特許第6795613号(P6795613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795613音に能動的に影響を与えるためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795613
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】音に能動的に影響を与えるためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20201119BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20201119BHJP
   F02M 35/12 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G10K11/178
   F01N1/00 A
   F02M35/12 J
   G10K11/178 120
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-552678(P2018-552678)
(86)(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公表番号】特表2019-514059(P2019-514059A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2016076248
(87)【国際公開番号】WO2017174165
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】102016106326.6
(32)【優先日】2016年4月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102016106325.8
(32)【優先日】2016年4月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、ビクター
(72)【発明者】
【氏名】ブガンザ、フェデリコ
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0207585(US,A1)
【文献】 特開2012−003240(JP,A)
【文献】 特開平05−241581(JP,A)
【文献】 特開平05−061485(JP,A)
【文献】 S.M. KUO,Active Noise Control:A Tutorial Review,proceedings of the IEEE,米国,IEEE,1999年 6月 1日,vol.87,no.6,pp.943-973,DOI: 10 1109/5.763310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
F01N 1/00
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可聴信号が送信されたときに音を生成し、生成した音を処理すべき音に重畳するように構成された音生成器(20)と、
前記音生成器(20)が生成した音を前記処理すべき音に重畳することによって得られた重畳音を測定し、対応するフィードバック信号(e'(n))を出力するエラーセンサー(50)と、
音響信号(y(n))を生成し、出力する信号発生器(91)と、
有理数の数列の値を示す制御信号(λ(n))を生成する制御部(92)と、
前記信号発生器(91)から出力された前記音響信号(y(n))を受信し、前記音響信号をZ変換し、Z変換した信号を前記音生成器の伝達関数のZ変換の推定値([S(z)])で畳み込み、得られた信号に前記制御部(92)が生成した前記制御信号(λ(n))で重み付けを行い、かつ反転させる第1の重み付け部(93)と、
重み付けされ、反転された前記音響信号を前記フィードバック信号(e'(n))に加算し、これにより修正されたフィードバック信号(e(n))を前記信号発生器(91)に出力する加算器(94)と、
前記信号発生器(91)から出力された前記音響信号(y(n))に、1と前記制御部(92)が生成した前記制御信号(λ(n))との差で重み付けを行い、重み付けされた音響信号(y'(n))を出力して可聴信号を生成する第2の重み付け部(95)とを備える、騒音に能動的に影響を与えるためのシステムであって、
前記信号発生器(91)は、前記修正されたフィードバック信号(e(n))の関数として、前記音響信号(y(n))を生成するように構成され、
前記制御部(92)は、
前記処理すべき音を発生するエンジン(60)に接続されているクラッチまたはトランスミッションの状態、前記処理すべき音を発生するエンジン(60)の動作モード、前記処理すべき音を発生するエンジン(60)に接続されているバッテリーの電圧の内の少なくとも1つの関数として、前記制御信号(λ(n))を生成することを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記処理すべき音を測定し、これに対応する被測定信号(d(n))を出力するマイクロホン(41)をさらに備え、前記制御部(92)は、前記マイクロホン(41)から出力された前記被測定信号(d(n))の関数として、前記制御信号(λ(n))を生成するように構成されており、および/または
ユーザー入力を受信するように構成されたユーザーインターフェース(97)をさらに備え、前記制御部(92)は、前記ユーザーインターフェース(97)を介して受信した前記ユーザー入力の関数として、前記制御信号(λ(n))を生成するように構成されており、および/または
前記制御部(92)は、エンジンのエンジン制御部(61)に接続することができ、前記エンジン制御部(61)から受信した複数の信号の関数として、前記制御信号(λ(n))を生成するように構成されており、または、前記制御部(92)は、エンジンのスピードセンサー信号の関数として、前記制御信号(λ(n))を生成するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記信号発生器(91)は、さらに、前記処理すべき音に依存する入力波ベクトル(x(n))を受信し、前記入力波ベクトル(x(n))の関数として、前記可聴信号(y(n))を生成するように構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理すべき音を測定し、これに対応する被測定信号(d(n))を出力するマイクロホン(41)をさらに備え、前記信号発生器(91)は、前記被測定信号(d(n))の関数として、前記音響信号(y(n))を生成するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の重み付け部(93)は、現時点で前記信号発生器(91)から出力される音響信号(y(n))ではなく、それより前の時点で前記信号発生器(91)から出力された音響信号(y(n-1))を用いる、請求項1〜のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記信号発生器(91)から出力された前記信号(y(n-1))の前の時点(n-1)とは、現時点で前記信号発生器(91)から出力される前記音響信号(y(n))よりも、前記信号発生器(91)の単一の内部クロック周波数または内部クロック周波数の倍数の分だけ先行することを示す、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
エンジン制御部(61)および/またはエンジンスピードセンサーを備えた内燃機関(60)と、
請求項1〜の1項に記載のシステムとを含む自動車であって、
前記エンジン制御部(61)および/または前記エンジンスピードセンサーは、前記信号発生器(91)および/または前記制御部(92)に接続されるとともに、前記内燃機関(60)の回転速度および/またはエンジン負荷および/またはトルクを決定して、入力波ベクトル(x(n))として前記信号発生器(91)に出力するように構成されていることを特徴とする、自動車。
【請求項8】
音に能動的に影響を与えるための方法であって、
(S6)音響信号(y(n))を生成する工程と、
(S3)対応するフィードバック信号(e'(n))を得るために、前記音響信号(y(n))の関数として生成された音を処理すべき音に重畳することによって得られた重畳音を測定する工程と、
(S4)有理数の数列の値を示す制御信号(λ(n))を生成する工程と、
