特許第6795810号(P6795810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795810
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】エアフィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20201119BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20201119BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20201119BHJP
   D01F 6/76 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B01J20/18 B
   G21F9/02 511S
   G21F9/02 511A
   B01J20/30
   D01F6/76 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-160327(P2016-160327)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-27522(P2018-27522A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503162265
【氏名又は名称】株式会社カサイ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(72)【発明者】
【氏名】笠井 信一
(72)【発明者】
【氏名】大城 優
(72)【発明者】
【氏名】小林 高臣
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/187505(WO,A1)
【文献】 特開2006−297382(JP,A)
【文献】 特開昭60−019021(JP,A)
【文献】 特開平02−157040(JP,A)
【文献】 特開2013−127372(JP,A)
【文献】 特開平07−155588(JP,A)
【文献】 特開2013−136033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/28
B01J 20/30 − 20/34
B01D 45/00 − 45/18
G21F 9/02
D01F 1/00 − 6/96
D01F 9/00 − 9/04
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト粒子が分散したポリスルホンの溶液を調製する溶液調製工程と、この溶液を水中に押し出してゼオライト粒子を担持したポリスルホンの繊維を成形する繊維成形工程と、この繊維を加熱しながら加圧してペレット化するペレット化工程とを備えたことを特徴とするエアフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる有害物質を除去するためのエアフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災における原子力発電所の事故の影響で、大量の放射性セシウムが拡散した。しかし、水に溶解した放射性セシウムを水から除去するための放射性セシウム吸着繊維は、ほとんど知られていなかった。なお、特許文献1には、金属イオン吸着性の変性アクリロニトリルポリマーが開示されているが、セシウムは対象となっていない。また、特許文献2には、セシウムを吸着することができるとの記載があるが、実際にセシウムを吸着したデータはない。また、ゼオライト粉末は放射性セシウムを吸着することが知られているが、ゼオライト粉末の回収は極めて困難であり、また、ゼオライトは一旦吸着した放射性セシウムを放出する性質があるため、放射性セシウムの回収には向いていなかった。
【0003】
このような背景から、本発明者らは、水に溶解した放射性セシウムを効率的に吸着、回収することのできる、放射性セシウム吸着繊維及びその製造方法を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−70231号公報
【特許文献2】特開2006−26588号公報
【特許文献3】国際公開第WO2013/187505号パンフット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放射性セシウムは、ミスト(霧状の水)に溶解した状態で空気中に含まれる場合がある。したがって、特に、原発事故の際の避難場所の建物内部へ空気を取り入れる際は、このような空気中に含まれる放射性セシウムを除去する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、ミスト(霧状の水)に溶解した状態で空気中に含まれる放射性セシウムを除去することができる、エアフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、N−メチルピロリドン(NMP)にポリスルホンを溶解するとともにゼオライトを分散させ、これを水中にシリンジを用いて押し出すことにより得られた、ゼオライトを担持した多孔質のポリスルホンを、所定の温度で加熱しながら加圧することでペレット化したものをエアフィルターとして用いた場合に、空気中に含まれる放射性セシウムを除去することができ、さらに、空気中に含まれるアンモニアをも除去することができることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明のエアフィルターの製造方法は、ゼオライト粒子が分散したポリスルホンの溶液を調製する溶液調製工程と、この溶液を水中に押し出してゼオライト粒子を担持したポリスルホンの繊維を成形する繊維成形工程と、この繊維を加熱しながら加圧してペレット化するペレット化工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミスト(霧状の水)に溶解した状態で空気中に含まれる放射性セシウムや、空気中に含まれるアンモニアを除去することができる、エアフィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】放射性セシウムを含むミストの除去試験に用いた実験装置概略図である。
図2】アンモニアの除去試験に用いた実験装置概略図である。
図3】アンモニアの除去試験の結果を示すグラフである。
図4】アンモニアの除去試験の結果を示すグラフである。
図5】アンモニアの除去試験の結果を示すグラフである。
