特許第6795818号(P6795818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6795818
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   E02D3/115
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-35167(P2020-35167)
(22)【出願日】2020年3月2日
【審査請求日】2020年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(73)【特許権者】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷室 裕久
(72)【発明者】
【氏名】片野坂 明
【審査官】 田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−084641(JP,A)
【文献】 特開平09−053236(JP,A)
【文献】 特開2012−207450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/115
E02D 7/00−7/30
E02D 9/00−9/04
E02D 11/00
E02D 13/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルのスキンプレートに対して固定されたスリーブ管に対し、当該スリーブ管に通された長尺部材を保持する保持装置であって、
前記長尺部材が通される筒状部と、
前記スリーブ管に対し前記筒状部を同心状に接続する接続部と、
前記筒状部に通された前記長尺部材を、前記筒状部に対して固定する固定位置と非固定位置とで切替え可能な保持部と、
を備える、
保持装置。
【請求項2】
前記保持部は、
前記筒状部に対して固定されたベースと、
前記筒状部の中心軸回りの周方向に沿って間隔をおいて配置され、かつ前記中心軸に直交する方向に移動可能に前記ベースに取り付けられた複数の移動体と、
を有し、
前記複数の移動体は、前記保持部が前記固定位置に切り替えられると、前記長尺部材に対して、前記中心軸に直交する方向に沿う荷重を加えるように構成されている、
請求項1記載の保持装置。
【請求項3】
前記複数の移動体の各々は、前記長尺部材に接触する部分が弾性体によって構成されている、
請求項2記載の保持装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記保持部が前記固定位置に切り替えられると、前記長尺部材の軸回りの周方向の全長にわたって接触する、
請求項3記載の保持装置。
【請求項5】
前記保持部は、長尺部材としての配管を、前記筒状部に対して固定可能に構成されている、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に関し、より詳細には、スリーブ管に通された長尺部材を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、地盤凍結工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。地盤凍結工法は、工事予定箇所の周囲の土を凍結させて、工事予定箇所を保護するための凍土壁を作ったうえで工事を行う工法である。地盤凍結工法では、例えば、凍結管を地中に埋め込み、当該凍結管にブラインを通して周囲の土を凍結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−148104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、凍結管等の地中に埋め込む配管は長尺であるため、一つの配管を現場に持ち込んで埋め込むことは、運搬性や作業性の点で難しい。そこで、施工時には、比較的短尺の配管を溶接やねじ接続等によって継ぎ足しながら、地中に埋め込んでゆく。
【0005】