(S5)Z変換された前記音響信号(y(n))を音生成器の伝達関数のZ変換の推定値([S(z)])で畳み込み、得られた信号に前記制御信号(λ(n))で重み付けを行い、重み付けされた信号を反転させる工程と、
(S5)前記音響信号(y(n))を生成する工程において、修正されたフィードバック信号を用いて前記音響信号(y(n))が生成されるように、修正されたフィードバック信号(e(n))を得るために、重み付けされ、反転された前記信号を前記フィードバック信号(e'(n))に加算する工程と、
(S7)重み付けされた音響信号(y'(n))を得るために、前記音響信号(y(n))に、1と前記制御信号(λ(n))との差で重み付けを行う工程と、
(S8)前記重み付けされた音響信号(y'(n))を用いて、前記音響信号(y(n))の関数として生成される音を生成する工程とを含み、
前記制御信号(λ(n))を生成する工程において、クラッチまたはトランスミッションの状態、前記エンジンの動作モード、バッテリーの電圧および内燃機関の動作状態の少なくとも1つの関数として前記制御信号(λ(n))が生成される、方法。
【請求項9】
(S11)前記制御信号を生成する工程において、被測定信号(d(n))を用いて前記制御信号が生成されるように、前記処理すべき音を測定して、これに対応する被測定信号(d(n))を得る工程、および/または
(S12)前記制御信号(λ(n))を生成する工程において、ユーザー入力の関数として前記制御信号(λ(n))が生成されるように、ユーザー入力を受信する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
Z変換された前記音響信号(y(n))を音生成器の伝達関数のZ変換の推定値([S(z)])で畳み込み、得られた信号に前記制御信号(λ(n))で重み付けを行い、重み付けされた信号を反転させる前記工程(S5)において、現時点に対応する音響信号(y(n))ではなく、それより前の時点に対応する音響信号(y(n-1))が用いられる、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音に能動的に影響を与えるためのシステムおよび方法に関する。影響を受ける音は、例えば、車両の内燃機関の排気系または吸気系を伝搬する音でもよい。この場合、内燃機関は、影響を受ける音の騒音源を示す。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気系は、全体として、あらゆる動作状況において排気ガスが流れる構成要素からなり、これらの構成要素が一体となって排気系を形成している。構成要素としては、1つ以上の直線部分に加えて、例えば、1つ以上のターボチャージャー、1つ以上の接触コンバーター、および/または1つ以上のマフラー等が挙げられる。同様に、内燃機関の排気系には、あらゆる動作状況において空気も流れるため、通常、1つ以上のフィルター、バルブおよびコンプレッサーが設けられている。
【0003】
最近の排気系および吸気系は、内燃機関の動作に起因すると考えられる、排気系内または吸気系内の騒音に能動的に影響を与えるためのシステムによって補完されるようになっている。このようなシステムは、基本的には内燃機関で発生し、排気系または吸気系を伝搬する騒音に、人工的に生成された音波を重畳する。この音波により、排気系または吸気系を伝搬する騒音を消音するか、または変化させる。その結果、排気系または吸気系の外に放出される音は、特定の製造業者のイメージと合致し、顧客の興味を引き、法定限界値にも準拠するものとなる。
【0004】
これは、少なくとも1つの音生成器を設けることによって実現される。この音生成器は、排気系または吸気系と流体接続(fluidic connection)されることで、排気系または吸気系の内部に音を放射する。このように人工的に生成された音と、内燃機関で発生した音とが相互に重畳し、排気系または吸気系を同時に出る。上記システムは、消音のために用いられることもある。排気系または吸気系を伝搬する騒音の波と音生成器によって生成される音の波との完全な相殺的干渉を達成するためには、スピーカーから出る音波は、排気系または吸気系を伝搬する音波に対して、振幅および周波数に関しては一致するが、位相は180度ずれていなければならない。また、内燃機関の動作に起因すると考えられる、排気系または吸気系を伝搬する音波とスピーカーによって生成される音波とが、周波数は等しく、相互に位相が180度ずれているが、振幅に関しては一致しない場合でも、排気系または吸気系から出る騒音の減衰のみが行われることになる。
【0005】
以下に、技術水準に基づいた排気系を伝搬する音に能動的に影響を与えるためのシステムを有する排気系について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0006】
排気系4を伝搬する音に能動的に影響を与えるためのシステム7を有する排気系4は、遮音ハウジングとしての音生成器3を備える。音生成器3は、スピーカー2を含み、テールパイプ1の領域で音線(sound line)を介して排気系4に接続されている。テールパイプ1は、排気系4を通過する排気ガスおよび排気系4を伝搬する空気伝搬音(airborne sound)を外に放出するための開口部8を有する。テールパイプ1には、エラーマイクロホン5が設けられている。エラーマイクロホン5は、テールパイプ1の内部の音を測定する。エラーマイクロホン5による測定は、音線が排気系4に通じることで排気系4と音生成器3とが流体接続される領域の下流側にある部分で行われる。本明細書において、「下流」という用語は、排気系4のテールパイプ1における排気ガスの流れ方向に関する。排気ガスの流れ方向は、図2の矢印で示されている。排気系4のさらなる構成要素、例えば、接触コンバーターおよびマフラーは、排気系4と音生成器3とが流体接続される領域と、内燃機関6との間に設けられている(図示せず)。スピーカー2およびエラーマイクロホン5は、それぞれ制御部9に接続されている。さらに、制御部9は、CANバスを介して内燃機関6のエンジン制御部6'に接続されている。内燃機関6は、吸気系6"をさらに備える。エラーマイクロホン5によって測定された音およびCANバスを介して受信された内燃機関6の動作パラメータに基づき、制御部9は、スピーカー2に対して、排気系4のテールパイプ1の内部を伝搬する音に重畳されると所望の全体的な騒音を発生する信号を算出し、これをスピーカー2に出力する。制御部は、例えば、フィルタードx最小平均二乗(FxLMS)アルゴリズムを用いて、音を消去する場合は、スピーカーを介して音を出力することにより、エラーマイクロホンが測定したフィードバック信号/エラー信号をゼロに制御するように試みてもよく、または音に影響を与える場合は、既定の閾値を制御するように試みてもよい。CANバスの代わりに、別のバスシステムを用いることもできる。
【0007】
制御部の動作モードについて、能動騒音消去(ANC)制御の例に基づき、図3図5を参照しながらより詳細に説明する。
【0008】
内燃機関、コンプレッサーまたはプロペラ等の機械から発生する多くの騒音は、周期成分を有する。適切なセンサー(回転速度計等)で当該機械を監視することにより、時間依存入力波ベクトル(time-dependent input wave vector)x(n)を得ることができる。時間異存入力波ベクトルx(n)は、主に機械による騒音の基本周波数および高調波に依存している。この依存には、例えば、排気ガス背圧、排気ガスの質量流れ(mass flow)および排気ガスの温度等が関係することもある。多くの機械からは基本周波数が異なる騒音が発生するが、これらは、しばしばエンジン高調波(engine harmonics)と呼ばれる。
【0009】
図3に示すように、この時間依存入力波ベクトルx(n)は、騒音源P(z)の未知のZ変換伝達関数(unknown z-transformed transfer function)により、騒音源によって生成される信号(すなわち、重畳される発生騒音に対応する信号)であるd(n)に影響を及ぼすとともに、音に能動的に影響を与えるためのシステムの制御アルゴリズム(図3図4(a)、図4(b)および図6(a)において「ANCコア」と称する)により、音を発生させるために用いられる。この音は、重畳用信号u(n)に対応する音であり、被重畳信号d(n)に対応する音に重畳されると、フィードバック信号e(n)に対応する所望の騒音になる。重畳用信号u(n)は、(動作範囲内で)音生成器の音圧に対応する。音生成器は、音生成器の音圧に重畳される音を生成する。騒音源P(z)の伝達関数は、実験的に決定される。
