(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記モータ駆動制御部は前記電流センサの検出値によって電流フィードバック制御を行う機能を備えていて、前記検査用逆トルク指令部は、前記モータ駆動制御部を、前記逆方向のトルクがかかる電流をオープンループで流させる制御モードとし、前記異常検出部はそのオープンループで電流が流れているときの電流検出値が規定する範囲内に入っていなければ異常検出とする車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
請求項1に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記各モータが3相交流モータであり、かつ前記モータ駆動制御部は前記電流センサの検出値によって電流フィードバック制御を行う機能を備えていて、前記検査用逆トルク指令部は、前記モータ駆動制御部を、前記逆方向のトルクがかかる電流をオープンループで流させる制御モードとし、前記異常検出部はそのオープンループで電流が流れているときの3相の各相の電流の和が略零でなければ異常検出とする車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記検査用逆トルク指令部は、前記車両の主ブレーキがブレーキ状態維持中であることを条件の一つとして各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させる車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記検査用逆トルク指令部は、前記車両のサイドブレーキがブレーキ状態維持中であることを条件の一つとして各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させる車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記検査用逆トルク指令部は、前記車両のシフトレバーがパーキングに入っていることを条件の一つとして各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させる車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記検査用逆トルク指令部および前記異常検出部は、前記逆方向のトルクがかかる電流を流している各モータのロータ角度の変動が設定した閾値を超える場合に、前記逆方向の電流を流す指令の出力、および前記異常の検出を終了する車輪独立駆動式車両の駆動制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載の構成では、検査用の巻線/配線や、定電流源が必要となり、部品点数が増加しコスト増、重量増となってしまう。特許文献3の構成の場合、d軸電流はロータ角度によって各相に流す電流は変わってくるため、ロータ角度によっては電流が零または零に近い電流しか流すことが出来ず、検査できない相が出来ることがある。
【0006】
この発明の目的は、電流センサに検査用の回路を追加することなく、かつ検査専用の電流源等を追加することなく、電流センサの異常につき、車両走行前に全ての相を検査することができる車輪独立駆動式車両の駆動制御装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置は、車輪を左右または前後で独立駆動が可能な複数の走行用のモータ6を有する車輪独立駆動式車両を制御する車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、
前記複数の各モータ6に電流を流す複数のパワー回路部28と、これらのパワー回路部28に流れる電流を制御するモータ駆動制御部30と、前記各モータ6に流れる
各相毎の電流を検出する電流センサ38とを備え、
かつ停車時に前記モータ6のうちの左右または前後のモータ6に互いに車輪回転方向が逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を前記モータ駆動制御部30に出力させる検査用逆トルク指令部36と、この逆方向のトルクがかかる電流が流れているときに
全ての前記電流センサ38の異常を検出する異常検出部34とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、モータ6に駆動電流を流し、その間に電流センサ38自体に、つまり電流センサ38における、走行時に各モータ6に流れる電流を検出する場合と同じ部位に電流を流し、その電流センサ38の電流から異常を検出するので、電流センサ38に検査用の巻線や配線を追加することなく異常検出が行える。また、検査専用の電源が不要である。このように追加する回路部品が不要であり、コスト増や重量増とな
