(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795784
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】空孔内検査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 23/24 20060101AFI20201119BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20201119BHJP
A61B 1/01 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
G02B23/24 A
A61B1/00 715
A61B1/01
G02B23/24 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-222337(P2016-222337)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-81167(P2018-81167A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】布施 直紀
【審査官】
岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−102247(JP,A)
【文献】
特開2007−319622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24−23/26
A61B 1/00−1/32
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から画像を取り込み、取り込んだ画像を基端方向へ伝達する画像伝達用のケーブルを有し、当該ケーブルの基端に設けられた操作具によって先端部が所定方向へ所定量屈曲させられて画像取り込みの視野方向が変更可能な遠隔画像取得手段と、前記ケーブルの先端部外周に設けられ当該先端部外周よりも大径で円滑な外周面を有するガイド部材とを備え、前記ケーブルには前記先端部を除く本体部に少なくとも一つの補助ガイド部材が設けられ、前記補助ガイド部材は前記ケーブルの本体部外周よりも大径で円滑な外周面を有するとともに前記ケーブルに沿って移動可能であり、かつ前記ガイド部材よりも大径でかつケーブル基端方向に位置する前記補助ガイド部材がケーブル先端方向に位置する前記補助ガイド部材よりも相対的に大径となっている空孔内検査装置。
【請求項2】
前記操作具はロボットアームによって操作され、前記ロボットアームは予め記憶された前記操作具の操作位置と前記ケーブルの先端部の屈曲位置との誤差を解消するようにその操作位置を補正するように設定されている請求項1に記載の空孔内検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査対象の空孔内に画像を取り込むためのケーブルを挿入して空孔内の検査を行う空孔内検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような空孔内検査装置ではケーブルの画像取り込み用先端をケーブル基端に設けた操作具で所定方向へ屈曲させて画像を取り込む視野方向を変更できるようにしているが、狭小な空孔内へ挿入されたケーブルの先端の屈曲方向を正確に視認することは困難であり、屈曲した先端が空孔の内壁に触れて損傷する等の問題があった。
【0003】
なお、特許文献1には、ボアスコープの挿入部の姿勢や位置を検出するために加速度センサや距離センサを設けたものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−27360
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は画像取り込み用のケーブル先端が空孔の内壁に触れて損傷するのを簡易な構造で確実に防止できるようにした空孔内検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、先端から画像を取り込み、取り込んだ画像を基端方向へ伝達する画像伝達用のケーブル(2)を有し、当該ケーブル(2)の基端に設けられた操作具(1)によって先端部(21)が所定方向へ所定量屈曲させられて画像取り込みの視野方向が変更可能な遠隔画像取得手段(E)と、前記ケーブル(2)の先端部(21)外周に設けられ当該先端部(21)外周よりも大径で円滑な外周面を有するガイド部材(4)とを備え
、前記ケーブル(2)には前記先端部(21)を除く本体部に少なくとも一つの補助ガイド部材(5A,5B)が設けられ、前記補助ガイド部材(5A,5B)は前記ケーブル(2)の本体部外周よりも大径で円滑な外周面を有するとともに前記ケーブル(2)に沿って移動可能であり、かつ前記ガイド部材(4)よりも大径でかつケーブル基端方向に位置する前記補助ガイド部材(5B)がケーブル先端方向に位置する前記補助ガイド部材(5A)よりも相対的に大径となっている。
【0007】
本第1発明において、空孔内にケーブルを挿入すると、ケーブルの先端部の外周に設けたガイド部材が空孔の内壁に接触し、ケーブルの先端部が空孔の内壁に直接触れることは無い。したがって、ケーブルの先端部が空孔の内壁に触れて損傷することが防止される。
そして、奥に向かって漸次小径となる空孔内へケーブルを挿入すると、補助ガイド部材はこれとほぼ同径となった空孔の長手方向の各位置に留められる。このような補助ガイド部材によってケーブルは空孔のほぼ中心に保持されるから、ケーブルの先端部がより確実に位置決めされる。
【0010】
本第2発明では、前記操作具(1)はロボットアームによって操作され、前記ロボットアームは予め記憶された前記操作具(1)の操作位置と前記ケーブル(2)の先端部(21)の屈曲位置との誤差を解消するようにその操作位置を補正するように設定されている。
【0011】
本第2発明によれば、経年変化等によって操作具の操作位置とケーブルの先端部の屈曲位置との間に誤差を生じるようになっても、この誤差を解消してケーブルの先端部を所定の位置へ屈曲させることができる。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の空孔内検査装置によれば、画像取り込み用のケーブル先端が空孔の内壁に触れて損傷するのを簡易な構造で確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態における空孔内検査装置の全体斜視図である。
