(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機相中に含有される、33質量%から99.9質量%、好ましくは50質量%から95質量%、より好ましくは60質量%から90質量%の前記1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが、前記最大温度で前記有機相中に溶解する、請求項4に記載の方法。
少なくとも前記有機相が、好ましくはろ過工程、及びより好ましくは遠心ろ過工程である、固体/液体分離工程に供され、固体の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを回収し、前記固体/液体分離工程が、好ましくは前記有機相から前記水性相を分離した後に行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
プロトン性溶媒中、好ましくはメタノール中で、回収された固体の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを洗浄し、更に固体/液体分離、好ましくは遠心ろ過に供する、1以上の工程を含む、請求項7又は8に記載の方法。
プロトン性溶媒中で、固体の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを洗浄する、少なくとも1つの工程が、少なくとも20℃の温度、好ましくは30℃から60℃の温度で行われる、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、下記説明で、限定なく、より詳細に説明される。
【0034】
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、式Iの化合物である:
【化1】
それは、溶媒(反応溶媒)中、Friedel-Craft触媒として作用する、ルイス酸の存在下で、式IIの塩化テレフタロイルを、式IIIのジフェニルエーテルと反応させることによって合成され得る。
【化2】
【化3】
【0035】
反応は、大部分が、ルイス酸と複合体を形成する式Iの化合物の生成をもたらす。
【0036】
反応は、2段階を含むと考えられる。第一段階は、1分子の式IIが、1分子の式IIIと反応して、“活性中間体”と呼ばれる、式IVの塩化4−(4−フェノキシベンゾイル)ベンゾイル中間体を生成する:
【化4】
【0037】
その後、1分子の活性中間体の式IVが、式IIIの別の分子と反応して、所望の式Iの生成物を生成する。
【0038】
反応の間、式IVaの4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸が、(顕著な式IVの活性中間体に対して)ある程度生成もし得る。
【化5】
【0039】
類似の4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルが、式IVの塩化アシルから直接、又は式IVaのカルボン酸から両方から、生成し得る。中間体の、酸の形態及び/又はエステルの形態は、反応の間、生成され得るが、それらは、(下記示すように、生成混合物が、プロトン性溶媒と混合される場合のような)後の検査の間に、残存している活性中間体から主に生成もされ得る。
【0040】
4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸、及び4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルは、不活性であり、それ故、生成混合物中に不純物として残る。
【0041】
反応により生成される、他の主要な不純物は、キサンチドロール構造含有分子である。
【0042】
反応溶媒は好ましくは、非プロトン性溶媒である。
【0043】
プロトン性溶媒は、酸素原子又は窒素原子に結合する、少なくとも一つの水素原子を含有する溶媒であり、それ故、試薬にプロトン供与することができる。
【0044】
非プロトン性溶媒は、プロトン性溶媒でない溶媒である。
【0045】
本明細書内で使用される、非プロトン性溶媒は、特に、塩化メチレン、二硫化炭素、オルト−ジクロロベンゼン、メタ−ジクロロベンゼン、パラ−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、オルトジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ニトロベンゼン、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0046】
オルト−ジクロロベンゼンが、最も好ましい溶媒である。
【0047】
使用され得るルイス酸は、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化スズ、四塩化チタン、及び五塩化モリブデンを含む。三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、三臭化アルミニウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化鉄、三塩化ガリウム、及び五塩化モリブデンが好ましい。三塩化アルミニウムが特に好ましい。
【0048】
式(I)の化合物を合成するための、式(II)及び式(III)の化合物間の反応は、反応容器内で行われ得る。反応容器は、例えばガラス反応容器、ガラス−線反応容器、又はステンレス鋼反応容器であり得る。
【0049】
いくつかの変化によって、本発明の方法において、反応容器に導入される材料は、式(ii)及び式(III)の化合物、反応溶媒、並びにルイス酸から実質的になる、又はからなる。
【0050】
本発明によると、反応溶媒中に、塩化テレフタロイル、及びジフェニルエーテルを含む、(及び好ましくは、からなる)初期反応混合物が提供される。反応混合物は、三成分を同時に、任意の順番で混合することにより、作られ得る。例として、溶媒は、反応容器に最初に導入され、その後二つの反応物が反応容器に添加され得る。