図6】アンモニア除去率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエアフィルターの製造方法は、原料として、ポリスルホン、ゼオライト粒子、ポリスルホンを溶解するための溶媒を用い、ゼオライト粒子が分散したポリスルホンの溶液を調製する溶液調製工程と、この溶液を水中に押し出してゼオライトを担持したポリスルホンの繊維を成型する繊維成形工程と、この繊維を加熱しながら加圧してペレット化するペレット化工程とを備える。本発明のエアフィルターの製造方法により製造されるエアフィルターは、多孔質のゼオライト粒子を担持した多孔質のポリスルホンであり、ポリスルホンに微細孔が形成された構造となっていて通気性が良好であるとともに、ポリスルホン中のゼオライト粒子の分散性が良好であることから、空気中の放射性セシウムを含むミストや、空気中のアンモニアを極めて効率的に吸着することができる。
【0012】
はじめに、溶液調製工程では、ゼオライト粒子が分散したポリスルホンの溶液を調製する。ここで、ポリスルホンを溶解するための溶媒としては、極性の高い有機溶媒が用いられ、N−メチルピロリドン(NMP)、蟻酸、n−ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランが好ましい。また、ゼオライト粒子としては、150メッシュ以下のものが好ましい。
【0013】
また、溶液調製工程において、ポリスルホンを溶媒に溶解する際には、30〜100℃に溶媒を加温することによりポリスルホンの溶解が早くなる。また、溶液中のポリスルホン含有量は、10〜30質量%が好ましく、溶液中のゼオライト粒子含有量は、20〜30質量%が好ましい。なお、必要に応じて、その他の成分を溶液に添加してもよい。
【0014】
つぎに、繊維成形工程では、溶液調製工程において調製した溶液を水中に押し出してゼオライトを担持したポリスルホンの繊維を成形する。
【0015】
繊維成形工程において、射出に用いられる水の温度を50℃程度とすることにより、溶媒の水への溶け出しが早く、繊維が形成されやすい。
【0016】
そして、ペレット化工程では、繊維成形工程において成形した繊維を加熱しながら加圧してペレット化する。ここで、所定の形状に成形するために、金型を用いるのが好ましい。
【0017】
ペレット化工程において加圧する圧力の範囲は、ペレット化ができる値であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、20〜200kgf/cmとすることができる。
【0018】
以下、本発明のエアフィルターの製造方法と、本発明のエアフィルターの製造方法により得られたエアフィルターについて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【実施例1】
【0019】
(1)エアフィルターの製造
原料として、ポリスルホン、ゼオライト粒子、NMPを用いた。
【0020】
室温にて、ポリスルホン30質量%、ゼオライト粒子30質量%、NMP40質量%となるように原料を混合し、ゼオライト粒子が分散したポリスルホンの溶液を作製した。この溶液をシリンジに入れ、シリンジの先を水中に入れた状態でシリンジの先から溶液を水中に押し出すと、水中に繊維が成形された。得られた繊維は、多孔質のポリスルホン中にゼオライト粒子が取り込まれている構造を有していた。
【0021】
つぎに、内径40mmのステンレス製の円筒内に上記で作製した繊維を入れ、油圧プレス機を用いて100kgf/cmの圧力で加圧してペレット化し、直径40mm、厚さ約10mmのエアフィルターを得た。
【0022】
(2)放射性セシウムを含むミストの除去試験
製造したエアフィルターを用いて、放射性セシウムを含むミストの除去試験を行った。試験に用いた実験装置概略図を図1に示す。
【0023】
超音波霧化装置を用いて、放射性セシウムを含む検体液を霧化して直径約4μmのミストを生成させた。このミストを含む気体をドライ真空ポンプにより吸引し、吸着装置に設けられた吸着材(エアフィルター)と接触させた。吸着材を通過した気体を氷水で冷却されたトラップに導き、気体に含まれる水分を凝縮させて検出液として回収した。
【0024】
吸着材としては、本実施例のエアフィルターのほか、比較例として、本実施例のエアフィルターと同じサイズ(直径40mm、厚さ約10mm)に加工した、外気処理用の中性フィルターとして用いられる市販のポリエステルモダアクリル製のフィルター(比較例1)と、業務用及び家庭用エアコンのフィルターとして用いられる市販のウレタン樹脂性のフィルター(比較例2)を用いて、同条件にて試験を実施した。
【0025】
そして、試験前の検体液の放射性セシウム濃度と、試験後の検出液の放射性セシウム濃度を測定し、計算式{(試験前検体液放射性セシウム濃度−試験後検出液放射性セシウム濃度)/試験前検体液放射性セシウム濃度}×100により、放射性セシウムの除去率を求めた。
【0026】
その結果を下表に示す。比較例1、2ではほとんど放射性セシウムを除去できなかったが、実施例では、約90%の放射性セシウムを除去することができた。
【0027】
【表1】
【0028】
(3)アンモニアの除去試験
製造したエアフィルターを用いて、アンモニアの除去試験を行った。試験に用いた実験装置概略図を図2に示す。
【0029】
アンモニア検知機を備えた約78Lの密閉容器中にアンモニアの気体発生源を収容し、アンモニアを発生させた。アンモニアの初期濃度は、49.4ppmであった。このアンモニアを含む気体をドライ真空ポンプにより6L/分の吸引速度で吸引し、吸着カラム(断面積約9.6cm、長さ約38cm、容積約365cm)に充填した吸着材(エアフィルター)(充填量102g、充填密度約279g/L)と面速度約104cm/秒で接触させた。また、気体は密閉容器と吸着カラムの間を循環させた。
【0030】
そして、密閉容器に設けたアンモニア検知機により、アンモニア濃度を測定した。
【0031】
その結果を図3〜5に示す。本実施例の吸着材(エアフィルター)は、アンモニアを除去することができた。
【0032】
この結果をもとに、一般公衆トイレ(10m×5m×3m)の想定空間150mにおいて、アンモニア除去率のシミュレーションを行った。吸着材(エアフィルター)は、断面積0.25m、長さ2.5cm、体積6250cm、重量6.25km(比重を1とする)と想定した。また、面速度は、公衆トイレ内の水が飛び散らない速度の2.5m/秒とし、それに合わせて通気速度は0.625m/秒(37500L/分)とした。
【0033】
アンモニアの初期濃度を50ppmとして計算したところ、図6に示すように数分でアンモニアの80%以上を除去することができるという結果が得られ、本発明のエアフィルターが公衆トイレのアンモニア除去に使用可能であることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6