特許第6795712号(P6795712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特許6795712過飽和条件下で1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法
<>
  • 特許6795712-過飽和条件下で1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法 図000007
  • 特許6795712-過飽和条件下で1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法 図000008
  • 特許6795712-過飽和条件下で1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795712
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】過飽和条件下で1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/46 20060101AFI20201119BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 45/79 20060101ALI20201119BHJP
   C08G 67/00 20060101ALI20201119BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   C07C45/46
   C07C49/84 G
   C07C45/79
   C08G67/00
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-563523(P2019-563523)
(86)(22)【出願日】2018年5月16日
(65)【公表番号】特表2020-520363(P2020-520363A)
(43)【公表日】2020年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2018062796
(87)【国際公開番号】WO2018210959
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】17305561.7
(32)【優先日】2017年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ル
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ジュアノー
【審査官】 武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−195122(JP,A)
【文献】 特開昭64−038435(JP,A)
【文献】 特開昭63−258923(JP,A)
【文献】 国際公開第95/023821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法であって:
- 溶媒中に塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸を含む反応体混合物を用意する工程;
- 塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させて、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体を含む生成物混合物を得る工程
を含み、
塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、溶媒中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界を超える1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で溶媒中に溶解されている、方法。
【請求項2】
前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の一部の期間、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界より、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%高い、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で、溶媒に溶解されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の一部の期間、5質量%を超える、好ましくは10質量%を超える、より好ましくは15質量%を超える、最も好ましくは30質量%を超える1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で、溶媒に溶解されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の持続時間の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の期間、最も好ましくは、塩化テレフタロイルとジフェニルエーテルとの反応の全期間、溶媒に溶解されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルの初期の量に対して75モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが前記反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解され;好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルの初期の量に対して80モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが前記反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解され;より好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルの初期の量に対して85モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解され;最も好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、塩化テレフタロイルの初期の量に対して90モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程が、反応器中で実施され:
- 方法が、反応器を洗浄する予備的工程を含み;及び/又は
- 方法が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の前又は後に、反応体混合物から固体粒子を排除する工程を含み;及び/又は
