特許第6795778号(P6795778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795778フラックス、フラックスを用いたやに入りはんだ、フラックスを用いたフラックスコートはんだ、およびはんだ付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6795778
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】フラックス、フラックスを用いたやに入りはんだ、フラックスを用いたフラックスコートはんだ、およびはんだ付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20201119BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B23K35/363 C
   B23K35/14 B
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-59856(P2020-59856)
(22)【出願日】2020年3月30日
【審査請求日】2020年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】井関 博晶
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太
【審査官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6638839(JP,B1)
【文献】 特開平07−185882(JP,A)
【文献】 特開2018−167297(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102018112982(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジンメチルエステル、およびエステル化されていないロジンを含むフラックスであって、
前記フラックス全体の質量に対する前記ロジンメチルエステルの含有量が0.5〜20質量%であり、
前記フラックス全体の質量に対する前記エステル化されていないロジンの含有量が40〜98.9質量%であり、
25℃において固体または固体状であり、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装に用いられる、フラックス。
【請求項2】
前記ロジンメチルエステルが、天然ロジン、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、水素添加重合ロジン、及び水素添加酸変性ロジンの中から選ばれる1種または2種以上の、メチルエステル化物である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記フラックスの軟化点が、28〜100℃である、請求項1または2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記ロジンメチルエステルは、25℃において液状である、請求項1乃至3いずれか一項に記載のフラックス。
【請求項5】
前記エステル化されていないロジンの含有量に対する、前記ロジンメチルエステルの含有量が、0.01以上、0.5以下である、請求項1乃至4いずれか一項に記載のフラックス。
【請求項6】
レオメータを用い、6Hzの条件で回転開始から5分後に測定される、25℃での粘度ηが3200Pa・s以上である、請求項1乃至いずれか一項に記載のフラックス。
【請求項7】
活性剤をさらに含む、請求項1乃至いずれか一項に記載のフラックス。
【請求項8】
溶剤の含有量が、13質量%以下である、請求項1乃至いずれか一項に記載のフラックス。
【請求項9】
請求項1乃至いずれか一項に記載のフラックスを内部に含む、やに入りはんだ。
【請求項10】
請求項1乃至いずれか一項に記載のフラックスを外装に用いた、フラックスコートはんだ。
【請求項11】
請求項1乃至いずれか一項に記載のフラックスを用いてはんだ付けを行う、はんだ付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、フラックスを用いたやに入りはんだ、フラックスを用いたフラックスコートはんだ、およびはんだ付け方法に関する。より詳細には、フラックスは、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装に用いられる。
【背景技術】
【0002】
フラックスに含まれるロジンは、アビエチン酸と呼ばれる樹脂酸を主成分として含む。かかる酸(カルボン酸)は、主に、はんだ付け時に導体表面の酸化膜を除去したり、はんだ接合部の酸化を防止したり、はんだの表面張力を低下させ濡れ性を良好にする機能を有する。
一方、フラックスは、上記のような機能を確保するため、はんだ付け時の加熱によって分解、蒸発しない成分も含まれる。これら成分は、はんだ付け後にはんだ付け部の周辺に残留し、いわゆるフラックス残渣と呼ばれる。はんだ付け後にはんだ付け部を洗浄する場合、フラックス残渣は除去されるが、はんだ付け部が洗浄できない場合、フラックス残渣が残留することになる。そして、かかるフラックス残渣においては、はんだ付け後の輸送時や部品組み立て時に、振動が加わると、フラックス残渣が割れたり、剥がれてしまうことがあった。その結果、剥がれたフラックス残渣が本来存在してはならない場所へ付着してしまい、不具合の原因になるといった問題があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、水添酸変性ロジンと水添ロジンエステル、およびはんだ粉末などを含むペースト状のはんだ組成物が開示されている。また、特許文献2には、はんだ付け時の白煙を抑制する観点から、ロジンエステルと活性剤を含むやに入りはんだ用フラックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−167297号公報
