(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0010】
図1は、センサ装置の構成の一例を示す図である。センサ装置200は、物体の近接と周囲光の照度の両方をセンシング可能なセンサ装置の一例である。センサ装置200は、発光素子11と、センサ回路100とを備える。センサ装置200は、例えば、発光素子11とセンサ回路100とを樹脂等の被覆部でパッケージしたモジュール品である。センサ装置200は、例えば、スマートフォンなどの携帯型情報機器に搭載される。
【0011】
センサ回路100は、物体の近接と周囲光の照度の両方をセンシング可能なセンサ回路の一例である。センサ回路100は、例えば、チップ上に形成された半導体集積回路である。センサ回路100の具体例として、パッケージされていないベアチップが挙げられる。
【0012】
センサ回路100は、照度センサ20、近接センサ30、データレジスタ63、判定回路40を備える。なお、以下の説明において、照度センサ(Ambient Light Sensor)を「ALS」、近接センサ(Proximity Sensor)を「PS」と略すことがある。
【0013】
照度センサ20は、可視光に感度を有するALS用受光素子を有し、照度センサ20周囲から到来する周囲光をALS用受光素子で受光する。そして、照度センサ20は、ALS用受光素子で受光した周囲光の照度を検出し、検出した照度に対応するアナログの照度検出データをAD(Analog-to-digital)変換する。そして、照度センサ20は、AD変換後のデジタルの照度検出データを出力する。デジタルの照度検出データは、ALS用のデータレジスタ63に格納される。
【0014】
判定回路40は、例えば、ALS用のデータレジスタ63に格納された照度検出データが、所定のハイレベル側閾値よりも大きいことが検出された場合、検出結果出力端子INTのレベルをアクティブレベル(例えば、ローレベル)に変更する。又は、判定回路40は、例えば、ALS用のデータレジスタ63に格納された照度検出データが、所定のローレベル側閾値よりも小さいことが検出された場合、検出結果出力端子INTのレベルをアクティブレベル(例えば、ローレベル)に変更する。判定回路40は、検出結果出力端子INTのレベルをアクティブレベルに変更した後に所定のリセット条件が成立した場合、検出結果出力端子INTのレベルを非アクティブレベル(例えば、ハイレベル)に変更する。
【0015】
近接センサ30は、発光パルス12が発光素子11から放射されるように発光素子11を駆動し、発光素子11から放射される発光パルス12が物体で反射することにより到来する反射光13をPS用受光素子で受光する。そして、近接センサ30は、PS用受光素子で受光した反射光13の光強度を検出し、検出した光強度に対応するアナログの光強度検出データをAD変換する。そして、近接センサ30は、AD変換後のデジタルの光強度検出データを出力する。デジタルの光強度検出データは、PS用のデータレジスタ63に格納される。
【0016】
判定回路40は、例えば、PS用のデータレジスタ63に格納された光強度検出データが、所定のハイレベル側閾値よりも大きいことが検出された場合、検出結果出力端子INTのレベルをアクティブレベル(例えば、ローレベル)に変更する。又は、判定回路40は、例えば、PS用のデータレジスタ63に格納された光強度検出データが、所定のローレベル側閾値よりも小さいことが検出された場合、検出結果出力端子INTのレベルをアクティブレベル(例えば、ローレベル)に変更する。判定回路40は、検出結果出力端子INTのレベルをアクティブレベルに変更した後に所定のリセット条件が成立した場合、検出結果出力端子INTのレベルを非アクティブレベル(例えば、ハイレベル)に変更する。
【0017】
このように、近接センサ30は、PS用受光素子で受光した反射光13の光強度に基づいて、当該物体の近接を検出する。近接センサ30が近接を検出する対象物には、人体の全部又は部分(例えば、手、指、顔など)が含まれる。
【0018】
発光素子11の具体例として、発光ダイオードなどが挙げられる。発光素子11は、例えば、赤外線の発光パルス12を出力する。
図1は、発光素子11がセンサ装置200内部でセンサ回路100に外付けで接続されている形態を示すが、発光素子11は、近接センサ30に内蔵されてもよい。また、
図1は、発光ダイオードのカソードが近接センサ30に接続されて、近接センサ30が発光ダイオードから電流を吸い込んで駆動する形態を示す。しかしながら、発光ダイオードのアノードが近接センサ30に接続されて、近接センサ30が発光ダイオードに電流を流し出して駆動する形態も考えられる。
【0019】
ALS用受光素子又はPS用受光素子の具体例として、フォトダイオードが挙げられる。受光素子は、照度センサ20と近接センサ30とで共用されてもよい。
【0020】