- 反応体混合物の剪断応力が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、100s-1未満、好ましくは25s-1未満にとどまる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ルイス酸が三塩化アルミニウムである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応体混合物の温度が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも15℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも45℃である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ルイス酸が、溶媒中の塩化テレフタロイルとジフェニルエーテルの混合物に連続的に添加され、反応体混合物の温度が、ルイス酸の合計質量に対して30質量%のルイス酸が添加された後、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応体混合物の温度が、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の間に、初期温度から最終の温度に上昇する、好ましくは:
- 初期温度が、0℃〜80℃、より好ましくは30℃〜50℃であり、及び/又は
- 最終の温度が、少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも40℃、更により好ましくは少なくとも45℃、最も好ましくは少なくとも50℃である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒がオルト-ジクロロベンゼンである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
追加の工程:
- 生成物混合物をプロトン性溶媒と混合して、生成物スラリーを提供する工程;
- 1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを、生成物スラリーから、好ましくは、濾過により分離し、任意選択で洗浄する工程
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリエーテルケトンケトンポリマーを作製する方法であって、
- 請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する工程;
- 前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを、少なくとも1種の二官能性芳香族アシル塩化物と反応させる工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法、並びに前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンから出発してポリエーテルケトンケトンポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルケトンケトン(PEKK)ポリマーは、それらを高温又は高い機械的又は化学的応力への曝露を含む用途に有用なものとする多くの性質を有する。それらは、例えば、航空宇宙産業、沖合の穿孔及び医学的デバイスに有用である。
【0003】
ポリエーテルケトンケトンポリマーを製造するための1つの公知の経路は、出発原料として1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを使用することに依拠する。
【0004】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、三塩化アルミニウムなどのルイス酸の存在下で塩化テレフタロイルとジフェニルエーテルとを反応させることにより調製することができる。
【0005】
文献、US4,816,556(実施例2)では、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、塩化テレフタロイル及びジフェニルエーテルを、オルトジクロロベンゼンに溶解し、0〜5℃に冷却し、温度を5℃未満に保って塩化アルミニウムを添加することにより調製される。次に、混合物は20℃に温められる。その後、冷メタノールが添加されてスラリーが生じ、それが濾過され、メタノール中で再びスラリーとなり、再び濾過される。
【0006】
文献、US4,826,947(実施例2)では、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、塩化メチレン、メチルスルホン及び三塩化アルミニウムの混合物を用意し、-30℃〜-35℃の間の温度に冷却し、次にジフェニルエーテルを、その後塩化テレフタロイルを添加することにより調製される。反応混合物は、次に冷メタノールに注がれて、スラリーとなり、それが次に濾過される。
【0007】
文献WO95/23821(実施例11)には、塩化アルミニウムを氷浴で冷却したオルト-ジクロロベンゼン中に提供し、次に塩化テレフタロイル及びジフェニルエーテルを添加することが開示されている。その後、反応混合物は、室温まで暖まるに任され、撹拌され、メタノールの濃HCl溶液に注がれる。沈殿が形成され、それはその後濾別される。
【0008】
工業的規模において経済的に実現可能な様式で実行され得る、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを高純度及び高収率で製造する方法に対する必要性が未だ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US4,816,556
【特許文献2】US4,826,947
【特許文献3】WO95/23821
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する方法であって:
- 溶媒中に塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸を含む反応体混合物を用意する工程;
- 塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させて、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体を含む生成物混合物を得る工程
を含み、
塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、溶媒中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界を超える1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で溶媒中に溶解されている、方法を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
便宜上、本出願では、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の濃度は、溶媒中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で示される。飽和限界にも同じことが適用される。
【0012】
幾つかの実施形態において、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界より、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%高い、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で、溶媒に溶解されている。例えば、飽和限界が20質量%であれば、その場合、5%高い過飽和質量濃度は、20質量%の5%、21質量%の値(20*1.05)であろう。
【0013】
