(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仰角取得部は、前記第2位置を前記第1軸に写像した写像位置の座標を前記魚眼レンズの焦点距離で除算した値を、前記仰角として求める、請求項1記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のアンテナ装置、及び、給電装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の給電装置100を示す図である。給電装置100は、アレイアンテナ110、フェーズシフタ120、マイクロ波発生源130、カメラ140、及び制御装置150を含む。実施の形態のアンテナ装置100Aは、給電装置100からマイクロ波発生源130を除いたものである。
【0011】
以下では、XYZ座標系を用いて説明する。平面視とはXY平面視のことである。また、X軸は第1軸の一例であり、Y軸は第2軸の一例であり、Z軸は第3軸の一例である。また、XY平面は第1平面の一例であり、XZ平面は第2平面の一例である。
【0012】
アレイアンテナ110は、一例として4つのサブアレイ110A、110B、110C、110Dにグループ分けされている。サブアレイ110A〜110Dは、X軸方向に配列されており、各サブアレイ110A〜110Dは、一例として4つのアンテナ素子111を含む。このため、アレイアンテナ110は、一例として16個のアンテナ素子111を含む。アンテナ素子111は、平面視で矩形状のパッチアンテナである。アレイアンテナ110は、アンテナ素子111の−Z方向側にグランド電位に保持されるグランド板を有していてもよい。なお、一例として、16個のアンテナ素子111の位置の中心は、XYZ座標系の原点と一致している。
【0013】
フェーズシフタ120は、4つのサブアレイ110A〜110Dに対応して4つ設けられており、4つのフェーズシフタ120は、それぞれサブアレイ110A〜110Dのアンテナ素子111に接続されている。各サブアレイ110A〜110Dの中では、4つのアンテナ素子111は、1つのフェーズシフタ120に並列に接続されている。フェーズシフタ120は、位相調節部の一例である。
【0014】
各サブアレイ110A〜110Dの中では、4つのアンテナ素子111には同一の位相の電力が供給される。また、4つのフェーズシフタ120がサブアレイ110A〜110Dに出力する電力の位相は互いに異なる。このため、16個のアンテナ素子111から放射される電波が形成するビームの角度(仰角)をXZ平面内で制御することができる。
【0015】
16個のアンテナ素子111から放射される電波が形成するビームは、アレイアンテナ110が出力するビームと同義である。また、アレイアンテナ110が出力するビームは、アンテナ装置100A及び給電装置100が出力するビームと同義である。
【0016】
マイクロ波発生源130は、4つのフェーズシフタ120に接続されており、所定の電力のマイクロ波を供給する。マイクロ波発生源130は、電波発生源の一例である。マイクロ波の周波数は、一例として915MHzである。なお、ここでは給電装置100がマイクロ波発生源130を含む形態について説明するが、マイクロ波に限られるものではなく、所定の周波数の電波であればよい。
【0017】
カメラ140は、サブアレイ110Bと110Cの間に配置される。カメラ140は、魚眼レンズ141及びカメラ本体142を有する。カメラ140は、画像取得部の一例である。
【0018】
魚眼レンズ141は、等距離射影方式を採用したレンズである。魚眼レンズ141の中心の位置は、一例として、16個のアンテナ素子111の中心及びXYZ座標系の原点と一致している。カメラ本体142は、カメラ140のうち魚眼レンズ141以外の部分であり、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含むカメラ、又は、赤外線カメラであってもよい。
【0019】
カメラ140は、魚眼レンズ141を通じてマーカを含む画像を取得し、画像データを制御装置150に出力する。マーカは、アンテナ装置100A及び給電装置100が出力するビームを照射したいターゲットに取り付けられている。アンテナ装置100A及び給電装置100は、カメラ140で取得した画像に含まれるマーカの位置を求め、ターゲットに向けてビームを照射する。