らない。モータ6に駆動電流を流すため、車両の移動が問題となるが、停車時に左右または前後のモータ6に互いに車輪回転方向が逆方向のトルクがかかるように電流を流すため、モータ6に電流を流していながら、車両として動かさないまま電流センサ38の検査が行える。このため、車両走行前に検出できる。また、この逆方向のトルクがかかるように電流を流させる検査用逆トルク指令部36、および前記異常検出部34は、いずれも弱電の論理回路等で構成できて、モータ駆動制御部30を構成するマイクロコンピュータ等のICチップまたは回路基板等に組み込むことができる。
【0009】
これらのため、電流センサ38に検査用の回路を追加することなく、かつ検査専用の電流源等を追加することなく、電流センサ38の異常検出が行える。また、d軸電流に限定されず、各相に任意の電流を流して検査を行えるため、全ての相を検査することができる。このように、電流センサ38に検査用の回路を追加することなく、かつ検査専用の電流源等を追加することなく、電流センサ38の異常につき、車両走行前に全ての相を検査することができる。
なお、前記検査用逆トルク指令部36および異常検出部34の始動は、例えばスタータスイッチ50のオンをトリガーとして行うようにし、走行前の各種アクセサリー機器の一連の検査の一部
として、前記電流センサ38の検査を行うようにしても良
い。
【0010】
この発明において、前記モータ駆動制御部30は前記電流センサ38の検出値によって電流フィードバック制御を行う機能を備えていて、前記検査用逆トルク指令部36は、前記モータ駆動制御部30を、前記逆方向のトルクがかかる電流をオープンループで流させる制御モードとし、前記異常検出部34はそのオープンループで電流が流れているときの電流検出値が、規定する範囲内に入っていなければ異常検出とするようにしても良い。
オープンループで制御をすることで、例え電流検出値が異常値であっても流す電流は変わらず、そのため等しい逆トルクがかかり車両としては動かないまま検査が出来る。
【0011】
この発明において、前記各モータ6が3相交流モータであり、かつ前記モータ駆動制御部30は前記電流センサ38の検出値によって電流フィードバック制御を行う機能を備えていて、前記検査用逆トルク指令部36は、前記モータ駆動制御部30を、前記逆方向のトルクがかかる電流をオープンループで流させる制御モードとし、前記異常検出部34はそのオープンループで電流が流れているときの3相の各相の電流の和が略零でなければ異常検出とする構成であっても良い。
3相交流モータである場合、3相の各相の電流の和は零となる。したがって、3相の各相の電流の和が零でなければ異常検出とするようにしても良い。ただし、電流センサ38や配線等における許容できる誤差を考慮し、零に限らず、略零であれば正常とすることが好ましい。
【0012】
この発明において、前記検査用逆トルク指令部36は、前記車両の主ブレーキがブレーキ状態維持中であることを条件の一つとして各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部30に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させるようにしても良い。
電流センサ38の異常有無では左右のトルクに違いは出ないが、駆動回路やロータ角度検出回路の異常により等しい逆のトルクでなくなってしまう場合は車両が動いてしまう可能性がある。この場合に、主ブレーキがブレーキ状態維持中であることを条件の一つとして検査を開始させるようにすることで、検査時に車両が不測に動くことが防止され、安全性が向上する。
主ブレーキがブレーキ状態維持中であることの認識は、ブレーキペダル51が踏み込み状態であるなど、ブレーキ操作手段の状態から行っても、また実際に主ブレーキにブレーキ力が作用しているかを荷重センサ等で検出して行っても良い。
【0013】
この発明において、前記検査用逆トルク指令部36は、前記車両のサイドブレーキがブレーキ状態維持中であることを条件の一つとして各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部30に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させるようにしても良い。
主ブレーキに限らず、サイドブレーキが効いている場合に電流センサ38の異常検出を行うようにしても、安全性が確保できる。サイドブレーキがブレーキ状態維持中であるか否かの認識は、サイドブレーキの操作レバー52等の操作手段が引かれているか否などの検出によって行うようにしても良い。
