(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(吸着剤)
開示の吸着剤は、金属と、配位子と、カーボンナノチューブとを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記吸着剤は、多孔質である。
前記吸着剤は、多孔性金属錯体とカーボンナノチューブとが複合化した材料である。
前記多孔性金属錯体とは、金属イオンと、アニオン性配位子とを含有する多孔性材料である。前記多孔性金属錯体(MOF)は、多孔性配位高分子(PCP)とも呼ばれることがある。
【0015】
二酸化炭素の電解還元においては、触媒を兼ねる電極上に二酸化炭素を保持すること、及び反応場へ電子を供給することが、反応の効率を高める上で重要になってくる。
本発明者らは、吸着剤を用いて二酸化炭素を保持し、その細孔内や細孔近傍を反応の場とすることが有効であると考えた。吸着量の大きい吸着剤を電極上に配置すれば、そこに二酸化炭素を吸着又は保持した状態で二酸化炭素を電解でき、還元反応の高効率化が期待できるためである。
本発明者らは、吸着性能の高い多孔性金属錯体に着目した。多孔性金属錯体として代表的な、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を配位子とするM
2(dobdc)(M=Ni,Mg,Co等)は、二酸化炭素を大量、選択的に吸着し、さらに触媒活性点となり得るオープンメタルサイトを有することから好適であると期待される。しかし、これをはじめとした多くの多孔性金属錯体は、絶縁体であり、電子を細孔内に伝達させるのが困難である。
そこで、本発明者らは、多孔性金属錯体の導電性を高めるために、検討を重ねた。導電性を高める従来の手段として、導電性の材料を添加する方法がある。その方法として、例えば、多孔性金属錯体粉末表面に金属微粒子をスパッタ法又は析出還元法によって担持させる方法、多孔性金属錯体とカーボン系導電性フィラーとを混合する方法が考えられる。しかし、これらの方法では、導電性の材料と接触して電気が流れるのは多孔性金属錯体粉末表面のみとなり、効果は限定的なものとなってしまう。細孔内を反応の場とするためには、多孔性金属錯体粉末内部にまで電子を伝達させる必要がある。
そこで、本発明者らは、更に検討を重ねた結果、多孔性金属錯体と、多孔性金属錯体の中心金属に結合可能な官能基を有するカーボンナノチューブとを複合化することにより、二酸化炭素の保持性に優れ、かつ導電性にも優れる吸着剤が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
<金属>
前記金属としては、例えば、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属は、金属錯体におけるいわゆる中心金属である。
【0017】
<配位子>
前記配位子としては、前記金属に配位可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン配位子などが挙げられる。
【0018】
前記アニオン配位子としては、例えば、以下のアニオンが挙げられる。
・フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン
・テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンなどの無機酸イオン
・トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオンなどのスルホン酸イオン
・ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、吉草酸イオン、カプロン酸イオン、エナント酸イオン、シクロヘキサンカルボン酸イオン、カプリル酸イオン、オクチル酸イオン、ペラルゴン酸イオン、カプリン酸イオン、ラウリン酸イオン、ミリスチン酸イオン、ペンタデシル酸イオン、パルミチン酸イオン、マルガリン酸イオン、ステアリン酸イオン、ツベルクロステアリン酸イオン、アラキジン酸イオン、ベヘン酸イオン、リグノセリン酸イオン、α−リノレン酸イオン、エイコサペンタエン酸イオン、ドコサヘキサエン酸イオン、リノール酸イオン、オレイン酸イオンなどの脂肪族モノカルボン酸イオン
・安息香酸イオン、2,5−ジヒドロキシ安息香酸イオン、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸イオン、2,6−ジヒドロキシ−1−ナフトエ酸イオン、4,4’−ジヒドロキシ−3−ビフェニルカルボン酸イオンなどの芳香族モノカルボン酸イオン
・ニコチン酸イオン、イソニコチン酸イオンなどの複素芳香族モノカルボン酸イオン
・1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートイオン、フマレートイオンなどの脂肪族ジカルボン酸イオン
・1,3−ベンゼンジカルボキシレートイオン、5−メチル−1,3−ベンゼンジカルボキシレートイオン、1,4−ベンゼンジカルボキシレートイオン、1,4−ナフタレンジカルボキシレートイオン、2,6−ナフタレンジカルボキシレートイオン、2,7−ナフタレンジカルボキシレートイオン、4,4’−ビフェニルジカルボキシレートイオンなどの芳香族ジカルボン酸イオン
・2,5−チオフェンジカルボキシレート、2,2’−ジチオフェンジカルボキシレートイオン、2,3−ピラジンジカルボキシレートイオン、2,5−ピリジンジカルボキシレートイオン、3,5−ピリジンジカルボキシレートイオンなどの複素芳香族ジカルボン酸イオン
・1,3,5−ベンゼントリカルボキシレートイオン、1,3,4−ベンゼントリカルボキシレートイオン、ビフェニル−3,4’,5−トリカルボキシレートイオンなどの芳香族トリカルボン酸イオン
