特許第6795841号(P6795841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石福金属興業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6795841-金担持白金粉末の製造方法 図000003
  • 特許6795841-金担持白金粉末の製造方法 図000004
  • 特許6795841-金担持白金粉末の製造方法 図000005
  • 特許6795841-金担持白金粉末の製造方法 図000006
  • 特許6795841-金担持白金粉末の製造方法 図000007
  • 特許6795841-金担持白金粉末の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795841
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】金担持白金粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20201119BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B22F1/02 A
   B22F1/00 K
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-253837(P2016-253837)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-104779(P2018-104779A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】川畑 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 良介
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−026422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金粉末と金化合物溶液を減圧下で攪拌しながら溶媒を蒸発乾固させて、前記白金粉末の粒子表面に金化合物を高分散担持させる工程と、
前記金化合物が担持された白金粉末を560〜650℃で熱処理して、白金粒子表面に金を高分散担持させる工程と、を備え
前記金化合物として塩化金(III)酸を用いることを特徴とする金高分散担持白金粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金粉末の製造方法に関し、より詳細には、白金粒子上に金が分散担持した粉末を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金金粉末の用途として、ペースト化して各種電子部品の導電膜・発熱体回路・電極等を製造する用途がある。ペーストの一般的な成分構成は、白金金粉末と、基板との結合剤を担う金属酸化物やガラス系フリット等の無機酸化物と、有機ビヒクルとを含む。ペーストは、セラミックス等の絶縁基板や素子等へのスクリーン印刷等の手段でコーティング処理された後、コーティング層が焼成されて、導電膜、発熱体回路、電極等が形成される。
【0003】
従来、白金金粉末は、白金化合物溶液と金化合物溶液を混合して、湿式で還元させることにより製造することが開示されている(特許文献1)。特許文献1には、PtイオンおよびAuイオンを、液相の反応系中で、還元剤の作用によって還元して、Pt−Au合金からなる合金微粒子として析出させる合金微粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5251227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、白金と金とを合金化させているが、用途によっては、白金粒子表面に金が高分散している状態が好ましい場合がある。白金金粉末を含むコーティング層が焼成されて、電極等が形成される際、白金金粉末において金偏析が生じている場合、融点が低い金が昇華する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金化合物を分解して金属の金にすると同時に白金粒子表面と金との結合を強めることで白金粒子表面に金を高分散担持させることができる、金担持白金粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、白金粉末と金化合物溶液を減圧下で攪拌しながら溶媒を蒸発乾固させて、前記白金粉末の粒子表面に金化合物を高分散担持させる工程と、前記金化合物が担持された白金粉末を560〜650℃で熱処理して、白金粒子表面に金を高分散担持させる工程と、を備えることを特徴とする金高分散担持白金粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、金化合物を分解して金属の金にすると同時に白金粒子表面と金との結合を強めることで白金粒子表面に金を高分散担持させることができる、金担持白金粉末の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の粒子表面の金の面分析結果を示す。