しかし、配管を地中に埋め込むと、当該配管には、地下水等の水圧や土圧等による押し返される力が加わる。このため、作業者は、配管同士を継ぎ足しながら地中に埋め込むことが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、部材を、例えば溶接、ねじ接続等によって継ぎ足しながら地中に埋め込む際に、接続作業を行いやすくできる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の保持装置は、スリーブ管に通された長尺部材を保持する保持装置であって、前記長尺部材が通される筒状部と、前記スリーブ管に対し前記筒状部を同心状に接続する接続部と、前記筒状部に通された前記長尺部材を、前記筒状部に対して固定する固定位置と非固定位置とで切替え可能な保持部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る上記態様の保持装置は、部材を、例えば溶接、ねじ接続等によって継ぎ足しながら地中に埋め込む際に、接続作業を行いやすくできる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A)(B)(C)は、同上の地盤凍結工法の概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る地盤凍結工法のフローチャートである。
図3図3(A)は、同上の地盤凍結工法における埋設管施工工程で用いられる止水装置の概略図である。図3(B)は、図3(A)のA部分拡大図である。
図4図4は、同上の地盤凍結工法において、スリーブ管を固定した後に、挿通孔を形成する工程を説明する断面図である。
図5図5は、同上の地盤凍結工法において、配管を継ぎ足しながら地中に埋め込んでゆく工程を説明する断面図である。
図6図6は、同上の地盤凍結工法において、凍結管、凍結ユニット及びクーリングタワーを示すブロック図である。
図7図7は、同上の地盤凍結工法に用いられる保持装置の図8のX1−X1線断面図である。
図8図8は、同上の保持装置の保持部における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態
(1.1)地盤凍結工法
本実施形態に係る保持装置7は、主に、地盤凍結工法において、凍結管11、測温管(不図示)及び温水管(不図示)を地中に埋める際に使用される。まずは、地盤凍結工法について概要を説明し、次に本実施形態に係る保持装置7について詳細に説明する。
【0011】
地盤凍結工法は、地中の工事を行う際に、工事予定箇所X1の周囲の土を凍結させて、工事予定箇所X1を保護するための凍土壁W1(「遮水壁」又は「耐力壁」という場合がある)を作ったうえで、工事を行う工法である。以下、既設のトンネルに対して当該トンネルよりも径が大きい分岐路を接合するために、トンネルの一部を拡径する工事に基づき、地盤凍結工法を説明する。なお、当該工事は、地盤凍結工法を適用した一例に過ぎない。
【0012】
地盤凍結工法は、図2に示すように、埋設管施工工程S1と、設備設置工程S2と、凍結工程S3と、土木工事工程S4と、解凍工程S5と、を備える。
【0013】
(1.1.1)埋設管施工工程
埋設管施工工程S1は、地盤凍結工法で使用する複数の配管1(長尺部材)を地中に埋め込む工程である。複数の配管1は、複数の凍結管11、複数の測温管及び複数の温水管である。凍結管11は、ブライン(冷却液)が通ることで、凍結管11の周囲の土を凍結させ、凍土を形成する。凍結管11は、例えば、内管と外管との二重管構造になっており、内管がブラインヘッダ61(図6)の送り側に接続され、外筒がブラインヘッダ61の返り側に接続されている。ブラインヘッダ61から供給されたブラインは、内管を通って凍結管11の端部まで移動し、外管と内管との間を通ってブラインヘッダ61に戻るように循環し、その際、凍結管11の周囲の土と熱交換を行って、当該土を凍結させる。
【0014】
測温管(不図示)は、凍結管11の周辺において、凍結管11に沿って配置され、土層の温度を測定する。測温管には、例えば、光ファイバセンサ、熱電対等の温度センサが収容されており、温度センサによって、複数の測温箇所で温度の測定が行われる。複数の測温箇所は、例えば、測温管の長手方向に一定の間隔をおいて設定されている。
【0015】
温水管(不図示)は、土を加熱することで、凍結管11による土の凍結の範囲を設計された範囲に抑える。複数の温水管は、トンネルの長手方向に直交する断面において、複数の凍結管11の配置エリアを囲むようにして配置されており、すなわち、複数の凍結管11に対して、トンネルの径方向の外側に配置されている。
【0016】