・1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシレートイオン、[1,1’:4’,1’’]ターフェニル−3,3’’,5,5’’−テトラカルボキシレートイオン、5,5’−(9,10−アントラセンジイル)ジイソフタレートイオンなどの芳香族テトラカルボン酸イオン
・イミダゾレートイオン、2−メチルイミダゾレートイオン、ベンゾイミダゾレートイオンなどの複素環化合物のイオン
ここで、アニオン性配位子とは金属イオンに対して配位する部位がアニオン性を有する配位子を意味する。
【0019】
これらのなかでも、アニオン性配位子としては、カルボキシレート基を有するものが好ましい。すなわち、脂肪族モノカルボン酸イオン、芳香族モノカルボン酸イオン、複素芳香族モノカルボン酸イオン、脂肪族ジカルボン酸イオン、芳香族ジカルボン酸イオン、複素芳香族ジカルボン酸イオン、芳香族トリカルボン酸イオン及び芳香族テトラカルボン酸イオンから選ばれるいずれかであることが好ましい。
【0020】
また、前記配位子としては、下記構造式で表される化合物(2,5−ジヒドロキシテレフタル酸)のように、少なくとも1つの芳香族炭化水素環と、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環に結合する2対のカルボキシル基及び水酸基とを有し、前記2対のカルボキシル基及び水酸基のそれぞれは、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環基における隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合していることが好ましい。そうすることにより、M
2(dobdc)〔M/DOBDC錯体〕と同様に、多孔質構造を形成しやすい。
【化1】
【0021】
前記金属に前記配位子が配位し、多孔質構造を形成した前記多孔性金属錯体としては、例えば、下記文献に記載のM/DOBDC錯体(M=Ni、Mg、Co等)などが知られている。
文献:Dietzel, P. D. C.; Panella, B.; Hirscher, M.; Blom, R.; Fjellvag, H. Chem. Commun. 2006, 959.
文献:Caskey, S. R.; Wong−Foy, A. G.; Matzger, A. J. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 10870−10871.
文献:Dietzel, P. D. C.; Besikiotis, V.; Blom, R. J. Mater. Chem. 2009, 19, 7362−7370.
文献:Liu, J.; Tian, J.; Thallapally, P. K.; McGrail, B. P. J. Phys. Chem. C 2012, 116, 9575−9581.
【0022】
前記多孔性金属錯体の製造方法としては、例えば、下記文献に記載の製造方法などが挙げられる。
文献:Ru−Qiang Zou, Hiroaki Sakurai, Song Han, Rui−Qin Zhong, and Qiang Xu, J. Am. Chem.Soc., 2007, 129, 8402−8403
【0023】
<カーボンナノチューブ>
前記カーボンナノチューブは、前記金属に結合可能な官能基を有する。
【0024】
前記カーボンナノチューブとは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。
前記カーボンナノチューブとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)などが挙げられる。
【0025】
前記官能基としては、前記金属に結合可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0026】
前記吸着剤において、前記官能基は、前記金属と結合していることが好ましい。前記結合としては、例えば、イオン結合、配位結合などが挙げられる。
【0027】
カーボンナノチューブに前記官能基を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、官能基を持たないカーボンナノチューブを混酸に浸漬する方法などが挙げられる。
【0028】
前記吸着剤における前記カーボンナノチューブの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吸着性と導電性とのバランスの点で、0質量%超10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上8質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
【0029】
前記吸着剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する製造方法が好ましい。
【0030】
(吸着剤の製造方法)
開示の吸着剤の製造方法は、加熱工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0031】
<加熱工程>
前記加熱工程は、混合液を加熱する工程である。
【0032】
<<混合液>>
前記混合液は、金属塩と、配位子と、カーボンナノチューブと、水とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、有機溶媒などのその他の成分を含有する。
【0033】
−金属塩−
前記金属塩の金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムなどが挙げられる。