【0014】
この発明において、前記検査用逆トルク指令部36は、前記車両のシフトレバー53がパーキングに入っていることを条件の一つとして各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部30に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させるようにしても良い。
シフトレバーがパーキングに入っている場合は、モータ6から車輪までのトルク伝達系が伝達不可または車輪ロックとなっており、モータ6が不測に回転しようとしても、車両が動くことがない。そのため、パーキングに入っていることを条件の一つとして検査を開始させるようにしても、検査のための電流印加で車両が不測に動くことが回避される。
【0015】
この発明において、前記検査用逆トルク指令部36および前記異常検出部34は、前記逆方向のトルクがかかる電流を流している各モータ6のロータ角度
の変動が設定した閾値を超える場合に、前記逆方向の電流を流す指令の出力、および前記異常の検出をそれぞれ終了するようにしても良い。
万が一ロータ角度に、ある閾値を超えるような変動が起こった場合は、何らかの異常があると判定し異常検出を終了することが、安全性の向上の上でより好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明の車輪独立駆動式車両の駆動制御装置は、車輪を左右または前後で独立駆動が可能な複数の走行用のモータを有する車輪独立駆動式車両を制御する車輪独立駆動式車両の駆動制御装置において、前記複数の各モータに電流を流す複数のパワー回路部と、これらのパワー回路部に流れる電流を制御するモータ駆動制御部と、前記各モータに流れる
各相毎の電流を検出する電流センサとを備え、かつ停車時に前記モータのうちの左右または前後の車輪のモータに互いに車輪回転方向が逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を前記モータ駆動制御部に出力させる検査用逆トルク指令部と、この逆方向のトルクがかかる電流が流れているときに
全ての前記電流センサの異常を検出する異常検出部とを備えるため、電流センサに検査用の回路を追加することなく、かつ検査専用の電流源等を追加することなく、電流センサの異常につき、車両走行前に全ての相を検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、車輪独立駆動式車両の駆動制御装置の概念構成を示すブロック図である。この実施形態の制御対象となる車輪独立駆動式車両は、例えば
図6(A)に示す前輪となる2つの駆動輪1,1をそれぞれ駆動する2つの走行用のモータ6,6を備えた電気自動車である。後輪は従動輪2,2とされている。各モータ6,6は、シャーシ3上に設置され、ドライブシャフト4とその両端の等速ジョイント5a,5bとを介して駆動輪1,1にそれぞれ連結されている。前輪である駆動輪1,1は、ステアリングハンドル7の操作によって操舵機構(図示せず)を介して方向転換させられる。
【0019】
制御対象となる車両は、
図6(B)に示す後輪が駆動輪1,1、前輪が従動輪2,2となった電気自動車であっても良い。この他に、4輪駆動の電気自動車にも適用することができる。
図6(C)は4輪駆動車の一例であり、前輪2輪を1台のモータ6で、後輪2輪を1台のモータ6で、それぞれデファレンシャル8を介して駆動する形式である。4輪駆動の場合、図
6(D)のように4輪個別にモータ6を有する形式であっても良い。4輪個別にモータ6を有する4輪駆動車の場合、駆動制御装置の実施形態の図示を省略するが、個々のモータ6毎に、
図1と共に後述するパワー回路部28およびモータ駆動制御部30が設けられる。
なお、
図6の各例は、いずれもシャーシ3上にモータ6,6を設置したオンボード形式であるが、インホイールモータ形式の車両であっても良い。
【0020】
図1において、この駆動制御装置は、自動車全般の制御を行う電気制御ユニットであるECU21と、このECU21の指令に従って走行用のモータ6,6の制御を行うインバータ装置22とを有する。ECU21とインバータ装置22とは、コントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)等の車載通信手段で相互に接続されている。ECU21は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。ECU21は、指令トルク演算部47とトルク配分手段48とを有する。
【0021】