凍結管11、測温管及び温水管は、凍土を形成すべき範囲(設計範囲)に応じて、長さ、数量及び配置位置が設定される。凍結管11、測温管及び温水管の材質は、例えば、溶接やねじ接続等によって継ぎ足し可能であれば特に制限はなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、炭素鋼、合金鋼等が挙げられる。凍結管11、測温管及び温水管の各々の長さは、特に制限はないが、例えば、4m、5m、14m、17m、20m、22m等である。凍結管11、測温管及び温水管の各々の全体の長さは長尺であるため、施工時には、複数の配管1を継ぎ足しながら、地中に埋め込んでゆく。以下では、複数の配管1を継ぎ足す一例として、溶接によって接続する例を挙げて説明する。
【0017】
埋設管施工工程S1では、図3に示すような止水装置2が用いられる。止水装置2は、トンネルのスキンプレート9を貫通した挿通孔91に対応して設置されており、挿通孔91を通して地中へ配管1を埋め込みながら、挿通孔91を通って出た水(例えば、地下水)が、トンネル内に漏れ出るのを抑制することができる。止水装置2は、スリーブ管3と、止水バルブ4と、保持装置7と、パッカー5と、を備える。パッカー5は、開口部51を有しており、当該開口部51から配管1が挿し入れられる。
【0018】
スリーブ管3は、トンネルのスキンプレート9から立ち上げられている。スキンプレート9には、上述の通り、挿通孔91が形成されており、スリーブ管3は、挿通孔91を介して地中(トンネル外)に通じている。スリーブ管3は、スキンプレート9に対して固定されている。スキンプレート9とスリーブ管3との固定は、例えば、溶接、ねじ込み、ねじ止め等により実現されるが、ここでは、溶接によって、スリーブ管3とスキンプレート9とが接合されている。スリーブ管3の中心軸は、スキンプレート9の表面に対して傾斜している。スキンプレート9に対するスリーブ管3の角度は、特に制限はなく、例えば、直交していてもよい。
【0019】
挿通孔91は、例えば、次のようにして形成される。まずは、挿通孔91が形成されていないスキンプレート9に対して、スリーブ管3を固定する。次いで、図4に示すように、ボーリングマシンM1を用いて、スリーブ管3にケーシング100を挿し入れ、スリーブ管3の内部からスキンプレート9を打ち抜く。その後、打ち抜いたスキンプレート9の一部(これを「スキンプレートコア92」という)をスリーブ管3から取り出す。これによって挿通孔91が形成される。ただし、スリーブ管3は、工事時にスキンプレート9に取り付けるのではなく、トンネル造設時にセグメントに予め設置してもよい。
【0020】
図3(A)に示すように、スリーブ管3の長手方向の端のうちの一方の端は、上述の通りスキンプレート9に固定されているが、他方の端にはフランジ31が形成されている。フランジ31には、止水バルブ4が取り付けられている。
【0021】
止水バルブ4は、水の通過を妨げる。止水バルブ4は、通水路(不図示)と、通水路に設けられた弁体(不図示)と、弁体を駆動するハンドル41と、を備える。通水路は、止水バルブ4の内部に形成されており、第一継手42の中央に形成された開口と、第二継手43の中央に形成された開口とを通じさせる。通水路は、略直線状に形成されている。弁体は、ハンドル41を操作することによって、水の通過を許す通水位置と、水の通過を妨げる止水位置と、に切替えられる。弁体が通水位置に切り替えられると、挿通孔91を通って出た水が通水路を通り得るが、開口部51から通された配管1についても、通水路を通り得る。止水バルブ4としては、例えば、ゲートバルブ、チャッキバルブ、ボールバルブ等が挙げられる。
【0022】
保持装置7は、開口部51から挿し入れられてスリーブ管3に通された配管1を保持する。開口部51から挿し入れられた配管1が、スリーブ管3及び挿通孔91に通されると、当該配管1に対し、トンネル外からトンネル内に向かう力(水圧)が加わる。このため、配管1を溶接によって継ぎ足す際、配管1を固定しないと、作業者は溶接作業を行いにくいが、保持装置7によれば、スリーブ管3に対して配管1を固定することができるため、溶接時の作業効率を向上させることができる。保持装置7の構造については、後述の「(1.2)保持装置」で詳細に述べる。
【0023】