【0034】
前記金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。
【0035】
−配位子−
前記配位子としては、前記金属塩の金属に配位可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン配位子などが挙げられる。
前記配位子としては、開示の前記吸着剤の説明において例示した配位子などが挙げられる。
【0036】
−カーボンナノチューブ−
前記カーボンナノチューブは、前記金属塩の金属に結合可能な官能基を有する。
前記カーボンナノチューブとしては、開示の前記吸着剤の説明において例示したカーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0037】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記配位子を溶解可能な有機溶媒が好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0038】
前記混合液の作製は、以下のように行うことが好ましい。
金属塩と、カーボンナノチューブと、水とを混合して、水に前記カーボンナノチューブを分散させた分散液を得る。次に、得られた前記分散液と、配位子の有機溶媒溶液とを混合して、混合液を得る。
分散は、例えば、超音波を付与することにより行う。そうすることで効率的に分散を行うことができる。
金属塩と配位子とを混合する前に、金属塩とカーボンナノチューブとを混合することにより、カーボンナノチューブの官能基が金属に配位しやすくなる。そうすると得られる吸着剤において、多孔性金属錯体の結晶内にカーボンナノチューブが入り込み、導電性をより向上できる。
【0039】
なお、カーボンナノチューブが官能基を有さないと、カーボンナノチューブが水に分散できず、吸着剤を製造できない。また、カーボンナノチューブが金属に配位しないため、吸着剤の細孔内の導電性の向上も期待できない。
【0040】
前記加熱工程は、いわゆるソルボサーマル法であって、加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100℃〜250℃などが挙げられる。加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1日間〜5日間などが挙げられる。
前記加熱工程は、加圧下で行うことで、常圧での水の沸点よりも高い温度で反応を行うことができる。
【0041】
(二酸化炭素還元用電極)
開示の二酸化炭素還元用電極は、金属含有部材と、吸着剤とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0042】
<金属含有部材>
前記金属含有部材としては、その表面に二酸化炭素を還元可能な金属を有する部材であれば、その材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属含有部材を用いた二酸化炭素の還元は、通常、前記金属含有部材に通電された際に起こる。前記還元により、二酸化炭素は、ギ酸ないし一酸化炭素、ホルムアルデヒド、メタノール、メタンと、有用性の高い物質へと変化する。
【0043】
前記金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素を多電子還元する能力の点で、銅、銀、金、亜鉛、インジウムが好ましい。
【0044】
前記金属含有部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
【0045】
前記金属含有部材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それ自体が二酸化炭素を還元可能な金属で構成されていてもよいし、芯材表面に、二酸化炭素を還元可能な金属の薄膜が配された構造であってもよい。
前記芯材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属製芯材、樹脂製芯材、ガラス製芯材などが挙げられる。前記金属製芯材は、二酸化炭素を還元可能な金属であってもよいし、二酸化炭素を還元可能な金属でなくてもよい。
前記薄膜としては、例えば、メッキ膜、スパッタ膜などが挙げられる。
【0046】
<吸着剤>
前記吸着剤は、開示の前記吸着剤である。
前記吸着剤は、前記金属含有部材の表面に配される。
【0047】
ここで、前記二酸化炭素還元用電極の一例を図を用いて説明する。
図1は、二酸化炭素還元用電極1の断面模式図である。
図2の二酸化炭素還元用電極1は、金属含有部材2の表面に吸着剤3が層状に配置されている。
【0048】
前記吸着剤は、導電性に優れている。そのような吸着剤が前記金属含有部材の表面に配されていることにより、前記金属含有部材に付与された電子が前記吸着剤の反応場である細孔内又は細孔近傍へ伝達される。
また、前記吸着剤は、吸着性に優れている。そのため、前記二酸化炭素還元用電極は、細孔内等に二酸化炭素を多量に吸着、保持できる。
【0049】
前記吸着剤を、前記金属含有部材の表面に配する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記吸着剤を含有する塗布物を前記金属含有部材に塗布する方法、前記吸着剤自体を前記金属含有部材に吹き付ける方法などが挙げられる。
【0050】
前記塗布する方法に使用する前記塗布物は、前記吸着剤と、接着成分とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記接着成分は、導電性を有することが好ましい。そのような成分としては、例えば、カーボンペースト、導電性樹脂などが挙げられる。
