【実施例】
【0014】
〔実施例1の構成〕
実施例1の免震装置1を
図1〜
図12等を用いて説明する。
免震装置1は、建造物(図示せず。)を免震するものであり、次の地盤連動部2および建造物付属部3を備え(
図1〜
図3等参照。)、建造物を含む上部構造体と、地盤Eに設けられる下部構造体との締結を維持しつつ、建造物の免震を可能にするものである。なお、以下の記載では、地盤Eに下部構造体が含まれるものとして説明する。
【0015】
まず、地盤連動部2は、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの鉛直方向の変位に伴い、地盤Eとともに鉛直方向に移動するものであり、次の軸部5および凸状部7Lを有する(
図3等参照。)。
すなわち、軸部5は、外周面にネジ山が設けられたものであり、凸状部7Lは、軸部5を、鉛直方向を指向するように保持するものである。また、凸状部7Lは、複数の転動体8を挟んで、地盤Eに設けられた平坦面9に載置されており、平坦面9は、鉛直方向に垂直に設けられている。また、それぞれの転動体8は、例えば、球体であり、図示しないリテーナにより互いの相対位置が保たれながら、自在に回転することができる。
【0016】
さらに、凸状部7Lと地盤Eとの間には、凸状部7Lの平坦面9に対する相対的な動きを所定の範囲で許容しつつ規制する規制部11が設けられている。つまり、規制部11は、凸状部7Lの平坦面9に対する相対的な平行移動、回転、鉛直方向の移動を所定の範囲で許容しつつ規制する。
【0017】
また、規制部11は、例えば、次のような係合部11a、11bにより構成され、凸状部7Lの周囲に、複数(好ましくは、3つ以上)、設けられている。より具体的には、係合部11aは、凸状部7Lから外側に突き出ており、係合部11bは、地盤Eに設けられて、係合部11aの上側で凸状部7Lに向かって伸びている。
【0018】
また、転動体8は、それぞれの規制部11が有する係合部11bの根元の間で、転がりつつ、平坦面9に対して相対的に移動することができる。さらに、係合部11a、11b同士が係合することにより、凸状部7Lの平坦面9に対する相対的な動きが規制される。
【0019】
以上の構成により、地盤連動部2は、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの鉛直方向の変位に伴い、地盤Eとともに、回転することなく鉛直方向に移動することができる。なお、凸状部7Lについては、後で、更に詳述する。
【0020】
次に、建造物付属部3は、軸部5に螺合するネジ穴12U、12Lを具備しており、軸部5に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制されるものである(
図3等参照。)。そして、建造物付属部3は、地盤Eの鉛直方向への変位に伴い、軸部5が回転することなく鉛直方向に移動することで、軸部5や建造物に対して回転する。
以下、建造物付属部3について、更に詳述する。
【0021】
建造物付属部3は、次の上側、下側挟持部3U、3Lを具備する。すなわち、上側、下側挟持部3U、3Lは、建造物に固定された被挟持部13の上下それぞれに配置されて被挟持部13を挟持する。また、上側、下側挟持部3U、3Lは、それぞれ、ネジ穴12U、12Lを具備して軸部5に螺合し、軸部5に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制される。さらに、被挟持部13には、軸部5を通す孔13aが設けられており、孔13aの上側、下側それぞれの側でネジ穴12U、12Lと軸部5とが螺合している。
【0022】
より具体的には、上側挟持部3Uは、ネジ穴12Uの軸方向の両端それぞれで外周側に伸びる上側、下側フランジ14、15と、上側、下側フランジ14、15間に上側、下側フランジ14、15よりも径小に設けられた筒部16とを有し、ネジ穴12Uは、上側、下側フランジ14、15および筒部16を貫通している。
また、被挟持部13の上側には、上側挟持部3Uを回転可能に収容する収容部材17が固定されている。収容部材17には、上側挟持部3Uが回転可能に収容される収容領域18Uが設けられている。
【0023】
収容領域18Uは、上側挟持部3Uの形状に応じた形状を有する。
すなわち、収容領域18Uは、収容部材17の上側に開口するとともに上側フランジ14を回転可能に収容する上側大径領域18Ua、収容部材17の下側に開口するとともに下側フランジ15を回転可能に収容する下側大径領域18Ub、および、上側、下側大径領域18Ua、18Ubを接続するとともに筒部16を回転可能に収容する中間小径領域18Ucを有する。
【0024】
ここで、上側大径領域18Uaでは、上側フランジ14の外周側、下側それぞれの側にラジアル軸受20、スラスト軸受21が組み付けられ、上側フランジ14の上側には空間が形成されている。また、下側大径領域18Ubでは、下側フランジ15の外周側、上側それぞれの側にラジアル軸受20、スラスト軸受21が組み付けられ、下側フランジ15の下側には空間が形成されている。さらに、中間小径領域18Ucでは、筒部16の外周側にラジアル軸受20が組み付けられている。
【0025】
以上により、上側挟持部3Uは、軸部5が鉛直方向に移動しても、軸部5に対して回転可能、かつ、建造物に対して鉛直方向に移動不能に保持される。なお、収容部材17の上面には、後記する静止規定部23、回転規制部24それぞれを設けるためのネジ穴23a、24aが設けられ、ネジ穴23a、24aは、両方とも上側大径領域18Uaに貫通している。
【0026】
一方、下側挟持部3Lも、上側挟持部3Uと同様の上側、下側フランジ14、15、および、筒部16を有し、ネジ穴12Lは、上側、下側フランジ14、15および筒部16を貫通している。
また、下側挟持部3Lの収容領域18Lは、被挟持部13に固定された凸状部7Uに設けられている。そして、収容領域18Lは、下側挟持部3Lの形状に応じた形状を有する。
【0027】
すなわち、収容領域18Lは、凸状部7Uの上側に開口するとともに上側フランジ14を回転可能に収容する上側大径領域18La、凸状部7Uの下側に開口するとともに下側フランジ15を回転可能に収容する下側大径領域18Lb、および、上側、下側大径領域18La、18Lbを接続するとともに筒部16を回転可能に収容する中間小径領域18Lcを有する。
【0028】
そして、上側大径領域18Laでは、上側フランジ14の外周側、下側それぞれの側にラジアル軸受20、スラスト軸受21が組み付けられ、上側フランジ14の上側には空間が形成されている。また、下側大径領域18Lbでは、下側フランジ15の外周側、上側それぞれの側にラジアル軸受20、スラスト軸受21が組み付けられ、下側フランジ15の下側には空間が形成されている。さらに、中間小径領域18Lcでは、筒部16の外周側にラジアル軸受20が組み付けられている。
【0029】
以上により、下側挟持部3Lは、軸部5が鉛直方向に移動しても、軸部5に対して回転可能、かつ、建造物に対して鉛直方向に移動不能に保持される。なお、凸状部7Uについては、後で、更に詳述する。
【0030】
また、免震装置1は、次の静止規定部23および回転規制部24を備える。すなわち、静止規定部23は、建造物付属部3が回転可能になるトルクを規定するものであり、回転規制部24は、建造物付属部3の回転を不能にするものである(
図3および
図4等参照。)。以下、静止規定部23、回転規制部24の順に詳述する。
【0031】
まず、静止規定部23は、建造物付属部3の静摩擦トルクを規定するものであり、例えば、次の調節ネジ23b、コイルスプリング23c、球体23d、および、穴23e等により構成されている。
【0032】
ここで、調節ネジ23bは、コイルスプリング23cの付勢力を調節するものであり、鉛直方向を指向するように、収容部材17に設けたネジ穴23aに螺合している。また、コイルスプリング23cは、調節ネジ23bの下端に開口する収容孔23fに収容され、鉛直方向に付勢力を発生するように組み付けられており、コイルスプリング23cの上端は、収容孔23fの上底に支持されている。
【0033】
また、球体23dは、コイルスプリング23cの下端と上側挟持部3Uの上側フランジ14との間に組み付けられている。さらに、穴23eは、上側挟持部3Uの上側フランジ14の上面に設けられており、球体23dは、コイルスプリング23cに付勢されて穴23eに嵌まっている。
【0034】
以上の構成により、静止規定部23では、調節ネジ23bのネジ穴23aへの螺合量を調節することによりコイルスプリング23cの付勢力が調整される。そして、コイルスプリング23cの付勢力の調整により、上側挟持部3Uの回転によって穴23eから球体23dが離脱するのに必要なトルク、すなわち、建造物付属部3の静摩擦トルクが規定される。
【0035】
次に、回転規制部24は、建造物付属部3の回転を不能にして建造物付属部3を軸部5に固定するものであり、例えば、浸水や強風により、地盤Eが鉛直方向に変位していないにもかかわらず、建造物が鉛直方向に移動するのを回避することを目的としている。そして、回転規制部24は、次の係合ネジ24b、係合穴24c、ネジ駆動部24d、駆動制御部24eおよび判定センサ24f等により構成されている。
【0036】
ここで、係合ネジ24bは、上側挟持部3Uの上側フランジ14に係合することで建造物付属部3全体を回転不能にするものである。そして、係合ネジ24bは、鉛直方向を指向するように、収容部材17に設けたネジ穴24aに螺合し、係合ネジ24bの下端部は、ネジ穴24aから上側大径領域18Uaに突き出ている。係合穴24cは、上側挟持部3Uの上側フランジ14の上面に設けられており、係合ネジ24bの下端部は、係合穴24cの回転軌跡上に配置されている。
【0037】
また、ネジ駆動部24dは、例えば、周知の電動ドライバであり、係合ネジ24bの上端に開口する工具穴に先端が嵌まっている。駆動制御部24eは、周知のマイクロコンピュータとして構成されるものであり、ネジ駆動部24dの動作を制御する。さらに、判定センサ24fは、地盤Eの鉛直方向の変位によらず、例えば、浸水や強風等により、建物が鉛直方向に浮き上がるのを検出するものであり、具体的には、風速計や水位計などである。そして、判定センサ24fの出力は、駆動制御部24eに入力されてネジ駆動部24dの動作制御に利用される。
【0038】
さらに、免震装置1は、次の吸収部26を備える。すなわち、吸収部26は、所定の弾性部27の弾性変形により、地盤Eの鉛直方向への変位に伴う衝撃を吸収するものであり、次の凹状部28、および、上記した凸状部7U、7Lを含む凸状部7を有する(