【0010】
図3において、重畳は総和記号Σで表されており、(例えば、排気ガスライン内の)音響領域(acoustic area)で行われる。重畳によって生じるフィードバック信号e(n)は、エラーマイクロホン等で検出され、フィードバック信号として制御アルゴリズム(ANCコア)に戻る。
【0011】
【数1】
【0012】
従って、フィードバック信号e(n)は、重畳騒音の音圧に対応する。
【0013】
図3において、P(z)は、騒音源の伝達関数のZ変換である。この伝達関数P(z)は、騒音を発生する機械の基本変数(この場合、回転速度を示す時間依存入力波ベクトルx(n))のほかにも、例えば、音伝搬システム(sound-carrying system)の圧力、質量流量および温度等の多数の物理パラメータに依存することがある。騒音源の伝達関数P(z)は、一般に正確には分からないため、実験的に決定されることが多い。
【0014】
図3に示されたANC制御のモデルには欠点があることが知られている。なぜなら、制御アルゴリズムに戻る信号であって、騒音源の伝達関数P(z)に基づいて騒音源によって生成される被重畳信号d(n)に、重畳用信号u(n)に応じて音生成器によって生成される音を重畳することによって得られる信号であるフィードバック信号e(n)が、騒音源の伝達関数P(z)によるものではない成分を含んでいるからである。
【0015】
次に、図4(a)および図4(b)に示すように、ANC制御のモデルは、音生成器の伝達関数S(z)によって拡張される。
【0016】
この音生成器の伝達関数S(z)は、一方では、電場で用いられるデジタル−アナログ(D/A)変換器、フィルター、増幅器および音生成器等の欠点だけでなく、音の生成/音の重畳の位置からフィードバック信号e(n)を測定するエラーマイクロホンの位置までの経路の欠点も考慮している。このような経路は、音響領域において、騒音源の伝達関数P(z)ではまだ考慮されていない。最終的に、音生成器の伝達関数S(z)は、電気領域において、これに隣接するエラーマイクロホン、前置増幅器、アンチエイリアスフィルターおよびアナログ−デジタル(A/D)変換器等の欠点を考慮している。
【0017】
従って、図3のモデルを拡張する場合、図4(a)および図4(b)のモデルのように、ANCコアから出力された信号y(n)は、音生成器の伝達関数S(z)を考慮する。これにより、ANCコアから出力された信号y(n)が信号u(n)に変換されることになる。ここで、重畳用信号u(n)は、音生成器によって生成される信号の(数学的に理想化された)振幅に対応する。
【0018】
音生成器の伝達関数S(z)は、制御部の出力からフィードバック信号までの全領域を考慮する。
【0019】
騒音源から騒音が発生した場合(すなわち、騒音源をオンにした場合)、音生成器の伝達関数S(z)は次式で求められる。
【0020】
【数2】
【0021】
また、重畳用信号u(n)は、信号s(n)と信号y(n)との畳み込み(convolution)に相当する。
【0022】
【数3】
【0023】
式中、s(n)は音生成器の伝達関数S(z)のパルス応答である。
【0024】
e(z)、y(z)およびu(z)は、それぞれ信号e(n)、y(n)およびu(n)をZ変換したものである。
【0025】
図4(b)に、図4(a)のモデルをより詳細に示す。図から分かるように、ANCコアから出力される信号y(n)は、2つの正弦波振動sin(ω0n)、cos(ω0n)からなる。これらの正弦波振動は、正弦波発生器から出力され、相互に90度ずらしてから、2つの増幅器により、異なるゲイン係数w1(n)、w2(n)で予め増幅されることで、振幅が異なり、かつ相互に90度ずれている2つの信号y1(n)、y2(n)が生成されるようになる。また、適応回路は、フィードバック信号e(n)の関数として、2つの増幅器のゲインをそれぞれに応じて動的に適応させる。
【0026】
例えば、内燃機関のある回転速度RPMに対して、i次のエンジン高調波EOiが消去される場合、消去されることになる基本周波数f0は次式で求められる。
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
【0029】
図4(b)において、ゲインを適応させるのに用いられる適応回路は、クロック周波数で動作して、ANCコアのクロック周波数を設定する。
【0030】
図5に、周波数(Freq.)に対する騒音(noise(n))の振幅(Magn)のスペクトルプロファイルを模式的に示す。ここで、被重畳信号d(n)は、任意の基本周波数f0における現在の音圧をパスカルで表している。‖d(f)‖は、高調波に対して規定された時間における振幅の値を示している。
【0031】
この場合、ANC制御の入力波ベクトルx(n)は、以下のように定義される(ベクトルは太字で印刷されている)。
【0032】
【数6】
【0033】
1999年6月のIEEE会報、第87巻、第6号に掲載されたSen M. KuoおよびDennis R. Morganの論文「能動騒音制御:チュートリアルレビュー(Active Noise Control: A tutorial review)」において、ANC制御により、立ち上がり時間後のフィードバック信号e(n)が最小化されることが証明された。この論文の全体、特に狭帯域フィードフォワード制御についての記載を参照する。
【0034】
【数7】
【0035】
式中、xT(n)は入力波ベクトルx(n)の転置、すなわち、その行と列を入れ替えたベクトルを示す。
【0036】
ここでは、ゲイン係数から形成されたベクトルw(n)=[w1(n), w2(n)]は、ANC制御の位相ベクトルと呼ばれる。
【0037】
図4(b)に示すように、位相ベクトルw(n)によって各正弦波のゲインを適応させる。
【0038】
【数8】
【0039】
式中、μは適応率(rate of adaptation)を示す。
【0040】
音生成器の伝達関数S(z)は、毎回ANCコアに知られていないため、代わりに推定値[S(z)]が用いられる。従って、適応は次式のようになる。
【0041】
【数9】
【0042】
式中、[s(n)]は[S(z)]のパルス応答である。
【0043】
技術水準において、a)被重畳信号d(n)は単純波(simple wave)であり、b)使用されるアクチュエーターから振幅‖u(n)‖≧‖d(n)‖ が得られると仮定すると、フィードバック信号e(n)の平均値(AVG)を著しく低下できることが証明された。
【0044】
【数10】
【0045】
上記説明はあくまで例示であり、本発明には、ANCコアから出力される信号y(n)を生成する他の公知の可能性も含まれている。
【0046】
従来技術による音に能動的に影響を与えるためのシステムにとって、原則として、騒音源から発生した騒音を大幅または完全に消去しようと試みることは不利になる。これにより、使用されているアクチュエーターに極めて高い負荷がかかることになるため、非常に限られた範囲でしか(音設計という意味で)音にさらなる影響を与えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
ゆえに、本発明の目的は、音に影響を与える際の自由度が高く、好ましくは使用されているアクチュエーターの制限を解除するような、音に能動的に影響を与えるためのシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
