特許第6795727号(P6795727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6795727
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】膝補助装具
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20201119BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A61H1/02 N
   A61H3/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-27767(P2020-27767)
(22)【出願日】2020年2月21日
【審査請求日】2020年4月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592030078
【氏名又は名称】株式会社ミツワエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】難波 健一
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5946203(JP,B1)
【文献】 特開2015−080621(JP,A)
【文献】 特開2011−092507(JP,A)
【文献】 特表平08−511975(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0142680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の膝の屈伸角度に応じて渦巻ばねの弾性力によりトルクを発生させ、該使用者の膝屈伸を補助することを特徴とする膝補助装具であって、
前記使用者の大腿部に沿わせて装着せしめ、前記使用者の大腿部と一体に運動する大腿部着装部材と、
前記使用者の下腿部に沿わせて装着せしめ、前記使用者の下腿部と一体に運動する下腿部着装部材と、
前記使用者の膝横付近に設けられ、前記下腿部着装部材の上部と一体化したケーシングと、
前記ケーシングの中心軸に回動可能に軸装され、前記大腿部着装部材の下部と一体化され、前記大腿部着装部材を介して前記使用者の膝の屈伸角度に応じて前記ケーシング内で回動するベースであって、該ベースはドーナツ状の円盤であって、前記ドーナツ状の円盤の中心から10度から30度の間の任意の角度に設けられて外径側と内径側との間に切り欠きを形成するベースと、
前記ケーシングの中に内装された渦巻ばねであって、その中心側の一端は鉤部を有する自由端で、その他端は、前記ケーシングが前記下腿部着装部材に固定する側に固定される固定端を備える渦巻ばねと、を備え、
前記大腿部着装部材が、前記使用者の大腿部の側面に添えられ上フレームと、前記大腿部に装着する大腿部ベルトを備えたものであり、
前記下腿部着装部材が、前記使用者の下腿部の側面に添えられる下フレームと、前記下腿部に装着する下腿部ベルトを備えたものであり、
前記下フレームは上端に前記中心軸である枢軸ピンと該枢軸ピンを保持する軸台座とを備え、
前記上フレームは下端に前記ベースを備え、前記ベースの前記ドーナツ状の円盤の穴部分が前記枢軸ピンを回動自在に支承する軸受部となり、
前記ケーシングは、前記枢軸ピンと前記軸台座と、前記枢軸ピンを前記穴に軸支した前記ベースとを内装し、前記軸受部を覆って前記枢軸ピンの上部を固定する筒状外装部を備え
前記ベースの前記切り欠きにおいて、前記ベースの回動により、該回動によりトルクを受ける側に前記渦巻ばねの前記鈎部が掛合すると、回動角度に応じたトルクを前記渦巻ばねから受け取ることになり、前記切り欠きの内径から外径に至るスペースがあそび幅となり、
