(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記制御手段は、上記第1エアレーション工程を開始してから所定時間経過したら、上記第2エアレーション工程を実行することを特徴とする請求項1に記載のアイソレータシステム。
上記除染剤成分の濃度を検出する濃度検出手段を設け、上記制御手段は、上記第1エアレーション工程を開始してから上記濃度検出手段によって検出された濃度が所定値以下となったら、上記第2エアレーション工程を実行することを特徴とする請求項1に記載のアイソレータシステム。
上記加温手段は、外気を上記作業室内に供給する給気手段と、上記作業室に連設された入り口室と、上記作業室内との少なくともいずれか1つ以上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアイソレータシステム。
上記作業室は、アイソレータ内の作業室又はアイソレータに開閉扉を介して連設されたパスボックス内の作業室であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のアイソレータシステム。
上記第1エアレーション工程により上記作業室内の除染剤成分の濃度が1.5ppm以下となったら、上記第2エアレーション工程が実行されることを特徴とする請求項6に記載のエアレーション方法。
上記第2エアレーション工程は、上記作業室内の除染剤成分の濃度が少なくとも0.1ppmとなるまで継続されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のエアレーション方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からアイソレータシステムにおいては、作業室における無菌状態での作業時間をできるだけ長くするために、常にエアレーションに要する時間の一層の短縮化が求められている。
特に再生医療におけるアイソレータの使用では、作業室内で生きた細胞を取り扱うため、エアレーションにより除染剤成分の濃度を0.1ppm以下という極めて低い値まで低下させることが要求される。また、再生医療の作業においては、由来の異なる細胞や組織を扱う場合に、細胞間のクロスコンタミネーションを防止するために作業室を除染するが、多くの細胞や組織を処理するためには、除染やエアレーションに要する時間を短縮する必要がある。
従来の常温(環境温度)のエアを供給するエアレーションでは、通常の1ppm程度まで低下させるために1〜2時間を要し、0.1ppmに到達させるには数時間から十数時間を要する。これに対し、特許文献1のように高い温度のエアを供給する場合は、1時間程度で1ppmまで低下させることができるが、0.1ppmに到達させるにはさらに数時間もの時間を要する。
作業室に供給された除染ガスは、露出されている全ての面やHEPAフィル夕、グローブ等に付着し、それらの素材に浸透する。HEPAフィルタのろ紙やグローブ等の樹脂部分は除染剤成分が浸透(吸着)しやすく、浸透した除染剤成分は徐々に脱離(脱着)して、作業室内に放出される。このように放出される除染剤成分に対し、エアレーションによる換気により作業室内の濃度上昇は抑えられるが、放出が続く限り除染剤成分は検出されるため、0.1ppmといった極めて低い値にまで濃度を低下させるには、素材に残留する除染剤成分を出し切る必要がある。
特許文献1のように供給するエアの温度を高めることで脱着が促進され、放出するスピードは早められるものの、0.1ppm以下になるまで除染剤成分を出し切ろうとすると、数時間以上の時間が必要であった。
本発明はそのような事情に鑑み、従来に比較してエアレーションに要する時間をより短縮化することが可能なアイソレータシステムとアイソレータシステムのエアレーション方法とを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係るアイソレータシステムは、無菌状態に維持される作業室と、該作業室内に
過酸化水素水から生成される除染ガスを供給して作業室内を除染する除染ガス供給手段と、上記作業室内にエアを供給して作業室内の除染剤成分を除去するエアレーションを行うエアレーション手段とを備えたアイソレータシステムにおいて、