指令トルク演算部47は、アクセルベダル等のアクセル操作手段(図示せず)の出力する加速指令と、ブレーキベダル51等のブレーキ操作手段の出力する減速指令とから、車両全体の指令トルクを演算する手段である。トルク配分手段48は、指令トルク演算部47で演算した指令トルクを、各モータ6,6に対して配分されるようにインバータ装置22へ送る手段である。なお、トルク配分手段48は、旋回補助のために、ステアリングハンドル7(
図6参照)の操舵量に応じて両モータ6,6に配分する比率を変更する機能を有していても良い。
【0022】
インバータ装置22は、各モータ6に対して設けられたパワー回路部28と、このパワー回路部28を制御するモータコントロール部29とを有する。各パワー回路部28は、バッテリ(図示せず)の直流電力をモータ6の力行および回生に用いる3相の交流電力に変換するインバータ31と、このインバータ31を制御するPWMドライバ32とを有する。モータ6は、3相の交流モータであり、同期モータまたは誘導モータからなる。なお単相のモータであっても良い。モータ6には、そのロータの電気角としての回転角度を検出する回転角度センサ33が設けられ、またインバータ31とモータ6との間の給電回路に電流センサ38が設けられている。電流センサ38は、
図2に示すように3相の各相毎に設けられているが、
図1では簡明のために一つのブロックで複数の電流センサ38を示している。この電流センサ38が、この実施形態の駆動制御装置による異常検出の対象となる。なお、電流センサ38は、3相のうちの2つの相のみに設けられていても良い。
【0023】
インバータ31は、複数の半導体スイッチング素子のブリッジ回路で構成され、PWMドライバ32は、入力された電流指令をパルス幅変調し、前記各半導体スイッチング素子にオンオフ指令を与える。
【0024】
モータコントロール部29は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、および電子回路により構成され、その基本となる制御部として、各パワー回路に対応して設けられた2つのモータ駆動制御部30を備える。モータ駆動制御部30は、上位制御手段であるECU21のトルク配分手段48から配分されるトルク指令につき、各種の制御を施して電流指令に変換し、パワー回路部28のPWMドライバ32に電流指令を与える手段である。前記電流指令は、各相の電圧値として与える。
【0025】
モータ駆動制御部30は、基本的には、モータ6の電流値の検出値に応じた電流フィードバック、およびモータ効率化のためのロータ回転角度の検出値に応じた制御ループによる閉ループ制御であるが、この実施形態では、電流制御につき、オープンループ制御のモードと閉ループ制御(フィードバック制御)のモードとにモード切換が可能とされている。
【0026】
モータ駆動制御部30は、
図2に構成例を示すように、この実施形態ではベクトル制御を行う構成とされる。モータ駆動制御部30は、電流指令部40、電流PI制御部41、および2相・3相変換部42を有する。この他に、モータ駆動制御部30の一部として、
または独立して、3相・2相変換部43、速度計算部44、および回転角度検出手段33の内の回転角度計算部33bが設けられている。
【0027】
前記電流指令部40は、モータ6に印加する駆動電流を、回転角度検出手段33で検出されて角速度ωに変換された検出値と、前記トルク配分手段48から与えられた指令トルクとから、モータコントロール部29内に設定されているトルクテーブル(図示せず)を用い、相応の2相の指令電流(O
id,O
iq)を生成する手段である。
前記回転角度検出手段33は、モータ6の電気角のロータ角度を検出する検出部33aと、この検出された信号より電気角の回転角度を算出する回転角度計算部33bとで構成される。回転角度計算部33bで算出された回転角度θから、速度計算部44で角速度ωに変換され、前記電流指令部40に入力される。
【0028】
電流PI制御部41は、前記電流指令部40で生成された電流指令(O
id,O
iq)を、電流センサ38による各相の電流値に偏差が生じないようにPI(比例積分)フィードバック制御を行う手段である。電流センサ38により検出された3相の電流値Iu,Iv、Iwは、前記3相・2相変換部43によって2相の電流指令id,iqに変換して電流PI制御部41に入力される。
【0029】
前記2相・3相変換部42は、電流PI制御部41から出力された2相の電圧指令値Vd,Vqを、回転角度検出手段33で検出された回転角度θに応じて適切な値に変換した3相の電圧指令Vu,Vv,Vwとする手段である。
【0030】
このような構成のモータ駆動制御部30を備える
図1のモータコントロール部29において、この実施形態では、次の検査用逆トルク指令部36と、異常検出部34とが設けられている。
【0031】
