特許第6795876号(P6795876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795876
(24)【登録日】2020年11月17日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】液体消費装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-222268(P2014-222268)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-87847(P2016-87847A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月24日
【審判番号】不服2019-5540(P2019-5540/J1)
【審判請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智久
【合議体】
【審判長】 尾崎 淳史
【審判官】 藤田 年彦
【審判官】 畑井 順一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−79910(JP,A)
【文献】 特開2014−144594(JP,A)
【文献】 特開2010−232296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/13
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留される液体貯留室、上記液体貯留室を画定し且つ上記液体貯留室内の液体が外部から視認可能な立壁、及び上記液体貯留室に液体を注入するための注入口を有するタンクと、
上記液体貯留室に貯留された液体を消費する液体消費部と、
第1方向において上記立壁を覆う被覆位置及び上記立壁を露出させる露出位置の間を、上記第1方向と交差する第2方向に延びる回動軸線周りに回動可能なカバーと、
上記タンク、上記液体消費部、及び上記カバーを支持し、且つ上記カバーを上記被覆位置に保持する被係合部を有するケーシングと、を備える液体消費装置であって、
上記カバーは、
当該カバーの上記被覆位置において上記立壁に対面する位置に設けられた開口と、
当該カバーの上記被覆位置において上記被係合部と係合する係合部と、
上記カバーが上記タンクから離間する向きへ回動するように上記被係合部に対する上記係合部の係合をユーザによる押圧操作により解除する操作部と、を有しており、
上記係合部及び上記操作部は、上記第1方向から見て上記第2方向において少なくとも一部が重複しており、
上記操作部のうち上記第2方向において上記係合部と重複した部分の上記第2方向の長さは、上記操作部のうち上記第2方向において上記係合部と重複していない部分全ての上記第2方向の長さよりも長く、
上記係合部の上記第2方向の長さは、上記開口の上記第2方向の長さよりも短い液体消費装置。
【請求項2】
上記係合部及び上記操作部は、上記開口より上記カバーの上記露出位置から上記被覆位置に回動する時の回動先端側で且つ上記第2方向における上記カバーの中央部に設けられている請求項1に記載の液体消費装置。
【請求項3】
上記係合部は、上記開口の上記第2方向の両端の内側に配置されている請求項1または2に記載の液体消費装置。
【請求項4】
上記カバーは、
上記開口が設けられた主壁と、
上記主壁の外縁部に沿って上記主壁の厚み方向に突出する側壁と、を有しており、
上記操作部は、当該カバーの回動先端側の上記側壁に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項5】
上記側壁は、当該カバーの上記被覆位置において上記注入口の上方を覆っている請求項4に記載の液体消費装置。
【請求項6】
上記操作部は、上記側壁に形成された凹部または凸部の少なくとも一方で構成されている請求項4または5に記載の液体消費装置。
【請求項7】
上記カバーは、回動先端側の上記側壁から上記回動軸線側と逆向きに突出し、且つ上記係合部が形成された突出壁を有しており、
上記被係合部は、上記被覆位置の上記カバーの上記係合部を受け入れる凹部であり、
上記係合部は、
上記カバーの上記被覆位置において、上記凹部の周縁に係合され、
ユーザによって上記操作部が上記回動軸線側に押圧されることによって、上記被係合部に対する係合が解除される請求項4から6のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項8】
上記係合部は、上記突出壁から突出する変形可能な変形部と、当該変形部の突出先端部に形成されており上記被覆位置において上記凹部と係合される凸部とを備えている請求項7に記載の液体消費装置。
【請求項9】
上記係合部は、上記第2方向周りに回動することによって上記凹部に対する係合を解除されるものである請求項7に記載の液体消費装置。
【請求項10】
上記変形部の上記突出壁からの突出方向は、上記操作部の上記側壁からの突出方向に対し交差している請求項8に記載の液体消費装置。
【請求項11】
上記第2方向は、鉛直方向と交差する方向であり、
上記回動軸線は、上記被覆位置における上記カバーの下端部に設けられている請求項1から10のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項12】
上記操作部は、上記係合部よりも上記第2方向において長い請求項1から11のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項13】
上記操作部の上記第2方向における中央部と上記係合部の上記第2方向における中央部とは、上記第2方向において互いにずれている請求項1から12のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項14】