センサ回路100は、センサ回路100又はセンサ装置200の特性の個体ばらつきを補正するためのトリミングデータを書き込み可能なNVM(Non-Volatile Memory)ブロック70を備える。NVMブロック70は、例えば、一度書き込まれたデータを消すことができないワンタイムプログラマブルな不揮発性メモリである。センサ回路100は、ウエハ出荷状態で、照度センサ20の照度検出感度の調整と近接センサ30の光強度検出感度の調整とが可能である(詳細後述)。
【0021】
NVMブロック70へのアクセスは、ポインタアドレスにてトリミングモードレジスタ61を指定することで可能となる。トリミングモードレジスタ61は、NVMブロック70へのトリミングデータの書き込みを実行するためのトリミングモードを指定するレジスタである。書き込み制御回路50は、トリミングモードレジスタ61がアクセスされた時点(ポインタレジスタにトリミングモードレジスタ61のアドレスが書き込まれた時点)で、通常モードからトリミングモードに切り替える。一つ又は複数の所定の端子からトリミングデータが入力されて、トリミングが実行される。NVMブロック70に書き込まれたトリミングデータは、センサ回路100の電源投入時に、読み出し論理回路60により自動的に読み出され、トリミングレジスタ62に格納される。
【0022】
図2は、トリミングデータが書き込まれる不揮発性メモリのセル構成の一例を示す図である。
図2は、NVMブロック70のセル構成の一例を示す。NVMブロック70は、複数(例えば、9個)のセルを有し、各セルに、ALS感度調整、PS感度調整、書き込み防止機能が割り当てられている。
図2の場合、セル番号1〜4のセルには、照度センサ20の照度検出感度の個体差ばらつきを調整するためのトリミングデータが書き込まれる。セル番号5〜8のセルには、近接センサ30の光強度検出感度の個体差ばらつきを調整するためのトリミングデータが書き込まれる。セル番号9のセルには、製品出荷後においてユーザによるNVMブロック70への誤書き込みを防止するため、トリミングモードへの移行を不可とするための書き込み禁止ビットが書き込まれる。
【0023】
図3は、センサ回路のトリミングモード時の端子機能の一例を示す図である。センサ回路100は、6つの端子を備える。電源端子VDDは、電源の正極側が接続される端子であり、グランド端子GNDは、電源の負極側が接続される端子である。駆動端子IRDRは、通常動作時、近接センサ30が発光素子11を駆動する信号の出力に使用される。検出結果出力端子INTは、通常動作時、照度センサ20と近接センサ30の少なくとも一方の検出結果の出力に使用される。入出力端子SDAは、通常動作時、所定の通信規格のデータの入出力に使用される。クロック端子SCLは、通常動作時、所定の通信規格のクロックの入力に使用される。所定の通信規格の具体例として、I
2Cなどが挙げられる。なお、「通常動作時」とは、「通常モード時」と同義である。
【0024】
書き込み制御回路50は、トリミングモードレジスタ61がアクセスされた時点(ポインタレジスタにトリミングモードレジスタ61のアドレスが書き込まれた時点)で、通常モードからトリミングモードに切り替える。電源端子VDDは、トリミングモード時、プログラミング用電源端子VDDPとして使用される。クロック端子SCLは、トリミングモード時、フローティング端子となる。駆動端子IRDRは、トリミングモード時、プログラミング用パルス印加端子として使用される。検出結果出力端子INTは、プログラミング用クロック印加端子として使用される。入出力端子SDAは、プログラミング用リセット印加端子として使用される。なお、「プログラミング用」とは、「書き込み用」と同義である。
【0025】
図1において、書き込み制御回路50は、通常モードにおいて、クロック端子SCLから入力されるクロックと入出力端子SDAから入力される所定の書き込み移行指令信号とに基づいて、所定の端子にNVMブロック70を接続させる。例えば、書き込み制御回路50は、スイッチ回路80とマルチプレクサ回路85と制御することにより、4つの端子IRDR,INT,SDA,SCLのうちトリミングデータの入力端子として予め決められた一つ又は複数の端子に、NVMブロック70を接続する。
【0026】
スイッチ回路80は、スイッチ81〜84を含む。スイッチ81〜84は、4つの端子とNVMブロック70との間の接続のオンとオフとを、端子毎に切り替える。マルチプレクサ回路85は、4つのマルチプレクサ(MUX)86〜89を含む。MUX86〜89は、NVMブロック70の接続先を、読み出し論理回路60と4つの端子とのいずれか一方に、端子毎に切り替える。
【0027】
図4は、通常モードからトリミングモードに移行する場合の一例を示すタイミングチャートである。
【0028】
書き込み制御回路50は、通常モードにおいて、クロック端子SCLから入力されるクロックと入出力端子SDAから入力される所定の書き込み移行指令信号とに基づいて、スイッチ81〜83をオンさせ、スイッチ84をオフさせ、MUX86〜88を切り替える。これにより、端子IRDR,INT,SDAは、NVMブロック70に接続されるが、トリミングモードで使用されない端子SCLは、NVMブロック70に接続されることを防止することができる。
【0029】