【特許文献2】特開2016−120507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
はんだの形態としては、線(ワイヤー)、ボール、粉末、ペレット、プリフォーム、棒状物、塊状物などが知られるが、本発明のフラックスは、内部にフラックスが充填されたやに入りはんだ、およびあらかじめフラックスで被覆されたフラックスコートはんだの用途に着目したものである。
上記特許文献1に記載される技術は、粉末状のはんだとフラックスとを混合したペースト状のはんだ組成物に関する技術であり、常温でフラックスの流動性が得られるように設計されているため、やに入りはんだやフラックスコートはんだへの加工が困難である。すなわち、本発明の用途に適した加工性を有するものではなかった。
また、上記特許文献2に記載される技術は、はんだ付け時の白煙を抑制することに着目したものであり、フラックス残渣の割れ性を向上させる点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装の用途に適したフラックスを得るため、当該フラックスが25℃において固体または固体状であることを前提として、鋭意検討を行った結果、ロジンエステルの中でもロジンメチルエステルを用いることで、従来のフラックスとしての機能を保持しつつも、フラックス残渣の割れ性を抑制できることを見出した。
【0007】
本発明によれば、
ロジンメチルエステル、およびエステル化されていないロジンを含むフラックスであって、
前記フラックス全体の質量に対する前記ロジンメチルエステルの含有量が0.5〜20質量%であり、
前記フラックス全体の質量に対する前記エステル化されていないロジンの含有量が40〜98.9質量%であり、
25℃において固体または固体状であり、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装に用いられる、フラックスが提供される。
【0008】
また本発明によれば、
上記のフラックスを内部に含む、やに入りはんだが提供される。
【0009】
また本発明によれば、
上記のフラックスを外装に用いた、フラックスコートはんだが提供される。
【0010】
また本発明によれば、
上記のフラックスを用いてはんだ付けを行う、はんだ付け方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装の用途に適し、フラックス残渣の割れ性を抑制できるフラックスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
なお、本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0013】
<フラックス>
本実施形態のフラックスは、ロジンメチルエステルを含むフラックスであって、25℃において固体または固体状であり、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装に用いられるものである。これにより、従来のフラックスとしての機能を保持しつつも、フラックス残渣の割れ性を抑制できる。なかでも、輸送時などの物理的な衝撃に対するフラックス残渣割れを効果的に抑制できる。
【0014】
[成分]
以下、フラックスに含まれる各成分について、説明する。
【0015】
本実施形態のフラックスは、ロジンメチルエステル(a)を含む。
ロジンメチルエステル(a)とは、ロジンを構成する樹脂酸が、メチルアルコールによってエステル化されたメチルエステル化物を意図する。ロジンメチルエステル(a)は、25℃において液状であるが、ロジンとの相溶性が高く、揮発しにくいため、ロジンメチルエステル(a)を含有したフラックスのフラックス残渣中にはロジンメチルエステル(a)が残留する。これにより、フラックス残渣のクラック発生抑制効果を得ることができる。そしてロジンメチルエステル(a)は、ロジンの変成物である為、濡れ性等のフラックスとして必要な特性に悪影響を与えない点でも優れている。
【0016】
ロジンメチルエステル化するロジンを構成する樹脂酸としては、アビエチン酸の他、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、およびデヒドロアビエチン酸が挙げられる。
また、原料となるロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、およびフマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物、及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物、及び不均化物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を用いることができる。
なかでも、水添ロジンを用いることが好ましい。
【0017】
水添ロジンメチルエステルの市販品としては、例えば、「フォーラリン 5020−F」(イーストマンケミカル社製)、および「M−HDR」(丸善油化商事株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
本実施形態のフラックス全体の質量に対するロジンメチルエステル(a)の含有量は、0.5〜20質量%が好ましく、3.0〜18質量%がより好ましい。
