(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。まず、フレキシブルプリント配線板の構成を説明する。
図1は、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図1に示すように、フレキシブルプリント配線板1は、積層配線板100、シールドフィルム部201、シールドフィルム部202、カバー層301、カバー層302を備えている。フレキシブルプリント配線板1は、フィルム状の部材、厚さが薄い部材、可撓性の部材等を含むため、フレキシブル性を有する。フレキシブルプリント配線板1は、平らにした状態で一方向に延びている。
【0015】
ここで、フレキシブルプリント配線板1の説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。フレキシブルプリント配線板1を平らにした状態で、フレキシブルプリント配線板1が延びる方向をX軸方向とする。フレキシブルプリント配線板1の上面に直交する方向をZ軸方向とする。よって、フレキシブルプリント配線板1の厚さ方向はZ軸方向である。Y軸方向には、フレキシブルプリント配線板1の両端面が向いている。
【0016】
積層配線板100は、一方向、すなわち、X軸方向に延びている。積層配線板100は、例えば、フレキシブル性を有する配線板である。積層配線板100は、導電層11、導電層12、絶縁層21、絶縁層22、絶縁層23、信号回路30及びグランド回路40を含んでいる。積層配線板100は、下方から、導電層11、絶縁層21、絶縁層22、絶縁層23及び導電層12の順で積層されている。絶縁層21と絶縁層22との間に、信号回路30及びグランド回路40が設けられている。なお、積層配線板100において、各層の間に他の導電層または絶縁層が挿入されてもよい。積層配線板100の上面102に平行な面内における一方向に直交する他方向、すなわち、Y軸方向において、両端面は対向している。
【0017】
導電層11は、例えば、積層配線板100の下面101に渡って形成されている。絶縁層21は、導電層11上に設けられている。信号回路30は、絶縁層21上に設けられている。信号回路30は、絶縁層21上において、X軸方向に延びた部分を有している。信号回路30は、複数本設けられてもよい。信号回路30は、例えば、信号回路31及び信号回路32を有してもよい。例えば、信号回路31は、信号回路32の−Y軸方向側に配置されている。
【0018】
グランド回路40は、絶縁層21上に設けられている。グランド回路40は、絶縁層21上において、X軸方向に延びた部分を有している。グランド回路40は、信号回路30と距離を空けて設けられている。グランド回路40は、信号回路30に沿ってX軸方向に延びた部分を有している。グランド回路40は、複数本設けられてもよい。グランド回路40は、例えば、グランド回路41及びグランド回路42を有してもよい。例えば、グランド回路41は、信号回路31の−Y軸方向側に配置されている。グランド回路42は、信号回路32の+Y軸方向側に配置されている。グランド回路41及びグランド回路42は、信号回路31及び32を+Y軸方向側及び−Y軸方向側の両側から挟むように設けられている。よって、信号回路30は、グランド回路41とグランド回路42との間に配置されている。
【0019】
絶縁層22は、絶縁層21、信号回路30及びグランド回路40上に設けられている。絶縁層22は、信号回路30及びグランド回路40を上方から覆うように、絶縁層21上に設けられている。絶縁層23は、絶縁層22上に設けられている。導電層12は、絶縁層23上に設けられている。
【0020】
積層配線板100は、例えば、両面フレキシブル銅張積層板(以下、両面FCCLという。)及び片面フレキシブル銅張積層板(以下、片面FCCLという。)を用いて形成されてもよい。両面FCCLは、フィルム状の絶縁性基材層の両面に銅箔が形成されたものでる。片面FCCLは、フィルム状の絶縁性基材層の片面に銅箔が形成されたものでる。
【0021】
両面FCCLの一方の面の銅箔は、導電層11として用いられ、絶縁性基材層は、絶縁層21として用いられる。他方の面の銅箔は、パターニングされて、信号回路30及びグランド回路40として用いられる。また、片面FCCLの一方の面の銅箔は、導電層12として用いられ、絶縁性基材層は、絶縁層23として用いられる。両面FCCL及び片面FCCLを用いる場合には、以下のようにして、積層配線板100を形成する。すなわち、両面FCCLにおける他方の面をパターニングすることにより、信号回路30及びグランド回路40を形成する。次に、両面FCCLのパターニングされた面に、片面FCCLの絶縁性基材層側を接着する。これにより、積層配線板100が形成される。接着の際に用いられる絶縁性接着剤は、絶縁層22となる。
【0022】
両面及び片面FCCLの絶縁性基材層は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーが好ましく、液晶ポリマーおよびポリイミドがより好ましい。これらの中でも高周波の信号を伝送するフレキシブルプリント配線板の用途を考慮すると、比誘電率および誘電正接が低い液晶ポリマーがさらに好ましい。これらのような絶縁性基材を備えることで、フレキシブルプリント配線板1は、高い耐熱性が得られる。
【0023】
信号回路30は、フレキシブルプリント配線板1を介して接続された電子部材に電気信号を送る。グランド回路40は、アースを取るための接地電位に設定される。導電層11、導電層12、信号回路30及びグランド回路40に用いられる材料は、導電性であれば、銅箔に限らない。また、積層配線板100は、両面FCCL及び片面FCCLを用いて形成されたものに限らない。例えば、導電層11、絶縁層21、信号回路30及びグランド回路40、絶縁層22、絶縁層23、並びに、導電層12を順に積層することにより形成してもよい。
【0024】
導電層11、導電層12、信号回路30及びグランド回路40の厚さは、例えば、18[μm]である。絶縁層21及び絶縁層23の厚さは、例えば、50[μm]である。絶縁層22の厚さは、例えば、35[μm]である。なお、積層配線板100に含まれた各層の厚さは、積層配線板100がフレキシブルであれば、上述の厚さに限らず、1〜200[μm]程度でもよい。
【0025】
絶縁性のカバー層301は、積層配線板100の下方に設けられている。絶縁性のカバー層302は、積層配線板100の上方に設けられている。カバー層301及び302は、積層配線板100を覆い、外部環境から保護する絶縁材料である。導電層11及び12は、積層配線板100の下面101及び上面102に渡って露出されているので、カバー層301及び302は、導電層11及び12を覆う。カバー層301及び302は、例えば、カバーレイ61及び絶縁性接着剤層62を含んでいる。カバーレイ61は、例えば、材料として、ポリイミド等の樹脂を含んでいる。絶縁性接着剤層62は、例えば、絶縁性の接着剤である。なお、カバー層301及び302は、カバーレイ61及び絶縁性接着剤層62を含む構成に限らず、熱硬化型もしくは紫外線硬化型のソルダーレジスト、感光性カバーレイフィルム、微細加工に適した感光性カバーレイフィルム等でもよく、熱硬化性接着剤等でもよい。カバー層301及び302の厚さは、例えば、10〜100[μm]であり、好ましくは、例えば、60[μm]である。カバーレイ61の厚さは、例えば、25[μm]であり、絶縁性接着剤層62の厚さは、例えば、35[μm]である。