パッカー5は、開口部51に配管1を通した状態で、開口部51から水が漏れ出るのを抑制する。パッカー5は、図3(B)に示すように、筐体52と、スタッフィングボックス53と、スタッフィングボックス53に収容されるグランドパッキン54と、グランドパッキン54を押し込むパッキン押え55と、を備える。パッキン押え55は、円筒部551と、円筒部551の軸方向の一方の端に設けられた鍔部552と、を備える。開口部51は、鍔部552の内周縁に囲まれた開口により構成されている。スタッフィングボックス53及びグランドパッキン54は、筐体52に収容される。
【0024】
スタッフィングボックス53は円筒状に形成されており、その内周面に沿ってグランドパッキン54が巻かれて配置されている。巻かれた状態のグランドパッキン54の中央に配管1が通され、この状態でパッキン押え55をグランドパッキン54に向かって押し込むと、円筒部551がグランドパッキン54を押圧し、グランドパッキン54が配管1の外周面に密着する。これによって、パッカー5は、開口部51に配管1を通した状態で、開口部51から水が漏れ出るのを抑制することができる。
【0025】
埋設管施工工程S1の手順としては、まずは、スキンプレート9に止水装置2を設置する。次いで、図4に示すように、ボーリングマシンM1のケーシング100を開口部51に挿し入れ、スキンプレート9に対して挿通孔91を形成する。スキンプレートコア92を取り除いたうえで、図5に示すように、開口部51からボーリングマシンM1を用いて配管1を挿し入れる。
【0026】
配管1を挿し入れてゆき、開口部51に当該配管1の端部が近付いた場合、図5に示すように、保持装置7を操作して、当該配管1Aを固定する。そして、別の配管1Bを溶接(溶接部分12)によって継ぎ足し、再び、保持装置7の保持を解除して、ボーリングマシンM1を用いて配管1を埋め込んでゆく。
【0027】
これを繰り返すことで、図1(A)に示すように、長尺な配管1を地中に埋め込むことができる。
【0028】
(1.1.2)設備設置工程
設備設置工程S2は、地中に埋め込んだ配管1(凍結管11及び温水管)との間で、流体を循環させるための設備6を設置する工程である。凍結管11に接続される設備6(以下、「冷凍設備」という)は、図6に示すように、ブラインヘッダ61と、凍結ユニット63と、クーリングタワー62と、を備える。また、温水管に接続される設備6(以下、「温水設備」という)は、温水を生成する熱源機(不図示)を備える。設備6は、地上とトンネルとに適宜分散して設置されており、チューブ等の流路を介して、地中に埋め込んだ配管1に接続される。
【0029】
凍結ユニット63は、凍結管11との間で循環するブラインを冷却する。実際には、凍結ユニット63と凍結管11との間に、ブラインヘッダ61が介在しており、ブラインヘッダ61によって、ブラインを複数の凍結管11に分配することができる。凍結ユニット63は、図6に示すように、圧縮機631、凝縮器632、膨張弁633及び冷却器634を備えた冷凍サイクルを実現する装置により構成されている。
【0030】
クーリングタワー62は、冷却水を冷却する装置であり、凝縮器632との間で冷却水を循環することで、凝縮器632での熱媒の凝縮を促進する。クーリングタワー62は、凝縮器632において、熱媒と冷却水との間で熱交換を行い、冷却水が熱媒から受け取った熱を排熱する。クーリングタワー62は、向流型(カウンタフロー型)であってもよいし、直交流型(クロスフロー型)であってもよい。また、クーリングタワー62は、開放式であってもよいし、密閉式であってもよい。
【0031】
(1.1.3)凍結工程
凍結工程S3は、凍結管11と凍結ユニット63との間でブラインを循環することで、凍土を形成する工程である。図1(B)に示すように、凍結管11と凍結ユニット63との間でブラインを循環し続けると、凍結管11の周囲が凍結して柱状の凍土(凍土柱)ができ、更にブラインの循環を続けると、柱状の凍土がつながって、壁状の凍土(凍土壁W1)ができる。これによって、工事予定箇所X1の周囲に凍土壁W1が形成される。凍土壁W1は、地下水がトンネル内に流入するのを遮る遮水壁としての機能と、崩落等を防ぐ耐力壁としての機能を果たす。
【0032】
(1.1.4)土木工事工程
土木工事工程S4は、凍結工程S3で凍土壁W1が形成された後、工事予定箇所X1に対して土木工事を行う工程である。本実施形態に係る土木工事工程S4では、図1(C)に示すように、例えば、油圧ショベル等の建設機械M2を用いて、工事予定箇所X1を掘削し、トンネルの一部を拡大し、拡大した部分の内周面に対して、セグメントを組み上げて壁面を構築する。
