(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
寝具装置としてのベッドは快適な睡眠を行う上で不可欠なマットレスを有する。
【0003】
マットレスを寝心地のよい寝姿勢に保持する方法として、マットレスの素材を改良する方法及びマットレスの形状を変更する方法がある。
【0004】
マットレスの素材を改良する方法は、ユーザの身体形状に受動的に変化するのみで、個々のユーザに能動的に変化できない。
【0005】
他方、マットレスの形状を変更する方法としては、単一の空気ポンプで空気を流入させるベッド(参照:非特許文献1)、また、寝姿勢を変化させたり、時間的に変更する介護用ベッド(参照:非特許文献2)、さらに、複数のエアセル及び圧力センサを設け、体圧分散を図るエアーベッド(参照:特許文献1)さらにまた、体全体をブロック分割して空気圧で上下するアクチュエータを配置し、肩、脇、腰の接触圧を均一にし、体圧分散を図るベッド(参照:非特許文献3)がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る寝具装置の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1の袋状アクチュエータを示す写真であり(A)は無負荷状態を示し、(B)は負荷状態を示す。
【
図3】
図1の袋状アクチュエータの内圧特性図である。
【
図4】
図1の袋状アクチュエータの内圧と接触圧との関係を説明するための図である。
【
図5】
図4の袋状アクチュエータ上にユーザの腰部を負荷とした場合の内圧及び接触圧を示す図である。
【
図6】比較例としての接触圧センサ出力のみによるフィードバック制御を示す図である。
【
図8】
図1の制御ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図8のステップ801の検出接触圧分布を説明するためのグラフである。
【
図10】
図8のステップ802の人体骨格モデル及び最適接触圧分布を説明するための図である。
【
図11】
図8のステップ803における角度変位及び基準点高さを説明するための図である。
【
図12】
図8のステップ803のマットレス弾性力を説明するための図である。
【
図13】
図8のステップ804にて得られる絶対沈み込み量の例を示すグラフである。
【
図14】
図8のステップ804にて得られる弾性力の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る寝具装置の実施の形態を示す図である。
【0013】
図1において、マットレスの上部に2次元的に複数の袋状アクチュエータ1−1、1−2、…を配置し、また、各袋状アクチュエータ1−1、1−2、…内の圧力(内圧)を検知するための内圧センサ2−1、2−2、…を各袋状アクチュエータ1−1、1−2、…のチューブ1−1a、1−2a、…内に設け、さらに、チューブ1−1a、1−2a、…は圧力制御弁3−1、3−2、…を介して電動ポンプ4に接続され、空気が供給される。
【0014】
各袋状アクチュエータ1−1、1−2、…の外上面に人体Bとの接触圧を検出するためのシート状の接触圧センサ5−1、5−2、…を設ける。
【0015】
内圧センサ2−1、2−2、…、圧力制御弁3−1、3−2、…、電動ポンプ4、接触圧センサ5−1、5−2、…はマイクロコンピュータ等よりなる制御ユニット6に接続されている。制御ユニット6は内圧センサ2−1、2−2、…、接触圧センサ5−1、5−2、…の出力に応じて圧力制御弁3−1、3−2a、…及び電動ポンプ4つまり袋状アクチュエータ1−1、1−2、…の内圧をフィードバック制御する。尚、
図1には図示していないが、マットレスと人体Bの頭部との間には
図7に示す枕7が挿入されている。
【0016】
図2は
図1の袋状アクチュエータ1−1、1−2、…を示す写真であり、(A)を無負荷状態を示し、(B)は負荷状態を示す。
【0017】
図2の(A)に示すように、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…は、チューブ状ホース(消防ホース)を適切な長さで切断して両端を熱溶着して気密構造とし、内部に空気を流入できる構造となっている。また、