前記上フレーム、前記下フレーム、前記ベース及び前記軸台座は、軽金属又は繊維強化プラスチックを素材とすることを特徴とする膝補助装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の脚に沿って装着して、膝の動作を補助する膝補助装具に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の農業就業人口は年々減少している。農林業センサス、農業構造動態調査(農林水産省統計部)によれば、平成26年(2014年)で226.6万人、基幹的農業従事者は167.9万人である。「基幹的農業従事者」とは、農業就業人口のうち、ふだんの主な状態が「仕事が主」の者をいう。農業人口のうち65歳以上は63.7%を占め、また、女性の割合が半数で、平均年齢は66.7歳と年々高くなってきている。このような状況の中で、農作業支援の必要性が高まっている。特に、高齢者や女性にとって、重・軽量物の持ち上げ・持ち下ろし、傾斜地や階段の登り下り、同じ姿勢、例えば中腰姿勢での長時間の収穫作業を行うことは大きな負担である。このような農業者の負担を軽減する農作業支援機器として、パワーアシストスーツと呼ばれる補助装置が開発されている。また、パワーアシストスーツは、農業用以外に工場用として、重量物の運搬作業や長時間継続する一定姿勢での作業などに使用される。さらに、パワーアシストスーツは、介護用として、ベッドから車椅子への人の移乗作業などに使用され、また、リハビリ用として、使用者の体に装着して、脚部の可動部に対してアシスト力を付与する歩行補助装置が開発されている。このような歩行補助装置では、高齢者や身障者の歩行を補助する装置として利用されることが期待されている。さらに、高齢者などに限らず、宅配業者など重い荷物を運ぶ作業者に対する補助装置としても利用することで、作業における身体的負担を軽減することが期待されている。
【0003】
パワーアシストスーツの応用として、ユーザの立ち上がり動作や着座動作を補助する装置の発明が提案されている。
特許文献1には、当該装置を使用者の体に装着するための固定具と、使用者の左右の大腿部に夫々装着される補助器具と、補助器具の一端に固定されているギアと、左右の補助器具にギアを介してモータの動力を伝達するチェーン3とを備える歩行補助装置が開示されている。
特許文献2には、使用者が脚に装着する膝補助装具のエアシリンダによって起立・着座時の脚の動作を補助する脚補助装置が開示されている。
特許文献3には、着座部材を使用者が跨ぐ形態で利用する歩行補助装置が開示されている。この歩行補助装置は、駆動源にて第2関節部分を回動駆動させ、脚リンクを伸び方向、すなわち、着座部材を押し上げる方向に駆動し、使用者の体重の一部を支持する支持力を発生する制御を行っている。
特許文献4には、使用者の両足平の荷重割合によって算出したアシスト力に応じて駆動源を駆動し、歩行をアシストする技術が開示されている。介護福祉支援、家庭での筋力弱体者の自立運動の支援、並びに工場ラインでの重量物運搬支援及び長時間の立ち仕事の支援等に用いられるアシスト装置である。
【0004】
また、バネを利用して、使用者の立ち上がり動作や着座動作を補助する補助具の発明が開示されている。
特許文献5には、大腿部着装部材と、下腿部着装部材と、両者の基端とを回動自在に軸着する枢軸ピンと、枢軸ピンに軸支されたトルク調節ギアと、内端を枢軸ピンに固定し、外端をトルク調節ギア板面に掛止した渦巻バネと、トルク調節摘を備えそれを回転してトルク調節ギアを回転駆動するトルク調節ギア駆動機構と、枢軸ピンの先端に設けた非円柱形状のストッパ凸部及び下腿部着装部材下面のストッパ凸部と嵌合可能な枢軸ピンストッパ凹部とを備える立ち上がり補助具が開示されている。
特許文献6には、リハビリ療法を受けている関節の全動作範囲において、相対的に一定のトルクを加えることができる動作範囲副子を開示している。副子は、それぞれ関節の第1及び第2の側の患者の身体部分に接続するよう構成された、第1及び第2の固定器部と、駆動アセンブリを包含する。第1及び第2の固定器部は、第1及び第2の腕をそれぞれ包含し、回転軸構造により副子の旋回軸回りに旋回自在に連結されている。駆動アセンブリは、従動プーリ、駆動プーリ、バイアス部材、及び連結部を包含する。従動プーリは、副子旋回軸回りに第2の腕に取り付けられる。駆動プーリは、駆動軸回りに、副子旋回軸より間隔を置いて第1の腕に取り付けられる。バイアス部材は、第1の腕と駆動プーリとに連結され駆動プーリにトルクを加える。連結部は、駆動プーリを従動プーリに連結し、第1の固定器部と及び第2の固定器部との間にトルクを加える。バイアス部材は渦巻きバネを包含する。バネは、駆動軸回りに配置され、第1の腕に取り付けられた第1の端及び駆動プーリに取り付けられた第2の端を有する。駆動プーリと従動プーリとはベルトにより連結される。