【0051】
第二の工程として、ルイス酸が、反応混合物に添加される。好ましくは、ルイス酸が固体として添加される。別法として、好ましくは上記溶媒中の、懸濁液、又は溶液として添加され得もする。
【0052】
いくつかの変化において、ルイス酸は、(例えば、1mm超のDv80を有する)顆粒の形態、又は(例えば、1mm未満のDv80、好ましくは0.5mm未満のDv50を有する)粉末の形態などの、微粒子の形態で添加される。Dv80、及びDv50は、ルイス酸粒子の、累積サイズ分布の、それぞれ80%及び50%での(体積)粒子径である。これらのパラメータは、篩により決定され得る。
【0053】
いくつかの特定の実施態様において、反応物及び触媒の濃度、及び質量比は下記のとおりである:
−(反応容器内に導入される、溶媒、塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル、及びルイス酸の合計に対する)塩化テレフタロイルの濃度は、3%から12%、好ましくは5%から10%である;
−(反応容器内に導入される、溶媒、塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸の合計に対する)ジフェニルエーテルの濃度は、5%から35%、好ましくは12%から25%である;
−(反応容器内に導入される、溶媒、塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸の合計に対する)ルイス酸の濃度は、4%から30%、好ましくは10%から25%である;
−反応容器内に導入されるジフェニルエーテルに対する塩化テレフタロイルの質量比は、0.2から0.6、好ましくは0.3から0.5である;
−反応容器内に導入される、塩化テレフタロイル及びジフェニルエーテルに対するルイス酸の質量比は、0.2から0.9、好ましくは0.3から0.7である。
【0054】
ルイス酸の添加は、有利には、5分から600分、好ましくは30から300分の範囲であり得る、期間にわたって、好ましくは、徐々に行なわれる。
【0055】
添加は、連続又は1以上の中断で行われ得る。連続で行われる場合、一定の添加速度で行われ得る。別法として、添加速度は、経時的に変化し得る。
【0056】
反応混合物は、反応工程の少なくとも一部の間に、好ましくは、撹拌されてもよい。したがって、反応容器は、(例えば、1以上の羽根車を含んでもよい)メカニカルスターラーなどの撹拌装置、又はポンプ付きの再循環ループで、好ましくは、提供される。
【0057】
好ましくは、反応混合物は、ルイス酸の添加の間、撹拌装置を使用して撹拌されてもよい。
【0058】
反応混合物への、ルイス酸の添加が終了した時点で、望ましい程度に反応を終了させるために、好ましくは撹拌しながら、一定時間、反応工程が、反応混合物を維持する工程を任意選択で含んでもよい。好ましくは、混合物は0分から600分、より好ましくは5分から180分維持される。
【0059】
反応が、所望の程度まで終了した時点で、反応混合物は、生成混合物として指名される。
【0060】
反応時の危険は、発熱である。反応容器内の反応混合物の温度を制御するため、特にルイス酸の添加中及び後に、好ましくは温度コントロールシステムが供給される。温度コントロールシステムは、特に、反応容器中に温度センサーを含み、反応混合物を冷却及び/又は加熱するために構成されてもよい。好ましくは、反応混合物を冷却するため、少なくとも構成される。
【0061】
反応混合物を加熱及び/又は冷却する装置は、反応容器内、若しくは再循環ループ内に熱交換機、又は反応容器のジャケット内に熱交換流体回路を含んでもよい。
【0062】
反応混合物の温度が、ルイス酸の添加の工程の間に、増大する場合、これは、三つの異なる方法であって:
−(目的の増大した温度を達成するように、好ましくはルイス酸の添加の速度を制御しながら、)反応混合物を加熱することによる;
−目的の増大した温度を達成するように、外部冷却又は加熱供給なしに、ルイス酸の添加の速度を、単純に制御することによる;
−目的の増大した温度を達成するように、ルイス酸の添加の速度も制御しながら、反応混合物を冷却することによる、方法で達成され得る。
【0063】
好ましい実施態様によると、反応物が互いに反応し始めた際に、反応混合物の温度の過度に大きな、又は速い増大を抑制するために、反応混合物が、ルイス酸の添加の工程の間、及び場合によって後に、冷却される。
【0064】
好ましくは、反応混合物の温度は、反応混合物にルイス酸を添加する工程の少なくとも一部の間に、5℃より大きい。特定の変化において、反応混合物の温度は、反応混合物に、ルイス酸の添加の工程の少なくとも一部の間に、少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃である。
【0065】
比較的高温での反応工程の制御は、キサンチドロール構造含有分子などの、副生成物の不純物の濃度で、著しい増大なしに、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの収率の増大をもたらし得る。
【0066】
一方、PEKKポリマーに反応物の重大な高分子量化を避けるために、反応混合物へのルイス酸の添加の工程の間の温度は、好ましくは、特定の閾値未満を維持するべきである。
【0067】
更に、反応混合物にルイス酸を添加する工程の間の温度は、溶媒の沸点未満を維持するべきである。
【0068】
反応容器内の温度が、溶媒の沸騰を引き起こさずに、高い値に達するように、加圧方法で反応容器を操作することが可能である。この場合、反応容器内の圧力は、1bar(大気圧)から6bar、好ましくは1.5barから3barの範囲であり得る。
【0069】
別法として、及び好ましくは、反応は大気圧で行われてもよい。
【0070】
いくつかの変化により、反応混合物の温度は、ルイス酸の添加の工程の間に、100℃超、好ましくは90℃、より好ましくは80℃、更に一層好ましくは70℃を超えない。
【0071】
