(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
垂直姿勢で配設されて軸回りに回転し螺旋羽根の間に形成された螺旋溝内に供給された遊技球を保持して揚送するスクリュー部材と、当該スクリュー部材の最下端の螺旋溝と同方向へ傾斜して下降しつつ当該螺旋溝の接線方向へ延びる遊技球供給路と、当該遊技球供給路の底面上を転動供給される前記遊技球を当接させて前記最下端の螺旋溝に対応した位置に前記遊技球を位置させる当接端面とを備え、当該当接端面を、前記遊技球供給路を連続して供給される前記遊技球のうち前記螺旋溝に対応して位置させられた前記遊技球に続く遊技球の中心高を含む高さまでの間で前記底面に対して90度以上の開き角度で傾斜させ、かつ前記遊技球供給路の、前記スクリュー部材に対してその反対側に位置する側壁を、前記当接端面に当接する前記遊技球の略半径分だけ供給路上流側に離れた位置付近から、前記スクリュー部材の径方向で、前記スクリュー部材に対して離間するように屈曲させて前記遊技球の逃げ空間を形成したことを特徴とする遊技機の球揚送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような球揚送装置において、垂直姿勢で設けた球揚送装置への特に供給部で遊技球の搬送方向が遊技球の流下を促す下り傾斜方向から垂直方向へ大きく変化するため後続球からの荷重印加により揚送負荷が増大し、あるいは遊技球の球噛みを生じてその円滑な搬送が阻害されるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、遊技球の荷重印加による揚送負荷の増大を回避しつつ球噛みを効果的に防止してコンパクトかつ円滑な遊技球の揚送を可能にした遊技機の球揚送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、
本発明では、垂直姿勢で配設されて軸回りに回転し螺旋羽根(31)の間に形成された螺旋溝(32)内に供給された遊技球(B1,B2)を保持して揚送するスクリュー部材(3)と、当該スクリュー部材(3)の最下端の螺旋溝(32)と同方向へ傾斜して下降しつつ当該螺旋溝(32)の接線方向へ延びる遊技球供給路(2)と、当該遊技球供給路(2)の底面(21)上を転動供給される前記遊技球(B1)を当接させて前記最下端の螺旋溝(32)に対応した位置に前記遊技球(B1)を位置させる当接端面(12)とを備え、当該当接端面(12)を、前記遊技球供給路(2)を連続して供給される前記遊技球(B1,B2)のうち前記螺旋溝(32)に対応して位置させられた前記遊技球(B1)に続く遊技球(B2)の中心高を含む高さ(h)までの間で前記底面に対して90度以上の開き角度(θ)で傾斜させ
、かつ前記遊技球供給路(2)の、前記スクリュー部材(3)に対してその反対側に位置する側壁(22)を、前記当接端面(12)に当接する前記遊技球(B1)の略半径分だけ供給路上流側に離れた位置付近から、前記スクリュー部材(3)の径方向で、前記スクリュー部材(3)に対して離間するように屈曲させて前記遊技球(B1)の逃げ空間(S)を形成する。
【0007】
本発明においては、当接端面が所定の高さ範囲で90度以上の開き角度で傾斜して形成されていることにより、遊技球がスクリュー部材によって上方へ揚送される際に、遊技球はこれに続く遊技球からの荷重を避けつつ上昇することができ、この部分での球噛みの発生が防止される。そして、スクリュー部材の回転に過度な負荷が加わらないから、スクリュー部材の強度アップによる大型化や重量増が避けられるとともに、スクリュー部材の回転駆動力が軽減されて回転駆動系のコンパクト化と円滑な作動が保証される。
また、遊技球が当接端面に当接して位置決めされる前にスクリュー部材の螺旋羽根が上記遊技球に接触しても、当該遊技球は持ち上げられることなく逃げ空間内へ退避させられる。これにより、当接端面に当接するまでの間に遊技球が螺旋溝内に収容して持ち上げられ、上方に位置する遊技球供給路の球出口に当たって球噛みを生じることが防止される。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の遊技機の球揚送装置によれば、遊技球の荷重印加による揚送負荷の増大を回避しつつ球噛みを効果的に防止してコンパクトかつ円滑な遊技球の揚送が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
図1に示す封入式パチンコ遊技機において、球揚送装置1は遊技機Aの左縁に沿った本体枠内に垂直姿勢で設置されており、遊技盤の遊技領域Dから排出される遊技済球の回収樋A1から下方へ延びる遊技球供給路2が、球揚送装置1の下端部へ傾斜して連結されている。球揚送装置1の上端部は、遊技盤の上端近くに設けられて遊技領域D内へ遊技球を発射する球発射装置Eに至っている。なお、図中、符号A2は球発射用操作ハンドル、符号A3は表示装置、符号A4は入賞口、符号A5はアウト口である。
【0015】