幾つかの実施形態において、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、5質量%を超える、好ましくは10質量%を超える、より好ましくは15質量%を超える、最も好ましくは30質量%を超える1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で、溶媒に溶解されている。
【0014】
幾つかの実施形態において、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の持続時間の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の期間、及び最も好ましくは、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の全期間、溶媒に溶解されている。
【0015】
幾つかの実施形態において、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルの初期の量に対して75モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解され;好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルの初期の量に対して80モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解され;より好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルの初期の量に対して85モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解され;最も好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルの初期の量に対して90モル%の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが反応体混合物中に存在する場合に、溶媒に溶解される。
【0016】
幾つかの実施形態において、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程は、反応器中で実施され:
- 反応器は、1μm未満、好ましくは0.2μm未満のルーゴシティを有する内壁を含み;及び/又は
- 方法は、反応器を洗浄する予備的工程を含み;及び/又は
- 方法は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の前又は後に、反応体混合物から固体粒子を排除する工程を含み;及び/又は
- 全反応体混合物について、平均剪断応力は、塩化テレフタロイルとジフェニルエーテルとを反応させる工程の少なくとも一部の期間、100s-1未満、好ましくは50s-1未満、より好ましくは25s-1未満、更により好ましくは20s-1未満にとどまる。
【0017】
幾つかの実施形態において、ルイス酸は三塩化アルミニウムである。
【0018】
幾つかの実施形態において、反応体混合物の温度は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも15℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも45℃である。
【0019】
幾つかの実施形態において、ルイス酸は、溶媒中の塩化テレフタロイルとジフェニルエーテルの混合物に連続的に添加され、ルイス酸の総質量に対して30質量%のルイス酸が添加された後、反応体混合物の温度は、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃である。
【0020】
幾つかの実施形態において、反応体混合物の温度は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の間に、初期温度から最終の温度に上昇し、好ましくは:
- 初期温度は、0℃〜80℃、より好ましくは30℃〜50℃であり、及び/又は
- 最終の温度は、少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも40℃、更により好ましくは少なくとも45℃、及び最も好ましくは少なくとも50℃である。
【0021】
幾つかの実施形態においては、溶媒は、別の溶媒であり、好ましくは、オルトジクロロベンゼンであることができる。幾つかの実施形態において、溶媒はジフェニルエーテルであってもよい。
【0022】
幾つかの実施形態において、本方法は、追加の工程:
- 生成物混合物をプロトン性溶媒と混合して、生成物スラリーを提供する工程;
- 1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを、生成物スラリーから、好ましくは濾過により分離し、任意選択で洗浄する工程
を含む。
【0023】
本発明は、ポリエーテルケトンケトンポリマーを作製する方法であって:
- 上で記載された方法に従って1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを製造する工程;
- 前記1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを、少なくとも1種の二官能性芳香族アシル塩化物と反応させる工程
を含む、方法にも関する。
【0024】
本発明は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを、高純度及び高収率で製造する方法を提供する。この方法は、工業的規模で実行することができる。
【0025】
特に、反応の少なくとも一部の期間に、過飽和溶液として生ずる1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体を維持することにより、驚くべきことに、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの収率が増大すること、並びに4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド及びその対応するカルボン酸及びエステル形態などの副生不純物のレベルが低いままであることが見出された。それ故、本方法は、先行技術におけるよりもより効率的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】オルト-ジクロロベンゼン中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界を、温度の関数として示す図である。温度は、X軸に単位℃で示されている。飽和における1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度が、Y軸に示されている。1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンに対するルイス酸のモル比は4.05である。ルイス酸は三塩化アルミニウムである。
図2】塩化テレフタロイル(A)、4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド(下で規定される)(B)、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン(C)及びキサンチドロール部分を含有する分子(D)の濃度の段階的変化を、反応の進行の関数として概略的に示すグラフである。濃度は、塩化テレフタロイルの初期の総量に対するモル%で示されている。反応の進行は、X-軸に任意単位で示されている。
