【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載する特徴により、置換基Xが塩素または塩素および水素を含む、純粋な化合物または化合物の混合物であるハロゲン化オリゴシランSi
nX
2n+2(n=2〜6)を精製する方法であって、
1.ハロゲン化オリゴシランにフッ化物を、純粋な形で、および/またはフッ化混合物として、および/またはフッ素含有化合物として、および/またはフッ素含有調整液として、かつハロゲン化オリゴシランの質量に関してF
-として計算して、1ppb超、好ましくは100ppb超、特に好ましくは1ppm超、とりわけ好ましくは10ppm超の量で添加すること、
2.少なくともフッ化物がハロゲン化オリゴシランに作用する少なくとも1つの処理段階が続き、この少なくとも1つの処理が、撹拌、旋回、振とう、還流下での加熱、拡散、および貫流を含む群から選択され、好ましくは、撹拌、および還流下での加熱を含む、少なくとも2つの処理段階が続くこと、
3.デカンテーション、ろ過、蒸留、および昇華を含む群から選択される、ハロゲン化オリゴシランを単離するための少なくとも1つの分離法が続くこと、
4.精製後にハロゲン化オリゴシランの総金属含有量が減少すること
を特徴とする方法によって解決される。
【0011】
先行技術では、半導体技術に必要な純度を実現するために、非常に時間がかかる高価な蒸留ステップが必要であるのに対し、本発明による塩化オリゴシランを精製するための方法には、精製剤を用いることにより、混入物が的確に結合されるという利点がある。
【0012】
有利な実施形態は、請求項2に以下のように示される。フッ化物が、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、フッ化ケイ素Si
nX
oF
p(X=ハロゲン、オルガニル、シロキサニルおよび/または水素;o+p=2n+2;n≧l)、およびフッ化亜鉛を含む群から選択され、好ましくはアルカリ金属フッ化物、特に好ましくはフッ化カリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0013】
使用するフッ化物は安価なものであり、計画した分離法で容易に再除去できよう。さらに、対イオンなど追加的な各要素は、OCSと望ましくない反応を起こさないとされることから、例えばフッ化カリウムが適当である。
【0014】
フッ化物の選択においては、数多くのさまざまな化合物から選択できるが、結局のところ、具体的な化合物については、フッ化物(F
-)を反応に利用できることのみが重要であることが当業者は容易に理解できよう。したがって、本発明による方法の本質から逸脱することなく、本明細書に言及したフッ化物を別のフッ化物に、全体的または部分的に置き換えることができる。
【0015】
さらに有利な実施形態は、請求項3に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシランに、ポリエーテル、クラウンエーテル、およびクリプタンドを含む群から選択される、好ましくはクラウンエーテル、特に好ましくは18―クラウン―6である錯化剤を添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0016】
錯化剤は多量の金属イオンと結合し、これにより所望の生成物と交換されない可能性がある。これに加え、錯体形成定数はできるだけ大きく、具体的な化合物は高価すぎないものとなろう。ここでも、使用する錯化剤は計画した分離法で容易に再除去でき、OCSと望ましくない反応を起こさないであろう。いずれも、例えば18―クラウン―6のようなクラウンエーテルに該当する。
【0017】
さらに有利な実施形態は、請求項4に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシランおよび/またはフッ化物に、処理段階前または処理段階中に、アルカン、シクロアルカン、エーテル、芳香族、および塩化シランを含む群、好ましくはシクロアルカンおよびエーテル、例えばトリグライム、ジグライム、ジオキサン、ジブチルエーテル、THF、およびジエチルエーテルを含む群から選択される、特に好ましくはシクロアルカン、とりわけシクロヘキサンである溶剤を添加し、このときハロゲン化オリゴシランとの混合物における溶剤の割合が、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%、とりわけ少なくとも2質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0018】
溶剤の添加は、例えば可溶性媒介作用を発揮するのに有利であり得る。これは特に、本発明による方法で用いられる精製添加剤に関する。加えて、使用する溶剤は、できるだけ不活性で、生成物から容易に分離できる必要がある。
【0019】
さらに有利な実施形態は、請求項5に以下のように示される。Si
nX
2n+2のXの95原子%超、好ましくは98原子%超が塩素であり、および/またはSi
nX
2n+2の水素含有量が、5原子%未満、好ましくは2原子%未満、特に好ましくは1原子%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0020】