【0026】
カバー層301及び302は、絶縁性接着剤層62側を積層配線板100に接着させている。カバー層301及び302には、貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、カバーレイ61及び絶縁性接着剤層62を貫通している。貫通孔63の内部には、アースビア64が形成されている。よって、アースビア64は、カバー層301及び302を貫通する。
【0027】
シールドフィルム部201及び202は、絶縁性の絶縁被覆層52及び導電性のシールド層51を含んでいる。シールドフィルム部201及び202は、絶縁被覆層52の片面に、シールド層51が形成されたものである。シールドフィルム部201及び202をまとめて、シールドフィルム200ともいう。よって、シールドフィルム200は、積層配線板100の下面101を覆うシールドフィルム部201と、上面102を覆うシールドフィルム部202と、を含んでいる。シールドフィルム200は、積層配線板100をシールドする。
【0028】
シールド層51は、例えば、シールドフィルム200の導電性接着剤が硬化したものである。したがって、シールドフィルム200は、フレキシブルプリント配線板1においては、シールド層51と絶縁被覆層52とを含み、フレキシブルプリント配線板1の部材となる前の単体では、導電性接着剤層と絶縁被覆層52とを含んでいる。なお、シールドフィルム200のシールド層51は、導電性を有していれば、導電性接着剤が硬化したものに限らない。
【0029】
また、
図12に示すように、シールドフィルム200は、絶縁被覆層52と、シールド層51との間に形成された金属層53を含んでもよい。すなわち、シールドフィルム200は、フレキシブルプリント配線板1においては、導電性接着剤が硬化したシールド層51と、絶縁被覆層52と、両者の間の金属層53と、から構成され、フレキシブルプリント配線板1の部材となる前の単体では、導電性接着剤層、金属層53及び絶縁被覆層52が積層されたものでもよい。金属層53は、例えば、銅箔である。
【0030】
ここで、シールドフィルム200における導電性接着剤層及び絶縁被覆層52を説明する。
【0031】
<<導電性接着剤層>>
導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層または異方導電性接着剤層から適宜選択できる。等方導電性接着剤層は、シールドフィルム200を水平に置いた状態で、上下方向および水平方向に導電性を有する。また、異方導電性接着剤層は、シールドフィルム200を水平に置いた状態で、上下方向のみに導電性を有する。導電性接着剤層は、等方導電性あるいは異方導電性のいずれでもよく、等方導電性の場合、アースビア64での接続信頼性が向上するため好ましい。また、フレキシブルプリント配線板1の端面103及び104からのノイズ漏洩の低減にも効果的である。導電性接着剤層は、導電性接着剤を使用して形成できる。導電性接着剤は、熱硬化性樹脂、硬化剤、および導電性微粒子を含む従来公知のものを任意に用いることが可能である。以下で、熱硬化性樹脂、硬化剤、及び、導電性微粒子を説明する。
【0032】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を複数有する樹脂である。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール系樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。
【0033】
熱硬化性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。これらの中でも屈曲性の点から、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gが好ましく、3〜30mgKOH/gがより好ましい。熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、20000〜100000が好ましい。熱硬化性樹脂は、導電性接着剤層の固形分中の含有量が、5〜99重量%配合することが好ましく、7〜80重量%がより好ましく、10〜60重量%がさらに好ましい。
【0034】
<硬化剤>
硬化剤は、熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を複数有している。硬化剤は、例えば、エポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物、有機金属化合物等の公知の化合物が挙げられる。硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。硬化剤は、熱硬化性樹脂100重量部に対して各種1〜50重量部含むことが好ましく、3〜30重量部がより好ましく、3〜20重量部がさらに好ましい。
【0035】
<導電性微粒子>
導電性微粒子は、導電性接着剤層に導電性を付与する機能を有する。導電性微粒子は、素材としては、例えば金、白金、銀、銅およびニッケル等の導電性金属およびその合金、ならびに導電性ポリマーの微粒子が好ましく、価格と導電性の面からは、銀または銅がより好ましい。
【0036】
また単一素材の微粒子ではなく金属や樹脂を核体とし、核体の表面を被覆した被覆層を有する複合微粒子もコストダウンの観点から好ましい。ここで核体は、価格が安いニッケル、シリカ、銅およびその合金、ならびに樹脂から適宜選択することが好ましい。被覆層は、導電性金属または導電性ポリマーが好ましい。導電性金属は、例えば、金、白金、銀、ニッケル、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。また導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの中でも価格と導電性の面から銀または銅が好ましい。
【0037】
導電性微粒子の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状が好ましい。また、これらの異なる形状の導電性微粒子を2種類混合しても良い。
導電性微粒子は、単独または2種類以上併用できる。
【0038】
導電性微粒子の平均粒子径は、D50平均粒子径であり、導電性を充分に確保する観点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上とすることが更に好ましい。一方、導電性接着剤層の薄さと両立させる観点からは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下とすることが更に好ましい。D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置等により求めることができる。