反応混合物の温度は、ルイス酸の添加の工程の間に、一定に維持され得る。別法として、この工程の間に変化され得る。
【0072】
好ましい変化において、反応混合物の温度は、ルイス酸の添加の工程の間に増大し、すなわち、最終温度は初期温度より大きい。
【0073】
いくつかの実施態様において、最終温度及び初期温度の間の温度差△Tは、1℃から70℃、好ましくは5℃から60℃、より好ましくは10℃から50℃、特に20℃から40℃である。
【0074】
いくつかの変化において、反応混合物の温度は、初期温度から最終温度まで、連続的に増大する。別法として、反応混合物の温度は、ルイス酸の添加の工程の間に、1以上の増大する段階、及び1以上の安定段階を含んでもよい。特に、反応混合物の温度は、ルイス酸の添加の段階の最初の一部の間に、初期温度から最終温度まで、最初に増大し、その後ルイス酸の添加の工程の第二の部分の間に、最終温度で安定であり得る。この場合、安定になった温度は、例えば、+/−5℃、又は+/−2℃、又は+/−1℃の正確さで設定されてもよい。
【0075】
ルイス酸の添加の後の、反応混合物を維持する任意の工程の間、反応混合物の温度に関しては、制限されない。いくつかの変化において、混合物の温度は、上記最終温度で維持される。他の変化において、最終温度に対して、増大したり減少したりする。
【0076】
本発明の方法は、(所望の程度まで反応が完了した後)生成混合物から、特に溶媒、触媒、及び未反応反応物、及び副生成物から、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを精製するための工程を含んでも良い。
【0077】
特に、前記精製は、水性溶液に生成混合物を、接触させる工程を含み、ルイス酸を含有する水性相、及び1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを含有する有機相を回収する。生成混合物、及び接触させる水性相の、相対質量比は、好ましくは4から0.25、より好ましくは3から0.5、最も好ましくは2から1である。
【0078】
好ましくは、水性溶液中に存在する、唯一の溶媒は水である。別の、好ましくはない、変化によると、水は、特にプロトン性有機溶媒などの、1以上の有機溶媒と混合され得る。この場合、水性溶液は、水性−有機溶液である。例として、メタノール又は酢酸が、使用され得る。そのような場合、水性溶液中の水の質量比は、好ましくは、50質量%、より好ましくは75質量%より高い。
【0079】
水性溶液は単純に水であり得る。別法として、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ギ酸などの有機酸、及びこれらの組み合わせなどの、酸性溶液であり得る。好ましくは、水性溶液のpHは、7以下、好ましくは6以下、又は5以下、又は4以下、又は3以下、又は2以下である。
【0080】
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン−ルイス酸複合体の分離は、酸性溶液が使用される場合、より効果的であり得る。
【0081】
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン−ルイス酸複合体を、水性溶液に接触させる第一の可能性は、例えば反応容器に直接、生成混合物に水性溶液を、添加することである。添加は、有利には2分から600分、好ましくは10分から180分、より好ましくは、20分から60分の範囲であり得る、期間にわたって、好ましくは、徐々に行なわれる。
【0082】
(好ましい)第二の可能性は、別の容器に水性溶液を供給し、その後、水性溶液に生成混合物を添加することである。添加は、有利には、2分から600分、好ましくは10分から180分、より好ましくは20から60分の範囲であり得る期間にわたって、好ましくは徐々に行われる。
【0083】
第一及び第二両方の可能性において、水性溶液、及び生成混合物の混合物は、例えば、(例えば、1以上の羽根車を含んでもよい)メカニカルスターラー、又はポンプ付きの再循環ループなどの撹拌装置を用いて、好ましくは撹拌されてもよい。
【0084】
第三の可能性は、反応容器又はパイプに、水性溶液及び生成混合物を同時に入れることである。
【0085】
生成混合物及び水性溶液の全体が、接触した時点で、両者の混合は、好ましくは撹拌で、例えば、1分から600分、好ましくは10分から300分、より好ましくは30分から180分の期間、維持され得る。
【0086】
温度は、任意にこの段階で制御され、例えば混合物は冷却されてもよい。すでに上述した、温度制御及び冷却装置が、最後まで使用されてもよい。
【0087】
別の変化において、温度はこの段階で制御されず、従って、混合物中に存在する1以上の溶媒(水を含む)の沸点まで上がる可能性がある。例えば、温度は40℃から100℃にあがり得る。したがって、生成した蒸気は、収集され、その後処理され及び/又はリサイクル若しくは処分され得る。混合物は、この急発熱の後、任意選択で、冷却されたままであり(又は積極的に冷却され)得る。
【0088】
生成混合物を水性溶液と接触させる工程の終了時に、有機相及び水性相が得られる。1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、有機相にほとんど存在し、例えば、少なくとも50質量%、好ましくは50質量%超、好ましくは少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも90質量%の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが有機相に存在し、一方、ルイス酸は水性相にほとんど存在し、例えば、少なくとも50質量%、好ましくは50質量%超、好ましくは少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも90質量%のルイス酸が水性相に存在する。
【0089】