上記作業室内のエアの温度を上昇させる加温手段と、該加温手段の作動を制御する制御手段とを設け、該制御手段はエアレーション中に、上記作業室内のエアの温度を上昇させ
てエアレーションを行う第1エアレーション工程と、第1エアレーション工程で上昇された作業室内のエアの温度
よりも低い温度でエアレーションを行う第2エアレーション工程とを実行することを特徴とするものである。
また請求項6に係るアイソレータのエアレーション方法は、無菌状態に維持される作業室内に
過酸化水素水から生成される除染ガスを供給した後、該作業室内をエアレーションして除染剤成分を除去するようにしたアイソレータシステムのエアレーション方法において、
上記作業室内をエアレーションするエアレーション工程は、上記作業室内の温度を上昇させてエアレーションを行う第1エアレーション工程と、該第1エアレーション工程の後に、該第1エアレーション工程で上昇させた作業室内の温度
よりも低い温度でエアレーションを行う第2エアレーション工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1エアレーション工程で作業室内の温度を上昇させて、作業室内に露出する素材に吸着された除染剤成分の脱着を促進させる。そして第2エアレーション工程により作業室内の温度を低下させて、除染剤成分の脱着を抑制し作業室内への放出を阻止する。
このように作業室内の温度を上昇させる第1エアレーション工程を行い、第2エアレーション工程で上昇された温度を低下させると、素材に吸着された除染剤成分が速やかに脱着された後に放出が阻止され、作業室内の除染剤成分の残留濃度を短時間で極めて低い値まで低下させることができ、エアレーションに要する時間を短縮化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、
図1において、アイソレータシステム1は、内部の作業室が無菌状態に維持されるアイソレータ2と、該アイソレータ2の壁面に連設されて内部の作業室が無菌状態に維持されるパスボックス3とを備えている。
上記アイソレータ2の内部とパスボックス3の内部とを区画する壁面4およびそれと対向するパスボックス3の壁面5に開閉扉6、7を開閉自在に設けている。この開閉扉6、7を閉鎖した際には、アイソレータ2の内部とパスボックス3の内部は、それぞれ気密を保持して外部から隔離されるようになっている。
【0009】
上記アイソレータシステム1は、上記アイソレータ2およびパスボックス3のそれぞれの内部に除染ガスを供給して各内部を除染する除染ガス供給手段11を備えている。
上記除染ガス供給手段11は、除染ガスを生成するための除染ガス生成手段12を備えており、該除染ガス生成手段12は、本実施例では過酸化水素水を貯溜した容器13と、過酸化水素水を加熱して蒸発させる蒸発器14と、上記容器13内の過酸化水素水を所要量ずつ徐々に蒸発器14内に供給し滴下させて所要の濃度の除染ガスを生成させるポンプ15とを備えている。
上記除染ガス生成手段12の蒸発器14で生成された除染ガスは、該蒸発器14と上記アイソレータ2内部の作業室とを接続する第1供給通路18を介してアイソレータ2内に供給することができるようになっている。
また上記蒸発器14は第2供給通路19を介してパスボックス3内部の作業室に接続されており、蒸発器14で生成された除染ガスは、第2供給通路19を介してパスボックス3内に供給されるようになっている。
【0010】
図示実施例では、上記アイソレータ2の内部に連通する第1供給通路18は配管21、22によって構成してあり、配管22の途中に開閉弁23を設けてある。上記配管22はアイソレータ2に設けた入り口室24に接続しており、上記第1供給通路18は入り口室24内に設けたHEPAフィルタ25を介してアイソレータ2の内部に連通するようになっている。
また上記入り口室24内には複数のファン26を設けるとともに、アイソレータ2内の上方に整流用のメッシュスクリーン27を設けてあり、上記第1供給通路18を介して入り口室24内に供給された除染ガスをラミナーフローとしてアイソレータ2内の下部に向けて流動させることができるようにしている。