前記検査用逆トルク指令部36は、停車時に前記両モータ6,6に、互いに車輪回転方向が逆方向で大きさが同じトルクがかかる電流を流させる指令(指令トルク)を前記モータ駆動制御部30,30に出力させる。
例えば、
図6(A)に示すように前輪駆動である場合は、
図7(A)に示すように、前輪である2つの駆動輪1,1のうち、いずれか一方(図では左)の駆動輪1に前向きのトルク(ANm)を、他方(図では右)の駆動輪1に後ろ向きのトルク(BNm)を発生させるようにする。両トルクA,Bは互いに同じ大きさである。
図6(B)に示すように後輪駆動である場合は、
図7(B)に示すように、後輪である2つの駆動輪1,1のうち、いずれか一方(図では左)の駆動輪1に前向きのトルク(CNm)を、他方(図では右)の駆動輪1に後ろ向きのトルク(DNm)を発生させるようにする。両トルクC,Dは互いに同じ大きさである。
図6(C)および
図6(D)に示す4輪駆動である場合は、
図7(C)に示すように、前後のいずれか、例えば前輪である2つの駆動輪1,1に前向きのトルク(ANm,BNm)を、後輪である2つの駆動輪1,1に後ろ向き
のトルク(CNm,DNmを発生させるようにする。この場合、各トルクA〜Dの大きさは、前輪のトルクの和(A+B)と、後輪のトルクの和(C+D)とが同じとなるようにする。
【0032】
前記異常検出部34は、前記逆方向のトルクがかかる電流が流れているときに前記電流センサ38の異常を検出する。逆方向のトルクがかかる電流が流れているときであることは、例えば前記検査用逆トルク指令部36が前記モータ駆動制御部30,30に逆方向トルクの指令を出力させる間であるか否かで認識する。
【0033】
前記検査用逆トルク指令部36は、より詳しくは、前記モータ駆動制御部30を、前記逆方向のトルクがかかる電流を、電流フィードバックすることなくオープンループで流させる制御モードとする。この場合に前記異常検出部34は、そのオープンループで電流が流れているときの電流検出値が規定する範囲内に入っていなければ異常であるとの検出信号を出力する。
具体的には、前記モータ駆動制御部30は、
図2と共に前述したように、電流センサ38の検出値によって電流PI制御部41でPI制御する電流ループ49を持つが、前記オープンループで流させる制御モードとする場合は、前記電流ループ49を使用せず、前記電流PI制御部41の代わりに、
図3に示すように、電圧演算部41Aを用いて電流指令となるd軸,q軸の電流指令となる電圧値Vd,Vqを出力する。この場合に、電圧演算部41Aは、回転角度検出手段33で得て速度計算部44で計算した角速度を用いて電圧値Vd,Vqの演算を行う。
前記電流PI制御部41と電圧演算部41Aとは、両方がモータ駆動制御部30に設けられていて、切り替えて使用される。
【0034】
前記異常検出部34は、より具体的には、オープンループで電流が流れているときの電流センサ38の電流検出値が規定する範囲内に入っていなければ異常検出とする。この場合に、前記モータ6がこの実施形態のように3相交流モータであるときは、そのオープンループで電流が流れているときの3相の各相のモータ電流の和が略零でなければ異常検出としても良い。3相交流モータの各相のモータ電流(相電流)は、
図8に示すように120度ずつ位相が互いにずれているが、各相のモータ電流の和は零となる。したがって、3相の各相の電流の和が零でなければ異常であることを判断できる。ただし、電流センサ38や配線等における許容できる誤差を考慮し、零に限らず、略零であれば正常としている。
【0035】
また、前記検査用逆トルク指令部
36は、車両が停車時であること以外に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させる条件として、前記車両の主ブレーキ(図示せず)がブレーキ状態維持中であること、サイドブレーキ(図示せず)がブレーキ状態維持中であること、またはシフトレバー53(
図1参照)がパーキングに入っていることのいずれか一つまたは複数を条件の各条件充足の場合に、前記モータ駆動制御部30に前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させるようにしている。
【0036】
また、この実施形態において、前記検査用逆トルク指令部
36は、車両の停止中に操作される特定のスイッチ50(
図1参照)のオンをトリガーとして起動し、各条件の充足を判定して条件充足の場合に、前記逆方向のトルクがかかる電流を流させる指令を出力させるようにしている。前記特定のスイッチ50は、例えばスタータスイッチであり、走行前の各種アクセサリー機器の一連の検査の一部
として、前記検査用逆トルク指令部36および前記異常検出部34による前記電流センサ38の検査を行うようにしている。
【0037】