水性相及び有機相は、好ましくはデカンテーションにより、別々に回収されるように、分離されてもよい。その結果、上部層は、デカンテーション装置の頂点から移され、及び/又は下部相は、デカンテーション装置の底部から、第二の装置へ移されてもよい。これらの移動は、1以上のポンプ、重力又は圧力差により行われてもよい。
【0090】
水性相は、ルイス酸を含有し、更に処理、又はリサイクル又は処分され得、好ましくは、異なる産業工程において、販売され、又は再利用され得る。
【0091】
有機相は、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの大部分を、固体/沈殿形態で含んでもよい。
【0092】
いくつかの変化において、有機相は、有機相及び水性相を再び回収するように、上記の様に、任意選択で水性相と再び接触される。この操作は、必要であれば、有機相が更に処理されるまで、数回繰り返されてもよい。
【0093】
有機相から1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを回収するため、好ましくはろ過工程、遠心分離工程、又は沈殿工程、及びより好ましくはろ過工程である、固体/液体分離工程を行うことが有利である。
【0094】
ろ過工程は、例えば、バッチ又は連続モードどちらでも、フィルタープレス、ヌッチェろ過、ベルトろ過、キャンドルフィルター、バスケット遠心、デカンタ遠心で行われ得る。好ましい実施態様において、ろ過は遠心ろ過装置で行われる。
【0095】
別法として、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、水性相及び有機相の前分離なしで、この混合物を前記ろ過工程に供することにより、水性相及び有機相の混合物から直接回収されてもよい。この場合、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが、フィルター上に保持され、水性相及び有機相は、ろ過装置の出口で回収され、この時分離されてもよい。
【0096】
遠心ろ過装置は、特に水平軸及び垂直軸を有し得る。
【0097】
遠心ろ過は好ましくは、2gから1500g、より好ましくは5gから1000g、最も好ましくは10gから800gの加速度で行われる。
【0098】
異なる加速値又は範囲は、充填段階、洗浄段階及び/又は脱水段階などの、遠心ろ過の連続段階の間に使用されてもよい。例として、低い加速度が最初に適用され、その後高い加速度になってもよい。
【0099】
ろ過の終了時の、ろ過された生成物の、乾燥固体物質含有量は、好ましくは65質量%から99質量%、より好ましくは70質量%から98質量%、更に一層好ましくは80質量%から97質量%、最も好ましくは90質量%から96質量%である。
【0100】
固体/液体分離工程の効率は、任意にいわゆる熟成工程により向上させることができ、前記固体/液体工程の前に行われ得る。
【0101】
実際には、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの固体形態のモルフォロジーは、固体/液体分離工程の効率に影響を与えるパラメータである。1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、複合体の分離の後、周囲の液体からの分離に不便な、板状の粒子の形態で存在する傾向にある。固体/液体分離工程の前に熟成工程を行うことにより、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、一部溶解し、その後再結晶化する。これは、(例えば、遠心ろ過による、)周囲の液体からの分離に容易な、固体の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを得ることを可能にする。特に、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンのろ過性は、熟成工程の使用により向上する。
【0102】
いくつかの変化において、熟成工程は、水性相及び有機相が分離される前に、(両相が熟成工程に供されるように、)行われる。
【0103】
他の、好ましい変化において、熟成工程は、水性相及び有機相が分離された後、有機相のみに行われる。
【0104】
熟成工程において、(事前分離されている、又はされていない)有機相が、第一に最大温度まで加熱され、分離温度まで冷却される。それ故、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは一部有機相に溶解し、細い板の堆積した典型的な形状の粒子として再結晶化し、固体/液体分離工程に、固体の形態の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンのより好ましいモルフォロジーで得られる。
【0105】
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが熟成工程の間に完全に溶解しないことが好ましい。実際には、有機相中の残存固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン粒子の存在が、前記残存粒子が、結晶化の種として作用する傾向にあるため、比較的早く、効果的な方法で、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの再結晶を可能にする。
【0106】
熟成工程中に有機相に溶解する(1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの総量に対する、)1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの最大比率は、例えば、20質量%から30質量%、又は30質量%から40質量%、又は40質量%から50質量%、又は50質量%から60質量%、又は60質量%から70質量%、又は70質量%から80質量%、又は80質量%から90質量%、又は90質量%から95質量%、又は95質量%から99質量%であり得る。