【0020】
制御装置150は、位置変換部151、仰角取得部152、制御部153、及びメモリ154を有する。制御装置150は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含むコンピュータによって実現される。位置変換部151、仰角取得部152、制御部153は、制御装置150が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ154は、制御装置150のメモリを機能的に表したものである。
【0021】
ここで、位置変換部151、仰角取得部152、制御部153、メモリ154については、
図1に加えて
図2を用いて説明する。
図2は、アレイアンテナ110の極座標系を示す図である。
図2には、給電装置100のうちのアレイアンテナ110とカメラ140のみを示す。また、
図2には、XY平面に平行な平面上における極座標系を示す。
【0022】
また、XYZ座標系におけるマーカの位置をP1とし、原点Oと位置P1を結ぶ線分の仰角をθ、方位角をφとする。仰角は+Z方向に対する角度であり、方位角は+X方向に対する角度であり、平面視で反時計回りを正の値とする。また、位置P1をXZ平面に投影した位置P1aと原点Oとを結ぶ線分の仰角をθaとする。
【0023】
位置P1は、第1位置の一例であり、位置P1aは、投影位置の一例である。また、原点OはXYZ座標系の基準点の一例である。
【0024】
アンテナ装置100A及び給電装置100は、アレイアンテナ110が出力するビームの仰角をXZ平面内でのみ制御する。これは、ターゲットの位置がXZ平面からあまりずれていない(例えば、YZ平面内でのZ軸に対する仰角で±30度以内程度)ことを想定している。このような位置にあるターゲットであれば、ビームの仰角をXZ平面内で制御するだけで、ターゲットにビームを照射できるからである。
【0025】
位置変換部151は、カメラ140が取得した画像に対して画像処理を行い、魚眼レンズ141を通じて得た等距離射影の画像をXY平面に平行な平面上における極座標に変換する。この画像処理により、カメラ140によって取得される画像に含まれるマーカのアレイアンテナ110に対する位置P1は、XY平面上の極座標における位置P2に変換される。位置P2は、第2位置の一例である。
【0026】
位置P2は、原点Oからの動径rと偏角φによって表される。動径rは、魚眼レンズ141の焦点距離をf
Lとすると、r=f
Lθで表される。偏角φは方位角φと同一である。位置変換部151は、上述の画像処理によって、動径rをX軸に写像したr・cosφを求める。
【0027】
仰角取得部152は、位置P2をX軸に写像した写像位置P2aのX座標(r・cosφ)を魚眼レンズ141の焦点距離f
Lで除算した値(r・cosφ/f
L)を、仰角θaとして取得(計算)する。このようにして仰角θaを取得できる理由については後述する。
【0028】
制御部153は、アレイアンテナ110が放射するビームの方向がXZ平面内で仰角θaになるようにフェーズシフタ120を制御する。仰角θaは、仰角取得部152によって取得される。また、制御部153は、マイクロ波発生源130の出力制御、及び、カメラ140の撮影制御等を行う。
【0029】
メモリ154は、位置変換部151、仰角取得部152、制御部153が処理を行う際に実行するプログラム、プログラムの実行に伴い利用するデータ、プログラムの実行によって生じるデータ、及び、カメラ140が取得する画像データ等を格納する。
【0030】
次に、仰角θaを求める方法について説明する。
【0031】
仰角θaは、方位角φと仰角θを用いると、位置P1と位置P1aの幾何学的関係から次式(1)で求めることができる。
【0032】
【数1】
式(1)を展開すると、式(2)が得られる。
【0033】
【数2】
ここで、仰角θが十分に小さい場合にはtanθ≒θであり、方位角φが十分に小さい場合にはcosφ≒1であり、方位角φが90度に近い場合にはcosφ≒0であるので、式(2)は次式(3)に変形できる。
【0034】
【数3】