前記塗布物における、前記吸着剤と、前記接着成分との割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
前記吹き付ける方法としては、例えば、エアロゾルデポジションなどが挙げられる。
【0052】
(二酸化炭素還元装置)
開示の二酸化炭素還元装置は、二酸化炭素還元用電極をカソード側の電極として有する。
【0053】
前記二酸化炭素還元装置の反応の一例を以下に示す。
前記二酸化炭素還元装置のアノード側では、例えば、アノード電極に照射された光エネルギーを利用して、以下に示す水の分解が生じる。
H
2O → 1/2O
2 + 2H
+ +2e
−
一方、前記二酸化炭素還元装置のカソード側では、例えば、以下に示す二酸化炭素の還元が生じる。
CO
2 + 2H
+ + 2e
− → HCOOH
トータルの反応式としては、例えば、以下のようになる。
H
2O + CO
2 → HCOOH + 1/2O
2
生成するギ酸は、例えば、濃縮され回収される。
【0054】
<第一の態様>
開示の二酸化炭素還元装置の第一の態様は、二酸化炭素還元用電極をカソード側の電極として有し、更に必要に応じて、カソード槽、アノード槽、プロトン透過膜などのその他の部材を有する。
前記二酸化炭素還元用電極は、開示の前記二酸化炭素還元用電極である。
【0055】
<<カソード槽>>
前記カソード槽は、前記二酸化炭素還元用電極を備える。
【0056】
<<アノード槽>>
前記アノード槽は、アノード電極を有し、更に必要に応じて、その他の部を有する。
アノード電極及びカソード電極に対して外部電源を用いて通電して行う通常の電解還元における前記アノード電極の材質としては、例えば、Ptなどが挙げられる。
一方、アノード電極に光を照射して行う二酸化炭素の電解還元(所謂人工光合成)における前記アノード電極の材質としては、例えば、水の酸化分解が可能な光励起材料や多接合半導体などが挙げられる。前記光励起材料としては、例えば、窒化物半導体層を具備するアノード電極などが挙げられる。
【0057】
<<プロトン透過膜>>
前記プロトン透過膜は、前記カソード槽と前記アノード槽との間に挟まれている。
前記プロトン透過膜は、前記カソード槽内の電解液と、前記アノード槽内の電解液とが混合することを防ぐ。
【0058】
前記プロトン透過膜は、ほぼプロトンのみがプロトン透過膜を通過し、かつ他の物質がプロトン透過膜を通過できないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。
なお、ナフィオンは、炭素−フッ素からなる疎水性テフロン(登録商標)骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖から構成されるパーフルオロカーボン材料である。具体的には、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルフォニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体である。
【0059】
<<その他の部材>>
前記その他の部材としては、例えば、第1電解液、第2電解液、二酸化炭素供給部材、電源、光源などが挙げられる。
【0060】
−第1電解液−
前記第1電解液は、前記カソード槽内に収容される。
前記第1電解液としては、例えば、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0061】
前記第1電解液における電解質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2mol/L以上が好ましく、1mol/L以上がより好ましい。
【0062】
−第2電解液−
前記第2電解液は、前記アノード槽内に収容される。
前記第2電解液としては、例えば、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0063】
前記第2電解液における電解質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2mol/L以上が好ましく、1mol/L以上がより好ましい。
【0064】
−二酸化炭素供給部材−
前記二酸化炭素供給部材としては、前記カソード槽に二酸化炭素を供給する部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0065】
−電源−
前記電源としては、直流電流を印加可能な部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0066】
−光源−
前記光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キセノンランプなどが挙げられる。
前記光源は、アノード電極に光を照射して行う二酸化炭素の電解還元(所謂人工光合成)において、前記アノード電極に光を照射するために用いられる。
【0067】
ここで、開示の二酸化炭素還元装置の第一の態様の一例を図を用いて説明する。
図2は、二酸化炭素還元装置100Aの断面模式図である。
図2の二酸化炭素還元装置100Aは、カソード槽110と、アノード槽120と、プロトン透過膜130と、二酸化炭素供給部材140と、定電圧電源装置150と、参照電極160とを有する。
カソード槽110とアノード槽120との間には、プロトン透過膜130が挟まれている。
カソード槽110には、第1電解液112が収容されている。そして、カソード槽110内において、二酸化炭素還元用電極1と、参照電極160とが、第1電解液112に浸されている。
アノード槽120には、第2電解液122が収容されている。そして、アノード槽120内において、アノード電極121が、第2電解液122に浸されている。