図1および
図5等参照。)。以下、吸収部26を詳述する。
【0039】
まず、凹状部28は、弾性部27を具備するとともに、鉛直方向の上側、下側いずれかの側に向かって窄むように窪む凹空間29を、自身が有する内側面30により形成する。そして、凹状部28では、弾性部27の弾性変形により、凹空間29が外側に拡大したり、内側に縮小したりする(
図1および
図9等参照。)。
次に、凸状部7は、凹空間29が窄む側と同じ側に向かって窄むように突き出る凸部31を具備し、凸部31が凹空間29に嵌まるように、凹状部28の上側または下側に配置される。
【0040】
ここで、内側面30は、鉛直方向の上側、下側いずれかの側に向かって窄むように傾斜しており、凸部31の外側面32も、内側面30と同じ側に向かって窄むように傾斜している。
そして、凹状部28または凸状部7の少なくとも一方に、他方に向かう鉛直方向の力が作用すると、内側面30には、外側面32から、内側面30の傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し、内側面30の傾斜に垂直かつ外側に向かう力により、凹空間29が外側に拡大するとともに、弾性部27が弾性変形する。
【0041】
また、凹状部28は、内側面30を形成する内側面形成部34を、複数、具備し、弾性部27は、内側面形成部34ごとに装備されている。そして、それぞれの弾性部27は、対応する内側面形成部34を外側から、自身の弾性力により内側に付勢する。
以下、凹状部28、凸状部7および内側面形成部34等に関し、実施例1の具体的態様を説明する。
【0042】
実施例1の凹状部28は、上側、下側それぞれに、凹空間29を形成する。
以下の説明では、凹状部28において上側、下側それぞれの側に形成される凹空間29を凹空間29U、29Lと呼ぶことがある。
凹空間29Uは鉛直方向の下側に向かって窄むように窪み、凹空間29Lは鉛直方向の上側に向かって窄むように窪む。
【0043】
また、凸状部7は、凹状部28の上側、下側の両側に配置されている。
以下の説明では、凹状部28の上側、下側それぞれの側に配置される凸状部7を凸状部7U、7Lと呼ぶことがある。また、凸状部7U、7Lそれぞれが具備する凸部31を凸部31U、31Lと呼ぶことがある。
凸部31Uは、鉛直方向の下側に向かって窄むように突き出ており、凹空間29Uに嵌まっている。また、凸部31Lは、鉛直方向の上側に向かって窄むように突き出ており、凹空間29Lに嵌まっている。
【0044】
以下、凹状部28、凸状部7U、7Lそれぞれの構成を詳述する。
なお、以下の説明では、凹空間29U、29Lを形成する内側面30をそれぞれ内側面30U、30Lと呼ぶことがある。また、凸部31U、31Lの外側面32をそれぞれ外側面32U、32Lと呼ぶことがある。
【0045】
凹状部28は、上記した弾性部27および内側面形成部34を有する。
弾性部27は、円錐バネの一種である、いわゆるタケノコバネである(以下、弾性部27をタケノコバネ27と記載することがある。)。タケノコバネ27は、所定の厚さを有する帯状の金属板を同心状に、かつ、自身の径方向に隣り合う周同士が自身の軸方向において部分的に重なりを形成するように円錐状に成形されたものである。
【0046】
なお、径方向に隣り合う周同士は、金属板の表面に塗布された潤滑剤を介して接触して重なりを形成している。
そして、タケノコバネ27は、自身の軸方向長さが水平方向に伸縮自在となるように組み付けられている。ここで、タケノコバネ27は、円錐の頂側の端が内側面形成部34に支持され、円錐の底側の端が後記する油圧シリンダ36の先端側筒体37に支持されて水平方向に保持されている。
【0047】
内側面形成部34は、例えば、4角錐台の形状を呈する部材であり(
図6等参照。)、4つの側面34a、34b、34c、34dの内、対向する2つの側面34a、34cが同じ形状の等脚台形であり、他の対向する2つの側面34b、34dが同じ形状の長方形である。また、等脚台形の頂側、底側それぞれの端面34e、34fは両方とも長方形である。なお、内側面形成部34の材料は、金属、木材、樹脂またはセメントなどである。
【0048】
端面34eの互いに平行な2辺の組み合わせの内、一方の組み合わせの2辺は、側面34a、34cの頂側の辺に等しく、他方の組み合わせの2辺は、側面34b、34dの短辺に等しい。また、端面34fの互いに平行な2辺の組み合わせの内、一方の組み合わせの2辺は、側面34a、34cの底側の辺に等しく、他方の組み合わせの2辺は、側面34b、34dの短辺に等しい。
【0049】
また、端面34fには、タケノコバネ27や先端側筒体37を収容する収容穴38が設けられている(
図6および
図7等参照。)。収容穴38は、端面34fに開口するとともに端面34fに垂直な軸を有する円筒部38aと、円筒部38aと同軸であって円筒部38aの底面から端面34e側に向かって窄む円錐台部38bとを有する。
【0050】
また、円錐台部38bの底面には、後記するロッド39が通る孔が設けられている。そして、円筒部38aの底面の内、円錐台部38bの開口の周囲は、先端側筒体37の移動を規制するストッパとして機能する。また、円錐台部38bの底面の内、ロッド39が通る孔の開口の周囲は、タケノコバネ27の頂側の端を支持するバネ座として機能する。
【0051】
また、凹状部28は、同一形状の内側面形成部34を、4つ、具備しており、さらに、内側面形成部34ごとに弾性部27を具備している(
図8等参照。)。
以下の説明では、4つの内側面形成部34それぞれを内側面形成部34A、34B、34C、34Dと呼ぶことがある。また、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれに装備された弾性部27(タケノコバネ27)を、弾性部27A(タケノコバネ27A)、弾性部27B(タケノコバネ27B)、弾性部27C(タケノコバネ27C)、弾性部27D(タケノコバネ27D)と呼ぶことがある。
【0052】
そして、凹状部28は、内側面形成部34A、34B、34C、34D、および、弾性部27A、27B、27C、27Dとともに、次の、ロッド39、および、締結部40を有する。
まず、ロッド39は、円柱状の棒体であり、ロッド39の先端部は、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの収容穴38を通って円錐台部38bの底面を貫通している。
以下の説明では、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれに組み付けられたロッド39を、ロッド39A、39B、39C、39Dと呼ぶことがある(
図8および
図10等参照。)。
【0053】
そして、ロッド39A、39B、39C、39Dは、それぞれ内側面形成部34A、34B、34C、34Dの中心軸と同軸となるように組み付けられている。
また、締結部40は、ロッド39A、39B、39C、39Dの先端部が締結されており、ロッド39A、39B、39C、39Dを一体化する。
【0054】
ここで、締結部40には、ロッド39A、39B、39C、39Dが次のような配置を実現するように締結されている。
すなわち、ロッド39A、39Cが同軸であり、かつ、ロッド39B、39Dが同軸である。また、ロッド39A、39Cの軸とロッド39B、39Dの軸とが直交する。さらに、ロッド39A、39Cそれぞれの先端間の距離とロッド39B、39Dそれぞれの先端間の距離とが等しい。
【0055】
また、ロッド39A、39B、39C、39Dおよび締結部40の一体物は、ロッド39A、39B、39C、39Dそれぞれの軸が次のような方向を指向するように組み付けられている。すなわち、ロッド39A、39Cの軸が特定の水平方向を指向するように、かつ、ロッド39B、39Dの軸が特定の水平方向および鉛直方向の両方向に垂直な別の水平方向を指向するように組み付けられている。
なお、以下の実施例1における説明では、特定の水平方向を第1水平方向と呼ぶことがある。また、別の水平方向を第2水平方向と呼ぶことがある。
【0056】
そして、このようなロッド39A、39B、39C、39Dの配置により、内側面形成部34A、34B、34C、34Dは、次のような配置を実現している(
図8等参照。)。
すなわち、内側面形成部34A、34B、34C、34Dは、鉛直方向に関して同じ高さに配置されている。また、内側面形成部34A、34Cは対をなし、それぞれの端面34e同士が第1水平方向に隙間を隔てて互いに平行になるように向かい合っている。同様に、内側面形成部34B、34Dも対をなし、それぞれの端面34e同士が第2水平方向に隙間を隔てて互いに平行になるように向かい合っている。
【0057】
また、内側面形成部34A、34Cの対において形成される隙間と、内側面形成部34B、34Dの対において形成される隙間とは、互いに等しい。さらに、内側面形成部34A、34B、34C、34Dを上側から視たときに、内側面形成部34A、34B、34C、34Dは、上記した軸部5の周囲に90°間隔で配置されている。
【0058】
そして、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの側面34bにより、凹空間29Uが形成され、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの側面34dにより、凹空間29Lが形成されている。つまり、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの側面34bが内側面30Uであり、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの側面34dが内側面30Lである。なお、内側面30Uの第1水平方向に対する傾斜角、および、内側面30Lの第1水平方向に対する傾斜角は、軸部5のリード角にできるだけ等しいのが好ましく、一致するのが、最も好ましい。
【0059】
凸状部7Uは、上記したように被挟持部13に固定されており、建造物に対する相対的な配置が変わらない(
図3および
図5等参照。)。
凸状部7Uの具体的な形状は、例えば、次のとおりである。すなわち、凸状部7Uの上部は、正方形を断面形状とする扁平な4角柱であり、下部は、上端が上部の4角柱の断面形状と同一形状の扁平な4角錐台であって下側ほど窄んでいる。
【0060】