前記条件は、例えば、主ブレーキ(図示せず)がブレーキ状態維持中であること、またはサイドブレーキがブレーキ状態維持中であることである。主ブレーキについてはブレーキベダル51(
図1参照)が踏まれていることで、サイドブレーキについては操作レバー52(
図1参照)が引かれていることで、それぞれブレーキ状態維持中であることを検出する。前記条件として、この他に、シフトレバー53がパーキングに入っていることを加
えても良い。
【0038】
上記構成の制御動作を
図4と共に説明する。車両のスタータスイッチ等の前記スイッチ50がオンになると、前記検査用逆トルク指令部36は、
図4に示す処理を開始する。
まず、条件判断としてサイドブレーキが入っているか、および主ブレーキのブレーキペダル51が踏まれているか、シフトレバー53がパーキング位置にあるかの条件を判断する(ステップS1)。いずれもN0である場合は、モータ6の駆動を禁止する(ステップS6)。すなわち、検査用逆トルク指令部36は、モータ駆動制御部30が逆方向トルクの印加の指令を行わないようにする。
条件充足の場合は、ステップS2に進み、
図7(A)〜(C)と共に前述したように、大きさの等しい逆向きのトルクが左右または前後の駆動輪1,1に生じるように、
図3に示す電流ループにつきオープンループで左右のモータ6,6に通電させる(ステップS2)。
【0039】
このオープンループで駆動している間に、異常検出部34は、電流センサ38の電流検出値が規定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS3)。この判定過程では、各相毎にその相電流であるモータ電流がそれぞれの規定に範囲内であるか否かを検出しても良く、またこの実施形態のようにモータ6が3相交流モータである場合は、
図5のステップS3′のように、3相の各相の電流の和が略零であるか否かで規定の範囲内であるか否かを判断しても良い。
図5は、
図4とはステップS3′のみが異なる。
規定の範囲内である場合(例えば3相の電流の和が略零である場合)は、前記異常検出部34は電流センサ38が正常であると判断し(ステップS3:Yes)、モータ駆動制御部30はその判断結果の信号によって通常の制御に移行する(ステップS4)。すなわち、ECU21のトルク配分手段48からの指令トルクに従い、
図2と共に説明した電流フィードバック制御を行ってモータ6を駆動する。
【0040】
規定の範囲内でない場合は、異
常検出部34が異常であると判断し(ステップS3:No)、異常時制御に移行する(ステップS5)。例えば、異
常検出部34が異常である旨の判断結果をモータ駆動制御部30に送ると、モータ駆動制御部30は、その判断結果に応答して、
図3と共に前述したオープンループによる制御を行う。ただしこの場合、ECU21のトルク配分手段48から出力される指令トルクに従った制御とする。
【0041】
この実施形態はこのように、車輪が左右または前後で独立駆動可能な車両において、停車時に左右または前後の駆動輪1,1でそれぞれ等しい大きさで逆のトルクがかかるような電流を流し、電流検出回路の異常を検出する。例えば、逆のトルクがかかるような電流をオープンループで流し、その時の電流検出値が規定する範囲内に入るかどうかで異常検出を行う。または、逆のトルクがかかるような電流をオープンループで流し、3相の電流の和が零または零に近い値になるかどうかで異常検出を行う。
【0042】
このような異常検出を実施した場合、等しい逆のトルクをかけるので車両としては動かさないまま電流検出回路の検査ができる。また、d 軸電流に限定しないため、各相に任意の電流を流すことが出来る。また、電流センサ38に追加する回路や専用の電源は不要で、コストアップや重量増とはならない。
また、オープンループで制御をすることで、例え電流センサ38に異常であって電流検出値が異常値であっても、流す電流は変わらず、そのため、等しい逆トルクがかかり、車両としては動かないまま検査が出来る。
ただし、電流センサ38の異常有無では左右または前後のトルクに違いは出ないが、駆動回路やロータ角度検出回路の異常により等しい逆のトルクでなくなってしまう場合は車両が動いてしまう可能性もある。そのため、ブレーキペダル51が踏み込まれているか、サイドブレーキの操作レバー52が引かれているか、およびシフトレバー53がパーキングに入っているかを、異常検出を行う条件としてもよい。これにより車両の不測の移動を防止することができる。
また、万が一ロータ角度にある閾値を超えるような変動が起こった場合は、異常検出部34は何らかの異常があると判定し、前記逆方向トルクをかけて行う異常検出を終了してもよい。
【0043】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。