【0107】
有機相を加熱、及び温度を制御する典型的な装置は、上記のとおりである。
【0108】
熟成工程の間に達する最大温度は、例えば、80℃から90℃、又は90℃から100℃、又は100℃から110℃、又は110から120℃、又は120℃から130℃、又は130℃から140℃、又は140℃から150℃、又は150℃から160℃であっても良い。最大温度の選択は、本方法中に使用される溶媒の性質に依存する。110℃から135℃の温度範囲は、オルトジクロロベンゼンが、溶媒として使用される場合、特に有利であることが分かった。
【0109】
望ましい最大温度次第で、熟成工程の前に、有機相から水性相を分離することが必要であり得る。例えば、水は、オルト−ジクロロベンゼンと、98℃の大気圧で低い沸点を有する、共沸混合物を形成する。それ故、反応に使用される溶媒がオルト−ジクロロベンゼンの場合、例えば110℃から135℃の有機相の望ましい最大温度が、大気圧で効果的に達せられるように、熟成工程の前に有機相から水性相を分離することが好ましい。
【0110】
他の変化によると、一部又はすべての熟成工程は、圧力下、例えば1.5barから2bar、又は2barから5bar、又は5barから10bar、又は10barから20bar、又は20barから50barの絶対圧力のもとで、行われる。これは、水性相の事前の分離なしで、有機相が望ましい最大温度に達することを、特に可能にし得る。
【0111】
熟成工程の間の加熱速度は、例えば、0.1℃/分から10℃/分、好ましくは0.2℃/分から5℃/分、より好ましくは0.5℃/分から1℃/分であり得る。
【0112】
最大温度に達した時点で、(事前に分離されている、又はされていない)有機相は、好ましくは1分間から600分間、より好ましくは5分間から300分間、より好ましくは15分間から120分間、任意選択で、最大温度で維持され得る。
【0113】
その後、(事前に分離されている、又はされていない)有機相は、制御された方法で、上記のとおりの冷却及び温度コントロールシステムを使用して、冷却される。冷却速度は、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが適切に結晶化するように、好ましくは、十分低いが、本発明の方法の総合的な経済効果を最適にするため、過剰に低くない。冷却速度は、例えば5℃/時から10℃/時、又は10℃/時から15℃/時、又は15℃/時から20℃/時、又は20℃/時から25℃/時、又は25℃/時から30℃/時、又は30℃/時から35℃/時、又は35℃/時から40℃/時、又は40℃/時から45℃/時、又は45℃/時から50℃/時、又は50℃/時から55℃/時、又は55℃/時から60℃/時であり得る。20℃/時から40℃/時、及び特に、25℃/時から35℃/時に含まれる速度は、特に有利であることが分かった。
【0114】
いくつかの(好ましい)変化において、温度は、冷却段階の間に、十分に一定の速度で減少してもよい。他の変化において、温度は不定の速度で減少してもよい。そのような場合、上記の速度範囲は、冷却段階全体での平均速度を意味する。
【0115】
熟成工程の終了時に、(事前に分離されている、又はされていない)有機相は、いわゆる分離温度に達し、最大温度より低い。
【0116】
熟成工程の終了時、すなわち、分離温度での、(1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの総量に対して、)有機相中の固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの比率は、好ましくは、少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、又は少なくとも98質量%、又は少なくとも99質量%、又は少なくとも99.5質量%、又は少なくとも99.9質量%である。
【0117】
ろ過される能力があると特徴づけに一般に使用される、懸濁液の特性は、ケーキ比抵抗である。熟成工程後の、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンのケーキ比抵抗は、熟成工程前の1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンのケーキ比抵抗より、少なくとも2倍、好ましくは、3倍、又は5倍、又は10倍低い。ケーキ比抵抗R
sは、ろ過された体積(V)の関数に対して、ろ過された体積で割ったろ過時間(t/V)をプロットし、実質的に直線型である、領域内の付随するグラフの傾きを測定し、下記Kozeny−carman式を参照することにより計算され得る:t=(R
0.μ.V)/(A.ΔP)+(R
s.μ.W.V
2)/(2A
2.ΔP)、ここでtはsで表されるろ過時間であり、R
0はm
−1で表されるろ過媒体の比抵抗であり、μはろ過温度での、Pa.sでのろ液の粘度であり、Vはm
3で表される、時間tでろ過される体積であり、Aはm
2でのろ過表面であり、ΔPはPaで表される(ケーキ及びろ過媒体を含む)フィルターの圧力損失であり、Wはkg/m
3でろ過される懸濁液の乾燥固体濃度であり、R
sはm/kgでのケーキ比抵抗である。どのような測定方法を行うかの追加の詳細は、下記実施例に記載した。
【0118】
熟成工程の後の、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンのケーキ比抵抗は、好ましくは、5×10
7m/kgから1.5×10
10m/kg、より好ましくは、1×10
8m/kgから1×10
10m/kg、より好ましくは2×10
8m/kgから5×10
9m/kgである。
【0119】
固体/液体分離工程(好ましくはろ過工程)は、好ましくは、上記定義された分離温度で行われる。
【0120】
熟成工程が存在しない場合、有機相は、水性相からの分離の後に分離温度で直接得られるか、水性相からの分離の後に分離温度に、直接加熱又は冷却されるか、又は事前に水性相からの分離なしで、直接分離温度にされ、固体/液体分離工程に供され得る。
