特許第6795738号(P6795738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795738
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ハロゲン化オリゴシランを精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   C01B33/107 B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-513032(P2017-513032)
(86)(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公表番号】特表2017-529303(P2017-529303A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】DE2015000439
(87)【国際公開番号】WO2016037601
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年8月8日
(31)【優先権主張番号】102014013250.1
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520373730
【氏名又は名称】バウフ、クリスティアン
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】バウフ、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ホル、スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ホイヤー、マティアス
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505139(JP,A)
【文献】 特公昭42−27247(JP,B1)
【文献】 特開2001−2407(JP,A)
【文献】 特開昭54−119420(JP,A)
【文献】 特表2013−512844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/08−33/107
C07F7/02−7/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換基Xが塩素または塩素および水素を含む、化合物または化合物の混合物であるハロゲン化オリゴシランSin2n+2(n=2〜6)を精製する方法であって、プロセスが
(a)前記ハロゲン化オリゴシランに錯化剤およびフッ化物またはフッ化混合物を添加するステップであって、このとき前記フッ化物またはフッ化混合物のフッ化物Fが、ハロゲン化オリゴシランの質量に関してFとして計算して、1ppb超の量で添加されるステップ、
(b)少なくとも前記フッ化物が前記ハロゲン化オリゴシランに作用する少なくとも1つの処理を実施する処理ステップであって、このとき前記少なくとも1つの処理ステップが、撹拌、旋回、振とう、還流下での加熱、および拡散からなる群から選択され、このとき前記処理ステップ前または処理ステップ中に溶剤を前記ハロゲン化オリゴシランおよび/または前記フッ化物に添加し、前記溶剤がアルカン、シクロアルカン、エーテル、芳香族、および塩素化シランからなる群から選択され、このとき前記ハロゲン化オリゴシランとの混合物における前記溶剤の割合が、少なくとも0.01質量%であり、かつこのとき前記処理ステップ前または処理ステップ中に、ClSiOSiCl、ClSiOSiClSiCl、およびClSiOSiClOSiClからなる群から選択される純粋な化合物または化合物の混合物であるシロキサンを前記ハロゲン化オリゴシランに添加し、このとき前記ハロゲン化オリゴシランとの混合物における前記シロキサンの割合が、少なくとも0.001質量%であるステップ、ならびに
(c)前記ハロゲン化オリゴシランを単離するための少なくとも1つの分離法を実施するステップであって、前記分離法が、デカンテーション、ろ過、蒸留、および昇華からなる群から選択されるステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記フッ化物が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、フッ化ケイ素Sinop(Y=ハロゲン、オルガニル、シロキサニルおよび/または水素;o+p=2n+2;n>)、およびフッ化亜鉛からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記錯化剤が、ポリエーテル、クラウンエーテル、およびクリプタンドからなる群から選択されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Sin2n+2のXの95原子%超が塩素であり、および/またはSin2n+2の水素含有量が5原子%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの分離法が、1600hPa未満の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの処理ステップおよび/または分離法が、30℃超の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