【
図3】ケーブルをターボチャージャのコンプレッサ吸気流路内に挿入した状態を示す破断斜視図である。
【
図4】ケーブルをターボチャージャのコンプレッサ吸気流路内に挿入した状態を示す概略断面図である。
【
図5】操作具の操作棒の操作軌跡とこれに対応するケーブル先端部の移動軌跡を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における、ケーブル先端部の側面図である。
【
図7】ケーブルに装着されたガイド部材の側面図である。
【
図8】ケーブルをターボチャージャのコンプレッサ吸気流路内に挿入した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
(第1実施形態)
図1には空孔内検査装置の外観を示す。空孔内検査装置は遠隔画像取得手段としての工業用内視鏡Eを備えている。工業用内視鏡Eは操作具(ジョイスティック)1とこれから延びるケーブル2を備えており、ケーブル2の先端部21には画像撮影用のCCDカメラ3が前方に向けて設けられている。
【0017】
操作具1は公知のもので、一方の手で把手部11を握り、操作棒12を所定方向へ傾動操作するとケーブル2内に通された操作ワイヤを介して、操作棒12の操作姿勢に応じて上記ケーブル2の先端部21が所定方向へ所定量屈曲させられて、カメラ3の画像取り込みの視野方向が変更される。カメラ3で得られた画像はケーブル2を経て操作具1へ伝達され、操作具1のディスプレイ13上に表示される。ここで本実施形態では、ケーブル先端部21のカメラ3の外周にガイド部材4が設けられている。
【0018】
ガイド部材4の詳細を
図2に示す。ガイド部材4は金属あるいは樹脂等よりなる球体で、その中心に径方向へ貫通する通孔41が形成されて、当該通孔41内にカメラ3がその前端をガイド部材4外へ露出させるようにして挿入装着されている。カメラ3はこれに直交する方向からガイド部材4内へ捩じ込まれたネジ42によって固定されている。上記ガイド部材4は球体であるからケーブル2の外周面よりも大径の円滑な外周面を有している。
【0019】
このようなガイド部材4を装着したケーブル2を検査対象である例えばターボチャージャCHの空孔たるコンプレッサ吸気流路P内に挿入した状態を
図3、
図4に示す。吸気流路Pは、ケーブル2が挿入される外周部から内周部へ渦巻き状に縮径しつつ湾曲しており、かつその内径は漸次小さくなっている。そして、リジッドスリーブ22(
図3)内に挿入されたケーブル2が相対的に大径の開口P1から漸次小径となる吸気流路P内へ挿入されている。
【0020】
このようなコンプレッサ吸気流路P内にケーブル2を挿入すると、ケーブル2の先端部21の外周に設けたガイド部材4が上記吸気流路Pの内壁に接触してケーブル2の先端部21を当該吸気流路Pに沿って湾曲させる。この間、ケーブル2の先端部21が吸気流路Pの内壁に直接触れることは無いから、ケーブル先端部21に設けられたカメラ3が吸気流路Pの内壁に触れて損傷することが防止される。また、ケーブル2の先端部21、すなわちカメラ3が吸気流路Pの内壁から常にガイド部材4の一定径以上離れてガイドされるから、吸気流路Pの内壁を常に一定間隔離れた位置から観察することが可能である。
【0021】
ところで、操作具1上の操作棒12を
図5の破線で示すように所定径の円を描くように操作しても、経年変化等によって操作ワイヤの引張量が変動するため、
図5の実線で示すように実際のケーブル先端部21の屈曲位置、すなわちカメラ3の視野方向は変動する。
【0022】
そこで、双腕型ロボットを使用して、一方のロボットアームで操作具1の把手部11を把持しつつ他方のロボットアームで操作棒12を操作するようにして、操作棒12の操作位置とこれに対応するケーブル先端部21の屈曲位置をドライラン(空運転)で確認し、両者間の位置誤差をロボット制御装置のメモリーに記憶しておく。そして、実際の検査時にはロボットアームによる操作棒12の操作量を、上記位置誤差を解消するように補正して行うようにすれば、常にケーブル先端部21の屈曲位置を所望の位置にすることができ、カメラ3を吸気流路内壁の所定位置に向けてここの画像を正確に得ることができる。
【0023】
(第2実施形態)
図6に示すように、ケーブル先端部21のカメラ3の外周のガイド部材4に加えて、ケーブル2の本体部外周に複数の補助ガイド部材5A,5Bを設ける。補助ガイド部材5A,5Bはガイド部材4と同様の球体で、その大きさはガイド部材4よりも大きくかつケーブル基端方向にあるものがより大径となっている。各補助ガイド部材5A,5Bは
図7に示すようにケーブル2の通過部分で直交方向から、内蔵するプランジャ51でケーブル2を挟持している。このような構造によって、各補助ガイド部材5A,5Bはケーブル2に沿って移動可能に当該ケーブル2に装着されている。
【0024】
このような構造によれば、上述した空孔としてのコンプレッサ吸気流路Pの、奥に向かって漸次小径となる空間内へケーブル2を挿入すると、
図8に示すように、ケーブル2の基端側にある最も大径の補助ガイド部材5Bがこれよりも小径となった吸気流路Pの内壁に阻まれてその移動を停止し、さらにケーブル2を挿入すると次はやや小径の補助ガイド部材5Aが、これよりも小径となった吸気流路Pの内壁に阻まれてその移動を停止する。
【0025】
このようにして、複数の補助ガイド部材5A,5Bがこれとほぼ同径となった吸気流路Pの長手方向の複数位置にそれぞれ留められる。これにより、ケーブル2が吸気流路Pのほぼ流路中心に補助ガイド部材5A,5Bによって保持され位置決めされることになり、カメラ3を装着したケーブル2の先端部21がより確実に位置決めされて、カメラ3で画像が取得された吸気流路Pの内壁の位置の特定がより容易となる。
【0026】
(他の実施形態)
ガイド部材および補助ガイド部材としては上記各実施形態で示した球体に限られず、例えば、ケーブルの外周から突出し湾曲する板バネ体のようなものでも良い。
ケーブルの先端にカメラを設けず、ケーブルを光ファイバーにしてケーブルの基端にカメラを設ける構造のものであっても良い。
【符号の説明】
【0027】
1…操作具、2…ケーブル、21…ケーブル先端部、3…カメラ、4…ガイド部材、5A,5B…補助ガイド部材、E…工業用内視鏡(遠隔画像取得手段)。