特許文献7には、腓腹用副子と足支持部とが、継手を介して踝(くるぶし)の高さで結合されており、継手の回転軸が足の側面に対してほぼ直角であり、継手がばねを有しており、該ばねのばね力がつま先の上向き運動の方向に作用する足を支持するための装具が開示されている。
特許文献8には、一の装着具と別の装着具にトーションバネおよびコイルバネを取り付けた歩行補助装具を腰と大腿部の屈折部に装着することにより、バネの特性(元に戻る力)を利用して足を上げようとする僅かな力で足を上げることが出来るようにした発明が開示されている。ただし、技術的な内容は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−166997号公報
【特許文献2】特開2004−261622号公報
【特許文献3】特許第4872821号公報
【特許文献4】国際公開2006/126711号公報
【特許文献5】特開2015−80621号公報
【特許文献6】特表8−511975号公報
【特許文献7】特表10−500602号公報
【特許文献8】特開2005−177420号公報
【特許文献9】特許第5946203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のアシスト装置の多くは、人が行うことが困難なので機械が担う作業又は輸送機器を利用して行うような重労働を、人が単独で楽に行う場合又は筋力が弱体化して自立運動できないような患者向けに設計されることが一般的であった。そのため、効果が高ければ費用や機構の構成方法については度外視されており、電動(空気圧)などのアクチュエータやセンサを多用しているため、連続運転時間が短かったり、維持費が高くなったりする傾向があり、現場での実用性は低いと考えられる。さらに、アクチュエータを使用者の運動に連動させるためのセンシングの誤作動などにより使用者を危険にさらす可能性がある。
【0007】
本願出願人は、以上の従来技術の問題点を解決するために、特許文献9に示すとおり、大腿部着装部材と、下腿部着装部材と、下腿部着装部材の上部と一体化したケーシングと、ケーシングの中心軸に回動可能に軸装され、大腿部着装部材の下部と一体化され使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング内で回動するベースと、ケーシングの中に内装されたねじりコイルばねと、ケーシングにおいてねじりコイルばねの鈎部を通過する回動軌跡を持つ位置に設けられ、ベースの回動により鈎部に掛合すると回動角度に応じたトルクをねじりコイルばねから受け取るトルク受け部を備え、使用者の膝の屈伸角度に応じてねじりコイルばねの弾性力によりトルクを発生させ、使用者の膝屈伸を補助する膝補助装具を提案している。当該膝補助装具は簡単な構造であり、利便性において問題はなかったものの、さらなる軽量化が課題となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、以上の従来技術の問題点を解決するために創作されたものであり、より簡単な構造を備え、軽量かつ実用的に使用できる膝補助装具を提供することを目的とする。なお、本明細書では、使用者の脚に沿って装着して、膝の動作を補助する装置を「膝補助装具」と称する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る膝補助装具は、使用者の膝の屈伸角度に応じて渦巻ばねの弾性力によりトルクを発生させ、該使用者の膝屈伸を補助することを特徴とする膝補助装具であって、使用者の大腿部に沿わせて装着せしめ、使用者の大腿部と一体に運動する大腿部着装部材と、使用者の下腿部に沿わせて装着せしめ、使用者の下腿部と一体に運動する下腿部着装部材と、使用者の膝横付近に設けられ、下腿部着装部材の上部と一体化したケーシングと、ケーシングの中心軸に回動可能に軸装され、大腿部着装部材の下部と一体化され、大腿部着装部材を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング内で回動するベースであって、該ベースはドーナツ状の円盤であって、その外径側の一箇所に切り欠きを形成するベースと、ケーシングの中に内装された渦巻ばねであって、その中心側の一端は鉤部を有する自由端で、その他端は、ケーシングが下腿部着装部材に固定する側に固定される固定端を備える渦巻ばねと、ベースの切り欠きにおいて、ベースの回動により、該回動によりトルクを受ける側に渦巻ばねの鈎部が掛合すると、回動角度に応じたトルクを渦巻ばねから受け取ることになり、切り欠きの内径から外径に至るスペースがあそび幅となることを特徴とする。