ロジンメチルエステル(a)の含有量を上記上限値以下とすることにより、濡れ性を保持しつつ、フラックス残渣にクラックが発生することを抑制しやすくなる。一方、ロジンメチルエステル(a)の含有量を上記下限値以上とすることにより、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装への用途に加工しやすくなる。
【0019】
なお、本発明者らの知見によれば、メチルアルコール以外のアルコール類でエステル化されたロジン(b)のみを用いた場合、エステル化ロジンの分子量が大きくなりすぎ、液状ではなくなることなどを理由に、フラックス残渣のクラック発生を良好に抑制することができない。
ただし、本実施形態のフラックスは、メチルアルコール以外のアルコール類でエステル化されたロジン(b)を含んでもよい。この場合、本実施形態のフラックス全体の質量に対するメチルアルコール以外のアルコール類でエステル化されたロジン(b)の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0020】
本実施形態のフラックスは、エステル化されていないロジン(c)、すなわち非エステル化ロジンをさらに含んでもよい。これにより、固体または固体状のフラックスが得られやすくなり、やに入りはんだおよびフラックスコートはんだの加工性を向上できるとともに、ロジンメチルエステル(a)が有する濡れ性を保持しつつ、フラックス残渣のクラック発生抑制効果を得ることができる。
エステル化されていないロジン(c)の含有量(質量)に対する、ロジンメチルエステル(a)の含有量(質量)は、残渣割れ性を安定的に得る観点から、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。一方、エステル化されていないロジン(c)の含有量に対する、ロジンメチルエステル(a)の含有量の上限値は、特に限定されないが、例えば、0.5以下が好ましい。
なお、エステル化されていないロジン(c)とは、ロジンを構成する樹脂酸がエステル化されていないロジンを意図し、ロジンとしては、前述したロジンメチルエステル(a)に用いるロジンを挙げることができる。
【0021】
本実施形態のフラックス全体の質量に対するエステル化されていないロジン(c)の含有量は、40〜98.9質量%が好ましく、50〜97.0質量%がより好ましい。
エステル化されていないロジン(c)の含有量を上記上限値以下とすることにより、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装への用途に加工しやすくなる。一方、エステル化されていないロジン(c)の含有量を上記下限値以上とすることにより、フラックス残渣にクラックが発生することを抑制しやすくなる。
【0022】
また、さらに、本実施形態のフラックスは、ロジン系樹脂以外の樹脂を含んでもよい。
ロジン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、及び変性キシレン樹脂から選択される1種または2種以上が挙げられる。
上記の変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、及びスチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、及びポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等を使用することができる。
【0023】
また、さらに、本実施形態のフラックスは、はんだ付け性を向上させるため、上記樹脂以外に、活性剤を含んでもよい。
活性剤としては、有機酸系活性剤、アミン系活性剤、アミンハロゲン化水素酸塩系活性剤、及び有機ハロゲン化合物系活性剤等を使用することができる。
【0024】
有機酸系活性剤としては、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、トリマー酸、及び水添トリマー酸等を使用することができる。
【0025】
アミン系活性剤としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノアルコール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、アミノ酸、グアニジン、及びヒドラジド等を使用することができる。
【0026】
脂肪族アミンの例としては、ジメチルアミン、エチルアミン、1−アミノプロパン、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、アリルアミン、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、イソブチルアミン、及びシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0027】
芳香族アミンの例としては、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、N−イソプロピルアニリン、及びp−イソプロピルアニリン等が挙げられる。アミノアルコールの例としては、2−アミノエタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、及びN,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0028】