また、凸状部7Uの上部、下部は同軸であり、凸状部7Uの軸は鉛直方向を指向している。さらに、凸状部7Uには、上記した収容領域18Lが凸状部7U自身と同軸に設けられ、収容領域18Lは、凸状部7Uの上面、下面に開口している。
【0061】
そして、4角錐台形状の下部が凸部31Uをなし、下部の4つの側面が外側面32Uをなす。ここで、外側面32Uの傾斜は、内側面30Uの傾斜と略一致している。つまり、免震装置1が建造物と地盤Eとの間に組み入れられた状態で、凸状部7Uの4角錐台形状の下部の側面は、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの側面34bと同じ傾斜を有する。
【0062】
凸状部7Lは、上記したように、軸部5を保持して地盤連動部2を構成し、さらに、地盤Eとの間に転動体8が介挿され、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの鉛直方向の変位に伴い、地盤Eとともに、回転することなく鉛直方向に移動することができる(
図2および
図5等参照。)。
【0063】
凸状部7Lの具体的な形状は、例えば、次のとおりである。すなわち、凸状部7Lの下部は、正方形を断面形状とする扁平な4角柱であり、上部は、下端が下部の4角柱の断面形状と同一形状の扁平な4角錐台であって上側ほど窄んでいる。また、凸状部7Lの上部、下部は同軸であり、凸状部7Lの軸は鉛直方向を指向しており、凸状部7Uと同軸である。そして、4角錐台形状の上部が凸部31Lをなし、上部の4つの側面が外側面32Lをなす。
【0064】
ここで、外側面32Lの傾斜は、内側面30Lの傾斜と略一致している。つまり、免震装置1が建造物と地盤Eとの間に組み入れられた状態で、凸状部7Lの4角錐台形状の上部の側面は、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれの側面34dと同じ傾斜を有する。
【0065】
なお、軸部5は、凸状部7Lと同軸となるように、凸状部7Lに固定されている。
そして、凸状部7Lから上側に突き出た軸部5は、締結部40に設けられた孔40aを通って下側挟持部3Lのネジ穴12Lに螺合し、さらに、孔13aを通って上側挟持部3Uのネジ穴12Lに螺合している(
図3および
図5等参照)。
【0066】
さらに、免震装置1は、次の調整部41を備える。
すなわち、調整部41は、弾性部27の弾性力を調整するものであり、上記した油圧シリンダ36、および、以下に説明する油圧回路41Cを有する(
図7および
図8等参照。)。
油圧シリンダ36は、弾性部27ごとに装備されるものであり、後記するピストン42を具備する。
油圧回路41Cは、複数の油圧シリンダ36から選択した少なくとの2つの油圧シリンダ36それぞれに形成された油圧室を連通する。
【0067】
油圧シリンダ36は、上記した先端側筒体37、ならびに、以下に説明するピストン42、後端側筒体43および閉止栓44等から構成されており、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれに装着されている。以下、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれに装着されている油圧シリンダ36をそれぞれ油圧シリンダ36A、36B、36C、36Dと呼ぶことがある。
なお、油圧シリンダ36の構成に関し、油圧シリンダ36Aを取り上げて説明するが(
図7参照。)、油圧シリンダ36B、36C、36Dの構成は、油圧シリンダ36Aと同様である。
【0068】
ピストン42は、板状に設けられており、油圧シリンダ36Aにおいてロッド39Aに直交するように一体化している。また、ピストン42は、後端側筒体43内に収容されており、縦揺れの発生に伴い、後端側筒体43内を相対的に移動する。
先端側筒体37、後端側筒体43は有底の円筒体であり、閉止栓44は円板状に設けられている。先端側筒体37、後端側筒体43および閉止栓44は、後端側筒体43の開口を閉止栓44により閉鎖するとともに、先端側筒体37の底部と閉止栓44とを接続することで一体化され、油圧シリンダ36Aの外郭体45をなす。
【0069】
そして、先端側筒体37の開口側、つまり、外郭体45の先端側を内側面形成部34Aの収容穴38に挿入することで、油圧シリンダ36Aが内側面形成部34Aに装着されている。
【0070】
また、後端側筒体43の内周側は、作動油が導入され、さらに、ピストン42により、先端側、後端側の油圧室46A、46Bに液密的に区画されている。ここで、先端側筒体37、後端側筒体43それぞれの底部および閉止栓44には、ロッド39Aを液密的に通す孔が設けられている。このため、ピストン42が外郭体45に対して第1水平方向に相対的に移動することにより、油圧室46A、46B相互の液密性を確保しつつ、油圧室46Aの拡大および油圧室46Bの縮小、または、油圧室46Aの縮小および油圧室46Bの拡大を実現することができる。
【0071】
また、上記したタケノコバネ27は、先端側筒体37の内周側と収容穴38とに跨って収容され、先端側筒体37の底部は、タケノコバネ27の底側の端のバネ座として機能する。また、ロッド39の内、ピストン42よりも先端側の部分は、タケノコバネ27の内周側を貫通するように組み付けられる。
【0072】
油圧回路41Cは、次のような油路41a、41b、41c、41dを有する(
図8等参照。)。すなわち、油路41aは、油圧シリンダ36Aの油圧室46Aと油圧シリンダ36Cの油圧室46Bとを連通し、油路41bは、油圧シリンダ36Aの油圧室46Bと油圧シリンダ36Cの油圧室46Aとを連通する。また、油路41cは、油圧シリンダ36Bの油圧室46Aと油圧シリンダ36Dの油圧室46Bとを連通し、油路41dは、油圧シリンダ36Bの油圧室46Bと油圧シリンダ36Dの油圧室46Aとを連通する。
【0073】
なお、ロッド39の後端と、後端側筒体43の底部との間にもタケノコバネ27とは別のタケノコバネ48がセットされている(
図7等参照。)。タケノコバネ48は、後記するように地盤Eの鉛直方向の上側への変位により外郭体45が外側に移動した後、地盤Eの上側への変位が治まったときに、外郭体45を内側へ付勢する復元部として機能する。
【0074】
〔実施例1の動作〕
実施例1の免震装置1の動作を説明する。
まず、地震等が発生していない平常時には、免震装置1は、地盤Eと建造物とを締結するアンカーボルトとして機能する。具体的には、地盤連動部2の軸部5と、建造物付属部3である上側、下側挟持部3U、3Lとが螺合して静止している(
図1等参照。)。
【0075】
また、上側、下側挟持部3U、3Lは、軸部5に螺合しつつ、それぞれ上側、下側から被挟持部13を挟んで挟持している。さらに、規制部11により、地盤連動部2の凸状部7Lの地盤Eに対する相対的な動きが規制されている。
このような機能により、平常時の免震装置1は、地盤Eと建造物とを締結するアンカーボルトとして機能する。
【0076】
次に、地震が発生して縦揺れが発生した場合、免震装置1は、次のように動作して建造物を免震する。例えば、地震の発生により地盤Eが鉛直方向の上側への変位しようとすると、軸部5が鉛直方向の上側への移動を開始しようとする。これにより、上側、下側挟持部3U、3Lにトルクが加わり始める。そして、このトルクが、静止規定部23において設定されている建造物付属部3の静摩擦トルクよりも大きくなると、上側挟持部3Uの穴23eから球体23dが離脱し、軸部5の建造物に対する上昇、および、上側、下側挟持部3U、3Lの回転が始まる(
図11等参照。)。
【0077】
また、吸収部26では、地盤Eの上側への変位開始に応じて、凸状部7Lが上側に移動し始めるので、外側面32Lから内側面30Lに、内側面30Lの傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し始める。そして、この力により、凹状部28を構成する内側面形成部34A、34B、34C、34Dは、上側に移動するとともに、軸部5を中心として外側へ移動する。また、内側面形成部34A、34B、34C、34Dの外側への移動により、凹空間29U、29Lが外側に拡大する(
図9および
図10等参照。)。
【0078】
さらに、内側面形成部34A、34B、34C、34Dが外側へ移動すると、調整部41では、油圧シリンダ36A、36C間、および、油圧シリンダ36B、36D間で作動油が流れることで、内側面形成部34A、34B、34C、34Dそれぞれにセットされたタケノコバネ27の弾性力が調整される。
【0079】
具体的には、油圧回路41Cにおいて、油路41aを経由して油圧シリンダ36Aの油圧室46Aから油圧シリンダ36Cの油圧室46Bへ作動油が流れ、油路41bを経由して、油圧シリンダ36Cの油圧室46Aから油圧シリンダ36Aの油圧室46Bへ作動油が流れる。
【0080】
また、油路41cを経由して、油圧シリンダ36Bの油圧室46Aから油圧シリンダ36Dの油圧室46Bへ作動油が流れ、油路41dを経由して、油圧シリンダ36Dの油圧室46Aから油圧シリンダ36Bの油圧室46Bへ作動油が流れる。
そして、このような作動油の流れにより、油圧シリンダ36A、36B、36C、36Dそれぞれにおいて外郭体45が外側に移動する。
【0081】
これにより、タケノコバネ27A、27B、27C、27Dに作用する油圧力が調整され、タケノコバネ27A、27B、27C、27Dは地盤Eの変位のレベルに応じた長さまで圧縮される。
つまり、地盤Eの上側への変位に応じて、内側面形成部34A、34B、34C、34Dが外側へ移動すると、油圧回路41Cにおいて作動油が流れることで、タケノコバネ27A、27B、27C、27Dの弾性力が調整される。
【0082】
その後、地盤Eの上側への変位が治まって凸状部7Lが元の位置に戻り始めると、軸部5が鉛直方向の下側への移動を開始する。これにより、上側、下側挟持部3U、3Lには上側への移動時と逆のトルクが加わり始め、上側、下側挟持部3U、3Lは上側への移動時と逆の方向に回転し始める。
【0083】
また、調整部38では、油圧回路41Cにおいて、上記した流れと逆の方向に作動油が流れ始める。また、油圧シリンダ36A、36B、36C、36Dそれぞれにおいて、タケノコバネ48により、外郭体45が内側に付勢されて移動し始める。さらに、吸収部26では、内側面形成部34A、34B、34C、34Dは、下側に移動するとともに、軸部5を中心として内側へ移動する。また、内側面形成部34A、34B、34C、34Dの内側への移動により、凹空間29U、29Lが縮小する。