なお、切り欠きのスペースは、ドーナツ状の円盤の中心から10度から30度の間の任意の角度に設けられるように構成されると好適である。
【0010】
さらに、本発明に係る膝補助装具は、大腿部着装部材が、使用者の大腿部の側面に添えられる上フレームと、大腿部に装着する大腿部ベルトを備えたものであり、下腿部着装部材が、使用者の下腿部の側面に添えられる下フレームと、下腿部に装着する下腿部ベルトを備えたものであり、ケーシングが、中心軸である枢軸ピンと、枢軸ピンを回動自在に支承する軸受部と、軸受部を覆って枢軸ピンの上部を固定する筒状外装部とを備えたものであることを特徴とする。下腿部着装部材は、下フレームの下端に足首ベルトを備えると、膝補助装具が使用者の脚全体をしっかり保持することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る膝補助装具は、複雑な構造の部品を使用しない上、ストッパ等もなく構造が簡単なため、小型化・軽量化に適し、製造やメンテナンスが容易という利便性がある。また、膝補助装具の装着が容易であるため、特に高齢の農業従事者にとって、使い勝手がよいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る膝補助装具100において、使用者の左足に装着される膝補助装具を示す斜視図である。
図2図1に示す膝補助装具100の外側の要部を示す図であり、使用者が装着した状態における側面図(a)と左側面図(b)である。
図3】本発明に係るケーシング3の内部構造を示す分解斜視図である。
図4図1に示す膝補助装具100の外側の要部を示す側面図である。
図5】本発明の膝補助装具100を装着した使用者の起立状態を模式的に示す図である。
図6】本発明の膝補助装具100を装着した使用者が起立状態から中腰状態、中腰状態から起立状態に戻る動作を模式的に示す図である。
図7】本発明の膝補助装具100を装着した使用者の中腰状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施例に限られるものではない。
【実施例1】
【0014】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、膝補助装具100の全体構成を説明する。なお、膝補助装具100は、左足用と右足用の一対からなるものであるが、両者は対称であるため、便宜的に左足用のみを説明し、右足用については説明を省略する。図1は、本発明に係る膝補助装具100において、使用者の左足に装着される膝補助装具を示す斜視図である。図2は、図1に示す膝補助装具100の外側の要部を示す図であり、使用者が装着した状態における側面図(a)と左側面図(b)である。
図3は、本発明に係るケーシング3の内部構造を示す分解斜視図である。
図1、2、3に示すとおり、本発明に係る膝補助装具100の外側の部材は、大別すると、使用者の大腿部に沿わせて装着せしめ、使用者の大腿部と一体に運動する大腿部着装部材1と、使用者の下腿部に沿わせて装着せしめ、使用者の下腿部と一体に運動する下腿部着装部材2と、使用者の膝横付近に設けられ、下腿部着装部材2の上部と一体化したケーシング3とから構成される。
ケーシング3は、ケース本体30と、軸台座33に固定された枢軸ピン32とからなる。また、ケース本体30の一部には、後述する渦巻ばね5の固定端51を収容する渦巻ばね固定端収容部31を備える。
ケーシング3内には、ドーナツ状の円盤のベース4がケーシング3の枢軸ピン32に回動可能に軸装され、大腿部着装部材1の下部と一体化される。また、ベース本体40の外径側の一箇所に切り欠き41を形成する。
