【実施例1】
【0014】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、膝補助装具100の全体構成を説明する。なお、膝補助装具100は、左足用と右足用の一対からなるものであるが、両者は対称であるため、便宜的に左足用のみを説明し、右足用については説明を省略する。
図1は、本発明に係る膝補助装具100において、使用者の左足に装着される膝補助装具を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す膝補助装具100の外側の要部を示す図であり、使用者が装着した状態における側面図(a)と左側面図(b)である。
図3は、本発明に係るケーシング3の内部構造を示す分解斜視図である。
図1、2、3に示すとおり、本発明に係る膝補助装具100の外側の部材は、大別すると、使用者の大腿部に沿わせて装着せしめ、使用者の大腿部と一体に運動する大腿部着装部材1と、使用者の下腿部に沿わせて装着せしめ、使用者の下腿部と一体に運動する下腿部着装部材2と、使用者の膝横付近に設けられ、下腿部着装部材2の上部と一体化したケーシング3とから構成される。
ケーシング3は、ケース本体30と、軸台座33に固定された枢軸ピン32とからなる。また、ケース本体30の一部には、後述する渦巻ばね5の固定端51を収容する渦巻ばね固定端収容部31を備える。
ケーシング3内には、ドーナツ状の円盤のベース4がケーシング3の枢軸ピン32に回動可能に軸装され、大腿部着装部材1の下部と一体化される。また、ベース本体40の外径側の一箇所に切り欠き41を形成する。
さらに、ケーシング3内には、ベース4の外周に渦巻ばね5が2本配設される。そして、渦巻ばね5は、ばね本体50と、その一端がケーシング3の渦巻ばね固定端の収容部31に固定された固定端51と、他端は渦巻きばねの巻きの内側において鈎部のついた自由端52とを備える。ベース4は大腿部着装部材1を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング3内で回動する。したがって、ベース4の切り欠き41において、ベース4の回動により、該回動によりトルクを受ける側、すなわちトルク受け部42に渦巻ばね5の自由端52の鈎部が掛合すると、回動角度に応じたトルクを渦巻ばね5から受け取ることになる。なお、切り欠き41の内径から外径に至るスペースがあそび幅となることは理解できるであろう。
なお、切り欠き41のスペースは、ドーナツ状の円盤の中心から10度から30度の間の任意の角度に設けられるように構成される。
【0016】
また、膝補助装具100は、使用者の足の膝上の大腿部に装着され、該大腿部の側面に添えられる上フレーム11と、その上端を該大腿部に保持する大腿部ベルト12とからなる大腿部着装部材1と、使用者の足の膝下の下腿部に装着され、該下腿部の側面に添えられる下フレーム21と、該下フレーム21を該下腿部に保持する下腿部ベルト22とからなる下腿部着装部材2と、大腿部着装部材1と下腿部着装部材2とを回動自在に軸着したケーシング3(外側)及び内側関節ピン(図示していない)とから構成されてもよい。さらに、使用者の膝部全体を覆い、膝を開口する開口部63を有する膝部サポータ62を、上フレーム11と下フレーム21とに面ファスナ等で装着できるようにしてもよい。またさらに、下フレーム21の下端に受け金具を介して足首ベルトを備えるようにすることもできる。このような構成により、本発明の膝補助装具100を使用者の足にぴったり装着することができる。
【0017】
再度、
図1を参照する。
図1は、前述したとおり、使用者の左足に装着される膝補助装具100の斜視図である。大腿部着装部材1は、使用者の大腿部の側面に添えられる上フレーム11と、その上端を該大腿部に保持する大腿部ベルト12とからなり、両者は上受け金具(図示していない)で固定される。一方、下腿部着装部材2は、使用者の下腿部の側面に添えられる下フレーム21と、所定の位置で該下腿部に保持する下腿部ベルト22とからなり、両者は下受け金具(図示していない)で固定される。
上フレーム11や下フレーム21は、軽量な金属、例えばアルミニウム合金やチタニウム合金で作られるとよい。また、繊維強化プラスチックなどを使用してもよいが、この場合、不飽和ポリエステル樹脂を常温・常圧でも硬化するものを使用するとよい。
【0018】
大腿部ベルト12、下腿部ベルト22、膝部ベルト62、足首ベルトは、メッシュ生地、伸縮性生地等で作り、面ファスナで着脱できるようにすると便利である。また、大腿部ベルト12と下腿部ベルト22については、開閉可能な割筒状の固定筒部材を使用することも可能である。上受け金具、下受け金具、受け金具はアルミ合金等を使用し、使用者の皮膚に直接接触する、あるいは衣類の上から長時間にわたって装着されることを考慮して、裏面にスポンジ等を装着するとよい。なお、スポンジは、通気性や抗菌性、アレルギー等にも配慮された素材を選択することが好ましい。
【0019】
図3を参照する。
図3は、本発明に係るケーシング3の内部構造を示す分解斜視図である。詳細に説明する。
ケーシング3内には、ケース本体30と、枢軸ピン32と、枢軸ピン32を固定した軸台座33と、ベース4と、2本の渦巻ばね5とからなる。また、ケース本体30の一部には、後述する渦巻ばね5の固定端51を収容する渦巻ばね固定端収容部31を備える。
