/または可撓性材料を使用することにより、1つまたは複数の追加部品(例えば、ネジ、接着剤)および/または組立工程における1つまたは複数の追加の加工ステップを減らすことができる。
【0027】
図4A図4Cは、軟質の材料で構成されたグリルアセンブリの様々な例を示す。図4Aを参照すると、軟質の材料(例えば、50未満のショア硬度を有する材料)から構成されるグリルリング415は、略L字形の断面420を有するように構成され得る。これは、グリルの対応する部分の断面より硬い材料(例えば、50以上のショア硬度を有する材料)から構成されたリング(例えば、図2Dおよび図2Fに示されたグリルリング215)を含む。図2Gに示すように、硬質材料で構成されたグリルリングの断面240は、略U字形の断面を有し得る。場合によっては、これは車両に使用される硬質構造物に課せられた安全規制によるものであり得る。例えば、安全規制は、50を超えるショアA硬度を有する材料から構成された構造物が、事故の際に乗員を潜在的に傷つける可能性のある露出した鋭い縁を有さないことを指示し得る。このような場合、グリルリング215の断面240は、例えば適用可能な規制に従って丸い表面を生成するために、U字型にする必要がある場合がある。場合によっては、規則は、例えば、許容される丸みのレベルを指示するために、略U字形の構造に関連する半径を指定し得る。場合によっては、硬質材料に関連する規制によって課せられた設計上の制約が、そのような規制の対象とならない軟質の材料を使用することによって低減されることがある。これにより、設計およびスタイルの目標において柔軟性がもたらされる可能性がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、軟質の材料(例えば、20〜50の範囲内のショアA硬度を有する材料)を使用することにより、グリルリング415を可撓性にして、これにより、カバー層またはスキン(革、布など)が設置される前に、グリルリング415が設置され得る。これは、図4Bおよび図4Cに示す例に示されている。この実施例では、グリルリング415は可撓性であり、グリルマウント205上にモールドされる。いくつかの実施形態(例えば、グリルリングが、カバー層の設置前に設置される場合)において、オーバーハング部分425(リップとも称される)は、カバー層またはスキンの一部分がグリルリング415の下に押し込まれるように、(図4Cに示すように)撓んで開くように構成され得る。グリルリング415は、撓んだ状態から解放されると、図4Bに示す構成に戻り、前記一部分がグリルリング415の下に押し込まれた状態を確実に保持し得る。いくつかの実施形態では、グリルリング415は、完全に取り外し可能であるように構成されて、これにより、グリルリング415全体が取り出され、次いで、組立工程の一部としてカバー層の一部分に亘って交換され得る。
【0029】
図5は、上述のグリルアセンブリを含む車両用ヘッドレスト500の一例の断面図を示す。ヘッドレスト500のハウジング501は、音響トランスデューサまたはスピーカー510aおよび510b(概して510)を支持する内部チャンバ505(音響エンクロージャとも称される)を含む。音響エンクロージャ505は、音響エンクロージャ505内に配置された各スピーカー510のための別個のチャンバを含み得る。いくつか実施例では、ヘッドレストのハウジング501は、ハウジング501の前壁と内部チャンバ505との間に配置され剛性部分または剛性支持体515をさらに含む。剛性支持体515は、発泡樹脂、発泡スチロール、または押出発泡スチロールのような軽量剛性材料で構成され得る。剛性支持体515は、ヘッドレストハウジングに機械的および構造的安定性を提供すること、ハウジング501の前壁と内部チャンバ505との間に緩衝部材を提供すること、および、ハウジング501内のスピーカー管の遮音を提供することなどの様々な役割を果たすように構成され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、ヘッドレスト500は、スピーカー510とヘッドレスト500の外面の対応する開口との間に配置された音響チャネル226を含む。音響チャネル226は、スピーカーから放射される音響エネルギーの放射パターンを制御するように構成され得る。いくつかの実施形態では、音響チャネルは、左スピーカーから右耳へ、右スピーカーから左耳へと比較して、左スピーカーから左耳へ、右スピーカーから右耳への効率を高める放射パターンを生成するように構成される。いくつかの実施形態では、例えば、有孔スピーカーグリル202およびグリルリング215を含むスピーカーグリルアセンブリが、ハウジング501の外部開口に亘って配置される。
【0031】
いくつかの実施形態では、グリルマウント205は、剛性基礎構造(例えば、剛性構造515、またはヘッドレスト500のフレーム)から分離されるように、外層210に取り付けられるように構成される。これは、図5の拡大挿入図に示されている。図5の例が、グリルアセンブリの断面の両側に配置されるグリルマウント205を示しているが、グリルマウント205は、音響チャネル226の外縁の一部分に沿ってのみ配置され得る。上述したように、スピーカーグリルリング215の少なくとも一部分が、グリルマウント205と係合するように構成され得る。いくつかの実施形態では、スピーカーグリルリングの一部分が、ヘッドレスト500のカバー層(例えば、布地、革など)と重なるように構成され、これにより、グリルリングが、カバー層をハウジング501に対してきっちと固定された状態で保持し得る。このようなきっちりとした構成は、例えばカバー層のたるみを減少させることによってヘッドレストの見た目の魅力を改善し得る。
【0032】
いくつかの実施形態を説明してきた。しかしながら、本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態もまた、以下の請求項の範囲内にある。本明細書に記載された異なる実施形態の要素は、上記に具体的に記載されていない他の実施形態を形成するために組み合わせされ得る。要素は、機能に悪影響を及ぼすことなく、本明細書に記載された構造から除外され得る。さらに、様々な別個の要素を1つ以上の個々の要素が、本明細書で説明する機能を実行するように組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0033】
100 ヘッドレスト
102 スピーカー
104 支持ロッド
106 エンクロージャ
108 板金ケージ
110 前部
112 カバー材
116 グリルアセンブリ
118 グリルリング
200 ヘッドレスト
202 グリル
205 グリルマウント
210 外層
215 グリルリング
220 係合構造
225 嵌合構成
226 音響チャネル
227 取付面
230 ヘッドレスト
240 断面
415 グリルリング
420 断面
425 オーバーハング部分
500 ヘッドレスト
501 ハウジング
505 音響エンクロージャ、内部チャンバ
510 スピーカー
515 剛性構造、剛性支持体
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図4C
図5