【0039】
導電性微粒子は、導電性接着剤層の固形分中の含有量が、1〜95重量%配合することが好ましく、20〜93重量%がより好ましく、40〜90重量%がさらに好ましい。100重量部に対して、10〜700重量部を配合することが好ましく、20〜500重量部がより好ましい。含有量が20〜500重量部であることにより、電磁波シールド性がより良好なシールドフィルム200とすることができる。
【0040】
導電性接着剤は、他に任意成分としてシランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0041】
導電性接着剤は、これまで説明した材料を混合し攪拌して得ることができる。攪拌は、例えばディスパーマット、ホモジナイザー等に公知の攪拌装置を使用できる。
【0042】
導電性接着剤層の作製は、公知の方法を使用できる。例えば、導電性接着剤を剥離性シート上に塗工して乾燥することで導電層を形成する方法、または、Tダイのような押出成形機を使用して導電性接着剤をシート状に押し出すことで形成することもできる。
【0043】
塗工方法は、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等の公知の塗工方法を使用できる。塗工に際して、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程は、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。
【0044】
導電性接着剤層の厚みは、2〜100μmが好ましく、4〜50μmがより好ましく、6〜30μmがさらに好ましい。厚みが2〜100μmの範囲にあることで電磁波シールド性と屈曲性とのバランスを取り易くなる。
【0045】
<<絶縁被覆層>>
絶縁被覆層は、従来公知の絶縁性樹脂組成物を使用して形成できる。絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤で説明した熱硬化性樹脂および硬化剤を必要に応じて任意成分を含むことができる。なお、絶縁層および導電性接着剤層に使用する熱硬化性樹脂、硬化剤は、同一、または異なっていてもよい。絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤と同様の方法で得ることが出来る。また、絶縁層は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の絶縁性樹脂を成形したフィルムを使用することもできる。絶縁層の厚みは、通常2〜20μm程度である。
【0046】
シールドフィルム部201は、積層配線板100の下面101をシールド層51側で覆う。したがって、シールド層51側の面が積層配線板100側の下面101に向いている。シールドフィルム部201は、積層配線板100を覆い、カバー層301に接触している。よって、カバー層301は、積層配線板100の下面101と、下面101を覆うシールドフィルム部201との間に設けられている。シールドフィルム部201は、積層配線板100の下面101をシールド層51側で覆うとともに、積層配線板100の、Y軸方向の両端面の少なくとも一部を、シールド層51側で覆う。例えば、シールドフィルム部201は、積層配線板100の導電層11、絶縁層21及び絶縁層22の両端面を覆う。したがって、シールドフィルム部201は、導電層11の両端面と接触する。また、シールドフィルム部201は、カバー層301の両端面を覆う。
【0047】
シールドフィルム部202は、積層配線板100の上面102をシールド層51側で覆う。したがって、シールド層51側の面が積層配線板100側の上面102に向いている。シールドフィルム部202は、積層配線板100を覆い、カバー層302に接触している。よって、カバー層302は、積層配線板100の上面102と、上面102を覆うシールドフィルム部202との間に設けられている。シールドフィルム部202は、積層配線板100の上面102をシールド層51側で覆うとともに、積層配線板100の、Y軸方向の両端面の少なくとも一部を、シールド層51側で覆う。例えば、シールドフィルム部202は、積層配線板100の導電層12、絶縁層23及び絶縁層22の両端面を覆う。したがって、シールドフィルム部202は、導電層12の両端面と接触する。また、シールドフィルム部202は、カバー層302の両端面を覆う。
【0048】
積層配線板100の両端面、すなわち、端面103及び104は、導電層11から導電層12に渡って、シールド層51に覆われている。積層配線板100の両端面は、全面に渡って、シールドフィルム部201及びシールドフィルム部202のシールド層51に覆われている。
【0049】
なお、シールドフィルム部201及び202が、積層配線板100のY軸方向における両端面を覆う境界は、絶縁層22の両端面に限らない。例えば、シールドフィルム部201は、カバー層301及び導電層11の両端面を覆い、シールドフィルム部202は、カバー層302、導電層12、絶縁層23、絶縁層22、及び、絶縁層21の両端面を覆うというように、シールドフィルム部201及び202の両端面における境界は、両端面のどこでもよい。
【0050】
シールドフィルム部201及び202のシールド層51は、信号回路30に沿ってX軸方向に延びるように両端面を覆ってもよい。また、シールド層51は、信号回路30に沿って両端面の全面を覆ってもよい。シールドフィルム部201及び202のシールド層51は、積層配線板100の両端面から外側のY軸方向に延びる部分を有してもよい。シールド層51は、−Y軸方向側の端面103から−Y軸方向に延びる部分と、+Y軸方向側の端面104から+Y軸方向に延びる部分と、を有してもよい。
【0051】
カバー層301及び302を貫通するアースビア64は、シールド層51に含まれた導電性材料と同じ材料を含んでもよい。例えば、シールド層51の一部が、貫通孔63の内部に充填されることにより、アースビア64は、シールド層51に含まれた導電性材料と同じ材料を含んでもよい。シールド層51は、アースビア64を介して導電層11及び導電層12と接続されている。カバー層301及び302を貫通するアースビア64は、グランド回路40の直上に配置されてもよい。
【0052】
次に、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1の製造方法を説明する。
図2は、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1の製造方法を例示したフローチャート図である。
【0053】