音に能動的に影響を与えるためのシステムの実施形態は、音生成器と、エラーセンサー(エラーマイクロホン等)と、信号発生器(ANCコア)と、制御部と、第1の重み付け部(first weighter)と、加算器と、第2の重み付け部(second weighter)とを備える。音生成器は、可聴信号が音生成器に送信されたときに音を生成し、生成した音を処理すべき音に重畳するように構成されている。一実施形態によれば、処理すべき音とは、内燃機関で発生し、内燃機関で駆動する車両の排気系または吸気系を伝搬する音でもよい。エラーセンサー(例えば、圧力センサーでもよい)は、音生成器が生成した音を処理すべき音に重畳することによって得られた重畳音(superimposed sound)を測定し、対応するフィードバック信号を出力するように構成されている。音生成器が用いる可聴信号は音響信号に基づくものであり、この音響信号は、信号発生器によって生成され、出力される。制御部(信号発生器とは別の構成要素でもよく、または信号発生器と一体化されていてもよい)は、制御信号を生成するように構成されている。制御信号は、有理数の数列(sequence of rational numbers)の値を示す(または有理数の数列の値である)。「有理数の数列」とは、制御信号が一定ではなく、制御信号として新たな値が時間とともに何度も制御部から出力されることを表している。従って、制御信号は動的である。0より大きい有理数の範囲には、0より小さい範囲、0の値、0よりも大きく1までの範囲および1より大きい範囲が含まれる。制御信号は、上記全ての範囲内の値となり得る。信号発生器から出力された音響信号は、第1の重み付け部によってZ変換され、音生成器の伝達関数のZ変換の推定値([S(z)])で畳み込まれた後、制御部から出力された制御信号を乗じる。第1の重み付け部は、得られた信号に「−1」を掛けて反転させる。このように変換され、畳み込まれ、重み付けされ、かつ反転された音響信号は、加算器に出力される。さらに、加算器は、エラーセンサーが生成したフィードバック信号を受信する。加算器において、重み付けされ、反転された音響信号がフィードバック信号に加算され、これにより修正されたフィードバック信号が信号発生器に出力される。信号発生器は、修正されたフィードバック信号を用いて、音響信号を生成する。従って、音響信号は、(特に)修正されたフィードバック信号に依存する。第2の重み付け部は、信号発生器から出力された音響信号に、1と制御部が生成した制御信号との差を乗じることにより、重み付けされた音響信号を出力して、音生成器のための可聴信号を生成する。
【0049】
従って、制御信号を用いた結果、一方では、意図的に処理すべき音の完全な消去を行わない、重み付けされた音響信号が音生成器に出力され、他方では、音響信号の重み付けによるフィードバック信号もそれに応じて修正される。これにより、信号発生器(ANCコア)は、修正されたフィードバック信号を考慮して音響信号を生成する。制御信号は1より大きい値を取ることもあるため、処理すべき音の増幅すら起こる可能性がある。しかし、制御信号は経時的に一定ではなく、数列である。このように、処理すべき音の関数として、または異なる動作状態の関数として、別々の制御信号を用いることができる。これらの制御信号を用いれば、制御信号に依存するファクターにより、処理すべき音を上げたり下げたりすることができる。例えば、処理すべき音の音圧が低い場合、あるファクターによる増加が望まれることがある。また、処理すべき音の音圧が高い場合、ある値による減少が望まれることがある。信号発生器によって生成される音響信号も同様に一定ではないが、音響信号は、修正されたフィードバック信号に特に依存するため、処理すべき音にも間接的に依存するということを強調しておく。しかし、処理すべき音を増加または減少させる程度は、基本的には制御信号によって決まる。
【0050】
一実施形態によると、制御部は、入力波ベクトルの関数として、制御信号を生成する。入力波ベクトルは、処理すべき音の音源の状態に依存するので、処理すべき音と直接的または間接的に関係がある。従って、制御信号は入力波ベクトルの関数となり得る。
【0051】
一実施形態によると、制御部は、一定の時間間隔で、それゆえに周期的に、制御信号を更新する。
【0052】
一実施形態によると、入力波ベクトルは、エンジンの少なくとも1つのパラメータを表している。すなわち、パラメータとしては、騒音源を示す回転速度またはエンジン負荷、騒音源を制御するアクセルの位置またはアクセルの傾き(単位時間当たりのアクセルの位置の変化)、騒音源に接続されているクラッチまたはトランスミッションの状態、騒音源の動作モード(例えば、車両の内燃機関の「スポーツ」または「エコノミー」)、騒音源に接続されているバッテリーの電圧、および騒音源の動作状態(例えば、騒音源の起動を準備する(内燃機関の場合、イグニッションをオンにする)、騒音源を起動させる、騒音源が作動している)が挙げられる。
【0053】
一実施形態によると、上記システムは、処理すべき音を測定し、これに対応する被測定信号を出力するマイクロホンをさらに備えてもよい。処理すべき音は、例えば、内燃機関で駆動する車両の排気系を伝搬する音でもよい。この場合、上記マイクロホンは、排気系または排気系の内部において、排気系を伝搬する排気ガスの流れ方向に対して、排気系を伝搬する音に音生成器が生成した音が重畳される位置の上流側にある部分に配置することができる。この場合、制御部は、マイクロホンから出力された被測定信号の関数として、制御信号を生成するように構成されている。この場合、制御部の入力波ベクトルは、マイクロホンの被測定信号である。すなわち、処理すべき音を測定することによって入力波ベクトルが得られるというところに、入力波ベクトルの処理すべき音への依存関係があると考えられる。
【0054】
一実施形態によると、制御信号は、現在の入力波ベクトルに基づいて算出されるのではなく、それより時間的に前の入力波ベクトルに基づいて算出される。このような時間のずれは、信号発生器の内部クロック周波数によるものだが、誤差をできる限り低く抑えるために、なるべく少なくなるように選択されることが好ましい。一実施形態によると、時間のずれは、単一のクロック周波数か、またはクロック周波数の2〜50倍に等しい。一実施形態によると、上記時間的に前の入力波ベクトルの発生は、1秒前未満、より好ましくは0.5秒前未満、さらに好ましくは0.25秒前未満である。
【0055】
制御部による制御信号の生成に用いられる入力波ベクトルが信号発生器による音響信号の生成に用いられる入力波ベクトルと全く同じではなく、それより時間的に少し前の入力波ベクトルである場合、より強固で、ビルドアップしにくいシステムになる。
【0056】
これに代えて、またはこれに加えて、一実施形態によると、上記システムは、ユーザー入力を受信するように構成されたユーザーインターフェースをさらに備えてもよい。この場合、制御部は、ユーザーインターフェースを介して受信したユーザー入力の関数として、制御信号を生成するように構成されている。従って、この場合、入力波ベクトルの処理すべき音への依存関係は、対応するユーザー入力によって間接的に成立する。ユーザーインターフェースは、例えば、キーボードでもよく、または位置もしくは傾き(単位時間当たりの変化)が検出されるアクセルでもよい。
【0057】
これに代えて、またはこれに加えて、制御部は、エンジンのエンジン制御部に接続することができ、エンジン制御部から受信した複数の信号の関数として、制御信号を生成するように構成されている。この場合、入力波ベクトルの処理すべき音への依存関係は、エンジン制御部から出力された信号を介して成立する。
【0058】
これに代えて、またはこれに加えて、制御部は、エンジンのスピードセンサー信号の関数として、制御信号を生成するように構成されている。
【0059】
一実施形態によると、信号発生器は、さらに、処理すべき音に依存する(ゆえに、処理すべき音と直接的または間接的に関係がある)入力波ベクトルを受信し、この入力波ベクトルの関数として、音響信号を生成するように構成されている。
【0060】
一実施形態によると、この場合、上記システムは、処理すべき音を測定し、これに対応する被測定信号を出力するマイクロホンを備えてもよい。処理すべき音は、例えば、内燃機関で駆動する車両の排気系を伝搬する音でもよい。この場合、上記マイクロホンは、排気系または排気系の内部において、排気系を伝搬する排気ガスの流れ方向に対して、排気系を伝搬する音に音生成器が生成した音が重畳される位置の上流側にある部分に配置することができる。この場合、信号発生器は、マイクロホンから出力された被測定信号の関数として、音響信号を生成するように構成されている。これに代えて、またはこれに加えて、信号発生器は、エンジンのエンジン制御部および/またはスピードセンサーに接続可能にしてもよく、エンジン制御部および/またはスピードセンサーから受信した信号の関数として、音響信号を生成するように構成されてもよい。
【0061】
一実施形態によると、信号発生器により、音響信号は、現在の(被測定)信号に基づいて算出されるのではなく、それより時間的に前の(被測定)信号に基づいて算出される。このような時間のずれは、信号発生器のクロック周波数によるものだが、誤差をできる限り低く抑えるために、なるべく少なくなるように選択されることが好ましい。一実施形態によると、時間の間隔(space in time)は、信号発生器の単一のクロック周波数か、またはクロック周波数の2〜50倍である。上記時間的に前の被測定信号の発生は、1秒前未満、より好ましくは0.5秒前未満、さらに好ましくは0.25秒前未満である。
【0062】
一実施形態によると、音生成器はスピーカーである。スピーカーは適切な筐体に収容されており、必要に応じて音導管(sound conductor)を設けてもよい。一実施形態によると、音生成器は、T継手またはY継手を介して、内燃機関で駆動する車両の排気系に接続されている。