【0084】
なお、地震発生により地盤Eが鉛直方向以外の水平方向にも変位しようとする場合、つまり、地震に伴う地盤Eの変位のベクトルが第1、第2水平方向の成分を含んでいる場合、第1、第2水平方向の変位は、規制部11における許容範囲内で吸収される。
【0085】
続いて、浸水や強風等が発生した場合、免震装置1は、次のように動作して建造物の浮き上がりを抑制する。例えば、浸水や強風の発生により建造物に上側に向かう力が作用すると、回転規制部24では、判定センサ24fが建造物の鉛直方向への浮き上がりを検出する。これに応じて、駆動制御部24eは、ネジ駆動部24dを駆動して係合ネジ24bの下端部を鉛直方向の下側に更に突き出させ、上側挟持部3Uの上側フランジ14に当接させる。また、建造物の浮き上がりにより、上側挟持部3Uは、軸部5に対して相対的に上側に移動するとともに回転する。
【0086】
そして、上側挟持部3Uの回転により、係合ネジ24bの下端部の位置と係合穴24cの位置とが一致すると、係合ネジ24bの下端部が係合穴24cに嵌まり、係合ネジ24bが上側挟持部3Uの上側フランジ14に係合する(
図12等参照。)。このため、建造物付属部3全体が回転不能になり、建造物付属部3が軸部5に固定される。この結果、建造物の浮き上がりが抑制される。
【0087】
〔実施例1の効果〕
実施例1の免震装置1は、次の地盤連動部2および建造物付属部3を有する。
まず、地盤連動部2は、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの鉛直方向の変位に伴い、地盤Eとともに鉛直方向に移動するものであり、次の軸部5を有する。すなわち、軸部5は、外周面にネジ山が設けられたものであり、鉛直方向を指向するように保持される。
【0088】
次に、建造物付属部3は、軸部5に螺合するネジ穴12U、12Lを具備しており、軸部5に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制されている。そして、建造物付属部3は、地盤Eの鉛直方向への変位に伴い、軸部5が回転することなく鉛直方向に移動することで、軸部5や建造物に対して回転する。
【0089】
これにより、平常時には、地盤連動部2と建造物付属部3とのネジ締結構造により、建造物と地盤Eとの締結を維持することができる。また、地震により地盤Eが鉛直方向に変位しても、軸部5の鉛直方向への移動に伴って建造物付属部3が回転することにより、地盤Eの鉛直方向への変位を吸収することができるとともに、弾性部27を含む吸収部26の態様にかかわらず、振動を抑制することができる。
このため、弾性部27の態様に関わらず、建造物と地盤Eとの締結を維持しつつ、建造物の免震を可能にするとともに地震等に伴う振動を抑制することができる。
【0090】
また、建造物付属部3は、次の上側、下側挟持部3U、3Lを具備する。すなわち、上側、下側挟持部3U、3Lは、建造物に固定された被挟持部13の上下それぞれに配置されて被挟持部13を挟持する。また、上側、下側挟持部3U、3Lは、それぞれ、ネジ穴12U、12Lを具備して軸部5に螺合し、軸部5に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制される。
これにより、建造物付属部3を、より強固に建造物に一体化することができるので、平常時における建造物と地盤Eとの締結を強化することができる。
【0091】
また、免震装置1は、建造物付属部3が回転可能になるトルクを規定する静止規定部23を備える。
これにより、建造物付属部3の静摩擦トルクを設定することができるので、地震等が軽微であるときに、建造物付属部3の回転を抑制することができる。このため、建造物付属部3の回転に伴う各種の摩耗を抑えることができる。
【0092】
また、免震装置1は、建造物付属部3の回転を不能にする回転規制部24を備える。
これにより、浸水や強風等により建造物が浮き上がろうとしても、建造物付属部3の回転が回転規制部24により規制されて建造物付属部3が軸部5に固定されるので、建造物は地盤Eに強固に固定される。このため、建造物の浮き上がりを抑制することができる。
【0093】
また、免震装置1は、次の凹状部28および凸状部7を有する吸収部26を備える。
まず、凹状部28は、弾性部27を具備するとともに、自身が有する内側面30により次の凹空間29を形成する。すなわち、凹空間29は、鉛直方向のいずれかの側に向かって窄むように窪む。そして、凹状部28では、弾性部27の弾性変形により、凹空間29が外側に拡大したり、内側に縮小したりする。次に、凸状部7は、次の凸部31が凹空間29に嵌まるように、凹状部28の上側または下側に配置される。すなわち、凸部31は、鉛直方向のいずれかの側に向かって窄むように突き出る。
【0094】
ここで、内側面30は、鉛直方向のいずれかの側に向かって窄むように傾斜しており、凸部31の外側面32も、内側面30と同じ側に向かって窄むように傾斜している。
そして、凹状部28または凸状部7の少なくとも一方に、他方に向かう鉛直方向の力が作用すると、内側面30には、外側面32から、内側面30の傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し、内側面30の傾斜に垂直かつ外側に向かう力により、凹空間29が拡大するとともに、弾性部27が弾性変形する。
【0095】
これにより、地盤Eが鉛直方向の上側に変位すると、内側面30には、外側面32から、内側面30の傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し、内側面30の傾斜に垂直かつ外側に向かう力により、凹空間29が外側に拡大するとともに、弾性部27が弾性変形する。このため、地盤Eの上側への変位により凹状部28に加えられたエネルギーは、凹状部28の外側への拡大に分散して弾性部27に吸収され、鉛直方向の振動に費やされる部分が低減する。このため、地震発生時の建造物の鉛直方向への振動を低減して地盤連動部2や建造物付属部3にかかる負荷を抑えることができる。
【0096】
なお、実施例1の凹状部28は、上側、下側それぞれの側に、凹空間29U、29Lを形成し、凹状部28の上側、下側それぞれの側に凸状部7U、7Lが配置されている。そして、凸部31Uが凹空間29Uに嵌まり、凸部31Lが凹空間29Lに嵌まっている。
これにより、鉛直方向に直列に2か所、凹凸嵌合を形成しているので、地盤Eから鉛直方向に加わったエネルギーを、吸収部26において、より多く水平方向へ分散して吸収することができる。このため、地震発生時の建造物の鉛直方向への振動を更に低減して地盤連動部2や建造物付属部3にかかる負荷を抑えることができる。
【0097】
さらに、実施例1の免震装置1は、次の調整部41を備える。すなわち、調整部41は、それぞれの弾性部27の弾性力を調整するものであり、次のような油圧シリンダ36および油圧回路41Cを有する。すなわち、油圧シリンダ36は、弾性部27ごとに装備されるものであり、油圧により駆動されるピストン42を具備し、ピストン42を経由して弾性部27に油圧力を及ぼす。
【0098】
また、油圧回路41Cは、複数の油圧シリンダ36から選択した少なくとの2つの油圧シリンダ36それぞれに形成された油圧室を連通する。
これにより、弾性部27間で弾性力が均等化されるので、吸収部26によるエネルギーの吸収が内側面30の各部ごとにばらつくのを抑制することができる。このため、吸収部26によるエネルギーの吸収を安定させることができる。
【0099】
〔実施例2の構成〕
実施例2の免震装置1を、実施例1の免震装置1との相違点を中心に説明する(
図13および
図14等参照。)。
実施例2の免震装置1は、次のケノコバネ27を備える。すなわち、タケノコバネ27は、自身の軸方向長さが鉛直方向に伸縮自在となるように組み付けられ、地盤Eから鉛直方向の上側に向かう力が作用すると、地盤Eと建造物とに鉛直方向に挟まれて鉛直方向に弾性圧縮される。
【0100】
すなわち、実施例2の免震装置1によれば、実施例1のような凹状部28、凸状部7U、7Lを有さず、タケノコバネ27が鉛直方向にセットされており、タケノコバネ27の鉛直方向への弾性変形により、地盤Eの鉛直方向への変位を吸収する。
【0101】
また、下側挟持部3Lは、実施例1の凸状部7Uに代わり、被挟持部13の下側に固定された収容部材50に回転可能に収容されている。つまり、収容部材50には、実施例1と同様の収容領域18Lが設けられている。また、収容領域18Lの下側は、タケノコバネ27の座をなす板状のバネ座形成部材51により閉じられている。なお、バネ座形成部材51には、軸部5を通す孔が設けられている。
【0102】
また、軸部5は、実施例1の凸状部7Lに代わり、次のような被固定部52に固定されている。
すなわち、被固定部52は、タケノコバネ27の座をなすバネ座形成部52a、および、転動体8を地盤Eとともに鉛直方向に挟む地盤対向部52bとを有する。そして、軸部5は、タケノコバネ27と同軸をなすように組み付けられ、タケノコバネ27を上側に貫通して上側、下側挟持部3U、3Lに螺合している。
なお、規制部11を構成する係止部11aは、地盤対向部52bに設けられている。
【0103】
〔実施例2の効果〕
実施例2の免震装置1によれば、タケノコバネ27の鉛直方向への弾性変形により、地盤Eの鉛直方向への変位を吸収する。このため、実施例2の免震装置1は、実施例1の免震装置1よりも簡便な構造で地盤Eの変位を吸収する。そして、このように簡便な構造で地盤Eの変位を吸収する場合でも、地盤連動部2および建造物付属部3により、建造物と地盤Eとの締結を維持しつつ、建造物の免震を可能にするとともに地震等に伴う振動を抑制することができる。
【0104】
〔実施例3の構成〕
実施例3の免震装置1を、実施例1の免震装置1との相違点を中心に説明する(
図15〜
図24等参照。)。
実施例3の免震装置1は、実施例1の免震装置1に加えて、次の副地盤連動部102および副建造物付属部103を備える。ここで、副地盤連動部102、副建造物付属部103は、それぞれ地盤連動部2、建造物付属部3と同様の構造であり、地盤Eの特定の水平方向への変位を吸収するものである。
【0105】
なお、実施例1の免震装置1が備える構成のように、主に地盤Eの鉛直方向への変位を吸収するものを縦揺れ抑制機1Aと呼ぶことがある。また、実施例3において加わる副地盤連動部102、副建造物付属部103のように、主に地盤Eの水平方向への変位を吸収するものを横揺れ抑制機1Bと呼ぶことがある(