上記操作部の上記第2方向における中央部と上記係合部の上記第2方向における中央部とは、上記第2方向に直交する同一の仮想平面上に配置される請求項1から12のいずれかに記載の液体消費装置。
【請求項15】
上記カバーは、樹脂で形成されている請求項1から14のいずれかに記載の液体消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入口を通じて液体を補充可能なタンクを有する液体消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、注入口を通じて液体を補充可能なタンクと、タンクに貯留された液体を消費する液体消費部とを備える液体消費装置が知られている。また、特許文献1には、インクタンクを被覆する被覆位置及びインクタンクに設けられた注入口を露出させる露出位置との間を回動可能なカバーを有する記録装置が開示されている。また、特許文献1に開示されたカバーには、被覆位置においてインクタンク内のインク残量を確認するための視認窓が設けられている。
【0003】
上記構成の記録装置において、ユーザは、カバーを被覆位置にした状態で視認窓を通じてインクタンク内のインク残量を確認することができる。そして、インクタンク内のインク量が少ないことに気づいたユーザは、カバーを露出位置に回動させることによって、注入口からインクタンクにインクを充填することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−79909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の記録装置において、視認窓を形成するためにカバーに開口を設ける必要があるので、カバーの剛性が低下する。その結果、カバーを回動させようとする力によってカバーが捩れて、スムーズに回動できない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、開口を有するカバーがスムーズに回動可能な液体消費装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る液体消費装置は、 液体が貯留される液体貯留室、上記液体貯留室を画定し且つ上記液体貯留室内の液体が外部から視認可能な立壁、及び上記液体貯留室に液体を注入するための注入口を有するタンクと、上記液体貯留室に貯留された液体を消費する液体消費部と、第1方向において上記立壁を覆う被覆位置及び上記立壁を露出させる露出位置の間を、上記第1方向と交差する第2方向に延びる回動軸線周りに回動可能なカバーと、上記タンク、上記液体消費部、及び上記カバーを支持し、且つ上記カバーを上記被覆位置に保持する被係合部を有するケーシングとを備える。上記カバーは、当該カバーの上記被覆位置において上記立壁に対面する位置に設けられた開口と、当該カバーの上記被覆位置において上記被係合部と係合する係合部と、上記被係合部に対する上記係合部の係合を解除するためにユーザによって操作される操作部とを有する。そして、上記係合部及び上記操作部は、上記第2方向に直交する同一の仮想平面と交差する。
【0008】
上記構成によれば、ユーザによって操作部に加えられた力によるカバーの捩れを抑制することができる。その結果、被覆位置と露出位置との間でカバーをスムーズに回動させることができる。なお、開口は、開放された状態であってもよいし、透明な部材によって閉塞されていてもよい。
【0009】
(2) 好ましくは、上記係合部及び上記操作部は、上記開口より上記カバーの上記露出位置から上記被覆位置に回動する時の回動先端側で且つ上記第2方向における上記カバーの中央部に設けられている。
【0010】
上記構成によれば、係合部と被係合部との係合を解除するのに必要な力を小さくできるので、カバーの捩れをさらに抑制することができる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記カバーは、上記開口が設けられた主壁と、上記主壁の外縁部に沿って上記主壁の厚み方向に突出する側壁とを有する。そして、上記操作部は、当該カバーの回動先端側の上記側壁に設けられている。
【0012】
上記構成によれば、開口を形成したことによるカバーの剛性低下を側壁によって補うことができる。なお、側壁は、主壁の外縁部の全域に設けられることに限定されず、主壁の外縁部の一部にのみ設けられていてもよい。
【0013】
(4) 好ましくは、上記カバーは、回動先端側の上記側壁から上記回動軸線側と逆向きに突出し、且つ上記係合部が形成された突出壁を有する。また、上記被係合部は、上記被覆位置の上記カバーの上記係合部を受け入れる凹部である。そして、上記係合部は、上記カバーの上記被覆位置において、上記凹部の周縁に係合され、ユーザによって上記操作部が上記回動軸線側に押圧されることによって、上記被係合部に対する係合が解除される。
【0014】
上記構成によれば、操作部が押圧されることによるカバーの弾性変形によって、係合部と被係合部との係合が解除される。そして、開口が設けられたカバーは弾性変形しやすいので、係合部と被係合部との係合を解除するのに必要な力をさらに小さくすることができる。
【0015】
(5) 好ましくは、上記係合部は、上記突出壁から突出する変形可能な変形部と、当該変形部の突出先端部に形成されており上記被覆位置において上記凹部と係合される凸部とを備えている。
【0016】
(6) 好ましくは、上記係合部は、上記第2方向周りに回動することによって上記凹部に対する係合を解除されるものである。
【0017】
(7) 好ましくは、上記変形部の上記突出壁からの突出方向は、上記操作部の上記側壁からの突出方向に対し交差している。
【0018】
(8) 例えば、上記第2方向は、鉛直方向と交差する方向である。そして、上記回動軸線は、上記被覆位置における上記カバーの下端部に設けられている。
【0019】
(9) 好ましくは、上記操作部は、上記係合部よりも上記第2方向において長い。
【0020】
(10) 例えば、上記操作部の上記第2方向における中央部と上記係合部の上記第2方向における中央部とは、上記第2方向において互いにずれている。