図3】15通りの異なる反応試行における、生成物混合物中の4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド/4-(4-フェノキシベンゾイル)安息香酸/4-(4-フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルの最終の合計量を、塩化テレフタロイルの初期総量に対して、モル%で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を、以下の記載で限定されることなくより詳細に説明する。
【0028】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、式I:
【0029】
【化1】
【0030】
の化合物である。
【0031】
これは、式II:
【0032】
【化2】
【0033】
の塩化テレフタロイルを、溶媒中、式III:
【0034】
【化3】
【0035】
のジフェニルエーテルと、フリーデルクラフツ触媒として作用するルイス酸の存在下で反応させることにより作製することができる。これは、この後、「反応工程」と呼ばれる。
【0036】
反応の結果、式Iの化合物が生成し、それは、主にルイス酸との錯体の形態にある。
【0037】
該反応は2段階を含むと考えられる。第1の段階で、式IIの1分子が、式IIIの1分子と反応して、「活性中間体」と呼ばれる以下の式IV(4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド)の中間体を形成する:
【0038】
【化4】
【0039】
次に式IVの活性中間体の1分子が、式IIIの別の分子と反応して所望の式Iの生成物を形成する。
【0040】
反応中、以下の式IVaの4-(4-フェノキシベンゾイル)安息香酸も、ある程度生じ得る(特に式IVの活性中間体から):
【0041】
【化5】
【0042】
対応する4-(4-フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルは、式IVの塩化アシル又は式IVaのカルボン酸のいずれかから直接形成され得る。中間体の酸の形態及び/又はエステルの形態が、反応中に形成され得るが、それらは、主として、引き続く後処理中に(生成物混合物が、下で記載されるようなプロトン性溶媒と混合されたときなどに)、残存する活性中間体からも形成され得る。
【0043】
4-(4-フェノキシベンゾイル)安息香酸及び4-(4-フェノキシベンゾイル)安息香酸エステルは、不活性であり、それ故、生成物混合物中に不純物として残留する。
【0044】
上記反応により生成する他の主な不純物は、キサンチドロール部分を含有する分子である。
【0045】
溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒であり、それは、特に、塩化メチレン、二硫化炭素、オルト-ジクロロベンゼン、メタ-ジクロロベンゼン、パラ-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、オルト-ジフルオロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ニトロベンゼン及びそれらの混合物から選択することができる。
【0046】
オルト-ジクロロベンゼンが最も好ましい溶媒である。
【0047】
使用され得るルイス酸は、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二スズ、四塩化チタン、及び五塩化モリブデンを含む。三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、三臭化アルミニウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、三塩化ガリウム、及び五塩化モリブデンが好ましい。三塩化アルミニウムが特に好ましい。
【0048】
式Iの化合物を作製するために、式II及びIIIの化合物間の反応を反応器中で実施することができる。反応器は、例えば、ガラスの反応器、ガラスライニングされた反応器又はステンレス鋼の反応器であることができる。
【0049】
幾つかの変形法によると、本発明の方法で反応器に投入される材料は、式II及びIIIの化合物、溶媒及びルイス酸から本質的になるか又はそれらからなる。
【0050】
他の変形法によると、本発明の方法で反応器に投入される材料は、ルイス酸錯体の溶解度を増大させるために、1種又は複数の添加剤を更に含む。これらの添加剤は、ルイス塩基、例えば、ジフェニルスルホン、カルボン酸、エーテル及び無機塩、例えばLiCl、NaCl、KCl、CaCl2及びMgCl2等、並びにそれらの混合物から特に選択することができる。
【0051】
本発明によると、塩化テレフタロイル及びジフェニルエーテルを溶媒中に含む(及び好ましくはそれらからなる)初期反応体混合物が用意される。反応体混合物は、3種の構成要素を、任意の順で一緒に混合することにより作製することができる。例として、最初に溶媒を反応器に投入し、次に2種の反応体を反応器に添加することができる。
【0052】
第2の工程として、ルイス酸が反応体混合物に添加される。好ましくは、ルイス酸は、固体として添加される。或いは、それは、好ましくは、上記の溶媒中の懸濁物又は溶液として添加することもできる。
【0053】
幾つかの変形法では、ルイス酸は、粒子状の形態で、例えば、顆粒(例えば、1mmを超えるDv80を有する)の形態で、又は粉末(例えば、1mm未満のDv80、及び好ましくは未満0.5mmのDv50を有する)の形態で添加される。Dv80及びDv50は、ルイス酸粒子の累積サイズ分布のそれぞれ80パーセンタイル及び50パーセンタイル(体積における)にある粒子サイズである。これらのパラメーターは、篩い分けにより決定することができる。
【0054】
幾つかの特定の実施形態において、反応体及び触媒の質量濃度及び質量比は以下の通りである:
- 塩化テレフタロイルの濃度(反応器に投入された溶媒、塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸の合計に対する)は、3〜12%、好ましくは5〜10%であり;
- ジフェニルエーテルの濃度(反応器に投入された溶媒、塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸の合計に対する)は、5〜35%、好ましくは12〜25%であり;
- ルイス酸の濃度(反応器に投入された溶媒、塩化テレフタロイル、ジフェニルエーテル及びルイス酸の合計に対する)は、4〜30%、好ましくは10〜25%であり;
- 反応器に投入されたジフェニルエーテルに対する塩化テレフタロイルの質量比は、0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5であり;
- 反応器に投入された塩化テレフタロイルとジフェニルエーテルの合計に対するルイス酸の質量比は、0.2〜0.9、好ましくは0.3〜0.7である。
【0055】
ルイス酸の添加は、5〜600分、好ましくは30〜300分の範囲が有利であり得る時間にわたって漸次実施されることが好ましい。
【0056】
添加は、連続的に又は1回又は複数回中断して実施することができる。それが連続的に実施される場合には、一定の添加速度で実施することができる。或いは、添加速度は経時的に変動し得る。
【0057】