イミダゾールの例としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’ウンデシルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’エチル−4’メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシイミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、及びベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0029】
ベンゾトリアゾールの例としては、2−(2’ヒドロキシ−5’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’ヒドロキシ−3’tert−ブチル−5’メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’ヒドロキシ−3’,5’ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6’−tert−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1,2,3−ベンゾトリアゾールナトリウム塩水溶液、1−(1’,2’ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、及び5−メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0030】
アミノ酸の例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン塩酸塩、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン一塩酸塩、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、βアラニン、γ−アミノ酪酸、δ−アミノ吉草酸、ε−アミノヘキサン酸、ε−カプロラクタム、及び7−アミノヘプタン酸等が挙げられる。
【0031】
グアニジンの例としては、カルボジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、及びイソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0032】
ヒドラジドの例としては、ジシアンジアミド、1,3−ジフェニルグアニジン、及び1,3−ジ−o−トリルグアニジン等が挙げられる。
【0033】
アミンハロゲン化水素酸塩系活性剤としては、アミン系活性剤として上記に示したアミン化合物のハロゲン化水素酸塩(HF、HCl、HBr又はHIの塩)を使用することができる。
アミンハロゲン化水素酸塩の例としては、ステアリルアミン塩酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、2−エチルヘキシルアミン臭化水素酸塩、ピリジン臭化水素酸塩、イソプロピルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン臭化水素酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、1,3−ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジメチルアミン臭化水素酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2−エチルヘキシルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、2−ピペコリン臭化水素酸塩、1,3−ジフェニルグアニジン塩酸塩、ジメチルベンジルアミン塩酸塩、ヒドラジンヒドラート臭化水素酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、トリノニルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン臭化水素酸塩、2−ジエチルアミノエタノール臭化水素酸塩、2−ジエチルアミノエタノール塩酸塩、塩化アンモニウム、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン臭化水素酸塩、モノエチルアミン塩酸塩、モノエチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン臭化水素酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン二塩酸塩、ヒドラジン一臭化水素酸塩、ヒドラジン二臭化水素酸塩、ピリジン塩酸塩、アニリン臭化水素酸塩、ブチルアミン塩酸塩、へキシルアミン塩酸塩、n−オクチルアミン塩酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、ジメチルシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、エチレンジアミン二臭化水素酸塩、ロジンアミン臭化水素酸塩、2−フェニルイミダゾール臭化水素酸塩、4−ベンジルピリジン臭化水素酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、N−メチルモルホリン塩酸塩、ベタイン塩酸塩、2−ピペコリンヨウ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、1,3−ジフェニルグアニジンフッ化水素酸塩、ジエチルアミンフッ化水素酸塩、2−エチルヘキシルアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンフッ化水素酸塩、エチルアミンフッ化水素酸塩、ロジンアミンフッ化水素酸塩、シクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩、及びジシクロヘキシルアミンテトラフルオロホウ酸塩等が挙げられる。