さらに、ケーシング3内には、ベース4の外周に渦巻ばね5が2本配設される。そして、渦巻ばね5は、ばね本体50と、その一端がケーシング3の渦巻ばね固定端の収容部31に固定された固定端51と、他端は渦巻きばねの巻きの内側において鈎部のついた自由端52とを備える。ベース4は大腿部着装部材1を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング3内で回動する。したがって、ベース4の切り欠き41において、ベース4の回動により、該回動によりトルクを受ける側、すなわちトルク受け部42に渦巻ばね5の自由端52の鈎部が掛合すると、回動角度に応じたトルクを渦巻ばね5から受け取ることになる。なお、切り欠き41の内径から外径に至るスペースがあそび幅となることは理解できるであろう。
なお、切り欠き41のスペースは、ドーナツ状の円盤の中心から10度から30度の間の任意の角度に設けられるように構成される。
【0016】
また、膝補助装具100は、使用者の足の膝上の大腿部に装着され、該大腿部の側面に添えられる上フレーム11と、その上端を該大腿部に保持する大腿部ベルト12とからなる大腿部着装部材1と、使用者の足の膝下の下腿部に装着され、該下腿部の側面に添えられる下フレーム21と、該下フレーム21を該下腿部に保持する下腿部ベルト22とからなる下腿部着装部材2と、大腿部着装部材1と下腿部着装部材2とを回動自在に軸着したケーシング3(外側)及び内側関節ピン(図示していない)とから構成されてもよい。さらに、使用者の膝部全体を覆い、膝を開口する開口部63を有する膝部サポータ62を、上フレーム11と下フレーム21とに面ファスナ等で装着できるようにしてもよい。またさらに、下フレーム21の下端に受け金具を介して足首ベルトを備えるようにすることもできる。このような構成により、本発明の膝補助装具100を使用者の足にぴったり装着することができる。
【0017】
再度、図1を参照する。図1は、前述したとおり、使用者の左足に装着される膝補助装具100の斜視図である。大腿部着装部材1は、使用者の大腿部の側面に添えられる上フレーム11と、その上端を該大腿部に保持する大腿部ベルト12とからなり、両者は上受け金具(図示していない)で固定される。一方、下腿部着装部材2は、使用者の下腿部の側面に添えられる下フレーム21と、所定の位置で該下腿部に保持する下腿部ベルト22とからなり、両者は下受け金具(図示していない)で固定される。
上フレーム11や下フレーム21は、軽量な金属、例えばアルミニウム合金やチタニウム合金で作られるとよい。また、繊維強化プラスチックなどを使用してもよいが、この場合、不飽和ポリエステル樹脂を常温・常圧でも硬化するものを使用するとよい。
【0018】
大腿部ベルト12、下腿部ベルト22、膝部ベルト62、足首ベルトは、メッシュ生地、伸縮性生地等で作り、面ファスナで着脱できるようにすると便利である。また、大腿部ベルト12と下腿部ベルト22については、開閉可能な割筒状の固定筒部材を使用することも可能である。上受け金具、下受け金具、受け金具はアルミ合金等を使用し、使用者の皮膚に直接接触する、あるいは衣類の上から長時間にわたって装着されることを考慮して、裏面にスポンジ等を装着するとよい。なお、スポンジは、通気性や抗菌性、アレルギー等にも配慮された素材を選択することが好ましい。
【0019】
図3を参照する。図3は、本発明に係るケーシング3の内部構造を示す分解斜視図である。詳細に説明する。
ケーシング3内には、ケース本体30と、枢軸ピン32と、枢軸ピン32を固定した軸台座33と、ベース4と、2本の渦巻ばね5とからなる。また、ケース本体30の一部には、後述する渦巻ばね5の固定端51を収容する渦巻ばね固定端収容部31を備える。
枢軸ピン32は、下フレーム21の上端に備えられる軸台座33に固定される。ベース4は、枢軸ピン32を支承する支承孔を備えたドーナツ状の円盤となっている。ベース4はケーシング3の枢軸ピン32に回動可能に軸装され、大腿部着装部材1の下部と一体化される。また、ベース本体40の外径側の一箇所に切り欠き41を形成する。なお、枢軸ピン32は、回転軸に鍛造材、圧延材を用いてもよいが、MCナイロン等樹脂系素材を使用して、軸周にアルミ合金等を配置してもよい。また、ベース4や軸台座32はプラスチックや軽金属の剛性薄板を用いてもよいが、MCナイロンを選択することが好ましい。