【0068】
二酸化炭素供給部材140は、例えば、中空の棒状部材であり、その一方の先端が第1電解液112に浸っており、第1電解液112に二酸化炭素を供給する。
そのため、第1電解液112には二酸化炭素が溶解している。
【0069】
二酸化炭素還元装置100Aにおいては、定電圧電源装置150により、カソード電極である二酸化炭素還元用電極1と、アノード電極121との間に電圧が印加される。そうすると、アノード側では、水の酸化分解が生じ、一方、カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、吸着剤3の作用により、金属含有部材2の表面に二酸化炭素を保持できる。更に、吸着剤3の導電性が高められている。そのため、二酸化炭素の還元を効率的に行うことができる。
【0070】
図3は、二酸化炭素還元装置100Bの断面模式図である。
図3の二酸化炭素還元装置100Bは、カソード槽110と、アノード槽120と、プロトン透過膜130と、二酸化炭素供給部材140と、光源170とを有する。
カソード槽110とアノード槽120との間には、プロトン透過膜130が挟まれている。
カソード槽110には、第1電解液112が収容されている。そして、カソード槽110内において、二酸化炭素還元用電極1が、第1電解液112に浸されている。
アノード槽120には、第2電解液122が収容されている。そして、アノード槽120内において、アノード電極121が、第2電解液122に浸されている。アノード電極121は、二酸化炭素還元用光化学電極である。
【0071】
二酸化炭素供給部材140は、例えば、中空の棒状部材であり、その一方の先端が第1電解液112に浸っており、第1電解液112に二酸化炭素を供給する。
そのため、第1電解液112には二酸化炭素が溶解している。
【0072】
二酸化炭素還元装置100Bにおいては、光源170からの光がアノード電極121に照射されたアノード槽120では、水の酸化分解が生じる。その反応によって、導線180により接続されたアノード電極121とカソード電極である二酸化炭素還元用電極1との間に起電力が生じる。その起電力により、カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、吸着剤3の作用により、金属含有部材2の表面に二酸化炭素を保持できる。更に、吸着剤3の導電性が高められている。そのため、二酸化炭素の還元を効率的に行うことができる。
【0073】
<第二の態様>
開示の二酸化炭素還元装置の第二の態様は、アノード電極と、保液膜と、プロトン透過膜と、カソード電極とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0074】
<<アノード電極>>
前記アノード電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
アノード電極及びカソード電極に対して外部電源を用いて通電して行う通常の電解還元における前記アノード電極の材質としては、例えば、Ptなどが挙げられる。
一方、アノード電極に光を照射して行う二酸化炭素の電解還元(所謂人工光合成)における前記アノード電極の材質としては、例えば、水の酸化分解が可能な光励起材料や多接合半導体などが挙げられる。前記光励起材料としては、例えば、窒化物半導体層を具備するアノード電極などが挙げられる。
【0075】
<<保液膜>>
前記保液膜としては、電解液を保持可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、層状の吸水材などが挙げられる。前記層状の吸水材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、層状の多孔体などが挙げられる。
前記保液膜としては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、ユニチカ株式会社製の高機能多孔板「ユニベックスSB」などが挙げられる。係る多孔板は、ポリエステル繊維からなる吸水性の多孔板である。
【0076】
前記保液膜の形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0077】
<<プロトン透過膜>>
前記プロトン透過膜は、例えば、前記保液膜と、前記カソード電極との間に挟まれている。
前記プロトン透過膜は、前記保液膜に保持された電解液が、前記カソード電極と接触することを防ぐ。
【0078】
前記プロトン透過膜は、ほぼプロトンのみがプロトン透過膜を通過し、かつ他の物質がプロトン透過膜を通過できないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。
なお、ナフィオンは、炭素−フッ素からなる疎水性テフロン(登録商標)骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖から構成されるパーフルオロカーボン材料である。具体的には、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルフォニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体である。
【0079】
<<カソード電極>>
前記カソード電極は、開示の前記二酸化炭素還元用電極である。
前記カソード電極において、前記吸着剤は、少なくとも前記プロトン透過膜側の前記金属含有部材の表面に配されることが好ましい。
【0080】
<<その他の部材>>
前記その他の部材としては、例えば、電解液、電源、光源などが挙げられる。
【0081】
−電解液−
前記電解液は、前記保液膜に保持される。