【0021】
(11) 例えば、上記操作部の上記第2方向における中央部と上記係合部の上記第2方向における中央部とは、上記第2方向に直交する同一の仮想平面上に配置される。
【0022】
(12) 例えば、上記カバーは、樹脂で形成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユーザによって操作部に加えられた力によるカバーの捩れを抑制することができるので、カバーをスムーズに回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、複合機10の外観斜視図であって、(A)はカバー70が閉じた状態、(B)はカバー70が開いた状態を示す。
図2図2(A)は図1(B)におけるカバー70周辺の拡大図であり、図2(B)はカバー70の回動軸周辺の分解斜視図を示す。
図3図3は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図4図4は、キャリッジ23及びインクタンク100の配置を示す平面図である。
図5図5は、インクタンク100の前方斜視図である。
図6図6は、インクタンク100の後方斜視図である。
図7図7は、カバー70の斜視図であって、(A)はカバー70を主壁72の外面側から見た斜視図、(B)はカバー70を主壁72の内面側から見た斜視図である。
図8図8は、被覆位置のカバー70及びインクタンク100の縦断面図である。
図9図9は、露出位置のカバー70及びインクタンク100の縦断面図である。
図10図10は、被覆位置のカバー70を示す平面図であり、(A)は係合部50及び操作部52の第1軸の範囲の一部同士が重なった構成、(B)は係合部50の第1軸の全範囲と操作部52の第1軸の一部範囲とが重なった構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。すなわち、向きは方向の一成分である。上向き及び下向きは、各々が上下方向7の一成分であって、互いに逆向きである。左向き及び右向きは、各々が左右方向9の一成分であって、互いに逆向きである。前向き及び後ろ向きは、各々が前後方向8の一成分であって、互いに逆向きである。また、本実施形態では、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向9が水平方向に相当する。
【0026】
さらに、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態であって、「使用状態」と表記することがある。)若しくは姿勢(図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向7が定義され、複合機10の開口13が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。前後方向8は第1方向の一例であり、左右方向9は第2方向の一例である。
【0027】
[複合機10の全体構成]
複合機10は、図1に示されるように、概ね直方体に形成されている。複合機10は、ケーシング14の下部にインクジェット記録方式で用紙12(図3参照)に画像を記録するプリンタ部11を有している。ここで、ケーシング14は、後述する搬送ローラ部54、排出ローラ部55、及び記録部24などを覆っており複合機10の外観を構成する外装部材と、当該外装部材に覆われており複合機10の骨格を構成するフレームとで構成されている。プリンタ部11は、図3に示されるように、給送部15と、給送トレイ20と、排出トレイ21と、搬送ローラ部54と、記録部24と、排出ローラ部55と、プラテン42と、インクタンク100(タンクの一例)とを備えている。また、複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、液体消費装置の一例である。
【0028】
[給送トレイ20、排出トレイ21]
給送トレイ20は、図1に示されるように、複合機10のケーシング14の前面で且つ左右方向9の中央部に形成された開口13を通じて前後方向8にユーザによって複合機10に対して挿抜される。給送トレイ20は、積層された複数の用紙12を支持可能である。排出トレイ21は、給送トレイ20の上方に配置されており、給送トレイ20と共に挿抜される。排出トレイ21は、排出ローラ部55によって記録部24とプラテン42との間から排出された用紙12を支持する。
【0029】
[給送部15]
給送部15は、給送トレイ20に支持された用紙12を搬送経路65へ給送する。給送部15は、図3に示されるように、給送ローラ25と、給送アーム26と、軸27とを備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端側に回転可能に支持されている。給送ローラ25は、搬送モータ(不図示)の逆転によって、用紙12を搬送向き16に搬送する向きに回転する。以下、給送ローラ25、搬送ローラ60、及び排出ローラ62が、用紙12を搬送向き16に搬送する向きに回転することを、「正回転」と表記する。給送アーム26は、プリンタ部11のフレームに支持された軸27に回動可能に支持されている。給送アーム26は、自重或いはバネ等による弾性力によって給送トレイ20側へ回動付勢されている。
【0030】
[搬送経路65]
搬送経路65は、図3に示されるように、その一部がプリンタ部11の内部において、所定間隔で対向する外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19によって形成される空間を指す。搬送経路65は、給送トレイ20の後端部からプリンタ部11の後方側に延びる経路である。また、搬送経路65は、プリンタ部11の後方側において下方から上方に延びつつUターンし、記録部24とプラテン42との間の空間を経て排出トレイ21に至る経路である。搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間における搬送経路65は、図3及び図4に示されるように、左右方向9における複合機10の概ね中央部に設けられており、且つ前後方向8に延びている。なお、搬送経路65内における用紙12の搬送向き16は、図3において一点鎖線の矢印で示されている。