枢軸ピン32は、下フレーム21の上端に備えられる軸台座33に固定される。ベース4は、枢軸ピン32を支承する支承孔を備えたドーナツ状の円盤となっている。ベース4はケーシング3の枢軸ピン32に回動可能に軸装され、大腿部着装部材1の下部と一体化される。また、ベース本体40の外径側の一箇所に切り欠き41を形成する。なお、枢軸ピン32は、回転軸に鍛造材、圧延材を用いてもよいが、MCナイロン等樹脂系素材を使用して、軸周にアルミ合金等を配置してもよい。また、ベース4や軸台座32はプラスチックや軽金属の剛性薄板を用いてもよいが、MCナイロンを選択することが好ましい。
ケーシング3内には、ベース4の外周に渦巻ばね5が2本配設され、それぞれの一端がケーシング3の渦巻ばね固定端の収容部31に固定された固定端51で、他端は渦巻きばねの巻きの内側において鈎部のついた自由端52となって、大腿部着装部材1を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング3内で回動する。
【0020】
図4を参照する。
図4は、
図1に示す膝補助装具100の外側の要部を示す側面図であり、(a)は無動作状態を示す図であり、(b)は膝曲げ角度90度の状態を示す図である。
図4に示すとおり、渦巻ばね5は、数回渦巻き状に曲回された状態でベース4の外周に載置され、固定端51はケーシング3の渦巻ばね固定端の収容部31に固定され、渦巻きばねの巻きの内側において鈎部のついた自由端52は、ベース4の切り欠き41の内側に挿入された状態でセットされる。
図4(a)は、膝補助装具100の無動作状態であるが、このとき自由端52はベース4の回動によるトルクを受けることはないため、切り欠き41の内径から外径に至るスペースにおいて、名のとおり自由端である。したがって、トルク受け部42に圧力をかけることはない。
そして、使用者の膝曲げが始まり、膝曲げ角度90度となった状態が
図4(b)である。ベース4は大腿部着装部材1を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング3内で回動する。すなわち、ベース4の切り欠き41において、ベース4の回動によりトルクを受ける側、すなわちトルク受け部42に渦巻ばね5の自由端52の鈎部が掛合して、回動角度に応じたトルクを渦巻ばね5から受け取り、
図4(b)の状態になる。
なお、切り欠き41のスペースは、ドーナツ状の円盤の中心から10度から30度の間の任意の角度に設けられるように構成される。このような角度を設けることにより、一定の遊びが生じ、初動の膝の突っ張りや逆方向への回動を防止することができる。
【0021】
ここで、「渦巻ばね」とは、弾性の高い線材や板材を渦巻き状に巻いた機械要素であり、巻かれた渦巻きが元に戻ろうとする機械装置の動力源に用いるばねをいう。渦巻ばねは、いずれも冷間成形用材料のピアノ線、ステンレス鋼線等を素材として選択することができるが、実施例1において、円形断面の直径(d)が4mmのピアノ線のSWP−Bを使用し、コイル平均径(D)を78mm、巻数(N)を2.75、回転軸直径を42mmとしているが、これらに限定されることなく、所望の条件の渦巻ばねを使用することができる。
【0022】
本願出願人は、本発明に係る膝補助装具100の試作品を製作し、組立品1組あたりのばねトルクを実測した。なお、試作品について、ユニットの片足分の質量はおおよそ1.1〜1.2kgを実現している。
実測場所:兵庫県神戸市兵庫区東出町2丁目2番26号 株式会社ミツワエンジニアリング本社工場内
実測日:ばね2個挿入ユニットについて、2019年12月4日
ばね1個挿入ユニットについて、2019年12月4日
表1に示すとおり、ばね2個の場合の実測トルクは、ばねねじれ角度が15度で1.1N−m、30度で3.6N−m、60度で9.0N−m、90度で16.6N−mとなった。ばね1個の場合の実測トルクは、ばねねじれ角度が15度で0.54N−m、30度で1.8N−m、60度で4.5N−m、90度で7.9N−mとなった。
なお、ばね1個挿入ユニットにおいて、ばねねじれ角度が120度のとき、ばねが軸方向に逃げたことが確認されている。
以上の結果から、渦巻ばねは1個挿入よりも2個挿入した方が好適であると考えられる。
【表1】
【0023】
図5を参照する。
図5は、本発明の膝補助装具100を装着した使用者の起立状態を模式的に示す図で、
図6のイ及びリの使用者の起立状態において、すなわち、膝曲げ角度が0度の上フレーム11と下フレーム21の無作動状態を示している。本発明の膝補助装具100の装着状況は、大腿部着装部材1の上フレーム11が、使用者の大腿部の側面に添えられ、大腿部ベルト12が大腿部を保持する。一方、下腿部着装部材2は、下フレーム21が、使用者の下腿部の側面に添えられ、下腿部ベルト22が所定の位置で該下腿部を保持する。
【0024】
図6を参照する。本発明の膝補助装具100を装着した使用者が起立状態から中腰状態、中腰状態から起立状態に戻る動作を模式的に示す図である。
図61によれば、イ〜リの使用者の姿勢が示されている。イ〜ホまでは、使用者が中腰になるまでを示し、ホ〜リまでは、中腰から起立状態に復帰する様子を示している。ロは膝曲げ角度が略30度であるので、表1の場合、ばねのトルクは0である。ハは60度、ニは90度、ホは120度であり、ホの姿勢になると、ばねの復元力(トルク)は大きいものであるが、使用者の体重により姿勢をそのまま保持することが可能な範囲と考えられる。本発明に係る膝補助装具100は、ばねの復元力(トルク)を利用して、この中腰状態を一定時間維持して、その後、使用者の踏ん張り力から跳ね上げ力を付与することにより、
図11に示すホ〜リに至る原姿勢に容易に復帰することを可能にする。
【0025】
図7を参照する。
図7は、本発明の膝補助装具100を装着した使用者の中腰状態を模式的に示す図で、
図6のホの中腰状態に対応する図である。すなわち、膝曲げ角度が120度の上フレーム11と下フレーム21の回動状態を示している。