さらに、上記パスボックス3内部の作業室に連通する第2供給通路19は上記配管21と配管31とによって構成してあり、配管31の途中に開閉弁32を設けてある。上記配管31はパスボックス3に設けた入り口室33に接続しており、上記第2供給通路19は入り口室33内に設けたHEPAフィルタ34を介してパスボックス3の内部に連通するようになっている。上記入り口室33にもファン35を設けてある。
上記構成により、上記開閉弁23、32の一方又は双方を開閉することによって、蒸発器14で生成された除染ガスをアイソレータ2とパスボックス3のそれぞれに別個に又は同時に供給することができるようにしてある。
【0011】
上記アイソレータ2内部の作業室は第1循環通路38を介して上記除染ガス生成手段12の蒸発器14に連通させてあり、上記第1供給通路18を介してアイソレータ2内に供給された除染ガスを第1循環通路38を介して上記除染ガス生成手段12の蒸発器14に循環させることができるようにしてある。
同様に、上記パスボックス3内部の作業室は第2循環通路39を介して上記蒸発器14に連通させてあり、上記第2供給通路19を介してパスボックス3内に供給された除染ガスを第2循環通路39を介して上記蒸発器14に循環させることができるようにしてある。
【0012】
図示実施例では、上記アイソレータ2の内部に連通する第1循環通路38は配管41、42によって構成してあり、配管42の途中に開閉弁43を設けるとともに、蒸発器14の隣接位置に除染ガスを送気するためのブロアなどの送風手段44を設けてある。上記配管41はアイソレータ2に設けた出口室45に接続してあり、上記第1循環通路38は出口室45内に設けたHEPAフィルタ46を介してアイソレータ2の内部に連通するようになっている。
また、上記パスボックス3に連通する第2循環通路39は配管48、49と上記配管42とによって構成してあり、配管49の途中に開閉弁50を設けてある。上記配管48はパスボックス3内に設けたHEPAフィルタ51を介してパスボックス3の内部に連通するようになっている。
【0013】
次に、上記アイソレータ2およびパスボックス3の各内部に残留した除染ガスを排除するエアレーション手段は、上記アイソレータ2内のエアレーションを行う第1エアレーション手段55と、パスボックス3内のエアレーションを行う第2エアレーション手段56とを備えている。
上記第1エアレーション手段55は、外気を上記アイソレータ2内に供給する給気手段55Aと、アイソレータ2内の気体を外部に排出する掃気手段55Bとを備えている。
上記給気手段55Aは、上記アイソレータ2の入り口室24に接続して外部に連通させた配管58と、該配管58に外気側から順次設けたヒータ59、ブロワ60および流量調整機能付き開閉弁61とを備えており、開閉弁61を開いてブロワ60を作動させた際には、外気をヒータ59、ブロワ60、開閉弁61および配管58を介して入り口室24に供給し、さらに入り口室24内のHEPAフィルタ25を介してアイソレータ2内に供給することができるようにしてある。
また上記掃気手段55Bは、上記アイソレータ2の出口室45に接続されて外気に連通させた上記配管41と、該配管41に入り口室45側から順次設けた流量調整機能付き開閉弁62、ブロワ63および触媒64とを備えており、開閉弁62を開いてブロワ63を作動させた際には、アイソレータ2内の気体を、HEPAフィルタ46、出口室45、配管41、開閉弁62、ブロワ63および触媒64を介して外部に排出することができるようにしてある。上記触媒64は、除染ガスである過酸化水素成分を捕捉して分解するものである。
【0014】
上記パスボックス3の作業室内のエアレーションを行う第2エアレーション手段56は、外気を上記パスボックス3内に供給する給気手段56Aと、パスボックス3内の気体を外部に排出する掃気手段56Bとを備えている。