前記電解液としては、例えば、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0082】
前記電解液における電解質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2mol/L以上が好ましく、1mol/L以上がより好ましく、2mol/L以上が特に好ましい。
【0083】
−電源−
前記電源としては、直流電流を印加可能な部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0084】
−光源−
前記光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キセノンランプなどが挙げられる。
前記光源は、アノード電極に光を照射して行う二酸化炭素の電解還元(所謂人工光合成)において、前記アノード電極に光を照射するために用いられる。
【0085】
ここで、開示の二酸化炭素還元装置の第二の態様の一例を図を用いて説明する。
図4は、二酸化炭素還元装置10Aの断面模式図である。
二酸化炭素還元装置10Aは、アノード電極12と、保液膜13と、プロトン透過膜14と、カソード電極である二酸化炭素還元用電極1とをこの順で有する。更に、定電圧電源装置15を有する。
二酸化炭素還元用電極1においては、金属含有部材2の表面(片面)に吸着剤3が層状に配置されている。
アノード電極12は保液膜13と接しており、保液膜13はプロトン透過膜14と接しており、プロトン透過膜14は二酸化炭素還元用電極1の吸着剤3と接している。
保液膜13には、電解液が保持されている。
【0086】
二酸化炭素還元装置10Aにおいては、定電圧電源装置15により、二酸化炭素還元用電極1と、アノード電極12との間に電圧が印加される。そうすると、アノード側では、水の酸化分解が生じ、一方、カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、吸着剤3の作用により、金属含有部材2の表面に二酸化炭素を保持できる。更に、吸着剤3の導電性が高められている。そのため、二酸化炭素の還元を効率的に行うことができる。
更に、電解液が保液膜13に保持されているため、電解液への二酸化炭素の溶解、及び電解液への生成物の溶解が少ない。加えて、プロトン透過膜14により、電解液と吸着剤との接触が防がれているため、吸着剤の細孔へ電解液が進入することを防ぐことができる。したがって、反応場への二酸化炭素の供給、及び反応場からの生成物の回収を効率的に行うことができる。
【0087】
図5は、二酸化炭素還元装置10Bの断面模式図である。
二酸化炭素還元装置10Bは、アノード電極12と、保液膜13と、プロトン透過膜14と、カソード電極である二酸化炭素還元用電極1とをこの順で有する。更に、光源16を有する。
二酸化炭素還元用電極1においては、金属含有部材2の表面(片面)に吸着剤3が層状に配置されている。
アノード電極12は保液膜13と接しており、保液膜13はプロトン透過膜14と接しており、プロトン透過膜14は二酸化炭素還元用電極1の吸着剤3と接している。
保液膜13には、電解液が保持されている。
アノード電極12は、二酸化炭素還元用光化学電極である。
【0088】
二酸化炭素還元装置10Bにおいては、光源16からの光がアノード電極12に照射されることで、アノード電極12表面では、水の酸化分解が生じる。その反応によって、導線17により接続されたアノード電極12と二酸化炭素還元用電極1との間に起電力が生じる。その起電力により、カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、吸着剤3の作用により、金属含有部材2の表面に二酸化炭素を保持できる。更に、吸着剤3の導電性が高められている。そのため、二酸化炭素の還元を効率的に行うことができる。
更に、電解液が保液膜13に保持されているため、電解液への二酸化炭素の溶解、及び電解液への生成物の溶解が少ない。加えて、プロトン透過膜14により、電解液と吸着剤との接触が防がれているため、吸着剤の細孔へ電解液が進入することを防ぐことができる。したがって、反応場への二酸化炭素の供給、及び反応場からの生成物の回収を効率的に行うことができる。
【実施例】
【0089】
以下、開示の技術について説明するが、開示の技術は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0090】
(比較例1)
CO
2吸着性能を有する多孔性金属錯体として、Ni
2(dobdc)錯体を合成し、評価した。
具体的には以下の方法で合成し、評価した。
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(下記構造式)のTHF(テトラヒドロフラン)溶液と、酢酸ニッケル四水和物の水溶液とを混合し、耐圧容器を用い、110℃で3日間加熱するソルボサーマル法により、黄色粉末〔Ni
2(dobdc)錯体〕を得た。合成は、以下の文献を参考にして行った。
<文献>
Liu, J.; Tian, J.; Thallapally, P. K.; McGrail, B. P. J. Phys. Chem. C 2012, 116, 9575−9581.
【化1】
【0091】
得られた粉末試料について、CO
2吸着特性をガス/蒸気吸着量測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した結果、
図6の吸着等温線が得られた。
また、この粉末試料を直径5mm、厚さ0.3mmのペレットに成形し、I−V測定装置(キーサイト社製、B2901A)を用いて電気的特性(抵抗、抵抗率、導電率)を測定した結果、表1及び
図7の値を得た。なお、
図7において縦軸は、抵抗率(Ω・cm)を表し、「1.E+01」は、「1×10
1」を表す。