図2のステップS11に示すように、まず、積層配線板100を準備する。積層配線板100は、導電層11と、導電層11上に設けられた絶縁層21と、絶縁層21上に設けられ、X軸方向に延びた部分を有する信号回路30と、絶縁層21及び信号回路30上に設けられた絶縁層22及び23と、絶縁層23上に設けられた導電層12と、を含んでいる。
【0054】
次に、ステップS12に示すように、シールドフィルム200を準備する。具体的には、絶縁性の絶縁被覆層52の片面に導電性のシールド層51が形成されたシールドフィルム部201及び202を準備する。なお、ステップS11とステップS12は順序が逆になってもよいし、同時でもよい。
【0055】
次に、ステップS13に示すように、シールドフィルム200で積層配線板100を覆う。具体的には、積層配線板100の下面101を、絶縁性のカバー層301を介して、シールドフィルム部201のシールド層51側で覆い、積層配線板100の上面102を、絶縁性のカバー層302を介して、シールドフィルム部202のシールド層51側で覆う。また、それとともに、積層配線板100のY軸方向の両端面の少なくとも一部を、シールドフィルム部201及び202のシールド層51側で覆う。なお、カバー層302には、貫通孔63が設けられている。また、カバー層301にも、貫通孔63が設けられていることが望ましい。
【0056】
次に、ステップS14に示すように、プレスする。例えば、熱を加えて熱プレスする。具体的には、積層配線板100及び積層配線板100を覆うシールドフィルム201及び202を上下方向にプレスする。例えば、熱プレスは、温度150〜190[℃]程度、圧力1〜3[MPa]程度、時間1〜60[min]程度が好ましい。これにより、積層配線板100、カバー層301及び302、並びに、シールドフィルム部201及び202を圧着させる。この際に、貫通孔63にシールド層51の一部を充填させる。このようにして、フレキシブルプリント配線板1を製造することができる。
【0057】
次に、本実施形態の効果を説明する前に、比較例を説明する。その後、比較例と対比させて、本実施形態の効果を説明する。
図3は、比較例に係るフレキシブルプリント配線板1110を例示した断面図である。
図3に示すように、フレキシブルプリント配線板1110において、積層配線板100の両端面は、シールドフィルム200で覆われていない。よって、積層配線板100の両端面からの放射ノイズ1012の漏れを抑制することができない。
【0058】
図4は、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1の要部を例示した断面図である。
図4に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、積層配線板100の上面102及び下面101だけでなく、積層配線板100の両端面、すなわち、−Y軸方向側の端面103及び+Y軸方向側の端面104をシールド層51で覆っている。よって、積層配線板100の両端面からの放射ノイズの漏れを抑制することができる。
【0059】
また、高周波信号が流れる信号回路30を、グランド回路40で挟むように配置させている。これにより、放射ノイズのシールド性を向上させることができる。
【0060】
信号回路30の下方には、導電層11及びシールド層51が配置され、信号回路30の上方には、導電層12及びシールド層51が配置されている。このように、2重にシールドされているので、シールド性を向上させることができる。
【0061】
信号回路30の下方において、導電層11とシールド層51とがアースビア64によって接続されている。これにより、導電層11とシールド層51とを確実に同電位とすることができる。また、信号回路30の上方において、導電層12とシールド層51とがアースビア64によって接続されている。これにより、導電層12とシールド層51とを確実に同電位とすることができる。よって、放射ノイズのシールド性を向上させることができる。
【0062】
アースビア64は、導電層11及び12まで貫通し、グランド回路40まで貫通していない。アースビア64は、カバー層301及び302に形成された貫通孔63に形成される。よって、アースビア64を導電層11及び12に貫通させなくてもよいので、製造を容易にし、コストを低減させることができる。また、導電層11及び導電層12が、導電性接着剤層から形成されておらず、FCCLの銅箔等の金属層から形成されている場合には、導電性接着剤層から形成されたものに比べて、シールド性を向上させることができる。このことは、
図12に示すように、シールドフィルム200において、シールド層51と絶縁被覆層52との間に金属層53が配置されている場合にもあてはまる。すなわち、シールドフィルム200の金属層53は、シールド性を向上させることができる。
【0063】
また、導電層11及び12が金属層であることは、シールド性の効果の他、高周波領域での伝送特性に優れているという効果をもたらす。これにより、信号の高周波化、しいては、データ処理の高速化に対応させることができる。このようなメリット、すなわち、シールド性が高いこと、及び、伝送特性に優れることにより、フレキシブルプリント配線板1(FPC)を伝搬する信号を、外部ノイズや伝搬時の信号劣化から守ることができ、従来性能的に使用できなかった箇所にも使用することができる。
【0064】
さらに、シールドフィルム200のシールド層51は、導電性接着剤層から形成されているので、積層配線板100への密着性を向上させることができる。
【0065】
アースビア64は、グランド回路40の直上または直下に形成されている。よって、導電層11と導電層12との間の空間電位、導電層11とシールド層51との間の空間電位、及び、導電層12とシールド層51との間の空間電位を同等にすることができ、シールド性を向上させることができる。
【0066】
シールドフィルム部201及びシールドフィルム部202のシールド層51は、積層配線板100の両端面から外側のY軸方向に延びる部分を有している。これにより、積層配線板100の両端面からの放射ノイズの漏れを抑制することができる。
【0067】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
図5は、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図5に示すように、フレキシブルプリント配線板2は、フレキシブルプリント配線板1と比べて、シールドフィルム200の構成が異なっている。すなわち、フレキシブルプリント配線板2は、実施形態1のシールドフィルム部201及び202の代わりに、1枚のシールドフィルム203を備えている。積層配線板100、カバー層301及びカバー層302の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0068】