上記給気手段56Aと掃気手段56Bは、第1エアレーション手段55の給気手段55Aと掃気手段55Bと同様に構成してあるが、給気手段55Aのブロア60の代わりに入り口室24内に設けた小送風量の上記ファン35を利用するようにしてあり、また掃気手段55Bのブロアに相当する手段を省略するとともに、パスボックス3に接続した配管41を外気に連通させている。
その他の構成は、上記給気手段55Aと掃気手段55Bと同様に構成してあり、同一又は相当する構成部材には、給気手段55Aと掃気手段55Bとに用いた符号に「’」を付して示してある。
【0015】
上記各エアレーション手段55、56は、各給気通路55A、56Aにそれぞれ外気を加温する上述のヒータ59、59’を備えているが、特に容積の大きなアイソレータ2内のエアレーション用エアを加温するために、アイソレータ2の入り口室24内とアイソレータ2の作業室内にそれぞれヒータ66、67を設けてある。
上記各ヒータ59、59’、66、67は制御手段68によって制御されるようになっており、該制御手段68は、以下に詳述するように、タイマー69を利用して、エアレーション中にエアの温度を上昇させる第1エアレーション工程を実行した後、所定時間経過後に、上記第1エアレーション工程で上昇されたエアの温度を低下させる第2エアレーション工程を実行することができるようになっている。
なお、上記制御手段68は上記各ヒータを制御するだけではなく、アイソレータシステム1の運転全体を制御することができるようになっていることは勿論である。
【0016】
以上の構成において、上記アイソレータ2内の作業室とパスボックス3内の作業室とを同時に除染する場合には、パスボックス3の外部に連通される開閉扉7を閉じ、開閉扉6を開放して、アイソレータ2内とパスボックス3内とを相互に連通させる。
この状態において、上記制御手段68に除染開始の指令が与えられると、該制御手段68は除染ガス供給手段11に連通する第1供給通路18の開閉弁23と第2供給通路19の開閉弁32とを開放するとともに、第1循環通路38の開閉弁43と第2循環通路39の開閉弁50を開放する。他方、第1エアレーション手段55と第2エアレーション手段56の各給気手段55A、56Aの開閉弁61、61’が閉鎖されるとともに、各掃気手段55B、56Bの開閉弁62、62’も閉鎖される。
【0017】
この状態で送風手段44が起動されるとともに、除染ガス供給手段11のポンプ15が起動されて容器13内の過酸化水素水が蒸発器14に供給滴下されて蒸発されると、該蒸発器14で除染ガスとして過酸化水素蒸気が生成され、該除染ガスは第1供給通路18を介してアイソレータ2内に供給される。
そして上記アイソレータ2内に供給された除染ガスは、第1循環通路38を介して上記除染ガス供給手段11の蒸発器14に還流され、該蒸発器14で新たに生成された除染ガスと共に再びアイソレータ2内に供給される。このようにして除染ガスがアイソレータ2内に循環供給されて、アイソレータ2の作業室内の除染が実行される。
他方、上記蒸発器14で生成された除染ガスは、第2供給通路19を介してパスボックス3内に供給されるとともに、第2循環通路39を介して上記蒸発器14に還流され、該蒸発器14で新たに生成された除染ガスと共に再びパスボックス3内に供給される。このようにして除染ガスがパスボックス3内に循環供給されて、パスボックス3の作業室内の除染が実行される。
上述の除染工程は、除染ガスを供給する供給工程と、予め設定した量の過酸化水素水を供給したらポンプ15の送液と蒸発器14の加熱とを停止し、送風手段44による送風は維持して作業室内に供給した除染ガスを循環させる保持工程とを有している。
【0018】
上記アイソレータ2およびパスボックス3内の除染が終了したら、上記ポンプ15の送液と蒸発器14の加熱とが停止された状態で、上記第1、第2エアレーション手段55、56が作動されて各部のエアレーションが行われるようになる。
上記制御手段68は、エアレーションを実行する際には、先ず上記アイソレータ2やパスボックス3内の作業室内の温度を上昇させてエアレーションを行う第1エアレーション工程を実行する。