反応体混合物は、好ましくは、反応工程の少なくとも一部の期間撹拌される。したがって、反応器は、好ましくは、機械的撹拌機(それは、例えば、1枚又は複数の回転翼を備えることもできる)、又はポンプを用いる再循環ループ等の撹拌デバイスを備える。
【0058】
好ましくは、反応体混合物は、ルイス酸の添加の間中、撹拌デバイスを使用して撹拌されてもよい。
【0059】
反応体混合物に対するルイス酸の添加が完了したら、反応工程は、反応体混合物を、反応を所望の程度まで完了させるために、好ましくは、ある時間撹拌下で維持する工程を、任意選択で含むことができる。好ましくは、混合物は、0〜600分、より好ましくは5〜180分維持される。
【0060】
反応が所望の程度に完了したら、反応体混合物は、生成物混合物と呼ばれることになる。
【0061】
反応工程の終了は、本方法における次の工程の開始に対応し、次の工程は、通常、下でより詳細に記載される精製工程である。
【0062】
反応工程の間に、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、溶解された種として最初に生じて、その濃度は漸進的に増大する。本発明によると、反応工程の間のどこかの時点で、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の濃度は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界を超える。言い換えると、本発明によると、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、塩化テレフタロイルをジフェニルエーテルと反応させる工程の少なくとも一部の期間、過飽和状態で維持される。
【0063】
この飽和限界は、リアルタイムでの反応体混合物の状態によって決まり、反応工程の間に変動し得る。特に、それは、反応体混合物の温度、溶媒の性質及びルイス酸の量によって決まる。
【0064】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、それが反応体混合物中に飽和限界を超える濃度で溶解されている場合に、過飽和の状態にあると言われる。過飽和の状態は準安定状態である。それ故、過飽和の状態にある1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、核剤(例えば、固体粒子)が反応体混合物中に存在するならば、突然沈殿し得る。
【0065】
慣例により、本出願では、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の濃度は、溶媒中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度により示される。同じことが飽和限界にも適用される。
【0066】
飽和限界は、以下のモデル実験を使用して決定することができる。所定の量の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン及びルイス酸を、ガラス管中に含有される所与の溶媒に添加する。ガラス管の内容物を磁気撹拌により撹拌する。管内の混合物の温度は、管を熱流体中に入れることにより制御される。初期温度は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、最初に溶媒中に懸濁物として存在するような温度である。次に温度は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が溶媒中に完全に溶解されるまで、徐々に上昇される。飽和限界は、この特定の温度における混合物中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度と等しい。実験は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの別の質量濃度及び1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンに対するルイス酸の同じ質量比を使用して多数回繰り返すことができて、温度/飽和曲線を、所与の溶媒及びルイス酸の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンに対する所与の質量比について最終的に得ることができる。
【0067】
図1は、上で記載されたようにして溶媒としてのオルト-ジクロロベンゼン中において、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンに対するルイス酸のモル比が4.05で得られた温度/飽和曲線を、例示として示す。1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、ある温度及び1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンのある質量濃度で溶媒に溶解されているならば、並びに対応する温度/濃度の点が上記曲線より上に位置するならば、その場合、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、過飽和の状態にある。
【0068】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体を反応工程の一部の期間、過飽和の状態で維持すると、増大した収率を生ずることができることが、本発明者らにより見出された。
【0069】
問題の現象を図2で図式的に例示するが、この図は、反応工程の間の反応体混合物中の関係する種の濃度の典型的な段階的変化を示す。塩化テレフタロイル(A)が消費されるにつれて、4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド(B)が、最初に大量に生ずることがわかる。次に反応体混合物中の4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリドの濃度が、ピークに達し、減少し、それに対して所望の生成物(C)の濃度が増大する。キサンチドロール部分を含有する不純物(D)の量は、経時的に増大するが比較的低レベルにとどまる。
【0070】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が反応工程の間に沈殿すれば、(いかなる理論によっても束縛されることは望まず)未反応の4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリドの部分は沈殿に捕捉され、したがって、更に反応することから実質的に妨げられると考えられる。言い換えると、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が沈殿した後、残留する4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド(B)の所望の生成物(C)への変換は著しく妨げられると考えられる。
【0071】
それ故、本発明によれば、この沈殿は、反応工程の間に防止されるか又は少なくとも遅らされるかのいずれかであるが、しかしながら、混合物中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の濃度を、今度は反応の全体的有効度及び反応速度を低下させる低レベルに保つことはない。このことが可能になるのは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体が、その濃度が飽和限界に達した後でさえ、反応の工程の少なくとも一部の期間、溶媒に溶解されたままであるからである。