フレキシブルプリント配線板2では、1枚のシールドフィルム203によって、積層配線板100を覆っている。シールドフィルム203は、例えば、積層配線板100の下面101の中央部分から覆い始めている。覆い始めの部分を始点部203aという。シールドフィルム203は、始点部203aから、積層配線板100の端面103、上面102、端面104を順に覆い、積層配線板100の下面101の中央部分で、始点部203aに重なっている。始点部203aに重なって巻き終えた部分を終点部203bという。
【0069】
積層配線板100の下面101の中央部分において、始点部203aに、終点部203bが重なっている。よって、重なった部分では、始点部203aの絶縁被覆層52上に、終点部203bのシールド層51が重なっている。このように、フレキシブルプリント配線板2において、シールドフィルム203は、重なることにより、シールド層51とシールド層51との間に絶縁被覆層52が挟まれた部分を有している。
【0070】
また、シールドフィルム203のシールド層51は、積層配線板100のY軸方向の両端面から外側のY軸方向に延びる部分を有している。シールド層51は、−Y軸方向側の端面103から−Y軸方向に延びる部分と、+Y軸方向側の端面104から+Y軸方向に延びる部分と、を有している。例えば、積層配線板100及び積層配線板100を覆うシールドフィルム203を上下方向に熱プレスする際に、シールド層51を、積層配線板100のY軸方向の両端面から外側のY軸方向に延びるようにすることができる。
【0071】
次に、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板2の製造方法を説明する。本実施形態のフレキシブルプリント配線板2の製造方法は、実施形態1の製造方法に比べて、シールドフィルム200を準備する工程と、シールドフィルム200で積層配線板100を覆う工程とが異なっている。
【0072】
実施形態2では、シールドフィルム200を準備する工程において、シールドフィルム部201及び202を準備する代わりに、1枚のシールドフィルム203を準備する。シールドフィルム203は、絶縁性の絶縁被覆層52の片面に導電性のシールド層51が形成されたものである。
【0073】
また、シールドフィルム203で積層配線板100を覆う工程において、シールドフィルム203を、積層配線板100の下面101から、−Y軸方向側の端面103、上面102、+Y軸方向側の端面104の順に、積層配線板100の周囲を巻くように覆う。そして、シールドフィルム203を重ねることにより、シールド層51とシールド層51との間に絶縁被覆層52が挟まれた部分を有するようにする。このようにして、フレキシブルプリント配線板2を製造することができる。
【0074】
本実施形態のフレキシブルプリント配線板2によれば、シールドフィルム203は、積層配線板100の周囲を巻くように覆っている。よって、放射ノイズの漏れを抑制することができる。また、シールドフィルム203の接合部分は、始点部203aと終点部203bとが重なっている。これにより、接合部分からの放射ノイズの漏れを抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0075】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板3を説明する。
図6は、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
【0076】
図6に示すように、フレキシブルプリント配線板3は、導電層11からY軸方向に延びた延在導電層71と、絶縁層21からY軸方向に延びた延在絶縁層72と、を含む延在部70をさらに備えている。よって、延在部70は、積層配線板100の端面103から−Y軸方向側、及び、端面104から+Y軸方向側に設けられている。延在部70は、絶縁層22、絶縁層23及び導電層12の両端面よりもY軸方向の外側に延びている。また、両面FCCLを用いて導電層11及び絶縁層21を形成した際に、延在部70は、両面FCCLにおける信号回路30及びグランド回路40のパターニングで残存した導電層を含んでもよい。
【0077】
複数の接続ビア74は、延在部70を貫通している。複数の接続ビア74は、延在部70において、X軸方向に沿って配列している。複数の接続ビア74は、シールド層51に含まれた材料と同じ材料を含んでもよい。また、複数の接続ビア74は、延在部70を貫通する貫通孔73の内面にメッキされた導電材料を含んでもよい。
【0078】
シールドフィルム200は、積層配線板100の下面101を覆うシールドフィルム部201と、上面102を覆うシールドフィルム部202と、を含んでいる。シールドフィルム部201は、カバー層301のY軸方向における両端面を覆っている。また、シールドフィルム部201は、延在部70の下面を覆っている。シールドフィルム部202は、絶縁層22、絶縁層23、導電層12、カバー層302のY軸方向における両端面を覆っている。また、シールドフィルム部202は、延在部70の上面を覆っている。したがって、シールドフィルム部201及びシールドフィルム部202のシールド層51は、積層配線板100のY軸方向における両端面から外側のY軸方向に延びる部分を有している。また、シールドフィルム部202は、延在部70を貫通する複数の接続ビア74を介して、シールドフィルム部201に接続されている。
【0079】
次に、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板3の製造方法を説明する。本実施形態の製造方法は、実施形態1の製造方法に比べて、積層配線板100を準備する工程、シールドフィルム200で積層配線板100を覆う工程、及び、プレスする工程が異なっている。
【0080】
実施形態3の製造方法では、積層配線板100を準備する工程において、導電層11からY軸方向に延びた延在導電層71と、絶縁層21からY軸方向に延びた延在絶縁層72と、を含む延在部70も準備する。延在部70には、複数の貫通孔73を形成する。複数の貫通孔73の内面を導電材料でメッキしてもよい。また、複数の貫通孔73の内部を導電ペーストで充填してもよい。
【0081】
シールドフィルム200で積層配線板100を覆う工程において、積層配線板100の下面101を、シールドフィルム部201のシールド層51側で覆う。それとともに、カバー層301のY軸方向における両端面、及び、延在部70の下面をシールドフィルム部201のシールド層51側で覆う。また、積層配線板100の上面102を、シールドフィルム部202のシールド層51側で覆う。それとともに、絶縁層22、絶縁層23、導電層12及びカバー層302のY軸方向における両端面、並びに、延在部70の上面をシールドフィルム部202のシールド層51側で覆う。
【0082】
プレスする工程において、貫通孔73にシールド層51の一部を充填させる。なお、複数の貫通孔73の内面を導電材料でメッキした場合には、貫通孔73にシールド層51の一部を充填させなくてもよい。
【0083】
本実施形態のフレキシブルプリント配線板3によれば、延在部70を有しているので、ハンドリングを容易にすることができる。また、シールドフィルム部201及び202の貼付を容易にすることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0084】