図2】実施例2の粒子表面の金の面分析結果を示す。
図3】実施例3の粒子表面の金の面分析結果を示す。
図4】比較例1の粒子表面の金の面分析結果を示す。
図5】比較例2の粒子表面の金の面分析結果を示す。
図6】比較例3の粒子表面の金の面分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、白金粉末と金化合物溶液を減圧下で攪拌しながら溶媒を蒸発乾固させて、白金粉末の粒子表面に金化合物を高分散担持させる工程と、その金化合物が担持された白金粉末を560〜650℃で熱処理して、白金粒子表面に金を高分散担持させる工程と、 を備えることを特徴とする金高分散担持白金粉末の製造方法である。
【0011】
白金粉末の粒子表面に金化合物を高分散担持させる工程では、白金粉末と塩化金酸溶液を減圧下で70℃以下の条件で攪拌しながら溶媒を除去し、白金粒子表面に金化合物をコーティングする。この工程により、金化合物を白金粉末表面に高分散担持する。
【0012】
熱処理する工程では、白金粒子表面に金化合物がコーティングされた粉末を、大気中、560〜650℃の温度で熱処理する。金化合物の分解温度は約360℃であるが、その分解温度近傍の温度印加では、析出した金同士が凝集して、金の偏析が生じる。約360℃より200℃以上高い560〜650℃で熱処理すると、金化合物を分解して金属の金になると同時に白金粒子表面と金との結合を強めることで白金粒子表面に金を高分散担持させることができる。なお、650℃を超えた温度で熱処理すると白金粒子同士の凝集が進行し、粗大粒子が生成する。金の偏析が生じている場合、融点が低い金が昇華する可能性がある。
【0013】
本発明によれば、白金原料として平均粒径0.6〜10μm程度の白金粉末を、金化合物として塩化金(III)酸、亜硫酸金(I)ナトリウムなどを溶解させた水溶液を用いることができる。また、後述する実施例では、白金粉末中の金の重量比を1wt%としたが、白金粉末と金化合物の配合比を調整することで、白金粉末中の金の重量比を変更することができる。特にナトリウムやカリウム等の不純物が残留しない、低温にて熱分解する、などの観点からは塩化金(III)酸溶液を用いることが好ましい。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
平均粒径9μmの白金粉末19.8gに、塩化金酸溶液(1.06wt%)18.9gを添加してナス型フラスコに仕込み、減圧、モーターによる回転を開始、ナス型フラスコを50℃の温浴に浸した。圧力:4×103Pa、回転数:40〜150rpmの条件で、溶媒を除去した。さらに、ナスフラスコ内で、溶媒が除去された白金粉末と塩化金酸の混合物を乾燥させ、白金粒子表面に塩化金酸を高分散担持させた。乾燥条件は、120℃、12時間、大気中乾燥とした。
【0015】
次に、混合物をアルミボートに乗せ、大気中、560℃3時間加熱して、塩化金酸を分解、白金に金を高分散担持した。
【0016】
粉砕機による粉砕、目開き53μmのふるいにて分級し、金が高分散担持された球状の白金粉末を得た。
【0017】
(実施例2、3)
熱処理する工程の加熱温度を以下とした以外は実施例1と同じ条件にて実施例2、3のサンプルを製作した。
実施例2:600℃3時間
実施例3:650℃3時間
【0018】
(比較例1、2)
熱処理する工程の加熱温度を以下とした以外は実施例1と同じ条件にて比較例1、2のサンプルを製作した。
比較例1:520℃3時間
比較例2:700℃3時間
【0019】
(比較例3)
平均粒径9μmの白金粉末19.8gを純水に懸濁させ、塩化金酸溶液(1.06wt%)18.9gを投入し、還元剤(アスコルビン酸)にて金を還元させ、白金粉末の粒子表面に金を析出させた。
【0020】
得られた粉末の組成はプラズマ発光分光分析法で測定した。得られた粉末の粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定法で測定し、粒度分布の積算値が50%に相当する粒径(D50)を求めて平均粒径とした。
【0021】
得られた粉末の粒子上の金の分布状態はEPMA(エレクトロンプローブマイクロアナライザー)による面分析により調べた。面分析写真にて幅1.0μm以上の金の集合体が認められる場合、分布状態が悪い(凝集有り)と、そのような集合体が認められない場合、分布状態が良い(高分散状態である。凝集無し。)と評価した。
【0022】
得られた粉末の特性を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例粉末、比較例粉末について、金の面分析結果(写真)を図1図6にそれぞれ示す。面分析写真は、その写真全景に白金粒子全体が収まるようにその倍率を調整した。実施例1〜3では、幅1.0μm以上の金の集合体が認められず(金凝集無し)、金が高分散していることがわかる。一方、比較例1、3では、金の凝集が認められる。比較例2では、平均粒径が実施例1〜3の約1.5倍であり、白金粒子同士の凝集による粒子粗大化が認められる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6