【0034】
有機ハロゲン化合物系活性剤としては、トランスー2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール、1,1,2,2−テトラブロモエタン、2,2,2−トリブロモエタノール、ペンタブロモエタン、四臭化炭素、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、meso−2,3−ジブロモこはく酸、クロロアルカン、塩素化脂肪酸エステル、臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、2−クロロメチルオキシラン、ヘット酸、ヘット酸無水物、及び臭化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0035】
本実施形態のフラックス全体の質量に対する活性剤の含有量は、0.1〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
活性剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、はんだ付け後のフラックス残渣の腐食、絶縁抵抗の低下等を抑制できる。一方、活性剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、濡れ性や酸化防止性能が得られる。
本実施形態のフラックス全体の質量に対する各活性剤の含有量としては、有機酸系活性剤は0〜30質量%、アミン系活性剤は0〜10質量%、アミンハロゲン化水素酸塩系活性剤と有機ハロゲン化合物系活性剤は合計で0〜20質量%がそれぞれ好ましい。
【0036】
さらに、本実施形態のフラックスは、溶剤、リン酸エステル、シリコーン、及び界面活性剤から選択される1種または2種以上をさらに含むことができる。
【0037】
溶剤としては、各種グリコールエーテル系溶剤等、例えばフェニルグリコール、ヘキシレングリコール、及びヘキシルジグリコール等を使用することができる。
本実施形態のフラックス全体の質量に対する溶剤の含有量は、0〜13質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。溶剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な加工性が得られる。
【0038】
リン酸エステルとしては、メチルアシッドホスフェイト、エチルアシッドホスフェイト、イソプロピルアシッドホスフェイト、モノブチルアシッドホスフェイト、ブチルアシッドホスフェイト、ジブチルアシッドホスフェイト、ブトキシエチルアシッドホスフェイト、2−エチルへキシルアシッドホスフェイト、ビス(2−エチルへキシル)ホスフェイト、モノイソデシルアシッドホスフェイト、イソデシルアシッドホスフェイト、ラウリルアシッドホスフェイト、イソトリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト、オレイルアシッドホスフェイト、牛脂ホスフェイト、ヤシ油ホスフェイト、イソステアリルアシッドホスフェイト、アルキルアシッドホスフェイト、テトラコシルアシッドホスフェイト、エチレングリコールアシッドホスフェイト、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェイト、ジブチルピロホスフェイトアシッドホスフェイト、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、及びアルキル(アルキル)ホスホネート等を使用することができる。
本実施形態のフラックス全体の質量に対するリン酸エステルの含有量は、0〜10質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましい。リン酸エステルの含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な加工性が発揮される。
【0039】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、環状シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、及びカルビノール変性シリコーンオイル等を使用することができる。
本実施形態のフラックス全体の質量に対するシリコーンの含有量は、0〜10質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましい。シリコーンの含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な加工性が発揮される。
【0040】
界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシプロピレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。
本実施形態のフラックス全体の質量に対する界面活性剤の含有量は、0〜5質量%が好ましい。界面活性剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、はんだ付け性を損なわずに、洗浄性の向上効果が発揮される。
【0041】
[性状]
本実施形態のフラックスは、25℃において固体または固体状である。