【0033】
(1.1.5)解凍工程
解凍工程S5は、凍結工程S3で形成した凍土壁W1を解凍する工程である。解凍工程S5では、凍結管11に対して高温の流体を流し、凍土壁W1を強制的に解凍する。
【0034】
(1.2)保持装置
次に、本実施形態に係る地盤解凍工法の埋設管施工工程S1で使用した保持装置7について説明する。保持装置7は、図7に示すように、一対の取付け部材71と、保持部8と、を備える。
【0035】
取付け部材71は、保持部8を隣接する他の部材に取り付けるための部材である。一対の取付け部のうちの一の取付け部には、スリーブ管3が取り付けられ、もう一方の取付け部にはパッカー5が取り付けられる。取付け部材71の材質は、アルミニウム合金(ジュラルミン)により構成されるが、本発明では、これに限らず、例えば、チタン合金、ステンレス、スチール、炭素鋼、カーボン、鉛、鋼、セラミック、繊維強化プラスチック等により構成されてもよい。各取付け部材71は、図7に示すように、筒状部72と、接続部73と、取着部74と、を備える。
【0036】
筒状部72は、取付け部材71において筒状に形成された部分である。一対の取付け部材71において、隣り合う筒状部72の中心軸は、一直線上に位置する。筒状部72は、スリーブ管3の内径と略同じ内径となるように円筒状に形成されている。ただし、筒状部72は、円筒状に限らず、角筒状に形成されてもよい。
【0037】
接続部73は、筒状部72の軸方向の端に設けられている。一対の取付け部材71のうちのスリーブ管3に隣接する取付け部材71の筒状部72は、スリーブ管3に対し、接続部73によって同心状に接続される。一対の取付け部材71のうちのパッカー5に隣接する取付け部材71の筒状部72は、接続部73によってパッカー5に接続される。本実施形態に係る接続部73は、フランジであるが、本発明では、隣接する他の部材等に接続可能であればよく、例えば、嵌め合い、ねじ込み、カップリング、ソケット、ユニオン、ニップル、ヘルール等で接続する構造であってもよい。
【0038】
取着部74は、保持部8が取り付けられる部分である。取着部74は、筒状部72の軸方向の接続部73とは反対側の端部に設けられている。取着部74は、筒状部72に鍔状に形成されたプレートで構成されており、筒状部72に対して固定されている。筒状部72と取着部74との固定は、例えば、溶接、ねじ込み、嵌め合い、ねじ止め、一体成形等によって実現される。
【0039】
保持部8は、筒状部72に通された配管1(長尺部材)を保持し得る。保持部8は、筒状部72に対して固定する固定位置と、非固定位置とで切替え可能に構成されている。保持部8は、筒状部72に通された配管1に対して、配管1の径方向の外側から中央側に向かう力を加え、これによって、配管1を保持する。保持部8は、隣り合う一対の筒状部72の間に配置されている。保持部8は、図8に示すように、一対の取着部74の間に配置されるベース81と、複数(ここでは三つ)の移動体82と、複数の操作軸83と、複数の止水板84と、を備える。
【0040】
ベース81は、一対の取着部74に対してボルト止めによって取り付けられており、これにより、筒状部72に対して固定されている。ベース81は、円盤状に形成されており、操作軸83の直径よりも厚く形成されている。ベース81は、アルミニウム合金(ジュラルミン)により構成されるが、本発明では、これに限らず、例えば、チタン合金、ステンレス、スチール、炭素鋼、カーボン、鉛、鋼、セラミック、繊維強化プラスチック等により構成されてもよい。
【0041】
ベース81は、複数(ここでは三つ)の第一凹部812と、複数(ここでは三つ)の第二凹部813と、を備える。第一凹部812と第二凹部813とは、筒状部72の中心軸回りの周方向(以下、単に「周方向」という場合がある)に沿って交互に形成されている。第一凹部812及び第二凹部813は、ベース81の厚み方向に貫通し、かつ中心軸に直交する方向のうちの外側に向かって凹んでいる。各第一凹部812は、移動体82を中心軸に直交する方向に移動可能にガイドする。
【0042】
移動体82は、配管1に接触して配管1を保持する部材である。複数の移動体82は、周方向に沿って間隔をおいて配置されている。移動体82は、移動体本体821と、弾性体824と、を備える。
【0043】