【0121】
分離温度は、例えば、通常−20℃から0℃、又は0℃から20℃の範囲であり、又は、20℃から120℃などの、少なくとも20℃であり得る。少なくとも20℃での分離温度は、下記理由で好まれる。
【0122】
高純度の最終1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを達成するため、特に4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸、及び4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルの不純物の量を制限又は減少させることが望ましい。
【0123】
いかなる理論にも縛られることは望ましくないが、本発明者は、反応溶媒中に4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸が、4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルより溶けにくく、生成混合物の水性溶液への接触は、生成混合物をメタノールなどの非水性溶媒へ接触させることより、(4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸及び4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルの総量に対して)4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸の比率が大きくなることを理解した。
【0124】
すべての4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸−型の不純物が、有機相中に溶解可能であることが望ましい。実際には、4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸−型の不純物の固体粒子は、固体/液体分離工程の間に、固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンと保持される傾向がある。
【0125】
結果として、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン−ルイス酸複合体の分離のための水性溶液の使用は、上述の理由で有利であり、4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸−型の不純物の分離の問題を引き起こし得る。
【0126】
それ故、好ましい変化において、この問題を解決、及び4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸−型の不純物の分離が、最適であることを確かにするために、固体/液体分離工程が、少なくとも20℃の温度で行われる。この工程の可能な温度範囲は、特に、20℃から25℃、25℃から30℃、30℃から35℃、35℃から40℃、及び40℃から45℃である。
【0127】
温度が、比較的高い場合、4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸は、有機相によく溶解する。一方、温度は過度に高くあるべきでなく、さもなければ1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン自体が、固体/液体分離工程の間に十分に溶解し、それ故失われもし得る。
【0128】
液体/固体分離工程の間に、望ましい温度を達成及び/又は維持するため、使用は、上記のような、温度制御装置並びに冷却及び/又は加熱装置で行われ得る。
【0129】
固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、残存不純物と共に、固体/液体分離工程の後、回収される。
【0130】
好ましい変化において、前記固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、プロトン性溶媒中で洗浄されることにより、更に精製される。プロトン性溶媒の使用は、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが、そのような溶媒において、非常に溶けにくいので、有利である。この段階でのプロトン性溶媒は水性溶液であり得る。しかしながら、好ましい変化において、この段階でのプロトン性溶媒は、有機溶媒である。メタノールは特に好ましい溶媒である。他の可能性は、例えば、酢酸、ギ酸、エタノール、イソプロパノール及びベンジルアルコールを含む。
【0131】
この洗浄工程の間の、メタノールのような有機溶媒の使用は、4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸−型の不純物、及び特に4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸自体が、水よりそのような溶媒により溶解するが、一方1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンはまだほとんど溶けないので、有利である。
【0132】
この洗浄工程で使用されるプロトン性溶媒に対する、固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量比は、例えば、0.3から20、好ましくは0.6から10、より好ましくは1から5であり得る。
【0133】
洗浄工程の後、又は洗浄工程に付随して、別の固体/液体分離工程が行われてもよい。
【0134】
洗浄工程は、反応容器中で、前工程で回収された固体1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンをプロトン性溶媒と混合することにより行われてもよい。そのような洗浄工程の継続は、例えば、5分から900分、好ましくは15分から300分、より好ましくは45分から120分であってもよい。