(変形例)
次に、実施形態3の変形例を説明する。
図7は、実施形態3の変形例1に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図であり、
図8は、実施形態3の変形例2に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図であり、
図9は、実施形態3の変形例3に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
【0085】
図7に示すように、フレキシブルプリント配線板3aにおいて、積層配線板100aは、導電層11、絶縁層21a、絶縁層22a、導電層12を含んでいる。絶縁層21aと絶縁層22aとの間に信号回路30及びグランド回路が設けられている。絶縁層21a及び絶縁層22aは、液晶ポリマーを材料に含んでいる。
【0086】
積層配線板100aは、例えば、両面FCCL及び片面FCCLを用いて形成されてもよい。両面FCCL及び片面FCCLの絶縁性基材層は、液晶ポリマーを材料に含んでいる。両面FCCLの一方の面の銅箔は、導電層11として用いられ、絶縁性基材層は、絶縁層21aとして用いられる。他方の面の銅箔は、パターニングされて、信号回路30及びグランド回路40として用いられる。また、片面FCCLの一方の面の銅箔は、導電層12として用いられ、絶縁性基材層は、絶縁層22aとして用いられる。両面FCCL及び片面FCCLを用いる場合には、以下のようにして積層配線板100aを形成する。すなわち、両面FCCLにおける他方の面をパターニングすることにより、信号回路30及びグランド回路40を形成する。次に、両面FCCLのパターニングされた面に、片面FCCLの絶縁性基材層側を接着する。これにより、積層配線板100aが形成される。
【0087】
フレキシブルプリント配線板3aにおいて、延在部70は、延在導電層71及び延在絶縁層72aを含んでいる。延在導電層71及び延在絶縁層72aは、導電層11及び絶縁層21aと同じ材料を含んでいる。両面FCCLを用いて導電層11及び絶縁層21aを形成した際に、延在部70は、両面FCCLにおける信号回路30及びグランド回路40のパターニングで残存した導電層を含んでもよい。
【0088】
積層配線板100aの下面101には、カバー層301の代わりに、レジスト層303が形成されている。また、積層配線板100aの上面102には、カバー層302の代わりに、レジスト層304が形成されている。レジスト層304には、貫通孔63が形成されている。貫通孔63の内部にアースビア64が形成されている。シールドフィルム部201及び202におけるシールド層51は、積層配線板100aを、レジスト層303及び304を介して覆っている。
【0089】
図8に示すフレキシブルプリント配線板3bのように、レジスト層303及び304を省いてもよい。この場合には、シールドフィルム部201及び202におけるシールド層51は、積層配線板100aを、カバー層301及び302、または、レジスト層303及び304を介さずに直接覆っている。よって、導電層11及び12の表面は、導電性接着剤層から形成されたシールド層51で覆われているので、密着性を向上させることができる。また、導電層11及び12は、FCCLの銅箔等の金属層から形成されているので、前述したように、シールド性の効果及び伝送特性の効果を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1〜3の記載に含まれている。
【0090】
図9に示すフレキシブルプリント配線板3cのように、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1のカバー層301及び302を省いてもよい。すなわち、フレキシブルプリント配線板3cは、X軸方向に延びた積層配線板100と、絶縁性の絶縁被覆層52の片面に導電性のシールド層51が形成されたシールドフィルム200であって、積層配線板100の上面102及び下面101を、シールド層51側で覆うとともに、積層配線板100のY軸方向の両端面の少なくとも一部を、シールド層51側で覆うシールドフィルム200と、を備えている。ここで、積層配線板100は、導電層11と、導電層11上に設けられた絶縁層21と、絶縁層21上に設けられ、X軸方向に延びた部分を有する信号回路30と、絶縁層21及び信号回路30上に設けられた絶縁層22と、絶縁層22上に設けられた導電層12と、を含んでいる。そして、シールド層51は導電層11及び導電層12と接続されている。
【0091】
このような構成でも、導電層11及び12の表面は、導電性接着剤層から形成されたシールド層51で覆われているので、密着性を向上させることができる。また、導電層11及び12は、FCCLの銅箔等の金属層から形成されているので、シールド性を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1〜3の記載に含まれている。
【0092】
<実施例>
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。まず、測定試料の作製方法を説明する。
【0093】
[測定試料作製]
(実施例1)
積層配線板100を、両面FCCL及び片面FCCLを用いて作製する。両面FCCLは、厚さ50[μm]のポリイミドフィルムの両面に、厚さ12[μm]の圧延銅箔を積層させたものである。両面FCCLにおける一方の圧延銅箔に信号回路31及び32、並びに、グランド回路41及び42を形成する。信号回路31及び32、並びに、グランド回路41及び42のX軸方向の長さは、例えば、10[cm]である。グランド回路41及び42は、信号回路31及び32の両側の外側に、信号回路31及び32に平行に形成する。なお、回路の外観、公差の検査仕様は、JPCA規格(JPCA−DG02)とする。両面FCCLにおける他方の圧延銅箔は、導電層11となる。両面FCCLにおけるポリイミドフィルムは、絶縁層21となる。
【0094】
片面FCCLは、厚さ12.5[μm]のポリイミドフィルムの片面に、厚さ12[μm]の圧延銅箔を積層させたものである。片面FCCLにおける圧延銅箔は、導電層12である。片面FCCLにおけるポリイミドフィルムは、絶縁層23である。
【0095】
次に、片面FCCLのポリイミドフィルム側と、両面FCCLの回路形成面側とを、絶縁性接着剤を介して積層させる。そして、150[℃]の温度及び2.0[MPa]の圧力において、30[min]の条件で圧着する。絶縁接着剤は、厚さ35[μm]の絶縁層22となる。
【0096】
そして、図示しない直径0.1[mm]のスルーホールを設け、次いで、無電解メッキ処理を行った後に、電解メッキ処理を行うことにより、導電層11及び12、並びに、グランド回路41及び42の導通を確保する。
【0097】