上記第1エアレーション工程では、ヒータ59、59’、66、67が通電されて作動され、エアレーション用のエアを加温する。上記アイソレータ2およびパスボックス3内の除染が終了した時点では、各作業室内の温度は25〜30℃程度の温度となっており、上記各ヒータの制御は、アイソレータ2やパスボックス3内の温度がそれぞれ40〜50℃となるような制御が望ましい。上記アイソレータ2やパスボックス3内の温度は高いほど除染剤成分の脱着が促進されるが、その後、各作業室内を常温(環境温度)まで短時間で低下させるには、加熱温度を50℃程度までに抑えた方が時間的効率が良好となる。
【0019】
そして上記第1エアレーション手段55が作動されると、開閉弁61、62が大開度で開放されるとともに、ブロワ60、63が起動され、外気が給気手段55Aの配管58を介してアイソレータ2内に供給されるとともに、該アイソレータ2内に残留していた除染ガスは掃気手段55Bの配管41を介して外部に排出される。これによりアイソレータ2内のエアレーションが実行されて、加熱されたエアレーション用エアにより除染剤成分の濃度が徐々に低下する。
他方、第2エアレーション手段56が作動されると、開閉弁61’、62’が大開度で開放され、外気が給気手段56Aの配管58’を介してパスボックス3内に供給されるとともに、該パスボックス3内に残留していた除染ガスは掃気手段56Bの配管48を介して外部に排出される。これによりパスボックス3内のエアレーションが実行されて、加熱されたエアレーション用エアにより除染剤成分の濃度が徐々に低下する。
【0020】
上記第1、第2エアレーション手段55、56が作動された際には、上述したように除染ガス供給手段11のポンプ15が停止されるので、過酸化水素水が蒸発器14に供給されて除染ガスが生成されることはないが、送風手段44は継続されて運転されている。
すると、上述したように第1、第2エアレーション手段55、56の作動によりアイソレータ2内やパスボックス3内の除染剤成分の濃度が低下するので、濃度の低下した除染ガスが第1、第2循環通路38、39および第1、第2供給通路18、19を介して除染ガス供給手段11内で循環されるようになる。これにより、除染ガス供給手段11を構成する蒸発器14や上記第1、第2循環通路38、39や第1、第2供給通路18、19内に残留する除染剤成分の濃度も低下して、除染ガス供給手段11のエアレーションが行われる。
【0021】
上記制御手段68は、第1エアレーション工程を開始するのと同時にタイマー69を作動させて、第1エアレーション工程の実行時間をカウントする。
そして第1エアレーション工程を開始してから所要時間が経過したことをタイマー69によって確認すると、制御手段68は、全てのヒータ59、59’、66、67の作動を停止させることにより、第1エアレーション工程の各ヒータ59、59’、66、67によって上昇されたエアの温度を、外部の雰囲気温度(常温)によって低下させる第2エアレーション工程を実行する。その後、第2エアレーション工程を開始してから所定時間が経過すれば、エアレーション作業を終了する。
上記タイマー69の設定時間は、予め、素材の除染剤成分の残留量を示す濃度が、高温では除染剤成分の脱着が続くが常温では脱着されなくなるような濃度となるまで低下する時間を計測することによって、設定してある。
また上記外部の雰囲気温度(常温)は、アイソレータシステム1を設置する施設の環境温度であって、空調により概ね20〜30℃範囲に設定されており、したがって上記第2エアレーション工程におけるエアレーション用エアの温度は、20〜30℃(常温)の範囲であればよい。
【0022】
上記制御手段68はエアレーション作業が終了したら、給気手段55A、56Aの開閉弁61、62と掃気手段55B、56Bの開閉弁61’、62’の開度をそれぞれ適切な開度に調節する。これにより、ブロワ60とファン35から供給される外気によりアイソレータ2の作業室内の圧力とパスボックス3の作業室内の圧力とが外圧に対して陽圧に維持されるようになる。
この陽圧は、上記アイソレータ2とパスボックス3の使用中だけではなく、除染工程やエアレーション工程を含めて常時陽圧となるように管理されている。なお、上記開閉弁61、62、61’、62’の開度の調整によって陽圧を得るだけではなく、上記ブロワ60やファン35の風量を調整することによって得るようにしてもよい。