【0072】
幾つかの変形法によると、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、反応工程の間のどこかの時点で(この種の濃度が飽和限界を超えた後)沈殿する。
【0073】
代替変形法によると、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、反応工程の間に沈殿せず、反応の全工程の間、溶媒に溶解されたままである。ある実施形態において、若干の固体の沈殿が生ずると直ぐに、それは、種晶として働き得、飽和限界を超えるEKKEの全部又は少なくとも大部分を沈殿させる。ある実施形態において、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、飽和限界に対して過剰の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の、少なくとも96%、又は少なくとも98質量%、又は少なくとも99質量%、又は少なくとも99.5質量%が沈殿しなかったときに、沈殿しないと考えられてもよい。
【0074】
好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、反応工程の全持続時間の少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の期間、溶媒に溶解されている。
【0075】
好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、それが反応体混合物中に75モル%、(又は他の変形法では、80モル%、又は85モル%、又は90モル%、又は91モル%、又は92モル%、又は93モル%、又は94モル%、又は95モル%)の量で存在する場合に、溶媒に未だ溶解されており(即ち、沈殿していない)、ここで、前記量は、投入された塩化テレフタロイル反応体の初期の量に対する1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの量として表される。
【0076】
好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界より少なくとも5%、(又は他の変形法では、少なくとも10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は35%、又は40%)高い1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの質量濃度で、反応工程の一部の期間、例えば、少なくとも5分、又は少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも30分、又は少なくとも40分、又は少なくとも1時間の間、溶媒に溶解されている。
【0077】
好ましくは、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体は、反応工程の一部の期間、5質量%を超える、又は10質量%を超える、又は15質量%を超える、又は20質量%を超える、又は25質量%を超える、又は30質量%を超える、又は35質量%を超える、又は40質量%を超える、又は50質量%を超える1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン濃度で、溶媒に溶解されている(沈殿しない)。
【0078】
本発明を実施し、溶媒に溶解された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界を超える濃度を維持するために、沈殿の核形成は防止されるか又は少なくとも遅らされるべきである。数通りの手段を、非限定様式で、取ることができる。
【0079】
第1に、反応器の内壁(それは反応体混合物と接触している)は、低い表面粗度を有するべきである。好ましくは、壁の表面粗度Ra(ISO4287で規定されたような)は、2μm未満、又は1μm未満、又は0.8μm未満、又は0.5μm未満、又は0.2μm未満であってもよい。
【0080】
同様に、反応工程の間に反応体混合物と接触する装置の全ての表面、例えば回転翼の表面(存在する場合)又は再循環ループの内面等が、2μm未満、又は1μmm未満、又は0.8μm未満、又は0.5μmm未満、又は0.2μm未満のルーゴシティを有することも好ましい。
【0081】
第2に、本方法は、反応体混合物を反応器に供給する前に、前の反応からのダスト粒子又は残存生成物粒子等の全ての固体残留物を排除するために、反応器を洗浄する予備的工程を含むことができる。例として、これは、液体若しくは固体若しくは懸濁物、好ましくは反応溶媒を、反応器壁に噴霧するか若しくは吹きつけることにより、又は反応器を撹拌下、液体若しくは懸濁物で満たすことにより、又は何らかの機械的作用により達成することができる。
【0082】
例えば、反応器を洗浄する工程は、頻繁、少なくとも10バッチごとに、好ましくは5バッチごとに、更により好ましくは全てのバッチごとに1回であることができる。
【0083】
第3に、本方法は、固体粒子を反応体混合物から、反応工程の開始前又は反応工程の間のいずれかに、濾過(例えば、限外濾過を含む)などにより排除する工程を含むことができる。
【0084】
第4に、反応工程の間の撹拌条件(特に強度)は、反応体混合物について、平均剪断応力(Kmo×N(ここで、Kmoは使用される回転翼についてのMetzner-Otto定数であり、Nは回転頻度である)の積として計算される)が、反応工程の少なくとも一部の期間、更に特に、溶解された1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の溶媒中の濃度が、飽和限界を超える反応工程の一部の期間(反応工程の全持続時間に対する反応工程の最後の5%、又は最後の10%、又は最後の15%、又は最後の20%、又は最後の25%、又は最後の30%、又は最後の35%、又は最後の40%、又は最後の45%、又は最後の50%の期間等に)、100s-1未満、好ましくは50s-1未満、より好ましくは25s-1未満、更により好ましくは20s-1未満にとどまるような様式で選択され得る。
【0085】
問題の反応は発熱性である。反応器中の反応体混合物の温度を、特にルイス酸の添加中及び添加後に制御するために、好ましくは、温度制御システムが備えられる。温度制御システムは、反応器内に温度センサーを特に備えることができ、反応体混合物を冷却及び/又は加熱するように構成され得る。好ましくは、それは、反応体混合物を冷却するように少なくとも構成されている。
【0086】
反応体混合物を加熱及び/又は冷却するためのデバイスは、反応器の内側若しくは再循環ループ中に熱交換器、又は反応器のジャケット中に熱交換流体回路を備えることもできる。
【0087】
反応体混合物の温度が、ルイス酸を添加する工程の間に上昇する場合、これは、3通りの異なる様式:
- 反応体混合物を加熱することにより(好ましくは、目標の温度上昇を達成するために、ルイス酸の添加速度も制御しながら);
- 目標の温度上昇を達成するために、外部冷却若しくは加熱を加えることなく、ルイス酸の添加速度を単に制御することにより;又は
- 目標の温度上昇を達成するために、ルイス酸の添加速度も制御しながら、反応体混合物を冷却することにより、
達成することができる。
【0088】
好ましい実施形態によると、反応体が互いに反応し始めるときに、反応体混合物の温度における過剰に大きい又は急速な上昇を防止するために、反応体混合物は、ルイス酸を添加する工程の間及び可能性として添加後も冷却される。