【0063】
一実施形態によると、エラーセンサーは、内燃機関で駆動する車両の排気系または排気系の内部において、排気系を伝搬する排気ガスの流れ方向に対して、排気系を伝搬する音に音生成器が生成した音が重畳される位置の下流側にある部分に配置される。
【0064】
一実施形態によると、制御部は、数式に基づいて入力波ベクトルから制御信号を算出する。別の実施形態によると、制御部には、異なる入力波ベクトルまたは入力波ベクトルの範囲に適した制御信号を記憶したテーブルが格納されている。この場合、制御部は、テーブルから特定の入力波ベクトルに属する制御信号を読み取って出力するように構成されている。入力波ベクトルに属する制御信号は、例えば、実験的に決定されてもよい。このようなテーブルは、「データ入力」とも呼ばれる。
【0065】
一実施形態によると、信号発生器は、正弦関数に従う時間曲線を有する第1の信号を生成し、かつ第1の信号に対して90度ずれている第2の信号を生成する正弦波発生器と、第1の信号を増幅するための第1の増幅器と、第2の信号を増幅するための第2の増幅器と、第1および第2の増幅器によって増幅された第1および第2の信号が重畳されるヘテロダイン発振器とを備え、ヘテロダイン発振器によって重畳された信号を音響信号として出力するように構成されている。さらに、信号発生器は、修正されたフィードバック信号の関数として、第1および第2の増幅器のゲインを制御する適応回路を備える。一実施形態によると、上記システムが内燃機関で駆動する車両に用いられる場合、適応回路は、内燃機関のエンジン制御部および/またはエラーセンサーに接続されるとともに、エンジン制御部から受信した複数の入力波ベクトルの関数として、第1および第2の増幅器のゲインを選択するように構成されている。内燃機関で駆動する車両の場合、一実施形態によると、これらの入力波ベクトルは、車両の1つ以上の速度、内燃機関の1つ以上の回転速度、内燃機関の1つ以上のトルク、排気系を伝搬する排気ガスの1つ以上の温度、または排気系を伝搬する排気ガスもしくは吸気系に取り込まれる空気の1つ以上の質量流れであればよい。
【0066】
一実施形態によると、上記システムが内燃機関で駆動する車両に用いられる場合、正弦波発生器は、内燃機関のエンジン制御部に接続されるとともに、エンジン制御部から受信した複数の入力波ベクトルの関数として、第1および第2の信号の周波数を選択するように構成されていてもよい。一実施形態によると、これらの入力波ベクトルは、車両の1つ以上の速度、内燃機関の1つ以上の回転速度もしくは内燃機関の1つ以上のトルク、排気系を伝搬する排気ガスの1つ以上の温度、または排気系を伝搬する排気ガスもしくは吸気系に取り込まれる空気の1つ以上の質量流れであればよい。
【0067】
一実施形態によると、正弦波発生器は、適応回路に接続されるとともに、適応回路から受信した複数の信号の関数として、第1および第2の信号の周波数を選択するように構成されていてもよい。これにより、音響信号に基づいて生成された音と処理すべき音とが一致するにもかかわらず、相互の位相のずれが180度にならないことを回避することができる。
【0068】
一実施形態によると、上記発生器は、狭帯域フィードフォワード制御を用いて、フィードバック信号を考慮した音響信号を生成する。
【0069】
一実施形態によると、第1の重み付け部は、現時点で信号発生器から出力される音響信号ではなく、それより前の時点で信号発生器から出力された音響信号を用いるように構成されている。一実施形態によると、信号発生器から出力された信号の前の時点とは、現時点で信号発生器から出力される音響信号よりも、信号発生器(91)の1つの内部クロック周波数または内部クロック周波数の倍数の分だけ先行していればよい。
【0070】
自動車の実施形態は、上記制御部に加えて、エンジン制御部および/またはスピードセンサーを備えた内燃機関を有する。この場合、エンジン制御部および/またはスピードセンサーは、信号発生器および制御部の少なくとも一方に接続されるとともに、内燃機関の回転速度および/またはエンジン負荷および/またはトルクを決定して、入力波ベクトルとして信号発生器および/または制御部に出力するように構成されている。
【0071】
音に能動的に影響を与えるための方法の実施形態は、
音響信号を生成する工程と、
対応するフィードバック信号を得るために、上記信号の関数として(例えば、音生成器により)生成された音を処理すべき音(例えば、内燃機関で駆動する車両の排気系を伝搬する音)に重畳することによって得られた重畳音を測定する工程と、
有理数の数列の値を示す制御信号を生成する工程と、
音響信号をZ変換し、変換された信号を音生成器の伝達関数のZ変換の推定値([S(z)])で畳み込み、得られた信号に制御信号で重み付けを行い、重み付けされた信号を反転させる工程と、
音響信号を生成する工程において、修正されたフィードバック信号を用いて音響信号が生成されるように、修正されたフィードバック信号を得るために、重み付けされ、反転された信号をフィードバック信号に加算する工程と、
重み付けされた音響信号を得るために、音響信号に、1と制御信号との差で重み付けを行う工程と、
重み付けされた音響信号を用いて、音響信号の関数として生成される音を生成する工程とを含む。
【0072】
一実施形態によると、制御信号を生成する工程において、処理すべき音に直接的または間接的に依存する入力波ベクトルを用いて、制御信号を生成することができる。
【0073】
一実施形態によると、上記方法は、制御信号を生成する工程において、被測定信号を用いて制御信号が生成されるように、処理すべき音を測定して、これに対応する被測定信号を得る工程をさらに含む。
【0074】
一実施形態によると、上記方法は、制御信号を生成する工程において、ユーザー入力の関数として制御信号が生成されるように、ユーザー入力を受信する工程をさらに含む。
【0075】
一実施形態によると、これは、エンジンの回転速度またはエンジン負荷、アクセルの位置またはアクセルの傾き、クラッチまたはトランスミッションの状態、エンジンの動作モード、バッテリーの電圧および内燃機関の動作状態の少なくとも1つに依存する。
【0076】
一実施形態によると、Z変換された信号を音生成器の伝達関数のZ変換の推定値で畳み込み、得られた信号に制御信号で重み付けを行い、重み付けされた信号を反転させる工程において、現時点に対応する音響信号ではなく、それより前の時点に対応する音響信号が用いられる。
【0077】
本明細書および特徴を列挙する特許請求の範囲において用いられている「含む(comprise)」、「有する(have)」、「伴う(involve)」、「含む(contain)」および「備えた(with)」ならびにそれらの文法的変形は、一般に、方法の工程、装置、範囲、変数等の特徴を列挙するが、その特徴を完全に網羅しているわけではないとみなされなければならず、他のもしくはさらなる特徴の存在、または他のもしくはさらなる特徴のグループの存在を決して除外するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲および図面とともに、以下の例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。図面においては、同様または類似の参照要素は、同様または類似の参照符号により示される。本発明は、記載された例示的な実施形態に限定されるわけではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって定められる。特に、本発明の実施形態では、以下に提供される実施例とは異なる数および組合せにおいて、個々の特徴が実現され得る。以下の本発明の例示的な実施形態の説明において、添付の図面を参照する。
図1図1は、技術水準に基づく、排気系を伝搬する音に能動的に影響を与えるためのシステムを示す斜視図である。
図2図2は、図1の排気系を伝搬する音に能動的に影響を与えるためのシステムを示す概略ブロック図である。
図3図3は、技術水準に基づく、音に能動的に影響を与えるためのシステムを示す概略信号フローチャートである。
図4図4(a)および図4(b)は、技術水準に基づく、音に能動的に影響を与えるためのシステムを程度の差こそあれ詳細に示す概略信号フローチャートである。
図5図5は、処理すべき騒音の振幅曲線を示す概略図である。
図6図6(a)および図6(b)は、本発明の一実施形態に係る、音に能動的に影響を与えるためのシステムを程度の差こそあれ詳細に示す概略信号フローチャートである。