【0092】
(比較例2)
比較例1で合成したNi
2(dobdc)錯体について、この粉末表面に2質量%相当の銅微粒子を以下の還元析出法を用いて担持した。この操作は、以下の文献を参考にして行った。
<文献>
・岩本正和 他:触媒調製ハンドブック(エヌ・ティー・エス), 70 (2011)
【0093】
銅のアセチルアセトン錯体〔Cu(acac)
2〕を2−プロパノールに溶解し、Ni
2(dobdc)錯体を懸濁させ、水素化ホウ素ナトリウムを加えて85℃で30分間加熱撹拌することにより、Cu(acac)
2を還元し、金属銅をNi
2(dobdc)錯体粉末表面に析出させた。
【0094】
得られた粉末試料について、CO
2吸着特性をガス/蒸気吸着量測定装置を用いて測定した結果、
図6の吸着等温線が得られた。また、電気抵抗率を測定した結果、表1及び
図7の値を得た。
【0095】
(実施例1)
比較例1のNi
2(dobdc)錯体を1質量%相当の単層カーボンナノチューブと複合化した試料を、以下の方法で調製した。
単層カーボンナノチューブ(株式会社名城ナノカーボン製)を硫酸3対硝酸1の混酸に1時間浸漬した後、洗浄、乾燥し、カルボキシル基や水酸基等の官能基が修飾されたカーボンナノチューブを得た。
得られたカーボンナノチューブを酢酸ニッケル水溶液に加え、超音波で分散させた。次に、得られた分散液を、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のTHF溶液と混合し、耐圧容器を用い、110℃で3日間加熱するソルボサーマル法により、Ni
2(dobdc)錯体とカーボンナノチューブが均一に複合化した粉末試料を得た。
【0096】
調製した粉末試料について電気抵抗率を測定した結果、表1及び
図7の値が得られ、比較例1と比べて導電性が約8桁向上していることが明らかになった。銅微粒子を担持した比較例2が、比較例1に対し1桁程度しか導電性が向上していないのに対し、開示の吸着剤の方が導電性がより向上していることが示された。
【0097】
(実施例2)
比較例1のNi
2(dobdc)錯体を2質量%相当の単層カーボンナノチューブと複合化した試料を、実施例1と同じ方法で調製した。
【0098】
調製した粉末試料をSEMで観察した(
図8)ところ、錯体粒子内部にカーボンナノチューブが侵入しているのが見られ、配位形成の段階から両者がよりミクロなレベルで結合していることが示唆された。
【0099】
CO
2吸着特性をガス/蒸気吸着量測定装置を用いて測定した結果、
図6の吸着等温線が得られ、比較例1と比べて8割程度のCO
2吸着性能を保持していることが確認された。銅を2質量%添加した比較例2に対しては、約1.5倍の吸着量を示した。また、電気抵抗率を測定した結果、表1及び
図7の値が得られ、比較例1と比べて導電性が約9桁向上していることが明らかになった。多孔性金属錯体に銅微粒子を担持した比較例2に比べ、カーボンナノチューブを多孔性金属錯体と複合化した場合は、吸着性能、及び導電性の双方で優れていることが確認された。
【0100】
(実施例3)
比較例1のNi
2(dobdc)錯体を5質量%相当の単層カーボンナノチューブと複合化した試料を、実施例1と同じ方法で調製した。
【0101】
調製した粉末試料について、CO
2吸着特性をガス/蒸気吸着量測定装置を用いて測定した結果、
図6の吸着等温線が得られ、比較例1と比べて4割強のCO
2吸着性能を保持していることが確認された。比較例2に対しては、9割弱の吸着量を示した。また、電気抵抗率を測定した結果、表1及び
図7の値が得られ、比較例1と比べて導電性が約10桁向上していることが明らかになった。
【0102】
(実施例4)
比較例1のNi
2(dobdc)錯体を2質量%相当の多層カーボンナノチューブと複合化した試料を、以下の方法で調製した。
【0103】
カルボキシル基を修飾した多層カーボンナノチューブ(官能基量>8%、シグマアルドリッチ製)を酢酸ニッケル水溶液に加え、超音波で分散させた。次に、得られた分散液を、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のTHF溶液と混合し、耐圧容器を用い、110℃で3日間加熱するソルボサーマル法により、Ni
2(dobdc)錯体とカーボンナノチューブが均一に複合化した粉末試料を得た。
【0104】
調製した粉末試料について電気抵抗率を測定した結果、表1及び
図7の値が得られ、比較例1と比べて導電性が約7桁向上していることが明らかになった。
【0105】
(実施例5)
比較例1のNi
2(dobdc)錯体を5質量%相当の多層カーボンナノチューブと複合化した試料を、実施例4と同じ方法で調製した。
【0106】
調製した粉末試料について電気抵抗率を測定した結果、表1及び
図7の値が得られ、比較例1と比べて導電性が8桁近く向上していることが明らかになった。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例の比較から、導電性は、同種のカーボンナノチューブでは導入量が多い方が高く、同一質量を導入した場合は、多層より単層のカーボンナノチューブの方が高くなる。このことから、多孔性金属錯体粉末とカーボンナノチューブとの接触面積が導電性に寄与しているものと考えられる。
【0109】
更に以下の付記を開示する。
(付記1)
金属と、前記金属に配位可能な配位子と、前記金属に結合可能な官能基を有するカーボンナノチューブとを含有し、多孔質であることを特徴とする吸着剤。
(付記2)
前記官能基が、前記金属と結合している付記1に記載の吸着剤。
(付記3)
前記官能基が、カルボキシル基、水酸基、及びアミノ基の少なくともいずれかである付記1又は2に記載の吸着剤。
(付記4)