置換基Xが塩素または塩素および水素を含む、化合物または化合物の混合物であるハロゲン化オリゴシランSin2n+2(n=2〜6)を精製する方法であって、プロセスが
(a)前記ハロゲン化オリゴシランに錯化剤およびフッ化物またはフッ化混合物を添加するステップであって、このとき前記フッ化物またはフッ化混合物のフッ化物Fが、ハロゲン化オリゴシランの質量に関してF-として計算して、1ppb超の量で反応に利用可能であるステップ、
(b)少なくとも前記フッ化物が前記ハロゲン化オリゴシランに作用する少なくとも1つの処理ステップを実施するステップであって、このとき前記少なくとも1つの処理ステップが、撹拌、旋回、振とう、還流下での加熱、および拡散からなる群から選択され、
前記処理ステップ前または処理ステップ中に、Cl3SiOSiCl3、Cl3SiOSiCl2SiCl3、およびCl3SiOSiCl2OSiCl3からなる群から選択される化合物または化合物の混合物であるシロキサンを前記ハロゲン化オリゴシランに添加し、このとき前記ハロゲン化オリゴシランとの混合物における前記シロキサンの割合が、少なくとも0.001質量%であるステップ、ならびに
(c)前記ハロゲン化オリゴシランを単離するための少なくとも1つの分離法を実施するステップであって、前記分離法が、デカンテーション、ろ過、蒸留、および昇華からなる群から選択されるステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ少なくとも1つの直接Si―Si結合を含む純粋な化合物または化合物の混合物であるハロゲン化オリゴシランであって、その置換基がハロゲンのみから、またはハロゲンおよび水素から成り、またその組成において、置換基:ケイ素の原子数比が少なくとも3:2であるハロゲン化オリゴシランを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化シランから特定の混入物を除去する別の方法については、先行技術から知られている。独国特許出願公開第102009027729号明細書(特許文献1)では、アミノ基を有する当該シラン有機化合物を捕捉剤として使用することによって、金属元素または半金属元素の結合によりシランにおける混入物を低減する方法が開示されている。このアミノ基はリガンドとして機能し、金属中心または半金属中心に配位する。この方法では、塩化鉄などの金属化合物の他にホウ素化合物も除去できる。
【0003】
Van Dyke et al.(非特許文献1)は、三塩化ホウ素とさまざまなシリルシロキサンとの反応と、その際にシリルシロキサンがシリルクロリドに分解することについて記述している。
【0004】
独国特許出願公開第102009027729号明細書(特許文献1)に開示されている方法は、アミノ基を有する有機化合物の生成物混合物への添加を前提としているため、ハロゲン化オリゴシランの精製には適していない。アミノ基はハロゲン化オリゴシランにおいて骨格転位を起こし、一方で短鎖ハロゲンシラン、例えばSiCl4、他方で長鎖高度分岐ハロゲンシラン、例えば(SiCl34Siを生じるため、そのような試薬はオリゴシランの場合には用いることができない。これにより所望の生成物が完全に分解してしまう可能性があり、そのためこの方法はハロゲン化オリゴシランには利用できない。
【0005】
Van Dyke et al.の方法は、さまざまなシロキサンの除去のみに関係し、金属元素または半金属元素の結合により混入物を低減することには関係していない。いずれにしても、これに加えて生成物混合物へのBCl3の添加が必要であるが、ホウ素はドーパントとして働くため、例えば半導体製造では重要な元素であることから、これはハロゲン化オリゴシランの多くの適用で除外される。
【0006】
【表1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009027729号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Van Dyke et al.(Inorg.Chem.,Vol.3,No.5,1964,P.747―752)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハロゲン化オリゴシランを精製する方法であって、OCSにおける生成物収量を大幅に低下させることなく、少ない材料費および経費で、生成物から微量の混入物を、とりわけ金属含有化合物を、確実かつ素早く除去する方法を提供することである。この方法では、特にドーパント、金属化合物、半導体領域における適用にとって有害なその他の元素の混入に関して純度が向上することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載する特徴により、置換基Xが塩素または塩素および水素を含む、純粋な化合物または化合物の混合物であるハロゲン化オリゴシランSin2n+2(n=2〜6)を精製する方法であって、