【0135】
使用が、遠心ろ過装置で行われる場合、洗浄及びろ過は、この装置内で付随して行われてもよい。
【0136】
洗浄工程、及び次の又は付随する固体/液体分離工程は、好ましくは、少なくとも20℃の温度で行われる。比較的高い温度での操作は、上述の理由から有利であり、すなわち、これは4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸−型の不純物、及び特に4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸自身の溶解を助ける。
【0137】
洗浄工程及び次の又は付随する固体/液体分離工程の間に、高い温度での操作は、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンがプロトン性溶媒にかなり溶けにくいため、初期固体/液体分離工程の間より、有利であり得る。したがって、使用されるプロトン性溶媒の沸点までの温度での操作が可能である。
【0138】
これらの工程の、可能な温度範囲は、特に20℃から25℃、25℃から30℃、30℃から35℃、35℃から40℃、40℃から45℃、45℃から50℃、50℃から55℃、55℃から60℃である。
【0139】
これらの工程の間の温度制御は、上記のとおりに行われ得る。
【0140】
洗浄工程、及び固体/液体分離工程は、任意選択で、まったく同じ、又は異なる方法で、1回以上繰り返されてもよい。例えば、異なるプロトン性溶媒、異なる洗浄継続、及び/又は異なる温度は、様々な洗浄工程、及び固体/液体分離工程において使用されてもよい。
【0141】
遠心ろ過が使用される場合、遠心ろ過ごとに、好ましくは2gから1500g、より好ましくは5gから1000g、及び最も好ましくは10gから800gの加速度が使用されてもよい。
【0142】
遠心ろ過が使用される場合、遠心ろ過ごとに、ろ過の終了時でのろ過された生成物の乾燥固体物質含有量は、好ましくは85質量%から99質量%、より好ましくは88質量%から98質量%、及び最も好ましくは90質量%から97質量%である。
【0143】
最後の固体/液体分離の後、回収された固体は、好ましくは大気圧又は真空下で、オーブン又はドライヤー内で乾燥されてもよい。
【0144】
最後に、実質的には純粋な形態の、すなわち少なくとも98.5質量%、好ましくは99.0質量%、及びより好ましくは99.5質量%の純度での1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンが回収される。
【0145】
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの純度は、核磁気共鳴、示差走査熱量測定、ガスクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、多くの方法により決定されてもよい。好ましくは、前記純度はHPLCにより決定される。
【0146】
本発明により得られる1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、次いで、PEKKポリマーを作るため、重合化反応を行うために使用され得る。
【0147】
PEKKポリマーを作るため、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、少なくとも一つの二官能性の芳香族塩化アシルと反応される。
【0148】
二官能性の芳香族塩化アシルは、特に、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイル、並びにより好ましくは塩化テレフタロイル及び塩化イソフタロイルの混合物を含む。
【0149】
反応は好ましくは溶媒中で実行される。溶媒は好ましくは非プロトン性溶媒であり、特に塩化メチレン、二硫化炭素、オルト−ジクロロベンゼン、メタ−ジクロロベンゼン、パラ−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、オルト−ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ニトロベンゼン、及びそれらの混合物から選択され得る。オルト−ジクロロベンゼンが最も好ましい溶媒である。
【0150】
反応は、触媒としてルイス酸の存在下で、好ましくは行われる。
【0151】
使用されるルイス酸は、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化スズ、四塩化チタン及び五塩化モリブデンを含む。三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、三臭化アルミニウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化鉄、三塩化ガリウム、及び五塩化モリブデンが好ましい。三塩化アルミニウムは特に好ましい。
【0152】
重合は、1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの生成に使用されたものと同じ反応容器内で実行され得る。しかし、より好ましくは、1以上の他の反応容器内で実行される。
【0153】
重合は、例えば50℃から120℃の温度範囲で行われ得る。
【0154】
PEKKポリマーを合成する方法は、有利には、PEKKポリマーを精製するための1以上の工程:
−PEKKポリマーを含有する混合物とプロトン性溶媒を混合し、PEKKスラリーを提供する工程;
−好ましくはろ過及び洗浄により、PEKKスラリーからPEKKポリマーを分離する工程、のような工程を含む。
【0155】
PEKKスラリーを作るための、使用されるプロトン性溶媒は、例えばメタノールであってもよい。
【0156】
PEKKポリマーは、その後、ろ過によりPEKKスラリーから回収され得る。必要であれば、ポリマーは、好ましくは、メタノールなどのプロトン性溶媒により、一度又は数回、洗浄され、再ろ過され得る。洗浄は、例えば、溶媒中にポリマーを再スラリー化することにより行われ得る。