図2の(B)に示すように、たとえば負荷約600Nを印加しても、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…は破壊に至らず、従って、マットレスに対して十分耐える耐圧性を有することが分る。従って、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…は形状及び剛性を変化させることによってユーザの各身体部を支持することができる。また、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…はその半径を変化させることにより機械的特性たとえば内圧に対する変形率及び剛性を異ならせることができる。尚、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…の長さはその機械的特性にほとんど影響しない。従って、ユーザの各身体部に対して径の異なる袋状アクチュエータ1−1、1−2、…を組合わせることによりユーザの各身体部を効果的に支持できる。
【0018】
図3は
図1の袋状アクチュエータ1−1、1−2、…の内圧特性図である。
【0019】
図3に示すように、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…は目標内圧10kPa〜100kPaに35s以内に到達し、その後、目標内圧を維持していることが分る。そのとき、各袋状アクチュエータ1−1、1−2、…に供給される空気圧は少量であり、従って、圧力制御弁3−1、3−2、…、電動ポンプ4及び制御ユニット6は軽量小型であり、これらに必要な電源も電池でも可能となる。
【0020】
図4は
図1の袋状アクチュエータ1−1、1−2、1−3の内圧と接触圧との関係を説明するための図である。この場合、袋状アクチュエータ1−1、1−2、1−3の内圧は同一とし、ユーザの腰部を負荷とした場合の袋状アクチュエータ1−1、1−2、1−3の接触圧を
図5に示す。
【0021】
図5の(A)に示すように、内圧が0kPaのときに、袋状アクチュエータ1−1、1−2、1−3の接触圧センサ5−1、5−2、5−3は接触圧36、38、58g/cm
2を示し、
図5の(B)に示すように、内圧が5kPaのときに、袋状アクチュエータ1−1、1−2、1−3の接触圧センサ5−1、5−2、5−3は接触圧42、44、55g/cm
2を示し、
図5の(C)に示すように、内圧が50kPaのときに、袋状アクチュエータ1−1、1−2、1−3の接触圧センサ5−1、5−2、5−3は接触圧49、50、52g/cm
2を示す。このように、内圧が0、5、50kPaと変化すると、腰部が変化して接触圧が変化するが、内圧と接触圧とは相関がないことが分る。従って、ユーザの体圧分布を調整するには、内圧及び接触圧が必要であることが分る。
【0022】
図1の制御ユニット6のフィードバック制御の説明の前に比較例としての接触圧センサ出力のみによるフィードバック制御を
図6を参照して説明する。
【0023】
図6の(A)において、矢印に示すごとく、ユーザの腰関節が回転すると、接触圧センサ出力の接触圧分布が腰関節で大きくなる。従って、接触圧分布を単純に均一にしようとするフィードバック制御を行い、接触圧が大きい腰関節の内圧を減少させて他の部位の接触圧を上昇させると、
図6の(B)に示すごとく、接触圧分布は分散されずさらに集中し、ユーザの腰関節がさらに屈曲する状態となる。
【0024】
図7は本発明の人体骨格モデルを説明するための図である。
【0025】
図7の(A)に示すように、仰臥位安定姿勢の人体Bにおいては、首関節、腰関節、膝関節において屈折方向が異なり、また、頭部、胴部、上腿部、下腿部の骨格も異なる。これらを簡略化して、
図7(B)に示すごとく、4つの偏心重力W
1、W
2、W
3、W
4を有する体節B
1、B
2、B
3、B
4を回転対偶により連結された2次元人体骨格モデルを導入する。本発明においては、
図7(B)に示す人体骨格モデルに関節角度及び基準位を初期値として与えてシミュレーションにより就眠中のユーザに最適な接触圧分布を確立する。そして、この最適な接触圧分布を実現するように袋状アクチュエータ1−1、1−2、…の内圧を増減する。
【0026】
次に、
図1の制御ユニット6の動作を
図8を参照して詳細に説明する。尚、
図8の割込みルーチンは所定時間たとえば1分毎に実行される。つまり、上述のごとく、袋状アクチュエータ1−1、1−2、…は最大内圧100kPaに到達するのに40s以内であるので、
図8の割込みルーチンは1分毎で十分であり、この結果、省エネルギーが図れる。
【0027】
始めに、ステップ801にて、接触圧センサ5−1、5−2、…から接触圧データを取込み、
図9に示す検出接触圧分布を記憶する。
【0028】
次に、ステップ802にて、
図9に示す検出接触圧分布から
図10に示す人体骨格モデル及び目標接触圧分布を選択する。この場合、制御ユニット6は予め多数の人体骨格モデルを目標接触圧分布と共に記憶しており、接触圧分布以外にマットレス形状、ユーザの重量等を参考にして
図10に示す人体骨格モデルをその目標接触圧分布と共に選択する。
【0029】
次に、ステップ803にて、人体骨格モデルの各体節B
iに相対角度変位Δθ
iを与えかつ共通の基準点hを与える。尚、与えられる相対角度変位値Δθ