ケーシング3内には、ベース4の外周に渦巻ばね5が2本配設され、それぞれの一端がケーシング3の渦巻ばね固定端の収容部31に固定された固定端51で、他端は渦巻きばねの巻きの内側において鈎部のついた自由端52となって、大腿部着装部材1を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング3内で回動する。
【0020】
図4を参照する。図4は、図1に示す膝補助装具100の外側の要部を示す側面図であり、(a)は無動作状態を示す図であり、(b)は膝曲げ角度90度の状態を示す図である。
図4に示すとおり、渦巻ばね5は、数回渦巻き状に曲回された状態でベース4の外周に載置され、固定端51はケーシング3の渦巻ばね固定端の収容部31に固定され、渦巻きばねの巻きの内側において鈎部のついた自由端52は、ベース4の切り欠き41の内側に挿入された状態でセットされる。
図4(a)は、膝補助装具100の無動作状態であるが、このとき自由端52はベース4の回動によるトルクを受けることはないため、切り欠き41の内径から外径に至るスペースにおいて、名のとおり自由端である。したがって、トルク受け部42に圧力をかけることはない。
そして、使用者の膝曲げが始まり、膝曲げ角度90度となった状態が図4(b)である。ベース4は大腿部着装部材1を介して使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング3内で回動する。すなわち、ベース4の切り欠き41において、ベース4の回動によりトルクを受ける側、すなわちトルク受け部42に渦巻ばね5の自由端52の鈎部が掛合して、回動角度に応じたトルクを渦巻ばね5から受け取り、図4(b)の状態になる。
なお、切り欠き41のスペースは、ドーナツ状の円盤の中心から10度から30度の間の任意の角度に設けられるように構成される。このような角度を設けることにより、一定の遊びが生じ、初動の膝の突っ張りや逆方向への回動を防止することができる。
【0021】
ここで、「渦巻ばね」とは、弾性の高い線材や板材を渦巻き状に巻いた機械要素であり、巻かれた渦巻きが元に戻ろうとする機械装置の動力源に用いるばねをいう。渦巻ばねは、いずれも冷間成形用材料のピアノ線、ステンレス鋼線等を素材として選択することができるが、実施例1において、円形断面の直径(d)が4mmのピアノ線のSWP−Bを使用し、コイル平均径(D)を78mm、巻数(N)を2.75、回転軸直径を42mmとしているが、これらに限定されることなく、所望の条件の渦巻ばねを使用することができる。
【0022】
本願出願人は、本発明に係る膝補助装具100の試作品を製作し、組立品1組あたりのばねトルクを実測した。なお、試作品について、ユニットの片足分の質量はおおよそ1.1〜1.2kgを実現している。
実測場所:兵庫県神戸市兵庫区東出町2丁目2番26号 株式会社ミツワエンジニアリング本社工場内
実測日:ばね2個挿入ユニットについて、2019年12月4日
ばね1個挿入ユニットについて、2019年12月4日

表1に示すとおり、ばね2個の場合の実測トルクは、ばねねじれ角度が15度で1.1N−m、30度で3.6N−m、60度で9.0N−m、90度で16.6N−mとなった。ばね1個の場合の実測トルクは、ばねねじれ角度が15度で0.54N−m、30度で1.8N−m、60度で4.5N−m、90度で7.9N−mとなった。
なお、ばね1個挿入ユニットにおいて、ばねねじれ角度が120度のとき、ばねが軸方向に逃げたことが確認されている。
以上の結果から、渦巻ばねは1個挿入よりも2個挿入した方が好適であると考えられる。
【表1】
【0023】
図5を参照する。図5は、本発明の膝補助装具100を装着した使用者の起立状態を模式的に示す図で、図6のイ及びリの使用者の起立状態において、すなわち、膝曲げ角度が0度の上フレーム11と下フレーム21の無作動状態を示している。本発明の膝補助装具100の装着状況は、大腿部着装部材1の上フレーム11が、使用者の大腿部の側面に添えられ、大腿部ベルト12が大腿部を保持する。一方、下腿部着装部材2は、下フレーム21が、使用者の下腿部の側面に添えられ、下腿部ベルト22が所定の位置で該下腿部を保持する。