図7図7は、図6(a)および図6(b)のシステムを備えた内燃機関で駆動する車両を示す概略図である。
図8図8は、本発明による排気系を伝搬する音に能動的に影響を与えるための方法を示すフローチャートである。
図9図9(a)は、図6(a)および図6(b)のシステムを用いた音圧レベルの曲線を示す概略図である。図9(b)は、図6(a)および図6(b)のシステムを用いたのではなく、技術水準に基づく音圧レベルの時間曲線を示す概略図である。
図10図10は、図6(a)および図6(b)のシステムを用いた音圧レベルの時間曲線を示す概略図であって、比較のため、技術水準に基づく時間間隔もフェードインさせている。
図11図11(a)および図11(b)は、音に影響を与えるために、さらに受動的手段を取った場合の、図6(a)および図6(b)のシステムを用いた音圧レベルの時間曲線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下に、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0080】
図7に模式的に示すように、自動車は、内燃機関60および排気系40を備え、排気系40を介して、動作中に内燃機関60で発生した排気ガスおよび音がテールパイプ80に送られる。排気系40内で排気ガスを浄化し、音を弱めてから、テールパイプ80を介して、周辺の領域に排気ガスおよび音を放出する。
【0081】
図6(a)および図6(b)は、本発明の一実施形態に係る、音に能動的に影響を与えるためのシステムを程度の差こそあれ詳細に示す概略信号フローチャートであり、内燃機関60で発生し、排気系40を伝搬した騒音は、被重畳信号d(n)に対応する。nの依存性は、内燃機関60で発生した騒音が内燃機関60の動作状態(例えば、内燃機関60の回転速度および/またはトルク)に依存するため、時間とともに変化していくことを表すものである。図6(a)および図6(b)のフローチャートはよく似ていることから、以下において、それらをまとめて説明し、両者の違いについてのみ具体的に述べる。
【0082】
排気系40を伝搬する騒音は、排気系40内に配置されたマイクロホン41で受音される。マイクロホン41は、被重畳信号d(n)に対応する被測定信号を出力する。
【0083】
排気系40内の排気ガスの流れ方向に対して、スピーカーを備えた音生成器20(アクチュエーター)は、マイクロホン41の下流側で、Y管を介して、排気系40に連結されている。重み付けされた音響信号y'(n)がスピーカーに送られると、スピーカーは(音生成器の伝達関数S(z)および対応する成分を考慮して)、重畳に用いられるように重み付けされた信号u'(n)に対応する音を生成し、排気系40を伝搬した騒音に当該信号を重畳する。
【0084】
スピーカーが生成した音に対応する、重畳に用いられるように重み付けされた信号u'(n)に対して、排気系40を伝搬する騒音に対応する被重畳信号d(n)の位相が90度ずれており、かつ信号d(n)および信号u'(n)の振幅が相互に一致する場合(すなわち、d(n) = −u'(n))、排気系40を伝搬する騒音は完全に消去されることになる。
【0085】
テールパイプ80を介して出力される音は、エラーセンサー50によって測定される。エラーセンサー50は、エラーマイクロホンとして構成されており、排気系40内の排気ガスの流れ方向に対して、排気系40を伝搬する騒音にスピーカーが生成した音が重畳される位置の下流側に配置される。これにより、エラーセンサー50は、測定された音に対応する、修正されていないフィードバック信号e'(n)を出力する。
【0086】
重み付けされた音響信号y'(n)は、スピーカーを動作させるために、能動騒音制御システム90から供給される。能動騒音制御システム90は、信号発生器/ANCコア91およびANC拡張部(ANC expansion)96を含む。
【0087】
信号発生器/ANCコア91は、正弦波発生器、第1の増幅器、第2の増幅器および適応回路を備える。ここで、図4(b)の説明を参照する。
【0088】
ANC拡張部96は、制御部92、第1の重み付け部93、第2の重み付け部95(第1および第2の重み付け部は、調整可能なゲインを有する増幅器で具体化される)および加算器94を備える。
【0089】
図6(b)に示す実施形態において、制御部92を備えた信号発生器/ANCコア91は、第1のマイクロプロセッサで具体化される。第1および第2の重み付け部93、95は、第2のマイクロプロセッサで具体化される。加算器94は、第3のマイクロプロセッサで具体化される。この代わりとして、上記構成要素を一体化して単一のマイクロプロセッサとしてもよい。あるいは、図6(a)に示すように、別のマイクロプロセッサで制御部92を具体化してもよい。
【0090】
信号発生器/ANCコア91および制御部92は、内燃機関60のエンジン制御部61に接続されており、エンジン制御部61から、内燃機関60の現在の回転速度および現在のトルクを示す入力波ベクトルx(n)を受信する。さらに、信号発生器/ANCコア91および制御部92は、図6(b)に示す(但し、図6(a)には示されていない)実施形態において、マイクロホン41の被測定信号d(n)と、ユーザーインターフェース97を介したユーザー入力とを受信する。図示された実施形態では、ユーザーインターフェース97はキーボードであり、ユーザーは、このキーボードを用いて、車両から出される音が多いか少ないかを入力することができる。しかし、本発明は、このようなユーザーインターフェースに限定されない。
【0091】
受信した回転速度、トルクおよび被測定信号d(n)に基づき、信号発生器/ANCコア91は、公知の方法(例えば、FxLMSアルゴリズム)を用いて、音響信号y(n)を生成する。この音響信号y(n)とは、当該音響信号y(n)でスピーカーを動作させれば、排気系40を伝搬する音に対応する被重畳信号d(n)を消去するのに都合がよいとされる信号である。この場合、信号発生器/ANCコア91は、音生成器20の伝達関数S(z)を考慮する。
【0092】
さらに、制御部92は、受信した回転速度、受信したトルク、受信した被測定信号d(n)(但し、図6(b)に示す変形例おいてのみ)および受信したユーザー入力の関数として、制御信号λ(n)を生成する。具体的には、本実施形態では、自動車における特定の回転速度、トルク、被測定信号およびユーザー入力について、予め実験的に決定された複数の制御信号λ(n)を制御部92に記憶しておくため、制御部92は、特定の動作状態に適した制御信号λ(n)を選択するだけでよい。記憶された制御信号λ(n)は、それぞれが有理数である。従って、有理数の数列を示す一連の制御信号λ(n)が時間とともに制御部92から出力される。
【0093】
信号発生器/ANCコア91および制御部92は、それぞれ音響信号y(n)および制御信号λ(n)を第1および第2の重み付け部93、95に出力する。
【0094】
第1の重み付け部93は、音響信号y(n)に制御信号λ(n)で重み付けを行い、重み付けされた信号を反転させることにより、音生成器20の伝達関数S(z)の推定値[S(z)]を考慮して重み付けされ、反転された信号λ(n) [u(n-1)]を得る。ここで、[u(n-1)]は、重畳のためにその前に生成された信号を示す。重み付けされ、反転された音響信号λ(n) [u(n-1)]は、第1の重み付け部93から出力された後、加算器94において、エラーセンサー50から受信された、修正されていないフィードバック信号e'(n)に加算される。これにより、修正されたフィードバック信号e(n)が得られる。
【0095】
信号発生器/ANCコア91は、修正されたフィードバック信号e(n)を受信し、これを考慮して音響信号y(n)を生成する。従って、この音響信号y(n)でスピーカーを動作させると、排気系40を伝搬する音d(n)を消去するのに適している。
【0096】
第2の重み付け部95は、音響信号y(n)に1-λ(n)で重み付けを行い、重み付けされた音響信号y'(n)を音生成器20のスピーカーに出力する。これにより、スピーカーは、重み付けされた音響信号y'(n)で動作する。すなわち、音生成器20の伝達関数S(z)を考慮して、重畳に用いられるように重み付けされた信号u'(n)に対応する音を、被重畳信号d(n)に対応し、排気系を伝搬する音に重畳する。
【0097】
本願において、u(n)と[u(n)]との違いは、u(n)が音生成器20の実際の伝達関数S(z)に基づいており、[u(n)]が音生成器20の伝達関数の推定値[S(z)]に基づいていることを表している。音生成器の伝達関数を適切に推定すれば、[S(z)]、u(n)および[u(n)]は相互に対応する。