さらに、導電層11及び12の外側面に、導電層11及び12を覆うように、カバー層301及び302を貼りつけ、150[℃]の温度及び2.0[MPa]の圧力において30[min]の条件で圧着する。カバー層301及び302は、厚さ12.5[μm]のポリイミドフィルムと、厚さ15[μm]の絶縁性接着剤層とで構成されている。カバー層301及び302には、貫通孔63が設けられている。その後、貫通孔63に露出した回路形成面、並びに、導電層11及び12にニッケルメッキ(不図示)を行い、次いで、金メッキ(不図示)処理を行う。そして、グランド回路41から−Y軸方向側に300[μm]、グランド回路42から+Y軸方向側に300[μm]の位置で裁断する。これにより、積層配線板100が形成される。
【0098】
次に、
図13に示すシールドフィルム200を、種類Aについて2枚用意し、積層配線板100のY軸方向の両端面103及び104を覆うように、其々のシールド層51を内側として、150[℃]の温度及び2.0[MPa]の圧力において、30[min]の条件で圧着する。そして、積層配線板100の両端面から+Y軸方向及び−Y軸方向側に1000[μm]の位置でシールドフィルム200を裁断する。これにより、シールドフィルム200のY軸方向の両端部にシールドフィルム200のみ重なった部分を1000[μm]の幅有するようにする。このようにして、フレキシブルプリント配線板1を得る。
【0099】
なお、
図13に示すように、種類Aのシールドフィルム200において、絶縁被覆層52の厚さは、15[μm]であり、絶縁性接着剤層からなるシールド層51の厚さは、7[μm]である。絶縁性接着剤層の導電フィラー比率は、80[wt%]である。種類Aのシールドフィルム200は、金属層53を含んでいない。一方、種類Bのシールドフィルム200において、絶縁被覆層52の厚さは、15[μm]であり、シールド層51は、絶縁性接着剤層及び金属層53を含んでいる。絶縁性接着剤層の厚さは7[μm]である。絶縁性接着剤層の導電フィラー比率は、80[wt%]である。金属層53の厚さは、3[μm]である。金属層53は、例えば、電解銅箔を含んでいる。
【0100】
(実施例2〜9、比較例1及び2)
図14は、実施例1〜10の構成及び測定結果を例示した図である。
図14に示すように、実施例1のフレキシブル配線板(FPC)の構成、シールドフィルムの種類、及び、シールドフィルム200被着後の裁断位置によって決まるシールドフィルムのみ重なった部分の幅を変更した以外は、実施例1と同様の試料作製を行うことで、実施例2〜9、比較例1、2のフレキシブルプリント配線板を得る。
【0101】
実施例2は、実施例1に対して、シールドフィルム200のY軸方向の裁断位置が異なり、積層配線板100の両端面から5000[μm]で裁断されている。よって、実施例2の特徴は、積層配線板100の両端面から延びたシールドフィルム200のみ重なった部分の幅が5000[μm]となっている点である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0102】
実施例3は、実施例1に対して、シールドフィルム200のY軸方向の裁断位置が異なり、積層配線板100の両端面から200[μm]で裁断されている。よって、実施例3の特徴は、積層配線板100の両端面から延びたシールドフィルム200のみ重なった部分の幅が200[μm]となっている点である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0103】
実施例4は、実施例1に対して、シールドフィルム200のY軸方向の裁断位置が異なり、積層配線板100の両端面から100[μm]で裁断されている。よって、実施例4の特徴は、積層配線板100の両端面から延びたシールドフィルム200のみ重なった部分の幅が100[μm]となっている点である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0104】
実施例5は、実施例1に対して、シールドフィルム200の種類が異なり、種類Bのシールドフィルム200が用いられている。よって、実施例5の特徴は、種類Bのシールドフィルム200が用いられている点である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0105】
実施例6は、実施例1に対して、
図6に示すように、積層配線板100に延在部70が設けられている点が異なっている。よって、実施例6の特徴は、
図6に示す延在部70である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0106】
実施例7は、実施例6に対して、
図7に示すように、絶縁層21a及び絶縁層22aが液晶ポリマーを材料として含んでいる点が異なっている。また、カバー層301及び302の代わりに、レジスト層303及び304が用いられている点が異なっている。よって、実施例7の特徴は、
図7に示す絶縁層21a及び絶縁層22a、並びに、レジスト層303及び304である。これ以外の構成は、実施例6と同様である。
【0107】
実施例8は、実施例7に対して、
図8に示すように、レジスト層303及び304が省かれている点が異なっている。よって、実施例8の特徴は、
図8の構成である。これ以外の構成は、実施例7と同様である。
【0108】
実施例9は、実施例1に対して、
図9に示すように、フレキシブル配線板1のカバー層301及び302が省かれている点が異なっている。よって、実施例9の特徴は、
図9の構成である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0109】
比較例1は、
図10に示すフレキシブルプリント配線板1001を覆うシールドフィルムのみ重なった部分の幅が0[μm]、すなわち、シールドフィルムと積層配線板のY軸方向の断面は同じ場合である。
【0110】
比較例2は、
図3に示すフレキシブルプリント配線板の場合であり、シールドフィルムで覆われていない。
【0111】
(実施例10)
1枚のシールドフィルム203を積層配線板100の周囲を巻くように覆い、シールドフィルム203の始点部203aと終点部203bとが重なっている。シールドフィルム203及び積層配線板100を上下方向に熱プレスする際に、積層配線板100の両端面に、シールドフィルム203のみ重なった部分の幅が、1000[μm]となるようにしている。
【0112】
実施例10は、実施例1に対して、
図5に示すように、始点部203aと終点部203bを有することが特徴である。これ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0113】
[放射ノイズ評価]