【0031】
[搬送ローラ部54]
搬送ローラ部54は、図3に示されるように、記録部24より搬送向き16の上流側に配置されている。搬送ローラ部54は、互いに対向する搬送ローラ60及びピンチローラ61を有する。搬送ローラ60は、搬送モータによって駆動される。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の回転に伴って連れ回る。用紙12は、搬送モータの正転によって正回転する搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持されて搬送向き16に搬送される。
【0032】
[排出ローラ部55]
排出ローラ部55は、図3に示されるように、記録部24より搬送向き16の下流側に配置されている。排出ローラ部55は、互いに対向する排出ローラ62及び拍車63を有する。排出ローラ62は、搬送モータによって駆動される。拍車63は、排出ローラ62の回転に伴って連れ回る。用紙12は、搬送モータの正転によって正回転する排出ローラ62及び拍車63に挟持されて搬送向き16に搬送される。
【0033】
[記録部24]
記録部24は、図3に示されるように、搬送向き16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。また、記録部24は、搬送経路65を挟んでプラテン42と上下方向7に対向配置されている。すなわち、記録部24は、搬送経路65より上下方向7の上方で、且つ搬送経路65に対面する位置に配置されている。記録部24は、キャリッジ23と、記録ヘッド39(液体消費部の一例)とを備えている。
【0034】
キャリッジ23は、図4に示されるように、前後方向8に離間する位置において各々が左右方向9に延設されたガイドレール43、44に支持されている。ガイドレール43、44は、プリンタ部11のフレームに支持されている。キャリッジ23は、ガイドレール44に設けられた公知のベルト機構に連結されている。このベルト機構は、キャリッジモータ(不図示)によって駆動される。すなわち、ベルト機構に連結されたキャリッジ23は、キャリッジモータの駆動によって左右方向9に往復移動する。キャリッジ23の移動範囲は、図4の一点鎖線で示されるように、搬送経路65より左右方向9の右方及び左方にまで及ぶ。
【0035】
また、キャリッジ23からは、インクタンク100及び記録ヘッド39を接続するインクチューブ32と、制御部(不図示)が実装された制御基板及び記録ヘッド39を電気的に接続するフレキシブルフラットケーブル33とが延出されている。インクチューブ32は、インクタンク100に貯留されたインクを記録ヘッド39に供給する。より詳細には、各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のインクチューブ32B、32M、32C、32Y(これらを総称して、「インクチューブ32」と表記することがある。)がインクタンク100から延出され、これらが束ねられた状態でキャリッジ23に接続されている。フレキシブルフラットケーブル33は、制御部から出力される制御信号を記録ヘッド39に伝達する。
【0036】
記録ヘッド39は、図3に示されるように、キャリッジ23に搭載されている。記録ヘッド39の下面には、複数のノズル40が形成されている。複数のノズル40の先端は、記録ヘッド39及び記録ヘッド39を搭載するキャリッジ23の下面から露出されている。以下、ノズル40の先端が露出された面を「ノズル面」と表記することがある。記録ヘッド39は、ノズル40からインクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ23が移動する過程において、プラテン42に支持されている用紙12に向けて記録ヘッド39がインク滴を吐出する。これにより、用紙12に画像が記録される。
【0037】
[プラテン42]
プラテン42は、図3及び図4に示されるように、搬送向き16における搬送ローラ部54及び排出ローラ部55の間に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向するようにして配置されており、搬送ローラ部54によって搬送される用紙12を下側から支持する。
【0038】
[インクタンク100]
インクタンク100は、図1に示されるように、複合機10の内部に収容されている。インクタンク100は、複合機10から容易に取り外すことができないように、当該複合機10のケーシング14に固定されている。つまり、インクタンク100は、ケーシング14に支持されている。より詳細には、インクタンク100は、ケーシング14の前面で且つ左右方向9の右端に形成された開口22を通じて、複合機10の内部に収容されている。開口22は、左右方向9において、開口13と隣接している。但し、インクタンク100の前面(後述する基壁101A及び傾斜壁101Bの一部)は、前後方向8における開口22より前方(より詳細には、開口22を画定するケーシング14の前壁14A(図9参照)より前方)に位置する。
【0039】
図2(A)に示されるように、ケーシング14の前面における開口22の上方には、当該前面から後方へ凹んだ凹部30(被係合部の一例)が形成されている。凹部30は、後述するカバー70の係合部50を受け入れ可能である。
【0040】
また、複合機10には、開口22よりも前方に位置するインクタンク100の前面を覆うことができる箱形状のカバー70が設けられている。カバー70は、図7に示されるように、概ね矩形状を呈する主壁72と、主壁72の外縁から主壁72の厚み方向に突出する側壁73、74、75と、カバー70の回動先端側の側壁73から回動軸線71側と逆向きに突出する突出壁86とを有する箱形状である。カバー70は、主に樹脂で形成される。