【0089】
好ましくは、反応体混合物の温度は、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の少なくとも一部の期間5℃より高い。本発明の特定の変形法では、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の少なくとも一部の期間、反応体混合物の温度は、少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃である。
【0090】
温度がより高いときには、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の飽和限界もより高くなり、その結果、反応工程の少なくとも一部の期間、比較的高温であることが、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の望ましくない沈殿を防止するか又は遅らせるために役立つことは、注目されるべきである。したがって、本発明の実施形態は、現在の飽和限界(例えば、存在条件(例えば、温度及び圧力)における)よりも高い濃度を必要とする。
【0091】
その上、驚くべきことに、反応工程を比較的高温で実施すると、結果として1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの収率が増大し、キサンチドロール部分を含有する分子などの副生物不純物のレベルには、いかなる著しい増大もないことが見出された。
【0092】
一方、反応体のPEKKポリマーへのいかなる著しい重合も避けるために、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の間の温度は、好ましくは、ある閾値、例えば120℃未満にとどまるべきである。
【0093】
更に、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の間の温度は、溶媒の沸騰温度未満にとどまるべきである。
【0094】
反応器中の温度が、溶媒を沸騰させずに、より高い値に達することができるように、反応器を加圧された様式で操作することが可能である。この場合には、反応器中の圧は、1バール(大気圧)〜6バール、好ましくは1.5バール〜3バールの範囲であることができる。
【0095】
或いは、及び好ましくは、反応は大気圧で実施される。
【0096】
本発明の幾つかの変形法によると、反応体混合物の温度は、ルイス酸を添加する工程の間、100℃、好ましくは90℃、より好ましくは80℃、更により好ましくは70℃を超えない。
【0097】
本発明の有利な効果の一部又は全てを達成するために、ルイス酸を添加する工程の終わりに反応体混合物の温度が、この工程の開始時より比較的高いことが、一層非常に重要であると考えられる。
【0098】
したがって、本発明の幾つかの変形法では、90質量%のルイス酸(反応体混合物に添加されたルイス酸の合計質量に対して)が、反応体混合物に添加されたら、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の残りの間、反応体混合物の温度は、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃であり且つその温度にとどまることが好ましい。
【0099】
本発明の幾つかの変形法では、75質量%のルイス酸(反応体混合物に添加されたルイス酸の合計質量に対して)が、反応体混合物に添加されたら、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の残りの間、反応体混合物の温度は、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃であり且つその温度にとどまることが好ましい。
【0100】
本発明の幾つかの変形法では、50質量%のルイス酸(反応体混合物に添加されたルイス酸の合計質量に対して)が反応体混合物に添加されたら、反応体混合物の温度は、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の残りの間、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃であり且つその温度にとどまることが好ましい。
【0101】
本発明の幾つかの変形法では、20質量%のルイス酸(反応体混合物に添加されたルイス酸の合計質量に対して)が、反応体混合物に添加されたら、ルイス酸を反応体混合物に添加する工程の残りの間、反応体混合物の温度は、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃、又は少なくとも25℃、又は少なくとも30℃、又は少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃であり且つその温度にとどまることが好ましい。
【0102】
反応体混合物の温度は、ルイス酸を添加する工程の間、一定のままであることができる。或いは、それは、この工程の間に変動し得る。
【0103】
「初期温度」により、ルイス酸を添加する工程の開始時、即ち、ルイス酸の最初の分子が反応体混合物に添加されるときの反応体混合物の温度が意味される。
【0104】
「最終の温度」により、ルイス酸を添加する工程の終わり、即ち、ルイス酸の最後の分子が反応体混合物に添加されるときの反応体混合物の温度が意味される。
【0105】
反応体混合物の初期温度は、例えば、-30℃〜80℃の範囲であってもよい。幾つかの変形法では、反応体混合物の初期温度は、-30〜-25℃;又は-25〜-20℃;又は-20〜-15℃;又は-15〜-10℃;又は-10〜-5℃;又は-5〜-0℃;又は0〜5℃;又は5〜10℃;又は10〜15℃;又は15〜20℃;又は20〜25℃;又は25〜30℃;又は30〜35℃;又は35〜40℃;又は40〜45℃;又は45〜50℃;又は50〜55℃;又は55〜60℃;又は60〜65℃;又は65〜70℃;又は70〜75℃;又は75〜80℃である。0〜80℃、より特に20〜50℃の範囲が好ましい。
【0106】
反応体混合物の最終温度は、例えば、10℃〜80℃の範囲であってもよい。幾つかの変形法では、反応体混合物の最終の温度は、10〜15℃;又は15〜20℃;又は20〜25℃;又は25〜30℃;又は30〜35℃;又は35〜40℃;又は40〜45℃;又は45〜50℃;又は50〜55℃;又は55〜60℃;又は60〜65℃;又は65〜70℃;又は70〜75℃;又は75〜80℃である。30〜80℃、より特に40〜70℃、更により特に45〜60℃の範囲が好ましい。幾つかの変形法では、最終温度は、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃、最も好ましくは少なくとも50℃である。
【0107】
幾つかの変形法では、反応体混合物の温度は、ルイス酸を添加する工程の間に低下し、即ち、最終温度は初期温度より低い。
【0108】
好ましい変形法では、反応体混合物の温度は、ルイス酸を添加する工程の間に上昇し、即ち、最終温度は初期温度より高い。
【0109】
幾つかの実施形態において、最終の温度と初期温度の間の温度差ΔTは、5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃である。
【0110】
本発明の幾つかの変形法では、温度の増大は単調であり、即ち、ルイス酸を添加する全工程の間、温度における一過性の減少はない。一方、温度における一過性の変化又はゆらぎは、幾つかの実施形態では、特に温度制御の非瞬時の性質に基づいて可能である。