iは前段の体節B
iー1の角度に対する相対的角度変位であり、検出接触圧分布と目標接触圧分布との差を考慮して定める。
【0030】
次に、ステップ804にて、角度変位された人体骨格モデルの各体節B
iの作用点j=1、2、3(袋状アクチュエータ位置)におけるマットレスの弾性力f
i1、f
i2、f
i3を求める。すなわち、
図12に示すごとく、体節B
iに作用する力と作用位置までのベクトル図を示す
図11において、垂直方向の釣り合いから、
【数1】
また、体節B
iのモーメントの釣り合いから、
【数2】
但し、W
iは体節B
iの重心に作用する重力、
f
i1、f
i2、f
i3はマットレスの作用点j=1、2、3から作用する弾性力
f
i1、f
i+1は隣接する体節B
i−1、B
i+1から反力
となる。弾性力f
i1、f
i2、f
i3は各体節B
iの相対角度変位Δθ
i及び絶対沈み込み量d
i1、d
i2、d
i3から計算する。ここで、絶対角度変位θ
iは、
【数3】
で表される。また、上述のごとく、各体節B
iに相対角度変位Δθ
i及び基準点の高さhを与えて式(1)、(2)からなる非線形多元連立方程式を数値解析で弾性力f
i1、f
i2、f
i3を解く。すなわち、体節B
iの変形前の角度を基準とした作用点j=1、2、3の座標(rf
ij−x、rf
ij−y)から、絶対角度変位θ
iが与えられた作用点j=1、2、3の座標は(4)式
【数4】
で与えられる。体節B
iの支点jの絶対沈み込み量Z
iは、
Z
1=h
Z
2=h+l
2sinθ
2
Z
3=h+l
2sinθ
2+l
3sinθ
3
但し、l
2、l
3は体節B
2、B
3の長さであり、体節B
1、B
2、B
3の絶対角度変位θ
1、θ
2、θ
3を(3)式から、
θ
1=Δθ
1
θ
2=Δθ
1+Δθ
2
θ
3=Δθ
1+Δθ
2+Δθ
3
とする。従って、体節B
iの絶対沈み込み量d
ij(j=1、2、4)は、式(5)
【数5】
で表され、各作用点j=1、2、3の弾性力f
ij(j=1、2、3)は式(6)
【数6】
で表される。たとえば、得られた絶対沈み込み量d
ij及び弾性力f
ijの例を
図13、
図14に示す。
【0031】
次に、ステップ805にて、ステップ804にて得られた弾性力に基づいて角度変位後人体骨格モデルの各体節B
iの角度変位後接触圧分布を演算する。尚、弾性力と接触圧とは所定の関係を有し、この関係を予め記憶しておき、この関係を利用して弾性力を接触圧に変換することによって接触圧分布を演算する。
【0032】
次に、ステップ806にて、ステップ805にて得られた角度変位後接触圧分布とステップ802にて選択された目標接触圧分布との分布の差を演算する。たとえば、各作用点における接触圧差の絶対値を加算することによって上述の分布差を演算する。
【0033】
上述のステップ803〜806は、他の角度変位及び基準点高さを与えて複数回繰返す。
【0034】
次に、ステップ807にて、複数の角度変位後人体骨格モデルのうち、分布差が最小つまり角度変位後接触圧分布が目標接触圧分布に一番近いものを最適角度変位後接触圧分布として選択する。
【0035】
次に、ステップ808にて、ステップ807において選択された最適角度変位後接触圧分布とステップ801において検出された検出接触圧分布との差に応じた内圧を増減して袋状アクチュエータ1−1、1−2、…の内圧を制御する。つまり、各圧力制御弁3−1、3−2、…を制御して内圧センサ2−1、2−2、…の内圧データが上記増減された内圧となるようにすることにより最適角度変位後接触圧分布を実現する。
【0036】
そして、ステップ809にて、
図8の割込みルーチンは終了する。
【0037】
上述の実施の形態において、人体骨格モデルの精度を上げて多数準備し、各人体骨格モデルに対して快適な仰臥位、横臥位等の寝姿勢の目標接触圧分布を準備することによって個人毎に快適な寝姿勢をリアルタイムで実現できる。
【0038】
尚、上述の実施の形態においては、枕7に袋状アクチュエータを設けていない。従って、接触圧はマットレスと枕7との間で発生している。しかし、枕7に袋状アクチュエータを設けることもできる。この場合、接触圧は枕と頭部との間に発生し、制御ユニット6は枕7内の袋状アクチュエータの内圧センサ及び接触圧センサをも用いてマットレス上の袋状アクチュエータと共に枕7内の袋状アクチュエータを制御する。つまり、マットレス1及び枕7上の検出接触圧分布がマットレス1及び枕7内の目標接触圧分布に近づくように袋状アクチュエータの内圧を制御する。
【0039】
また、上述の実施の形態においては、体節の数を3としているが、他の数になし得る。
【0040】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用できる。