移動体本体821は、移動体82の主体を構成する。移動体本体821は、アルミニウム合金(ジュラルミン)により構成されるが、本発明では、これに限らず、例えば、チタン合金、ステンレス、スチール、炭素鋼、カーボン、鉛、鋼、セラミック、繊維強化プラスチック等により構成されてもよい。移動体本体821は、被ガイド部822と、一対の延設部823と、で構成されている。
【0044】
被ガイド部822は、第一凹部812に嵌まり込んでおり、第一凹部812によって移動がガイドされる。これによって、移動体本体821は、筒状部72の中心軸に直交する方向に移動し得る。延設部823は、被ガイド部822から周方向の両側に突出することで、弾性体824の端部をバックアップすることができる。被ガイド部822には、操作軸83が回転可能に連結されている。操作軸83の回転軸は、操作軸83の中心軸と同じであり、筒状部72の中心軸に直交する。各移動体82は、操作軸83の回転に応じて移動する。
【0045】
弾性体824は、移動体本体821に取り付けられており、これによって、移動体82は、配管1に接触する部分が弾性体824によって構成されている。弾性体824は、例えば、エラストマ、合成樹脂、ウレタンゴム、発泡ウレタン等によって構成されている。弾性体824は、移動体本体821に対して取り付けられている。弾性体824の摩擦係数は、移動体本体821よりも高いことが好ましい。移動体本体821に対する弾性体824の取付けは、例えば、ねじ止め、ピン止め、ボルト止め、リベット止め、接着、溶着、嵌め込み、係止、二色成形等によって実現されている。
【0046】
保持部8が非固定位置(図8の実線の位置)にあると、周方向に隣り合う弾性体824同士は離れているが、保持部8が固定位置(図8の想像線の位置)に切り替えられると、周方向に隣り合う弾性体824は、端面同士が接触する。したがって、弾性体824は、保持部8が固定位置に切り替えられると、配管1の周方向の全長にわたって接触する。
【0047】
本実施形態に係る弾性体824は、保持部8が固定位置に切り替えられると、シール材としても機能する。すなわち、保持部8が固定位置に切り替えられると、配管1と移動体本体821との押圧力により、弾性体824は、周方向に隣接する弾性体824の端面に対して密着し、かつ一対の取着部74に対しても密着する。したがって、挿通孔91を通って出た地下水が、保持部8を通過するのを妨げることができる。これにより、例えば、パッカー5のグランドパッキン54が摩耗した際に、グランドパッキン54の交換を容易に行うことができる。
【0048】
操作軸83は、移動体82に対して回転可能に取り付けられている。ベース81には、筒状部72の中心軸に直交する方向に延びたねじ孔811が形成されている。操作軸83の外周面には、雄ねじ831が形成されており、ベース81のねじ孔811にねじ込まれている。操作軸83を一方向に回転させると、操作軸83が移動体82を押し、移動体82が筒状部72を通る配管1の中心軸に近づく方向に進んで、保持部8が固定位置に切り替えられる。一方、操作軸83を他方向(一方向とは反対方向)に回転させると、操作軸83が移動体82を引っ張り、移動体82が筒状部72を通る配管1の中心軸から遠ざかる方向に進んで、保持部8が非固定位置に切り替えられる。
【0049】
止水板84は、ねじ孔811と各操作軸83との接続部分に対応して取り付けられており、ねじ孔811からの漏水を抑制する。止水板84は、第一凹部812の奥面にねじ止めされており、操作軸83との間と、奥面との間に、それぞれシール材841を収容する。シール材841としては、例えば、Oリング、パッキン等が挙げられる。
【0050】
埋設管施工工程S1において、作業者は、パッカー5の開口部51に配管1を挿し入れ、配管1がスリーブ管3に通された状態で、複数の操作軸83を回転させる。すると、移動体82が移動し、保持部8が固定位置に切り替えられる。このとき、複数の移動体82は、配管1に対して、筒状部72の中心軸に直交する方向のうちの中心軸側に向かう荷重を加え、配管1を保持する。なお、作業者は、ベース81の外周面からの操作軸83の突出寸法を計測することで、配管1に対して加わる力を調整することができる。
【0051】
(2)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0052】
上記実施形態では、長尺部材として、配管1を例に説明したが、長尺部材は中空でなくてもよく、中実の軸体であってもよい。また、長尺部材は直線状でなくてもよく、湾曲していてもよい。
【0053】