1.ハロゲン化オリゴシランにフッ化物を、純粋な形で、および/またはフッ化混合物として、および/またはフッ素含有化合物として、および/またはフッ素含有調整液として、かつハロゲン化オリゴシランの質量に関してF-として計算して、1ppb超、好ましくは100ppb超、特に好ましくは1ppm超、とりわけ好ましくは10ppm超の量で添加すること、
2.少なくともフッ化物がハロゲン化オリゴシランに作用する少なくとも1つの処理段階が続き、この少なくとも1つの処理が、撹拌、旋回、振とう、還流下での加熱、拡散、および貫流を含む群から選択され、好ましくは、撹拌、および還流下での加熱を含む、少なくとも2つの処理段階が続くこと、
3.デカンテーション、ろ過、蒸留、および昇華を含む群から選択される、ハロゲン化オリゴシランを単離するための少なくとも1つの分離法が続くこと、
4.精製後にハロゲン化オリゴシランの総金属含有量が減少すること
を特徴とする方法によって解決される。
【0011】
先行技術では、半導体技術に必要な純度を実現するために、非常に時間がかかる高価な蒸留ステップが必要であるのに対し、本発明による塩化オリゴシランを精製するための方法には、精製剤を用いることにより、混入物が的確に結合されるという利点がある。
【0012】
有利な実施形態は、請求項2に以下のように示される。フッ化物が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、フッ化ケイ素Sinop(X=ハロゲン、オルガニル、シロキサニルおよび/または水素;o+p=2n+2;n≧l)、およびフッ化亜鉛を含む群から選択され、好ましくはアルカリ金属フッ化物、特に好ましくはフッ化カリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0013】
使用するフッ化物は安価なものであり、計画した分離法で容易に再除去できよう。さらに、対イオンなど追加的な各要素は、OCSと望ましくない反応を起こさないとされることから、例えばフッ化カリウムが適当である。
【0014】
フッ化物の選択においては、数多くのさまざまな化合物から選択できるが、結局のところ、具体的な化合物については、フッ化物(F-)を反応に利用できることのみが重要であることが当業者は容易に理解できよう。したがって、本発明による方法の本質から逸脱することなく、本明細書に言及したフッ化物を別のフッ化物に、全体的または部分的に置き換えることができる。
【0015】
さらに有利な実施形態は、請求項3に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシランに、ポリエーテル、クラウンエーテル、およびクリプタンドを含む群から選択される、好ましくはクラウンエーテル、特に好ましくは18―クラウン―6である錯化剤を添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0016】
錯化剤は多量の金属イオンと結合し、これにより所望の生成物と交換されない可能性がある。これに加え、錯体形成定数はできるだけ大きく、具体的な化合物は高価すぎないものとなろう。ここでも、使用する錯化剤は計画した分離法で容易に再除去でき、OCSと望ましくない反応を起こさないであろう。いずれも、例えば18―クラウン―6のようなクラウンエーテルに該当する。
【0017】
さらに有利な実施形態は、請求項4に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシランおよび/またはフッ化物に、処理段階前または処理段階中に、アルカン、シクロアルカン、エーテル、芳香族、および塩化シランを含む群、好ましくはシクロアルカンおよびエーテル、例えばトリグライム、ジグライム、ジオキサン、ジブチルエーテル、THF、およびジエチルエーテルを含む群から選択される、特に好ましくはシクロアルカン、とりわけシクロヘキサンである溶剤を添加し、このときハロゲン化オリゴシランとの混合物における溶剤の割合が、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%、とりわけ少なくとも2質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0018】
溶剤の添加は、例えば可溶性媒介作用を発揮するのに有利であり得る。これは特に、本発明による方法で用いられる精製添加剤に関する。加えて、使用する溶剤は、できるだけ不活性で、生成物から容易に分離できる必要がある。
【0019】
