特許第6795722号(P6795722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795722
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】食品等の還元性水蒸気
(51)【国際特許分類】
   A21C 1/00 20060101AFI20201119BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20201119BHJP
   A23L 5/30 20160101ALI20201119BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A21C1/00 A
   A23L5/10 A
   A23L5/30
   C01B3/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-117862(P2019-117862)
(22)【出願日】2019年6月7日
(62)【分割の表示】特願2018-14131(P2018-14131)の分割
【原出願日】2018年1月12日
(65)【公開番号】特開2019-213526(P2019-213526A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2020年1月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398053550
【氏名又は名称】有限会社情報科学研究所
(72)【発明者】
【氏名】上村 親士
(72)【発明者】
【氏名】上村 隆
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/051754(WO,A1)
【文献】 特開2011−089666(JP,A)
【文献】 特開2006−345838(JP,A)
【文献】 特開2006−187252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00−15/04
A23L 5/00− 5/30
A23L 7/00− 7/104
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に対し、100℃以上の高温加熱蒸気へ、還元作用を有する水素ガスを容積比で1%以上20%以下を添加注入し、水素の還元力に基づき、
高温で対象物へ強い還元力を有し、その噴射で対象物の抗酸化機能性物質を保護するために、瞬間的に還元することを特徴とする還元性水蒸気。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の還元性水蒸気に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の加熱処理は常に空気中の酸素に晒され、酸化条件下で加熱が進行する。食品や油脂の製造、医薬品の製造、化粧品の製造、その他化学薬品の製造等の製造工程では、酸化条件下での高温加熱処理を有する。その工程では、空気中の酸素による酸化が激しいので成分が酸化変性し、品質低下が著しいのが現状である。
本出願の還元水蒸気や還元加熱の技術は一般には存在しないが、当出願者の発明した水素還元水を用いる方法やウルトラファインバブル水素水を用いた抗酸化条件下の加工技術は存在している。
【0003】
特許文献1は当出願者の発明で、発明の名称は「食品等の還元性水素水とその製造方法並びに製造装置」である。
方法は水へ水素ガスを吹き込み、撹拌して還元性の水素水を生産する技術である。食品等への応用は、この水素水に調理物を浸漬し、素材を内部まで還元性にして水素水と一緒に加熱する方法である。
【0004】
特許文献2も当出願者の発明で、発明の名称は「共鳴発泡と真空キャビテーションによる酸化性ラジカル又は、還元性ラジカルを有するウルトラファインバブル製造方法及びウルトラファインバブル水製造装置」である。
方法は水へ超微細の水素バブルを発生させると、水素バブルが長期水中に浮遊し、超微細バブルで還元性のラジカルを発生させる事により、還元力を長期発生維持する。食品等への応用は、特許文献1と同様である。
【0005】
【特許文献1】特許公開平08−056632
【特許文献2】特許公開2016−043354
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品等の加工は、除菌、柔らかさなど物性の変化、糖化など化学変化を起こさせ、食べ易さと消化を促すために加熱加工を行う。大量の食品を加工し生産する場合は、加熱蒸気により加熱加工を行うのが通例である。