なお、球揚送装置1の上記設置場所は一例であり、封入式パチンコ遊技機において発射装置を遊技機の中段若しくはそれより下方の位置に配置してもよく、封入式ではない通常のパチンコ遊技機において打球供給皿とその上方に位置する球発射装置の間に設けられ、あるいは下皿と上皿の間の球汲み上げ装置として、あるいは遊技領域内に設ける盤面部品等として球揚送装置1を使用することができる。その他、遊技機から島設備に向けて遊技球を排出する排出口の高さよりも高い位置に、島設備に設置され排出球を回収する際に排出球を一旦受け止める球受け部が配置されている場合に、排出口と球受け部の間に配置してもよい。
【0016】
図2には球揚送装置1の透視斜視図を示す。球揚送装置1は縦長ハウジング11内にスクリュー部材3が垂直姿勢で配設されており、スクリュー部材3には外周に軸方向へ螺旋状の羽根31が突出形成されて、これら螺旋羽根31の間に螺旋溝32が形成されている。スクリュー部材3の下端は駆動モータ4に連結され、上端はベアリング軸受け14(
図6参照)で支持されている。スクリュー部材3の下端と駆動モータ4の連結構造の詳細を
図3に示す。
【0017】
駆動モータ4の回転軸41は上方へ突出しており、回転軸41の先端に装着された連結部材42の下半凹部内に回転軸41の先端が挿入されている。そして、連結部材42の上半凸部がスクリュー部材3の筒状中心軸33内に挿入されている。駆動モータ4の回転軸41、連結部材42の下半凹部および上半凸部、およびスクリュー部材3の中心軸33は、連結箇所がいずれも周面の一部を切り欠いた断面(いわゆるDカット)によって回転方向に対して互いに滑ることなく結合されている。なお、回り止めの手法はDカットに限らず、断面を円以外のその他の形状にするなど、互いが回転方向に滑ることなく結合することができればよい。スクリュー部材3の下端は後述のように遊技球供給路2に連通しており、スクリュー部材3の上端は球発射装置Eに連通している。
【0018】
駆動モータ4によってスクリュー部材3が回転させられると、遊技球供給路2を経てスクリュー部材3の下端に供給された遊技球が螺旋溝32内に進入保持されて上方へ移送(揚送)され、スクリュー部材3の上端から球発射装置Eへ送出される。
【0019】
スクリュー部材3の中心軸33内には筒状の金属製軸部材34(
図3)が挿入されている。スクリュー部材3は本実施例では
図2に示すように、軸方向へ下端部35、第1中間部36、第2中間部37、上端部38の4つに分割されており、これら下端部35、中間部36,37、上端部38が軸部材34に嵌装されて積層され、互いの対向する端部に形成された半円突出片によって回転方向で一体的に回転するように係合している。なお、軸部材34とスクリュー部材3はインサート成形で一体的に製造しても良い。また、金属製軸部材を使用せず樹脂のみで形成したり上下端部のみを金属製とするなど、適宜変更してもよい。
【0020】
ここで、上端部38と下端部35は螺旋羽根31(螺旋溝32)のピッチを相対的に小さくし、中間部36,37は螺旋羽根31(螺旋溝32)のピッチを相対的に大きくしてある。これにより、遊技球の供給時および排出時には揚送が適度な速度で行われて球噛み等が防止されるとともにそれ以外では速やかに効率的な揚送が行われる。また、下端部35から中間部36,37、上端部38へと上流側(下側のスクリュー部材分割部)から下流側(上側のスクリュー部材分割部)への螺旋羽根31の連結部において遊技球が載る下流側の上面が上流側の上面に比べ低くしてあり(
図6参照)、これによって揚送途中での遊技球の球噛みが効果的に防止される。さらに下端部35、中間部36,37および上端部38はそれぞれ必要に応じて材質を例えば耐摩耗性樹脂や帯電防止樹脂等と異ならせることができる。
【0021】
図4は
図2のIV-IV線に沿った拡大断面図である。
図4において、遊技球供給路2の下流端部の底面21は螺旋溝32の接線方向へ延びるとともに(
図5参照)、スクリュー部材3の螺旋羽根31の間に形成された螺旋溝32と同方向へ傾斜して先端211に向かって下降している。底面先端211に対向して、遊技球流下方向に対向する側の側壁である当接端面12が位置している。当接端面12は、スクリュー部材3の螺旋溝32に保持されて揚送される遊技球B1,B2を案内するように直立して延びるガイド壁13の下端部を構成している。そして、上記当接端面12は遊技球供給路2の底面21に対して90度以上の開き角度θで傾斜するとともに、後述するように所定の高さhまでの範囲で形成されている。
【0022】
遊技球供給路2の底面21上を転動供給される遊技球B1,B2は上記当接端面12に当接して、
図5に示すようにスクリュー部材3の最下端の螺旋溝32に対応して位置させられる。そしてスクリュー部材が
図5の矢印方向へ回転させられると、遊技球は螺旋溝の上昇変位に伴って揚送される。なお、
図5は
図4のV-V線に沿った断面図である。当接端面12は、これに当接して位置決めされた遊技球B1に続いてこれに接するように供給された遊技球B2(後続球)の中心高を含む高さh(
図4)までの範囲で形成されている。