固体または固体状とは、25℃において水平面に静置した場合に流動性を有さないことを意図する。また、固体状とは、外部から物理的な応力を加えることによって、一部に流動性を有することを包含する。例えば、25℃において水平面上に静置されたフラックスが、外部からの応力を与えずに、自重等により、自然に流動性を帯びるもの、変形するものは、25℃において固体または固体状には該当しない。
本実施形態のフラックスは、25℃において固体または固体状とすることにより、良好な加工性が得られ、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装の用途に好適に供される。
本実施形態のフラックスを25℃において固体または固体状とするためには、ロジンメチルエステルの他に固体の樹脂を添加したり、溶剤量を制御したり、添加剤を用いる等、公知の方法により得ることができる。
【0042】
本実施形態のフラックスは、軟化点が28〜100℃であることが好ましく、30〜90℃であることがより好ましい。フラックスの融点を上記下限値以上とすることにより、良好な加工性が得られ、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装の用途に適したフラックスが得られる。一方、フラックスの融点の上限値は特に限定されないが、例えば、上記上限値以下とすることによって、フラックスの調製を容易にできる。
フラックスの融点は、JIS K 5902−1969の軟化点の測定に基づいて、測定することができる。
【0043】
本実施形態のフラックスは、レオメータを用い、6Hzの条件で回転開始から5分後に測定される、25℃での粘度ηが3200Pa・s以上であることが好ましく、3500Pa・s以上であることがより好ましい。粘度ηを上記下限値以上とすることにより、良好な加工性が得られる。また、粘度ηは、高いほど固体であることを示すため、その上限値は特に限定されない。
なお、レオメータとしては、例えば、Thermo Scientific HAAKE MARS III(商標)を用いることができる。
【0044】
[用途]
本実施形態のフラックスは、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装の用途に供される。すなわち、本実施形態のフラックスは、はんだ合金の内部に充填される、または、所定の形状に成形されたはんだ合金の外表面を被覆するために用いられる。かかるフラックスがはんだ合金の内部に充填されたはんだは、“やに入りはんだ”とも呼ばれる。
そのため、本実施形態のフラックスは、加工性の点から、25℃において固体または固体状であることが求められる。フラックスが液状状態であると、やに入りはんだまたはフラックスコートはんだの加工(任意の寸法及び形状への加工)が困難になってしまう。
【0045】
[フラックスの調製および加工方法]
本実施形態のフラックスは、ロジンメチルエステル、および任意の成分を、公知の方法により、加熱混合して、調製される。
また、やに入りはんだの製造方法としては、例えば、圧延法、スウェージング法、および押出法などの公知の方法を挙げることができる。
より詳細には、上記の押出法は、原材料を大口径の金型に注入し、外部より冷却水で冷却しマザービレットを作製したのち、より小さな口径(50mmφ程度)に縮径し押出成形してから、さらに押出成形機で通常10mmφ程度に縮径押出成形して、線状のやに入りはんだを得ることができる。
ここで、本実施形態のフラックスは、25℃において固体または固体状であるため、押出工程で冷却される際、フラックスが噴出してしまうことを抑制でき、良好な加工性が得られる。言い換えると、フラックスが25℃において液状であると、押出工程で冷却される際、フラックスがはんだから噴出し、噴出したフラックスにより作業者等が危険に晒され、また噴出したフラックスによってマザービレットの製造装置及びその周辺が汚染されるという問題が発生する。そのため、やに入りはんだを加工することができなくなってしまう。
【0046】
はんだ合金の組成としては、公知のはんだ合金の組成とすることができる。具体的には、Sn−Ag合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−In合金、Sn−Pb合金、Sn−Bi合金、Sn−Ag−Cu−Bi合金、および上記合金組成にAg、Cu、In、Ni、Co、Sb、Ge、P、Fe、Zn、およびGa等を更に添加した合金などが挙げられる。
【0047】
また、やに入りはんだの場合、はんだ合金とフラックスとの質量比(はんだ:フラックス)は、99.8:0.2〜93.5:6.5が好ましく、98.5:1.5〜95.5:4.5がより好ましい。
また、フラックスコートはんだの場合、はんだ合金とフラックスとの質量比(はんだ:フラックス)は、99.7:0.3〜85:15が好ましく、99.4:0.6〜97:3がより好ましい。
【0048】
このようにして調製されたやに入りはんだ又はフラックスコートはんだを用いて、電子機器などの部材を接合することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
ロジンメチルエステルを含むフラックスであって、
25℃において固体または固体状であり、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装に用いられる、フラックス。
<2>
前記ロジンメチルエステルが、天然ロジン、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、水素添加重合ロジン、及び水素添加酸変性ロジンの中から選ばれる1種または2種以上の、メチルエステル化物である、<1>に記載のフラックス。
<3>
前記フラックスの軟化点が、28〜100℃である、<1>または<2>に記載のフラックス。
<4>
前記ロジンメチルエステルは、25℃において液状である、<1>乃至<3>いずれか一つに記載のフラックス。