すなわち、ターゲットの位置がXZ平面からあまりずれていない場合には、仰角θaは式(3)のように近似することができる。
【0035】
また、上述したように、魚眼レンズ141の焦点距離をf
Lとすると、動径rは次式(4)で表される。
r=f
Lθ (4)
式(3)、(4)より、仰角θaは次式(5)で表すことができる。
θa=r・cosφ/f
L (5)
このように、式(5)を用いて、仰角θaを近似的に求めることができる。
【0036】
以上のように、アレイアンテナ110のビームの仰角をXZ平面内でのみ制御する場合には、等距離射影によって得られた位置P1をXY平面に平行な平面上における極座標に変換して位置P2を求め、さらに位置P2をX軸に写像した写像位置P2aのX座標(r・cosφ)を魚眼レンズ141の焦点距離f
Lで除算することで、仰角θa(=r・cosφ/f
L)を求めることができる。
【0037】
したがって、簡単な計算でビームの方向を制御できるアンテナ装置100A、及び、給電装置100を提供することができる。
【0038】
また、アンテナ装置100A、及び、給電装置100は、アレイアンテナ110が出力するビームの仰角をXZ平面内でのみ制御するため、仰角をXZ平面内とYZ平面内の両方で制御する場合に比べてフェーズシフタ120の数が4分の1で済む。このため、アンテナ装置100A、及び、給電装置100を安価に実現することができる。
【0039】
なお、以上では、魚眼レンズ141の中心が16個のアンテナ素子111の中心と一致している形態について説明した。しかしながら、魚眼レンズ141の中心は、16個のアンテナ素子111の中心からずれていてもよい。この場合には、位置ずれの分だけアレイアンテナ制御位相計算の座標原点をずらせばよい。
【0040】
図3は、給電装置100の適用例を示す図である。給電装置100は、一例として車両に搭載されており、トンネルの内壁10にはターゲットとしてのアンテナ20が設けられている。アンテナ20にはマーカ21が取り付けられている。マーカ21は、再帰性反射板又はミラーボール等である。
【0041】
車両が+X方向に走行する際に、カメラ140でマーカ21の位置をXY平面に平行な平面上における極座標に変換し、さらにX軸に写像した写像位置(P2aに相当する写像位置)のX座標(r・cosφ)を魚眼レンズ141の焦点距離f
Lで除算して求まる仰角θa(=r・cosφ/f
L)を用いて、アンテナ20にビームを照射することができる。
【0042】
例えば、トンネルの内壁10に取り付けてあるジェットファンや標識等のインフラ構造物を内壁10に固定する固定部にアンテナ20と、固定部のボルト等の緩みを監視するセンサと、レクテナと、無線通信モジュールとを設けておき、車両で走行しながら給電装置100からアンテナ20にビームを放射すると、アンテナ20に接続されたレクテナが電力を発生して無線通信モジュールを起動し、無線通信モジュールがセンサの出力を表す信号を放射し、車両側で受信することにより、走行しながらインフラ構造物の固定状態を検査することができる。
【0043】
この場合に、アレイアンテナ110で無線通信モジュールがセンサの出力を表す信号を受信してもよい。
【0044】
また、XZ平面からずれたアンテナ20の位置からX軸に写像した写像位置(P2aに相当する写像位置)のX座標(r・cosφ)を求め、X座標(r・cosφ)を魚眼レンズ141の焦点距離f
Lで除算した値(r・cosφ/f
L)を仰角θaとして使用してビームを制御するので、X軸方向に走行する車両がY軸のプラスマイナスのどちらかにシフトとしている場合でも、その位置ずれを吸収して仰角θaを求めることができる。
【0045】
また、ここでは
図3を用いて給電装置100(アンテナ装置100A)がトンネルの内壁10に設けられた無線通信モジュールと通信する形態について説明したが、無線通信モジュールはトンネルの内壁10に設けられているものに限らず、様々な場所等に設置されていてよい。このようにすれば、給電装置100(アンテナ装置100A)を通信装置として利用することができる。
【0046】
以上、本発明の例示的な実施の形態のアンテナ装置、及び、給電装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。