本発明による方法のもっとも重要な目的化合物は高塩素化オリゴシランであるが、液状である、もしくは液化している場合、または溶液中に存在する場合、それ以外にハロゲン化OCSまたは部分水素化OCSに置き換えられる。
【0021】
さらに有利な実施形態は、請求項6に以下のように示される。塩化オリゴシランは、SiCl
4、Si
2Cl
6、Si
3Cl
8、Si
4Cl
10を含む群から選択される希釈剤を含み、このときハロゲン化オリゴシランにおける希釈剤の割合が、少なくとも0.001質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも1質量%、とりわけ少なくとも10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0022】
希釈剤の添加は、効果的に処理するために、OCSが固体または粘性がある場合には望ましい可能性がある。希釈剤は、上述した溶剤と異なり、これが、記述するように、本発明によるOCSと化学的に類似しており、そのため生成物への有害な混入をもたらさない化合物である場合には、多量に用いることができる。
【0023】
さらに有利な実施形態は、請求項7に以下のように示される。少なくとも1つの分離法が、1600hPa未満、好ましくは800hPa未満、特に好ましくは80hPa未満、とりわけ1hP未満の圧力で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0024】
例えば蒸留などの分離法は、精製剤の存在下で分解現象を回避するために、有利には、減圧下で実施するものとする。このとき、沸点を十分に低下させるために、当該OCSが高温で沸騰するほど、圧力を下げる必要がある。
【0025】
さらに有利な実施形態は、請求項8に以下のように示される。少なくとも1つの処理ステップおよび/または分離法が、30℃超、好ましくは50℃超、特に好ましくは80℃超、とりわけ100℃超の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0026】
精製物質とのより迅速な反応を実現するには、温度を上昇させることが有利である。さらに、より長鎖のOCSでは、粘性を低下させるために、保温して作業するとよい。
【0027】
さらに有利な実施形態は、請求項9に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシラン中のAl、Fe、およびCuの含有量1ppmごとに、精製によって、それぞれ100ppb未満、好ましくは30ppb未満、特に好ましくは5ppb未満、とりわけ1ppb未満に低下することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0028】
本発明による方法を限定することなく、本請求項におけるさまざまな金属混入物の多くを代表して、精製実施前後の典型的な金属含有量を記載する。
【0029】
さらに有利な実施形態は、請求項10に以下のように示される。ハロゲン化オリゴシランに、処理段階前または処理段階中に、好ましくはCl
3SiOSiCl
3、Cl
3SiOSiCl
2SiCl
3、Cl
3SiOSiCl
2OSiCl
3を含む群から選択される純粋な化合物または化合物の混合物であるシロキサンを添加し、このときハロゲン化オリゴシランとの混合物におけるシロキサンの割合が、少なくとも0.001質量%、好ましくは少なくとも0.01質量%、特に好ましくは少なくとも0.1質量%、とりわけ少なくとも1質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【0030】
この際、本発明による方法は、金属化合物、およびホウ素やリンなどのドーパントに関するプロセス全体の流れの中で精製効果をもたらすために、遊離体にハロゲン化ジシロキサンを添加するさらなる形態の方法を意図している。このとき、ジシロキサンは、請求項1に従ったさまざまな方法ステップの間に、例えばSi―O基を含む酸化物または混合酸化物の形態での金属混入物およびドーパント混入物の大部分と結合し、それによって、本発明による分離法、例えば蒸留で、これを低揮発性の残留物として分離することができる。
【0031】
望ましくは、ジシロキサンは方法の最初に混合し、このとき、これを例えばSiCl
4に溶解する、または液状で投入することができる。これにより、本発明に従って意図されているように、この要素がもたらす精製効果が、すでに最初の処理ステップから発揮され得る。しかしながら、特にジシロキサンは、それより後の時点でも、本発明による方法に加えることができ、この場合、ある程度の精製効果は変わらず発揮される。当業者が容易に理解できるように、これにより、本発明で開示される方法の原理から逸脱することはない。
【0032】
精製添加剤の量は、除去する混入物の種類や量によって異なる。傾向的に、ジシロキサンの量が多いと、より良好に精製できる。とはいえジシロキサンは、同様にプロセス中に蒸気圧に依存して同伴され、最終生成物に害をもたらす可能性があることから、好ましくは最終ステップで、例えば蒸留によってできるだけ除去する必要がある。これは最初から少ない方がよりうまくいくことから、この場合、通常は精製作用と、最終生成物において許容可能な残留量との間で妥協を選択する。有利には、最終精製ステップを困難にしないために、所望の最終生成物の沸点に合わせて、非常にさまざまな沸点を有するジシロキサンを選択する。