さらに有利な実施形態は、請求項5に以下のように示される。Sin2n+2のXの95原子%超、好ましくは98原子%超が塩素であり、および/またはSin2n+2の水素含有量が、5原子%未満、好ましくは2原子%未満、特に好ましくは1原子%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0020】
本発明による方法のもっとも重要な目的化合物は高塩素化オリゴシランであるが、液状である、もしくは液化している場合、または溶液中に存在する場合、それ以外にハロゲン化OCSまたは部分水素化OCSに置き換えられる。
【0021】
さらに有利な実施形態は、請求項6に以下のように示される。塩化オリゴシランは、SiCl4、Si2Cl6、Si3Cl8、Si4Cl10を含む群から選択される希釈剤を含み、このときハロゲン化オリゴシランにおける希釈剤の割合が、少なくとも0.001質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%、とりわけ少なくとも10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0022】
希釈剤の添加は、効果的に処理するために、OCSが固体または粘性がある場合には望ましい可能性がある。希釈剤は、上述した溶剤と異なり、これが、記述するように、本発明によるOCSと化学的に類似しており、そのため生成物への有害な混入をもたらさない化合物である場合には、多量に用いることができる。
【0023】
さらに有利な実施形態は、請求項7に以下のように示される。少なくとも1つの分離法が、1600hPa未満、好ましくは800hPa未満、特に好ましくは80hPa未満、とりわけ1hP未満の圧力で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0024】
例えば蒸留などの分離法は、精製剤の存在下で分解現象を回避するために、有利には、減圧下で実施するものとする。このとき、沸点を十分に低下させるために、当該OCSが高温で沸騰するほど、圧力を下げる必要がある。
【0025】
さらに有利な実施形態は、請求項8に以下のように示される。少なくとも1つの処理ステップおよび/または分離法が、30℃超、好ましくは50℃超、特に好ましくは80℃超、とりわけ100℃超の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0026】
精製物質とのより迅速な反応を実現するには、温度を上昇させることが有利である。さらに、より長鎖のOCSでは、粘性を低下させるために、保温して作業するとよい。
【0027】
さらに有利な実施形態は、請求項9に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシラン中のAl、Fe、およびCuの含有量1ppmごとに、精製によって、それぞれ100ppb未満、好ましくは30ppb未満、特に好ましくは5ppb未満、とりわけ1ppb未満に低下することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0028】
本発明による方法を限定することなく、本請求項におけるさまざまな金属混入物の多くを代表して、精製実施前後の典型的な金属含有量を記載する。
【0029】
さらに有利な実施形態は、請求項10に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシランに、処理段階前または処理段階中に、好ましくはCl3SiOSiCl3、Cl3SiOSiCl2SiCl3、Cl3SiOSiCl2OSiCl3を含む群から選択される純粋な化合物または化合物の混合物であるシロキサンを添加し、このときハロゲン化オリゴシランとの混合物におけるシロキサンの割合が、少なくとも0.001質量%、好ましくは少なくとも0.01質量%、特に好ましくは少なくとも0.1質量%、とりわけ少なくとも1質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0030】
この際、本発明による方法は、金属化合物、およびホウ素やリンなどのドーパントに関するプロセス全体の流れの中で精製効果をもたらすために、遊離体にハロゲン化ジシロキサンを添加するさらなる形態の方法を意図している。このとき、ジシロキサンは、請求項1に従ったさまざまな方法ステップの間に、例えばSi―O基を含む酸化物または混合酸化物の形態での金属混入物およびドーパント混入物の大部分と結合し、それによって、本発明による分離法、例えば蒸留で、これを低揮発性の残留物として分離することができる。
【0031】
望ましくは、ジシロキサンは方法の最初に混合し、このとき、これを例えばSiCl4に溶解する、または液状で投入することができる。これにより、本発明に従って意図されているように、この要素がもたらす精製効果が、すでに最初の処理ステップから発揮され得る。しかしながら、特にジシロキサンは、それより後の時点でも、本発明による方法に加えることができ、この場合、ある程度の精製効果は変わらず発揮される。当業者が容易に理解できるように、これにより、本発明で開示される方法の原理から逸脱することはない。
【0032】