【0111】
幾つかの変形法では、反応体混合物の温度は、初期温度から最終の温度まで連続的に上昇する。或いは、反応体混合物の温度は、ルイス酸を添加する工程の間に、1つ又は複数の上昇段階及びもう一つのプラトー段階を含むこともある。特に、反応体混合物の温度は、ルイス酸を添加する工程の第1の部分の期間に、初期温度から最終の温度に最初に上昇し、次にルイス酸を添加する工程の第2の部分の期間に最終の温度でプラトーになることがある。この場合には、プラトー温度は、例えば、+/-5℃、又は+/-2℃、又は+/-1℃の精度で設定され得る。
【0112】
ルイス酸の添加後、反応体混合物を維持する任意選択の工程の間の反応体混合物の温度に関して制限はない。本発明の幾つかの変形法では、混合物の温度は上で記載された最終の温度で維持される。他の変形法では、温度は、最終の温度に対して上昇又は低下する。
【0113】
本発明の方法は、生成物混合物から、特に溶媒、触媒及び未反応の反応体並びに副生物から1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを精製するために、1つ又は複数の工程(反応工程の後に)を含むことが有利であることがある。精製は:
- 生成物混合物をプロトン性溶媒と混合して、生成物スラリーを提供する工程;
- 生成物スラリーから、好ましくは濾過及び洗浄により1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを分離する工程
を含む。
【0114】
生成物スラリーを作製するために使用されるプロトン性溶媒は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンが、容易に沈殿する傾向があるように選択することが有利である。例として、メタノールがプロトン性溶媒として使用され得る。
【0115】
プロトン性溶媒は、有機溶媒、例えば、メタノール、酢酸、ギ酸、エタノール、イソプロパノール、及びベンジルアルコールなどであることができる。
【0116】
或いは、プロトン性溶媒は水溶液であることができる。
【0117】
上の溶媒の混合物、例えば水性有機溶媒、例えば、メタノールと混合された水溶液等も使用することができる。
【0118】
次に、所望の生成物は、生成物スラリーから濾過により回収することができる。必要であれば、生成物は、1回又は数回、好ましくは、メタノール等のプロトン性溶媒により洗浄し、再び濾過することができる。洗浄は、例えば、生成物を溶媒中に再びスラリーにすることにより実施することができる。
【0119】
本発明により得られた1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、その後、PEKKポリマーを作製するための重合反応を実施するために使用することができる。
【0120】
PEKKポリマーを作製するために、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、少なくとも1種の二官能性芳香族アシル塩化物と反応させる。
【0121】
二官能性芳香族アシル塩化物は、特に、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイル、より好ましくは塩化テレフタロイルと塩化イソフタロイルの混合物を含むことができる。
【0122】
反応は、好ましくは、溶媒中で実施される。溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒であり、それは、特に、塩化メチレン、二硫化炭素、オルト-ジクロロベンゼン、メタ-ジクロロベンゼン、パラ-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、オルト-ジフルオロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ニトロベンゼン及びそれらの混合物から選択することができる。
【0123】
反応は、好ましくは、触媒としてのルイス酸の存在下で実施される。
【0124】
使用され得るルイス酸は、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二スズ、四塩化チタン、及び五塩化モリブデンを含む。三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、三臭化アルミニウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、三塩化ガリウム、及び五塩化モリブデンが好ましい。三塩化アルミニウムが特に好ましい。
【0125】
重合は、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンの生成のために使用されたものと同じ反応器中で実施することができる。しかし、より好ましくは、1つ又は複数の他の反応器で実施される。
【0126】
重合は、例えば、50〜120℃の範囲の温度で実施することができる。
【0127】
PEKKポリマーを有利に作製する方法は、PEKKポリマーを精製するための1つ又は複数の工程、例えば:
- PEKKポリマーを含有する混合物をプロトン性溶媒と混合して、PEKKのスラリーを提供する工程;
- PEKKポリマーを、PEKKのスラリーから好ましくは濾過及び洗浄により分離する工程
も含む。
【0128】
PEKKのスラリーを作製するために使用されるプロトン性溶媒は、例えば、メタノールであってもよい。
【0129】
次にPEKKポリマーを、PEKKのスラリーから濾過により回収することができる。必要であれば、ポリマーは、1回又は数回、好ましくは、メタノールなどのプロトン性溶媒により洗浄し、再び濾過することができる。洗浄は、例えば、ポリマーを再び溶媒中にスラリーにすることにより実施することができる。
【実施例】
【0130】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、例示する。
【0131】
機械的撹拌機、窒素導入口及びスクラバーシステムに通じる排出口を備えた2Lの反応器に、1470gのオルトジクロロベンゼン、92.7gのテレフタロイルクロリド及び233gのジフェニルオキシドを投入した。
【0132】
完全な可溶化後、混合物の温度を25℃にした。温度を25℃に保ちながら、198gのAlCl3を反応体混合物にゆっくり添加した。AlCl3添加の完了後、混合物を25℃で3時間の間撹拌下に保って反応を終了させた。次に試料を取り、メタノール中でクエンチし、1H NMRで分析した。相対モル組成を、塩化テレフタロイルから形成された各不純物の特性ピークに基づいて計算した。
【0133】
15通りの異なる類似した試行を実施した。4-(4-フェノキシベンゾイル)ベンゾイルクロリド並びに対応するカルボン酸及びエステル不純物のモル濃度(投入された塩化テレフタロイルの初期量に対する)を図3に示す。試行1〜9(比較試行)では、反応工程の間に沈殿が生じた。試行10〜15(本発明による)では、沈殿、例えば、可視的沈殿は、反応工程の間に、溶媒中の1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン-ルイス酸錯体の濃度が飽和限界を超えた後でさえ生ぜず、合成の通算収率は、はるかに良好あった。15通りの全ての試行で、キサンチドロール部分を含有する不純物のモル含有率(投入された塩化テレフタロイルの初期量に対する)は、比較的一定で、4.3%〜5.1%の間であった。
図1
図2
図3