通常使用する蒸気は、水源又は水道の水をボイラーで沸かし加熱蒸気として、そのまま使用するのが一般的である。
しかし、その場合の加熱では酸化による変性で、抗酸化機能成分の破壊など大きく品質低下を起こしているのが現状である。
これを回避するには、高温加熱する熱源である加熱蒸気に還元力を付与することが必要であり、還元蒸気による加熱方法はまだ開発されていない。
本件出願の課題は、加熱蒸気に水素ガスを混合させて還元力を有する蒸気であり、その蒸気の生成方法と製造装置、その蒸気を用いた還元蒸煮加熱方法及び、蒸し方法とそれらの装置、更にその蒸気を用いてうどん、パン、歯磨きその他の練り込みを必要とする工程の還元練り込み方法とその装置である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ボイラーで蒸気を発生させ、その蒸気を断熱性通導パイプで、断熱エジェクターへ送り、水素供給装置から断熱エジェクターへ水素ガスを送り、蒸気と水素ガスを混合し、蒸気ガス均質化装置で、均質な水素ガスを含む蒸気を生成して得られる還元蒸気を用いる。
この還元蒸気は、100℃〜120℃の温度で強力な還元力を有し、断熱性の通導パイプで蒸気の水滴化を防止して送気し、食品、飲料、医薬品、化粧品、その他の産業上還元作用を必要とする加熱処理に供給することを可能とする。
【0008】
還元蒸気は図1に示す通り、ボイラー1で蒸気を発生させ、その蒸気を断熱通導パイプ2で、断熱エジェクター3へ送り、水素供給装置8から、断熱エジェクター3へ水素ガスを送り、断熱エジェクター3で蒸気と水素ガスを混合し、
蒸気ガス均質化装置4で均質な水素ガスを含む蒸気を生成する方法と、還元蒸気を必要とする各種加工装置へ、断熱通導パイプ5で送気し、還元蒸気7を還元蒸気噴射ノズル6で噴射する工程を有する還元蒸気製造方法を提供する。
【0009】
還元水蒸気は図1に示す通り、ボイラー1で蒸気を発生させ、その蒸気の熱を防散する機能(以後断熱と称する)通導パイプ2で、断熱エジェクター3へ送り、
水素供給装置8から、断熱エジェクター3へ水素ガスを送り、断熱エジェクター3で蒸気と水素ガスを混合し、蒸気ガス均質化装置4で均質な水素ガスを含む蒸気を生成する装置と、還元蒸気を必要とする各種加工装置へ、断熱性通導パイプ5で送気する工程を有する還元蒸気製造装置を提供する。
【0010】
還元蒸気は、食品加工、医薬品製造、化粧品製造の加熱段階で、その強い還元作用で素材に含まれる抗酸化機能性化合物を安定的に保存させ、機能性の高い食品、医薬品、化粧品を生産することを可能としている。
製造過程は、ボイラー1で蒸気を発生させ、その蒸気を断熱通導パイプ2で、断熱エジェクター3へ送り、水素供給装置8から、断熱エジェクター3へ水素ガスを送り、断熱エジェクター3で蒸気と水素ガスを混合し、蒸気ガス均質化装置4で均質な水素ガスを含む還元蒸気を生成する。
次に、断熱性通導パイプ5で還元蒸気を蒸煮釜17に導き、釜内で液状又は固形状材料18へ向けて還元蒸気噴射口6から蒸気を噴射して加熱蒸煮する。これらの技術を組み合わせて、素材の酸化を防止する抗酸化還元加熱方法と還元加熱装置を提供する。
【0011】
抗酸化還元蒸煮方法に使用する装置としては図2に示す通り、ボイラー1で蒸気を発生させ、その蒸気を断熱通導パイプ2で、断熱エジェクター3へ送り、水素供給装置8から、断熱エジェクター3へ水素ガスを送り、断熱エジェクター3で蒸気と水素ガスを混合し、蒸気ガス均質化装置4で均質な水素ガスを含む蒸気を生成する装置で還元蒸気を生成する。
次に、これに断熱通導パイプ5で接続し、還元蒸煮釜Aの還元蒸気噴射口6又は、還元蒸し器Bの還元蒸気噴射口6を組み合わせ、抗酸化還元蒸煮し法と、還元蒸し装置を提供する。
【0012】
食品加工、医薬品製造、化粧品製造の練り製品は、固形材料の加熱練り込みに際し、抗酸化加熱練り込み加工で機能性成分の酸化分解を防ぐ。
抗酸化加熱練り込み加工は、練り釜底22又は練機のヘラ27に還元蒸気の噴射口28を設け、加工素材へ還元水蒸気を吹き付けながら、練り込み作業を行う方法である。
詳しくは、ボイラー1で蒸気を発生させ、その蒸気を断熱通導パイプ2で送り、断熱エジェクター3でと水素ガスを混合し、混合した還元蒸気を蒸気ガス均質化装置4で均質な水素ガスを含む蒸気を生成する装置で還元蒸気を生成する。
これと接続する還元蒸気を練り込み装置Cの還元水蒸気噴射口22、又は、練り込み装置Dの還元水蒸気噴射口28へ断熱通導パイプ26で送り、練り釜底の還元蒸気噴射口22又は、練り込み装置のヘラ27の還元蒸気噴射口28から、還元蒸気を噴射して可塑性材料30を練り込む。
以上還元蒸気の生成方法と、練り釜底の還元蒸気噴射口22又は、練り込み装置のヘラ27の還元蒸気噴射口28から、還元蒸気を噴射する方法を組み合わせ、抗酸化還元煮練り方法を提供する。