【0098】
信号発生器/ANCコア91によって最初に生成された音響信号y(n)は、ある値で既に重み付けされたものなので、重み付けされた音響信号y'(n)でスピーカーを動作させても、もはや排気系40を伝搬する音を完全に消去することはできない。排気系を伝搬する音は、むしろ一定の割合しか消去されず、その割合は制御信号λ(n)によって決まる。
【0099】
従って、この場合、信号発生器/ANCコア91、制御部92、第1の重み付け部93および第2の重み付け部95において実行されるアルゴリズムは、以下の検討に基づくものである。
【0100】
排気系40を伝搬する消去すべき音に対応する被重畳信号d(n)は、所定のエンジン高調波および回転速度(それゆえに基本周波数f0)に対応する入力波ベクトルx(n)について、時間とともに位相および振幅を変化させることが可能な基本高調波信号(basically harmonic signal)として表すことができる。
【0101】
【数11】
【0102】
式中、「n」は時間曲線(離散的時系列(time-discrete series)の時間指数)を示す。φd(n)は「システム位相(system phase)」と呼ばれ、騒音源のみに依存する。
【0103】
スピーカーから消去/重畳のために出力された音も、それに応じて同様に、時間とともに位相および振幅を変化させることが可能な高調波信号u(n)に対応していなければならない。
【0104】
【数12】
【0105】
式中、D(n)およびφd(n)は、当初は未知である。しかし、ANC制御が収束するとすぐに、以下の近似が認められる。
【0106】
【数13】
【0107】
(ここで、u(n)およびd(n)は同相である。)
従って、u(n)は、以下のように書き換えられる。
【0108】
【数14】
【0109】
排気系40を伝搬する音に対応する被重畳信号d(n)に、スピーカーから出力される音に対応する重畳用信号u(n)を重畳した後、フィードバック信号e(n)として、テールパイプ(80)の残留音(residual sound)は、周波数f0において、下記式のように得られる。
【0110】
【数15】
【0111】
その結果、e(n)は、同様に高調波信号の一次結合となるため、「システム位相」であるφd(n)の関数として、同様に表すことができる。
【0112】
【数16】
【0113】
この場合、振幅E(n)は、本発明のシステムおよび方法によって制御される。
【0114】
騒音消去に成功すると、しばらくしてからe(n)がゼロに収束する。このため、騒音消去が成功したときは、下記式が成り立つ。
【0115】
【数17】
【0116】
この式は、以下のように書き換えられる。
【0117】
【数18】
【0118】
この式は、さらに以下のように書き換えられる。
【0119】
【数19】
【0120】
式中、λは、数列λ(n)の実数である。数列λ(n)と同じように、上記式についても、時間nごとに算出することができる。これにより、具体的な時間nの具体的な値λではなく、離散的時系列を一般的に用いることが可能になる。
【0121】
図6(a)および図6(b)にも示されている、以下の新たな変数e'(n)、u'(n)およびy'(n)を導入する。
【0122】
【数20】
【0123】
(ここで、値e(n)はゼロに収束する。)
【0124】
【数21】
【0125】
(式中、convは2つの時系列の畳み込みを示す。)
【0126】
【数22】
【0127】
既に述べたように、本発明のシステムおよび方法によって達成しようとしているのは、完全な騒音消去ではなく、あくまでも設定可能な減衰である。従って、重畳後(FINAL)の所望の(修正されていない)フィードバック信号は、以下のように得られる。
【0128】
【数23】
【0129】
同時に、完全な騒音消去の場合、下記式が成り立つ。
【0130】
【数24】
【0131】
さらに、この式から、下記式が得られる。
【0132】
【数25】
【0133】
よって下記式となる。
【0134】
【数26】
【0135】
エラーセンサー50によって測定された(修正されていない)フィードバック信号はファクターに対応する。音に影響を与えるためのシステムおよび方法が用いられない場合、このファクターに排気系を伝搬する音に対応する被重畳信号を乗じる。
【0136】
変数λ(n)の分析により、変数λ(n)は処理すべき音d(n)に依存するため、処理すべき音と直接的または間接的に関係があることが示されている。このような依存関係は、内燃機関で駆動する車両の排気系とともに用いられる、図示されたシステムにおいて、以下のパラメータ(params)によって明らかにされている。すなわち、パラメータとしては、エンジンの回転速度またはエンジン負荷、エンジンを制御するアクセルの位置またはアクセルの傾き、エンジンに接続されているクラッチまたはトランスミッションの状態、エンジンの動作モード、エンジンに接続されているバッテリーの電圧、および内燃機関の動作状態が挙げられる。
【0137】
別の関数であるΞ(params)は、上記依存関係(パラメータ)に依存することから、変数λ(n)を表すのに導入することができる。
【0138】
【数27】
【0139】
従って、変数λ(n)の値は、実関数Ξ(params)によって時間nごとに算出することができる。この式の再配置から明らかなように、(一定の許容範囲がある)重畳後に基本周波数f0で残留する音のフィードバック信号は、同じ周波数の音と自由に設定可能な係数λとの積に等しい。
【0140】
変数u'(n)に関して、これは下記式を意味する。
【0141】
【数28】
【0142】
この式から、下記式が得られる。
【0143】
【数29】
【0144】
e'(n)に関して、u(n)自体が今度はe(n)に依存するため、下記式から代数ループの問題が起こる。
【0145】
【数30】
【0146】
この問題は、時間的に少し前のu(n)の値を用いることによって回避することができる(このような時間的に少し前の値を「n-1」とする)。時間のずれは、なるべく少なくなるように選択されるべきである。
【0147】
【数31】
【0148】
式中、s(n-1)は未知である。しかし、音生成に用いられる成分に対して、音生成器の伝達関数の推定値[S(z)]のパルス応答[s(n)]を実験的に決定することができる。
【0149】
時間のずれが十分に短い場合、以下のように表される。
【0150】
【数32】
【0151】
【数33】
【0152】
これにより、下記式が得られる。
【0153】
【数34】
【0154】
λ(n)およびΞ(params)の値は、実験的に決定することができ、対応するデータ入力によって予め規定されている。
【0155】
以下に、上記システムを動作させる方法について、図8を参照しながら説明する。
【0156】
まず、ステップS1において、入力波ベクトルx(n)を生成する。これには、マイクロホン41によって測定された処理すべき音と、エンジン制御部61から受信したデータとが考慮されている。
【0157】
これと同時に、ユーザーインターフェース97を介して、ユーザー入力を受信する(ステップS2)。
【0158】
これと同時に、ステップ3において、重畳音を測定し、対応するフィードバック信号e'(n)を出力する。
【0159】
ステップS4において、制御部92は、データ入力から得られ、騒音源の動作状態に依存する変数λ(n)を用いて、有理数の数列の値を示す制御信号λ(n)を生成する。この値は、0より大きくても、小さくてもよく、または0に等しくてもよい。
【0160】
ステップS5において、測定されたフィードバック信号e'(n)、制御信号λ(n)の値λ、音生成器の推定伝達関数[S(z)]のパルス応答[s(n)]およびANCコア91から音生成器に以前に出力された(音響)信号y(n-1)から、式e(n) = e'(n) − λconv[[s(n)], y(n-1)]により、修正されたフィードバック信号e(n)を得る。
【0161】
ステップS6において、騒音源P(z)の伝達関数、入力波ベクトルx(n)および修正されたフィードバック信号e(n)に基づいて、音響信号y(n)を算出する。ステップS7において、第2の重み付け部95は、この算出された音響信号y(n)に1と制御信号λ(n)の値λとの差で重み付けを行うことにより、重み付けされた音響信号y'(n)を得る(y'(n) = (1-λ)y(n))。
【0162】
ステップS7において、重み付けされた音響信号y'(n)を音生成器20に出力して、可聴信号を生成する。
【0163】