【0023】
本実施例では、上述したようにエアレーションを第1エアレーション工程と第2エアレーション工程とによって実行しているので、いずれか一方だけのエアレーション工程だけでエアレーションを実行する場合に比較して、エアレーションに要する時間を短縮することができる。
図5はエアレーションを第1エアレーション工程だけで、つまりエアレーション用のエアの温度を常に40〜50℃に上昇させた状態でエアレーションを行った場合の実験結果を示した図である。
同図において、曲線Aは温度(℃)を、曲線Bは除染剤成分の濃度(ppm)を示している。同図から理解されるように、エアレーションの開始から時間が経過するにつれて除染剤成分の濃度は低下するが、120分経過しても0.4ppmの濃度があり、その後の濃度の低下は極めて緩慢で、要求される0.1ppmの濃度を得るには極めて長い時間が必要となる。
他方、
図6はエアレーションを第2エアレーション工程だけで、つまりエアレーション用のエアの温度を常に25℃前後の常温(アイソレータシステム1の外気温度)に維持した状態でエアレーションを行った場合の実験結果を示した図である。
同図においても、エアレーションの開始から時間が経過するにつれて除染剤成分の濃度は低下するが、105分経過しても0.4ppmの濃度があり、その後の濃度の低下は極めて緩慢で、270分が経過しても0.2ppmの濃度があった。このように常温のエアでエアレーションを行って、要求される0.1ppmの濃度を得るには極めて長い時間が必要となる。
【0024】
図5、
図6に対し、
図2〜
図4はエアレーションを第1エアレーション工程と第2エアレーション工程とによって実行したもので、
図3、
図4、
図5はそれぞれ第1エアレーション工程によるエアの加温時間を30分、45分、60分としたものである。
図2の場合においては、第1エアレーション工程によるエアの加熱温度は40〜43℃程度であり、その後の第2エアレーション工程によるヒータの通電停止によりエアの温度は急速に低下してから徐々に常温となる。そして
図2の場合、45分後に除染剤成分の濃度は0.3ppmまで低下し、その後60分〜90分の間は0.2ppmを維持したが、105分後には要求される0.1ppmの濃度まで低下した。
図3の場合、第1エアレーション工程によるエアの加熱温度は42〜47℃程度であり、その後の第2エアレーション工程によるヒータの通電停止によりエアの温度は急速に低下してから徐々に常温となる。そして
図3の場合、60分後に除染剤成分の濃度は要求される0.1ppmまで低下し、その後も継続して75分まで0.1ppmを維持した。
図4の場合、第1エアレーション工程によるエアの加熱温度は42〜47℃程度であり、その後の第2エアレーション工程によるヒータの通電停止によりエアの温度は急速に低下してから徐々に常温となる。そして
図4の場合、75分後に除染剤成分の濃度は要求される0.1ppmまで低下し、その後も継続して90分まで0.1ppmを維持した。
上記第2エアレーション工程は、いずれも作業室内の除染剤成分の濃度が0.1ppmとなるまで継続されて実行されており、また第2エアレーション工程を終了してエアレーション作業を完了した後に、除染剤成分の濃度が上昇することはなかった。
このように、本実施例においては、エアの温度を一定にしてエアレーション作業を実行した
図5、
図6の場合に比較して、極めて短時間でエアレーション作業を完了することができた。
なお、本実施例では濃度が0.1ppmまで低下することでエアレーション作業を終了しているが、さらに、0.1ppmを下回るまで継続するようにしてもよい。
【0025】
ところで、上記アイソレータ2を使用中に、例えば細胞を扱うための器具や容器等をアイソレータ2内に搬入する際には、開閉扉6を閉じた状態でパスボックス3の開閉扉7を開放し、上記器具や容器等をパスボックス3内に搬入すればよい。
そして器具や容器等をパスボックス3内に搬入して開閉扉7を閉鎖したら、上記第2供給通路19と第2循環通路39とを開放し、この状態で除染ガス供給手段11を起動する。これにより除染ガス供給手段11で生成した除染ガスを第2供給通路19、パスボックス3、第2循環通路39および除染ガス供給手段11間で循環させて、パスボックス3の作業室内および上記器具や容器等の外表面を除染することができる。