【0013】
抗酸化還元煮練り方法に使用する装置としては、図3に示す通り、ボイラー1で蒸気を発生させ、その蒸気を断熱通導パイプ2で、断熱エジェクター3へ送り、
水素供給装置8から、断熱エジェクター3へ水素ガスを送り、断熱エジェクター3で蒸気と水素ガスを混合し、蒸気ガス均質化装置4で均質な水素ガスを含む蒸気を生成する装置で還元蒸気を生成する。
次に、これに断熱通導パイプ5で還元煮練り装置C及びDに接続し、還元煮練り装置Cでは、釜底から還元水蒸気の噴射口22又は、練り込み装置Dのヘラ27に噴射口28を設け、練り込み材料(可塑性材料)30への酸化を防止しながら練り込む。
還元煮練り装置Dではヘラ28の噴射口27からの還元蒸気の噴出は、ヘラ27が釜内の中間の位置になった時、すなわち練り込み初めから練り込みが終わる位置の間で、還元蒸気が吹き出す構造を採用している。
このように、還元煮練り装置Dではヘラ27の噴射口28から、還元蒸気が練り込み材料(可塑性材料)30へ向けて噴き出す抗酸化還元練り込み装置を提供する。
実施例1
【0014】
還元蒸気の性質の検討
1)試験の方法
小型蒸気発生装置を用い、蒸気をパイプに導き、パイプの途中にエジェクターを設置して、エジェクターの吸気部と水素供給装置を連結した。
蒸気を発生させて、この蒸気にエジェクターで水素ガスを混入させ、噴射口から還元蒸気を噴射した。
蒸気の性質を調べる方法は、酸化条件下では赤褐色を示し、還元条件下では灰色〜暗青色を示す、酸化鉄(鉄錆)を用い、還元蒸気を吹き付ける。
2)試験の結果
赤褐色の酸化鉄(鉄錆)へ還元蒸気を吹き付けると、瞬間的に酸化鉄は黒灰色〜青灰色に変化し、還元鉄を生成することが確認された。
すなわち、還元蒸気は強い還元力で蒸煮する物質の成分を瞬間的に還元条件へ変化させる機能を有することが判明した。
実施例2
【0015】
還元蒸煮による蒸米の性質の変化
1)試験の方法
最初、原料米を水で洗浄後3時間浸漬し、水を切って蒸し器に載せ、還元蒸気で蒸煮する。
蒸煮装置は、小型蒸気発生装置を用い、蒸気をパイプに導き、パイプの途中にエジェクターを設置して、エジェクターの吸気部と水素供給装置を連結する。
蒸煮は、ボイラーで蒸気を発生させて、この蒸気にエジェクターで水素ガスを混入させ、蒸気ガス均質化装置で蒸気ガスを馴染ませ、蒸し器の下から、噴射口で還元蒸気を原料米へ向け噴射する。対照区は通常蒸気を使用する。
調査は、蒸米の色調で判別し、加熱による褐変の程度で酸化が起こっているか、還元が起こっているかを判別する。
2)試験の結果
蒸米の色調は、対照の通常の蒸気加熱と、還元蒸気加熱を比較した結果、還元蒸気加熱を行った蒸し米の白度が白く、明らかに抗酸化成分の酸化防止が起こっていることが判明した。
【産業上利用の可能性】
【0016】
食品等の還元蒸気は、高温で強い還元力を有し、処理する食品の抗酸化機能性分の保護を、加熱加工中の物質の酸化から破壊を防止することができる。
食品、飲料、医薬品、化粧品等の加工の際に破壊される抗酸化機能成分を保護し、機能性の高い製品の供給を可能としている。
従って、従来は不可能であった高品質の食品、飲料、医薬品、化粧品の生産が行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】 還元蒸気とその製造装置
図2】 抗酸化還元蒸煮加熱装置と抗酸化還元蒸し器 A 抗酸化還元蒸煮加熱装置 B 抗酸化還元蒸し器
図3】 抗酸化還元練り込み加熱装置 C 釜底からの蒸気噴射型練り込み加熱装置 D ヘラからの蒸気噴射型練り込み加熱装置
【符号の説明】
1 ボイラー
2 断熱通導パイプ
3 断熱エジェクター
4 蒸気ガス均質化装置(断熱ガスミキサー)
5 断熱還元蒸気通導パイプ
6 還元蒸気噴射ノズル
7 還元蒸気
8 水素ボンベ
9 ガス開閉バルブ
10 ボンベガス圧計(ボンベ内のガス保有量表示)
11 ガス圧減圧バルブ
12 ガス圧減圧計
13 ガス流量計
14 ニードルバルブ
15 ガスクリーナー
16 ガス送気管
17 還元加熱釜又は還元蒸煮加熱装置
18 液状又は固形状材料
19 還元蒸し装置
20 蒸し器上部の排気蒸気
21 釜底から還元水蒸気を噴射作動する煮練り装置
22 還元煮練り装置の釜底に設置する還元蒸気噴射ノズル
23 釜底噴射型還元煮練り装置の回転ヘラ
24 釜底噴射型還元煮練り装置回転ヘラ作動モーター
25 還元蒸気噴射ヘラで作動する還元煮練り装置
26 還元蒸気ヘラ噴射型煮練り装置の蒸気噴射口へ蒸気を送る断熱通導パイプ
27 還元蒸気ヘラ噴射型煮練り装置の蒸気噴射回転ヘラ
28 還元蒸気ヘラ噴射型煮練り装置の蒸気噴射口
29 還元蒸気ヘラ噴射型煮練り装置の蒸気噴射回転ヘラ作動モーター
30 練り込み材料(可塑性材料)
図1
図2
図3