【0041】
側壁74、75には、カバー70の回動基端側の端部に軸受部79、80が設けられている。軸受部79、80は、カバー70がケーシングに取り付けられた状態において、回動軸線71上に配置される。また、開口22の下方を画定するケーシング14には、図2(B)に示されるように、回動軸線71上において互いに離れる向きに突出する一対の支軸91、92が設けられている。カバー70がケーシング14に取り付けられた状態において、軸受部79、80は支軸91、92を受け入れる。これにより、カバー70は、ケーシング14に対して回動軸線71周りに回動可能となる。
【0042】
カバー70は、図1(A)に示される被覆位置と、図1(B)に示される露出位置との間を回動可能に、複合機10のケーシング14によって支持されている。被覆位置は、開口22及びインクタンク100の前壁101を前方から覆う位置である。換言すると、被覆位置は、前後方向8において開口22及びインクタンク100の前壁101を覆う位置である。露出位置は、開口22及びインクタンク100の前壁101を複合機10の外部に露出させる位置である。被覆位置におけるカバー70の上面は、概ね水平であるか、回動基端側から回動先端側に向かって下り傾斜している。
【0043】
カバー70は、図1及び図8に示されるように、鉛直方向である上下方向7と交差する左右方向9に延びる回動軸線71周りに回動可能に、複合機10のケーシング14によって支持されている。本実施形態における回動軸線71は、前後方向8における前壁101より前方(すなわち、前壁101に対するインク室111の反対側)に位置している。また、回動軸線71は、上下方向7におけるインクタンク100より下方に位置している。詳細には、回動軸線71は、被覆位置における上下方向7の下端部に位置している。但し、回動軸線71の位置は、少なくとも注入口112より下方であればよく、被覆位置における上下方向7の下端部に限らない。また、インクタンク100と回動軸線71とは、インクタンク100が注入姿勢のときに前述の位置関係であればよい。
【0044】
インクタンク100は、図5及び図6に示されるように、概ね直方体の外形を呈する。インクタンク100は、前壁101と、右壁102と、左壁103と、上壁104と、下壁105とを有する。一方、インクタンク100の後面は開放されている。そして、右壁102、左壁103、上壁104、下壁105の後端面にフィルム106が溶着されることによって、インクタンク100の後面が封止される。すなわち、フィルム106は、インクタンク100の後壁を構成する。上記構成のインクタンク100は、例えば、樹脂材料を射出成型することによって一体成型される。例えば、後述するインクタンク100の内部形状は、インクタンク100の開放された後面から後ろ向きに引き抜かれる金型(不図示)によって規定される。
【0045】
上壁104は、上下方向7におけるインク室111の上端を画定する。下壁105は、上下方向7におけるインク室111の下端を画定する。立壁の一例である前壁101、右壁102、及び左壁103は、上壁104及び下壁105の間において、上壁104及び下壁105と交差する向きに立設されている。また、各壁101〜105は、インク室111内のインクがインクタンク100の外部から視認可能な程度の透光性を少なくとも有している。
【0046】
前壁101は、下壁105から概ね上下方向7に延びる基壁101Aと、基壁101Aの上端において基壁101Aと連続し且つ上下方向7及び前後方向8に対して傾斜された傾斜壁101Bとで構成されている。傾斜壁101Bには、傾斜壁101Bを厚み方向に貫通する注入口112が形成されている。傾斜壁101Bは、基壁101Aに対して後方側(すなわち、インク室111側)に傾斜している。
【0047】
[インク室111]
インクタンク100の内部には、図6に示されるように、内部空間を区画する複数の隔壁107、108、109が設けられている。隔壁107、108、109は、各々が上下方向7及び前後方向8に延設されており、前壁101、上壁104、下壁105、及びフィルム106に接続されている。また、隔壁107〜109は、左右方向9に離間して設けられている。その結果、インクタンク100の内部空間は、左右方向9に隣接する4つのインク室111B、111M、111C、111Yに区画される。インク室111は、ノズル40から吐出されるインクを貯留する液体貯留室の一例である。
【0048】
インク室111Bは、前壁101、右壁102、上壁104、下壁105、フィルム106、及び隔壁107によって画定される空間である。インク室111Mは、前壁101、上壁104、下壁105、フィルム106、及び隔壁107、108によって画定される空間である。インク室111Cは、前壁101、上壁104、下壁105、フィルム106、及び隔壁108、109によって画定される空間である。インク室111Yは、前壁101、左壁103、上壁104、下壁105、フィルム106、及び隔壁109によって画定される空間である。
【0049】
以下、インク室111B、111M、111C、111Yを総称して、「インク室111」と表記することがある。また、各インク室111に対応して4つ設けられた構成要素には、末尾のアルファベット(B、M、C、Y)のみが異なる参照番号を付し、これらを総称する場合に当該アルファベットを省略して表記することがある。
【0050】
各インク室111には、異なる色のインクが貯留される。具体的には、インク室111Bにはブラックインクが貯留され、インク室111Cにはシアンインクが貯留され、インク室111Mにはマゼンタインクが貯留され、インク室111Yにはイエローインクが貯留される。各色インクは、液体の一例である。但し、インク室111の数及びインクの色は上記の例に限定されない。インク室111は、左右方向9に沿って配置されている。また、4つのインク室111B、111M、111C、111Yの中で、インク室111Bが最も右側に配置され、インク室111Yが最も左側に配置されている。さらに、インク室111Bは、他のインク室111M、111C、111Yより容積が大きい。