図15等参照。)。また、実施例3の説明では、上記の特定の水平方向を第1水平方向と呼ぶことがある。また、第1水平方向および鉛直方向の両方向に垂直な別の水平方向を第2水平方向と呼ぶことがある。
【0106】
そして、横揺れ抑制機1Bは、例えば、地盤Eの内、建造物の側方に位置する水平側基準部Ehと建造物との間に配置されている(
図15および
図16等参照。)。
また、第1水平方向に関し、水平側基準部Ehが建造物に近づく側を一方側とし、遠ざかる側を他方側とする。
【0107】
まず、副地盤連動部102は、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの第1水平方向の変位に伴い、地盤Eとともに第1水平方向に移動するものであり、次の軸部105および凸状部107Lを有する(
図17等参照。)。
すなわち、軸部105は、外周面にネジ山が設けられたものであり、凸状部107Lは、軸部105を、第1水平方向を指向するように保持するものである。
【0108】
また、凸状部107Lは、複数の転動体108を挟んで、水平側基準部Ehに設けられた平坦面109に載置されており、平坦面109は、第1水平方向に垂直に設けられている。また、それぞれの転動体108は、例えば、球体であり、図示しないリテーナにより互いの相対位置が保たれながら、自在に回転することができる。
【0109】
さらに、凸状部107Lと水平側基準部Ehとの間には、凸状部107Lの平坦面109に対する相対的な動きを所定の範囲で許容しつつ規制する規制部111が設けられている。つまり、規制部111は、凸状部107Lの平坦面109に対する相対的な平行移動、回転、第1水平方向の移動を所定の範囲で許容しつつ規制する。
【0110】
また、規制部111は、例えば、次のような係合部111a、111bにより構成され、凸状部107Lの周囲に、複数(好ましくは、3つ以上)、設けられている。より具体的には、係合部111aは、凸状部107Lから外側に突き出ており、係合部111bは、水平側基準部Ehに設けられて、係合部111aの第1水平方向の一方側で凸状部107Lに向かって伸びている。
【0111】
また、転動体108は、それぞれの規制部111が有する係合部111bの根元の間で、転がりつつ、平坦面109に対して相対的に移動することができる。さらに、係合部111a、111b同士が係合することにより、凸状部107Lの平坦面109に対する相対的な動きが規制される。
【0112】
以上の構成により、副地盤連動部102は、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの第1水平方向の変位に伴い、地盤Eとともに、回転することなく第1水平方向に移動することができる。なお、凸状部107Lについては、後で、更に詳述する。
【0113】
次に、副建造物付属部103は、軸部105に螺合するネジ穴112U、112Lを具備しており、軸部105に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制されるものである(
図18等参照。)。そして、副建造物付属部103は、地盤Eの第1水平方向への変位に伴い、軸部105が回転することなく第1水平方向に移動することで、軸部105や建造物に対して回転する。
以下、副建造物付属部103について、更に詳述する。
【0114】
副建造物付属部103は、次の一方側、他方側挟持部103U、103Lを具備する。すなわち、一方側、他方側挟持部103U、103Lは、建造物に固定された被挟持部113の第1水平方向の一方側、他方側それぞれに配置されて被挟持部113を挟持する。また、一方側、他方側挟持部103U、103Lは、それぞれ、ネジ穴112U、112Lを具備して軸部105に螺合し、軸部105に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制される。さらに、被挟持部113には、軸部105を通す孔113aが設けられており、孔113aの第1水平方向の一方側、他方側それぞれの側でネジ穴112U、112Lと軸部105とが螺合している。
【0115】
より具体的には、一方側挟持部103Uは、ネジ穴112Uの軸方向の両端それぞれで外周側に伸びる一方側、他方側フランジ114、115と、一方側、他方側フランジ114、115間に一方側、他方側フランジ114、115よりも径小に設けられた筒部116とを有し、ネジ穴112Uは、一方側、他方側フランジ114、115および筒部116を貫通している。
また、被挟持部113の第1水平方向の一方側には、一方側挟持部103Uを回転可能に収容する収容部材117が固定されている。収容部材117には、一方側挟持部103Uが回転可能に収容される収容領域118Uが設けられている。
【0116】
収容領域118Uは、一方側挟持部103Uの形状に応じた形状を有する。
すなわち、収容領域118Uは、収容部材117の第1水平方向の一方側に開口するとともに一方側フランジ114を回転可能に収容する一方側大径領域118Ua、収容部材117の第1水平方向の他方側に開口するとともに他方側フランジ115を回転可能に収容する他方側大径領域118Ub、および、一方側、他方側大径領域118Ua、118Ubを接続するとともに筒部116を回転可能に収容する中間小径領域118Ucを有する。
【0117】
ここで、一方側大径領域118Uaでは、一方側フランジ114の外周側、第1水平方向の他方側それぞれの側にラジアル軸受120、スラスト軸受121が組み付けられ、一方側フランジ114の第1水平方向の一方側には空間が形成されている。また、他方側大径領域118Ubでは、他方側フランジ115の外周側、第1水平方向の一方側それぞれの側にラジアル軸受120、スラスト軸受121が組み付けられ、他方側フランジ115の第1水平方向の他方側には空間が形成されている。
【0118】
さらに、中間小径領域118Ucでは、筒部116の外周側にラジアル軸受120が組み付けられている。
以上により、一方側挟持部103Uは、軸部105が第1水平方向に移動しても、軸部105に対して回転可能、かつ、建造物に対して第1水平方向に移動不能に保持される。
【0119】
一方、他方側挟持部103Lも、一方側挟持部103Uと同様の一方側、他方側フランジ114、115、および、筒部116を有し、ネジ穴112Lは、一方側、他方側フランジ114、115および筒部116を貫通している。
また、他方側挟持部103Lの収容領域118Lは、被挟持部113に固定された凸状部107Uに設けられている。そして、収容領域118Lは、他方側挟持部103Lの形状に応じた形状を有する。
【0120】
すなわち、収容領域118Lは、凸状部107Uの第1水平方向の一方側に開口するとともに一方側フランジ114を回転可能に収容する一方側大径領域118La、凸状部107Uの第1水平方向の他方側に開口するとともに他方側フランジ115を回転可能に収容する他方側大径領域118Lb、および、一方側、他方側大径領域118La、118Lbを接続するとともに筒部116を回転可能に収容する中間小径領域118Lcを有する。
【0121】
そして、一方側大径領域118Laでは、一方側フランジ114の外周側、第1水平方向の他方側それぞれの側にラジアル軸受120、スラスト軸受121が組み付けられ、一方側フランジ114の第1水平方向の一方側には空間が形成されている。また、他方側大径領域118Lbでは、他方側フランジ115の外周側、第1水平方向の一方側それぞれの側にラジアル軸受120、スラスト軸受121が組み付けられ、他方側フランジ115の第1水平方向の他方側には空間が形成されている。
【0122】
さらに、中間小径領域118Lcでは、筒部116の外周側にラジアル軸受120が組み付けられている。
以上により、他方側挟持部103Lは、軸部105が鉛直方向に移動しても、軸部105に対して回転可能、かつ、建造物に対して第1水平方向に移動不能に保持される。なお、凸状部107Uについては、後で、更に詳述する。
【0123】
さらに、横揺れ抑制機1Bは、次の副吸収部126を備える。すなわち、副吸収部126は、所定の弾性部127の弾性変形により、水平側基準部Ehの第1水平方向への変位に伴う衝撃を吸収するものであり、次の凹状部128、および、上記した凸状部107U、107Lを含む凸状部107を有する(
図15、
図16および
図19等参照。)。以下、副吸収部126を詳述する。
【0124】
まず、凹状部128は、弾性部127を具備するとともに、第1水平方向の一方側、他方側いずれかの側に向かって窄むように窪む凹空間129を、自身が有する内側面130により形成する。そして、凹状部128では、弾性部127の弾性変形により、凹空間129が外側に拡大したり、内側に縮小したりする(
図16および
図23等参照。)。
次に、凸状部107は、凹空間129が窄む側と同じ側に向かって窄むように突き出る凸部131を具備し、凸部131が凹空間129に嵌まるように、凹状部128の第1水平方向の一方側または他方側に配置される。
【0125】
ここで、内側面130は、第1水平方向の一方側、他方側いずれかの側に向かって窄むように傾斜しており、凸部131の外側面132も、内側面130と同じ側に向かって窄むように傾斜している。
そして、凹状部128または凸状部107の少なくとも一方に、他方に向かう第1水平方向の力が作用すると、内側面130には、外側面132から、内側面130の傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し、内側面130の傾斜に垂直かつ外側に向かう力により、凹空間129が外側に拡大するとともに、弾性部127が弾性変形する。
【0126】
また、凹状部128は、内側面130を形成する内側面形成部134を、複数、具備し、弾性部127は、内側面形成部134ごとに装備されている。そして、それぞれの弾性部127は、対応する内側面形成部134を外側から、自身の弾性力により内側に付勢する。
以下、凹状部128、凸状部107および内側面形成部134等に関し、実施例3の具体的態様を説明する。
【0127】
実施例3の凹状部128は、第1水平方向の一方側、他方側それぞれに、凹空間129を形成する。
以下の説明では、凹状部128において第1水平方向の一方側、他方側それぞれの側に形成される凹空間129を凹空間129U、129Lと呼ぶことがある。
凹空間129Uは第1水平方向の他方側に向かって窄むように窪み、凹空間129Lは第1水平方向の一方側に向かって窄むように窪む。