書き込み制御回路50は、トリミングモード時、端子CLOCK(端子INT)がローレベルの状態で端子RESET(端子SDA)がハイレベルからローレベルに遷移した場合、NVMブロック70内のセル番号1のセルを、書き込み可能なセルとして、選択する。書き込み制御回路50は、端子RESETがローレベルからハイレベルに遷移した後の状態において、端子CLOCKの立ち上がりエッジの都度、NVMブロック70内の次のセル番号のセルを、書き込み可能なセルとして、昇順に選択する。書き込み制御回路50によってセルが選択された状態で端子PULSE(端子IRDR)がハイレベルのとき、その選択されたセルにトリミングデータが書き込まれる。
【0030】
図1において、読み出し論理回路60は、電源投入時に、NVMブロック70に書き込まれたトリミングデータを読み出す際、マルチプレクサ回路85のMUX86〜89を制御することによって、自身をNVMブロック70と接続する。読み出し論理回路60は、NVMブロック70と接続された状態で、トリミングデータをトリミングレジスタ62に格納する。照度センサ20の照度検出感度と近接センサ30の光強度検出感度は、トリミングレジスタ62に格納されたトリミングデータに応じて調整される。
【0031】
ここで、NVMブロック70は、書き込み時及び読み出し時のみにアクティブである。そこで、書き込み制御回路50は、書き込み完了後にスイッチ71をオフさせる。あるいは、読み出し論理回路60は、読み出し完了後にスイッチ71をオフさせる。これにより、NVMブロック70は非アクティブとなり、NVMブロック70への電源供給は遮断されるので、センサ回路100の消費電力を低減することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態によれば、ウエハ状態(センサ回路100の状態)では、端子IRDR,INT,SDA,SCLのいずれかを使って、NVMブロック70の書き込みが可能となる。また、センサ装置200の外部端子とセンサ回路100の端子とが接続されている場合、組み立て後のモジュール状態(センサ装置200の状態)でも、NVMブロック70の書き込みが各外部端子から可能となる。センサ装置200は、外部端子IRDR1、IRDR2、INT1、SDA1,SCL1、VDD1、GND1を備える。センサ装置200の各外部端子は、図示のように、センサ回路100の各端子に接続されている。センサ装置200の各外部端子は、センサ回路100及び発光素子11を被覆する被覆部201(
図6参照)に被覆されずに露出している。
【0033】
また、書き込み制御回路50は、書き込み禁止ビットが最後のセル番号9(
図2参照)のセルに書き込まれている場合、スイッチ回路80を非アクティブに固定することで、端子IRDR,INT,SDA,SCLを経由するデータ書き込みを禁止できる。
【0034】
図5は、近接センサによって検出された光強度を補正する光強度補正回路の一例を示す図である。
図6は、センサ装置が当該センサ装置を使用する電子機器に搭載された形態の一例を示す図である。
【0035】
図6において、センサ装置200は、電子機器の基板300に実装され、当該電子機器のカバーガラス301によって覆われる。発光素子11から出射された発光パルス12は、カバーガラス301を透過して、カバーガラス301の外側の物体15で反射し、反射光として、センサ回路100の受光素子で受光される。この際、発光素子11から出射された発光パルス12がカバーガラス301の内側で反射し、その反射光14が受光素子に入力される現象(光学クロストーク)が発生する場合がある。光学クロストークが発生すると、AD変換後のデジタルの光強度検出データには、正のオフセットが負荷されるため、近接度合いの検出精度が低下する。
【0036】
そこで、センサ回路100は、AD変換後のデジタルの光強度検出データに負のオフセットを付加する減算回路65を備える。減算回路65は、AD変換後のデジタルの光強度検出データから、オフセットキャンセルレジスタ64に格納されたデータを減算する。これにより、光学クロストークが発生しても、減算回路65は、AD変換後のデジタルの光強度検出データに対して負のオフセットを付加できるため、AD変換後のデジタルの光強度検出データの精度が高まる。つまり、光学クロストークの影響を低減することができる。
【0037】
なお、近接センサアナログ部31とは、例えば、受光素子と、受光素子から出力される電流を電圧に変換する電流−電圧変換回路と、電流−電圧変換回路の出力電圧を増幅する増幅器とを含む。ADコンバータ32は、当該増幅器から出力されるアナログの光検出データを、デジタルの光検出データに変換する。
【0038】
以上、センサ回路及びセンサ装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0039】
例えば、受光素子は、フォトダイオード以外の他の光電素子でもよく、例えば、フォトトランジスタでもよい。
【0040】
また、センサ回路又はセンサ装置が搭載される製品は、携帯型情報機器以外の他の製品でもよく、例えば、自動車や家電機器などでもよい。
【0041】
また、感知対象の物体は、手又は指等の人体の一部に限られず、操作棒又はタッチペン等の操作入力補助具でもよい。