<5>
エステル化されていないロジンをさらに含む、<1>乃至<4>いずれか一つに記載のフラックス。
<6>
前記エステル化されていないロジンの含有量に対する、前記ロジンメチルエステルの含有量が、0.01以上、0.5以下である、<5>に記載のフラックス。
<7>
レオメータを用い、6Hzの条件で回転開始から5分後に測定される、25℃での粘度ηが3200Pa・s以上である、<1>乃至<6>いずれか一つに記載のフラックス。
<8>
活性剤をさらに含む、<1>乃至<7>いずれか一つに記載のフラックス。
<9>
溶剤の含有量が、13質量%以下である、<1>乃至<8>いずれか一つに記載のフラックス。
<10>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載のフラックスを内部に含む、やに入りはんだ。
<11>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載のフラックスを外装に用いた、フラックスコートはんだ。
<12>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載のフラックスを用いてはんだ付けを行う、はんだ付け方法。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0051】
<実施例および比較例>
1)フラックス
表1〜4に示す組成で、各成分を混合し、フラックスを得た。得られたフラックスを用いて、以下の測定・評価を行った。
【0052】
・粘度の測定
フラックスの25℃における状態を観察し、固体及び固体状であるか否かを判定した。
具体的には、フラックスの取り扱いに熟知した技術者が、25℃の環境温度下で、外部からの応力がかからないように、フラックスを水平面上に静置し、速やかに流動性(変形)の有無を目視にて観察した。
フラックスが固形または固体状でない場合、フラックスをレオメータ(Thermo Scientific HAAKE MARS III(商標))のプレート間に挟んだ後、6Hzでプレートを回転させ、回転開始から5分後に測定される粘度を測定した。なお、測定装置破損の恐れがあったため、3500Pa・sを測定限界とした。
【0053】
・軟化点の測定
JIS K 5902 5.3に準拠して、フラックスの軟化点を測定し、以下の基準に従い評価した。
〇:30℃以上
×:30℃未満
【0054】
2)やに入りはんだ、または、フラックスコートはんだ
つぎに、得られたフラックスを用いて、やに入りはんだ、及びフラックスコートはんだを作製した。各手順について、説明する。
【0055】
・やに入りはんだの作製(実施例1〜46、比較例1〜4)
表1〜4に示す組成のはんだと、上記のフラックスを用いて、押出法により、やに入りはんだ(はんだ直径1.0mm)を作成した。はんだ合金とフラックスとの質量比は97:3になるように製造した。なお、実施例43(Sn−Bi組成)のやに入りはんだは、外径1.0mm、中空部(フラックス部分)径0.38mmとし、その他の実施例および比較例のやに入りはんだは、外径1.0mm、中空部(フラックス部分)径0.42mmとした。
【0056】
・フラックスコートはんだの作製(実施例47)
表1〜4に示す組成のはんだを用いて直径1.0mmの線はんだを作製し、浸漬法にてフラックスを被覆して、フラックスコートはんだを作製した。
【0057】
3)評価
やに入りはんだ、及びフラックスコートはんだについて、以下の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0058】
・加工性
上記2)の作製手順にて、やに入りはんだ、及びフラックスコートはんだを作製する際の加工性について、以下に示す基準で評価した。
〇:やに入りはんだ、またはフラックスコートはんだを安全に作製することができた。
×:固体または固体状ではなかったため、安全性が確保されず、加工できなかった。
【0059】
・濡れ性
JIS Z 3197 8.3.1.1に準拠して、濡れ性を測定し、以下の基準に従い評価した。
<基準>
〇:70%以上
×:70%未満
−:実験不可
【0060】
・フラックス残渣の割れ性
やに入りはんだ、またはフラックスコートはんだ0.3gを銅板(サイズ:30×30×0.3mm)の中央部にのせ、はんだ合金の融点よりも35℃高い温度で5秒間加熱し、はんだを濡れ広がらせた。その後、室温で保管して冷却させ、銅板上にフラックス残渣を形成し、サンプルとした。
ついで、得られたサンプル5枚を高さ100cmから落下させ、フラックス残渣が銅板から剥離するか否かを確認した。さらに、1枚もフラックス残渣の剥がれが発生しなかったサンプル5枚全てを、再度同様の高さから落下させ、残渣の剥がれを確認し、以下の基準にしたがって、評価した。
◎:2回目の落下試験でも残渣剥がれが発生しなかった。
〇:1回の落下試験で残渣剥がれは発生しなかったが、2回目の落下試験で1枚以上残渣剥がれが発生した。
△:1回の落下試験で、1〜4枚残渣剥がれが発生した。
×:1回の落下試験で5枚とも残渣剥がれが発生した。
−:実験不可(やに入りはんだを作製出来ない為)
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【要約】
【課題】やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装の用途に適し、フラックス残渣の割れ性を抑制できるフラックスを提供する。
【解決手段】本発明のフラックスは、ロジンメチルエステルを含み、25℃において固体または固体状であり、やに入りはんだの内部またはフラックスコートはんだの外装に用いられるものである。
【選択図】図なし