【0051】
[注入口112]
インクタンク100の傾斜壁101Bには、各インク室111にインクを注入するための注入口112B、112M、112C、112Yが設けられている。注入口112は、傾斜壁101Bを厚み方向に貫通して、対応するインク室111をインクタンク100の外部に連通させる。傾斜壁101Bは、その内面がインク室111に面し、外面がインクタンク100の外部に面している。傾斜壁101Bは、外面が内面より上方に位置するように傾斜している。したがって、注入口112は、インク室111とインクタンク100の外部とを直接連通させる。すなわち、注入口112とインク室111との間には、注入口よりも断面積が小さく、且つ屈曲しているような流路は存在しない。また、注入口112は、傾斜壁101Bに代えて上壁104に設けられていてもよい。
【0052】
傾斜壁101B及び傾斜壁101Bに設けられた注入口112は、図1(B)に示されるように、カバー70を露出位置に位置させることによって複合機10の外部に露出される。また、注入口112は、開口22より前方において傾斜壁101Bに設けられている。本実施形態において、注入口112を通じてインク室111にインクを注入可能なインクタンク100の姿勢(注入姿勢)は、複合機10が使用姿勢にあるときのインクタンク100の姿勢と一致する。すなわち、複合機10が使用姿勢にあるときに、注入口112を通じてインク室111にインクが注入される。本実施形態における注入口112は円形状であるが、注入口112の形状はこれに限定されず、楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0053】
インクタンク100は、注入口112に対して着脱可能なキャップ113B、113M、113C、113Yを有する。図1(A)に示されるように、注入口112に取り付けられたキャップ113は、注入口112の周縁に密着して注入口112を閉塞させる。一方、図1(B)に示されるように、注入口112から取り外されたキャップ113は、注入口112を開放する。キャップ113は、カバー70を露出位置に位置させた状態で、注入口112に対して着脱される。また、キャップ113を注入口112から取り外すことによって、インク室111にインクが注入可能となる。
【0054】
なお、インク室111B〜111Yそれぞれには、インク流出路(図示省略)が接続されている。インク流出路は、対応するインク室111に貯留されたインクをインクタンク100の外部に流出させる流路である。インク流出路の一端は対応するインク室111に接続されており、インク流出路の他端に対応するインクチューブ32が接続される。これにより、インク室111に貯留されたインクは、対応するインク流出路及びインクチューブ32を経由して記録ヘッド39に供給される。
【0055】
また、インク室111B〜111Yそれぞれには、大気連通孔(図示省略)が設けられている。大気連通孔は、対応するインク室111を大気に連通させる。これにより、各インク室111の内部圧力が大気圧に維持される。その結果、インク室111の内部圧力の上昇によるインクの過剰供給、或いはインク室111の内部圧力の減少によるインクの逆流等が抑制される。また、大気連通孔には、インク漏れを抑制するための半透膜等が設けられる。
【0056】
[カバー70]
カバー70は、上述したように、主壁72と、側壁73、74、75と、突出壁86とを有する箱形状である。側壁73は、カバー70の回動先端側において主壁72の外縁に沿って延設されている。側壁74は、左右方向9における側壁73の一方側の端部から主壁72の外縁に沿って延設されている。側壁75は、左右方向9における側壁73の他方側の端部から主壁72の外縁に沿って延設されている。すなわち、側壁74、75は、左右方向9において互いに対向して設けられている。突出壁86は、左右方向9に延設されている。突出壁86の左右方向9両端には、主壁72の厚み方向に突出する一対の側壁87が形成されている。カバー70の外面(換言すれば、主壁72、側壁73〜85、突出壁86、及び側壁87の外面)は、複合機10のケーシング14の外面と連続する。すなわち、カバー70の外面は、複合機10のケーシング14の外面の一部を構成する。
【0057】
また、カバー70には、透過窓76が設けられている。透過窓76は、カバー70を被覆位置に位置させた状態において、インクタンク100の前壁101を複合機10の外部から視認可能にする。透過窓76は、主壁72を厚み方向に貫通する概ね矩形の開口77と、当該開口77を閉塞するフィルム78とで構成されている。
【0058】
開口77は、図8に示されるように、カバー70が被覆位置の状態において、インクタンク100の前壁101に対面する位置に設けられている。フィルム78は、光透過性の材料で形成されている。本実施形態におけるフィルム78は、主壁72の外面(すなわち、前壁101と対面するカバー70の内面と反対側の面)側において、開口77の周縁に貼付されている。
【0059】
また、図7〜9に示されるように、突出壁86には、係合部50が形成されている。係合部50は、突出壁86の内面(すなわち、被覆位置において前壁101と対面するカバー70の内面と同じ側の面)から側壁73、74、75と同じ側に突出した変形部81と、変形部81の突出先端部に形成された凸部82とを備えている。係合部50は、開口77よりカバー70の回動先端側に設けられている。また、係合部50は、左右方向9におけるカバー70の中央部に設けられている。変形部81は、樹脂で形成されている。変形部81は、左右方向9および前後方向8に延びた平板形状をなしている。変形部81は、外力に応じ、突出壁86側の基端を中心にしてカバー70の回動軸方向と直交する方向に弾性変形可能である。
【0060】