【0128】
また、凸状部107は、凹状部128の第1水平方向の一方側、他方側の両側に配置されている。
以下の説明では、凹状部128の第1水平方向の一方側、他方側それぞれの側に配置される凸状部107を凸状部107U、107Lと呼ぶことがある。また、凸状部107U、107Lそれぞれが具備する凸部131を凸部131U、131Lと呼ぶことがある。
凸部131Uは、第1水平方向の他方側に向かって窄むように突き出ており、凹空間129Uに嵌まっている。また、凸部131Lは、第1水平方向の一方側に向かって窄むように突き出ており、凹空間129Lに嵌まっている。
【0129】
以下、凹状部128、凸状部107U、107Lそれぞれの構成を詳述する。
なお、以下の説明では、凹空間129U、129Lを形成する内側面130をそれぞれ内側面130U、130Lと呼ぶことがある。また、凸部131U、131Lの外側面132をそれぞれ外側面132U、132Lと呼ぶことがある。
【0130】
凹状部128は、上記した弾性部127および内側面形成部134を有する。
弾性部127は、円錐バネの一種である、いわゆるタケノコバネである(以下、弾性部127をタケノコバネ127と記載することがある。)。タケノコバネ127は、所定の厚さを有する帯状の金属板を同心状に、かつ、自身の径方向に隣り合う周同士が自身の軸方向において部分的に重なりを形成するように円錐状に成形されたものである。
【0131】
なお、径方向に隣り合う周同士は、金属板の表面に塗布された潤滑剤を介して接触して重なりを形成している。
そして、タケノコバネ127は、自身の軸方向長さが鉛直方向または第2水平方向に伸縮自在となるように組み付けられている(
図22参照。)。ここで、タケノコバネ127は、円錐の頂側の端が内側面形成部134に支持され、円錐の底側の端が後記する油圧シリンダ136の先端側筒体137に支持されて鉛直方向または第2水平方向に保持されている。
【0132】
内側面形成部134は、例えば、4角錐台の形状を呈する部材であり(
図20等参照。)、4つの側面134a、134b、134c、134dの内、対向する2つの側面134a、134cが同じ形状の等脚台形であり、他の対向する2つの側面134b、134dが同じ形状の長方形である。また、等脚台形の頂側、底側それぞれの端面134e、134fは両方とも長方形である。なお、内側面形成部134の材料は、金属、木材、樹脂またはセメントなどである。
【0133】
端面134eの互いに平行な2辺の組み合わせの内、一方の組み合わせの2辺は、側面134a、134cの頂側の辺に等しく、他方の組み合わせの2辺は、側面134b、134dの短辺に等しい。また、端面134fの互いに平行な2辺の組み合わせの内、一方の組み合わせの2辺は、側面134a、134cの底側の辺に等しく、他方の組み合わせの2辺は、側面134b、134dの短辺に等しい。
【0134】
また、端面134fには、タケノコバネ127や先端側筒体137を収容する収容穴138が設けられている(
図20および
図21等参照。)。収容穴138は、端面134fに開口するとともに端面134fに垂直な軸を有する円筒部138aと、円筒部138aと同軸であって円筒部138aの底面から端面134e側に向かって窄む円錐台部138bとを有する。
【0135】
また、円錐台部138bの底面には、後記するロッド139が通る孔が設けられている。そして、円筒部138aの底面の内、円錐台部138bの開口の周囲は、先端側筒体137の移動を規制するストッパとして機能する。また、円錐台部138bの底面の内、ロッド139が通る孔の開口の周囲は、タケノコバネ127の頂側の端を支持するバネ座として機能する。
【0136】
また、凹状部128は、同一形状の内側面形成部134を、4つ、具備しており、さらに、内側面形成部134ごとに弾性部127を具備している(
図22等参照。)。
以下の説明では、4つの内側面形成部134それぞれを内側面形成部134A、134B、134C、134Dと呼ぶことがある。また、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれに装備された弾性部127(タケノコバネ127)を、弾性部127A(タケノコバネ127A)、弾性部127B(タケノコバネ127B)、弾性部127C(タケノコバネ127C)、弾性部127D(タケノコバネ127D)と呼ぶことがある。
【0137】
そして、凹状部128は、内側面形成部134A、134B、134C、134D、および、弾性部127A、127B、127C、127Dとともに、次の、ロッド139、および、締結部140を有する。
【0138】
まず、ロッド139は、円柱状の棒体であり、ロッド139の先端部は、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの収容穴138を通って円錐台部138bの底面を貫通している。
以下の説明では、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれに組み付けられたロッド139を、ロッド139A、139B、139C、139Dと呼ぶことがある(
図22および
図24等参照。)。
【0139】
そして、ロッド139A、139B、139C、139Dは、それぞれ内側面形成部134A、134B、134C、134Dの中心軸と同軸となるように組み付けられている。
また、締結部140は、ロッド139A、139B、139C、139Dの先端部が締結されており、ロッド139A、139B、139C、139Dを一体化する。
【0140】
ここで、締結部140には、ロッド139A、139B、139C、139Dが次のような配置を実現するように締結されている。
すなわち、ロッド139A、139Cが同軸であり、かつ、ロッド139B、139Dが同軸である。また、ロッド139A、139Cの軸とロッド139B、139Dの軸とが直交する。
【0141】
さらに、ロッド139A、139Cそれぞれの先端間の距離とロッド139B、139Dそれぞれの先端間の距離とが等しい。なお、ロッド139A、139B、139C、139Dおよび締結部140の一体物は、ロッド139A、139Cそれぞれの軸が鉛直方向を指向するように、また、ロッド139B、139Dそれぞれの軸が第2水平方向を指向するように組み付けられている。
【0142】
そして、このようなロッド139A、139B、139C、139Dの配置により、内側面形成部134A、134B、134C、134Dは、次のような配置を実現している(
図22等参照。)。
すなわち、内側面形成部134A、134Cは対をなし、それぞれの端面134e同士が鉛直方向に隙間を隔てて互いに平行になるように向かい合っている。同様に、内側面形成部134B、134Dも対をなし、それぞれの端面134e同士が第2水平方向に隙間を隔てて互いに平行になるように向かい合っている。
【0143】
また、内側面形成部134A、134Cの対において形成される隙間と、内側面形成部134B、134Dの対において形成される隙間とは、互いに等しい。さらに、内側面形成部134A、134B、134C、134Dを第1水平方向の一方側から視たときに、内側面形成部134A、134B、134C、134Dは、上記した軸部105の周囲に90°間隔で配置されている。
【0144】
そして、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの側面134bにより、凹空間129Uが形成され、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの側面134dにより、凹空間129Lが形成されている。つまり、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの側面134bが内側面130Uであり、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの側面134dが内側面130Lである。なお、内側面130Uの鉛直方向に対する傾斜角、および、内側面130Lの鉛直方向に対する傾斜角は、軸部105のリード角にできるだけ等しいのが好ましく、一致するのが、最も好ましい。
【0145】
凸状部107Uは、上記したように被挟持部113に固定されており、建造物に対する相対的な配置が変わらない(
図18および
図19等参照。)。
凸状部107Uの具体的な形状は、例えば、次のとおりである。すなわち、凸状部107Uの第1水平方向の一方部は、正方形を断面形状とする扁平な4角柱であり、他方部は、一端が一方部の4角柱の断面形状と同一形状の扁平な4角錐台であって他方側ほど窄んでいる。
【0146】
また、凸状部107Uの一方部、他方部は同軸であり、凸状部107Uの軸は第1水平方向を指向している。さらに、凸状部107Uには、上記した収容領域118Lが凸状部107U自身と同軸に設けられ、収容領域118Lは、凸状部107Uの第1水平方向の一方面、他方面に開口している。
【0147】
そして、4角錐台形状の他方部が凸部131Uをなし、他方部の4つの側面が外側面132Uをなす。ここで、外側面132Uの傾斜は、内側面130Uの傾斜と略一致している。つまり、横揺れ抑制機1Bが建造物と水平側基準部Ehとの間に組み入れられた状態で、凸状部107Uの4角錐台形状の他方部の側面は、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの側面134bと同じ傾斜を有する。
【0148】
凸状部107Lは、上記したように、軸部105を保持して副地盤連動部102を構成し、さらに、水平側基準部Ehとの間に転動体108が介挿され、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの第1水平方向の変位に伴い、地盤Eとともに、回転することなく第1水平方向に移動することができる(
図17および
図19等参照。)。
【0149】
凸状部107Lの具体的な形状は、例えば、次のとおりである。すなわち、凸状部107Lの第1水平方向の他方部は、正方形を断面形状とする扁平な4角柱であり、一方部は、他方端が他方部の4角柱の断面形状と同一形状の扁平な4角錐台であって一方側ほど窄んでいる。また、凸状部107Lの一方部、他方部は同軸であり、凸状部107Lの軸は第1水平方向を指向しており、凸状部107Uと同軸である。そして、4角錐台形状の一方部が凸部131Lをなし、一方部の4つの側面が外側面132Lをなす。
【0150】