【0024】
図6を参照する。本発明の膝補助装具100を装着した使用者が起立状態から中腰状態、中腰状態から起立状態に戻る動作を模式的に示す図である。図61によれば、イ〜リの使用者の姿勢が示されている。イ〜ホまでは、使用者が中腰になるまでを示し、ホ〜リまでは、中腰から起立状態に復帰する様子を示している。ロは膝曲げ角度が略30度であるので、表1の場合、ばねのトルクは0である。ハは60度、ニは90度、ホは120度であり、ホの姿勢になると、ばねの復元力(トルク)は大きいものであるが、使用者の体重により姿勢をそのまま保持することが可能な範囲と考えられる。本発明に係る膝補助装具100は、ばねの復元力(トルク)を利用して、この中腰状態を一定時間維持して、その後、使用者の踏ん張り力から跳ね上げ力を付与することにより、図11に示すホ〜リに至る原姿勢に容易に復帰することを可能にする。
【0025】
図7を参照する。図7は、本発明の膝補助装具100を装着した使用者の中腰状態を模式的に示す図で、図6のホの中腰状態に対応する図である。すなわち、膝曲げ角度が120度の上フレーム11と下フレーム21の回動状態を示している。
【実施例2】
【0026】
本願出願人は、本発明に係る膝補助装具100の試作品(表1に示した「ばね2個挿入ユニット」)について、4名(男性3名、女性1名)に試着していただき、装着性、歩行性、作業性について試験を行った。表2にその詳細を記載している。
実測場所:兵庫県神戸市兵庫区東出町2丁目2番26号 株式会社ミツワエンジニアリング本社工場内
試験日:2020年1月17日

表2に示すとおり、装着性(装着のし易さ、重さ)については全員が◎であった。器具装着による歩行性については、男性全員が◎、女性が〇で、階段の上がり下りについては、男性全員が〇、女性が△であった。器具装着によるサポート感については、スクワット10回する場合、試着者半数が◎、残りの半数が〇であるが、荷物をもってスクワット10回をする場合の器具装着によるサポート感は、全員が◎であった。意見や感想としても、しゃがんだ姿勢から立ち上がるときに、器具装着の効果を大きく感じるとする意見が多数であった。
【表2】
【0027】
以上、本発明に係る膝補助装具における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る膝補助装具は、構造が簡易であり軽量で使用者に負担が少ないので、農林水産業の現場、建設現場、病院や介護施設など広く利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100 膝補助装具
1 大腿部着装部材
11 上フレーム
12 大腿部ベルト
2 下腿部着装部材
21 下フレーム
22 下腿部ベルト
3 ケーシング
30 ケース本体
31 渦巻ばね固定端の収容部
32 枢軸ピン
33 軸台座
4 ベース
40 ベース本体
41 切り欠き
42 トルク受け部
5 渦巻ばね
50 ばね本体
51 固定端
52 自由端
【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、より簡単な構造を備え、軽量かつ実用的に使用できる膝補助装具を提供する。
【解決手段】膝補助装具100は、大腿部着装部材1と、下腿部着装部材2と、ケーシング3と、ケーシングの中心軸に回動可能に軸装され、大腿部着装部材の下部と一体化され、使用者の膝の屈伸角度に応じてケーシング内で回動するベース4であって、該ベースはドーナツ状の円盤で、その外径側の一箇所に切り欠きを形成し、ケーシングの中に内装された渦巻ばね5であって、その中心側の一端は鉤部を有する自由端で、その他端は、ケーシングが下腿部着装部材に固定する側に固定される固定端を備える渦巻ばねと、ベースの切り欠きにおいて、ベースの回動により、該回動によりトルクを受ける側に渦巻ばねの鈎部が掛合すると、回動角度に応じたトルクを渦巻ばねから受け取ることになり、切り欠きの内径から外径に至るスペースがあそび幅となる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7