図8に示されるように、カバー70が被覆位置において、係合部50は、凹部30に挿入されている。換言すると、凹部30は、被覆位置のカバー70の係合部50を受け入れ可能である。
【0061】
ここで、図9に示されるように、凹部30の下側は、ケーシング14の前壁14Aによって画定されている。また、凹部30の上側は、ケーシング14の上壁14Bによって画定されている。さらに、凹部30の上側は、上壁14Bに加えて、リブ31によっても画定されている。ここで、リブ31は、上壁14Bにおける凹部30の上側を画定する部分よりも後方において、上壁14Bから下方へ延びている。つまり、凹部30の上側の手前側は上壁14Bによって画定されており、凹部30の上側の奥側はリブ31によって画定されている。
【0062】
凸部82は、変形部81の突出先端部から回動軸線71側と逆向きに突出しているとともに、左右方向9に延びている。凸部82は、カバー70が被覆位置の状態において、リブ31と係合する。つまり、リブ31は、凹部30に挿入された係合部50と係合する。ここで、上述したように、リブ31は、凹部30の上側の奥側を画定している。つまり、リブ31は、凹部30の周縁を構成している。すなわち、係合部50は、カバー70の被覆位置において、凹部30の周縁に係合される。これにより、カバー70は、被覆位置に保持される。
【0063】
図7〜9に示されるように、カバー70には、凹部30に対する係合部50の係合を解除するためにユーザによって操作される操作部52が設けられている。操作部52は、カバー70の回動先端側の側壁73に設けられている。また、操作部52は、開口77よりカバー70の回動先端側に設けられている。また、操作部52は、突出壁86よりも主壁72側に設けられている。
【0064】
本実施形態において、操作部52は、側壁73における回動軸線71と反対側の面から回動軸線71へ向けて凹んだ凹部56と、当該凹部56の主壁72側の端部から回動軸線71と回動軸線71と逆向きに突出する凸部57とを備えた構造である。凹部56には、操作部52を操作するユーザの指が挿入される。凸部57は、左右方向9に延びている。凸部57の左右方向9における長さは、係合部50の突出部82よりも長い。凸部57の位置は、後述するように係合部50に対して左方向にずれている。そして、凸部57の一部が係合部50の突出部82を含む、左右方向9に直交する仮想平面53と交差している。凸部57には、凹部56に挿入されたユーザの指が凹部56から外れ難くするために、ユーザの指が引っ掛けられる。なお、操作部52の構造は、凹部30に対する係合部50の係合を解除するためにユーザによって操作されるものであるならば、上記以外の構造であってもよい。
【0065】
係合部50及び操作部52は、以下に説明するような位置関係である。つまり、係合部50及び操作部52は、図2(A)、図7(A)、及び図10(A)に示されるように、左右方向9に直交する仮想平面53と交差している。換言すると、係合部50及び操作部52の左右方向9の位置は、一部において同位置である。さらに換言すると、係合部50及び操作部52の一部同士は、前後方向8から見て重なる位置に配置されている。
【0066】
以下、カバー70が被覆位置の状態における係合部50及び操作部52の位置関係が、図10(A)を参照しつつ、更に詳細に説明される。左右方向9が第1軸と定義され、前後方向8が第2軸と定義された場合、係合部50と操作部52とは、第1軸の範囲の一部同士が重なっている。つまり、係合部50と操作部52とは、範囲R1において重なっている。一方、係合部50は操作部52よりも前方に位置している。つまり、第2軸では、係合部50と操作部52とは互いにずれており、重なっていない。
【0067】
本実施形態では、図2(A)及び図10(A)に示されるように、左右方向9において、操作部52は係合部50よりも長い。しかし、左右方向9において、操作部52は、係合部50よりも短くてもよいし、係合部50と同じ長さでもよい。
【0068】
また、本実施形態では、図10(A)に示されるように、操作部52の右端は係合部50の右端よりも左方であり、操作部52の左端は係合部50の左端よりも左方である。しかし、左右方向9における操作部52及び係合部50の位置関係は、上述した位置関係に限らない。
【0069】
例えば、図10(B)に示されるように、操作部52も、係合部50と同様に、左右方向9におけるカバー70の中央部に設けられていてもよい。この場合、操作部52の右端は係合部50の右端よりも右方であり、操作部52の左端は係合部50の左端よりも左方である。つまり、図10(B)において図10(A)と同様に第1軸及び第2軸が定義された場合、係合部50の第1軸の全範囲と、操作部52の第1軸の一部範囲とが重なっている。つまり、係合部50と操作部52とは、範囲R2において重なっている。また、この場合、操作部52の左右方向9における中央部と係合部50の左右方向9における中央部とは、同一の仮想平面53上に配置される。また、上記とは逆に、操作部52の第1軸の全範囲と、係合部50の第1軸の一部範囲とが重なっていてもよい。
【0070】
また、操作部52の右端は係合部50の右端と左右方向9において同位置であり、操作部52の左端は係合部50の左端と左右方向9において同位置であってもよい。つまり、係合部50と操作部52とは、第1軸の範囲の全部同士が重なっていてもよい。
【0071】
以上をまとめると、左右方向9が第1軸と定義され、前後方向8が第2軸と定義された場合、係合部50と操作部52とは、第1軸の範囲の少なくとも一部同士が重なっている。
【0072】
[カバー70の回動動作]
カバー70が図8に示される被覆位置において、操作部52がユーザによって回動軸線71側、すなわちカバー70がインクタンク100から離間する向きである矢印88の向きへ押圧されると、側壁73が弾性変形によって撓み回動軸線71側へ移動する。側壁73が回動軸線71側へ移動すると、側壁73から突出する突出壁86及び当該突出壁86に形成された係合部50の変形部81も回動軸線71側へ移動する。これにより、凸部82の凹部30に対する係合が解除される。この状態において、カバー70は、ユーザによりインクタンク100から離間する向きである矢印88の向きに回動されることによって、図8に示される被覆位置から図9に示される露出位置へ回動する。