前記配位子が、少なくとも1つの芳香族炭化水素環と、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環に結合する2対のカルボキシル基及び水酸基とを有し、前記2対のカルボキシル基及び水酸基のそれぞれは、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環基における隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合している付記1から3のいずれかに記載の吸着剤。
(付記5)
前記カーボンナノチューブの含有量が、0質量%超10質量%以下である付記1から4のいずれかに記載の吸着剤。
(付記6)
前記金属が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、アルミニウム、及びジルコニウムの少なくともいずれかである付記1から5のいずれかに記載の吸着剤。
(付記7)
金属塩と、前記金属塩の金属と結合可能な配位子と、前記金属塩の金属に結合可能な官能基を有するカーボンナノチューブと、水とを含有する混合液を加熱することを特徴とする吸着剤の製造方法。
(付記8)
前記官能基が、カルボキシル基、水酸基、及びアミノ基の少なくともいずれかである付記7に記載の吸着剤の製造方法。
(付記9)
前記配位子が、少なくとも1つの芳香族炭化水素環と、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環に結合する2対のカルボキシル基及び水酸基とを有し、前記2対のカルボキシル基及び水酸基のそれぞれは、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環基における隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合している付記7又は8に記載の吸着剤の製造方法。
(付記10)
前記金属が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、アルミニウム、及びジルコニウムの少なくともいずれかである付記7から9のいずれかに記載の吸着剤の製造方法。
(付記11)
二酸化炭素を還元可能な金属を有する金属含有部材と、
前記金属含有部材の表面に、吸着剤とを有し、
前記吸着剤が、金属と、前記金属に配位可能な配位子と、前記金属に結合可能な官能基を有するカーボンナノチューブとを含有し、多孔質である、
ことを特徴とする二酸化炭素還元用電極。
(付記12)
前記金属含有部材の材質が、銅、銀、金、亜鉛、及びインジウムの少なくともいずれかである付記11に記載の二酸化炭素還元用電極。
(付記13)
前記吸着剤において、前記官能基が、前記金属と結合している付記11又は12に記載の二酸化炭素還元用電極。
(付記14)
前記官能基が、カルボキシル基、水酸基、及びアミノ基の少なくともいずれかである付記11から13のいずれかに記載の二酸化炭素還元用電極。
(付記15)
前記配位子が、少なくとも1つの芳香族炭化水素環と、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環に結合する2対のカルボキシル基及び水酸基とを有し、前記2対のカルボキシル基及び水酸基のそれぞれは、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環基における隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合している付記11から14のいずれかに記載の二酸化炭素還元用電極。
(付記16)
前記吸着剤における前記カーボンナノチューブの含有量が、0質量%超10質量%以下である付記11から15のいずれかに記載の二酸化炭素還元用電極。
(付記17)
前記吸着剤の前記金属が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、アルミニウム、及びジルコニウムの少なくともいずれかである付記11から16のいずれかに記載の二酸化炭素還元用電極。
(付記18)
二酸化炭素還元用電極をカソード側の電極として有する二酸化炭素還元装置であって、
前記二酸化炭素還元用電極が、二酸化炭素を還元可能な金属を有する金属含有部材と、前記金属含有部材の表面に、吸着剤とを有し、
前記吸着剤が、金属と、前記金属に配位可能な配位子と、前記金属に結合可能な官能基を有するカーボンナノチューブとを含有し、多孔質である、
ことを特徴とする二酸化炭素還元装置。
(付記19)
前記吸着剤において、前記官能基が、前記金属と結合している付記18に記載の二酸化炭素還元装置。
(付記20)
前記官能基が、カルボキシル基、水酸基、及びアミノ基の少なくともいずれかである付記18又は19に記載の二酸化炭素還元装置。
(付記21)
前記配位子が、少なくとも1つの芳香族炭化水素環と、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環に結合する2対のカルボキシル基及び水酸基とを有し、前記2対のカルボキシル基及び水酸基のそれぞれは、前記少なくとも1つの芳香族炭化水素環基における隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合している付記18から20のいずれかに記載の二酸化炭素還元装置。
(付記22)
前記吸着剤における前記カーボンナノチューブの含有量が、0質量%超10質量%以下である付記18から21のいずれかに記載の二酸化炭素還元装置。
(付記23)
前記吸着剤の前記金属が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、アルミニウム、及びジルコニウムの少なくともいずれかである付記18から22のいずれかに記載の二酸化炭素還元装置。