上記実施形態に係る保持装置7では、保持部8は一対の取付け部材71の間に配置されたが、本発明ではこの構造に限らず、一の取付け部材71と、保持部8と、で構成されてもよい。また、二つの取付け部材71は同じ構造でなくてもよい。
【0054】
上記実施形態に係る移動体82は、移動体本体821に対して弾性体824が取り付けられたが、本発明では、移動体82の全体が、例えば硬質ゴム等の弾性体824で構成されてもよい。
【0055】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0056】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端部」とは、「端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0057】
(3)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る保持装置7は、スリーブ管3に通された長尺部材を保持する保持装置7である。保持装置7は、長尺部材が通される筒状部72と、スリーブ管3に対し筒状部72を同心状に接続する接続部73と、筒状部72に通された長尺部材を、筒状部72に対して固定する固定位置と非固定位置とで切替え可能な保持部8と、を備える。
【0058】
この態様によれば、スリーブ管3に通された長尺部材を、スリーブ管3に対して固定することができるため、長尺部材に対して中心軸方向に力が加わっても、作業者は接続作業を行いやすい。また、保持部8を非固定位置に切り替えることで、溶接作業を行った後に長尺部材を地中に向かって移動させることができる。このため、この態様によれば、部材を、例えば溶接やねじ接続等によって継ぎ足しながら地中に埋め込んでゆく際に溶接作業を行いやすくできる。
【0059】
第2の態様に係る保持装置7では、第1の態様において、保持部8は、筒状部72に対して固定されたベース81と、筒状部72の中心軸回りの周方向に沿って間隔をおいて配置され、かつ中心軸に直交する方向に移動可能にベース81に取り付けられた複数の移動体82と、を有する。複数の移動体82は、保持部8が固定位置に切り替えられると、長尺部材に対して、中心軸に直交する方向に沿う荷重を加えるように構成されている。
【0060】
この態様によれば、長尺部材の周囲を移動体82によって押さえることができ、効果的に長尺部材を保持することができる。
【0061】
第3の態様に係る保持装置7では、第2の態様において、複数の移動体82の各々は、長尺部材に接触する部分が弾性体824によって構成されている。
【0062】
この態様によれば、長尺部材の外周面に対して弾性体824が弾性的に接触するため、長尺部材をより効果的に保持することができる。
【0063】
第4の態様に係る保持装置7では、第3の態様において、弾性体824は、保持部8が固定位置に切り替えられると、長尺部材の軸回りの周方向の全長にわたって接触する。
【0064】
この態様によれば、より一層、効果的に保持部8が長尺部材を保持することができる。
【0065】
第5の態様に係る保持装置7では、第1〜4のいずれか1つの態様において、保持部8は、長尺部材としての配管1を、筒状部72に対して固定可能に構成されている。
【0066】
この態様によれば、例えば、凍結管11、測温管、温水管等の配管1を、溶接やねじ接続等によって継ぎ足しながら地中に埋め込んでゆく際に溶接作業を行いやすくできる。
【0067】
第2〜第5の態様に係る構成については、保持装置7に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 配管(長尺部材)
3 スリーブ管
7 保持装置
72 筒状部
73 接続部
8 保持部
81 ベース
82 移動体
824 弾性体
【要約】
【課題】部材を溶接、ねじ接続等によって継ぎ足しながら地中に埋め込んでゆく際に作業を行いやすくできる保持装置を提供する。
【解決手段】保持装置7は、スリーブ管3に通された長尺部材を保持する保持装置7である。保持装置7は、長尺部材が通される筒状部72と、スリーブ管3に対し筒状部72を同心状に接続する接続部73と、筒状部72に通された長尺部材を、筒状部72に対して固定する固定位置と非固定位置とで切替え可能な保持部8と、を備える。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8