【0073】
図9に示される露出位置のカバー70が、ユーザによりインクタンク100へ向けて矢印88と逆向きである矢印89の向きに回動されると、係合部50が凹部30へ近づく。カバー70がさらに矢印89の向きに回動されると、係合部50の凸部82がリブ31と当接する。この状態において、カバー70に対して矢印89の向きの力が付与されると、係合部50の変形部81は、弾性変形によって撓み回動軸線71側へ移動する。これにより、凸部82は、リブ31を乗り越えてリブ31と係合する(図8参照)。このときのカバー70は、インクタンク100の前壁101を前方から覆っている。つまり、図8に示される状態のときのカバー70は、被覆位置である。
【0074】
[本実施形態の作用効果]
上述した実施形態によれば、係合部50及び操作部52が同一の仮想平面53と交差する位置関係にあるため、操作部52に付与された押圧力の大部分は、そのまま係合部50に付与される。これにより、ユーザによって操作部52に加えられた力によるカバー70の捩れを抑制することができる。その結果、被覆位置と露出位置との間でカバー70をスムーズに回動させることができる。なお、カバー70には開口77が設けられているが、開口77は、開放された状態であってもよいし、透明な部材によって閉塞されていてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態によれば、係合部50及び操作部52は、開口77よりカバー70の回動先端側で且つ左右方向9におけるカバー70の中央部に設けられている。そのため、係合部50と凹部30との係合を解除するのに必要な力を小さくできるので、カバー70の捩れをさらに抑制することができる。
【0076】
また、上述した実施形態によれば、カバー70が側壁73、74、75を有しているために、開口77を形成したことによるカバー70の剛性低下を側壁73、74、75によって補うことができる。なお、側壁73、74、75は、主壁72の外縁部の全域に設けられることに限定されず、主壁72の外縁部の一部にのみ設けられていてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態によれば、操作部52が押圧されることによるカバー70の弾性変形によって、係合部50と凹部30との係合が解除される。そして、開口77が設けられたカバー70は弾性変形しやすいので、係合部50と凹部30との係合を解除するのに必要な力をさらに小さくすることができる。
【0078】
[変形例1]
上述の実施形態では、凹部30が被係合部に相当していた。また、上述の実施形態において係合部に相当していた係合部50は、突出壁86の内面から側壁73、74、75と同じ側に突出するものであった。しかし、被係合部は、係合部に係合されてカバー70を被覆位置に保持するものであるならば、凹部30に限らない。また、係合部は、被係合部と係合するものであるならば、突出するものに限らない。
【0079】
例えば、上述の実施形態とは逆に、被係合部がケーシング14の前面から前方に突出するものであり、係合部が突出壁86の内面に形成された凹部であってもよい。
【0080】
[変形例2]
上述の実施形態では、係合部50は、突出壁86に設けられていた。しかし、係合部50は、凹部30と係合するものであるならば、突出壁86以外に設けられていてもよい。例えば、係合部50は、側壁73に設けられていてもよい。
【0081】
[変形例3]
上述の実施形態では、前後方向8が第1方向に相当し、左右方向9が第2方向に相当していた。つまり、カバー70は、前後方向8において前壁101を覆う被覆位置及び前壁101を露出させる露出位置の間を、左右方向9に延びる回動軸線71周りに回動可能であった。すなわち、カバー70は、ケーシング14の前面に形成された開口22を前方から覆うように構成されていた。
【0082】
しかし、第1方向は、前後方向8以外でもよい。また、第2方向は、第1方向と交差するのであれば、左右方向9以外でもよい。例えば、左右方向9が第1方向に相当し、前後方向9が第2方向に相当していてもよい。この場合、カバー70は、左右方向9において右壁102または左壁103を覆う被覆位置及び右壁102または左壁103を露出させる露出位置の間を、前後方向8に延びる回動軸線周りに回動可能である。すなわち、カバー70は、ケーシング14の右面または左面に形成された開口を右方または左方から覆うように構成される。
【0083】
[変形例4]
上述の実施形態では、係合部50及び操作部52は、開口77よりカバー70の回動先端側で且つ左右方向9におけるカバー70の中央部に設けられていた。しかし、係合部50及び操作部52が設けられる位置は、係合部50及び操作部52が左右方向9に直交する同一の仮想平面と交差することを条件として、上記以外の位置に設けられていてもよい。例えば、係合部50及び操作部52は、開口77よりカバー70の回動基端側に設けられていてもよい。また、係合部50及び操作部52は、左右方向9におけるカバー70の中央部よりも右側または左側に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
8・・・前後方向(第1方向)
9・・・左右方向(第2方向)
10・・・複合機(液体消費装置)
14・・・ケーシング
30・・・凹部(被係合部)
39・・・記録ヘッド(液体消費部)
50・・・係合部
52・・・操作部
53・・・仮想平面
70・・・カバー
71・・・回動軸線
77・・・開口
100・・・インクタンク(タンク)
101・・・前壁
102・・・右壁
103・・・左壁
111・・・インク室(液体貯留室)
112・・・注入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10