得られたフレキシブルプリント配線板に、ネットワークアナライザを用いて、1MHzから20GHzの範囲の信号を送り、近磁界プローブを介した放射ノイズを測定する。測定時のプローブ位置は、X軸方向がフレキシブルプリント配線板上の高周波測定器との接続点から+20[mm]の位置であり、Y軸方向がシールドフィルムを裁断した断面部であり、Z軸方向がフレキシブルプリント配線板の上部から+100[μm]の位置である。尚、実施例1〜10および比較例1〜2は、信号回路31及び32の幅を70[μm]とし、信号回路31及び32同士の間隔を100[μm]とし、グランド回路41及び42の幅を100[μm]とし、グランド回路41と信号回路31との間の距離を400[μm]としている。
【0114】
高周波測定器からフレキシブルプリント配線板への出力信号と、その信号がフレキシブルプリント配線板から放射され、近磁界プローブを介して高周波測定器へ入力された入力信号とから、どれだけ減衰したかをシールド効果[dB]として測定する。この減衰、すなわち、シールド効果[dB]が大きいほど、放射ノイズを遮蔽できていることを意味する。よって、シールド効果[dB]が大きいほど、良好なシールド性を有し、0[dB]に近いほど、放射ノイズが多く、シールド性の劣るフレキシブルプリント配線板となる。なお、放射ノイズ測定は、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気で、300kHz〜20GHzの周波数範囲で測定を行う。
【0115】
図14に示すように、実施例1において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、93[dB]、84[dB]及び78[dB]である。実施例2において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、93[dB]、84[dB]及び78[dB]である。実施例3において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、93[dB]、84[dB]及び78[dB]である。
【0116】
実施例4において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、88[dB]、81[dB]及び76[dB]である。実施例5において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、96[dB]、89[dB]及び87[dB]である。実施例6において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、84[dB]、77[dB]及び73[dB]である。
【0117】
実施例7において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、83[dB]、77[dB]及び73[dB]である。実施例8において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、83[dB]、77[dB]及び73[dB]である。実施例9において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、83[dB]、77[dB]及び73[dB]である。
【0118】
実施例10において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、94[dB]、85[dB]及び78[dB]である。比較例1において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、73[dB]、69[dB]及び66[dB]である。比較例2において、1[GHz]、2[Ghz]及び3[GHz]におけるシールド効果は、それぞれ、73[dB]、70[dB]及び76[dB]である。
【0119】
図15は、実施例1〜10の測定結果を例示したグラフであり、横軸は、実施例を示し、縦軸は、シールド効果を示す。
図14及び
図15に示すように、実施例1〜10は、一般的な比較例1及び2と比較して、放射ノイズが低減されている。以下、FPCの構成、シールドフィルムの種類、シールドフィルムのみ重なった幅の観点について、説明する。
【0120】
<FPCの構成>
図14及び
図15に示すように、フレキシブル配線板における積層配線板100は、延在部70を有していない方が、シールド効果は大きい。しかしながら、延在部70を有していても、比較例よりは、シールド効果は大きい。また、1枚のシールドフィルム203で巻いた実施例10の場合には、2枚のシールドシート200を用いた場合よりも、1〜2[GHz]の範囲において、シールド効果が大きい。
【0121】
<シールドフィルムの種類>
実施例1及び実施例5に示すように、種類Bのシールドフィルムを用いた場合のシールド効果は、種類Aのシールドフィルムを用いた場合よりも大きい。また、種類Bのシールドフィルムを用いた場合には、1〜3[GHz]の範囲にわたって、シールド効果は大きい。
【0122】
<シールドフィルムのみ重なった幅>
シールドフィルムのみ重なった部分の幅が200[μm]以上の場合は、100[μm]の場合よりもシールド効果は大きい。シールドフィルムのみ重なった部分の幅が200〜1000[μm]では、1〜3[GHz]の範囲において、シールド効果に有意な差はない。
【0123】
[ハンドリング性評価]
得られたフレキシブルプリント配線板を、長さ30mm程度に切断して試料片を作成した後、試料片を10個容器に密閉し、振盪器にてストローク40[mm]、速度120[回/min]で、10[min]振盪したときのフレキシブルプリント配線板の耐性を評価する。傷、破損なしの場合を優良(◎)で示し、傷は見られるものの、破損なしの場合を良好(○)で示し、10個中、破損が1〜2個の場合を良(△)で示す。
【0124】
図14に示すように、実施例6〜9のフレキシブル配線板は、ハンドリング性は優良である。一方、実施例2のフレキシブル配線板は、ハンドリング性が低く良である。それ以外は、良好である。
【0125】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1〜3及び変形例1〜2のフレキシブルプリント配線板を構成する各部材を相互に組み合わせてもよい。
【0126】
また、実施形態1〜3及び変形例1〜2のフレキシブルプリント配線板を電子部材に接続してもよい。電子部材は、通信機器に用いる部材を含んでいる。実施形態1〜3及び変形例1〜2のフレキシブルプリント配線板が接続された電子部材は、フレキシブルプリント配線板から放射される高周波ノイズを効果的に抑制すると同時に、外部からの高周波ノイズを遮蔽することができる。また、実施形態1〜3及び変形例1〜2のフレキシブルプリント配線板が接続された通信機器は、フレキシブルプリント配線板から放射される高周波ノイズの影響を低減されている。
【0127】
導電層11及び導電層12を、第1導電層及び第2導電層ともいう。絶縁層21を第1絶縁層といい、絶縁層22及び絶縁層23のいずれかを第2絶縁層ともいう。カバー層301及びカバー層302を、第1カバー層及び第2カバー層ともいう。シールドフィルム部201及びシールドフィルム部202を、第1シールドフィルム部及び第2シールドフィルム部ともいう。