精製添加剤の量は、除去する混入物の種類や量によって異なる。傾向的に、ジシロキサンの量が多いと、より良好に精製できる。とはいえジシロキサンは、同様にプロセス中に蒸気圧に依存して同伴され、最終生成物に害をもたらす可能性があることから、好ましくは最終ステップで、例えば蒸留によってできるだけ除去する必要がある。これは最初から少ない方がよりうまくいくことから、この場合、通常は精製作用と、最終生成物において許容可能な残留量との間で妥協を選択する。有利には、最終精製ステップを困難にしないために、所望の最終生成物の沸点に合わせて、非常にさまざまな沸点を有するジシロキサンを選択する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ハロゲン化オリゴシランを精製する本発明による方法は、本発明による添加剤を添加することにより、生成物の収量も時間当たりの収量も、先行技術と比べて著しく増大可能であることから、大幅な経済的利点をもたらす。
【0034】
さらに、本発明による精製剤を添加することにより、最終生成物の純度が高まり、これにより市場における生成物の地位が向上することから、塩化オリゴシラン(OCS)を精製する方法において、さらなる経済的利点が得られる。
【0035】
方法の技術的実現について、さまざまな解決策が考慮の対象となる。こうした解決策から、本課題に対する非限定的な形態を以下に記載する実施例で説明する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施例1)
ヘキサクロロジシラン70kgを、シクロヘキサン50mLに18―クラウン―6 18gおよびKF 2.7gを含む懸濁液と混合する。混合物は2時間撹拌し、次いで、分画蒸留する。10時間後、主留分としてHCDS 62kgが得られる。このとき、この精製過程で、最初のアルミニウム含有量3.8ppmおよび鉄含有量1.3ppmが、それぞれ30ppb未満に低下した。
【0037】
(実施例2)
ヘキサクロロジシラン60kgを、トリグライム150mLに18―クラウン―6 50gおよびKF 5gを含む懸濁液と混合する。混合物は一晩撹拌し、次いで、分画蒸留する。9時間後、主留分としてHCDS 45kgが得られる。このとき、この精製過程で、最初のアルミニウム含有量800ppb、鉄含有量75ppb、およびマグネシウム含有量180ppbが、それぞれ5ppb未満に低下した。
【0038】
(実施例3)
オクタクロロトリシラン8kgを、ジクロロメタン30mLにNaF 0.5gおよび15―クラウン―5 4.5gを含む懸濁液と混合する。混合物は室温で一晩撹拌し、次いで、溶解されない固体をデカンテーションする。次に、OCTSを真空(約10hPa)下で短い精留塔を用いて素早く蒸留し、続いて真空(約10hPa)下で分画蒸留する。8時間以内に、主留分としてOCTS 5kgが得られる。例示的な微量不純物の精製前後の含有量(ppb)を、それぞれ以下の表に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
(実施例4)
テトラクロロジシラン混合異性体約90%とペンタクロロジシラン10%の混合物1.5kgを、ジクロロメタン20mLにNaF 0.1gおよび12―クラウン―4 1gを含む懸濁液と混合する。混合物は室温で2時間、次いで0℃で一晩撹拌する。溶解されない固体から液相をデカンテーションし、ガラスフィルターフリット(D3)でろ過してから、真空(約10hPa)下で短い精留塔を用いて素早く凝縮させる。続いて、凝縮液を真空(約10hPa)下で分画蒸留する。14時間以内に、主留分としてオリゴシラン混合物1.2kgが得られる。例示的な微量不純物の精製後の含有量(ppb)を以下の表に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
(実施例5)
ヘキサクロロジシラン35kgを、ジクロロメタン120mLにKF 3gおよび15―クラウン―5 12gおよび18―クラウン―6 15gを含む懸濁液と混合する。混合物は約2時間以内で還流するまで加熱し、続いて分画蒸留する。8時間以内に、主留分としてHCDS 28kgが得られる。例示的な微量不純物の精製前後の含有量(ppb)を、それぞれ以下の表に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
(実施例6)
ヘキサクロロジシラン40kgを、ジクロロメタン140mLにKF 3.5gおよび15―クラウン―5 14gおよび18―クラウン―6 17gを含む懸濁液と混合する。混合物は約2時間以内で還流するまで加熱し、続いて分画蒸留する。10時間以内に、主留分としてHCDS 32kgが得られる。ここから、HCDS 26kgを、ジクロロメタン100mLにKF 2.2gおよび18―クラウン―6 11gおよび12―クラウン―4 10gを含む懸濁液と混合し、再び分画蒸留する。9時間後に、主留分としてHCDS 20kgが単離される。例示的な微量不純物の精製前後の含有量(ppb)を、それぞれ以下の表に示す。
【0045】
【表5】