図9(a)〜図11(b)に、本発明のシステムおよび方法によって発揮される効果を示す。それぞれに応じて、内燃機関で駆動する車両の排気系を変更した。
【0164】
図9(a)に示すように、本発明のシステムを用いれば、未処理音(unmanipulated sound)(ANC OFF)と比較して音圧レベルを下げること(1.75秒まで)、音圧レベルを処理しないこと(約1.75秒〜約2.25秒の間)、または音圧レベルを上げること(約2.25秒以降)が可能である。制御部92を設定して、約2.25秒から始まって徐々にANCシステムが作動するにつれて(ANC ON)、音圧の開きが大きくなるような制御信号λ(n)を生成するようにした。この場合、時間とともに連続的にエンジンの回転速度を上げていき、それを用いて制御信号λ(n)を生成することによって実現した。さらに、アクチュエーター(音生成器)における圧力レベルも示されている。音圧レベルおよびアクチュエーターの圧力レベルの信号パターンが階段状であるのは、実施例において、回転速度依存変数Ξ(回転速度)から制御信号λ(n)を算出したという状況によるものと考えられる。この変数Ξ(回転速度)は、回転速度の異なる範囲に対して異なる値を取る。
【0165】
一方、図9(b)に、従来技術によるシステムの音圧曲線を示す。図から分かるように、従来のシステム(ANC ON)において、できる限り低い値(ここでは、約40dB)に音圧レベルを下げようとする試みが継続してなされている。従来技術では、本発明のシステムのように任意で音圧レベルを上げたり下げたりすることができない。
【0166】
図10に、ディーゼルエンジンで駆動する車両の排気系において、本発明のシステムを用いた場合の異なるデータ入力により立証された別の測定結果を示す。図から分かるように、本発明のシステムによれば、1000回転/分〜約4500回転/分の範囲において、未処理音の音圧レベル(黒の実線)と比較して、ほぼ一定の値だけ音圧レベルを低減することができ(複数の破線は、本発明を用いた場合の音圧レベルを示している)、かつ未処理音の音圧レベルの推移を概ねたどることができる。本発明による音に影響を与えるためのシステムは、音圧レベルの推移にある程度追従するため、とりわけ自然な音を有する。図10において、比較のため、グラフの一番下に、従来技術によるシステムの音圧レベルの曲線を示す。この曲線は、未処理音の音圧レベルの曲線からずれて変動していることが分かる。
【0167】
図11(a)および図11(b)に、どのように本発明のシステムの使用が実証されるかを示す。使用された内燃機関の回転速度は、まず、1000回転/分から2000回転/分まで時間とともに直線的に増加し、しばらくの間一定値を維持してから、再び直線的に減少した。第3エンジン高調波の音圧レベルを測定した。
【0168】
図11(a)に、上記システムのオンオフを切り替えたときの音圧レベルの曲線、およびシステムをオンにしたときのアクチュエーターの圧力レベルを示す。本発明のシステムにより、音圧レベルがほぼ一定に約7dBだけ低下していることが分かる。
【0169】
図11(b)において、排気系が機械的に消音されたことにより、全体として約6dBだけ音が小さくなった。図からわかるように、この機械的な消音は、本発明のシステムによって音圧レベルがほぼ一定に約7dBだけ低下するという事実に関して、何の変化ももたらしていない。同時に、アクチュエーターに必要なエネルギーがより少なくて済む。このような効果は、従来のシステムでは発揮されないものである。
【0170】
従って、本発明は、以下の方法により、内燃機関で駆動する車両において実証することができる。
【0171】
まず、制御された条件下(例えば、一定の負荷がかかった状態で、速度を800〜4500回転/分に増加させる)において、システムをオフにして、音が重畳する領域の下流側にある排気系のエラーマイクロホンによって圧力レベルを測定する。
【0172】
次に、上記システムをオンにして、同じ条件下において、エラーマイクロホンで音圧レベルを測定する。同時に、アクチュエーター(信号発生器)の通電を測定する。得られた測定曲線のいくつかの静止動作点を選択する。
【0173】
この場合、エラーマイクロホンで測定された音圧レベルが(例えば、約3dBだけ)低くなる、または高くなるように、機械的手段によって受動的排気系(passive exhaust system)の形状を変更する。
【0174】
その後、上記システムをオンにして、静止動作点において測定を繰り返す。これらの被測定信号は、特にそのエンジン高調波に応じて、フィルターにかけられる。
【0175】
本発明を用いれば、機械的に排気系を操作しても、音に影響を与えるためのシステムが不安定にならない。さらに、一定の許容範囲を考慮して、機械的に操作されたシステムにおいて、システムがオフのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルの、システムがオンのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルに対する比は、機械的に操作されていないシステムにおいて、(静止動作点での)システムがオフのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルの、システムがオンのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルに対する比と一致する。システムがオフのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルと、システムがオンのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルとの差は、機械的に操作されていないシステムにおいて、(静止動作点での)システムがオフのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルと、システムがオンのときにエラーマイクロホンで測定された音圧レベルとの差とほぼ一致する。
【0176】
上述した本発明の例示的な実施形態は、単に例として説明されたものに過ぎないが、当業者ならば、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の本質および保護の範囲から逸脱することなく、種々の変更、追加および置換が可能であることを理解するだろう。
【符号の説明】
【0177】
1 テールパイプ
2 スピーカー
3 音生成器
4 排気系
5 エラーマイクロホン
6 内燃機関
6' エンジン制御部
6" 吸気系
7 能動騒音消去システム
8 開口部
9 制御部
20 音生成器/アクチュエーター
40 排気系
41 マイクロホン
50 エラーセンサー
60 内燃機関
80 テールパイプ
90 能動騒音制御システム
91 信号発生器/ANCコア
92 制御部
93 第1の重み付け部
94 加算器
95 第2の重み付け部
96 ANC拡張部
97 ユーザーインターフェース
d(n) 伝達関数によって生成され、マイクロホンで測定された被重畳信号(騒音源から発生した騒音に対応する)
e(n) (修正された)フィードバック信号(重畳された騒音の圧力に対応する)
e'(n) 修正されていないフィードバック信号
e(z) 信号e(n)のZ変換
EOi i次のエンジン高調波
0 基本周波数
P(z) 騒音源の伝達関数のZ変換(これに基づいて、騒音源による信号の生成(それゆえに音の生成)が行われる関数に対応する)
u(n) 重畳用信号(重畳される音を生成する音生成器の音圧に対応する)
u'(n) 重畳に用いられるように重み付けされた信号
u(n-1) 重畳のための以前の信号
u(z) 信号u(n)のZ変換
S(z) 音生成器の伝達関数のZ変換(信号y(n)から信号u(n)への変換に対応する)
s(n) 音生成器の伝達関数S(z)のパルス応答
[S(n)] 音生成器の伝達関数のZ変換の推定値
[s(n)] 音生成器の伝達関数の推定値[S(n)]のパルス応答
w(n) 位相ベクトル/ゲイン
wT(n) 位相ベクトルw(n)の転置
w1(n)、w2(n) ゲイン係数
x(n) 入力波ベクトル
xT(n) 入力波ベクトルx(n)の転置
y(n) ANCコアから出力される(音響)信号
y'(n) ANCコアから出力される、重み付けされた(音響)信号
y1(n)、y2(n) ANCコアから出力され、相互に90度ずれている信号
y(z) 信号y(n)のZ変換
μ 適応率
λ(n) 制御信号
Ξ(params) ξ(n)を示す変数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11