【実施例】
【0157】
下記実施例は、限定なしに、本発明を説明する。
【0158】
実施例1
メカニカルスターラー、並びにスクラバーシステムに接続した窒素吸入口、及び排気口を装備した2Lの反応容器中に、1066gのオルト−ジクロロベンゼン、92.7gの塩化テレフタロイル及び233gのジフェニルエーテルを導入した。完全に溶解させた後、混合物を35℃にセットした。35℃に保持しながら、198gの三塩化アルミニウムを反応混合物に3h以上でゆっくり加えた。三塩化アルミニウムの添加が終了した後、混合物を、反応が終了するように、35℃で3時間撹拌して保持した。その後、混合物を、3%のHCLを含有する830gの水を含む第二の反応容器に注いだ。この工程の終了の後、混合物を3時間落ち着かせ、水性相をデカント、又は吸引により取り除き得る。第二の3%のHCLをその後加え、撹拌し、その後デカンテーションのため、1時間落ち着かせた。この第二の酸性水性相を、吸引によりほとんど取り除いた。
【0159】
したがって、得られた懸濁液を、その後120℃まで加熱し、3時間で35℃に冷却する。得られた固体を、溶媒から、760g(1g=9.80665m・s
−2)の加速度で、遠心分離した。母液の回収の後、湿った粉末は遠心を維持し、35℃で1900gのメタノールで噴霧洗浄した。湿った固体を、従って、得て、遠心ろ過で取り除き、乾燥での質量損失により測定される、固形分96質量%を有した。その後、真空下で一晩乾燥させた。183gの1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを、HPLCにより決定される、約99.75質量%の純度で回収した。
【0160】
実施例2
Mettler Toledo社製、リアルタイム熱量測定装置RTCalTM、メカニカルスターラー、並びにスクラバーシステムに接続した窒素吸入口、及び排気口を装備した、2Lのガラス反応容器中に、699gのオルト−ジクロロベンゼン、44gの塩化テレフタロイル、及び111gのジフェニルエーテルを導入した。完全に溶解させた後、混合物を40℃にセットした。40℃で温度を維持しながら、152gの三塩化アルミニウムを、反応混合物にゆっくり加えた。三塩化アルミニウムの添加が終了した後、反応が終了するように、40℃で1h撹拌して保持した。反応混合物を40℃で保持し、熱流量を反応容器のジャケット上で記録しながら、3%HCL及び2%の酢酸を含有する、853gの水性溶液を反応混合物にゆっくり添加した。断熱のΔT48°Kに相当する、224kJのエネルギー放出を、この1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン−三塩化アルミニウムの分離の間に、測定した。
【0161】
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン−三塩化アルミニウムの分離に、酸性水の代わりにメタノールを使用した場合、分離の間に、同様のエネルギー放出を推定すると、計算される断熱ΔTは70°Kである。
【0162】
実施例3,4及び5
メカニカルスターラー、並びにスクラバーシステムに接続した窒素吸入口、及び排気口を装備した2Lの反応容器中に、699gのオルト−ジクロロベンゼン、44.3gの塩化テレフタロイル及び113gのジフェニルオキシドを導入した。
【0163】
完全溶解の後、混合物を0℃にセットした。0℃で温度を保持しながら、94gの三塩化アルミニウムを、反応混合物に、3h以上でゆっくり添加した。三塩化アルミニウム添加の終了後、混合物を、反応が終了するように、3h、0℃で撹拌して保持した。混合物を、その後、3%HCL及び2%の酢酸を含有する783gの水を含む第二の反応容器に、注いだ。この工程の終了後、混合物を3時間落ち着かせ、水性相をデカンと、及び吸引により取り除いた。その後、20℃から25℃に冷却し、ろ過した。
【0164】
室温で934gのメタノールで、得られた固体を洗浄した後、最終生成物中の4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸、及び4−(4−フェノキシベンゾイル)安息香酸メチルエステルの不純物の量を、HPLCにより決定した。
【0165】
結果を下記表1にまとめた。
【0166】
実施例6、7及び8(ろ過温度):
上記実施例3、4及び5を、ろ過温度を25℃に替えて35℃に設定した以外、繰り返した。
【0167】
結果を下記表1にまとめた。
【0168】
【表1】
【0169】
実施例9
実施例1と同様の合成を行った。第二の酸性水性相の除去の後、残存している有機懸濁液を、118℃に加熱し、その後3hで23℃に冷却した。
【0170】
80mLの1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンの有機懸濁液を、ポリプロピレンのろ布(細孔径=35ミクロン)を付けた100mLのステンレス鋼圧力ろ過ホルダー(EMO Millipor)中に置いた。
【0171】
このろ過器の下に、はかりの上にフラスコを置いた。システムをその後しっかりと閉じ、(典型的には1.1から2barの間の絶対)窒素圧を、懸濁液を導入後、30秒システムの上部分に適用した。
【0172】
フラスコ内に収集した、ろ液の量を、時間の関数に対して記録した。液体の密度を使用して質量データを体積に変換した後、ろ過体積で割ったろ過時間(t/V)をろ過体積の関数(V)に対してプロットした(
図1参照)。
【0173】
実質直線型である、領域でのグラフの傾きを測定し、上述のKozeny-Carman式に、この実施例に関する下記値と共に、代入した:μ=1.38・10
−3Pa・s;A=0.000934819m
2;ΔP=10000Pa及びW=160kg/m
3。
【0174】
Kozeny-Carmanによる、ケーキ比抵抗Rsは、(傾き・2A
2・ΔP)/(μ.W)=1.58・10
10m/kgに等しい。