ここで、外側面132Lの傾斜は、内側面130Lの傾斜と略一致している。つまり、横揺れ抑制機1Bが建造物と水平側基準部Ehとの間に組み入れられた状態で、凸状部107Lの4角錐台形状の一方部の側面は、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれの側面134dと同じ傾斜を有する。
【0151】
なお、軸部105は、凸状部107Lと同軸となるように、凸状部107に固定されている。
そして、凸状部107Lから第1水平方向の一方側に突き出た軸部105は、締結部140に設けられた孔140aを通って他方側挟持部103Lのネジ穴112Lに螺合し、さらに、孔113aを通って一方側挟持部103Uのネジ穴112Lに螺合している(
図18および
図19等参照)。
【0152】
さらに、横揺れ抑制機1Bは、次の副調整部141を備える。
すなわち、副調整部141は、弾性部127の弾性力を調整するものであり、次のような油圧シリンダ136および油圧回路141Cを有する(
図21および
図22等参照。)。
【0153】
油圧シリンダ136は、弾性部127ごとに装備されるものであり、ピストン142を具備する。
油圧回路141Cは、複数の油圧シリンダ136から選択した少なくとの2つの油圧シリンダ136それぞれに形成された油圧室を連通する。
【0154】
油圧シリンダ136は、上記した先端側筒体137、ならびに、以下に説明するピストン142、後端側筒体143および閉止栓144等から構成されており、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれに装着されている。以下、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれに装着されている油圧シリンダ136をそれぞれ油圧シリンダ136A、136B、136C、136Dと呼ぶことがある。
【0155】
なお、油圧シリンダ136の構成に関し、油圧シリンダ136Aを取り上げて説明するが(
図21等参照)、油圧シリンダ136B、136C、136Dの構成は、油圧シリンダ136Aと同様である。
【0156】
ピストン142は、板状に設けられており、油圧シリンダ136Aにおいてロッド139Aに直交するように一体化している。また、ピストン142は、後端側筒体143内に収容されており、第1水平方向への横揺れの発生に伴い、後端側筒体143内を相対的に移動する。
先端側筒体137、後端側筒体143は有底の円筒体であり、閉止栓144は円板状に設けられている。先端側筒体137、後端側筒体143および閉止栓144は、後端側筒体143の開口を閉止栓144により閉鎖するとともに、先端側筒体137の底部と閉止栓144とを接続することで一体化され、油圧シリンダ136Aの外郭体145をなす。
【0157】
そして、先端側筒体137の開口側、つまり、外郭体145の先端側を内側面形成部134Aの収容穴138に挿入することで、油圧シリンダ136Aが内側面形成部134Aに装着されている。
【0158】
また、後端側筒体143の内周側は、作動油が導入され、さらに、ピストン142により、先端側、後端側の油圧室146A、146Bに液密的に区画されている。ここで、先端側筒体137、後端側筒体143それぞれの底部および閉止栓144には、ロッド139Aを液密的に通す孔が設けられている。このため、ピストン142が外郭体145に対して鉛直方向に相対的に移動することにより、油圧室146A、146B相互の液密性を確保しつつ、油圧室146Aの拡大および油圧室146Bの縮小、または、油圧室146Aの縮小および油圧室146Bの拡大を実現することができる。
【0159】
また、上記したタケノコバネ127は、先端側筒体137の内周側と収容穴138とに跨って収容され、先端側筒体137の底部は、タケノコバネ127の底側の端のバネ座として機能する。また、ロッド139の内、ピストン142よりも先端側の部分は、タケノコバネ127の内周側を貫通するように組み付けられる。
【0160】
油圧回路141Cは、次のような油路141a、141b、141c、141dを有する(
図22等参照。)。すなわち、油路141aは、油圧シリンダ136Aの油圧室146Aと油圧シリンダ136Cの油圧室146Bとを連通し、油路141bは、油圧シリンダ136Aの油圧室146Bと油圧シリンダ136Cの油圧室146Aとを連通する。また、油路141cは、油圧シリンダ136Bの油圧室146Aと油圧シリンダ136Dの油圧室146Bとを連通し、油路141dは、油圧シリンダ136Bの油圧室146Bと油圧シリンダ136Dの油圧室146Aとを連通する。
【0161】
なお、ロッド139の後端と、後端側筒体143の底部との間にもタケノコバネ127とは別のタケノコバネ148がセットされている(
図21等参照。)。タケノコバネ148は、後記するように水平側基準部Ehの第1水平方向の一方側への変位により外郭体145が外側に移動した後、水平側基準部Ehの一方側への変位が治まったときに、外郭体145を内側へ付勢する復元部として機能する。
【0162】
〔実施例3の動作〕
実施例3の免震装置1の動作を説明する。
まず、地震等が発生していない平常時には、横揺れ抑制機1Bは、水平側基準部Ehと建造物とを締結する締結部として機能する。具体的には、副地盤連動部102の軸部105と、副建造物付属部103である一方側、他方側挟持部103U、103Lとが螺合して静止している(
図16等参照。)。
【0163】
また、一方側、他方側挟持部103U、103Lは、軸部105に螺合しつつ、それぞれ第1水平方向の一方側、他方側から被挟持部113を挟んで挟持している。さらに、規制部111により、凸状部107Lの平坦面109に対する相対的な動きが規制されている。
このような機能により、平常時の横揺れ抑制機1Bは、水平側基準部Ehと建造物とを締結する締結部として機能する。
【0164】
次に、地震が発生して第1水平方向に横揺れが発生した場合、横揺れ抑制機1Bは、次のように動作して建造物を免震する。すなわち、第1水平方向に横揺れが発生して水平側基準部Ehが第1水平方向の一方側へ変位し始めると、軸部105の建造物に対する一方側への移動、および、一方側、他方側挟持部103U、103Lの回転が始まる。
【0165】
また、副吸収部126では、水平側基準部Ehの第1水平方向の一方側への変位開始に応じて、凸状部107Lが一方側へ移動し始めるので、外側面132Lから内側面130Lに、内側面130Lの傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し始める。そして、この力により、凹状部128を構成する内側面形成部134A、134B、134C、134Dは、一方側に移動するとともに、軸部105を中心として外側へ移動する。また、内側面形成部134A、134B、134C、134Dの外側への移動により、凹空間129U、129Lが外側に拡大する(
図22および
図23等参照。)。
【0166】
さらに、内側面形成部134A、134B、134C、134Dが外側へ移動すると、副調整部141では、油圧シリンダ136A、136C間、および、油圧シリンダ136B、136D間で作動油が流れることで、内側面形成部134A、134B、134C、134Dそれぞれにセットされたタケノコバネ127の弾性力が調整される。
【0167】
具体的には、油圧回路141Cにおいて、油路141aを経由して油圧シリンダ136Aの油圧室146Aから油圧シリンダ136Cの油圧室146Bへ作動油が流れ、油路141bを経由して、油圧シリンダ136Cの油圧室146Aから油圧シリンダ136Aの油圧室146Bへ作動油が流れる。
【0168】
また、油路141cを経由して、油圧シリンダ136Bの油圧室146Aから油圧シリンダ136Dの油圧室146Bへ作動油が流れ、油路141dを経由して、油圧シリンダ136Dの油圧室146Aから油圧シリンダ136Bの油圧室146Bへ作動油が流れる。
そして、このような作動油の流れにより、油圧シリンダ136A、136B、136C、136Dそれぞれにおいて外郭体145が外側に移動する。
【0169】
これにより、タケノコバネ127A、127B、127C、127Dに作用する油圧力が調整され、タケノコバネ127A、127B、127C、127Dは水平側基準部Ehの第1水平方向の一方側への変位のレベルに応じた長さまで圧縮される。
つまり、水平側基準部Ehの一方側への変位に応じて、内側面形成部134A、134B、134C、134Dが外側へ移動すると、油圧回路141Cにおいて作動油が流れることで、タケノコバネ127A、127B、127C、127Dの弾性力が調整される。
【0170】
その後、水平側基準部Ehの一方側への変位が治まって凸状部107Lが元の位置に戻り始めると、軸部105が水平方向の他方側への移動を開始する。これにより、一方側、他方側挟持部103U、103Lには一方側への移動時と逆のトルクが加わり始め、一方側、他方側挟持部103U、103Lは一方側への移動時と逆の方向に回転し始める。
【0171】
また、副調整部141では、油圧回路141Cにおいて、上記した流れと逆の方向に作動油が流れ始める。また、油圧シリンダ136A、136B、136C、136Dそれぞれにおいて、タケノコバネ148により、外郭体145が内側に付勢されて移動し始める。さらに、副吸収部126では、内側面形成部134A、134B、134C、134Dは、他方側に移動するとともに、軸部105を中心として内側へ移動する。また、内側面形成部134A、134B、134C、134Dの内側への移動により、凹空間129U、129Lが縮小する。
【0172】
なお、地震発生により地盤Eが第1水平方向以外の方向にも変位しようとする場合、つまり、地震に伴う地盤Eの変位のベクトルが鉛直方向や第2水平方向の成分を含んでいる場合、鉛直方向の変位は、縦揺れ抑制機1Aにより吸収される。また、第2水平方向の変位は、縦揺れ抑制機1Aの規制部11や横揺れ抑制機1Bの規制部111における許容範囲内で吸収される。
【0173】
〔実施例3の効果〕
実施例3の免震装置1は、実施例1の免震装置1に加えて、主に地盤Eの水平方向への変位を吸収する横揺れ抑制機1Bを備え、横揺れ抑制機1Bは、次の副地盤連動部102および副建造物付属部103を備える。
まず、副地盤連動部102は、地盤Eに対する相対的な移動および回転が規制され、地盤Eの第1水平方向の変位に伴い、地盤Eとともに第1水平方向に移動するものであり、次の軸部105を有する。すなわち、軸部105は、外周面にネジ山が設けられたものであり、第1水平方向を指向するように保持される。