上記パスボックス3の作業室内および器具や容器等の外表面を除染したら、除染ガス供給手段11のポンプ15を停止させて蒸発器14の加熱を停止した状態で、気体を第2供給通路19、パスボックス3および第2循環通路39との間で循環させながら、第2エアレーション手段56を作動させる。
【0026】
上記第2エアレーション手段56が作動されると、開閉弁61’、62’が開放されるので外気が給気手段56Aを介してパスボックス3内に供給されるとともに、該パスボックス3内に残留していた除染ガスは掃気手段56Bを介して外部に排出される。これによりパスボックス3内のエアレーションが実行されるとともに、除染ガス供給手段11のエアレーションも実行される。
このエアレーションの際においても、上記制御手段68によりヒータ59’の制御が行われて上記第1エアレーション工程と第2エアレーション工程のエアレーションが実行される。
この後、上記エアレーションが終了したら、第2エアレーション手段56の開閉弁61’、62’の開度がそれぞれ適切な開度に調節され、ファン35から供給される外気によりパスボックス3内の圧力が陽圧に維持される。
そしてこの状態となったら、上記開閉扉6を開放して、パスボックス3内の上記器具や容器等をアイソレータ2内に搬入することができる。
【0027】
ところで上記実施例では、タイマー69により第1エアレーション工程を開始してから所要時間経過後に第2エアレーション工程に移行するようにしているが、タイマー69の代わりに、
図1の想像線で示すように、掃気手段55Bの配管41に、触媒64よりも上流側位置に上記除染剤成分の濃度を検出する濃度検出手段70を設け、該濃度検出手段70で検出される濃度に基づいて上記第1エアレーション工程から第2エアレーション工程に移行するようにしてもよい。この濃度検出手段70は、配管41に設けることに限定されるわけではなく、除染剤成分の濃度を検出することができればどこであってもよい。
ところで、
図2の第1エアレーション工程が終了する30分後の濃度は1.6ppm、
図3の第1エアレーション工程が終了する45分後の濃度は1.2ppm、
図4の第1エアレーション工程が終了する60分後の濃度は0.9ppmとなっており、第2エアレーション工程を開始する際の濃度が1.6ppmの場合には、その後に濃度が0.1ppmまで低下するのに、他の
図3、
図4の場合に比較して時間が掛かることになる。
他方、
図3、
図4の比較では、濃度が0.9ppmまで低下するのを待って(60分経過するのを待って)第2エアレーション工程を開始しても、濃度が1.2ppmとなった45分という短時間の後に、直ちに第2エアレーション工程を開始しても、その後に濃度が0.1ppmまで低下する時間は同一となっている。
このような点を総合的に勘案すると、濃度検出手段70で検出される濃度が1.5ppmから0.5ppmの範囲となったら第2エアレーション工程を開始することが望ましく、より望ましくは濃度が1.2ppmから0.8ppmの範囲となったら第2エアレーション工程を開始することがより効果的である。
また、上記タイマー69により第2エアレーション工程を開始するよう制御する場合にも、これらの濃度範囲となる時間に基づいて時間設定を行うことができる。
【0028】
なお上記実施例では、ヒータ59、59’を給気手段55A、56Aに、ヒータ66を上記アイソレータ2の作業室に連設された入り口室24内に、さらにヒータ67をアイソレータ2の作業室内に設けているが、これに限定されるものではなく適宜の箇所に設ければよい。また上記作業室内のエアの温度を上昇させる加温手段としてヒータを用いているが、これに限定されるものでもなく、エアレーション用のエアの温度を上昇させることができれば、いかなる手段であってもよい。
さらに上記実施例では、エアレーション作業をそれぞれ1回の第1エアレーション工程と第2エアレーション工程とから構成しているが、第1エアレーション工程と第2エアレーション工程との組み合わせを複数回実行するようにしてもよい。