【0023】
当接端面12が上記高さhの範囲で開き角度θで傾斜して形成されていることにより、
図4に示す状態で遊技球B1がスクリュー部材3によって上方へ揚送される場合に、遊技球B1は後続球B2からの荷重を避けつつ(換言すると、後続球B2を遊技球供給路2の上流側に押し退けることなく)上昇することができるから、この部分での球噛みの発生が防止される。この際、スクリュー部材3の回転に過度な負荷が加わらないから、スクリュー部材3の強度アップによる大型化や重量増が避けられるとともに、駆動モータ4(
図2)の駆動力が軽減されてそのコンパクト化と円滑な作動が保証される。また螺旋溝32(螺旋羽根31)の傾斜が底面21の傾斜と同方向であることから、螺旋羽根31の上面がこれに乗る遊技球B1に与える力の方向を当接端面12の傾斜方向と略平行にすることができる。これにより、遊技球B1と当接端面12の間に発生する摩擦を最小限に抑えて、さらに、スクリュー部材3の回転に過度な負荷が加わらないようにすることができる。
【0024】
図5に示す遊技球供給路2の下端部には、スクリュー部材3と反対側に側壁22が設けられており、当該側壁22は、当接端面12に当接する遊技球B1の略半径分だけ上流側(球供給側)に離れた位置P1付近から、スクリュー部材3に対して離間する、スクリュー部材の径方向へ後退(屈曲)して、ここに遊技球の逃げ空間Sが形成されている。
【0025】
このような逃げ空間Sが形成されていることにより、遊技球B1が当接端面12に当接して位置決めされる前にスクリュー部材3の螺旋羽根31が上記遊技球B1に接触しても、当該遊技球B1は上方に(
図5の紙面手前方向)持ち上げられることなく逃げ空間S内へ退避させられる。そして、当接端面に当接して位置決めされた後にのみ遊技球B1はスクリュー部材3で揚送される。これに対して上記逃げ空間Sが無いと、当接端面12に当接するまでの間に螺旋羽根31と側壁22が遊技球B1に接触してこれを螺旋溝32内に収容して持ち上げ、上方に位置する遊技球供給路の球出口の上縁23(
図4)に遊技球B1が当たって球噛みを生じるおそれがある。
【0026】
このように、遊技球供給路2の側壁22をスクリュー部材3から離間する方向へ後退させて逃げ空間Sを形成したことにより、揚送時の球噛みの発生が効果的に防止され、スムーズな遊技球の揚送が実現される。なお、側壁22の後退位置を、当接端面12に当接する遊技球B1の略半径分より短い位置にして逃げ空間Sを長くすると、当接端面12によって位置決めされた遊技球B1にスクリュー部材3の螺旋羽根31が接触した際に当該遊技球B1が逃げ空間Sへ転出してしまい揚送されないという不具合を生じる。
【0027】
図6には球揚送装置の上端部の透視斜視図を示す。
図6において、ハウジング11の上端部から、スクリュー部材3の螺旋羽根31上端の上方位置へリブ15が突出させてあり、当該リブ15は下面151をガイド面として正面方向へ向く傾斜面としてある。スクリュー部材3によって揚送されてきた遊技球はリブ15のガイド面151に当接して水平方向前方へと方向を変え、球揚送装置1から球発射装置Eへ送出供給される。
【0028】
さらに
図6に示すように、スクリュー部材3の螺旋羽根31の最上端位置には略直角に屈曲させたリブ311が形成されており、スクリュー部材3の回転(図中の矢印)に伴って揚送されてきた遊技球がリブ311の立壁によって水平方向前方へと押しやられ、球揚送装置1から球発射装置Eへ排出供給される。なお、上記リブ15,311はいずれか一方のみを設けるようにしても良い。
【0029】
(他の実施形態)
球揚送装置の作動は遊技機への給電と同時としても良い。この場合、揚送後の遊技球が満杯になったことを検知して作動を停止するようにしても良いし、オーバーフロー通路を設けても良い。オーバーフロー通路は遊技球を揚送前の位置に戻すものでも良いし、以下のような構造としても良い。すなわち、
図7に示すように、揚送された遊技球Bの通常の排出口16の上方にさらにオーバーフロー排出口17を設けて、スクリュー部材3の上端をオーバーフロー排出口17まで延長し、通常の排出口16が遊技球Bで詰まった場合には、上方のオーバーフロー排出口17から遊技球Bを排出させる。
【0030】
また、球揚送装置の作動を、球発射用操作ハンドルのような操作手段に遊技者が触れ、あるいはこれを操作したタイミングで行い、その後遊技者が操作手段から離れあるいは操作を止めた段階で球揚送装置の作動を停止するようにしても良い。
【0031】
スクリュー部材3に駆動モータ4の回転軸41を直接連結するのに代えて、
図8に示すように、駆動モータ4の回転軸41に設けた小径歯車43をスクリュー部材3の一端に設けた大径歯車44に噛合させる構造とすることができる。これにより、駆動モータ4の低価格化、小型化が可能になる。
【0032】
上記球揚送装置に球磨き装置を付設して、揚送途中で遊技球を磨くようにしても良い。
球揚送装置のハウジングの必要部は透明な樹脂等で構成しても良い。またハウジングの開口に開閉式のメンテナンス扉を設けることもできる。