【0174】
次に、副建造物付属部103は、軸部105に螺合するネジ穴112U、112Lを具備しており、軸部105に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制されるものである。そして、副建造物付属部103は、地盤Eの第1水平方向への変位に伴い、軸部105が回転することなく第1水平方向に移動することで、軸部105や建造物に対して回転する。
【0175】
これにより、平常時には、副地盤連動部102と副建造物付属部103とのネジ締結構造により、建造物と水平側基準部Ehとの締結を維持することができる。また、地震により水平側基準部Ehが第1水平方向に変位しても、軸部105の第1水平方向への移動に伴って副建造物付属部103が回転することにより、水平側基準部Ehの第1水平方向への変位を吸収することができるとともに、弾性部127を含む副吸収部126の態様にかかわらず、振動を抑制することができる。
このため、弾性部127の態様に関わらず、建造物と水平側基準部Ehとの締結を維持しつつ、建造物の免震を可能にするとともに地震等に伴う振動を抑制することができる。
【0176】
また、副建造物付属部103は、次の一方側、他方側挟持部103U、103Lを具備する。すなわち、一方側、他方側挟持部103U、103Lは、建造物に固定された被挟持部113の第1水平方向の一方側、他方側それぞれに配置されて被挟持部113を挟持する。また、一方側、他方側挟持部103U、103Lは、それぞれ、ネジ穴112U、112Lを具備して軸部105に螺合し、軸部105に対して回転可能となるように保持されるとともに、建造物に対する相対的な移動が規制される。
これにより、副建造物付属部103を、より強固に建造物に一体化することができるので、平常時における建造物と水平側基準部Ehとの締結を強化することができる。
【0177】
また、横揺れ抑制機1Bは、次の凹状部128および凸状部107を有する副吸収部126を備える。
まず、凹状部128は、弾性部127を具備するとともに、自身が有する内側面130により次の凹空間129を形成する。すなわち、凹空間129は、第1水平方向のいずれかの側に向かって窄むように窪む。
【0178】
そして、凹状部128では、弾性部127の弾性変形により、凹空間129が外側に拡大したり、内側に縮小したりする。次に、凸状部7は、次の凸部131が凹空間129に嵌まるように、凹状部128の第1水平方向の一方側または他方側に配置される。すなわち、凸部131は、第1水平方向のいずれかの側に向かって窄むように突き出る。
【0179】
ここで、内側面130は、第1水平方向のいずれかの側に向かって窄むように傾斜しており、凸部131の外側面132も、内側面130と同じ側に向かって窄むように傾斜している。
そして、凹状部128または凸状部107の少なくとも一方に、他方に向かう第1水平方向の力が作用すると、内側面130には、外側面132から、内側面130の傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し、内側面130の傾斜に垂直かつ外側に向かう力により、凹空間129が拡大するとともに、弾性部127が弾性変形する。
【0180】
これにより、水平側基準部Ehが第1水平方向の一方側に変位すると、内側面130には、外側面132から、内側面130の傾斜に垂直かつ外側に向かう力が作用し、内側面130の傾斜に垂直かつ外側に向かう力により、凹空間129が拡大するとともに、弾性部127が弾性変形する。このため、水平側基準部Ehの一方側への変位により凹状部128に加えられたエネルギーは、凹状部128の外側への拡大に分散して弾性部127に吸収され、第1水平方向の振動に費やされる部分が低減する。このため、地震発生時の建造物の第1水平方向への振動を低減して副地盤連動部102や副建造物付属部103にかかる負荷を抑えることができる。
【0181】
なお、実施例3の凹状部128は、第1水平方向の一方側、他方側それぞれの側に、凹空間129U、129Lを形成し、凹状部128の第1水平方向の一方側、他方側それぞれの側に凸状部107U、107Lが配置されている。そして、凸部131Uが凹空間129Uに嵌まり、凸部131Lが凹空間129Lに嵌まっている。
【0182】
これにより、第1水平方向に直列に2か所、凹凸嵌合を形成しているので、地盤Eから第1水平方向に加わったエネルギーを、副吸収部126において、より多く、他の方向へ分散して吸収することができる。このため、地震発生時の建造物の第1水平方向への振動を更に低減して副地盤連動部102や副建造物付属部103にかかる負荷を抑えることができる。
【0183】
さらに、横揺れ抑制機1Bは、次の副調整部141を備える。すなわち、副調整部141は、それぞれの弾性部127の弾性力を調整するものであり、次のような油圧シリンダ136および油圧回路141Cを有する。すなわち、油圧シリンダ136は、弾性部127ごとに装備されるものであり、油圧により駆動されるピストン142を具備し、ピストン142を経由して弾性部127に油圧力を及ぼす。
【0184】
また、油圧回路141Cは、複数の油圧シリンダ136から選択した少なくとの2つの油圧シリンダ136それぞれに形成された油圧室を連通する。
これにより、弾性部127間で弾性力が均等化されるので、副吸収部126によるエネルギーの吸収が内側面130の各部ごとにばらつくのを抑制することができる。このため、副吸収部126によるエネルギーの吸収を安定させることができる。
【0185】
〔変形例〕
本願発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例1、3の免震装置1によれば、内側面30Lと外側面32Lとが直接摺接しているが、内側面30Lと外側面32Lとの間に、転動体を介挿してもよい。同様に、内側面30Uと外側面32Uとの間、内側面130Lと外側面132Lとの間、内側面130Uと外側面132Uとの間にも、転動体を介挿してもよい。
【0186】
また、実施例1、3の免震装置1によれば、地盤連動部2、建造物付属部3および吸収部26は同軸に組み付けられているが、地盤連動部2および建造物付属部3と吸収部26とを異軸に設けてもよく、例えば、地盤連動部2の軸部5を吸収部26の外側に配置してもよい。同様に、副地盤連動部102および副建造物付属部103と副吸収部126とを異軸に設けてもよく、例えば、副地盤連動部102の軸部105を副吸収部126の外側に配置してもよい。
【0187】
さらに、実施例2の免震装置1によれば、地盤連動部2、建造物付属部3およびタケノコバネ27は同軸に組み付けられているが、地盤連動部2および建造物付属部3とタケノコバネ27とを異軸に設けてもよく、例えば、地盤連動部2の軸部5をタケノコバネ27の外側に配置してもよい。
【0188】
また、実施例1〜3の免震装置1によれば、地盤連動部2の軸部5と建造物付属部3のネジ穴12U、12Lとは、直接、螺合していたが、軸部5とネジ穴12U、12Lとの間に球体を入れて、いわゆるボールねじを構成してもよい。同様に、副地盤連動部102の軸部105と、副建造物付属部103のネジ穴112U、112Lとの間に球体を入れて、ボールねじを構成してもよい。
【0189】
また、実施例1〜3の免震装置1によれば、建造物付属部3は、上側、下側挟持部3U、3Lを具備し、上側、下側挟持部3U、3Lそれぞれに軸部5と螺合するネジ穴12U、12Lが設けられていたが、建造物付属部3が有するネジ穴の態様は、このような態様に限定されない。すなわち、ネジ穴を1つのみ有するように建造物付属部3を設けてもよく、ネジ穴を3つ以上有するように建造物付属部3を設けてもよい。
同様に、副建造物付属部103についても、ネジ穴を1つのみ有するように設けてもよく、ネジ穴を3つ以上有するように設けてもよい。
【0190】
また、実施例1、3の免震装置1によれば、調整部41では、油圧シリンダ36A、36C間、および、油圧シリンダ36B、36D間で作動油が流れるように油圧回路41Cが設けられているが、油圧回路41Cの態様は、このような態様に限定されない。例えば、
図25に示すように、油圧シリンダ36A、36B間、油圧シリンダ36B、36C間、油圧シリンダ36C、36D間、および、油圧シリンダ36D、36A間で作動油が流れるように油圧回路41Cを設けてもよい。
【0191】
この場合、油路41a、41b、41c、41dを、以下のように設けてもよい。すなわち、油路41aは、油圧シリンダ36Aの油圧室46Aと油圧シリンダ36Bの油圧室46Bとを連通するように、油路41bは、油圧シリンダ36Bの油圧室46Aと油圧シリンダ36Cの油圧室46Bとを連通するように、油路41cは、油圧シリンダ36Cの油圧室46Aと油圧シリンダ36Dの油圧室46Bとを連通するように、さらに、油路41dは、油圧シリンダ36Dの油圧室46Aと油圧シリンダ36Aの油圧室46Bとを連通するように、設けてもよい。
【0192】
同様に、副調整部141の油圧回路141Cについても、油圧シリンダ136A、136B間、油圧シリンダ136B、136C間、油圧シリンダ136C、136D間、および、油圧シリンダ136D、136A間で作動油が流れるように設けてもよい。
【0193】
また、実施例1〜3の免震装置1によれば、それぞれの実施例における弾性部27はタケノコバネ27であったが、タケノコバネ27に限定されず、タケノコバネ27以外の円錐バネを弾性部27として採用してもよく、円筒状のコイルスプリングを弾性部27として採用してもよい。
同様に、弾性部127についても、タケノコバネ127以外の円錐バネを弾性部127として採用してもよく、円筒状のコイルスプリングを弾性部127として採用してもよい。
【0194】
また、実施例1、2の免震装置1は、横揺れ抑制機1Bを備えず、縦揺れ抑制機1Aのみを備えており、実施例3の免震装置1は、縦揺れ抑制機1A、横揺れ抑制機1Bを1台ずつ備えていたが、縦揺れ抑制機1A、横揺れ抑制機1Bの台数は、このような態様に限定されない。例えば、実施例3の免震装置1に、もう1台、横揺れ抑制機1Bを追加し、追加する横揺れ抑制機1Bを、軸部105が第2水平方向を指向するように組み付けてもよい。
【0195】
また、横揺れ抑制機1Bに関し、凹状部128や凸状部107U、107Lに代えて、タケノコバネ127を水平方向にセットし、タケノコバネ27の水平方向への弾性変形により、地盤Eの水平方向への変位を吸収するようにしてもよい。